2022年02月23日

◆世界の厄介者、北朝鮮を育てた中国

櫻井よしこ

北朝鮮が前例のない頻度でミサイルを発射し続けている。狙いのひとつは
米国を交渉の席に引きずり込み、なんとしてでも国連の対北制裁措置を解
除させることだろう。

2017年9月、北朝鮮はそれまでにない大規模な核実験を行った。広島の核
爆弾の約10倍、160キロトンの水爆弾頭の実験だった。同年11月には大陸
間弾道ミサイル(ICBM)も発射した。国連が北朝鮮に厳しい経済制裁
を科したのは当然だ。朝鮮問題の専門家、西岡力氏が語る。

「安倍首相とトランプ大統領が主導した国連制裁が、いま非常に効いてい
ます。北朝鮮の窮状は衝撃的です。今年1月に列車とバスが中朝間を往来
しましたが、中朝貿易が再開したとはいえず、北朝鮮の物不足を解消する
には程遠い。その結果、北朝鮮では紙幣印刷に必要な紙も印刷資材もなく
なっています。そこで北朝鮮当局は国産のペラペラ紙で『中央銀行トン
票』と呼ばれる臨時のお札発行に追い込まれました」

トン票については以下のような注意がなされている。

「紙質が良くないことをよく理解して丁寧に清潔に利用し、汚したり破損
させたりせず、愛国心を発揮して少しでも長い期間利用せよ」

食糧危機も深刻である。21年には、1月、2月、6月と3回も立て続けに朝鮮
労働党中央委員会総会を開き、食糧危機克服の緊急対策を論じた。にも拘
わらず、昨年は軍や党幹部への食糧配給も断続的に止まった。

断崖絶壁に立つ金正恩氏の連続ミサイル発射の意味はまず、この苦境を打
開するために米国と交渉したいということだろう。同時に一連のミサイル
発射という強硬手段は、米軍に対する恐怖心の現われでもあろう。

前述の17年9月3日の水爆実験から3週間後、トランプ大統領(当時)はグ
アムから戦略爆撃機B‐1Bを北朝鮮に向かわせた。F‐15C戦闘機など十
数機に守られ、巨大な図体の爆撃機は正恩氏がそのとき滞在していた北朝
鮮の東海岸にある元山沖で模擬空襲演習を行った。米軍は正恩氏殺害も可
能だった。トランプ氏は元山沖での演習に「金がかかる」などと不満を述
べたが、マティス国防長官は「大統領に核兵器使用を勧めなければならな
い状況に備えて」「苦悩した」と語っている。状況は非常に緊迫していた
のだ。

米国の怒りが本物だと感じた正恩氏は、その後、核及びミサイルの実験を
ピタリとやめた。

そしていま米国は西太平洋に空母5隻を展開中だ。それを正恩氏が気に病
んでいないはずはない。追い詰められた正恩氏が逆に強気に出る可能性を
指摘するのは元防衛大臣、小野寺五典氏だ。

「バイデン政権の対北政策には、トランプ前大統領のときとは違って宥和
的な姿勢はありません。正恩氏は自分の力を見せつけるためにグアムに届
く中距離ミサイルを撃ってみせたのだと思います。北京五輪の後には
ICBMの発射実験もあるかもしれません。その場合、米国はウクライナ
を狙うロシア、北朝鮮、中国を相手に三正面の戦いに直面することになり
ます」

ウクライナが屈服するとき

昨年8月末、バイデン氏はアフガニスタンからの米軍撤退を実現した。中
東と中国の二正面作戦は出来ないために、中東から撤退して中国に集中す
るためだった。しかしわずか5か月で情勢は大きく変わり、二正面を超え
て三正面の戦いの危険性が高まっている。

ロシアのプーチン大統領のウクライナ戦略がどうなるかはわからない。08
年の北京五輪のときも、14年のソチ冬季五輪のときも、プーチン氏は他国
を侵略した。今度もウクライナ軍事侵略に踏み切る可能性はあるだろう。
そのとき米国は、いま論じているような対ロシア経済制裁だけで乗り切れ
るか。NATO諸国からもっと強い行動を求められるのではないか。米国
が動かなければウクライナはロシアに組み敷かれる。米国が何もせずウク
ライナが屈服するとき、中国は好機到来と考え、台湾にあらゆる面から圧
力を強めるだろう。日本存亡の危機でもある。

中国がどれ程性悪な国か、知っておきたい。09年の出版で、トーマス・
リード、ダニー・スティルマン両氏による『核の急行便』から引用する。

ちなみにリード氏は米国空軍の長官を務め、レーガン政権下で国家安全保
障会議のスタッフだった。氏は、戦わずしてソ連を崩壊に導いたレーガン
政権の対ソ政策立案に貢献した。スティルマン氏は原爆の研究で知られる
ロスアラモス研究所に28年間勤めた核の専門家だ。

同書は結論の部分で中国、とりわけケ小平の役割を特記している。ケに
よって核兵器は第三世界に拡散されたというのだ。ケはまず、パキスタン
に核技術を与え、アルジェリアの砂漠地帯に秘密の原子炉を築きプルトニ
ウム生産を試みた。サウジアラビアには核兵器のみ搭載可能なミサイルを
売った。北朝鮮の核開発を黙認し、石油欲しさにイランの核開発計画にも
目をつぶった。核だけでなく大量虐殺が可能な生物化学兵器の拡散に、ケ
は最も熱心だった。

中国の犯行

06年、北朝鮮の核実験を受けて、国連では北朝鮮の港に出入りする船を臨
検すべしという声が起きた。それに中国は断固反対した。そのうえ、国際
規約で禁じられている物資や製品を核拡散諸国が北朝鮮で調達する際、中
国はそれら諸国の航空機が中国上空を飛行する便宜を図った。

米国がイラク戦争に突入する直前、中国はイラクにミサイルの部品を送っ
た。またミサイル誘導装置に必要なソフトを「子供用のコンピュータソフ
ト」と偽ってイラクに供与した。パキスタンの死の商人、カーン博士には
核兵器に関する情報をひとまとめにして教え、カーン氏はそれをリビアや
イランなどに売った。その他多くの事例は割愛する。

リード氏らは、中国の犯行だという痕跡さえ残らなければ中国はニュー
ヨークやワシントンへの核攻撃にも反対しない可能性があると結論づけて
いる。

三正面の戦いで米国の苦戦は当然だ。日本がなすべきことは少しでも早く
日本の力を強くすることだ。日米間には菅・バイデン両首脳の共同宣言、
日米の「2+2」などでの合意がある。いずれも台湾の安全と日本の安全
は事実上重なるとして、日米で中国に抑止力を効かせるという確約だ。万
が一、抑止が無理なら「対処する」とも合意した。対処するとは、行動を
共にする、軍事的に扶(たす)け合うということだ。ミサイルが飛び交う戦
いが予想されるとき、ミサイル防衛での対処は無理で、打撃力の強化が必
要だ。核で恫喝する中露北朝鮮に対して、わが国の非核3原則を2原則へと
一日も早く見直すことだ。戦争抑止の最大の力が核戦力であることを認識
したい。
    

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


◆開戦前夜/24“悪の三傑”露中+ベラルーシに制裁を

“シーチン”修一 2.0

【Anne G. of Red Gables/433 2022/2/21月】マッチョがウリのプーチ
ンもすっかりヂヂ臭い体形になってきた。この頃では権力から離れても訴
追されないという「免責法案」成立を狙っているようだが、上手く行くか
どうか。

2014年のウクライナ領クリミア半島侵略以来の国際社会による経済包囲
網にコロナ禍も加わってロシア経済は減速気味、これではプーチンは“有
終の美”を飾って引退というわけにはいかない。これぞという国史に残る
ような華々しい実績を創らなければ、という焦りがありそうで、プーチン
は今度はウクライナ東部を侵略するつもりである。軍事力で世界秩序を突
破し、ロシア・ソ連帝国再生の名君になりたいのだろう。

ロシア国民は日々の生活が多少なりとも上向けば着いて来るだろうが、
上手く行くかどうか、かなり怪しいのではないか。国際通貨としてドル、
ユーロ、ポンド、円は信用があるが、ロシアのルーブルは脆弱で、「ロシ
アがウクライナに侵攻すれば米欧は大規模な経済制裁に踏み切る構えで、
通貨安やインフレ、成長鈍化への懸念が強まっている」(日経10/21)。

そもそもロシア経済はかなり脆弱だ。「服部倫卓ブログ ロシア・ウク
ライナ・ベラルーシ探訪2021/5/17 非原料・非エネルギー輸出が増えた
と言ってもゴールド頼みでは・・・」から。

<私はロシアの通商政策を研究しているが、現時点(2021年5月)で
プーチン政権が最重要視していることになっているのが「非原料・非エネ
ルギー商品」の輸出を拡大するという目標である。石油・ガスをはじめと
する原燃料に偏重した輸出構造を脱し、商品の多角化・高度化を遂げよう
というわけだ。

2020年の非原料・非エネルギー輸出の動向をまとめたロシア輸出セン
ターの資料によると、2020年のロシアの非原料・非エネルギー輸出は1613
億ドル(18兆5495億円)に上り、コロナにもかかわらず、過去最高を達成
した。

ただ、その中身が問題であり、2020年の非原料・非エネルギー輸出の主
要品目をまとめると、次のようになる。

金(ゴールド):185.4億ドル、小麦:81.9億ドル、プラチナ族:78.4
億ドル、鉄鋼半製品:48.6億ドル、精錬銅:46.4億ドル、木材:43.1億ド
ル、アルミニウム・同合金:42.2億ドル、冷凍魚:28.3億ドル、ひまわり
油:28.1億ドル、複合肥料:27.4億ドル、鉄鋼鋼板:25.5億ドル、窒素肥
料:24.9億ドル、ターボエンジン・ガスタービン:20.7億ドル、ニッケ
ル:18.6億ドル、カリ肥料:17.8億ドル

このように「非原料」と称しながら、現実には限りなく天然資源に近い
ようなプリミティブ(初歩的)な商品が多い。2020年にはゴールドが高騰
したため、その輸出が221.6%も急増、それによって非原料・非エネル
ギー輸出全体も押し上げられた形である。

ロシアは資源の国際価格に翻弄されないためにも非原料・非エネルギー
輸出を伸ばしたいのだが、現実には一部商品の高騰に助けられて2020年に
その輸出増を達成したという逆説がある>

ゴールドとプラチナ輸出で263.8億ドル(3兆円)! 何となく“お宝”まで
売る「タケノコ生活」、そのうち「売り家と 唐様で書く 三代目」となり
そうな・・・ハイテク産業への突破口が開けないこんな状態を「中進国の
罠」と言うが、プーチン・ロシアも罠にはまるのか。

プーチンはコロナ禍による経済後退をワクチンではなく、効き目抜群の
ウォッカでいち早く乗り切ったようだが、それをチャンスと見てウクライ
ナ侵攻を決断したのかも知れない。しかし昨年から高インフレが始まり、
今はかなり怪しい気配がする。ブルームバーグ2022/2/19「ロシア経済、
2021年は4.7%拡大――08年以来の高成長」から。

<世界最大級のエネルギー輸出国であるロシアは、2021年の経済が過去
10年余りで最高の成長率を記録した。原油高と個人消費の伸びが後押し
し、新型コロナウイルスの感染拡大による前年のリセッション(景気後
退)から回復した。

ロシア連邦統計局によると、昨年の国内総生産(GDP)は前年比4.7%増
加した。ブルームバーグが調査した市場予想は4.5%増。政府の景気刺激
策や世界的な景気回復、原油高が成長を押し上げた。20年は新型コロナ対
策の行動制限などが響き、ロシア経済は2.7%縮小していた。

ロシア中央銀行のナビウリナ総裁は先週、コロナ禍からの回復期は終わ
り、今や経済は過熱しつつあると警告した。中銀は過去1年間に政策金利
を合計5.25ポイント引き上げたが、それでもインフレ率は中銀目標の2倍
を超えて推移している。同総裁は今年の成長率が2−3%に鈍化する可能性
が高いとし、来年はさらに減速するとみている。

ウクライナを巡り緊張が高まる中、西側諸国がロシアに新たな制裁を科
す恐れがあることも見通しを曇らせている>

日本外務省の「ロシア連邦基礎データ」はちょっと古いが、おおよその
状況は分かる。それによると――

<◆貿易(2017年)(1)輸出:3519億ドル(燃料等鉱物製品,鉄鋼,貴
金属等)(2)輸入:2285億ドル(機械類,医薬品,衣類)(3)主な貿易
相手国:輸出上位から中国,オランダ,ドイツ,ベラルーシ,トルコ,イ
タリア、輸入上位から中国,ドイツ,米国,ベラルーシ,イタリア

◆総兵力:現役約90万人(準軍事組織「国境軍,国内軍他」約55万人を
除く)、予備役約200万人。国防費は2010年以降増加の一途をたどり、
2016年は3兆7750億ルーブルと前年比増>

プーチンはウクライナ侵略に際して、インフレ率の上昇、ルーブルの下
落、西側先進国の猛反発は「想定外」だったのではないか。2014年のクリ
ミア半島強奪の際は狡猾なハイブリッド戦で成功したが、今のウクライナ
東部侵略はそれと似ており、自由陣営は「同じ手は食わぬ」と警戒してい
るはずだ。

zakzak 2022/2/16「日本復喝! 台湾が警戒する中国“ハイブリッド戦”
情報戦やサイバー攻撃で相手を攪乱し、無血併合を画策か 日本国内でも
不可解な事案発生の危険性」から。

<ロシア軍はウクライナ国境付近の兵力増強を続けている。この様子
を、中国の習近平国家主席や、台湾の蔡英文総統はじっと見ている。ロシ
アは2014年、ウクライナ南部クリミア半島を併合した際、情報戦やサイ
バー攻撃を組み合わせて戦略目標を達成する「ハイブリッド戦」を展開し
た。ウクライナと台湾の連動が懸念されるなか、産経新聞論説副委員長の
佐々木類氏は、中国による「台湾有事」でも警戒される軍事戦略に迫った――

北京冬季五輪開幕直前の1月24日、台湾国防部は、中国軍の最新鋭電子
戦機「殲16D」が初めて台湾の防空識別圏(ADIZ)に進入したことを確認
した。同機は、レーダーや通信システムなどを攪乱・無力化する能力を持つ。

警戒すべきは、殲16Dの進入が、これまでの戦闘機や爆撃機による軍事
的威圧や牽制で終わらず、本格的な台湾侵攻につながる兆候かもしれない
ということだ。本格的な侵攻といっても、中国軍による着上陸作戦など正
規軍による攻撃ではない。「ハイブリッド戦」である。

「ハイブリッド戦」とは、戦闘機、艦船などの軍事力だけに頼らない作
戦だ。例えば、軍艦ではない船舶による領海侵入や上陸、正規軍ではない
武装兵の動員、電力や通信網といったインフラ破壊、サイバー攻撃による
フェイクニュースの拡散などで相手を攪乱し、知らぬ間に優位な状況をつ
くり出すことを狙いとする。

ロシアが2014年2〜3月にかけ、ウクライナのクリミア半島を占拠し、自
国領土に組み込んだ際に用いた戦術だ。ロシア・ソチで開催された冬季五
輪の閉幕直後、サイバー攻撃などによるインターネット通信やテレビ、ラ
ジオなどへ電波妨害を行い、正体不明の武装組織(=高度に訓練されたロ
シア特殊部隊とされる)が議会や空港、行政施設を瞬く間に占領した、あ
れだ。

ソチ・パラリンピックの直前であり、世界中がまさかこのタイミングで
クリミア半島に手を出すまいと油断していたその隙だ。わずか2週間で、
人口250万人、九州の7割の面積を持つクリミア半島が、ロシア主導の透明
性を欠く住民投票の後、ほぼ無血でロシアに併合されてしまった。

中国が「台湾統一」で狙うのは、まさにこうした戦術とみられている。
もともと「孫子の兵法」の国である。戦わずして勝つことを考えるのは必
然だ>

戦国の武将曰く「戦争は5勝1敗とか5勝2敗がいい。勝ち過ぎると“勝ち
パターン”に捉われ、敵に作戦を読まれて大敗するからだ。時々敗けるこ
とで新たな作戦が生まれるから、敗戦は悪いことではない」。

プーチン・ロシアの「クリミア式ハイブリッド作戦」。策士、策に溺れ
るというが、いくら自由陣営が寛大、お人好し、ボンクラでも「二匹目の
ドジョウ」はムリだろう。騙された方は「その手は桑名の焼き蛤」と警戒
するのは当然だ。プーチン・ロシア、習近平・中共、ルカシェンコ・ベラ
ルーシともども“アカの三バカ”に国際社会はさらなる制裁を課すべし。買
わない、売らない、付き合わない。包囲戦は効き目がある。「独裁者 み
んなでなくす 地球の輪」、同志諸君、頑張ろうぜ!


     

━━━━━━━━━━━━━


◆米国務省、ベラルーシからも

「宮崎正弘の国際情勢解題」 
  令和四年(2022)2月18日(金曜日)
     通巻7223号 <前日発行>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 米国務省、ベラルーシからもアメリカ人の退去を勧告
  ウクライナの米大使館は誰もいなくなった。ミンスクもまた?
*****************************

(以下は拙著『日本が全体主義に陥いる日』(ビジネス社)のベラルーシ
の章の縮約)

 日本からベラルーシの首都ミンスクへ行くにはモスクワ経由が一番近
い。320人乗りのエアバスが毎日二便以上モスクワへ飛んでいるからで
ある。ベラルーシはヴィザが必要な国だが、加えてロシアのヴィザも必要
だ。ロシアと軍事同盟を結んでおり、ベラルーシはロシアの「国内」扱い
となっているからだ。

 モスクワに一旦、「入国」するとミンスク行きは「国内線」ターミナル
にあった。出入国審査はかなり厳しい。ミンスク空港から街へ入る高速道
路で目にした看板は英語、ベラルーシ語、ロシア語の順番。人々はロシア
語、ついで母国語、若い人は英語も喋るがたどたどしい。ドイツ語のほう
がよく通じる。

 ミンスクで雇ったガイドのO氏は東洋言語学者のアルバイト、日本にも
二年の留学経験を持つ。夏目漱石が好きで、なかでも『心』を好むという
正調日本語を操る紳士だった。
 歴史を振り返っても、ベラルーシはモンゴルに攻められたこともあれ
ば、リトアニア公国、ポーランド大公国と主が入れ替わり、ナポレオンが
通過し、ナチスが侵入し、ユダヤ虐殺にも手を貸した。

戦後はロシアに合体されて、「ソ連の一員」という悪夢の時代が長く続い
た。このような経過の中でベラルーシ独自の歴史観は成立しにくく、ソ連
時代の残滓として言語状況にロシア語優位がくっきりと残った。歴史学に
も確乎としたものがない。誇るべき文化遺産が希薄だったからである。

 ベラルーシの国土の半分は森林。観光ガイドブックに謳われている「妖
精の街ミンスク」などという惹句ゆえか、よく耕された広々とした畑の向
こう、緑深い森の間からひょこっと可愛い妖精でも現れそうな、心和む景
色が続いている。

そしてその緑と畑を潤しているのは大小数知れない湖だ。海の出口がな
く、屹立する山脈もなく、標高400メートル足らずの丘が一番の高地だ
とか。台地と低地、湿地帯の緩やかな起伏が全土に展開され、小麦、ライ
麦、大麦、そして酪農。いまはサトウキビの青々とした葉がどこまでも続
いていた。

 ▼KGB本部、レーニン像が残った

 街にはレストランが多い。都心では郷土料理、イタリア料理やフランス
系のしゃれたレストランが繁盛しており、赤カブ主体のボルシチスープが
美味かった。グルジアからの美味なワインにもありつけ何よりも物価が安
いので旅行者にとっては魅力的な街だ。
 ロシアのマンションがユーロ建てであるように、この国はマンションの
ローンは米ドル建てである。

 ベラルーシは二重構造社会であるようだ。
 広大な広場に屹立しているレーニン像の奧に、異様な、いかめしい建
物。ガイドブックに何のビルかの記載もない。「おそらく旧共産党本部で
しょう?」という筆者の推定にガイド氏は「そうだ」と小さく頷いた。外
見上は廃屋、まるでがらんどうである。

 そこから二百メートルのところに不気味な、幽霊屋敷のごとき無機質な
建物がある。これが悪名高き旧KGB本部だ。まさにオペラ座かと錯覚す
るほどに豪華な彫刻が玄関脇を飾り、しかし玄関は開かずの扉、職員は裏
口から出入りする。この建物、しかも街のど真ん中に位置する。これもま
たガイドブックに何の紹介もない。ガイドのO氏が教えてくれるまで分か
らなかった。

 対面の小さな公園の入口にはKGB初代議長だったジェリジンスキーの
銅像があった。
 懐かしくも気味悪い名前である。撮影していたら「血まみれの男さ」と
ベンチに所在なげに座っていた初老の男が吐き捨てた。

 ベラルーシの人々は忍耐強く、恥ずかしがり屋、そして勤勉である。こ
の点は日本人と似ている。つまりインモラルで行儀の悪い中国人は大嫌
い。ところがその中国が15億ドルの投資を運んできたから外交では中国
重視に傾き、ロシアのプーチンを慌てさせた。いかにもルカシェンコ大統
領らしい狡猾な遣り方である。

 ▼シャガールもシャラポアもグロムイコもベラルーシ人だ

 ベラルーシの誇りはテニスのシャラポワ、かつてのグロムイコ外相。そ
して画家の巨匠として知られるシャガールだろう。

 夢と幻想、おとぎ話のような世界を描く、抽象的なリアリズムで知られ
るシャガールはベラルーシ生まれのユダヤ人でフランス、米国にながく暮
らしたが、ミンスクの北東300キロのヴィテプスクという街が故郷だ。
それを聞いて車を飛ばして行ってみた。往復九時間の強行軍となった。

 ヴィテプスクの人口は37万強。繊維産業とトラクター、農薬、肥料の
他、ロシアとの国境に輸出特区があり、また製薬産業が有名である。市内
には薬科専門大学もある。
 しかし町を歩くと嘗て20万人もいたユダヤ人街はあとかたもなく、ナ
チスに協力したユダヤ人虐殺の跡地を埋めて完全に消し去った。ポーラン
ドのアウシュビッツのような収容所跡も完全に消され、シナゴーグの残骸
がひとつだけあった。

 ユダヤ人だったシャガールはベラルーシの人々にはつつましやかな誇り
であるようだ。生家跡記念館、アートセンターはひっそりとして、外国か
らの僅かな観光客の求めに応じている。地元の人々はあまり立ち寄らない
らしいのだ。ドイツ人への憎しみはないらしい。ロシアに対しては好きも
嫌いもなく、死活的に重要な国という位置づけである。 
  ●
 このベラルーシからアメリカ人の退去を米国務省は在留米人に勧告し
た。キエフの米国大使館はすでに無人、幽霊屋敷化している。
    
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
★読者の声  どくしゃのこえ  READERS‘ OPINIONS 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
(読者の声1) 「言論テレビ」(櫻井よしこ氏主催)の番組「花田編集長
の右向け、右」
宮崎正弘さんがゲスト出演です。テーマは「中国経済はとうに死んでい
る」(仮題)。およそ40分ほど。
https://www.genron.tv/ch/hanada/
 放送は2月18日(金曜)午後10時の予定です。
   (言論テレビ)

 ♪
(読者の声2)未来ネットの番組「宮崎正弘の生インタビュー」(2月
16日生放送)のゲストは福山隆元陸将。テーマ「インテリジェンスとは
何か」でした。アーカイブでご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=ETe5duPyL7g

 討論は下記のように進みました。
(1)インテリジェンスとは何か 広報(PRとは宣伝のみならず広く知ら
しめる)
秘密工作(敵陣営にスパイ、影響力ある代理人など)
謀略工作(攪乱、陽動、偽情報、怪文書)。心理・法廷・宣伝戦=超限戦
(ハイブリッド戦)
(2)日本の先駆者たち。川上繰六、田中義一、中村天風、石光真清、福
島泰正、廣瀬武雄、明石元二郎。そして戦争中の神本利男、小野寺信、藤
原岩市
(3)陸軍中野学校(1938〜45)。卒業生2500名
広い知識と柔軟性、融通性が必要。予備仕官学校将校が適任。東京帝大、
一橋大学。拓殖大学が多く早慶、明治。拓大には大川塾も。岩畔豪雄とい
う天才がいた。F機関、南機関、ハリマオetc。そして小野田少尉
(4)JCIAは可能なのか? 内閣安全保障室、総理府、公安調査庁、
警察はあるが。。。
GRU、KGBのロシア現代版はGRV、FSB、SVR。米国はOSS
からCIA、そしてFBI。中国は孫子の伝統。英米が日本にファイブア
イズ参加を勧誘してきた。
 ●次回は3月18日、ゲストは岡部伸(産経新聞前ロンドン支局長。元
モスクワ支局長)の予定です。

  ♪
(読者の声3)YOUTUBE 2/17日放送、「福山隆氏(元自衛隊陸将)『宮
崎正弘の生インタビュー #18』インテリジェンスとは何か」について。
 優秀なスパイは一人で、兵士数万人の働きも可能で、大変コスパが高
い。しかし、スパイ本人にとっては割りの合わない仕事で、外地で地味な
目立たない面白くない普通の生活を強いられ、本業が露見すれば、拷問に
遭い殺される。
あるいは、寝返って敵の家来になる。007の映画でも、楽しい優雅な生
活もあるが、よく殺されそうになる。
 故に平和な時代には、多くのCIAの人材の中でも現地に赴任を望む者は
ほぼ皆無になり、電子的な情報にのみ依存し、快適で安全な米国内で解析
することで、茶を濁す。家族と離れることもなく、普通の生活ができる。
現地にいれば、まずい食事、汚い環境、病気、などなど。現地の言葉も文
化も直ちに正確に習得せねば、素性がバレてしまう。
そんな卓越した才能と苦労があれば、国内で金融機関などで雇用され、か
なりの高給が保証され、身の危険もない。
トかつて中近東で働いていたスパイRobert Baer氏が言っていた。彼は、
大学時代に目をつけられ、勧誘され、スパイ訓練学校で審査を受け、必要
な能力があると判断され、アラビア語を学び、教育され、現地に送られた。
https://www.youtube.com/watch?v=382M7AxK6eU(英語、重要)

 もう一人の男John Perkins氏も大学在学中に発掘され、CIAで教育を受
け、米国民間金融機関の中南米の現地に派遣され、民間人として現地の政
治家、企業家と交渉する。彼の場合は、公には民間企業の高官ではある
が、米国政府の戦略の実現の手段としても機能することになる。
要は、サラ金の仕組みを拡大し、小さな国の政府要人を賄賂で操り、膨大
な負債を負わせ、資産を合法的に奪う、という支那の手口を行っていた。
純粋に民間人ではないので、必要があればCIAの工作員と共謀し、邪魔に
なる者を暴行、殺人などの手段を使って計画を実現させる。氏は、良心の
呵責により、改心し、内情を暴いた。「Confessions of an Economic Hit
Man」2005年、著者 John Perkins
 
いずれの場合にも、大学を出て仕事について家族を持って仕舞えば、勧誘
することは困難であろう。
プロの野球、サッカー、囲碁の人材を集めるように、中学くらいの若いう
ちから候補者を見つけて、継続的に勧誘・訓練をするような方法が必要だ
ろう。参加を希望するものには夏休みなどに集めて教育、訓練をし、適正
な者を選んでいく。
CIAの場合、田舎の目立たない別荘を使っている。正しい教育をすれば、
国家のために犠牲を厭わぬ者が生まれるだろう。才能のある偏差値の高い
者は、利己的でなく正義感も高いという傾向がある。国益に貢献すると
は、高貴な作業である。
 しかし仮に立派なスパイが養成され、貴重な情報が秘密裏に外務省に届
けられても、それが現地の駐在員から敵に筒抜けになっては、意味がな
い。スパイの身元も暴かれ、見せしめに公に拷問されてしまう。

故に日本の敵、敵の代弁者、外務省をぶっ壊す、ことから始める。そもそ
も、日本の主要機関、政府、文科省、NHK, などには敵のスパイが巣食っ
ているのだろう。まず、これらの寄生虫を排除。それには、まず検察、裁
判所の中のスパイを排除。多くの反日、親中、媚中の日本人は事実上、自
発的に金も女も与えられずに、スパイとして機能している。バカな本人も
気づかない、罪の意識もないらしい。
それは彼らの「無知」に由来する。無知を製造するのが文科省・日教組
(在米のKM生)

  ♪
(読者の声4)貴誌7222号、(読者の声2)、在米のKM様のご投
稿、ここ20年の共産中国の勢力拡大と、今後30年に共産中国が一層勢
力拡大するかと想像すると、孫たちの時代の日本の将来像に深い危惧を抱
かざるを得ず、KM様の御指摘に強く賛同する者ですが、文中で、「そし
て、国防、食糧、エネルギーなどの必須条件を早急に国内で確保する」と
述べておられます。
 小生にはこのKM様の論は、極めて非現実的に感じられ、それらが「確保
出来ない」からこそ、右往左往の今日の我が日本の政治状況と思うのです
が。。
KM様はその主張に対応する「具体的な諸施策(の案)」はお持ちなので
しょうか? もし良ければお聞かせ下さい。 
(KI生、尼崎市)

   ♪
(読者の声5)シンガポール陥落から80年。1943年にインド国民軍が作成
したプロパガンダポスターがある。イギリスの分割統治と強欲をよく表現
しており、チャーチルが蜘蛛の巣の中心にいて、周りの網にかかったイン
ド人から盗んだ金塊を持っている。
https://www.reddit.com/r/PropagandaPosters/comments/rno7kc/smash_the_spider_and_save_india_an_ina_poster/
 色調を鮮やかに再現したものがこちら。
https://www.topfoto.co.uk/asset/4291283/
https://onl.la/Dg3vT3s
 ベンガル語?のテキストは、「自由の絶好の機会が到来しました。起き
てください。立ち上がって、英国の柵/鎖を壊してください」。
 チャンドラ・ボースが 尻尾に星条旗のリボンをつけた獅子(英国)の首
を刎ねるもの。
http://www.psywarrior.com/BoseBeheadsLionIndia.jpg
 英国統治下で死屍累々、独立すれば平和で豊かになることを表現。
http://www.psywarrior.com/JPIndia03.jpg
 日本の宣伝もなかなかのものです。
  (PB生、千葉)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。