2021年10月14日

◆狡猾で論外、中国のTPP加盟申請

     櫻井よしこ

日本ルネッサンス 第969回

米英豪3か国が、安全保障の枠組み「AUKUS」の創設と、米英が連携
して原子力潜水艦の技術を豪州に提供することを発表したのが9月15日
だった。

豪州はディーゼルエンジンの通常型潜水艦建造をフランス企業と契約して
いた。世界で2番目の広大なEEZを持つ豪州は、中国の脅威に対処する
ためにも潜水艦を必要としている。豪州とディーゼルエンジンの潜水艦共
同開発の契約をしていたフランス企業は、しかし、納期を守れないだけで
なく、費用も当初案の倍近く、900億豪ドル(約7.2兆円)に膨れ上がった。

自衛隊関係者は潜水艦12隻の建造費がなぜ7兆円を超える巨額になるの
か、理解できないと語る。一方で、この莫大な額を考えれば、大使召還に
発展したフランスの怒りも理解できるだろう。最後まで秘密にされたこと
に加えて、大規模ビジネスを米国に奪われた恨みは深いはずだ。米原潜技
術の豪州への移転が中国の脅威に対する軍事的対抗策であるのは紛れもな
い事実だが、そこに大型ビジネスが絡んでいることも国際政治の一側面と
して忘れてはならない。

この件について、インドは複雑な反応を示している。豪州はよくやったと
いう前向きの反応がある一方、なぜ米国は豪州だけを特別扱いするのか、
との反発もある。インドは豪州同様、4か国安全保障協議体、クアッドの
一員であり、この何年間か、米国に原潜及びステルス戦闘機を要請してき
た。にも拘わらず、インドは豪州のような特典に浴していない、不公平で
はないかという不満が渦巻いているのだ。

アフガニスタンからの米軍撤退によって、タリバン、パキスタン、中国の
結束が強まり、結果として最大の危機に直面するのがインドだという分析
は、大方の戦略家が一致する見方だ。それだけに今回の件も相俟って、イ
ンドの米国に対する不信は募るわけだ。

一方、どの国よりもAUKUSに警戒心を強めたのは中国だ。彼らは翌16
日、TPP(環太平洋経済連携協定)への参加を正式に申請したと発表した。

酷い国

TPPは単なる太平洋圏を巡る貿易・経済問題ではなく、世界最重要の経
済圏における力のバランスを左右する戦略的戦いなのである。その視点か
ら米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」(WSJ)は23日の社説で
「バイデン政権はAUKUS戦略の成功に乗って、TPPに再加盟し、太
平洋圏における権益を増進できる」と、TPP復帰を促した。

AUKUS創設に見られるように、国際社会の新たな枠組みは米中両大国
がこれからの世界秩序、価値観の戦いを制するための手段であり、経済、
軍事を含む多くの断面から見ることが欠かせない。中国のTPPへの加盟
申請についても、日本はあくまでも慎重に、多角的に考えるべきだ。
AUKUSが軍事を超えた経済戦略の一面を合わせ持つように、TPPは
経済を超えて、世界情勢を左右するパワーバランスの問題であることを再
度強調したい。

中国がTPP加盟を申請した1週間後、台湾もサッと申請した。茂木敏充
外相は「歓迎したい。戦略的観点や国民の理解も踏まえて対応したい」と
コメントした。中国の申請に関して「歓迎」という表現を避けたのとは対
照的だ。しかし、国内の議論を見ると、「中台の同時加盟案も一案だ」
(9月24日、日経朝刊)などの意見が散見され、私は驚いている。

TPPは当初「環太平洋戦略的経済連携協定」と呼ばれていたように、中
国の身勝手、国際法や常識に反する行為を許さないための戦略と位置づけ
られていた。国有企業を優遇し、ウイグル人などを強制労働に駆り立て、
企業から最先端技術を奪い取ることなど、許容できないという国際社会の
合意だった。

習近平氏の下で、中国は多少なりとも常識の通ずる国になったか。否であ
る。それどころか、以前よりずっと酷い国になりつつある。だからこそ、
今のままの中国の加盟は歓迎できないのだ。

では、如何にして中国の申請に対処するか。まず第一に、TPPは中国の
ような横暴で国際法違反常習国の行動を認めないために創った枠組みであ
ることを忘れないことだ。目標の明確な再認識が必要だ。

第二に、加盟申請に対して、交渉を開始するかどうかを決める基準を守る
ことだ。シンクタンク国家基本問題研究所の企画委員で明星大学教授の細
川昌彦氏が語った。

「6月に英国の加盟交渉の開始を決定した際、TPPのすべての既存ルー
ルに従うための手段を示さなければならないとしました。これをモデル
ケースにすべきです」

WTOにおける嘘

TPPのすべてのルールに従うと、言葉で誓約するだけでは不十分だ。
TPPのルールに従うために国内法を改正し、TPPの価値観に反する制
度、たとえば少数民族弾圧のような悪行が行われている場合、具体的にい
つまでに、どのように改善するか、またそれを如何に検証するか、などを
示さなければならない。

幸いにも英国との交渉は6月に始まった。この英国の事例を中国に適用す
ればよい。それを明確にしたとき初めて交渉に入れるようにするのだ。

世界は中国が如何にしてWTOに加盟したかを忘れてはならない。巧みに
米国を取り込み、騙したではないか。首相も務めた朱鎔基氏が美しく感動
的なスピーチをしてみせ、多くの米国人を虜にし、その経過で多くの約束
をしたが、WTO加盟から20年近く経ったいまも、全くといってよいほ
ど、実行していない。

TPPの中心軸を成す日本がしっかりする時なのである。中国と安易に交
渉を始めてはならない。交渉に入る前に、中国にTPPの全てのルールを
守ると誓約させること。それがWTOにおける嘘と同じでないことを証明
させるよう、TPPのルール遵守のためにどの国内制度をどう変えるの
か、具体的に示すよう、穏やかに、しかしキッパリと求めるのがよい。そ
れなしには交渉自体を始めてはならない。

まず英国に加盟の道を開き、中国よりずっと準備の整っている台湾との交
渉に入り、台湾加入を実現するのだ。その間に粘り強く、米国を呼び戻す
のを忘れてはならない。

トランプ前大統領がTPPを離脱した2017年以降、米国の対中姿勢は大き
く変化した。提示の仕方によっては、超党派で再加盟に挑戦する価値があ
ると、WSJも社説で強調している。米国は決して戻ってこないなどと、
悲観してはならない。TPPを本来の目的に基づいて機能させることが、
米国抜きでTPPをまとめた日本の特権であり、責任だ。この目的達成に
は強い信念と楽観が必要だが、日本にはそれができるはずだ。


━━━━━━━━━━━━━━


◆岸田政権の脱「改革」は意外と

         室伏 謙一
 

いい方向に進むかもしれませんが・・・

 先週から臨時国会が開会し、岸田文雄衆院議員が第100代内閣総理大臣
に選出されるとともに、岸田内閣が組閣され、本格的に新政権が動き出し
ました。そして、岸田総理初の国会論戦が今週から始まっています。

 論戦についての評価は終了後に譲るとして、岸田総理の所信表明演説、
その方向性は概ね良かったのではないかと思っています。勿論、新自由主
義からの脱却ということもそうですが、例えば、四半期決算の見直しにま
で踏み込んだところは、株主資本主義による短期主義という、我が国経済
の成長を妨げる元凶の一つを取り除こうという意思の表れとも考えられ、
思った以上に新自由主義からの転換、脱新自由主義を進めようとしている
ことがわかります。(もっとも、全閣僚に対する総理指示には、コーポ
レートガヴァナンス改革の推進が記載されており、どこまで本腰を入れて
取り組むのかは未知数ですが。)

 さて、岸田総理と言えば、所信表明演説で一度も「改革」という言葉を
使わなかったことに関して、フジテレビの報道番組で、「「改革」という
言葉には市場原理主義、弱肉強食など何か冷たいイメージがついていると
感じている。」と述べたそうです。

 その記事はこちら。
https://news.yahoo.co.jp/articles
/821d19c1755198f680d264b397d2005271d6505e 

 イメージというより、「改革」とは市場原理主義の手法そのものであ
り、弱肉強食の社会を助長し、格差と貧困化、貧国化を進めた元凶ですか
ら、まさに的を射た発言であると言えましょう。

 そんな岸田内閣、少なくとも今日のような危機的な状況にあっては、財
政健全化なるものを先送りにしてでも財政支出を拡大して国民を救済する
ことを明言していますし、その財源は国債であるとも言っています。

 これについても至極真っ当な考え方であり、G7のコミュニケにも記載
されたとおり、今後に備えて更なる歳出の拡大をやっていただきたいとこ
ろですし、野党も積極財政、歳出拡大に転じ始め、今や、総裁選の時から
私が指摘してきたとおり、積極財政の中身を巡る論争、そのための前向き
な論争になってきました。立民の泉健太政調会長などは、岸田総理が頻繁
に使う「分配」という言葉を使って、「分配の中身に関する論争」とまで
言うに至っています。

 こちらも非常にいいことなのですが、そこに水を差すというか、政党間
の健全な政策論争を妨害するかのような内容の文章を、財務省の事務方
トップである矢野康治事務次官が文藝春秋に寄稿しました。

 これは大いなる問題であり、与党関係者はカンカンに怒っているとのこ
と、松野官房長官などは火消しに追われているようです。では何がどう問
題なのか。これについて解説する動画を昨日収録しました。明日には三橋
TVで公開予定ですので、是非ご覧いただくとともに、拡散をお願いします。

 矢野次官による暴挙を絶対に許してはいけません。
        
━━━━━━━━━━━━━━
◆中国情報に特化する新機関を設立

「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和三年(2021)10月8日(金曜日)
通巻第7076号  


 CIA、中国情報に特化する新機関を設立
   最大の脅威はアルカイーダからチャイナへ


 10月7日、米国CIA( 米中央情報局)は、中国の脅威に情報収集
分析などの対応を特化させた新組織「中国ミッションセンター
(CMC)」を設立した。

 ポンペオ前国務長官は「敵は中国国民ではない。中国共産党である」と
明言したが、CIAのバーンズ長官も「脅威は中国国民ではなく中国政府
だ」と強調した。
「中国ミッションセンターは、米国が直面する最も重要な地政学的脅威、
敵対性を増している中国政府に対しての任務を強化する」としている。

 しかし今頃になって中国情報に特化した組織をCIAが設立したとは、
いままで何をしていたのかという疑問を抱くだろう。
 米国内で中国人スパイがやりたい放題の情報工作を展開してきたが、オ
バマ政権まではなんら有効な対策を講じず、また妖しい中国人にもじゃか
すかとヴィザを発給してきた。トランプは中国人留学生のヴィザまで制限
したが、バイデン政権は、この規制を徐々に緩和していく方向にある。

 ウィリアム・バーンズCIA長官は八月のアフガニスタンからの米軍撤
退直前、カブールを極秘裏に飛んで、タリバン幹部のバラダールと秘密協
議をしたという情報が流れた。本人は肯定も否定もしていない。

 バーンズは外交畑出身の官僚。ヨルダン大使、ロシア大使を歴任後、国
務副長官へ上り詰めた(官僚としては最高位)。オックスフォード大学に
留学組。
日本はバーンズに「旭日大綬章」を授与している(2018年)。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評  BOOKREVIEW 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜   

 ウイグルの歴史は異民族の通り道、宗教もシャーマニズム、マニ教、イ
スラム
  仏教が隆盛をきわめて時代の『弥勒との邂逅』なる古文書がでてきた

   ♪
萩田麗子・著&翻訳『ウイグルの地の弥勒信仰』(集広舎)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 ウイグルはイスラムと思いきや、嘗ては偉大な仏教国家であった。発掘
された古文書のなかには仏教の経典があった。そこには何が書かれていたか?
 表紙ならびに扉に配された「弥勒菩薩交脚座像」(平山郁夫シルクロー
ド美術館)のカラー写真に見入った。
https://silkroad-museum-collection.jp/%e5%bc%a5%e5%8b%92%e8%8f%a9%e8%96%a9%e4%ba%a4%e8%84%9a%e5%9d%90%e5%83%8f/

 明らかにヘレニズムの影響がある。日本の弥勒菩薩のもつ、やさしい、
慈愛にみちた華麗さに比べると、このウイグルの地で発見された弥勒像た
るや、男性的で荘厳で、力に溢れ、深い思考を示唆する顔の表情、凛とし
た髭。ひきしまった肉体。明るい神々しさを感じる。
知性と慈愛より肉体美による決断力を象徴しているかのようだ。嗚呼、こ
れが中央アジアの遊牧民が描いた理想の神々だったのか。
 評者(宮崎)のところへ、歌謡曲♪「ガンダーラ」を謳った「ゴダイゴ」
というグループのタケカワヒデユキ氏が訪ねてきて中国のこと、世界経済
とアジア経済について教示して欲しいというので三時間ほど喋りまくった
ことがある。
あれは三十数年前だろうか、評者の興味はむしろガンダーラ美術だが、シ
ルクロードのあちこちに仏像や仏教遺跡が出土して、しかも多くが現在の
イスラム圏だから、仏教遺跡は徹底的には破壊された。
バーミャンの石仏はアフガニスタンの狂信的集団のタリバンがミサイルで
破壊するという乱暴だった。
評者が、ウイグル自治区のベゼクリグ仏教遺跡を見学したのは四半世紀以
上前で、デジタルカメラではなく、カラーフィルムを入れた一眼レフで撮
影した。
ハミの瓜、トルファンの葡萄とともに強烈な印象がある。というのもベゼ
クリグ遺蹟に並んだ数百の仏像はすべて破壊されていたからだ。観光資源
として中国がツアーを奨励するのも、イスラムの凶暴性をガイドに語らせ
るためではないかと思った。
砂漠という荒涼な風景、その風土が、かように強烈な一神教を生むのだろ
うか。牧畜の民はつねに移動するし、大集団を形成できないから家族の絆
が強い。騎馬民族でもあり、強桿であり、猿の軍団のように強いリーダー
が衰えれば、新人が指導者となり、興亡を繰り返してきた。
 中国の史書に「丁零」と呼ばれたウイグルの先祖が書かれたのは紀元前
弐世紀ごろ、はるか以前の紀元前千五百年に歴史に登場する「きょう奴」
はモンゴル高原を席巻し、この丁零を支配下に置いた。その「きょう奴」
を追い払い、鮮卑が覇権を握って各部族が北燕、前燕などの国を建てた。
中原をうかがい、進出した鮮卑系の王朝が「隋」と「唐」である。
 モンゴル高原に次に登場するのが柔然、六世紀に突厥に滅ばされた。こ
の突厥がチュルクの漢訳である。つまりウイグル、カザフ、ウズベクから
トルコへ到る拡がりを持つ民族の総称であり、方言が異なるとはいえ、基
底は同じチュルク語だとされる。
 「突厥に服属していたときのウイグル人の祖先は、有力部族連合トク
ズ・オグズに所属する一部族として、史書には回?(かいこつ=糸偏に
乞)と記されている」と萩田氏は書く。

 歴史教科書にでてくる鮮卑、柔然、突厥、回?、そして仏教がこれらの
諸族に大きな影響力を与えた。
 仏教が日本に伝来したのは公式的には538年、当時のユーラシアの東
側に拡がったシナ大陸では、このような民族の興亡が繰り返されていた。
 555年、突厥が建国され、大きくなりすぎて東西に分裂した。西突厥
が唐と戦争を繰り返して勢力を失ない、東突厥もウイグル族に敗れた。建
国されたのはウイグル汗国で、唐と拮抗し、防衛協定のような約束のもと
シルクロードを経由する貿易で栄える。
七世紀からは突厥、唐、吐蕃(チベット)との複雑に入り組んだ戦争を繰り
返し、部族のなかには甘粛に定住し「甘州ウイグル国」を建国した。
そしてウイグル汗国時代に、突厥文字で歴史の記録を残した。西ウイグル
は、ソグド文字を改良したウイグル語の文字を編み出し、古代文書はこの
古代ウイグル文字で書かれていた。
しかし古代ソグド語を読める学者は、世界広しと雖も何人もいないだろう。
文書のなかには「仏教やマニ教、キリスト教関係の教典や賛美歌、物語と
いった宗教関係野者が多いが、暦や占いの書、医学関係」があり、加え
て、土地の売買書、賃借証文、農作物取引な行政命令書なども発見されて
いる。とりわけ大乗仏教の漢訳教典は完全なかたちで発見されたのだ。
本書は、その古代教典のひとつ、「弥勒との邂逅」に日本訳であり、現代
人に何を語りかけているかが翻訳の主旨である。
        
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 
【知道中国 2286回】     
 ─英国殖民地だった頃・・・香港での日々(香港168)

  △
 ここで想像を逞しくするなら、「関于制止上演『禁戯』的通知」が糾弾
の対象とする「非合法劇団や素人一座」とは、当時巷に溢れた待業者(失
業者)のなかで芝居心を持つ者が集まって結成した俄劇団ではなかっただ
ろうか。

 ?小平が掲げた「先富論(誰でもいい。どんな方法でもいい。豊かにな
るヤツから先に豊かになれ)」を勿怪の幸いに、客を呼べる「淫毒奸殺」
の演目を舞台に掛けた。昔取ったナンとやら。どさくさ紛れに一山当てて
やれと企んだ元役者がいたように思える。

 するとどうだ。10年に及んだ文革の間、革命現代京劇という毛沢東式の
革命的勧善懲悪芝居に辟易していたことから、娯楽に飢えた人々が殺到し
た。かくして「非合法劇団や素人一座」の公演が重ねられる。
大当たりに次ぐ大当たりの結果、「淫毒奸殺」が芝居小屋から社会に飛び
出してしまい、「大衆に毒素をばら撒き、劣悪な影響を与え」ることに
なった。こういった乱れた風潮は、やはり共産党政権としては許しておく
訳にはいかないということになったはずだ。

 そこで中国政府(文化部)は、1950年から52年の間に禁戯処分にした演
目を再び明示し、「関于制止上演『禁戯』的通知」を出した。おそらく、
そんなところが実情に近いのではなかろうか。

 じつは文化部は1979年9月にも同じような内容の通知を出している。こ
の点から考えるなら、対外開放初期の混沌とした社会では、舞台と言わず
社会でも「淫毒奸殺」が大手を振って歩いていたようにも思えてくるのだが。

 やはり「淫毒奸殺」が消えた舞台なんぞクソ面白くもないのである。舞
台に「淫毒奸殺」の非日常の世界が描き出されるからこそ芝居は人々を引
きつける。
これは古今東西を超え、イデオロギーや政治信条に関係のない人間社会に
とって常理だろうに。

 ?小平が踏み切った対外開放は、毛沢東思想が一元的に支配する閉鎖体
制をブチ破り、基本的には現在につながる経済成長のスタートとなったわ
けだが、その一方で舞台に「淫毒奸殺」を解き放ってしまった。こう考え
るなら、「関于制止上演『禁戯』的通知」から、対外開放初期の社会の実
態が浮かび上がってくる。

 閑話休題。ここで奇妙に思うのが建国後の毛沢東政権にしても台湾に逃
げ込んだ後の蒋介石政権にしても、共に「大劈棺」を禁戯演目に指定して
いることだ。政治的には互いに不倶戴天の敵であるはずの2つの政権が、
期せずして同じ演目を禁じたのである。

 この演目の種本は「蝶の夢から覚めた荘子が、夢の中の蝶が自分なの
か。それとも夢から覚めた自分が自分なのか」を問う、例の“荘子胡蝶の
夢”である。

 荘子が歩いていると、若い女が道端に蹲り手にした扇で盛んに土饅頭の
墓を扇いでいる。こんなシーンで「大劈棺」は始まる。土饅頭は水分を含
んでいて真新しい。墓穴を掘って死者を葬ったばかりであった。
そこで荘子が声を掛けると、「墓が乾けば新しい夫と結婚できる」との返
事。同情した荘子が手伝って2人で扇ぐと、程なく墓は乾燥した。彼女は
扇を荘子に渡して感謝するや、小躍りしながら新しい夫の元へ。

 帰宅した荘子が妻の田氏にこの話をすると、田氏は荘子の手にした扇を
ひったくって破り捨て、「世の中にこんな破廉恥があろうとは」と憤慨す
る。この姿に接した荘子は、妻の貞節振りに感動すること頻りだった。

 数日後、突然、荘子が死んでしまう。もちろん田氏の嘆き悲しみようは
尋常ではない。通夜の席である。棺に額ずき嘆き悲しむ田氏の前に荘子の
弟子がお悔やみにやってきた。それが眉目秀麗の超イケメン。そのうえ独
身。かくて田氏は一目惚れ・・・オイオイ。

     
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
読者の声 READERS‘OPINIONS どくしゃのこえ 読者之声
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
(読者の声1)馬渕睦夫・金岡秀郎両先生による講演です。日米同盟を揺
るがしかねないバイデン政権、そして近年さらに苛烈を極める中国の人権
弾圧に臨んで大変タイムリーなテーマでもあります。ここでしか聞けない
話ですので、研究者以外の方もぜひ気軽に御参加下さい。
「日本国史学会 第79回連続講演会」
https://www.facebook.com/events/427174731961053
         記
【日時】 10月9日(土)14:00〜16:45(開場13時30分)
【講師】 馬渕 睦夫(元防衛大学校教授)「ベルサイユ・ワシントン体制
と日本」
     金岡 秀郎(国際教養大学特任教授)「ウイグル問題と日本」
        基調講演後、質疑応答
【会場】 日本経済大学 東京渋谷キャンパス 10号館(大学院棟)246ホール
    (JR渋谷駅南改札西口から徒歩3分)https://shibuya.jue.ac.jp
/access_tokyo/
【資料代】 学会員2,000円 / 非学会員3,000円(大学生・大学院生は一
律500 円、当日入会可能)
【主催】 日本国史学会 http://kokushigaku.com/
※ コロナ対策のためマスク着用、体調確認など御協力お願いします。
(日本国史学会事務局)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。