2019年12月31日

◆マカオが博打場から大変貌

宮崎 正弘
 

令和元年(2019)12月29日(日曜日)通巻6324号  

マカオが博打場から大変貌を遂げつつある現実に注目
  賭場、リゾートから金融センターへの脱皮を目指し始めた

 2019年12月20日、マカオではポルトガル領から中国へ返還され て20周年の式典が挙行され、習近平がマカオを3日間訪問した。

「マカオ経済のカジノ依存体制を改め、将来は金融都市センターへの脱皮 を図るべきであり、中国政府はその方向で支援する」と述べた。

この習発言はいささかの驚きを以て迎えられた。

なぜなら中国共産党は香港を金融のハブとして重要視し、資金洗浄、海外 送金、中国企業のIPO(株式新規公開)、ならびに社債の起債など、お よそ60%の資金の流れを香港を活用してきたからだ。

マカオはあくまでも中国庶民の憩いの場所、リゾート、そして賭場であ り、実際にマカオ経済はカジノと観光(リゾートを含む)の2大産業で、 成り立ってきたのである。

香港を牽制するかのようにマカオも金融センターにする?

習近平演説の基調にはマカオを「一帯一路」の起点として活用すること。 そして「広東─マカオー香港」という環大湾経済圏の発展に置かれている ことは言を待たない。そのために拒否と投じた海底トンネルを繋ぎ、交 通、運輸アクセスを格段に発展させた。

マカオ政府は長期的発展計画を欠落したまま、ひたすらカジノ・ビジネス と、併行した海外資本導入によるリゾート開発に力点を置いてきた。しか しながら2016年ごろから長期計画にも着手し、カジノ依存体質の軽 減、他方では国際会議の召致、文化的イベントの強化、家族連れ、長期滞 在型のリゾートへの変質などを取り入れて、経済の活性化をはかろうとし てきた。

マカオは借金ゼロである。

歳出より歳入の多い黒字体質を持つ、中国では珍しい地区である。マカオ 経済は過去20年で9倍の規模拡大があり、ひとりあたりのGDPは香港を 超えている。(マカオ=86355米ドル、香港=48717ドル。いず れも日本より遙かに多い)。

金融センターへの大構想は銀行セクターを鼓舞する。

マカオに進出した大手は中国銀行、12のローカル銀行にくわえ、大陸系 大手銀行など18の支点が店開きをしている。実際の規制緩和第一号はマ カオから中国本土への送金額を五万元から八万元へ引き上げた措置にも象 徴される。
 
習近平の「マカオの金融センターへの脱皮」は、しかしながらたいそう困 難だろう。

香港はまがりなりにも英国の植民地化にあって貿易のハブ、金融の国際化 には130年の歴史があり、金融ノウハウの蓄積がある。マカオの蓄積は 博打場だけ、その中心はリスボアホテルのスタンレー・ホー・一族である。

大法螺の号令が鳴り響いて、マカオ政府は多角化に乗り出すとはいうもの の、前途多難。だが、ハイテクの新都市=雄安市建設が、習の大号令一 下、大々的な建設プロジェクトが推進されているように、瓢箪から駒とい う可能性は一万分の一ほどの確立があるかも知れない。
  
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【知道中国 2007回】            
 ──「支那を亡すものは鴉片の害毒である」──上塚(25)
上塚司『揚子江を中心として』(織田書店 大正14年)

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伊東の旅も興味深いが、この辺で本題の上塚に戻り、「揚子江流域に於け る列國の鐵道利權競爭」について綴った「列國覇權夢の跡」に移りたい。

「緒論」で上塚は、「支那に於ける列國の政策は、愈出でゝ、愈辛辣を極 め、自家勢力の此の地に扶植せんが爲めには、其の手段を選ばずに猛進し たのである。其の結果、今や支那國は縱?無盡に外國人の侵す所となり、 之が内部に於ける諸種の混亂と相俟つて、支那をして益々紛糾せしむるの 種を蒔いて居る」と、列国の利害が錯綜する当時の概況を綴る。

それに続き、「支那を圍る國際政治は、今や非常なる急速度を以て展開し つゝある。然も展開の度毎に、我が日本は難局に向つて突進しつゝある事 は事實である」と、先を見通せないままに困惑するばかりの日本の姿を指 摘し、ならば「此の際、揚子江流域に於ける鐵道を中心としてなされた る、利權競爭の跡を辿つて、列國侵犯の繪物語を廣げて見る事も、強ち無 意義での事ではあるまい」とした。

そこで理解の大前提として「近時に於ける列國對支政策の變遷に就て一言 を費やさねばならぬ」と考える上塚は、先ず「租借地獲得の時代」、次い で「利益範圍劃定の時代」、最後に「鐵道利權設定の時代」の3期に分け て詳述する。

「鮮血淋漓たる支那侵犯の歴史は、日清戰爭に依りて其の序幕を開く」。 ならばこそ列強による「支那侵犯の?史」に、日本は大きく関わっている のだ。

なぜ「鮮血淋漓たる支那侵犯の歴史」の幕が切って落とされたのか。
それは衰えたとはいえ「東亞の雄國として立たしむるには十分であつた」 はずが、「名も無き東方の一小國から?破せらるに至」たからだ。その時 の西欧列強の姿は、まさに死肉一歩手前の衰えたる巨象に群がるハイエナ だった。

「當時露國は、其の鋭鋒を太平洋沿岸に向け、着々として自己勢力を、西 比利亞の天地より、滿洲並北支那方面に延し、且歐露と太平洋とを連絡す る西比利亞鐵道の敷設にかかつて居つた」。

まさに「東方大發展計畫の一部」である。そんなロシアに絶好の機会を与 えたのが日清戦争である。そして「露國の眼中固より我が日本は無」く、 「其の胸は只炎々たる大野心の焔に燃えて居た」。

次にドイツだが、「所謂?禍の幻影に脅されて居つた」ところの「『カイ ゼル』の眼には、日本の勝利は極東に於ける軍備の新興なりと映じた」。 いまの内に日本の意図を挫いておかなければ「極東に於ける歐羅巴人は追 放せられ、又歐洲自體も侵略せらるべき時期到るべしと考えた」。そこで 3国干渉に打って出たのである。その裏側では、じつはシベリア鉄道の満 洲北部横断線建設が暗々裏に着々と進んだ。

フランスは「南支那に於て、鑛山利權と鐵道利權とを得、且新に其の國境 を改正して其の活動に便ならしめた」。
 
イギリスは「佛の要求に狼狽して、俄に緬甸國境を協定した」のである。

このようにしてロシア、ドイツ、フランス、イギリスによる「列國覇權」 の基本構図が出来上がった。もちろん、まだアメリカは表立っては露骨な 動きを見せてはいない。

先ずドイツが動く。

「1897年、山東に於ける2人の獨逸宣教師の殺害を名として膠州灣99ケ年 の租借權を得た」。山東省の死命を制する要衝を得たことで、「模範的の 市街地?島を建設し、要塞を築くと共に、港灣を改修し、且此の地を起點 として、鐵道を建設し始めた」。けだしドイツ版の一帯一路といったとこ ろか。

 次いでロシアが旅順・大連を、イギリスが威海衛と九龍を、フランスが 広州湾を強奪し、それぞれが力を前面に押し立てて「列國覇權夢」の実現 に向けて動き出した。
《QED》

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読者の声  どくしゃのこえ   READERS‘ OPINIONS
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(読者の声1)町田市の「町田市民文学館ことばらんど」で三島由紀夫展 が開催されます。
 令和二年1月18日から3月22日まで、佐藤秀明先生監修、山中湖三 島文学館協賛で
「三島由紀夫展」が開催されます。展示品は『大洋と鉄』初版本や原稿、 使用した剣道着など多数。
入場無料です。
また同文学館では、1月26日には高橋睦郎氏の講演会。2月15日には 佐藤秀明氏の講演会。3月8日には藤田三男氏の講演会(いずれも予約制)
 ほかに朗読会や金閣寺の映画界などイベントが続きます。
詳しくは下記
https://www.museum.or.jp/modules/im_event/?controller=event_dtl&input[id]=95154

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(読者の声2)思わず笑っちゃいましたよ。産経12月29日の文化面 で、「令和元年の3冊」特集。ノンフィクションを花田凱紀氏が選んでお り、そのなかの一冊が『2050年のメディア』。

ここで面白いのが、渡邊恒雄(読売新聞のボス)が、「読売は磐石、いか なる戦いでも必ず勝つ」と新年の挨拶の常套句だったのに、平成三十年に 悲鳴を挙げて言ったとか。

「読売はこのままではもたんぞ」。

 だから老醜をさらす本人が居座る限り「もたんぞ」であって、そのこと を自覚していないわけですね。可笑しかった。(DF生、茨城)


(宮崎正弘のコメント)小生としては、10年ほど前に『朝日新聞のなくな る日』(ワック)を書いておりますので、活字重視のメディアの変身が急 がれるべきと予測してきました。したがって格別の驚きはありません。

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(読者の声3)『国体文化』の講演会のお知らせです。宮田昌明先生をお 招きし「日本の台湾朝鮮統治──日韓歴史問題の根源を探る」を開催します
               記

とき      令和二年一月十七日 午後六時半
ところ     文京シビックセンター 四階シルバールーム
講師      宮田昌明(文学博士。京都大学)
演題      「日本の台湾朝鮮統治──日韓歴史問題の根源を探る」 
会費      2000円
お問い合わせ  (0422)51−4403(日本国体学会)          
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