2020年01月23日

◆テクノ・ナショナリズムは

宮崎 正弘

 
令和弐年(2020)1月20日(月曜日)弐 通巻6346号   

 テクノ・ナショナリズムは次世代技術の開発速度を鈍らせる
  米中貿易戦争の妥協は、技術戦争とは別世界のはなし

米英に漲るテクノ・ナショナリズムは次世代テクノロジーの開発速度を遅らせるだろう。しかしトランプは5Gを飛び越えて、6Gを目指すとし、日本もおおがかりに協力する方向にあり、2030年を目処とする。

一方、中国は「2025チャイナ(中国製造2025)」を政策的目標として、第一に半導体の自製化。第二に宇宙、航空、新素材、医薬、化学、輸送機械、AIなど10の分野を開発強化目標とした。当面の目標値は2020年に40%、2025年に75%の自製か目的達成をメルクマールだという。

しかしテクノ・ナショナリズムが燃える米国は中国資本の米企業買収を阻止し、技術スパイを摘発し、ファーウェイ、ZTEなど84社をELリストにあげて排除したばかりか、とくに英国に圧力をかけ、通信インフラからも中国勢の排除を迫った。このために英国はインフラ再整備のために12億5000万ドルを必要とする。

またベンチャー・ファンドの中国への投資にも警告ランプを灯したため、2018年に174億ドルだった欧米ファンドの中国ベンチャーへの投資は、2019年度に40億ドルに激減した。

米国企業はサプライチェーンの改編を急ぐが、世界の半導体の45%が米国、24%が韓国というシェアであり、米クオルコムは売り上げの60%を中国に依存している。
 同マイクロンが50%、ブロードコムが45%である。
 いきなりのチェーン改編作業と言っても、時間を要することになるだろう。

 
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  日本人の伝統的な武士道精神、独特激甚なる心情で称賛
 とりわけ家康、秀吉、信長を『統一』ではなく、「武士道」の見地から評価した

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石平『日本の心をつくった12人』(PHP新書)
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日本に帰化した石平氏の活躍はいまさら述べる必要はないが、いまや「日本人以上の日本人」だ。

多くが忘れかけた、日本人の伝統的な武士道精神を、その美学を、氏独特の激甚なる心情で、称賛している。

とくに特徴的なのは儒学、朱子学、陽明学を総合比較の材料として多角的な視点から論じているあたり、「石平史学」の真骨頂と言うべきだろう。

「わが子に教えたい武士道精神」という副題が示すように、武士道にただずむ普遍的価値観を唱え、西洋化して物質文明につかり切って精神を堕落させてしまった現代日本人に、魂の奥底から呼びかけるのだ。武士道精神に還れ、と。

本書が取り扱う12人とは、源義経をはじめに北条時頼、時宗、楠木正成、徳川家康、吉宗、松平定信、大塩平八郎、武智半平太、大久保利通、東郷平八郎、西郷隆盛、そして個々に付随して同世代人への評価があり、とくに家康の項目には信長、秀吉、明智光秀が登場するなど芸の細かさがある。

 東郷平八郎の箇所では乃木希典に熱烈な筆が及ぶ。「番外編」に三島由紀夫と一色正春への評価が加わる。初版は2012年度で、本書は多少の編成替えと加筆が施されたため、全体が引き締まっている。

ひとりひとりの紹介は短いが、細かな史伝を渉猟した形跡が行間に埋まっており、なぜ彼らには武士道がよみがえったかを重点的に捉えなおしている。

さて、全員を紹介する紙幅がないので、ニ、三をピックアップする。

あるとき、楠木正成が後醍醐天皇に諫言し、新田貞義を遠ざけよとし、朝廷側の戦略のなさを指摘したが退けられた。

最期には死を覚悟しても死にもの狂いで戦いに臨み湊川に逝く。なぜ楠木が、持久戦の勧告をしたのかと言えば、足利尊氏について九州へ逃げ去った武士が多かったこと、つまり尊氏への信頼のほうが厚かった事実を知ったからだった。まして尊氏も、戦後の評価において正成を高く評価した事実がある。

そういえば10年以上前に石氏とふたりして河内長野へ赴き、赤坂城、千早城などを巡ったことを思い出した。

家康をめぐっては先人の信長を異端として切り捨て、また政権を簒奪した秀吉を「戦国のシナ人」とするあたり、日本の歴史を読みこなして特質を掴んだうえでの正当な考えが滲み出てくる。

ならば日本を滅亡させようとして信長を誅した明智光秀への評価はどうかと言えば、次のようだ。

「信長が日本人のなかの『西洋人』だとすれば、秀吉はまさに日本人のなかの『シナ人』なのである」

信長は自身をご神体として一神教的世界の構築を夢想していた。つまり多神教ではないゆえに、いずれ天皇制廃絶の危機が迫っていたとみたのが光秀だったのである。

「光秀はまさに日本人のひとりとして『天魔』信長を消したわけである。そういう意味では、本能寺の変の歴史的意義はすなわち『西洋人』の信長が目指した日本の『西洋化』が、日本的伝統によって阻まれた」(129p)
とする評価に落ち着く。
商人の発想しかない、合理主義の現代人には理解しがたいだろうが、正統の歴史家の目を持つ「石平史学」が随所に披瀝されている。

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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)NHKドラマの明智光秀が主人公の『麒麟が来る』が始まりました。

女優のスキャンダルとかで、開始が2週間遅れたのですが、期待しておりました。

とくに明智の青春時代の空白を、この大河ドラムは、まったくのフィクションで埋めるわけですから想像力豊かといえば、豊か。

しかし実際に起きた歴史的事実とは関係がない話ですね。
これから真実に近付くストーリーの展開になるのでしょうか。宮崎正弘先生の『明智光秀 五百年の孤独』の愛読者としては、後半の描き方が大問題だろうと、いまから予想しておりますが。。。(TT生、仙台)


(宮崎正弘のコメント)明智城を、光秀の誕生地は曖昧のまま、可児市にある明智城としていましたね。父親も判明しないのですが、特定しておりました。斎藤道三や松永弾正に堺で会ったことになっていて、ハナから大胆なフィクション、しかしながら多数の武将群像を描いているという文脈で解釈しました。鉄砲に早くから着眼した点を強調したところは良かったと思います。


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