2020年10月27日

◆日本学術会議にGHQの影

古森 義久


 日本学術会議をめぐる論議に関心を向けていたら、日本国憲法を起草したチャールズ・ケーディス氏の言葉を思い出した。おかしな連想かもしれないが、両者が奇妙に重なり合うのだ。

 ケーディス氏といえば、日本を占領した米軍主体の連合国軍総司令部(GHQ)幹部の米陸軍大佐であり、日本国憲法の草案作成の実務責任者となった法律家だった。私は1980年代、ニューヨークで同氏に長時間インタビューして日本国憲法作りの実情を詳しく聞いた。

 「最大の目的は日本を永久に非武装にしておくことでした」

 ケーディス氏は日本国憲法の究極の目的についての私の問いに、ためらわずに答えた。日本をもう二度と軍事的脅威にさせないために、たとえ自国防衛という独立国家の基本的権利を抑えてでも非武装を押し付けることがGHQの意図だというのだった。

 日本学術会議はこのGHQの占領下で設置された。GHQ作成の憲法が施行された2年後の1949(昭和24年)年だった。そしてその翌年、軍事関連の科学研究には一切、かかわらないという声明を出したのだ。ケーディス氏が明かしたGHQの当時の非武装の意向とぴたりと合致している。

 当時の占領軍は、独立後の日本を国家らしくない国、本来の伝統や文化を弱める国にすることを明らかに狙っていた。なにしろ日本語の表記をすべてローマ字にするという案まで真剣に考えられたほどなのだ。

 だからそんな占領下で日本学術会議が日本の元号の廃止を公式に決議したことも偶然ではないだろう。昭和、平成、令和というような年号をやめろという決議だった。

 同会議が軍事研究否定の声明発表直後の1950年5月に首相あてに「天皇統治を端的にあらわした元号は民主国家にふさわしくない」としてその廃止を申し入れたことは、今はあまり広く知られていないようだ。

 当時の日本学術会議は亀山直人会長の名で時の首相吉田茂らに「元号廃止、西暦採用についての申し入れ」を同会議の決議として送ったのである。その決議には以下の記述があった。

 「法律上からみても元号を維持することは理由がない。現在の天皇がなくなれば、『昭和』の元号は自然に消滅し、その後はいかなる元号もなくなるだろう」

 「新憲法の下に天皇主権から人民主権にかわり、日本が新しく民主国家として発足した現在では元号の維持は意味がなく、民主国家の観念にもふさわしくない」

 「国民」ではなくあえて「人民」という用語を使う日本学術会議の過激な政治性は過去の話としては済まされない。同じ時期に決めた軍事研究否定の声明はその後も更新され、現在も継承されているのだ。

 今の日本学術会議のあり方の論議ではこの組織の特殊な出自や政治活動歴の検証も欠かせないだろう。

 しかし同会議が当初、追従した米国当局がその後まもなく日本の軍事や防衛への政策をがらりと変えてしまったことは歴史の皮肉だといえようか。

(産経新聞ワシントン駐在客員特派員)

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松本市 久保田 康文 
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産経ニュース【あめりかノート 古森義久】 令和2年(2020)10月25日

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