2020年07月03日

◆支持者の利益損ねた立民

阿比留 瑠比

  
なるほど確かにそうだと膝を打った。検察官の定年を65歳に引き上げる検察庁法改正案の今国会での成立が見送られたことに対して、自民党の世耕弘成参院幹事長は19日の記者会見でこう述べた。

「逆に立ち止まって考え直すいい時間ができた。これだけ(新型コロナウイルス感染拡大によって)経済が苦しく、雇用環境が厳しくなっている中で、国家公務員や地方公務員だけが給料も下がらないまま5年も定年延長されていいのか」

検察庁法改正案は、国家公務員法改正案と一体化した「束ね法案」である。野党はこの2つの切り離しや、検察幹部の定年特例延長部分の廃止を主張したが、これらは混然一体となっており、「いったん撤回して組み直さないと無理」(法務省幹部)なのが実態だった。

地方公務員定年も

そして国家公務員法改正案が成立しなければ、国に準拠して定める地方公務員の定年引上げも据え置かれる。政府・与党にとっては痛くもかゆくもない話だが、公務員労組である自治労を支持基盤とする立憲民主党にとっては、支持者から得られたはずの利益を損ねる結果となる。

 世耕氏は次のように指摘したが、うなずける。

「そもそも国家公務員、地方公務員の定年延長という話は、人手不足の経済環境、雇用環境を前提に議論されてきた。今その前提状況が大きく変わった」

改正案は継続審議扱いとなり、ふつうは秋の臨時国会で再審議されることになるが、世耕氏はこうも語った。

「臨時国会で議論といわれているが、秋には雇用環境が厳しくなってくる。そういった時期に公務員の定年延長という議論が本当に成り立つかどうか」

安倍晋三首相も、これ以上、法務省・検察側の求めに応じて提出した改正案によって痛くもない腹を探られ続けるのはうんざりだろう。首相は以前から、一連の騒動に関して「大体、検察の人事をこっちで決めているわけではないし、はなから私は熱心ではない」とあきれており、安倍政権下ではもう改正案は日の目を見ないとの観測もある。

自治労に「言い訳」

立憲民主党は、改正案の成立見送りについて「日本の民主主義の大きな前進」(18日、枝野幸男代表)などと勝ち誇っていたが、実は政府・与党が成立の意欲を失っていくことに慌てていたのではないか。枝野氏は同日のツイッターでこんなことも訴えていた。

「私たちが異議を唱えていたのは、幹部検察官の恣意的(しいてき)な職務延長。一般の公務員などの、一律の定年年齢引き上げは与野党一致して賛成です」

大切な自治労に対し、自分たちの反対による失策ではないと言い訳しているように聞こえる。

また、産経新聞が改正案審議について「もうやらなくていい」と首相が漏らしていると報じた20日には、立民の安住淳国対委員長が記者団に対し、八つ当たり気味に世耕氏を批判した。

「コロナのときに、こんなに衆院でエネルギを費やして国民世論を巻き込んでやっているのに、今になってこの改正案で65歳の定年がおかしいとか、自民党の責任者がそんなことを言い出したら、与党をやめた方がいい」

何を言っているのかよく分からない。コロナ禍で国民が大変な思いをしているときに、コロナ対応で忙しい首相や閣僚を拘束し消耗させ、「火事場泥棒」と罵倒してまで改正案成立の足を引っ張った党はさてどこっだったろうか。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)

産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】 令和弐年5月21日
松本市 久保田 康文さん採録 
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