2021年09月25日

◆【変見自在】日本は偉かった

        高山 正之 『週刊新潮』

15歳のシンハラ人ジュニウスはコロンボの埠頭で見た戦艦「香取」の威
容と、そのときの感動を生涯忘れることはなかった。

 少年は目撃できなかったが、1万6000トンの戦艦には日本のプリンス
裕仁が座乗されていた。訪英される途次、英領植民地セイロンに立ち寄ら
れたのだ。

 それでも少年は艦上を行き来する自分と似た肌色の士官の姿を見ること
はできた。

 日本海軍は凄かった。少年が生まれる前の年、彼らは対馬沖で倍する露
西亜艦隊と戦い、それを悉(ことごと)く沈めてしまった。

 第一次大戦でも青島(チンタオ)の独軍要塞攻略に飛行機を初めて使い、勝利
した。

 彼らは地中海にも出てUボートの脅威から連合軍艦船を守ってもいる。

 日本人は戦争に強いだけではない。先年のパリ会議では第三世界を代表
して人種平等案を提起した。

 しかし少年の住むセイロンを含めて世界は白人が仕切っていた。日本案
は白人国が強引に廃案とした。

 それでも「日本人が掲げた思いに独立を望むアジアの人々は強烈な共感
を覚えた」と少年はずっと後に語っている。

 少年はこのときから変わった。シンハラの上流子弟の形だったキリスト
教を捨てて民と同じ仏教に転向した。最高裁判事の父の歩んだ法曹の世界
も捨てて政治家を志した。

 そしてジュニウスは再び日本軍を見た。今回は空からやってきた。

 日本は植民地帝国主義によって世界を壟断してきた白人国家にただ一国
で挑戦したのだ。

 まず太平洋を仕切る米太平洋艦隊を真珠湾に葬った。その二日後には英
戦艦プリンス・オブ・ウェールズを仏印沖に沈めた。

 インド洋には英東洋艦隊がいた。豪蘭艦隊を合わせて空母3、戦艦5、
巡洋艦6の大艦隊だ。

 戦端は日本機によるセイロンの英軍港トリンコマリー空襲で開かれた。

 爆撃音を聞いてジュニウスは日本がついにインド洋に入ったことを知った。

 港外に逃れた英艦隊は捕捉され、空母ハーミーズと2隻の重巡が沈めら
れた。英海軍の勢力圏はマダガスカルまで後退した。

 彼らが再び戻ってくるまでの3年間、日本は東南アジアの国々に統一言
語と彼ら自身の軍隊を持たせた。

 日本軍は英領インドの解放戦線にも乗り出し、コヒマに取り付いたとこ
ろで反攻を受け、全滅した。

 しかし「日本人が掲げた思い」は戦後、見事に実を結んでいった。

 1951年9月6日、サンフランシスコのオペラハウスで開かれた対日
講和会議に参加した国々の中には戦前まで白人国家の植民地だったインド
ネシア、ベトナム、セイロン、カンボジアなどがあった。

 各国代表は壇上で短いスピーチをし、講和条約に署名したが、その前に
米国務長官J・ダレスがお手本となる基調講演を行った。

 そこには「日本は他国民の希望を暴力でおし潰して敗れ去った」とあった。

 しかし8番目に登壇したセイロン代表ジュニウス・ジャヤワルダナはダ
レス演説を否定した。

 「アジア諸国民が植民地だった時代、日本だけが強力かつ自由で、我々
は我々を解放する守護者として仰ぎ見ていた。日本が掲げたアジア共栄の
スローガンは我々に強く訴えるものがあった。戦争が始まると各国指導者
は祖国の解放を望んで日本に協力した」

 「だから」と少年時代の感動を裏切らなかった日本に感謝しながら続け
た。「我が国は対日賠償請求権を放棄する」

 エジプト代表もダレス演説に逆らい、日本に米軍が駐留する理不尽を衝
くなど数多の異論が飛び出した。

 講和条約調印から70年目となる日、スリランカ大使館で「ジャヤワルダ
ナ大統領を忍ぶ会が開かれた」と産経新聞にあった。

 しかし先の戦争は正しかったという故人の主張が気に食わなかったか、
朝日も毎日もボツだった。

 日ごろ、歴史を直視しろと説教する割に、見ないふりが酷すぎないか。


高山正之氏の本紙連載が、文庫になりました。

『変見自在 習近平は日本語で脅す』(定価605円)絶賛発売中。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
松本市 久保田 康文 採録
          
       


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◆雀庵の「常在戦場/87 キリスト教 vs イスラム教/続」
“シーチン”修一 2.0

【Anne G. of Red Gables/367(2021/9/23/木】彼岸で墓参。カミサンは奄
美へ飛び、「多分、島に帰るのはこれが最後になりそう。コロナ禍でよそ
者は黴菌扱いだから、実家に籠っているしかないわ・・・」とちょっと寂
し気。

止まない雨はない、疫病もそのうち特効薬が開発されるだろう、今は耐え
るしかないと淡々と暮らす人は日本では多数派のようだが、世界を見渡せ
ば「もうウンザリだ! 俺は俺の道を行く」という人も結構いるようだ。

人生いろいろ、それは歴史、思想、宗教、学問、身分、貧富、民族性など
によるのだろうが、千年二千年とかの長い時間の中で培われてきたものだ
から、それを変えることは難しいし、無理を通せばろくなことにはならな
い。特に外交では距離をもって付き合うのがいいのだろうが、現実には対
立、敵対、紛争、戦争だらけ。人類の性か。

前回に続き、ハッジ・アハマド・鈴木氏の「イスラームの常識がわかる小
事典」を元にした架空インタビューから学んでいこう。

・・・・・・・・・・・・・・・・

――イスラーム国と言うとオスマントルコを思い出しますが、今は「オスマ
ン帝国」と呼ぶようになりました。建国が1299年で、帝制が廃止された
1922年まで、600年以上も続いた大帝国ですね。「世界史の窓」によると、


<14〜20世紀初頭まで存在したイスラム教スンナ派の大帝国。小アジアか
らバルカン半島、地中海にも進出、君主であるスルタンが教主カリフの地
位を兼ねる体制をとり、イスラーム教世界の盟主として16世紀に全盛期を
迎え(対立する)ヨーロッパ=キリスト教世界に大きな脅威を与えた

17世紀末から(逆に)ヨーロッパ諸国の侵攻を受け、またアラブ諸民族の
自立などによって領土を縮小させ、次第に衰退。19世紀、近代化をめざす
改革に失敗、第一次世界大戦でドイツと結んだが敗れ、1922年に滅亡した>

「オスマン帝国はトルコ系オスマン族の建てた国。1453年にビザンツ帝国
(ローマ帝国末期の呼称、キリスト教系のギリシア正教)の首都コンスタ
ンティノープルを制圧、イスタンブールと改名したのを皮切りに、イラン
から北アフリカ沿岸を含む広大な地に君臨した。

中でも1520年に即位したスレイマン1世は黄金時代を築き、ヨーロッパ制
覇に乗り出してベオグラードを陥落させ、ウィーンまで到達している」

――イスラームは欧州のキリスト教に押されるばかりではなく、積極的に攻
める、版図もしているわけですね。いつ頃から始まったのですか。

「711年のスペイン(イベリア半島)征服から始まった。ターリク隊長が
ジャバルという地に第一歩を記したから、その海峡をジャバルターリク
『ジブラルタル』と呼ぶようになった。732年にはピレネー山脈を越えて
フランスのボルドーに達している。


スペインは『レコンキスタ(再征服、国土回復運動)』と呼ぶキリスト教
徒の反撃で奪回されるまで、800年もイスラーム圏だった。


イベリア半島からムスリム(イスラーム信徒)が完全に姿を消したのは
1492年のグラナダ陥落からで、勢いを増したキリスト教徒の進撃はその頃
から始まる。これがスペインとポルトガルによる「大航海時代」へと続
き、征服者たちは新大陸の先住民を徹底的に抹殺し、インカ帝国(ペ
ルー)やアステカ帝国(メキシコ)を亡ぼした。

イスラーム勢と西欧との重要な対決は1571年の『レバンテの海戦』で、オ
スマン帝国海軍がスペインの無敵艦隊に破れてからイスラームの地中海覇
権は終わりをつげ、以後、オスマン帝国は凋落の道を辿って1922年に滅亡
した」

――“レコンキスタ”によるオスマン帝国の滅亡と、その後の「トルコ共和
国」の誕生は、イスラームがキリスト教国に完全に屈服させられた印象を
受けます。1924年にはカリフ制(宗教指導者による政治)を廃して政教分
離を実現し、トルコ共和国憲法を制定、主権在民、一院制の議会制度、大
統領制などを規定した。


これらの“世俗主義政策”によってイスラーム教による宗教的政治から脱
し、トルコは表向きには西洋キリスト教国風の「近代国家」として自立し
たわけですが、基本的にキリスト教国からなるEU加盟交渉は停滞気味であ
り、また軍事同盟NATOからの脱退も噂されており、未だに揺れ動いている
印象があります。

「近代は、ヨーロッパ勢による大規模な侵攻がアジア、アフリカ、アメリ
カ大陸へと展開された時代だった。その根底には西欧型文明を最善とする
キリスト教至上主義があり、他の文明を否定する傾向が強かった。

中東においてはオスマン帝国の領土は植民地化により欧州諸国に侵食さ
れ、支配下に置かれていった。特に第一次世界大戦がその動きに拍車をか
け、例えば英国将校の“アラビアのローレンス”の任務に見られるように、
オスマン帝国の領土を奪いアラブ諸民族に与えるという名目で、それらの
地域を欧州列強の支配下に置くというものだった。

トルコ共和国は近代化のために“脱イスラム、入ヨーロッパ”で西欧との一
体化を目指した。“過去清算”のためにアラビア文字をローマ字表記に変
え、暦をビジュラ暦からグレゴリア暦に改め、法律制度にスイス法を導入
した。これらは初代大統領の名をとって“ケマル主義”と呼ばれ、エリート
層の基本的な考え方になっている。

しかしトルコ国民の大部分はムスリムであり、その西欧化が果たして正し
い選択であったのか、100年を経た現在でもその評価は定まっていないよ
うだ」

――トルコのエルドアン大統領は、トルコも一員であるNATO≒キリスト教国
と反NATOのイスラーム教国やロシアの間の橋渡し役として存在感を高めて
いるようです。

<現状でアフガニスタンのタリバンと交渉可能な国は、ムスリムが多数で
外交上のつながりが深いパキスタン、カタール、トルコの3カ国に限定さ
れている。トルコはパキスタン、カタールとの関係も良好であり、国際社
会とタリバンの間の仲介を行なえる可能性のあるアクターとしてその存在
感は増している>(Wedge 9/15)。

第2次大戦後に実に多くのイスラーム系植民地が独立しましたが、イス
ラーム教国の復興という面でトルコ、あるいはエルドアンはリーダーシッ
プを取るのではないかと思いますが。

「第2次大戦後に多くの植民地が独立してイスラーム教国になった。例え
ばアルジェリアがフランスから独立を勝ち取ったのは1962年。アラブ首長
国連邦、カタール、バーレーンなどの湾岸諸国が英国から独立したのは
1971年。今日のイスラーム諸国のほとんどが新興の独立国だ。

つまり独立の歴史が浅い上に、異なった民族、宗教、慣習が絡み合い、そ
こにエネルギー資源の争奪戦も加わり、不安定な構造になっている。これ
に追い打ちをかけ、中東地域に衝撃を与えたのがユダヤ人によるイスラエ
ルの建国だった」

――イスラエルは1948年5月に独立宣言、それ以後はイスラエル・ユダヤ
教・ユダヤ人対パレスチナ・イスラーム諸国・アラブ人の対立が始まっ
た。宗教観は人それぞれでしょうが、「宗教は人間の幸福のためにある」
と考える人もいれば、「人間は宗教の世界制覇のためにある」と考える人
もいる。混沌とした世界に秩序をもたらす解はあるのか・・・次回もよろ
しくお願いします。




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◆第21回「上海協力機構」

「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)9月19日(日曜日)弐
通巻第7059号  

第21回「上海協力機構」首脳会議をドシャンベで開催
  プーチン、習近平らオンラインで30の協定に署名

 9月17日のドシャンベ。タジキスタンの首都である。
 SCO(上海協力機構)も首脳会議は21回目。最初の構成メンバー
五ヶ国(中国、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、カザフスタ
ン)にロシア、インド、パキスタンが加わり、イランがオブザーバー。
ここには「対話パートナー」としてエジプト、カタール、サウジアラビア
もオンライン会議には加わった模様である。

 今回の開催地はドシャンベだが、人民大会堂から中継した中国は、習近
平がよく喋った。報告の中で米国をなざしすることは避け、「外国軍が撤
退した」とアフガニスタンのその後のインフラ建設への協力を議題とした。

 アフガニスタンの人民を鼓舞するためにも、参加国は協力し合い、共通
する総合的な協力のために、そして持続可能なアフガニスタンの安全保障
のためにも、テロリストへの戦いはもっとタフであってよいし、中国は
ETIMの排除をアフガニスタン政府に要請し、同意を得ている、とした。
 習近平はまた、[SCTC]との協力も突如、言い始めた。
 SCTCとは、ロシア主導でユーラシアの平和と安全に協力する機構
で、ロシア、ベラルーシ、アルメニア、カザフスタン、タジキスタン、キ
ルギスが加盟している。習は、このSCTCとSCOとの協力関係のメカ
ニズムが必要だとも発言した。

 SCOは次の五年で、2・3兆ドルに貿易は拡大するだろうと薔薇色の
未来が語られ、一帯一路プロジェクトの当該地域への双方の利益を強調した。
   ☆▽□☆◎み☆◎□☆や□▽◎☆ざ▽◎□☆き◎☆◎▽
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  ■読者の声 ■READERS‘OPINIONS ■どくしゃのこえ■
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  ♪
(読者の声1)貴誌前号の『怒号の日々』書評について。チャールズ・リ
ンドバーグが「アメリカファースト」委員会の中心人物だったことは確か
です。
アメリカの国益を守るなら、ヨーロッパの戦場に宣戦するべきでないとい
うことが「アメリカファースト」の主要な意見でしたし、リンドバーグも
そうでした。
しかし少数派ながら日本との関係の悪化が戦争の火種になることを心配す
る一群の人々も「アメリカファースト」に集いました。その一人が私が発
見したラルフ・タウンゼントです。彼もまた「アメリカファースト」の中
で精力的に活動していましたが、真珠湾攻撃後は日本のエージェントと見
なされて、二つの罪で戦時中、屈辱の日々を過ごさねばなりませんでした。
一方、リンドバーグは日本の真珠湾攻撃に驚きました。そう思う人は少な
くなかったようです。Back door to war 欧州でなく、裏木戸からの参戦
ですね。米兵による日本兵に対する残虐行動を日記に記述していたリンド
バーグも、決して聖戦とは思えず、back door to war であると思ってい
たに違いありません(田中秀雄)


  ♪
(読者の声2)貴誌前号にあるスレイマニ司令官は2021年1月3日で
はなく、2020年1月3日に米軍のドローンにより殺害されました。本
年の1月3日はすでにトランプ氏が大統領選に敗北し、3日後の6日は議
会前広場の集会や議会への乱入騒ぎで、不正選挙を糾弾していた頃です。
もとより、バグダット空港近くで起きたショッキングなスレイマニ将軍の
暗殺は、1月6日のDC集会の直近には起きていません。昨年のことでした。
 (MKM)

   ♪
(読者の声3)貴誌前号でしたか、アマゾンが中国ブランド品3000の
取引を停止したとありましたが、その後の主要メディアは報じておりません。
 追加情報はありますか?(DD生、横浜市)


(宮崎正弘のコメント)要するにニセモノ、偽ブランド対策ですね。あま
りにもニセモノが多く、なにしろ中国では偽札が通貨流通の2割だったの
で、デジタル通貨、銀連カードなどを普及させたのですから。
 日本でも被害続出ですが、なかには半導体不足を狙っての偽半導体か
ら、偽電池まで。医療機器も通販の三割がニセモノと言います。バイアグ
ラも殆どが。。。。ま、半導体とか医療機器を通販で買うのもどうかして
いますが。

  ♪
(読者の声4)欧米で中国人の書いたホイットニー・ドゥアン著『レッ
ド・ルーレット』という本が、中国共産党幹部の汚職、腐敗を具体的に
抉っていてベストセラーとなっているようです。実際に汚職の現場にいた
人物か描き、しかも元妻が出版取りやめを要請したとか。話題性豊富で
す。翻訳がでたら読みたいと思いますが、先生はお読みになりましたか?
(JH生、大坂)


(宮崎正弘のコメント)中国名は段偉紅という、北京から突如汚職で逮捕
されそうになって消えた人物です。ランクのべらぼうに高い幹部との繋が
りがあった。だから逮捕されると消される可能性があったと宣伝されてい
います。
 フィナンシャルタイムズの書評で読んだ限りでは、あたらしい証拠の提
示は少なく、これまでにも言われてきた温家宝一家の不正蓄財などを書い
ているようですね。新味と言えば高級幹部の要求する賄賂が30%のとき
もあるとか。
 版元はスクリブナーズですから、日本で言えば講談社が鳴り物入りの宣
伝をかけて出した目玉本というところでしょうか。
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