2020年06月02日

◆インドの「輝かしい未来の発展」シナリオに暗雲

宮崎 正弘

 
令和2年(2020)6月1日(月曜日)通巻第6517号 

インドの「輝かしい未来の発展」シナリオに暗雲
  コロナ災禍がもたらした伏流水がGDPを押し下げた

インド経済が予想に反して、年初来、苦境に陥った。

これまで5%から6%台の成長をなしてきたインドのGDP成長率は市民法への抗議、デモとコロナ災禍によって急減速し、IMFは今年のインド成長予測を1・9%に下方修正した。

世界が、とくに欧米が期待したインド。いずれ中国を抜き去るとの楽観的予測もあった。

人口では間違いなく中国を抜く(2025年に15億人)。しかしインドが製造業を大飛躍させて、サプライチェーンの基軸を中国から奪うというシナリオは望み薄である。たしかにソフトウエア開発ではトップ集団を形成するが、それは数学の天才が多いからであり、インドの主力であるソフトエンジニアは米国のシリコンバレーで大歓迎されている。

モディ首相がカリフォルニア州を訪問したおり、在加州インド人が6万人も7万人も会場となったスタジアムを埋め尽くした。

ピチャイ(グーグルCEO)らインド系アメリカ人がシリコンバレーを牽引し、政治方面でもたとえばニッキー・ヘイリー前国連大使がいる。また英語が公用語であるために、フィリピンなどと並んでコールセンターとしても重視された。そうはいうもののGDPで中国を抜くことは考えにくい。

国際政治学では「ツゥキディデスの罠」論が持て囃され、インドが浮上したこともあった。

嘗てスパルタ vs アテネのペロポネソス戦争の動機は、大国は新興国の台頭を許さないからだった。しかしスパルタとアテネが疲弊困憊したあと、ローマが台頭したように、米中戦争のあと、インドが漁夫の利を得るというシナリオだが、これも実現性は低い。

インドは基本的に農業国家なのである。

コメ生産は世界一、小麦、綿花でも輸出国であり、コメの種類に至っては百種以上。主力はインディカ米で、ジャポニカは作れない。というのも、耕地を見ると、全土が水不足であり、とくにベンガル地方は湿地帯、農業に適さない。輸出のドル箱=紅茶は北東部に集中している。


▲インフラの未整備と水不足、そして停電

発展を阻む最大の障害はインフラ未整備。この脆弱性がアキレス腱である。交通アクセスが悪いのもインフラ整備の遅れ(道路、水道)。就中、日常的な停電と交通渋滞。
くわえて大気汚染、環境破壊、不衛生、教育の遅れ(貧困層が3億人)等の原因が挙げられる。

13億人の購買力(しかし@GDPは2015ドル)に期待した。
 
年初来、絶好調に急ブレーキがかかったのは、国民の資力、預金のなさ、消費拡大に貢献したバイクもスマホも月賦での購入だったのだ。

賃金が横ばいとなれば、消費に息切れがおき、ノンバンクのローン破裂が目立つようになった。

中国の鉄鋼ダンピングのため、製鉄でも高炉が止まり自動車生産も急減速となった。ましてやインドでも労賃が上昇したため、繊維などはバングラへ移転した。

インドの西海岸に位置するムンバイとグジャラート州などは対中東、アフリカへの輸出基地でもあり、安部・モディの蜜月関係により、新幹線工事が始まっている。

社会構造をみると、インドは29州からなる連邦国家である。

各州が独自の法律と税制を持ち、強い自治を誇る。なにしろ各州が独自の首相、閣僚を選挙で選び、産業発展のメッカと言われるチェンナイが属するタミルナド州などは露骨に中央政府に逆らう。

酒が典型例になる。インドで酒が飲めるのは限られた州で、国際都市だけだろう。

くわえてヒンズー vs イスラムの根深い対立、文化状況はといえ、お酒が飲めるところはニューデリー、ムンバイ、バンガロール、そしてゴアくらい。外国人にはリカーライセンスが供与されるが、この手続きには一時間ほどかかる。ホテルの滞在証明、パスポートなどが必要である。

ムンバイを中心にボリウッド(ハリウッドの対抗)と呼ばれる映画産業があるが、地方へいくと映画はその州の言葉に吹き替えられる。主要言語が16以上。共通語は英語となるが、インテリ、ビジネスマン以外、英語は通じない。

そのうえインド社会には構造的な矛盾が多多ある。

第一はヒンズー教の戒律があって、カースト制が最大障害である。だからヒンズー教徒のキリスト教、あるいはイスラムへの改宗が増加している。

第二には富と貧困と最貧の問題で、金持ちは御殿のようなきらびやかな住居、広い庭園に住むが、スラムへ行くと、吐き気を催すような臭い、トイレも水道もない。悪臭ただよう閉鎖的な空間に夥しい人々が暮らしている。

第三にインドは民主主義国家だが、政党間の政争にも増して、宗教対立の根深さ(シーク教もイスラムも)がある。


 ▲それでも日本企業は健闘している

このインドへ進出した日本企業は1072社。筆頭はスズキである。

重要な事実はインドが親日国家であること、そのうえ日本は旧宗主国の英国を抜いて、最大のインド援助国だ。
 
日本人は大東亜戦争におけるインド独立支援をあげるほかに、お釈迦様の生誕地という近親観がある。しかし正確には言えば、生誕地はネパールのルンビニ、インドは布教と入滅の土地である。

日本人はデリー、ムンバイ、チェンナイで1万人が駐在しており、ジャパンタウンはないけれども、ニューデリーに行けば、居酒屋、寿司屋もあり、いまでは日本料理の食材店もある。

さてコロナ災禍でインドは都市封鎖を行い、それも全土にわたって、三回延長されている。3月25日から全都市の封鎖が発動されたが、感染の拡大はスラムの人口密集地帯だった。狭い住宅、トイレ、水道なし、医者にかかれない赤貧層が最悪の被害者となった。

モディ政権は財政出動を3回行った。

しかし貧困国ゆえに限界がある。3月26日に邦貨換算で2・5兆円の経済対策を発表し、翌日 2・5兆円程度の量的緩和を行い、4月12日には20兆円の追加経済対策を発表した。

インドの夢は経済大国となって、地域のヘゲモニーを掌握することだ。

いずれ「MADE IN INDIA」という戦略が樹立されるだろう。けれども労働力は豊富だが外国企業の進出が鈍く、ハイテク産業は都市部に集中していて、軍需産業梃子入れに偏重が見られる。インド軍は136万人。核保有国である。 

こうみてくるとインド経済のネックが顕在化する。

あまつさえ企業活動となると、タタ、リライアンズ財閥の寡占状態があり、宗教的理由で効率労働ができない。まだインド人の性格は約束を守らない。土地の貸借に難儀があることなどが加わる。


 ▲G7にはインドも招待席へ

 しかしインドは地政学的に重要なのである。

トランプは中国封じ込めのためにも、インド支援を明確化し、日米豪「インド太平洋」戦略の要として海軍の演習に力をいれた。

5月30日、フロリダ州の宇宙衛星打ち上げ成功を祝した帰路に大統領専用機でトランプは「G7の6月開催を9月に延期し、このG7にロシア、豪にまじえてインドを呼ぶ」と語った。

トランプ大統領はインドの地政学的重要性を認識しているのである。

南シナ海を我がもの顔で軍事支配する中国は、その魔手をマラッカ海峡を越えて、カンボジアのシアヌークビル港、ミャンマーのチャオピュー港、バングラのチッタゴン港の浚渫を近代化工事を請け負い、さらにスリランカのハンバントタ港を事実上、中国の海軍基地とした。

ついでインドの南西に位置するモルディブの無人島開発を持ちかけ、パキスタンのグアダール港からホルムズ海峡を扼し、アフリカの紅海ルーとの拠点であるジブチには、正式な中国人民解放軍の軍事基地を置いた。

見方によってインドを見事に取り囲み、いずれ海上封鎖が可能な軍事的能力を保有することになるだろう。

このようにしてインドの周囲は中国の「海のシルクロート」となっており、海軍戦略も周辺国を中国が軍港化したため、インド最大の脅威となっている。

そこでトランプは2月に訪印したが、武器購入16億ドル以外に目立った成果はなかった。

国内政治を見渡すと、ガンジー vs チャンドラ・ボーズという政治思想の対立が存続している。

ネルー率いた国民会議派は依然根強い。モディ(人民党)はヒンズー原理主義であり、イスラム敵視にかわりはない。こうした環境の変化があり、複雑な人種構成、社会構造のインドが、ふたたび勢いを取り戻すことが期待されている。

      
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜90年代から拡大してきた国の借金は、公共事業が原因ではない
社会保障関係費は公共事業費の六倍に膨らんで国の針路を誤らせた

  ♪
藤井聡『令和版 公共事業が日本を救う』(育鵬社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

副題に「コロナ禍を乗り越えるために」とあって、新型コロナとの戦いとは、大胆な投資、公共事業の拡大が必要であり、そうすることで、日本人の生命と財産を守ることが出来ると政策提言が大胆に展開される。

 
ベストセラーとなった藤井教授の『令和日本・再生計画: 前内閣官房参与の救国の提言』
(小学館新書)と内容に似たところもあるが、デフレ時代だからこそ、もっともっと大規模で大胆な公共事業が必要だと唱える。

こうした意見は徐々に国民の間に理解が拡がっている。

本書はまず、『公共事業は無駄使い、カネのばらまきを辞めろ』と主張する日本経済新聞や軽薄ヒョウロンカの典型=池上彰の批判から始まる。

日経新聞は公共事業無駄使い論の元凶である。しかも日経は、中国礼賛、イケイケどんどん方式で中国投資を煽った元凶でもある。日本経済を歪なものにしてしまったメディアだ。

藤井教授は東日本大震災の前から災害に備えるための基礎土木工事を提唱されてきたが、巨大地震はおきてしまった。

八ン場ダム中断を公約としてきたアホの政党が棚ぼたに政権を担ったが、昨秋の台風で利根川の氾濫を予防して、立派にダムの役割を果たした。

つぎに備えるべきは老朽化した橋が落ち、トンネルが崩落する危機が迫っているため、早急な補修補強ならびに新築工事が必要であり、道路の拡充も急がれると説く。

藤井教授によれば落ちかけの橋が700,崩壊寸前のトンネルが100.すぐに補強工事をしなければならない状態にあるという(115p)。しかし日本政府は何もしない

公共事業予算は、みすぼらしいほどに削減された。往時の半額に落ち込み、同時並行的に日本に未曽有の不況が到来したが、頓珍漢な対応しか出来ていない。
 なぜこんなことになったのか。

よくよく原因を探求すると、公共事業ばらまき論という虚論にたどり着く。これはデマだと藤井教授は断言して憚らない。

つぎにプライマリーバランスとかの虚論である。財務省の作為的キャンペーンがじわり効いているのである。だからMMT理論など見向きもされず、国債の新規発行は潰され、日本経済は20年以上も敗戦状態なのに、政府・日銀・財務省はあべこべの施策に熱中してきた。

典型が社会保障医療費の大膨張、公共事業の削減だったのだ。

1994年に10兆円あった公共事業費は2019年に5兆円となった。

対照的に社会保障関連費は1994年に13兆円から2019年には32兆円強に膨れあがり、意識のない植物人間が病院で何年も生命維持装置によって、死んでいるのに生きている。

すなわち『90年代から拡大してきた国の借金は、じつは公共事業が原因なのではなく社会保障関係費こそが原因なのだ』。

そのうえ「公共事業費は社会保障関係費の六分の一ていどにまで落ち込んでいる」

本書によって、日本経済の病的な実態が、鮮明に浮かびあがった。 

      〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
読者の声 どくしゃのこえ READERS‘  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   ♪
(読者の声1)貴誌前号読書の声に『PB生、千葉』の投稿があり、まさに日頃僕が考えていることから誠にご意見に敬意を払わせていただきます。

その中で付録としてにマザーテレサについての言及があり、<キリスト教を世に問う>(展転社)読んでいただければ光栄です。現代のカトリックの拠り所として、
いまだに聖人になるために奇跡を2回実践せねばならないとの奇妙な<内部規約>からテレサの奇跡を捏造した。滑稽なのは近代医学の抗生物質により治癒したインド
収容所のケースを奇跡として認定したのに対して担当だった医者が激怒したのに対してカトリックがいわば脅迫紛いの嫌がらせをこの医者を黙らせたとの話もあります。

そこまでした20世紀の人物を聖人せねばならなかった滅びゆくバチカンの宿命でしょうが、あのポーランド出身のヨハネ・パウロ二世の<カトリック商品としてのマザーテレサへのご執心>を引き継いだフランシスコ法王により2016年9月に列聖されたのです。

カトリック挽回のエースとして華々しく宣伝されたこのテレサ、何か胡散臭いものが漂い、僕は最初から彼女の<ジキルとハイド性>を暴いてやろうと文献その他調べた結果がこの本に出ております。詳しくは書きませんが要するに彼女の偽善はまさに20世紀最悪といえるもので、

(1)アルバニアの悪名高いホッジャその他世界の
悪名高い独裁者がその<高潔性>の宣伝にテレサを利用する価値での両者の利害の一致

(2)世界の金融詐欺師も同様免罪符としてテレサを利用しその報酬として莫大な寄付と現物供与(アメリカ内でのプライヴェート・ジェットを使い放題)を行った。

(3)インドの収容所での美談など嘘800
死ぬ前にシスターを使って改宗を迫り寄付を迫ったもので、実際PB生にもある通り<支援物資の医薬品は使われず、患者は路上で死ぬかベッドで死ぬかの違いしかない>もので医療品やコストをケチりまくった。

自分に厳しく質素倹約など大ウソであり、彼女自身の最終治療はニューヨークにある最高の先端治療病院でした。彼女の謳い文句は<堕胎反対>それのみを場違いでも喋るのが彼女の演説の全てだったそうです。

とにかく彼女の本質は俗人俗物、大好きなのは権力者と詐欺師の犯罪者で金を貢ぐもの。一体巨額な彼女への寄付金の行方は何処なのか、牡鹿婆さん資質の彼女がバチカン銀行に入金するわけもなく、この巨額の財産が何処に眠っているのかは大変興味があるところでいつか真相は暴かれるでしょう。(奥山篤信)


  ♪
(読者の声2)6月より活動を再開します。6月25日(木) 増元照明氏が講演

新型コロナ・ウィルス禍(中国武漢肺炎ウィルス)の影響により、4月と5月に開催予定であった公開講座をやむなく中止(延期)せざるを得ませんでしたが。ようやく5月で全国に発出されていた緊急事態宣言が解除されました。

これに伴い三島由紀夫研究会も6月から正常の活動体制に復帰することといたします。

その第一弾として6月25日(木)に北朝鮮による拉致被害者家族連絡会の前事務局長をされていた増元照明氏による拉致問題特別講演会を開催します。御期待ください。

              記

日時  6月25日(木)18時開演 (17時半開場)
会場  アルカディア市ヶ谷(私学会館)
講師  増元照明氏(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会前事務局長)

演題 「拉致被害者の救出なくして日本は国家といえるのか」
会費  会員・学生1千円(一般2千円)

今回は従来より開会を30分早めて18時開演とします。終了は19時半目途です。

今回はいつもよりも広い会場を用意し、参加者が十分な間隔をとって座れるように配慮しますが、参加者の方は是非マスクを着用されますことお願いいたします。
    (三島由紀夫研究会事務局)

この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。