2021年01月28日

◆【変見自在】日本人は偉かった

高山 正之
  

 先日、物故した半藤一利は坂口安吾に「歴史書には嘘がある」と言われた。

 では何が真実かを求めて「歴史探偵」になったと某紙の評伝にあった。

 ただ著作を見ると彼は「探偵は虫眼鏡を持つ」イメージに拘り過ぎたき
らいがある。それと東京大空襲で「土砂降りの焼夷弾」を浴びた原体験を
持つ。

 それで「無謀な戦争を起こしたのは誰か」を虫眼鏡で追うのに一生懸命
で、非戦闘員を虐殺する米国の国際法違反は見ようともしなかった。

 例えば日本をぶち切らせたハル・ノートだ。満洲からも支那、仏印から
も出ていけとポツダム宣言と同じ要求をしている。

 それを歴史探偵は「日本が悪いから当然」と言う。

 仏印も「日本軍が横暴に押し入った」からとするが、実際は仏ドンダン
要塞が約束を破って攻撃してきた。応戦は当然だった。

 そして白人が泣いて命乞いするのを見たベトナム人が決起してハノイを
攻めて全滅した。ベトナムが独立戦争の嚆矢と見る事件だが、それには関
心を持たない。

 満洲も然り。「スティムソンが支那領という満洲で勝手した日本が悪い」

 でも満洲は清朝を建てた満洲人の故地で、長城の中の支那人はずっと満
洲人の植民地支配を受けていた。

 清朝が倒れたら「その地域は支那のもの」というのは「インドが独立し
て英国もカナダもオレのもの」というようなものだ。

 スティムソンはただ日本を潰したかった。それで蒋介石に後ろから日本
を攻めろ。褒美に清の版図をくれてやると嗾(けしか)けた。

 その空約束を口実に習近平はウイグル人やチベット人の民族浄化を今
やっている。そういう歴史の大きな流れは虫眼鏡では見えなかったのだろう。

 ハル・ノートは日本を戦争に追い込む最後の仕掛けだが、当時の英米の
陣立ても虫眼鏡は見落としている。

 例えば日本が攻めるはずのフィリピンには怪物爆撃機B17が配備さ
れ、上陸する日本軍を叩く戦車隊も陸揚げが終わっていた。

 シンガポールには英の戦艦プリンス・オブ・ウエールズも入っていた。

 そして真珠湾攻撃前夜には湾内にいた空母群が夜陰に紛れて消え去った。

 こう並べても半藤史観は「英米は良い国で日本が悪い」で変わらない。

 因みに英米の予定では真珠湾の後「B17が東京を焼き払い、英米艦隊
が聯合艦隊を沈めて日本は3カ月で抹殺される」(ノックス海軍長官)は
ずだった。

 そうならなかったのは一つに半藤が「偉大な軍人」と褒めたマッカー
サーが実は臆病ゆえに指揮を放り出して逃げ出したからだ。

 二つ目は日本軍が二等兵に至るまでこの戦いの意味を理解し、緒戦を完
璧に勝ち抜いたことにある。

 アジアの植民地から白人を追い出し、例え蘭領東印度では民に統一言語
と教育を与え、自分の国を守る心根を植え付けた。

 その代償は大きく米国は広島長崎以下六十余州を焼き尽くした。

 そんな被害を招き入れた悪い日本人は誰かだけを半藤は追及した。

 しかし日本嫌いの英歴史家アーノルド・トインビーでさえ「日本は第二
次大戦で自国を犠牲にしてアジアの民に大きな恵みを与えた」と評価する。

 「日本人は、無敵の神と思われた西洋人を彼らの目の前でひれ伏させた」

 「日本人は白人のアジア侵略を止めただけでなく植民地主義と人種差別
にも終止符を打った」

 米スタンフォード大名誉教授のピーター・ドウスも「日本が白人との戦
争でもたらした成果は市民を解放したフランス革命より偉大な人類史上の
大革命だった」という。

 『人種戦争』の著者ジェラルド・ホーンは「日本人が称賛されるのは白
人の植民地搾取に自らの血を流してまで戦ったからだ」とし、皮相な「無
謀な戦争」という見方はとっていない。

 虫眼鏡では見えない大きなスケールで日本人は生きていた。それが分か
らない人が悠仁親王にご進講していたことに驚く。



出典:『週刊新潮』 令和3年(2021)1月28日号

    【変見自在】日本人は偉かった

著者:高山 正之



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松本市 久保田 康文 

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