コロナ禍に抗してというか、毎日東京へ出勤している。最近増えたことが
ある。家を出がけの「忘れ物」だ。JR稲毛駅へ向かい100mほど行ったと
ころでふと気づく。定期券・ハンカチ・財布・(雨予想の)折りたたみ
傘・・・。困ったものだ。単純な物忘れ症から認知症へのシルバーロード
(*)一直線となりそうである。(*)って英語にあり?
55年前に大学を卒業し企業へ入社したとき、「新人サラリーマン必携」と
いう帯封がある新書版のハウツウ本を先輩がくれた。著者は著名な経営学
の教授であった。内容は大して重要なものではなく、部下の大学院生や編
集者らが代筆したのではないかと思われた。
だが、その中に奇妙な台詞(!)があった。そして、「紙に書き壁に貼っ
ておくべし」と。「ハトガマメクテパ(!)」こりゃ、なんだ。「『鳩が
豆食ってパ(!)』と覚えなさい」とあった。
生徒や学生時代に自堕落な生活態度に慣れきった新人サラリーマンは、ま
ず、家を出るときに忘れないようにチェックすべき必須事項として、その
先頭の文字を連ねたものである。
(ハ)ハンカチ。(ト)トケイ(腕時計)。(ガ)ガマグチ(財布)。
(マ)マンネンヒツ(万年筆。今はボールペン・シャープペンシルか)。
(メ)メイシ(名刺)。(ク)クシ(櫛)。(テ)テチョウ(手帳・スケ
ジュール帳)。(パ)パス(交通機関の定期券)。
どうしても必要なものは、どれか。(ガ)ガマグチ(財布)・(テ)テ
チョウ(手帳・スケジュール帳)・(パ)パス(交通機関の定期券)だろう。
金(財布・現金・銀行カード等)がなければ困る。手帳には仕事のスケ
ジュールが書いてあるので必携であった。自宅に電話して「会議の予定が
ある?」と妻に確認したことがある。
定期券については、私は入社10数年工場勤務であり、独身寮や社宅住まい
だったので、会社の通勤バスや自家用車通勤でありパス(定期券)は持っ
たことがなかった。東京転勤後、持ちなれない定期券を忘れ、徒歩10分余
でも自宅へ取りに帰ると遅刻するので、やむなく実費を払い、損したこと
がある。
ところで、当時の「(旧)ハトガマメクテパ(!)」に加え、時代の変化
とともに「(新ないし追加の)鳩が豆食って・・」が出てきた。その必要
不可欠度は別にして、五十音順に記す。
(イ)インカン(個人の印鑑)。(カ)カギ(鍵)。なぜ(旧)になかっ
たのか。忘れて困ったことがある。(ク)靴ベラ。(ケ)ケイタイ(携帯
電話)。(テ)ティッシュ(鼻紙)(ネ)ネクタイ。(バ)バッジ(法人
章・SDGs章など)。
(マ)マスク。(ミ)身分証明書(カード)。これがないと出退勤ができ
ない。(メ)メガネ。遠近両用の眼鏡であるが、自宅ではかけていなくて
もあまり不自由しないので、忘れやすい。また、冬になると(テ)テブク
ロ(手袋)・(マ)マフラーが加わる。
頭の文字をつなげれば、「イカクケテ・ネバマミメ」である。これらの順
番を入れ替えて、意味がある熟語や文にしようと思ったが、やめた。(興
味がある人があればよろしくお願いします)。
(新ないし追加)で最も重要なものが2つある。「桂馬(ケイマ」であ
る。一つは(ケ)ケイタイ(携帯電話)である。仕事の電話連絡はほぼ携
帯で行っており、また、自宅と勤務先のメールを携帯で送受信もできるよ
うに設定してあるので、携帯を忘れたら仕事に大いに支障をきたす。その
イヤホンも電車内では必需品である。
もう一つは(マ)マスクである。昨年からのコロナ禍で絶対的に必要不可
欠品となった。毎日の電車通勤である。忘れてはならない。私は自宅では
マスクをはめていないので、出がけについつい忘れてしまう。だから、鞄
には常時3個入れている。ワクチンはすでに2回済ませ3週間以上を経てい
るけれども、マスクはなお必要である。
ハウツウ本には「『ハトガマメクテパ(!)は紙に書き壁に貼っておくべ
し」とあったが、無視してきた。しかし、あれから55年、だんだん必要性
が増してきたので、2021年、喜寿に達するのを記念して、色紙に楷書で書
き額縁に入れ書斎の壁に貼っておくことにしよう。
「鳩が豆食ってパ!そして桂馬!」と。
でも、早朝、その額縁を見て確認するのを忘れてしまったらどうなるの
か。う〜〜ん、そんなら、玄関のドアの内側に「額縁を見たか?」と貼
り、最終確認することにするかなあ(笑)。
いや、根本的にはもっと大事であり懸念されることがある。「鳩が豆食っ
てパ!そして桂馬!」の個々の内容を思い出せなくなったらどうしようか
ということだ(笑)。(2021.6.27千葉市在住)