2020年08月11日

◆レバノン爆発事故と生産諸力

三橋貴明


最近、話題にすることが多いレバノンで、
信じがたい規模の爆発事故(恐らく)が起き、
大勢の方が命や財産を失う悲劇的な事態になっています。

レバノンの爆発事故を受け、
三橋が思い出したのはフリードリヒ・リストの
「生産諸力」という言葉です。

フリードリッヒ・リスト(1789〜1846)は、
フランス革命が勃発した年に
南ドイツのロートリンゲンで生まれました。

テュービンゲン大学教授の職を経て議員となり、
ドイツ統一の論陣を張るものの、
1825年にアメリカに追放されてしまいます。

同地で、リストはアメリカの保護主義に
理論的根拠を与える 『アメリカ経済学綱要』
(1827年)を執筆。

その後、アメリカ領事の資格でドイツに戻り、
1834年に成立したドイツ関税同盟で
指導的役割を果たしたものの、
主流派経済学者と対立し、
1841年ピストル自殺を遂げた人物です。

リストは、生産諸力の理論において、
「法律」「貨幣」「度量衡」「警察」
「司法制度」「輸送手段」などの「制度」が
生産性を向上させると説明しました。

生産性向上とは、供給能力の拡大そのものです。

レバノンは、食料ですら八割が輸入という、
供給能力が不足した国で、
最終的には財政破綻に追い込まれました(20年3月)。

参考:レバノンの貿易収支(百万ドル)

http://mtdata.jp/data_70.html#boueki

今回の爆発事故で判明したのは、
レバノンは単なる「投資不足」ではなく、
政府の機能が弱く、生産諸力が
半崩壊状態だったという事実です。

市街地から近く、経済の中心である港湾に、
約2750トンもの硝酸アンモニウムが半放置状態だった。

港湾当局も、公共事業・運輸省も、司法当局も、
税関当局も、誰も主導的に対応しようとはしなかった。

現在、各行政機関の間で責任の
押し付け合いが始まっているようですが、
そもそもレバノンは18もの宗派が
権力を分け合っており、政府全体としての
パワーが極端に弱体化した国でした。

政府内が対立だらけで、生産諸力が弱く、
当然、投資による生産性向上も望めず、
危険物質の管理責任すら曖昧というレバノンの
構造そのものが、3月の財政破綻や今回の爆発事故につながった。

宗教対立が激しく、1975年から
90年まで内戦状態にあったレバノンでは、
現実には「国民国家」が成立しえない。

結果、リストの言う生産諸力の強化も望めない。

レバノンの現実を知ると、我々日本国民にとって、
二千年の歴史を持つ「日本国」」が、
どれほど貴重な存在で、財産であるかが
改めて理解できるのです。
 
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