2020年10月25日

◆元首相で独特 森氏の存在感

阿比留 瑠比


 首相経験者の退任後の在り方について、考えさせられることが少なくない。近隣諸国を飛び回っては相手国に迎合し、せっせと日本との不和の種をまく人もいる。同じ政党の後輩である現職首相の足を引っ張る発言を繰り返し、晩節を汚す人もいる。また、自己正当化と当選にしか関心のないように見える人もいる・・・。

 そんな残念な現状の中で、東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長を務め、7月に亡くなった台湾の李登輝元総統の「弔問に訪れた最初の外国要人」(台湾での報道)となった森喜朗元首相は、いい意味で存在感を示している



  赤裸々な総裁選裏話


 その森氏のインタビュー記事が、発売中の月刊誌「正論」「WiLL」「Hanada」の3誌(11月号)に掲載されており、これが抜群に面白い。先の自民党総裁選の裏話、政治家の人物月旦、マスコミへの苦言などが遠慮会釈なく赤裸々に語られているので、その一部を紹介したい。

 総裁選で菅義偉(すがよしひで)首相に敗れた岸田文雄前政調会長に対しては、「正論」で「もっと死に物狂いだったらね・・・」と煮え切らない態度に苦言を呈しつつも、こんな評価も与えている。

 「本当に真面目(まじめ)で、従来の自民党の政治家ではないイメージを持った人」

 一方で、同じく敗れた石破茂元幹事長については厳しく突き放している。

 「難しいことがあるとすぐ逃げるし、気にいらないことがあるとさっさと辞める」(「WiLL」)

 「あの人だけにはやらせたくないと、自民党内で、特に苦労をともにした人たちはみんな思っていたんじゃないですか」(「Hanada」)

 総裁選での二階俊博幹事長に関しては「正論」で「上手に動いたね」と述べつつ、「今回の策を考えたのは森山裕国対委員長だと思いますよ。彼は知恵者ですから」と指摘する。

 二階氏が菅首相を推した背景についても歯に衣(きぬ)着せずにこう語る。

 「二階さんにすれば『幹事長ポストを間違いなく保証してくれる人』。それだけです」
 

  記者にも叱責


 森氏はもともと座談の名手として知られる。筆者も過去のインタビューで、森氏の身振り手振りを交えた田中真紀子元外相のモノマネを見たことがあるが、その場に本物の田中氏がいるような迫真の演技だった。それも森氏の観察眼のなせる技だったのだろう。

 マスコミに関しても辛辣(しんらつ)である。朝日新聞の9月の世論調査で、安倍晋三政権の実績を「評価する」との回答が71%にも上ったことに関してはこう述べる。

 「朝日は初めて本当のことを書いたんじゃないかな(笑)。安倍さんに対する長い間のご無礼非礼をお詫びしなきゃ」(「Hanada」)

 安倍首相(当時)の8月28日の辞任表明記者会見で、質問した記者のうち1人しか「お疲れさまでした」とねぎらいの言葉をかけず安倍氏退場の際に起立しないなど、記者のマナーに対してはこう叱責する。

 「記者としてのマナーというより、日本人としての常識に欠けている。好きか嫌いかにかかわらず、相手に敬意を払うのが日本人というものです。(中略)最後くらい『自分が読者を代表して総理と話す』という意識を持ってほしかった」(「WiLL」)

 味わい深いと同時に耳が痛い言葉である。確かに、そんな常識も他者への敬意もない記者に勝手に国民の代表面をされては、国民はさぞ迷惑なことだろう。


産経ニュース【阿比留瑠比の極言御免】 令和2年10月22日
(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)


松本市 久保田 康文さん採録 

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