2020年01月02日

◆【変見自在】例外的日本人

高山 正之


日本人は賢い。モノの本質を見通す力がある。

例えばキリスト教だ。欧州では不潔と抑圧と迷信に苦しむ人たちに心の安
らぎを与え、大いに繁盛していた。マルクスが後に言った阿片の効き目が
抜群の宗教だった。

でも日本は清潔で、抑圧もそう酷くなかった。迷信もミミズにおしっこを
ひっかけるくらいだった。

むしろ日本人は奴隷を鞭打ちながら慈悲を説く伴天連に鼻白んだ。

だから世界で唯(ただ)一国、この宗教を見限った。それが正しい選択だっ
たことは世界の歴史が証明している。

同じころ鉄砲も伝わった。日本人はこっちには目を輝かせた。領主、種子
島時堯は刀鍛冶の八板金兵衛に同じものを作れと言った。

金兵衛は心血を注ぎ、本物に勝るものを作った。銃身のお尻、尾栓には日
本初の着脱自在の螺子(ねじ)を取り付けた。一説には娘と引き換えに毛唐
からそのメカニズムを習得したという。

火縄銃は世に広まり、金兵衛の孫の時代には日本の銃保有数は世界一の50
万丁に達した。

下地はあった。まず鉄も鉛も産した。高度の製鉄技術も持っていた。細か
いことを言えば火縄には日本の檜皮(ひわだ)が最適と分かった。

ただ問題はあった。火薬の原料のうち木炭と硫黄は余るほどあったが肝心
の硝石がなかった。

で、日本は隣の明に哨石の有無を尋ねた。明は日本から大量の硫黄を買っ
ていた。琉球も硫黄を朝貢して好待遇を受けていた。

もしかして硫黄は火薬用ではと思ったからだ。

答えはイエス。山東や四川で山ほど採れた。

でも売らない。なぜなら200年前に太祖の朱元璋が「日本は敵だから硝
石を売るな」と遺言したからだ。

明の持つ鋼製銃も日本人に見せたり、構造を漏洩したりすることを厳しく
禁じた。これは属領の高句麗にも厳命していた。

福沢諭吉は支那朝鮮を友達だが「悪友」と言った。

が、彼らは千年前から日本を敵と見ていた。ゆえに硝石は売らない。

ではイエズス会はというと硝石一樽と日本の女性50人を交換すると言った。

日本人は自力で硝石作りする道を選んだ。ヒントは臭くて埃の舞う産地の
山東省の景色だ。

五箇山では囲炉裏の床下に穴を掘ってヨモギや麻の干し草を敷き、蚕の糞
と藁灰を入れ、尿をかけて埋めた。山東省を再現した。

数年寝かせると、あら不思議、穴の底に硝酸カリウムつまり硝石ができて
いた。

元素も化学式も知らない時代に日本は硝石を手作りし、世界最高の鉄砲部
隊を作り上げた。

秀吉の軍勢はその鉄砲隊を先頭に朝鮮に出兵して明の軍隊と対決した。

火縄銃の威力は明の青銅銃を凌駕した。鉛弾は100メートル離れた明兵の鎧
を貫通し、今のマグナム弾と同じに体に大穴を開けた。

青銅の火器にしがみつき、改良を怠った明は日本に敗れて以後、種子島を
真似た火器を作るようになった。

ルイス・フロイスもその威力を知り、日本征服を断念するように本国に伝
えた。因みにナポレオンは後に日本の知恵を借りて同じ方式で硝石を国産
化した。

明治に来た英宣教師ヘンリー・フォールズは日本人がIDとして拇印を押
しているのを見た。

調べたら誰の指紋も違い、成長しても不変と知った。日本人の知恵を英科
学誌に発表したら「指紋の発見者」の称号を貰えた。

昭和に来たマッカーサーは天皇家が直系男子で皇統を紡いできたことを
知った。彼は日本を壊すのが使命だった。意味も分からないまま皇室断絶
の意図で宮家をほぼ廃した。

今世紀に入り、男のY染色体が不変で継がれることが解明された。日本人
はそれを神武の御代から知っていた。皇統が世界の奇跡と言われる所以だ。

今、例えば園部逸夫や朝日新聞が男女同権だからと女性天皇を立てようと
言う。それで神武以来紡がれてきたY染色体が絶たれることも知らない。

日本人の中にこんな蒙昧がまだいたんだ。



出典:『週刊新潮』令和2年(2020)1月2・9日新年特大号

    【変見自在】例外的日本人

著者:高山 正之


松本市 久保田 康文さん採録
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