合弁する中国巨大企業「BOE」にウイグル人強制労働疑惑 誠実な姿
勢の野田氏と対照的 令和3年9月25日 夕刊フジ【zakzak】ニュース
自民党総裁選は終盤戦に突入した。河野太郎行革担当相と、岸田文雄前
政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行は、29日の投開票に
向けて、新型コロナウイルス対策や経済政策、外交・安全保障政策などで
激しく競い合っている。ただ、ここに来て、河野氏の「親族企業と中国の
関係」など、4候補の「アキレス腱(けん)」にも注目が集まっている。
日本国民の生命と財産を守り抜き、軍事的覇権拡大を進める中国共産党政
権と対峙(たいじ)できる「次のリーダー」は、一体誰なのか。ジャーナ
リストの有本香氏が「以読制毒(特別版)」で迫った。
◇
選挙はさまざまなものをあぶり出す。事実上、次期首相を決める自民党
総裁選ともなれば、政策や思想のみで闘えるほど甘いものではない。各候
補の人間性や背景までが容赦なくあらわにされている。
今日、あえて取り上げるのは、河野氏と野田氏。保守派からはまったく
支持されない両氏だが、かといって「自民党内左派」と一括りするのも間
違いだということが今総裁選ではっきりした。両者の違いを知るポイント
は3点。
第1は、語り口だ。筆者は野田氏の政策に賛同するところはほぼなく、
中身も残念ながら浅薄(特に安全保障)なものと感じているが、それでも
男性候補2人に比べ好感度は格段に高い。
河野氏と岸田氏が万事につけ、知識の披瀝(ひれき)の後、「検討す
る」「議論する」とお茶を濁すのに対し、野田氏は「自分はどうするか」
を語っている。政策に賛同はしないが、政治家としての覚悟を伴う「発信
力」は評価したい。
また、野田氏の「新生児70万人時代への危機感」という主張は正鵠(せ
いこく)を射ている。終戦直後に年間270万人だった新生児が、いま
70万人台にまで減ろうとしている。将来の国民なくして国防も福祉もな
いことは火を見るより明らかだが、この少子化への危機感が保守派に薄
く、思い切った策も出されないことは反省に値する。
河野、野田両氏の違いの第2は、自身の親族に関する「疑惑」への説明
姿勢、第3は対中姿勢だ。
野田氏は22日、自身のツイッターに「私が夫を信じる理由」と題した
連続ツイートを投稿した。筆者はこれまで、野田氏の配偶者の過去には触
れずに来たが、週刊新潮との裁判で「認定」されたことが事実だろうと漠
然と思ってきた。
しかし、実際はそう単純な話ではなく、現在も係争中とのことだ。その
結果がどうあれ、野田氏が、最も話し難い件を、SNSで直接説明しよう
と努める姿勢は誠実に映る。
対照的に、河野氏の親族企業に関する説明不足感は強くなる一方だ。
河野氏が株式を保有し、父の洋平氏が会長、実弟が社長を務める「日本
端子」(神奈川県平塚市)に関する「疑惑」がネット上を騒がせ始めたの
は先週後半のことだ。
21日の記者会見で、本紙「夕刊フジ」の記者がこの件を質問したが、
河野氏の答えは「私の政治活動に影響を与えるということは全くない」
「資産報告を毎回しっかりやっており、問題はない」だった。
ネット上にも「河野擁護」らしき声が上がった。「違法ではない」「中
国進出している企業は山ほどある」「麻生太郎副総理も、鳩山由紀夫元首
相(の関連企業)も同じだ」「中国進出企業が現地で合弁させられるのは
常識だ」など。どれも一見、もっともらしいが、そんなことは河野氏に疑
問を抱くネット民の多くとて先刻ご承知だろう。
海外事業がほぼ中国のみで展開されている「日本端子」について、多く
の国民がいぶかしく思うのは、不釣り合いな合弁相手だ。
同社のサイトによると、関連会社である北京日端電子有限公司(北京
市)の合弁相手は「北京京東方科技集団股分有限公司(BOEテクノロ
ジーグループ)」だという。ディスプレーで世界屈指のシェアを持ち、営
業規模2兆円を超える大企業が、100分の1以下の規模の日本の中小企
業に、特例的な株式比率での合弁を許してきた。その理由は「日本端子
が、河野ファミリーの会社だからではないか」と誰もが思う。
■BOEとウイグル人強制労働疑惑
BOEには別の重大な疑惑もある。筆者が最も関心があるのもこの件
だ。昨年3月、オーストラリアのシンクタンク「オーストラリア戦略政策
研究所(ASPI)」が、世界80以上の有名企業のサプライチェーンに
組み込まれている中国の工場で、8万人以上のウイグル人が強制労働させ
られているという詳細な報告書を発表した。その中に、中間業者として
BOEの名も記されている。
野田氏が、中国政府の人権弾圧への非難決議について、「臨時国会で決
議すべきだ」とし、「私にとって人権問題は重要事項のひとつであり、ど
の国、どの地域においても、一人ひとりが自分の生き方を決めることが大
切だ」と答えている。リベラルの鑑だ。
一方、「時期は分からないが、採択すべきだ」との曖昧な答えしかない
河野氏に改めて問いたい。「河野家の親族企業は、ウイグル人の強制労働
に関わりありと報告された中国企業と昵懇(じっこん)なのですか」と。
■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市
生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。
国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に
『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬
舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国
紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
松本市 久保田 康文
夕刊フジ【zakzak】ニュース 採録
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◆辛光洙容疑者、リーダーの素顔
中村 将
【教科書が教えない拉致問題】誰が日本人を… ❶工作船で密入国したスパ
イ ❷指示役と「戦闘員」で実行犯構成 辛光洙容疑者、リーダーの素顔
編集局次長・社会部長 中村将 【産経ニュース】令和3年9月25日
開港を目前に控えた成田空港は混乱の極みに達していた。空港内に入り
込んだ反対派の左翼活動家らが機動隊の隊列に向けて火炎瓶を投げつけ
る。周囲を取り囲む制服の警察官が拳銃を構えて応戦した。空港の管制塔
も活動家らに占拠され、機器が破壊された。最後は機動隊が制圧したが、
日本の表玄関の開港は予定より50日近く遅れた。
、安保闘争や過激化した学生運動の余韻を残しながらも、一方で時代が少
しずつ変わっていく社会変革の風を感じた。
キャンディーズが引退し、ピンクレディーの全盛期。東京・池袋に地上
239・7メートルの、当時アジアで最も高い超高層ビル「サンシャイン
60」が開業。カップ麺「マルちゃん赤いきつねうどん」が発売された。
巨人の王貞治選手が通算800号本塁打を達成。ジョージ・ルーカス監督
の映画「スター・ウォーズ」の日本上映が始まったのもこの年だった。
昭和53(1978)年。50歳代以上の世代には「ノスタルジア(郷
愁)」を覚えさせるが、この年は北朝鮮による日本人拉致が多発した年で
もあった。
あの夏は、異様だった。
「静かにしろ」拘束
七夕の夜。レストランで食事を終えた若い男女は福井県小浜市の小浜公
園展望台に車を走らせた。当時婚約中だった地村保志さん(66)と浜本
(現・地村)富貴恵さん(66)は「まだ帰るには少し早いから」と夜景
を楽しむために目的地に向かった。
拉致された当時の地村保志さん
拉致された当時の地村保志さん
拉致された当時婚約中だった浜本(現・地村)富貴恵さん
拉致された当時婚約中だった浜本(現・地村)富貴恵さん
展望台の手前数十メートルの道がカーブしているところで、車のヘッド
ライトは4人組の男が縦一列になって展望台の方に上っていくのを照らし
た。ハンドルを握っていた地村さんは「こんな時間に?」と感じたが、そ
れ以上、気にすることもなかったという。
人けのない展望台近くのベンチにはもう一組の男女が座っていた。しば
らくすると、車が走り出す音を聞いたので、地村さんは男女が帰っていっ
たのだと思ったという。
展望台2階のベンチに腰かけた地村さんと富貴恵さんは背後に人の気配
を感じた。振り返ると、後ろ手にされて手錠をかけられ、足も拘束され
た。富貴恵さんも同じように拘束された。
「静かにしろ」。4人組のうちの1人から日本語でそう言われた後、布
袋のようなものを全身にかぶせられ、展望台下の浜辺に運ばれた。その
後、ゴムボートに乗せられ沖に。沖合でエンジン音がする船に移され、数
十分後にさらに別のもっと大きな船に乗せられて北朝鮮に連れ去られた。
船にはあの4人組の男たちが乗っていた。リーダー格は日本語ができ
た。残りの3人は若く、日本語は話せないようだった。
日本語を話すリーダー格は、北朝鮮工作員、辛光洙(シン・グァンス)
容疑者(92)とみられ、警察当局は国外移送目的略取容疑で国際手配し
ている。
「北の英雄」見覚え
平成14(2002)年9月の小泉純一郎首相(当時)と金正日(キ
ム・ジョンイル)総書記(同)による日朝首脳会談で、金総書記は拉致を
認めた。地村さんと富貴恵さんは「生存」とされた5人に含まれ、翌10
月に帰国する。
だが、北朝鮮に子供を残しての帰国だったため、警察当局に「辛容疑者
が実行犯グループに含まれていた」と証言したのは、子供らが帰国した後
の17年12月になってからだった。
無理もない。子供が人質に取られた状態で、北朝鮮の闇に触れるような
証言をすれば、安全は保証できない。被害者たちはその恐ろしさを十分に
知っていた。
韓国で死刑判決を受けたが、恩赦で釈放された辛光洙容疑者=2000
年、韓国・ソウル
韓国で死刑判決を受けたが、恩赦で釈放された辛光洙容疑者=2000
年、韓国・ソウル
しかしなぜ、地村さんらは辛容疑者を知っていたのか。拉致を指揮した
実行犯は被害者が北朝鮮到着後、監視を兼ねて教育係に付く。地村さんら
に付いたのが辛容疑者だった(地村さんと富貴恵さんは拉致された後、し
ばらくは別々に管理された)。
辛容疑者は地村さんに自分の名字が「辛」であることを伝えたという。
だが、さすがに名前までは明かさなかった。
辛容疑者は地村さんらを拉致した2年後の昭和55年6月、大阪の中華
料理店員、原敕晁(ただあき)さんも拉致し、原さんに成りすまし韓国に
非合法に入国。国家保安法違反容疑で逮捕され、公判で死刑判決を受け
た。その後、恩赦で釈放され、北朝鮮に身柄が送還されることになったと
き、北朝鮮では「祖国の英雄」とメディアで大々的に報じられ、見覚えの
あるあの男が「辛光洙」だと知ったのだ。
「筋金入り」の経歴
《1929(昭和4)年6月27日、静岡県新居町(現・湖西市)で生ま
れた。兵庫県尼崎市の小学校、富山県高岡市の国民学校などで学び、日本
の敗戦を機に家族とともに帰国し、慶尚北道浦項市に住んだ》
《朝鮮戦争(1950〜53年、休戦中)が始まると、北朝鮮義勇軍に自
ら入隊した。朝鮮人民軍第1師団第14連隊に配属されて朝鮮戦争に出
兵。52年5月、朝鮮労働党に入党した》
《54年、東欧諸国の戦後復興支援の一環として実施された海外留学生選
抜試験に合格し、ルーマニアのブカレスト工業大学の予科に入学。機械学
部を卒業して機械技師の資格を取得した後、北朝鮮に戻った》
韓国の情報当局が80年代に把握した辛容疑者の経歴だ。金日成(キ
ム・イルソン)主体(チュチェ)思想、金日成革命史など政治思想学習と
通信技術教育、工作(スパイ)実務教育を受けた筋金入りの工作員である。
韓国の公判で明らかになった辛容疑者の密入国の方法はこうだった。
北朝鮮東部の元山(ウォンサン)港を工作母船で出港。2日後、石川県
の能登半島沖で工作子船に乗り換え海岸に近づき、ゴムボートに乗り換え
て岸辺から上陸した。
工作母船とは2001年12月に九州南西海域で海上保安庁の巡視船と
の銃撃戦の末、沈没し、その後海底から引き揚げられた漁船にカムフラー
ジュした工作船と同様の船のことだ。船体後部の扉が開き、格納庫から工
作子船が出てくるタイプもある。工作子船は中型モーターボートサイズ。
そして、ゴムボートに空気を入れて、岸辺まで漕(こ)いだ。
日本に潜伏後は、北朝鮮に親族がいる在日朝鮮人を配下に置くなどし
て、アジト(隠れ家)を確保し、本国の指示に従い、スパイ活動を展開した。
さまざまな手口で
地村さんらを拉致した4人組のうち、辛容疑者以外の3人は、力ずくで
拉致するために実行日に合わせて潜入した「戦闘員」と呼ばれる特殊訓練
を受けた工作員たちだったとみられる。
本国からの拉致実行の指令は、あらかじめ潜入している工作員(辛容疑
者)と工作船(戦闘員ら)に発せられ、双方は上陸ポイント周辺などで落
ち合う。戦闘員は被害者を船に乗せ、北朝鮮まで確実に運び込む。
先述した原さんの事件では、辛容疑者が在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総
連)系商工会幹部らを配下に置いて、原さんに架空の就職話を持ちかけ
た。内定を理由に「社長が別荘にいる」と宮崎県・青島海岸に連れ出し、
「前祝い」で泥酔させて船に乗せて連れ去った。
乗船させる際になって戦闘員とみられる4人の男が姿を現す。「船を
持ってきた人です。心配いらない」。辛容疑者は原さんを促した。力ずく
の拉致ではなかったが、原さんが抵抗するなどした場合も想定していたと
みられる。
拉致の手口はさまざまだが、昭和53年夏の福井、新潟、鹿児島など5
件の拉致事件(未遂含む)は、戦闘員が上陸しての暴力的なものだった。
指示役の工作員らも、わが国で暗躍していたに違いない。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
松本市 久保田 康文
【産経ニュース】採録
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◆モサッドのロボット兵器だった
「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和三年(2021)9月20日(月曜日。敬老の日)
通巻第7061号
イラン核化学者暗殺はモサッドのロボット兵器だった
ベルギーのFN MAGを改良してAIで遠隔操作 7・62ミリの
機関銃
2020年11月27日、テヘラン郊外の別荘地アブサードを出発した
車列は前後に警備車両が続いていた。
午後一時、監視していたモサッドの代理人は「標的は出発した」と信号を
送った。車列が見える小高い道路上に停車していたのは日産トラック。標
的はイランの核化学者で武器開発のトップとされたフセン・フェクリザデ
一行。
ベルギー製のFN MAGを改良した機関銃は7・62ミリの弾丸を
AIによる遠隔操作でぶっ放す。これは狙撃用マシンガンで世界的に著名
である。
狙撃後、トラックと機関銃は爆破され証拠を消し去った。
「このフェクリザデ暗殺により、イランのナタンズ核施設における計画
は『五年遅れた』とモサッドは見積もった。後継者はファーヒと呼ばれる
謎の科学者だが、詳細は不明。しかもナタンズは大混乱に陥ったまま」
(エルサレムポスト、9月19日)。
計画はモサッドが2020年三月にスタートさせ、数ヶ月かけて、マシ
ンガンの部品をばらばらに分けてイランに輸出した。総重量およそ1トン
にもなるシロモノ。
さて日本よ、このような計画を北朝鮮の核施設破壊に立ててみよ。国家
安全保障とは、こうした作戦を秘密裏に計画、立案し、その準備チームを
編成、敵地における代理人の育成とアジトの確保。作戦後の証拠隠滅。そ
して作戦そのものを機密にするという遠大な戦略性を伴うものである。
イスラエルに学ぶことはあまりにも多い。
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評
BOOKREVIEW
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英国アーカイブで発見された諜報、謀略戦争の機密文書
日本は諜報でも卓越していたが、上層部が握りつぶして敗戦となった
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岡部伸『第二次大戦、諜報戦秘史』(PHP新書)
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著者は産経新聞元モスクワ支局長。『消えたヤルタ密約緊急電』で山本
七平賞受賞。ロシア革命前夜、ロマノフ王朝を背後からかき荒らして成果
をあげた明石元二郎大佐のことはよく知られている。
杉原千畝も有名である。人道援助、「命のビザ」の杉原だが、じつは「裏
の顔」は諜報員だった。
本書は諜報戦争の現場を辿り、真珠湾攻撃の暗号は米英に読まれていた
こと、シンガポールを短時日で陥落させた日本のインテリジェンスのすごさ。
インパール作戦におけるチャンドラ・ボーズの知られざる足跡、そして
日本陸軍には共産主義理解者が多く、終戦間際には親ソ派が牛耳っていた
事実などを、岡部氏は英国アーカイブで新たに公開された機密書類を丹念
に読み解いて、淡々と語る。
明石元二郎は福岡藩士の子、軍に入りドイツへ留学後、マニラ、仏蘭
西、モスクワ駐在武官を経て日露戦争開始とともにスウェーデンのストッ
クホルムを拠点に諜報活動を展開した。
明石は北欧、露西亜のスパイを世界各地に派遣するなど、ウラジオには貿易
商に偽造したスパイを駆使して貴重は情報を得ている。反ロシア暴動、デ
モ、ストライキを組織化させ、活動家にふんだんに資金を供与した。
かのレーニンにも工作資金を供与した。明石が使った工作費の金額たる
や、現在の貨幣価値にして合計400億円にものぼる。当時の参謀総長は
山県有朋である。
明石はロシア革命の導火線を敷設する役目を担ったが、単独行動が多く批
判され、台湾総督へ移動した。台湾における明石の善政はいまも称賛され
ている。
まことに武士の末裔たちが政治を行ったわけだから昔の日本は諜報戦争を
理解し、また情報工作がいかに重要かを理解できる認識力が備わってい
た。暗号解読にしても解読を相手にしられないため偽装、陽動、ときには
騙されたフリをして、つぎのもっと重要な情報を引き出そうとする。
「開戦前、イギリスは日本の諜報活動を警戒していたが、その活動の実
態はつかめていなかった。日本の外交電報は解読していたものの、陸軍の
電報は解読できなかった」。
「マレー半島からシンガポールに至る詳細な地誌や軍事情報が報告さ
れ、守備隊や戦車、砲台の数、トーチカの位置などが書かれているほか、
シンガポール市内の守備隊配置図なども記されている。スマトラ島南部の
パレンバン、インドネシアの首都ジャカルタがあるジャワ島にも陸軍中野
学校の卒業生を新聞記者や商社員に偽装させて派遣し、調査させていた。
これらの調査活動が、1942年2月の『空の神兵』空挺作戦によるパレ
ンバン精油所制圧を成功に導いた。イギリスの監視をかいくぐる事前調査
がマレー作戦に活用された」(55p)
明石の陰に隠れたが小野寺信の活躍を本書は特筆している。
陸軍幼年学校から士官学校へ。ドイツ語に堪能だったが、そのうえ小野
寺はロシア語にとりくむ。ハバロフスク滞在中、わずか一年でロシア語を
習得し、哈爾浜で活躍を始める。
ラトビアのリガは当時の情報戦争の一大拠点だった。
小野寺は、このリガで現地の高官や情報通と交流を深め、「とりわけエス
トニアとの協力関係が進み、情報共有にとどまらず、共同で対ソ工作員を
ソ連国内に潜入させ、情報収集工作をさせたり、ウクライナやグルジア
(現ジョージア)の民族独立運動を支援して、体制転覆を試みたりする謀
略工作も行った。ドイツも関与したスターリン暗殺計画もあった」
(126p)。
ストックホルムではドイツが英国侵攻作戦をおこなうかどうか。1939
年にヒトラーは独ソ不可侵条約をいきなり締結し、電光石火、ポーランド
侵攻して第二次世界大戦が勃発、翌1940年に、ドイツはデンマーク、
ノルウェイ侵攻。五月には、オランダ、ベルギー、フランスと破竹の進撃
をつづけ、日本はこのときに日独伊三国同盟を締結、この時期に「ドイツ
軍が独ソ不可侵条約を破棄してソ連へ奇襲攻撃する準備をしているとの情
報が集まった」(129p)。
外国人スパイが暗躍し、なかには二重三重のスパイが、特ダネ情報を持ち
込んだが、小野寺が信頼したスパイたちによって「ソ連の対日参戦」とい
う情報がもたらされたのだ。
しかしこの情報は日本の奥の院で握りつぶされた。
「そもそも、二十世紀最大のスパイ事件の首謀者であるリヒャルト・ゾル
ゲを筆頭に、スパイとは本質的に二重スパイである。諜報の世界ではギフ
アンドテイクが原則で、相手から情報を得るには、自分から相手に情報を
提供しなければならないからだ。問題は提供する情報の質で、誰の指示で
誰から資金提供を受けて、誰も最も忠誠を尽くしているかである」
(145p)
評者(宮崎)の見るところ、日本で情報戦が熾烈に戦われ、諜報工作、大
謀略が入り乱れての戦乱は織豊時代から?川の関ヶ原、大坂の陣までだ。
世界に誇れる情報戦が日本でも展開されたのである。そのDNAが戊辰戦
争を通して日清・日露戦争に生かされ、大東亜戦争でも現場の情報活動は
じつに優秀だったのだ。無能は日本政府、参謀本部そして官僚主義だろう。
ともかく卓越していた日本人情報将校たちに比較して、現在の日本には
「情報」がない。
結論は「インテリジャンスのDNAを呼び覚ませ」である。
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■読者の声 ■READERS‘OPINIONS ■どくしゃのこえ■
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(読者の声1)貴誌前号の中国恒大集団の経営危機ですが、ウォールスト
リートジャーナルも、昨日のトップニュースでした。ところで、この不動
産の巨人がペシャンコになると、日本はどういう悪影響がでますか?
(HD生、西東京市)
(宮崎正弘のコメント)日本の投資家は香港を通じて株を買っています
が、日系のファンドが同社社債を購入したかどうかは不明です。株の損出
を出す日本人投資家がでるでしょう。
また中国株全体が下落すると、逆に日本株は上がるという人もいますが、
このところの日本株はウォール街が値決めしているようなもので、自律性
がなく、対米追随型マーケットですから、さきにウォール街がいかに反応
するか、ではないかと思います。
付け加えますと、習近平の思いつきで、学習塾禁止。これにより失業し
た家庭教師はおよそ数十万人。職業安定所らしきところにならんでいると
か。ゲーム規制でテンセントなどの株暴落が続きました。
この列にマカオのカジノ規制が加わりました。
マカオの全人口の五分の一、およそ8万2000人の職場。カジノはマカ
オの歳入の80%、昨年は前年比で80%ダウンでした。
さてカジノ規制により、マカオ株式市場をささえてきた米国のウィンが
30%下落、SJMとMGMが25%、スタンレーホーの流れを組むギャ
ラクシーが20%下落となって、時価総額で140億ドルが蒸発した由で
す。汚職の元凶と言われたカジノは庶民の娯楽でもあり、中国の末端の国
民はまた不満を蓄積させていくことになります。
♪
(読者の声2)中国のメディアが高市早苗攻撃を始めていますが、中国が
危険視するということはひょっとして?
(JJセブン)
(宮崎正弘のコメント)中国語の新聞でも「極右」の台頭という基調で批
判が展開されていますが、かなりよく高市さんの履歴を調べていますよ。
とくに安倍
前総理との親密な関係、その経緯、早々と閣僚入りを果たし、党務でも総
務会長歴任など、安倍ガールズの秘蔵っ子、有名大学を出ていないが松下
政経塾から米国へいって政治の現場を体験していること。また途中まで安
倍が肩入れしてきた稲田議員がLGBTで「変節」したため、高市におは
ちが回り、国防、靖国、経済政策、歴史認識などで安倍保守本流の意見を
代弁していること。安倍は高市を試して、党内の保守本流の影響力を維持
し、拡大を狙っているなどと分析しています。
取りわけ中国に対しての考え方が安倍に近く、靖国神社参拝を欠かさ
ず、台湾との友好関係を強化して、蔡英文総統と会見を望むことを公言す
るなどの言動があって、日本の極右勢力を狂喜させているとしています。
日本の多くの有力者が支援していることも危険な兆候などと書いていて、
中国はじつは高市総理誕生を懼れていることが分かります。
文章から推察して、おそらく原文は日本人が書いたか、あるいは日本の
情報提供者がいて、「保守」を「極右」と置き換えていると思いました。
♪
(読者の声3)自民党総裁選、まいにち喧しく、論戦を繰り広げていて野
党の出番なし、ですね。しかし日本文化を無視した、と言うよりは知らな
い異邦人代議士が頓珍漢なことを言っています。今は何でも有りの幸せな
(?)時代でしょうかね。
国運を誤らないようにしてもらいたいものです
(TK生、佐賀)
♪
(読者の声)9/11/2001年の清算その遺産。平和と安定とは、政府の「人
間」にとっては敵になる。「無駄飯を食う生意気な無用な輩」になる。
健康は、医者や医薬品会社の敵であり、病気は必要な大切な友達。犯罪者
無くして、警察も検察も司法も監獄も警備会社も意義を失う。
戦争は、「政治家・政府の人間」にとって最大の機会になる。緊急事態
においては、超法規的に権力や予算を自由に拡大できる。いわば「素人の
独裁者」が瞬時に誕生する。危機のたびにこれらの組織が拡大し恒常化す
る。戦争のたびに米国連邦政府は肥大化した。
「戦争も病気」も人の命に関わるので、金に糸目がつけられない。(つま
り、政府=悪、国民の敵、故に無政府主義。アナーキズム「善」という正
しい解析・思想は大昔からある、が、条件反射的に爆弾を使うテロリス
ト=悪、と思うように「政府の人間」によって国民は洗脳されている。)
ブッシュ大統領は幸運にも9/11戦争に巡り合い、右、左からも頼ら
れ、当時、たちまち英雄になった。民間機を奪った19名のテロリストが米
国内に潜んでいた、とされ、それでは「米国内の通信をも監視」すべき
だ、と言う論理で、「1984年」的な政府による「国内での全国民の盗聴」
が大規模に始まったが、秘密にされていた。
電話会社の大元の回線から勝手に盗んで記録を集めていた。
やがてGOOGLE, FACEBOOKなどが、個人の情報を秘密に集め、それを販売し
始めた。それは政府がやっていたことと同じであるが、より高度のIT技術
が使われ、ここで「官民の諜報癒着」が、効率的な国民・消費者の監視
が、公然と行われ、今日に至る。
しかし国民はこれらの独占的なIT大企業のタダのサーヴィスに毎日深く依
存しているので、文句も言えない状態になった。
そんな弱みに付け込んで、昨年から、トランプ氏、その支持者に対して
「受動的な傍聴」から進化して大胆にも「言論封鎖」をするようになり、
ついでに「選挙の仕組み」さえも変えてしまった。
民主党・バイデン支持者達には大変都合が良いので、憲法・修正第1条、
4条、を完全に無視する。腐敗・迎合の司法も、見て見ない。そんな今日
の「非アメリカ化された1党独裁の社会」を生み出したのが、9/11の負の
功績である。
20年間のアフガン戦争も何の成果も生み出されず、返って多くの未来の敵
を生み出すのだろう。
しかし「軍産共同体の人間」にとっては、好ましい状態であり、必要に応
じて、人為的に挑発し戦争を敵を創り出す。
少し時間がかかったが、タリバン・イスラム原理教に、堕落したキリス
ト教徒が負けた、民主主義を布教していた米国が、個人の自由が剥奪さ
れ、忌み嫌っていた全体主義国家に転落した。建国以来230年つづいた米
国も、外国からの継続的効果的な洗脳工作を受けて、内部から自らの手で
崩壊したと歴史は記すだろう。
その原因は「banality of evil」(悪の日常化、みんなで渡れば怖くな
い, 悪が栄えるのは善人が何もしないから)。
つまり多くの指導者、官僚、企業家、役人、国民が「悪いと知りながら」
上司に従い、世論、市場原理に従い、倫理・道徳を捨て、自己の雇用保
全、短期的利益を優先する。その小さな「悪の行為の集積総合」がやがて
企業を国家をも崩壊する。これは世界共通の問題である。
日本では「しょうがない」と全員で、薄笑いを浮かべて、同時に頭を掻
く。特に大きな困難なヤバイ問題は絶対に「スルー」する。
イカンである、ゼンショします、「過ちは繰り返しませぬから」とも言
う。そして、誰も何も期待しない。誰の責任かはもちろん不知。
ところが、人間の介入できない「物」を相手にする、科学や技術の世界
では、諦め、諦観、受動性、無知、無能力、非論理、非合理性、「しょー
がない」は決して許されず、過ちは糾弾され再発しない。だから、進歩する。
(先日打ち上げられた四人の民間人を乗せた民間のSPACE X の宇宙船は高
度585kmで3日間の旅をした。競争相手とされるアマゾン社、ヴァージ
ン・ギャラクティック社の無重力状態はほんの1-2分で、急いで安心安
全な地上に戻る。月とスッポン。NASAが考えもしなかった火星に大量の移
民を運ぶという20年計画の始まり。もちろん利益など全然期待できない。
これは金持ちの正しい金の使い方。)
(在米のKM生)
♪
(読者の声4)貴誌が以前から予想されてきたようにフィリピンの大統領
選挙に元世界チャンピオンのパッキャオ(上院議員。42歳)が正式に立
候補を声明したようです。
ドゥテルテ大統領は娘を大統領選挙に出して、自分は副大統領に、つまり
「院政」を狙っているようですね。
地盤は南部のミンダナオですが、ルソン島は別の政治家の人気が高いとか。
(DF生、山梨県)
(宮崎正弘のコメント)フィリピン与党の「PDPラバン」は主流派が別
の候補を推しており、与党分裂の選挙になりそう。マルコスの息子のボン
ボン・マルコスも副大統領に出馬します。パッキャオはフィリピン国民の
間では最も有名人。それなりに人気も高い。大混戦ですね。