2021年01月25日

◆元制服組トップが見たバイデン氏

阿比留 瑠比


何はともあれ米大統領に就任したバイデン氏に関しては、これまで当欄
で何度か言動の危うさや、不安材料を指摘してきた。例えば次のようなこ
とである。

 バイデン氏はオバマ政権の副大統領時代に、独断で韓国の朴槿恵(パクク
ネ)大統領に「安倍晋三首相は靖国神社に参拝しないと思う」と伝え、安倍
氏が参拝すると駐日米大使館に「失望」を表明させた。その後は日韓の
「調停委員の役割」を自任するなど、誤解に基づく善意を押し付けかねない。

 選挙演説で「日本国憲法は私たちが書いた」と発言したことはどうか。
米国が日本の憲法を起草したのは事実だが、現職の副大統領が他国の憲法
を米国製だと公の場で強調するのは、いささか無神経だろう。



 「誠実な男」だが

 バイデン氏自身は、国際政治の知識と経験では誰にも負けないと主張す
るが、それも怪しい。オバマ政権下でともに働いたゲーツ元国防長官は回
顧録で、バイデン氏のことを「誠実な男」と記しつつも、こんな評価を下
している。

 「彼は過去40年間、ほとんど全ての重要な外交施策と安全保障に関する
判断で過ちを犯してきた」

 特にこれから注視すべきは、新たな専制国家である中国に、バイデン政
権がどう対峙(たいじ)していくかだろう。米国が妥協的になれば、中国に
よる国際秩序への挑戦はさらにエスカレートすることになり、日本も取り
込まれていきかねない。

 ただ、バイデン氏の外交・安全保障面での判断力を疑問視する声は少な
くないものの、一定の信を置けるとの見方もある。



 「会談こそ対中発信」

 2015年7月に、自衛隊のトップとして、米ワシントンのホワイトハ
ウスで会談した河野克俊前統合幕僚長に21日、改めて当時のエピソードを
聞いた。

 このときの米軍のトップであるデンプシー統合参謀本部議長の招待で訪
米していた河野氏は、ノースカロライナの海兵隊基地から、米軍用機でワ
シントンに向かうはずだった。ところが、その米機が故障して予備機でワ
シントンから呼び寄せることになった。

 「相手は忙しい副大統領だから、もうキャンセルだろうと思ったら、
待ってオイルから来いといわれた」

 その後、ワシントンに近いアンドルーズ空軍基地に着いたが、今度はオ
バマ大統領の地方視察の出発時刻と重なり、機内から出られなくなった。

 結局、当初の予定より約2時間遅れての会談となった。河野氏は握手す
るだけの表敬に終わるかと思ったが、ソファーではなくテーブルで対面す
る正規の会談となる。当時、バイデン氏は長男を脳腫瘍で亡くした直後
だったが、そんな素振りは見せなかった。

 会談でバイデン氏は日米同盟は絶対重要だと語った。特に河野氏の印象
に残ったのは、こんな趣旨の言葉だった。

 「米国の副大統領である私が、日本の制服トップであるあなたに会うこ
とが、中国に対する強いメッセージになる」

 河野氏は「バイデン氏は調整型の政治家でトランプ前大統領のような
トップダウン型ではないから、米民主党左派など押し切れるか安心できな
い部分がある」

 安倍氏はトランプ氏との米ニューヨーク市・トランプタワーでの初会談
で、中国の脅威を徹底的に説き納得させた。今度は、菅義偉首相にその役
割を果たしてもらいたい。

(産経新聞論説委員兼政治部編集委員)


松本市 久保田 康文さん採録 

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