2020年09月10日

◆首相最大の功績は歴史観

櫻井よしこ


8月28日、辞任を表明した安倍晋三首相は13年前とは別人だった。事後への懸案への対策を打ち、余力を残した退き方は首相が難病に負けていないこと、以降も強い力を維持することを示していた。

 政界の動きは速く10日前の辞任表明が随分と前のことのように思える。その分、旧聞に属するかもしれないが、きちんと書いておきたい。

 7年8カ月、病を押して獅子奮迅の働きをした安倍首相の辞任表明会見における内閣記者会の記者たちの非礼ぶりは言語道断だった。メディアの役割は大きく、記者の資質が記事の質に反映され、世論を動かす。だから記者の資質を問うのは当然である。

 会見で、約8年にわたる安部首相の健闘をねぎらったのは中国新聞社の下久保聖司記者一人にとどまった。TPP11(環太平洋戦略的経済連携協定)や日欧EPA(経済連携協定)、中国に備える日米豪印のインド太平洋戦略など、以降の世界政治の軸となる協調の枠組みはおよそ全て安倍首相が主導した。そのことや日本の命運に即跳ね返る米中の攻防をただした記者はなんと一人もいなかった。日本は日本一国で完結するのではないぞ。

 中曽根康弘元首相は国家が最も恐れるべきことは国際社会での孤立だと語った。国際社会でどんな立場を確保するのか自体が国益だ。安倍首相の顕著な功績は国際社会における日本の立場をこれまでになく強化したことだ。その点に全く触れない官邸記者などあり得るのか。

 また、記者は記者である前に1人の人間である。去り行く宰相に感謝やいたわりの言葉ひとつかけられずに、社会の営みを取材し、人間の心の痛みや喜びを書けるのか。こんな彼らが日本国中枢の記者クラブに陣取り「モリ・カケ」や「サクラ」を報じた年月の深刻なる喪失を痛感する。

 だが、国民の目は節穴ではなかった。辞任表明直後の共同通信の調査では安倍首相の支持率は20ポイント以上跳ね上がった。続く朝日新聞の調査では安倍内閣評価が71%だった。朝日はさぞ仰天しただろう。

 首相が日本と日本国民のために精魂こめて努力したことを国民は識(し)っているのだ。だからこそ強調したい。安倍首相の7年8カ月に心より感謝する、と。十分な休養後、首相が内外の政治において重きをなす日が必ずまた来ると、私は考えている。

 安倍首相の功績の最たるものは歴史観の見直しだ。平成27年8月14日、戦後70年談話で安倍首相は語った。「私たちの子や孫、その先の世代の子供たちに、謝罪を続ける宿命を負わせてはなりません」

 歴史は、その当時の状況の中で考えるものだ。首相談話はこの常識を踏まえていた。日本全面否定の戦後の歴史観を打ち砕く健全な視点への転換点となった。

 米中のせめぎ合いが日々激化する今日、歴史観や国柄をどのように評価し、日本社会に伝わるどの価値観を守るのかという判断が大事になる。健全な歴史観を持てば、日本人は自らをより深く信頼し国際社会においてもっと勇気をふるって重要な役割を果たせると思う。

 中国の振る舞いに対して日本はもっとはっきりと自由主義、民主主義、国際法、人道、人権を軸とする国際秩序養護の旗を米国とともに立て、行動できるだろう。歴史観、人間社会はいかにあるべきかという価値観は、勁(つよ)い精神を支える柱である。日本人が日本人らしさを発揮する上で最も重要な要素が歴史観であろう。

 中国はいま、海洋権益、陸上支配、国際法、国際社会の価値観も含めて、世界を中国式の考えで作り直そうとしている。その脅威の前で日米同盟強化の手立てを急いだのが安部晋三首相だった。憲法改正が進まなかったのはまさに痛恨の極みだが、首相は憲法改正に替わる現実的施策を急いだ。

 防衛予算を削減から増加に転じ、情報ダダ漏れの穴を特定秘密保護法で埋めた。平和安全法制で国連憲章が認める集団的自衛権の限定的行使を可能にした。経済政策を安全保障の重要な一翼と位置づけた。省庁の縦割りを超えて国家安全保障局を設けた。

 それでも十分でないのが現実だ。5月29日、トランプ米大統領が打ち出した対中対抗措置は中国企業の財務の透明性に踏み込み、米国での上場廃止も可能にする厳しさだった。ポンペオ国務長官ら主要閣僚が相次いで、安全保障、経済、政治、外交など全分野にわたって講演したが、その徹底した中国非難は、米国と共に行動するかと世界に迫る踏み絵に等しかった。

 そうした中、9月1日の米国防総省の発表は米国の切迫感を示して余りある。中国海軍の軍艦・潜水艦は350隻となり、293隻の米海軍を抜いて世界最大規模となって、米中の海軍力が逆転したと認めたのだ。中国はまた地上配備の中距離ミサイルを1250発以上保有するが、米国はゼロだ。経済においてもあと10年で中国は国内総生産(GDP)で米国を抜く。

 日本が米国に頼り続けてよい状況でないのは明らかだ。昨年6月、トランプ氏は日米安全保障条約は不公平だとして「破棄」を口にしたと報じられた。破棄発言はすぐに否定されたが、トランプ氏はそれ以降も日米安保条約への不満を繰り返した。トランプ氏の警告を無視することは日本の国益を決定的に損ねることである。米国の強い不満を日本の自立に結びつける前向きの努力を倍加する必要がある

 安倍首相に続く新たな首相の役割は、米国の意図をこれまで以上に真剣に受け止めることだ。米中の対立がいかに深刻かを鋭く認識し、日本が打つべき手を急ぐことだ。自民党の二階俊博幹事長や公明党も、祖国日本を強くし、それによって国際社会により良く貢献する道としての憲法改正に反対する理由はないはずだ。米中のはざまにあって、日本が生き残る道は、一に自力強化、二に日米同盟強化であることを認識したい。

【産経ニュース】【美しき勁き国へ】桜井よしこ 
           令和2年9月7日

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松本市 久保田 康文 
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