2022年02月24日

◆お先真っ暗な日本の未来。

アッズーリ

中国とロシアの暴走が壊す北東アジアの平和

領土や人権等の問題をめぐり西側諸国と対立する中国とロシアですが、そ
の「覇権的な動き」は日本に明るくない未来をもたらす公算が大きいよう
です。先日掲載の「中露海軍が『津軽海峡』航行の衝撃。日本は“鬼門”の
防衛力を強化せよ」で二国の脅威を詳細に綴った、外務省や国連機関とも
繋がりを持ち国際政治を熟知するアッズーリ氏は今回、中露の動きがこれ
まで以上にエスカレートする可能性を指摘。さらに彼らにより北東アジア
の分断が進みつつある事実を記すとともに、日本が安全保障面で接近を強
めるべき国の名を挙げています。

中国・ロシアによって分断が進む北東アジア
今年に入って、中国やロシアの覇権的な動きが先鋭化している。まず、ロ
シアはウクライナ国境近くに軍を10万以上とも言われる軍を展開し、同国
へ侵攻する動きを見せるなど今日緊張が高まっている。米国のブリンケン
国務長官は1月5日、ドイツのベーアボック外相と会談してロシアが軍事的
圧力を強めるウクライナ情勢について話し合い、ロシアが軍事的侵攻をし
た場合は大規模な経済制裁に踏み切ると警告した。バイデン大統領も2月
が危ないと指摘するなど、2014年のウクライナ危機の再現を危惧する声が
高まっている。長年、プーチン大統領は北大西洋条約機構NATOの東方拡
大、ウクライナの西洋接近を強く警戒しており、軍事的圧力を強めること
でそれらを阻みたい狙いがある。ロシアは2014年2月のソチ五輪後にクリ
ミア半島侵攻に踏み切ったことから、北京五輪後が危ないとする見解も多い。

また、北京五輪を巡る外交的ボイコットもあり、欧米と中国の対立は既に
後戻りできないところまで来ている。これまでのところ外交的ボイコット
を表明したのは米国に続き、英国とカナダ、オーストラリアとニュージー
ランド、バルト三国のリトアニアだが、北京五輪の偉大な成功を掲げる習
政権が同開催中に大きな動きに出る可能性は低いが、五輪後に外交的ボイ
コットを実施した米国や英国などに制裁措置で報復を行う可能性は否定で
きないだろう。中国を巡る欧米の警戒意識が強まっているが、米国と中国
の経済力や軍事力は接近する一方で、中国がインド太平洋における米国の
パワーは大したことがないと判断する時が来れば、それはかなりの危険信
号となろう。今年はロシアと中国の覇権的な動きが一気に進む恐れがある。


一方、ロシアや中国の覇権的な動きによって、北東アジア地域の崩壊が進
んでいる。中国は日本を経済力で抜き米国に接近することで自信を深めて
いる。そして、尖閣諸島や南シナ海などで海洋覇権を強め、2020年には国
家安全維持法を施行することで香港の一国二制度を破壊し、台湾統一に向
けての動きを加速化させるなど、北東アジアは米中対立の最前線となって
いる。東南アジアはASEAN、欧州はEU、アフリカはAUなど他の地域には各
地域の問題を共同で話し合う地域的国際機関が存在する。しかし、そう
いった地域的な国際機関が全くなくバラバラなのが北東アジアだ。中国は
米国の影響力を排除し、北東アジアで主導権を握ろうとし、北朝鮮はミサ
イル発射を繰り返すなど孤立主義的な行動を取り続け、韓国は米国の同盟
国ながら中国との経済関係を重視するなど米中対立の狭間で悩んでいる。
日本は日米同盟を基軸に自由で開かれたインド太平洋の実現を進めるスタ
ンスなどで、これら3か国と協力できる環境にない。
    

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◆ニュースの見出しを考える

伊勢 雅臣

ニュースの見出しを考えるという課題で、生徒たちが活き活きと先人たち
の歴史物語を学ぶ。

■1.「これほど歴史を深く、活き活きと学べるのか」

「中学生でも、これほど歴史を深く、しかも活き活きと楽しげに学べるの
か」と、唸ってしまいました。高校新教科「歴史総合」でより良い授業を
研究しようという教員有志による「私たちの歴史総合」研究会を参観して
のことです

 東京都のある区立中学で歴史を教えているT.I先生は、中学の歴史学習
の課程を終えた3年生に対して、「高等学校へのプレ授業」と位置づけ
て、明成社の「歴史総合」教科書を使って日露戦争を取り上げました。

 そこでの柱が、学んだ内容を、Yahoo!ニュースの見出しの形で、最大
15.5文字(半角は0.5文字)にして当時の国民に伝える、という課題です。
まず日露戦争全般を、以下の3つの局面に分けます。

【局面1 開戦までの経緯】
【局面2 戦争中】
【局面3 戦争後のアジア諸国への影響】

 それぞれの局面での重大ニュースを報道して貰う、というのです。

 手順としては、以下のようにグループ学習を主軸にしています。

1)クラスを少人数のグループに分け、局面を分担
2)生徒一人ひとりが担当する局面での見出しを考える
3)考えた見出しをグループのなかで話し合って、一つの見出しにまとる。
4)各グループがクラスで発表する。


■2.「英国政策転換し日英同盟、露の脅威」

 さっそく、生徒たちがどんな見出しをつくったのか、見てみましょう。
★をつけた一文が作成された見出しで、その後の「」内は生徒のコメント
です。

【局面1 開戦までの経緯】

★英国政策転換し日英同盟、露の脅威
「イギリスがこれまでの政策をかえるほどロシアが今脅威になっているこ
とを伝えたいと思ったから」

 イギリスは極東を南下してくるロシアを牽制しようと、長年の「栄光あ
る孤立政策」を転換し、日英同盟を結びました。英国の同盟相手が、非白
人国家である日本だったことは、世界を驚かせました。この見出しはロシ
アの脅威とそれに備えるイギリスの動きが見事に表現されています。

★ロシア満州を占領、日英同盟で対抗
「のちに、日英同盟は第一次世界大戦にも影響を及ぼす大切なものとなる
から。日露戦争のきっかけとなったロシアの占領は国民全員が知るべきだ
から」

 こちらはロシアの脅威を「満洲の占領」と具体的に訴え、それに日英で
対抗しようという戦略的な動きが、よく表現されています。

★露軍が満州駐屯 日本侵略の危機
「これから日本に関わりができるかもしれないニュースなので、世界情勢
がどうなっているか、わかりやすく国民に伝える必要があるから」

 ロシアの満洲への駐屯が、「日本侵略の危機」であることをストレート
に訴えています。

 弊誌1238号「こんなに違う高校『歴史総合』教科書」でも述べたよう
に、実教の教科書では、日露戦争を「韓国・満洲利権をめぐる帝国主義国
家どうしの争い」と述べています。「ロシアの脅威」も、「政策転換し日
英同盟」という英国の動きもまるで視野に入っていない記述に比べれば、
生徒たちの見出しは、はるかに当時の国際政治の動きを正確に捉えています。


■3.「日本海海戦、世界最強の艦隊沈む」

【局面2戦争中】でつくられた見出しを見てみましょう。

★日本海海戦、世界最強の艦隊沈む
「戦争中でみんなが不安な中、士気を高められるような内容を伝えた方が
いいと思ったから」

「戦争中でみんなが不安な中」というコメントから、生徒が当時の人々の
心持ちをよく思いやっていたことが感じられます。そういう不安を吹き飛
ばすニュースを送ろうと思ったのです。

★バルチック艦隊、東郷ターンに屈す
「当時無敵ともいわれたバルチック艦隊を、アジアの日本がたおして大勝
利をおさめたことは、アジアや日本の希望の光であり、日本国民も知りた
いだろうから」

「アジアや日本の希望の光」という表現に、こちらも当時の人々の思いを
追体験している様が窺えます。


■4.「日本勝利 亜諸国独立へ大きな一歩」

【局面3戦争後のアジア諸国への影響】はどうでしょうか?

★賠賞金ではなく地位と勇気を得る
「賠償金を得られずに不満を抱いた人もいたが、戦争が意味のなかったも
のではないことを伝えたかったから。勇気をもらった国々がこれから独立
を果たすから。」

 文字数の制限で、「地位と勇気」が何を指すのか、少し理解が難しいで
すが、「戦争が意味のなかったものではないことを伝えたかったから」と
いう点が泣かせます。アジア諸国に独立への勇気を与えた、というニュー
スを、戦死者の遺族が聞いたら、どれほど慰めになったでしょうか。

★日本勝利 亜諸国独立へ大きな一歩
「日本の勝利は、アジアだけではないが独立への希望を与えた。地位の向
上と日本の成果を示したいと思ったから」

「独立への希望を与えた」ことを、「亜諸国独立へ大きな一歩」と表現し
ています。確かにその通りです。明成社教科書では、「世界に影響を与え
た日露戦争の勝利」と題した一ページのコラムで、インドの『ヒタバテイ
新聞』が「日本の勝利がインド人を覚醒させ、イギリスと対等という前向
きの思想に目覚めさせた」と報じたことを記述しています。

 この「覚醒」がインド人の独立への動きを元気づけたわけで、まさに
「大きな一歩」でした。


■5.「歴史物語」型教育を実践する卓抜な方法

 3つの局面とも、生徒たちが、当時の先人たちの思いに寄り添って、ど
うニュースを伝えようか、と苦心している様が窺えます。それは日露戦争
という巨大なドラマに自らも参加して、先人たちが抱いていた不安や期
待、喜び、無念さを思いやり、その思いに生徒たち自身が語りかけたもの
です。生徒たちは、まさに先人との対話を行うことによって、歴史を追体
験しているのです。

 この姿勢は「韓国・満洲利権をめぐる帝国主義国家どうしの争い」など
という高みの見物を決め込んでいる歴史研究者の姿勢とは全く違います。

 弊誌1238号では「歴史物語」型の教育を以下のように説明しました。

__________
「歴史物語」とは、フィクションではなく、あくまでも史実に基づいたノ
ン・フィクションの物語です。その史実から先人たちの声に耳を傾けるこ
とができるのが、「歴史物語」なのです。

「物語」とは英語で「story」ですが、歴史は「history」で、語源は一緒
です。我が国では『平家物語』や『太平記』、西洋では古代ギリシアの叙
事詩『イリアス』『オデュッセイア』などの「歴史物語」が語られ、それ
を聞きながら、人々は先人の姿を思い浮かべ、その声を聴き、胸躍らせて
いたのです。このような歴史物語が、歴史の原型でした。[JOG(1238)]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 Yahoo!ニュースの見出しの形で、当時の人々にメッセージを伝えよ
う、という課題を通じて、生徒たちは歴史物語に参加して、当時の先人た
ちの不安や喜び、悲しみに共感しつつ、メッセージを送ったのです。まこ
とに卓抜な教育方法です。


■6.「主体的・対話的で深い学び」が見事に達成されている

 この方法で、文科省が目標としている「主体的・対話的で深い学び」が
見事に達成されている点も見逃せません。

 まず、生徒が各自で見出しを考える、というプロセスで、何がニュース
の本質かを自分考えなければなりません。たとえば、山川出版社の教科書
の以下の記述と比べてみましょう。

__________
賠償金が得られなかったことなどから、増税や人的犠牲に釣りあう成果で
はないと受け止めた人々も多く、講和条約調印の日には東京で講和反対の
暴動がおきた(日比谷焼打ち事件)。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 それに対して、「賠償金を得られずに不満を抱いた人もいたが、戦争が
意味のなかったものではないことを伝えたかった」と考えた生徒は、日本
の国際的な地位向上や、「勇気をもらった国々がこれから独立を果たすか
ら」ということの方が大切だと考えたのです。

 日比谷焼打ち事件については、山川以外の教科書もほとんど同様の記述
をしていますが、この生徒はそれらの「定説」に流されずに、しっかり主
体的に考えています

 また「対話的」という点でも、各人が見出しを考えた後、グループで一
つの見出しに仕上げる、というプロセスで生徒どうしの対話が促進されま
す。15.5文字の中で具体的にどう表現するかという相談をすることに
よって、抽象的なとりとめのない話をするよりも、はるかに具体的な対話
ができます。

「深い学び」をしたことも、生徒たちが示した見出しが具体的に示してい
ます。たとえば「露軍が満州駐屯 日本侵略の危機」という見出しをつ
くった生徒は、「日本さえ侵略しなければ、世界の平和は守れる」という
ような「お花畑思考」が現実離れしたものだと判断できるでしょう。

 さらに、「英国政策転換し日英同盟、露の脅威」を考えた生徒は、共通
の脅威に対して、同盟を結んだり、集団的安全保障体制を組むことの価値
がよく納得できたはずです

 こういう理解を得た生徒たちは、現在の中国の覇権主義に対して、日米
同盟の価値もよく分かるでしょう。これこそが歴史を追体験することで、
今日の我々が歩むべき方向を考える、という「深い学び」なのです。

 逆に言えば、「日本さえ侵略しなければ、世界の平和は守れる」という
ような「お花畑思考」にいまだに囚われている人々は、「思想誘導」型の
教科書で、特定の思想を吹き込まれた「受け身的・一方的で浅い学び」し
か、していない人々なのでしょう。

 また、賠償金などよりも、「希望の光」や「勇気」を与えたことの方が
大事だ、と考えている生徒は、ただ日比谷焼打ち事件を単なる経済的不満
による暴動と記述している教科書執筆者よりも、よほど深い学びをしてい
るように見受けられます。


■7.「学習指導要領のねらいを実現できた」

 T.I先生は、まとめで「日露戦争における勝利がアジア諸民族の独立や
近代化の運動に刺激を与えたことに気付くようにする」という学習指導要
領の一節を引用した後で、こう結論づけています。

__________
日露戦争の局面を1〜3に分けたことで、さまざまな見出しができた。本
授業では、獲得した知識を活用して、歴史的な出来事の意義を多面的・多
角的に考察し、表現することを通して、主体的・対話的で深い学びの実現
を図った。

教科書を基本教材として学習し、日露戦争の世界史的な意義について、学
習指導要領のねらいを達成できたのは大きな成果である。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 こういう授業によって「主体的・対話的で深い学び」をした生徒たち
は、明日の日本を支える元気ある日本国民に育ってくれるでしょう。


■8.高校地歴科教員の方、「私たちの歴史総合」研究会にご参加ください。

 Yahoo!ニュースの見出しを考える、という卓抜な教育手法を考え、実
践されたT.I先生に謝意と敬意を表するとともに、「主体的・対話的で深
い学び」を実際の教育現場で実践するためには、さらにいろいろな創意工
夫がありえると考えます。

 そのような創意工夫をすでにいろいろな形で実践されている先生方もあ
ちこちにいるでしょうし、また様々な良い事例を学びたい、という方も数
多くいらっしゃると思います。

 そういう先生方がネットワークをつくり、互いに智慧を交換しあい、悩
み事を語り合い、励まし合う。その活動がT.I先生が報告をした「私たち
の歴史総合」研究会です

 全国の中学高校の歴史教育に携わる先生方に、この研究会へのご参加を
お勧めします。伊勢雅臣も、ご招待いただいたので、応援団として毎回出
席させていただきます
     

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◆米国の対中姿勢激変に対応

「宮崎正弘の国際情勢解題」 
  令和四年(2022)2月18日(金曜日)弐
     通巻7224号
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 米国の対中姿勢激変に対応できない日本 
   かくも貧しいインテリジェンス無理解
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 戦後の日本人が忘れてしまった戦略的思考のなかで、インテリジェンス
に対する理解のなさは驚き以外の何者でもない。米国の対中政策が地殻変
動のごとく激変しているのに周回遅れの対応しか示せない。大人を前に幼
子のような反応である。

 米国は中国の驚異的軍事力を牽制するためにクアッド(米印豪日)とい
う新しい防衛協力体制を構築し、いずれ将来「アジア版NATO」とする
構想を抱いている。豪には英国とくんで原潜技術を提供する。

 英国は機密情報を共有するファイブ・アイズ(英米にカナダ、NZ、
豪)に日本の加盟を促している。くわえて英国の議論には日英同盟の再構
築の声があがっている。前者に対して日本政府も防衛省も積極的とは言え
ず、マスコミは批判的である。後者は日本にスパイ防止法がない以上、欠
格である。ようやく与党内で特許制度に非公開条項を加えることを検討し
ている段階だ。

 特許制度の秘密条項とは軍事技術に繋がるハイテクの情報を非公開と
し、当該特許で得られるであろう収入は国が補填する。先進国は殆どが採
用している。

 ロシアも中国も、申請から十八ヶ月後に公開される日本の特許公報を基
準とし、先端技術情報の摂取を合法的になした。くわえて中国は米国へ留
学生、研修生を送り込み夥しい特許、ノウハウ、機密技術を盗みだした。
米国の知能中枢ハーバード大学にまで「千人計画」を餌に中国スパイのリ
クルート網が及んでいた。中国人留学生、研修生は日本中に溢れかえって
いる。

 中国の特許申請、論文提出数が世界一となって西側を驚かせている。し
かし申請件数と特許成立率は別問題、実用化されたものは少なく、論文も
オリジナルな特性を欠く。所詮はカンニングなのである。 

 ところが中国が経済的に豊かになれば民主化するという幻想に酔って、
米国は中国に大甘な政策を採り続けた。気がつけば、軍事力で米国を猛追
し、一部技術は米国を凌駕していたことに愕然となる。

 トランプ政権以来、中国のブラック企業リスト(エンティティリスト)
を作成して技術移転を厳しく制限し、チャイナモバイルなど通信三社を含
む数社をNY株式市場から追放し、留学生ビザに制限を加えた。

 バイデン政権に移行しても、この対中政策は継続しており、NY株式市
場で中国企業の資金集めを不可能に追い込み、ハイテク企業には中国人従
業員、エンジニアの監視を強化し、ともかく中国の暴走を食い止めること
に躍起だ。

 日本企業は現在の中国への投資や生産そのものを抜本的に見直さざるを
得ない状況に追い込まれている。しかし政財界の親中姿勢は変わらない。
日本には状況激変に対応する心構えと準備ができているのだろうか?

      (この文章はコラム「北風抄」<北国新聞、1月31日>の
再録です)
   
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評  BOOKREVIEW 
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 日本が闘った相手は「國際金融資本 プラス 共産主義者」だった
  幕末からロシア革命、トランプ現象までの舞台裏に存在する闇マネー

  ♪
渡辺惣樹vs茂木誠『教科書に書けないグローバリストの近現代史』(ビ
ジネス社)

 政治の基軸は国の統治であり、軍事的裏付けによる権力基盤の確立、維
持、拡大と、敵の動きを早く正確に知る情報力が両輪である。これを成立
させるのが経済力である。
 経済は財源の確保が必要で、とくに投資による生産、流通、販売を円滑
化するには貨幣が必要である。
 古代では通貨を輸入銭に依拠した。唐銭、宋銭など様々な銅銭、銀銭
が、その含有率、重量と刻印によって交換レートが決められた。日本は特
産品と砂金、硫黄などでシナの銅銭と交換し、日本に運んだ。
 それゆえに両替商が繁盛したのである。銀行という近代資本主義の萌芽
は、日本では、この両替商の発達にあった。両替の主任務はアービトレー
ジ(サヤ取り)だ。
 日本で最初に統一通貨をつくろうと決意したのは天武天皇だった。秩父
に銅鉱山が発見され、和同開珎が作られたが、生産量がすくなく流通した
量の多寡は知れていた。
聖武天皇の御代には金が東北で産出された。東大寺の大仏開眼に間に合っ
たものの、古代日本では金を貨幣でなく仏像の仕上げに使い、装飾品など
観賞ならびに権力の誇示にとどまり、通貨としての金小判はようやく秀吉
時代から本格化した。
 秩父には和同開珎のオブジェが入り口に置かれた聖神社がある。平泉に
は東北仏教文化を代表する金色堂がある。足利は金閣寺を建立した。
 
信長はもちろん通貨製造に目をつけたものの、精錬方法が未熟なうえ鉱山
技術や鍛造、鋳造の設備は極小だった。
それが秀吉から家康にかけて、石見、甲斐、佐渡、伊豆に代表されるよう
に各地にで金山の発掘・開発があった。金の精錬と鋳造技術は格段に進歩
した。
そして金の細工師が登場し、通貨発行によるセニョリージ(購買力マイナ
ス通貨製造コスト)という近代の中央銀行の業務が、すでに秀吉・家康の
時代に確立していたことは瞠目に値するだろう。
 秀吉の大判発行という通貨の鋳造は独占的に行われた。京都の後藤家が
製造方法、印刻、小判の刻み(茣蓙目)などを改良し、秀吉はこれら貴重な
通貨を市場に流通させるより、大名への報奨金としてつかった。このため
決済手段として市場に流通することが遅れた。庶民の市場では相変わらず
輸入銭がまかり通っていた。
 家康が目を付けたのは秀吉小判(大判=十両)ではなく、十両の十分の
一、つまり一両小判の増産である。それにより末端に到るまでの経済の活
性化が目的だった。当初は秀吉に遠慮して、「武蔵小判」とした。すなわ
ち関東一円でしか流通しない地域通貨だったが、秀吉が死ぬと、全国に通
用する小判となり、日本の統一通貨として、初めて全国に流通させるので
ある。
 江戸時代、金含有率を減らし、小判の「改鋳」(じつは「改悪」)が八
回も行われた。例えば慶長小判の金含有は86・8%だった。元禄小判は
56・4%になって、この『通貨発行益』は幕府財政の数年分を稼ぎ出し
たのだ。(ちなみに18Kは75%以上。カナダ、豪の金コインは99・
99%。中国のパンダ金貨は99・9%で0・01の差で国際的通用性は
ない)
 しかし江戸中期となると金の産出が減少し、他方では経済の飛躍的な発
展と、国内の物資の流通が盛んになって、関東は金本位制、関西は銀本位
性とは言われた。
 幕末に欧米の貿易商人等は小判とメキシコ銀の交換率に着目し、とくに
オールコックとハリスは貿易商社をしそうして、悪質なメキシコ銀を日本
の金貨と交換し、大量の日本の小判が海外へ流失した。江戸幕府の失態で
ある。
これが?川幕府の崩壊を早めたというのが直木賞作家、佐藤雅美の小説
『大君の通貨』だ。

 以上が評者の前置きである。

 近代は通貨発行権との戦いでもあった。しかも外国の金融資本が濃厚に
絡んだ。
 渡辺惣樹氏が言う。
「家康は経済発展における貨幣の果たす役割と、一般的な意味に於ける出
目(セニョリッジ=現実の購買力マイナス貨幣製造コスト)を理解してい
ますが、イギリスにいた銀行家の発見した『本当の出目のマジック』には
気づいていません」
 茂木誠氏が続ける。
「紙幣を作ったのは中国人で「唐代に経済が活性化してインフレになる
と、もの凄い量の銅銭が必要になります。そこで唐代の商人たちは、たと
えば『銅銭百枚の引換券です』という小切手を発行し、取引の簡素化を図
りました(中略)。これを国家事業として紙幣化したのが宋王朝です」
 ついで金本位による通貨体制のなかで金細工師らが目を付けたのは『金
引換券』だった。金を預かり、その保障を紙に書いた(これが証券。証券
の英語名はEQUITY)。

 渡辺氏がつづける。
 「実際の証券を持って金を引き出す人はおよそ四人に一人だった」。金
細工師は、ならば四倍の証券を出して、その余剰資金を運用すれば良いの
だとして「預かった金の四倍まで預かり証を発行する(与信行為)ことで
銀行業に変異する」(株投資をやっている人なら知っているが、「信用取
引」では投資額の四倍まで株取引は可能である)。
 つまりアービトレージからレバレッジ、銀行の原形がダイナミックな資
本主義を発展させるのだが、日本がこれに気づくには歳月がかかり、伊藤
博文、高橋是清の出現をまたなければならない。

 金と貨幣の噺だけで書評の紙幅が尽きたが、本書の骨子は日本が闘った
相手が「國際金融資本 プラス 共産主義者」だったこと、その歴史の部
隊の裏に何があったか。幕末からロシア革命、トランプ現象までの舞台裏
に存在する闇を照射する。
              
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
★読者の声  どくしゃのこえ  READERS‘ OPINIONS 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ♪
(読者の声1) 戦争中の日本軍のシンガポールの国民党ゲリラ鎮圧の話が
ありましたので、以下ご参考まで。
 貴誌前号の「(読者の声1) 今朝の日経朝刊外報面に「シンガポール陥
落80周年」「日本占領下の記憶伝承」との見出しで、「父親とおじが日本
軍に殺され」たとかいう老人のコメントが載っていましたが、実際のとこ
ろはどうだったのでしょうか? 南京「虐殺」は完全に作り話だったこと
がいまや明白になったので、どこへ行っても自信をもって否定できるので
すが、シンガポールの真相についてどなたかご教示頂ければ幸甚です。
(YE生、東京都)」(引用止め)。

 シンガポールの処刑は南京事件と同じ戦争行為。1942年日本軍はマレー
半島を南下してシンガポールを陥落させました。この時日本軍と戦ったの
は、英国(英、豪州、印度)軍と?介石の国民党軍でした。英軍は降伏する
と捕虜収容所に入れられました。英国印度軍の一部(五万)は藤原少佐の
呼びかけに応じて、新設印度国民軍に参加し日本軍とインパール戦を戦
い、現代の印度軍の基礎となったことは有名です。
 さて国民党軍ですが、これは軍服を脱ぎシンガポールの華僑の中に紛れ
込んだのです。そして日本軍の倉庫を爆破するなどゲリラ戦を始めまし
た。そこで日本軍は華僑の協力を得て住民の面通しを行い潜伏した国民党
ゲリラを摘発し、戦時国際法により処刑しました。
 戦後反日勢力がこれを反日宣伝につかい、ゲリラが住民に変えられ、現
在もシンガポールに大虐殺記念碑が建っています。以前小生が訪れた時、
市内の博物館には日本兵に拷問されるシナ人のジオラマがありました。被
害者偽装です。
 したがって、この話は南京事件と同類と考えると分かり易い。日本人は
騙されてはなりません。
当時の東南アジアの華僑は三種類に分けられました。親日、中立、反日です。
(落合道夫)


(宮崎正弘のコメント)タイで日貨排斥の学生運動は華僑が軍資金を出
し、また学生センターの活動家は殆どが華僑の末裔でした(実際に筆者は
タイに二回取材に行きました)。インドネシアで田中角栄訪問直前に反日
暴動が起きたのも裏で華僑が煽動したものでした。
 ベトナムのボートピーポルとは華僑を排斥した結果起きた。カンボジア
のキリング・フィールドも犠牲者の過半が華僑でした。


  ♪
(読者の声2)「国防、食糧、エネルギーなどの必須条件を早急に国内で
確保する」KM様はその主張に対応する「具体的な諸施策(の案)」はお持
ちなのでしょうか?(KI生、尼崎市)からの御質問についての回答。
1。戦後、特に過去40年間急激にあらゆる面で日本は劣化してきたが、
その根本的な原因は、指導者不在、故に国の目的、方針、戦略など皆無の
状態であり、
それぞれ官民の組織が、独立して、利己的、短期的に動いている。明治維
新、そして戦後の「政府指導」の運営が成功したので、いまだに政府・優
秀な官僚の
指導に頼っているが、世界はもはや東大卒のエリートが、留学し西欧を学
び、模倣し、改善し、成功できる時代は終わった。彼らは、それを知って
いるが、自己の無能・未来予測の不可能性を認めず、あいかわらず権力・
規制を離さず、それでも「指導」し、何の成果も生み出せない。つまり、
自己の権益、利益のためのみに、破綻し荒廃した組織を頑なに維持してい
る。民間企業もこれを利用し、癒着し、共謀する。この政治・官僚体制を
解体せねば、新しい解決策はことごとく阻害される。故に、病は進み、死
に至る。
2。この総合的、普遍的な強固な集合体を解体する民主的、合法的な仕組
みは日本にはない。建前としては、公正な人民の選挙により、必要な新し
い政府を立てられる、はずになっているが、選挙の仕組みが、それを不可
能にして、必ず既存の政治屋が、当選する仕組みができている。偏向報道
も、正しい真実を伝えないのでは、選挙は形式的な「偽民主主義」になっ
ている。
3。今の日本に、これらの仕組みを、部分的に少しずつ改善していく時間
が無い。徳川家独裁政権から明治、戦後のGHQの行ったような根本的な大
改造のみが日本の独立、国民の生命、財産を守ることができる。故三島由
紀夫氏は「このまま行ったら日本はなくなって、その代わりに、無機的
な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜け目がない、或
る経済大国が極東の一角に残るのであろう」と50年前に予言なさったが、
日本はすでに「富裕な、抜け目がない、或る経済大国」ではなくなってい
る。「残るのであろう」が、今、疑われている。
4。「楯の会」のような組織も、百姓一揆も、自衛隊も、天皇陛下の御介
入も、もはや期待できない。私見によれば、唯一の解決策は、「偽憲法を
破棄し、新憲法」によって、今の日本に必要な政府、政治の仕組みを根本
的に改造する。現憲法なるものは実は占領下における戦勝国が強要した
「不平等条約」と国際的には認識されるので、破棄する事に何も問題はな
い。純粋に国内の政治課題である。
5。これにより、「国防、食糧、エネルギーなどの必須条件を早急に国内
で確保する」ための具体案を施行できる環境、つまり指導者が初めて生ま
れる。そのために、適切な新憲法(例えれば、コンピュータのOSにあた
る)を作り、公布する。(GHQは1週間で書いた。一月徹夜すれば、かな
り良いものが書けるだろう。不具があれば改正。無くても10年おきに見直
し。)
6。具体的には、国防。「超限戦」つまり物理的な兵器などを使わない、
「卑怯な」方法もいくらでも、安く装備できる。国の存亡を賭ける作業に
は、文字通り「限界」も倫理も、条約違反もなく、2600年の国体を守り、
勝つ事が唯一の正義になる。日本人の1割ぐらいは、嬉々として特攻の任
務に参加するだろう。
食糧もかつて鎖国時代には100%国内で賄っていたので、その気になれば
十分可能。米と沢庵と魚では、肥満が減り、健康になる。南米からのバナ
ナが途絶えても、死ぬことはない。
エネルギーは、地下熱、原発。核融合の発電もほぼ実現が始まったようだ。
「KI生」様ご質問ありがとうございます。(在米のKM生)

  ♪
(読者の声3) 三島由紀夫研究会から「公開講座」のお知らせです。
(1)三島由紀夫研究会299回公開講座
 http://mkoza.sblo.jp/article/189344019.html
 二月は奥本康大氏をお迎えして、新年最初の三島由紀夫研究会公開講座
を下記の通り開催しますので是非ご参加下さい。

日時   2月28日(月)18時〜20時
会場   アルカディア市ヶ谷
https://travel.rakuten.co.jp/HOTEL/10766/rtmap.html
講師   奥本康大氏(評論家)
演題   三島由紀夫と出光佐三(仮題)
(講師略歴 昭和25年生。現役時代は出光興産に勤務。父、奥本實は陸
軍軍人として大東亜戦争緒戦のパレンバン奇襲作戦に参加し、殊勲甲の手
柄をあげた。終戦時は陸軍大尉。現在「空の神兵」顕彰会を主催するとと
もに、史実を世界に発信する会、二宮報徳会、新しい歴史教科書をつくる
会などの幹事)
           ★

(2)四月の公開講座のご案内です。
4月21日(木)に下記の通り公開講座を行うこととなりました。陸自の
元陸将・福山氏に楯の会を論じていただきます。ご期待下さい。
          記
日時  4月21日(木)18時開会
場所  アルカディア市ヶ谷(「私学会館」、JR市ヶ谷駅徒歩数分)
講師  福山隆(元陸将、軍事評論家)
演題 「楯の会、山本舜勝とインテリジェンス」(仮題)
(講師略歴 昭和22年生、 昭和45年防大卒(第14期)、平成17
年陸将・陸自西部方面隊幕僚長で退官)
   (三島由紀夫研究会)
at 10:09 | Comment(0) | 番外編
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