2021年07月12日

◆背景に左翼勢力、横行する実子誘拐

櫻井よしこ


『週刊新潮』 2021年7月8日号
日本ルネッサンス 第957回

これからお伝えするのは不条理な離婚のあり様と気の毒な父親の物語であ
る。この悲劇を抉り出したのが、ノンフィクション『実子誘拐ビジネスの
闇』(池田良子 飛鳥新社)である。読めば、左翼陣営が如何に巧妙に日
本社会に浸透し、家族を崩壊に導きつつあるかが見てとれる。

卒田譲司氏(仮名)は2006年に結婚し翌年長女が誕生した。しかし夫婦は
不仲となり、10年5月、卒田氏が仕事で不在のとき、妻は長女を連れて家
を出た。
 
事情もわからない中での突然のことだった。卒田氏は娘に会わせてほしい
と懇願し、同年7月、2歳半の娘に会えた。娘は「パパ、手を握ってて」と
言って強い力で必死に卒田氏の手をつかんだが、やがて迎えの車に押し込
まれた。泣き叫ぶ娘に卒田氏は「必ず迎えに行くからね」「もう少し待っ
ててね」と約束した。

その後、同年9月末にもう一度会えたが、娘との面会はそれが最後となっ
た。11年近くが過ぎ、娘は中学生になっているはずだ。

親権を巡る裁判で元妻は、卒田氏はDV夫で子供を連れて逃げたのはやむ
を得なかったと主張し卒田氏は全く身に覚えがないと反論した。千葉家
裁松戸支部は、1、卒田氏のDVを認定しなかった、2、妻が娘を囲い込ん
で育てることを認めなかった、3、両親による娘の共同養育を認めた。

これは離婚後も両親双方による養育を認める点において、日本で初めての
画期的判決だった。しかし東京高裁に移ったとき、大ドンデン返しが起き
た。ごく普通の夫婦の離婚話なのに、元妻擁護に31人もの左翼系弁護団が
結成されたのだ。共同養育を認めた松戸判決に彼らが如何に動揺したかを
物語るものだ。結論をいえば、東京高裁も卒田氏のDVは認めなかった
が、親権を元妻に与えてしまった。卒田氏が娘に会えない状態は今も続い
ている。

愛し合って結婚して、子供まで授かった夫婦が離婚に至るとき、片親が子
供を連れて家を出るという話はよく聞く。この場合、子供と共に家を出て
行くのは、勿論父親の場合もあるが、圧倒的に母親が多い。

子供の海外への連れ去りは、ハーグ条約で禁止されており、連れ去り自
体、欧米諸国では刑事罰に問われる。両親は離婚後も協力して子供を見守
り育てることが求められている。

「フェミカン」

対照的に日本では母親が子供を連れて家を出るのは罪とはならず、父親が
子供に会いたくて、または子供の養育に関わりたくて、子供を連れ戻そう
とすると、犯罪になる。日本では先に連れ去った方が勝ちであり、子供の
連れ去りが罪に問われない国は世界で日本くらいなものだ。

なぜこうなるのか。背景に松戸判決に驚いて大弁護団を結成した左翼系弁
護士らの暗躍がある。はすみとしこ氏編著の『実子誘拐』(ワニ・プラ
ス)には、このあたりの事情が詳述されている。結婚問題で悩む妻は女性
相談所やカウンセラーを訪れる。彼女たちの悩みを聞き親切に相談に乗る
のは「フェミカン」(フェミニスト・カウンセラー)と呼ばれる人々が多
いそうだ。相談窓口、フェミカン、そこから紹介される弁護士などは圧倒
的に左翼系が多く、妻に、あなたが受けているのは実はDVなのですよな
どと教唆するという。

「そこに引っかかった場合は、100%離婚を勧められる」と、はすみ氏は
書いているが、離婚の具体的行動の第一歩が子供を連れて家を出ることな
のだ。

私は6月25日、この「実子誘拐ビジネス」問題をネット配信の「言論テレ
ビ」で取り上げ、「正論」編集長・田北真樹子氏と、子供連れ去り事件を
手掛ける弁護士の上野晃氏と共に語り合った。その結果、確信したのは、
日本においては家族のあり方まで「赤い勢力」の深謀遠慮によって蝕まれ
つつある、知らず知らずの内に日本社会の深部まで左翼思想が浸透してい
るということだった。

左翼陣営が、世界の潮流とは正反対に子供の連れ去りへと誘導する理由は
大別して二つだと、上野氏は語る。第一はカネである。離婚を成立させれ
ばそこには慰謝料や教育費、養育費などさまざまな名目の金銭が関わって
くる。条件は個々のケースで異なるだろうが、多種多様な名目の金銭の、
10%から30%が手数料として弁護士に入る

現在日本では、結婚する人の3人に1人が離婚する。上野氏はその内、子供
連れ去りに関わる案件は年間15万件から16万件と推測する。この人々が左
翼系弁護士らにとっての大事な客となり収入源ともなる。

弁護士らは妻と子供を守るためと称して活発に動く。まず全ての手続きを
引き受け、妻が夫と直接会わなくてよい状況を作る。生活費や養育費も弁
護士がきちんと処理する。「DV夫」と直接会う必要はないようにして妻
側を全面的に守るという姿勢だ。見返りに全ての種類の支払いの一定割合
を懐に入れるのだ。

「第2のクレサラ特需」

こうした仕組みの大前提は夫婦が離婚すること、離婚後の夫婦は互いに会
うことなく、あくまでも弁護士が間に入ることである。それによって弁護
士は確実に手数料をとれる。松戸判決のように、夫婦が共同養育をする場
合、弁護士の介在は不必要となり弁護士の収入源も断たれる。31人もの大
弁護団結成の背景に、収入源を奪われてなるものかという動機があったの
ではないだろうか。

弁護士の世界ではこの実子連れ去り離婚からもたらされる利潤は「第二の
クレサラ特需」と呼ばれているそうだ。クレジット会社とサラ金業者への
借金返済問題で、過払い利息返還請求が起きた。返還額は大手4社で1.4兆
円にも上り、弁護士らに特需をもたらした。それと似たような「ビジネ
ス」になっているのが、「DV夫とされてしまった夫」から子供と一緒に
逃げる「子供連れ去り」事件の数々だというのである。

もうひとつの理由は左翼弁護士らの価値観の実現だと、上野氏は語る。

「家族に対する彼らの考え方は、一言で言えば家族の否定です。彼らは家
族を壊したいと考えている人たちだと、私は認識しています」

上野氏が断定調で語るのは、氏が卒田さんの弁護を引き受け、千葉家裁松
戸支部で約5年にわたる長い裁判を闘った体験ゆえであろう。

氏は言論テレビでざっと以下のように説明した。卒田氏の元妻側について
いる左翼勢力の考え方を凝縮すると、共同体としての家族は子供にとって
必ずしもよいものではない、子供は個人として尊重されるべきであり、家
族から解放されるべきだ│となるという。

日本だけでなく、どこの国でもおよそ通用しない考え方だろう。マルクス
主義社会ではあるまいし、家族は日本社会の基盤だ。左翼的考え方で毎年
多くの親たちが子供と生き別れの悲劇に突き落とされている。この事態を
見逃し続けてはならない。

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