2020年01月12日

◆トルコ軍のリビア派兵の意味

宮崎 正弘

 
令和弐年(2020)1月7日(火曜日)通巻6334号   

 トルコ軍のリビア派兵は何を意味するのか?
  イラン緊張の最悪タイミング。エジプト、UAE、ロシアが反対

リビアがどうなっているか、じつに日本の関心の埒外にある。
 リビアはカダフィ時代に「緑の革命」を標榜し、日本も大手ゼネコン多 数が進出してインフラ工事を請け負っていた。こうした関連でリビア内戦 のおり(2011年)、日本はカダフィに在日資産3500億円を凍結した。

最も積極的にリビアに進出していたのは旧宗主国イタリアではなく、中国 だった。内戦勃発直前、中国企業はなんと100件のプロジェクトをリビ アで展開していた。労働者3万6000人がリビアにいて、彼らのエクソ ダスのため、中国は航空機、フェリー、バスをチャーターし、大輸送作戦 を展開したことは今も語り草である。

そのリビア、いまでも日量100万バーレルの原油を生産している。バイ ヤーは、イタリアを筆頭にフランス、EU諸国。。。。。

2011年にカダフィが暗殺され、この国の内戦状態はさらに激化した。
武装勢力が三つ巴の激しい内乱が続いたが、南の砂漠にいた武装勢力は衰 退し、2014年になると、西のトリポリ、東のベンガジで武装勢力は二 分化された状況となっていた。武器はロシアからも、米国からも、 NATOからも。そして謎の経由地を経て中国製武器も大量に見つかって いる。

2015年、国連の仲介で西のトリポリ「政府」と東の「ベンガジ政府」 を名乗る武装勢力(LNA=ハフタル司令官)が厭々ながられも、会談に 応じた。

とりあえず暫定政権をトリポリに置き、シラージュ政権をリビア合法政権 とすることが決められた。これ、国連の決定である。

だがトリポリに陣取るハフタル司令官は納得せず、武闘が再開された。激 しい戦闘が繰り広げられ、数千の犠牲が出ている。

トリポリを拠点とするLNAを率いるハフタル司令官は、元カダフィ政権 高官(カダフィ政権の参謀総長)だが、意見衝突、アメリカへ亡命していた。

このハフタル司令官の来歴に特異な影がある。CIAが保護し、ハフタル は合計20年間をアメリカで、しかもCIAのお膝元のラングレーで過ご し、リビアに出入りしていた。CIAとの絡みはたびたび指摘されてきた 上、子供五人のうち、ふたりは米国籍である。


 ▲元陸軍元帥、CIAが匿ったハフタル司令官って誰?

ハフタルはフランスで治療を受け、死亡説も流れたが、健在の様子で現在 77歳。

この老人将軍、ハフタルを支援するのがエジプト、UAE、そして、フラ ンスが背後に暗躍している。混乱となると、薮からぬぅーと顔を出して、 かならず鵺的行動が大好きなプーチンも背後にいる。

ならばトリポリを支援するのは誰か。もちろん国連が認定した合法政権だ から、公然とイタリアは支援している。しかしトリポリ政府は武装が脆弱 で、いずれ反政府武装勢力を糾合したハフタル司令官に乗っ取られる危険 性もなくはない。

もともとリビアは部族国家で、南西部にはベルベル人がいるし、ベンガジ は元国王の出身地、トリポリ政府など認める筈がない。

1月4日にはトリポリの陸軍士官学校が襲撃され、28名が死亡した。。
誰が味方で誰が敵なのか、昼間であっても裏切り、昨日の友は今日の敵。 惨劇があちこちで繰り返され、国連としては安定、妥協を呼びかけるだ け、しかも先週来、国連の関心事はイランに移っている。

この危機にトルコが立ち上がったのだ。

なんとも複雑である。昨日までの構造分析、政治の方程式は通じなくなっ た。サウジ、UEA、エジプト、露西亜が支援するハフタル武装勢力の頭 越しに、エルドアン大統領はトルコ軍をトリポリに向かわせた。トルコ兵 の展開が開始された。

トルコの目論見? 

じつはトルコはトリポリ沖合に油田の採掘権を有している。

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樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム 
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【知道中国 2013回】                
 ──「支那を亡すものは鴉片の害毒である」──上塚(31)
上塚司『揚子江を中心として』(織田書店 大正14年)

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なぜ「米國の對支政策は、終始一貫、親和主義を標榜して又變る所が無か つた」のか。

20世紀後半のアメリカにおける硬派ジャーナリストの代表格とされるD・ ハルバースタムの遺作『ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(上 下)』(文春文庫 2012年)の次の指摘は、アメリカの対中姿勢の根柢を 流れる雰囲気を窺わせるに十分だと思う。

「多くのアメリカ人の心の中に存在した中国は、アメリカとアメリカ人を 愛し、何よりもアメリカ人のようでありたいと願う礼儀正しい従順な農民 たちが満ちあふれる、幻想のなかの国だった。〔中略〕多くのアメリカ人 は中国と中国人を愛し(理解し)ているだけでなく、中国人をアメリカ化 するのが義務だと信じていた」

彼に依れば、アメリカ人にとって中国は「かわいい中国」であり、終始一 貫して「勤勉で従順で信頼できるよきアジアの民が住む国」だった。

だが、そんな「かわいい中国」に、1949年10月に毛沢東率いる共産党独裁 政権が誕生してしまった。19世紀以来のアメリカの努力は完膚なきまでに 裏切られた。やはり「アメリカの失敗はアメリカのイメージのなかの中 国、実現不可能な中国を創ろうとしたためだった」から、というのだ。

 D・ハルバースタムの主張に従うなら、現在の米中貿易戦争を仕掛けざ るを得なかった「アメリカの失敗」もまた、「アメリカのイメージのなか の中国、実現不可能な中国を創ろうとしたためだった」からか。

1969年には全面戦争一歩手前まで緊張が高まった中ソ対立状況を前に、 「敵の敵は味方」とばかりに米中緊張緩和に舵を切った毛沢東の誘いに応 じ、米ソ対立を有利に展開すべくニクソン大統領は北京・中南海の毛沢東 の書斎を訪れる。1972年2月のことだった。

この時点で、毛沢東が建国以来堅持してきた対外閉鎖路線は幕を閉じた。

以来、共産党政権はアメリカを通じて西側世界との接触を始める。その総 決算が1978年末のトウ小平が断行した「コペルニクス的転換」──国内的に は国民の移動を禁止していた戸口制度のなし崩し的緩和と社会主義市場経 済の導入であり、対外的には対外開放──だった。

トウ小平が進めた内外路線の大転換に、アメリカは積極的に対応した。
それというのも、「市場経済の動きが進展し国民が豊かになれば自ずから 国民の政治意識が高まり、共産党による独裁体制への拒絶反応が生まれ、 やがて民主化されるだろう」という見立てである。いわば共産党政権誕生 と言う「アメリカの失敗」に懲りることなく、再び「かわいい中国」「ア メリカのイメージのなかの中国、実現不可能な中国を創ろうとした」。淡 い期待だった。

経済が発展したにもかかわらず、「かわいい中国」が誕生することはな かった。習近平率いる中国は、「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を 掲げて、政治・経済・軍事・先端技術・情報・次世代通信システム・文 化、はては宇宙空間に至るまでアメリカの覇権に全面的に挑戦するように なった。

それがトランプ VS 習近平の熾烈な戦い本質ではないか。

両者(ということは両国)の戦いがどのような結末を迎えるのか。正直 言って予想し難い。おそらく最高精度のAIを使ったとしても、米中対決の 将来を見通すことは至難だろう。

最終的にはトランプ(つまりアメリカ)の勝利で決着がつくとの考えも聞 かれる。だが、この主張が正しかろうと、「アメリカのイメージのなかの 中国、実現不可能な中国を創ろうとしたため」に被った物心両面の負担は 測り知れないはずだ。

政策の費用対効果を考えるなら、共産中国を国際社会に引きずり出すこと は壮大な徒労、いや罪悪だったと思う。

やはり中国は永劫に「かわいい国」なんぞにはならない。

それは「幻想のなかの国」でしかない。共産党政権が目指すのは「中華民 族の偉大な復興」、言わばアヘン戦争以来の屈辱を晴らすこと。復仇である。

アメリカは自らの不明を恥じ、深刻に顧みるべきだ。
    
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者
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(読者の声1)もう一ヶ月を切っています。2月3日から米大統領選挙予 備選がスタートします。じっさいには昨年から始まっていますが、共和党 はトランプで決まっているので、見物は民主党の捲土重来でしょう。
この時点で宮崎さんは、如何なる見通しでしょうか。(DH生、横浜)


(宮崎正弘のコメント)2020年のアメリカ大統領選挙は、2月3日の アイ オワ州党員集会から熾烈な選挙戦の幕が切って落とされ、つぎに2月11が ニューハンプシャー州、2月22日、ネバダ州。

だいたいアイオアとニューハンプシャーで「意外な候補」が躍り出てきま す。ダークホース、大穴狙い? 88年のパット・ブキャナンの登場も、 2016年のトランプの時もそうでした。

従ってアイオアとニューハンプシャーに殆どの選挙資金をぶち込んでCM 番組を買い取り、一発勝負に出る候補者もいます。

84年に躍り出たゲーリー・ハート候補も、まさにその口でした。
緒線で二位か三位に浮上すると、資金が集まり、息切れするまで戦う。こ のスタイル、つまり大統領選挙における論戦がワシントンの政策に、かな りの影響力をもつという意味でも面白いポイントです。

ついで2月29日 サウスカロライナ州、3月3日のスーパーチューズデー(カ リフォルニア、テキサス、ほか11州が開票)にもつれ込み、ほぼ民主党の 候補の大勢がきまり、7月13日からの民主党大会にのぞみます。その後 は11月3日の本番まで、トランプ vs 民主党候補の対決となります。

ところが、ここへ来てアイオワが別の視点から注目を浴びている。それは 中国の浸透ぶりです。

対中貿易政策では、トランプは強硬に見えるけれど、民主党はもっと苛烈 です。

そのうえ皮肉なことにアイオア州は、習近平が農業実習生として、若きに 日にホーム・スティしたところでもあり、農作物の対中輸出で経済が潤っ たこともあって、過半が親中派なのです。緒線で、なんとも皮肉な親中派 地盤に、対中強硬の民主党議員がいかなる勝負をかけるのか、おおいに気 になるところです。


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