2019年09月23日

◆ソロモン、キリバスはカネでひっくり返り

宮崎 正弘


令和元年(2019)9月22日(日曜日)通算第6204号 <前日発行>

 ソロモン、キリバスはカネでひっくり返り、次はツバルか?
  台湾断交ドミノ、懸念されてきたが、やっぱり現実となった

ソロモン諸島の台湾断交に続き、9月19日、キリバスが台湾に断交を通
知した。ソロモンは地理的には豪にちかいため、7月に豪のモリソン首相
が急遽訪問し、180億円もの経済援助をぶち挙げたばかりだった。ソロ
モンの裏切りは噂されていた。

つづくキリバスの素っ気ない断交に対して、台湾では呉外務大臣がただち
に記者会見し「台湾はキリバスと断交した。

中華民国の駐タマワ大使館は近日閉鎖する」とし、「キリバスの政治指導
者は、我が国に『高額』を露骨に要求し、旅客機の寄付も求めた」と語っ
た。「かれらは『借金の罠』に落ちた」。

中国はキリバスの外交姿勢を転換させるため、数機の旅客機提供を示して
いた。

キリバスの首都タラワから、ほかの環礁へ行くにも旅客機がなかった。首
都のタマワ近辺には戦前、日本軍が軍事要塞を築いた。タラワ空港は大東
亜戦争中に、米軍が上陸し、珊瑚礁を埋め立てて滑走路を敷いた。

キリバスは33の環礁からなる海洋国家、というより島と環礁の集合体。
人口は僅か11万人。この環礁のなかのクリスマス環礁で英米は嘗て核実
験を行った。キリバスのエリス諸島から、ツバルが独立した経過がある。

この国のGDPの半分は外国からの援助である。

海外へ出稼ぎに出た人々からの送金で経済が成り立っているため、カネの
提示が破格なら、外交方針はころりと変える。

かくしてソロモンから始まった『ドミノ』は、キリバスのあと、次はツバ
ルである。

これまでのツバルへの援助は豪、NZであり、英国領だった関係から大英
連邦の一員。宗教は英国国教会派に近い。そのうえ英国の総督が派遣され
ているし、元首はエリザベス女王である。

ツバル国旗はユニオンジャックに星がならぶ。GDPの66%が外国から
の援助である。日本は豪、NZにつぐ三位。累計援助額は134億円だ
が、日本大使はフィジー大使が兼任(バヌアツも兼任)。


 ▲ツバルには紀元前からラピタ人が上陸していた

ツバルには紀元前にラピタ人が丸木船で、フィジー、トンガあたりから
やって来た歴史があり、地質学、考古学上の研究対象である。

しかし人口僅かに1万人というミニ国家。

独立したのは1978年で、キリバスから分離したかたちだった。にもか
かわらず、或る意味で世界に有名なのは、海抜5メートルしかないため、
国が沈没する怖れが喧伝されたからだ。

南インド洋に浮かぶ島嶼国家のモルディブも海面すれすれだが、やはり中
国に転んで、借金の罠に落ちたと批判された。

安全保障の観点から中国の野望を読んだインドが猛然とモルディブに政治
攻勢をかけ、親中派で中国からの賄賂漬けに嵌ったヤミーン大統領を落選
させた。危うくモルディブの16の無人島が中国の手にわたるところだった。

ツバルの首都フィナフティには、フィジーのスバからのみ国際線が乗り入
れている。
 
「もしツバルが水没したら、全員をフィジーが引き取る」とフィジー政府
は豪語しているが、フィジーもまた中国の「借金の罠」に落ちて、首都ス
バにはチャイナタウンが出来た。ナンディ市内を歩いている観光客は殆ど
が中国人となった。

国際政治の舞台からみれば、このミニ島嶼国家が、国連では一票をもつの
である。

だから國際政治はややこしいが、国家としての「主権」があるとは言い難
いだろう。なにしろツバルの通貨は豪ドルであり、軍隊は保持せず、国会
は定員が15名。政党が存在しない。
    
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 読者の声  どくしゃのこえ  READERS‘ OPINIONS
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   ♪
(読者の声1)1968年のチェコ事件後、ソ連に擁立されたフサークは1987
年、ゴルバチョフの民主化を含む改革の波を受けた民主化の動きの情勢
に、解任され、1989年に共産党支配は崩壊し、東欧諸国はソ連の支配から
脱しました。

中国市場での有利な立場を得る為、散々収奪した香港人に還さず、中共と
盗賊間の薄汚い取引から弾圧を強めて、22年後、直接武力統治の瀬戸際
2019年、はげしい独立運動が起きています。             
           
ソ連はロシア革命から70年後 1987年はゴルバチョフ改革のただなかでした。

共産党幹部のほぼ世襲制、特権による沈滞と経済ジリ貧の打破でソ連の再
生を目指したものでしょう。

それは失敗でしたが、あれだけの激変の割には動乱はかなりの規模でも、
少ない流血で軟着陸できたのは 人々のグラスノスチを作り出した結果と
考えます。

中華人民共和国は成立後70年の2019年ですが、金融詐欺による拠点作り
(一路一帯)として覇権国たらんとする冒険主義に邁進中でしたが、いきづ
まってきたようです。

ソ連の末期も不正。腐敗が進んでいた模様ですが、社会主義の分配が成さ
れていたのに対し、中国共産党はグローバル資本同様の独占資本主義を監
視網と公安警察軍により極端な、ジョージ・オーウェルの世界として、収
奪をしています。

桁外れ。5桁違いの資産(サウジの王族に近い)を成すのが主に世襲の組織
であり、腐敗の極地。また揚子江の巨大ダムはまるで最近の烈しい気候に
備えているようです、

災害を大きくする為、要らないビル土建も膨大。日本も五輪にいれあげ防
災はお粗末で風水害、地震被害大きくするのに任せていますが。。。。

ソ連の場合はバルト三国が発火点ですが、平和運動が主体でした。
ウイグル、内モンゴル、チベット自治区地域は広く、イスラムは戦争経
験あり、最近はドローンも存在します。弾圧支配 止めないと危ない。
習近平にはもう指導力がないように感じます。  

ゴルバチョフより非常にむずかしい と思いますが、膨大な負債の破綻
や、必要と思われる激変への軟着陸の準備を担う可能性がある人物があれ
ば、教えていただけないでしょうか。(SH生 北海道)

   
(宮崎正弘のコメント)なにしろSNSで離合集散をくりかえす香港の民
主派には統一組織がなく、カリスマ的リーダーが不在です。そのうえ、現
在までの逮捕者が500人を超え、これから裁判が始まります。

彼らの主張のなかで、「香港独立」は少数派、多くは「完全自治」の要求
です。抗議集会を遠くから見守る大半の香港市民は「現状維持」でしょ
う。「香港独立」は無理筋で、理由は単純明快。「食糧と水」を香港は中
国大陸に依拠しておりますから。

 トーマス・フリードマンがいみじくも指摘したように「彼ら香港の若者
たちは、ツィッター世代だ。各々が指導者であり、フォロアーであり、批
評家である。したがって収拾するのは難しいだろう」。


(読者の声2)香港問題のことですが、世界のメディア、とくに英米の新
聞もテレビも、民主活動家の味方ですね。日本のメディアはスポークスマ
ン的存在の黄之峰と周庭女史を大きく報じていますが、米国の論調はすこ
し違って「民主、人権」。香港政庁批判ではなく、直接的に中国政府への
非難となっています。こうした日米メディアの論調の乖離について、宮?
さんのみるところは如何でしょう
付け足しになりますが、20日金曜日の「ラジオ日本」で宮崎さんの痛快
な解説、一刀両断の分析を心地よく聞いておりました。(HF生、横浜)


(宮崎正弘のコメント)ピューリタンが移住して建国した米国は、プロテ
スタントの国、つまりプロテスター(抵抗者、抗議者)に味方するのは当
然でしょう。

しかも香港の若者の多くはクリスチャン・ネームを持つほどに(黄之峰は
「ジョシュア」、周女史は「アグネス」。行政長官の林鄭女史だって
「キャリー」ですからね)中華社会の儒教伝統からはなれています。
米国と香港の心理的連帯感とは、キリスト教プロテスタンティズムが根底
にあるのではないか、と思われます。


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