頂門の一針 6238号
□■■□──────────────────────────□■■□
2022(令和4年)年 8月23日(火)
家宅捜査の理由を言わない司法部:Andy Chang
「退かない」プーチン老:加地伸行
岸田Japanは倭人自治区になる?:シーチン”修一
中国の金融秩序を破壊したトカ:宮崎正弘
重 要 情 報
身 辺 雑 記
購読(無料)申し込み御希望の方は
下記のホームページで手続きして下さい
頂門の一針(まぐまぐ)
━━━━━━━━━━━━━━━━
家宅捜査の理由を言わない司法部
━━━━━━━━━━━━━━━━
Andy Chang
AC 論説No.906
今月8日にトランプの別荘を高く操作した司法部は、一週間経ってようや
く捜査令状の目的を発表したが、令状にはトランプのスパイ活動嫌疑
(Espionage)のため書類を押収するとしただけだった。国家の元大統領が
スパイ行為をしていたとはあり得ない嫌疑だが司法部長は詳細を公開しな
かった。このためトランプ側だけでなく民間でも実情を公開すべきと言う
声が高まった。
ガーランド司法部長は押収した書類の内容や捜査の理由を公表すれば調査
に影響すると主張したので18日になってフロリダの地方法廷でラインハル
ト裁判官(令状を発布した裁判官)がトランプ側と司法部側の主張を聴取
した。
双方からの事情聴取の結果、ラインハルト裁判官は司法部は家宅捜査の理
由書(Affidavit)を公開すべきだが、司法部が反対するなら「公開できな
い部分を消した理由書」を一週間以内に提出し、ラインハルト裁判官は消
去部分の理由と妥当性を調べてから公開を決定すると裁定した。
捜査令状の理由書(Affidavit)とは、FBIがトランプのマーララーゴ別荘
を家宅捜査してトランプが所有していた文書を押収する理由、文書の種
類、調査する箇所などを宣誓詳述した説明書である。
理由書が発表されれば司法部とFBIがどんな書類を探していたのかがわか
ると共に、家宅捜査の際にFBIが令状の範囲を超えた捜査、例えばトラン
プの金庫を開けたことや、トランプのパスポートを没収した違法行為が
ハッキリする。
この二週間の間トランプ側は司法部とFBIの捜査が違法であると主張し、
司法部側は捜査を決定したのはトランプのスパイ行為の重大性と緊急事態
のため令状を発布したと主張した。しかしその後のニュースでは司法部と
FBIは令状発布まで二週間も討論していたことや、FBIは今年6月にトラン
プの別荘を訪れ、トランプが資料庫を公開して検査させたあと、FBIの
Benjamin Brattエージェントが資料庫に余計に鍵をつけることを提案した
のでトランプは新たに二つの鍵を取り付けたことがわかった。
それなのに2ヶ月後にFBIが30人の武装警護員を連れて別荘の家宅捜査を
行ったのは説明がつかない。明らかに司法部とFBIはトランプの罪名を
デッチ上げて2024年の再選を阻むためであると言われている。
司法部は押収した書類の内容を発表しない。それなのに左翼メディアはト
ランプがトップシークレット文書を隠匿したと報道した。FBIが押収した
書類がどんなものかもわからないのに、機密文書を別荘に隠匿した罪の重
さを喧伝し、(若しも)機密文書を隠匿したなら重大犯罪だと書きまくっ
ていた。これに対しトランプ側は大統領には憲法により全ての機密書類を
解除する権利があることを主張し、彼が保持していた書類は彼の大統領時
代に機密解除された種類であると主張している。そしてトランプ側はFBIが
押収した書類と押収した理由の説明を求めている。
FBIが押収した書類の種類や内容を発表しないのに、メディアは盛んに核
機密に関する極機密だとか、トランプ陣営の内部に告発者(スパイ)が居
て、FBIに機密文書の内容と在処を通報したので司法部が捜査に踏み切っ
たと報道している。
このような根拠のない左翼メディアの報道に惑わされて外国でも反トラン
プ報道をする記事もあった。日本のメルマガに発表されたある記事では、
トランプのパスポートがFBIに没収されたので安倍元総理の国葬に参加で
きなくなったとか、トランプ陣営のスパイは二人居る;一人はトランプの
娘イバンカで、もう一人はトランプのメラニア夫人であると書いていた。
事実なら大問題だがアメリカ国内でスパイ問題を取り上げた報道はなかった。
FBIが押収した書類の種類や内容は発表されていない。しかしトランプの
大統領時代にカウンターテロリズムの主任だったKash Patel氏の発表によ
ると押収された種類の一部(少なくとも一部)はトランプが大統領に就任
した後にヒラリーの金でデッチ上げた「ロシアゲート」の書類であると言
う。パテル氏は反トランプの流した偽情報を扱う主任だったからロシア
ゲートの偽情報は知悉している。FBIが押収した文書の一部、または主要
部分だったかどうかはいずれAffidavitが発表されればわかることであ
る。ロシア
ゲートはダーハム特別検察官が調査中の事件で、クリストファー・ス
ティール、コイ法律事務所だけでなく、司法部やFBIの人員が多く関わっ
ていった事件、つまり多数の民主党人物と司法部やFBIなどの政府の要員
がDeep Stateの反トランプ陰謀に加担した証拠である。
つまり民主党の主要人物と司法部、FBIが共謀してトランプ降ろしを計画
し、ロシアゲートからマラー検察官の調査、二度にわたるトランプ弾劾な
どに政府の人員が関わっていた。だからパテル氏がマーララーゴ家宅捜査
の主要目的はトランプが所有していたロシアゲート関連の書類であったと
言ったのは納得できる。
ロシアゲートの書類を押収し、調査を続けると称して、後々まで返さなけ
ればトランプは彼らの犯罪証拠を証拠だてて暴くことができない。つまり
6年前から反トランプ陰謀に加担していた民主党員、司法部、FBIの人員な
どの多数人員の犯罪証拠を隠すため、Deep State の反トランプ陰謀を闇
に葬るためだったと考えられる。政府側がワシントンポスト紙に流した
「核機密文書」とか「トップシークレット文書」などは実情を隠蔽するウ
ソ隠れ蓑に過ぎない
これを裏書きする新しいニュースでは宣誓理由書(Affidavit)を作成した
のは司法部の人員ではなくFBI内
部で嘗てロシアゲートに関わっていた人たちだったと言う。
8月19日のThe Epoch Timesの記事、”FBI Unit Leading Mar-La-Largo
Probe Earlier Ran Trump-Russia
Discredited Investigation” によると、マーララーゴの家宅捜査令状と
宣誓理由書を作成したのは司法部で
はなくFBIの主要人物であった。ロシアゲートの陰謀に加わっていたのは
Brian Auten、Benjamin Bratt、
Timothy Thibaultなどと実名を挙げて報道した。彼らはロシアゲートに関
連した人物でトランプの家宅捜査の主要人物でもある。FBIグループは己
の罪を隠すために新たな陰謀を企てたと言える。
これは嘗てのロシアゲートよりも大きな陰謀だから短期に終結することは
ないだろう。FBIと司法部の「トランプの犯罪調査」は2024年の総選挙や
それ以後まで続く可能性がある。司法部とFBIは押収した文書をトランプ
に返還しないが、来年度の新国会で共和党多数となれば状況は変わってく
るかも知れない。来年の新国会で共和党側の調査が進み、ガーランド司法
部長とレイFBI長官が免職処分になるかも知れない。
Deep Stateと民主党の目的はトランプを政治的に抹殺することである。だ
から今の民主党多数の国会は2024年の総選挙にトランプが再出馬するのを
ストップするため、今年中に機密文書隠匿を理由にして「国家反乱罪でト
ランプを今後政治に参加させない」法案を提出するかも知れない。
━━━━━━━━━━━━
「退かない」プーチン老
━━━━━━━━━━━━
【古典個展 大阪大名誉教授 加地伸行】
暑い―この一言に尽きる。老生の20代、すなわち60年も昔、天気予報
で、「明日は30度」と告げられると話題となったもの。今となっては、
もう昔話。
昔話と言(い)えば、『老子』9章に、こうある。「功(こう)成(な)
り名(な)を遂(と)げて、身(み)を退(しりぞ)くは、天の道なり」
と。にもかかわらず、プーチン老(69歳)は、遂(つい)に隣国のウク
ライナに攻め込んだ。しかも苦戦。となると、老残いや老惨と評するほか
ない。老子の名言は死語と化したのか。
ロシア軍の行動を見ていると狩猟民族的である。すなわち、目の前の取れ
るものは可能な限り取る。後は野となれ山となれ、ロシア軍の暴行や略奪
は日本の敗戦時、満州(現中国東北部)において行っていたことと同じで
今もそれを行っている。
こういう狩猟民族的行動を、われわれ農耕民族が叱っても、彼らは理解で
きない。
となれば、日本はロシアに対して、用心して準備すべきものは準備し、防
衛を堅くすることが第一である。ロシアに対しては、「まさか」などとい
う呑気(のんき)な台詞(せりふ)は通用しない。
しかし、現実は厳しい。或(あ)る調査では、外国からの日本侵略に対し
て、戦うという日本の若者は2割、様子を見るが4割、あとの4割は外国
へ行き、状況が落ち着いたら帰国とのこと。
この集計、日本人の誰がわらうことができようか。現実、そして心すべき
ことを教えてくれている。
平和―美しいことばである。しかし、残念なことに、日本の防衛力の現状
を見た場合、それは相当部分、米軍の力に依(よ)る<平和>にすぎな
い。独立国家であるならば、平和は自主防衛力で得るべきものであろう。
『論語』衛霊(えいのれい)公に「遠き〔先(さき)〕の慮(おもんぱか
り)(配慮)なくば、必ず近き憂(うれ)いあり」とある。準備は、なに
も起こっていない時にこそしておくべきである。わけても軍事というの
は、その準備に時間がかかるので、相当の時間を充(あ)てなくてはなら
ない。
その準備の中で最も時間がかかるのが、将兵という人間の準備である。将
官は、長時間の訓練が必要なので、日本は防衛大学校のさらなる充実と定
員増を図らなくてはならない。
問題は兵である。ただ数を集めればよいというわけではない。相当の訓練
が必要なのである。もしそういった配慮がなくて、ただやたらと人数を集
めて部隊を編成しても、実際は役に立たず、戦闘(防衛)能力が低く、無
(な)いに等しい。
『論語』子路(しろ)に、こういう話が出ている。「教えざる民を以
(もっ)て戦うは、是(こ)れ之(これ)(民)を棄(す)つと謂(い)
う」と。
この「教えざる」の「教え」について老生は軍事訓練と解釈している。す
なわち軍事訓練をしていない兵を使って戦闘するのは、軍事(防衛)力が
なく、兵を棄てるようなものだの意。
となると、祖国防衛の基礎訓練は、中・高校あたりから始めるべきではな
いか。
戦いは死に直結する。『論語』述而(じゅつじ)に曰(いわ)く「子
(し)(孔子)の慎む所は、斎(さい)(祭祀(さいし))・戦・疾(し
つ)(病)と」(かじ のぶゆき)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
松本市 久保田 康文
産経web令和4年8月21日採録
━━━━━━━━━━━━━━━
岸田Japanは倭人自治区になる?
━━━━━━━━━━━━━━━
“シーチン”修一 2.0
【雀庵の「大戦序章」83/通算515 2022/8/21/日】11月の米国中間選挙を
控えて米国民主党とその支持者によるトランプ叩きが凄い。そのトランプ
が大統領時代に、彼を世界で一番恐れ嫌っていたのは習近平とプーチン、
金正恩という赤色独裁3傑のワルである。
トランプの2016年大統領選のスローガンは「Make America Great
Again(米国を再び偉大に)」だった。「企業は海外投資を控え、米国内
にこそ投資し、雇用を増やすべきだ。中国ばかりが潤い、米国の工場は閉
鎖されてサビ(ラスト)ついている。まるでラストベルトで、多くの国民
が失業の憂き目に遭っている。米国を再び偉大な国、元気な国にしよう、
Make America Great Again!」とハッパをかけた。
誠に正論である。多くの米国企業が国外生産を止めたり縮小して米国に
戻り、日本企業も米国で現地生産を増やし、それにより失業率も改善して
いった。中共との共存を優先して世界の警察官を辞任したヘタレのオバ
マ・民主党が消え、元気なアメリカが戻ってきたのだ。
トランプ政権で一番割を食った国は主敵とされた習近平中共で、なす術
もなくバッシングを受けた。トランプは中共を恐れないし、「誰のお陰で
今の中国があると思ってるんだ」という態度だった。中露北にとってトラ
ンプは、何をするか分からない「怖さ」があった。
安倍氏とトランプ・共和党は相性が良かった。リベラルを自称する人は
概ね容共だが、この二人は「共産主義独裁は悪であり、中露北は国際秩序
を破壊しかねない不倶戴天の敵」という認識で一致していた、と小生は思う。
トランプ政権は一期4年で終わってしまったが、50州からなる連邦国家
の米国では州の権限が保護されているため、大統領選挙でも日本のような
全国一律の厳格なルールがあるわけではない。
「アメリカの大統領選は国民の直接投票ではなく、州ごとに異なる制度
で選挙人団を選ぶ間接選挙になっており、やや複雑だ」(東洋経済)とは
知っているが、調べてみると「かなり複雑」で、州により「細則」が異な
り、郵便投票などは時の州知事や州議会多数派が意のままに変えることが
できるようだ。大体、日本のような厳格な「住民登録」制度がなく、投票
所スタッフの選任経緯も曖昧など、不正の温床になりやすいのではないか。
こうした曖昧さ故にトランプは「選挙が盗まれた!」と不信感を募らせ
ているのだろう。日経2022/8/14「米大統領選にルール変更論 共和は郵
便投票縮小も探る 州議会権限、最高裁が判断」から。
<米国の共和党が大統領選挙のルールを決める権限は州議会にあると主
張し、実現に動き出した。州議会の決定は裁判所の介入を受けないとの考
えで、連邦最高裁が来夏までに合憲性を判断する。合憲になれば、郵便投
票の大幅な制限などに道を開くとされ激戦州で議会多数派を握る共和党に
追い風となる>
USA、United States of America・・・日本語にすれば、複数の国から
なる「アメリカ連邦」だろう。50の各州はそれぞれが州法を持つ独立した
「国家」であり、日本の都道府県のような「自治体」とは全く違う。
共和党と民主党の対立はオバマ政権以降は年々激しくなっている印象だ
が、我が国の明治の教育勅語「一旦緩急あれば義勇公に奉じ、以て天壌無
窮の皇運を扶養すべし」のように、米国民は有事の際には党派や宗派を超
えて大結束、大団結するというのは凄い。イザ!となれば中露北との戦争
も辞さないだろう。これこそが世界有数の強みになっている。
奥山真司/地政学・戦略学者の「日本は防衛費を3倍に! 注目の米戦略
家が断言する理由とは」SAKISIRU 2022/8/7から。
<「日本は防衛費を増額すべきだ、しかも(GDP比)2%ではなく、3倍
の3%も目指すべきだ」
実に刺激的な提案をする人物と、先日都内で意見交換をしてきた。エル
ブリッジ・コルビー(42)氏である。コルビー氏はトランプ政権で国防次
官補代理を務めていた時に2018年の「国防戦略」(NDS)をまとめ、それ
までのアメリカの大戦略でテロ組織を最大の脅威としていたものを、「大
国間競争」の時代に入ったとして方針転換させた張本人だ。
彼は元官僚として、現在は「マラソン・イニシアチブ」という小さなシ
ンクタンクを立ち上げてワシントン界隈でアクティブに活動している。去
年の2021年9月には自身の戦略論をまとめた『拒否の戦略』(The
Strategy of Denial)を出版し、日米の国防関係者の間でも話題になって
いる(邦訳は日経新聞社が準備中)。
このコルビー氏から、知人のつてで突然「8月初頭に訪日するから一緒
に昼飯でも食べないか」と提案があり、急遽都内で意見交換をすることに
なった。
もちろん公式なインタビューではないので、彼と私の詳しい会話の内容
はここで紹介するつもりはない。すでに日本のいくつかのメディアで見解
を発表しているので、詳しくはそちらを見ていただきたい(参考1「朝日
新聞デジタル」、参考2「日経電子版」)。
しかしそれでは物足りないという方々のために、私がすでに読んでいた
彼の本から読み取った、日本の今後の戦略を考える上でカギとなるものを
以下の5点にしぼって紹介しておきたい。
【(1)世界秩序の安定に必要なのは】「平和」といえば日本では一般
的に「武力衝突のない安定して穏やかな理想的な状態」であると解釈され
がちだ。しかし国際政治を研究する学問(国際関係論)の伝統的な学派の
うちの一派で「リアリズム」(現実主義)という学派の学者たちは、「平
和」とは国家間で力のバランスがとれている「次の戦争までの小康状態」
のことだと解釈することが多い。
この考え方は「勢力均衡」(バランス・オブ・パワー)という概念とし
て説明されることが多いのだが、この概念については学者たちの間でも考
えが二派にわかれており、上述したような「平和は、国家間の力が均衡し
ている時に実現する」というものの他に、「平和は、一国が圧倒的な力を
持った不均衡な状態の時に実現する」という、いわば「勢力不均衡」の場
合のほうが実現しやすいと説くものもある。
コルビー氏は後者の立場をとっており、自身をリアリズムの古き良き伝
統を継承した考えに立ちながら、「アメリカは圧倒的な力を維持して世界
秩序の安定に寄与しなければならない」とする立場をとっている。
【(2)アメリカの力には限界がある】ところがコルビー氏は「アメリ
カにはその圧倒的な立場を維持するだけの力がもう残されていない」との
厳しい認識を持っている。
コルビー氏の厳しい現状認識の前提には、イギリス出身のポール・ケネ
ディ氏が世界的ベストセラー『大国の興亡』(草思社)などで展開した、
いわゆる「帝国の過剰拡大」(Imperial Overstrech)という概念がある。
つまり現在のアメリカは、権益と支配が過剰拡大するという覇権国が陥
りやすいワナにハマっているという認識だ。
たしかに現在のアメリカは、世界各地に300を超える基地や拠点を持っ
ており、それらは「三大戦略地域」と言われる西欧、中東、東アジアのそ
れぞれの地区を睨んだ形で置かれている。だが、ようやく撤退できたアフ
ガニスタンやイラクだけでなく、リビアやイエメンなど、現在でも中東や
アフリカなどで手広く軍事介入を行っている。
そうなると、いくら世界最大の軍隊を備える国家であっても、大戦略に
おいて優先順位の立て方を間違えてしまうとリソースをうまく活用できな
いことになる。それぞれの方面で手薄になってしまうからだ。
【(3)アメリカは大戦略を間違えていた】それぞれの方面で手薄にな
る、ということは、つまり「気が散る」(distracted)という状況に陥りや
すいのだが、コルビー氏はここ20年間のアメリカは実際にこのような状態
にあったのだと断言する。
たとえば2001年9月の連続多発テロ事件をきっかけとして始まったアフ
ガニスタンやイラクへの侵攻だが、コルビー氏にとって、これは大戦略の
選択の大間違いとなる。
なぜならアルカイダのようなテロ組織というのは、アメリカにとっては
覇権や国家の存続そのものを脅かすような存在ではなく、国家の威信をか
けて戦略を考えるような相手ではないからだ。
アメリカにとっての脅威はあくまでも覇権を脅かす「大国」であり、中
東で行っていた「テロとの戦い」(the Global War on Terror:GWOT)や
「対テロ作戦」(Counter Insurgency:COIN)などは、まさに「気を散ら
す」存在以外の何者でもないことになる。
【(4)中国こそが最大の脅威である】ではアメリカは大戦略の焦点を
どこに置けば良いのか。コルビー氏はそれをアメリカにとってライバルと
なる「大国」、とりわけ中国であると主張して譲らない。
なぜ中国なのかといえば、アメリカの覇権と、それが形成してきた現在
の世界秩序を作り変えるポテンシャルを、経済面でも軍事面でも最も高く
持っているからだという。これは同国を「戦略的競合相手」と位置づけた
歴史的なアメリカの国防戦略の文書をまとめた人物としては当然の結論か
もしれない。
もちろん東アジアに生きる我々にとって、世界最強の軍隊を持つアメリ
カの国防関係者が「中国の脅威に集中せよ」と言ってくれることは頼もし
い限りではあるが、だからといって手放しで喜ぶことはできない。
というのも、前述したようにコルビー氏は「アメリカの力には限界があ
る」という現実を自覚しており、だからこそ冒頭で紹介したように、日本
にも相応の防衛費増額の負担を求めるからだ。
つまり現在の世界秩序を維持したければ、余裕のないアメリカに一方的
に頼るだけではなく、日本もそれ相応の負担をすべきだ、という以前から
繰り返されている議題なのだが、コルビー氏によれば、日本にはついにそ
の「年貢の納め時」が来たということだ。
【(5)ロシア対応に割くリソースはない】そうなると一方の「大国」
であるロシアはどうなるのか。
コルビー氏はロシアがウクライナに侵攻していることは問題であること
は認めつつも、基本的にそれは現地の当事者である欧州諸国が主導すべき
問題であり、アメリカは武器や資金の提供はしつつも、決して兵力を派遣
するような形で直接介入すべきではないとしている。これは中国の問題か
ら「気をそらす」ことにつながるからだ。
当然ながらこれはウクライナの惨状に同情すべきだとする人々からは反
発を受ける意見であり、本人もそれを自覚しているが、それでもリソース
を集中させるべきは東アジアの中国であり、それこそがアメリカの大戦略
の進む道なのだという。
【冷戦後のアメリカの「過ち」とは】以上のように、コルビー氏の思考
は極めて明晰である。アメリカの大戦略の方向性と、その論拠に関する議
論について一点の曇りもない。
もちろん彼の思考が「タカ派すぎる」というものや、あまりにも「帝国
主義的だ」という点から批判されそうなのは、私にとっても気になるとこ
ろだ。
ただしそのような問題点を超えて私が本質的に同意したのが、なぜアメ
リカが長きにわたって戦略を間違えていたのか、という理由についての彼
の分析であった。コルビー氏はそれを「ソ連との冷戦に勝ってから世界は
一極状態となり、アメリカは戦略を真剣に考えなくなったからだ」と主張
している。
つまりアメリカは冷戦における戦略に成功してしまったからこそ、その
後に油断してしまい、対テロ戦のような寄り道をして、真剣な戦略思考を
持つ人間を育てられなくなってしまったのである。
【日本が主体的に戦略を考えるべき時】ここで、読者はお気づきになら
れるはずだ。戦略を最も考えてこなかったのは、そのアメリカの戦略に
乗っかったまま、これまで真剣に考える必要のなかった日本そのものでは
ないか、と。
もちろん「インド太平洋」という概念を国際的に広めて日本の安保制度
の変革への一歩を踏み出していた故安倍元首相という例外的な存在はあっ
たが、それはあくまでも例外である。
もし日本が防衛費を増額したくないというのであれば、コルビー氏の主
張に対抗できるような説得力のある戦略を積極的に打ち出すべきではないか。
いずれにせよ、先日のペロシ下院議長の訪台とその後の中国による軍事
演習で日本のEEZ内に中国のミサイルが着弾するような事態も発生してい
る。いよいよ戦略を必死に考える時期が来たと言えるだろう>(以上)
「戦略を必死に考える」・・・習近平・中共に威嚇、恫喝されても「中
国の弾道ミサイルがEEZを含むわが国近海に落下したことは、わが国の安
全保障、国民の安全にかかわる重大な問題だ。中国の行動は地域および国
際社会の平和と安定に深刻な影響を与える。軍事訓練の即刻中止を求め
る」(外務省・森健良事務次官)。
一方、中共は「中国の主権や領土保全を侵犯するいかなる行為にも中国
人は必ず倍返しする」(産経2022/8/4)
中共の弾道ミサイルが日本のEEZに着弾したのは初めてというのに岸田
政権は通り一遍の“遺憾砲”、ただの空砲でご挨拶。出自がパンダハガーの
宏池会。それなら中共を真似て「日本の主権や領土保全を侵犯するいかな
る行為にも日本人は必ず倍返しする」と言ったらいい。
「存在が意識を決定する」。圧迫されていると解放されたいと思う。そ
の逆に満足していると現状を変えようという意欲は湧かない。「なにく
そ」というハングリー精神は起きない。マキアヴェッリ曰く――
「建国間もない新君主は側近に慣れ親しんだものを置く傾向があるが、
今の境遇に満足しているイエスマンばかりが側近だと国家はやがて堕落、
弱体化していく。
一方で新君主により追放された旧政権の幹部の中には不遇をかこつ者が
多い。こういう不満居士を登用すると、当初は新君主への反発もあって可
愛気がないが、ハングリー精神から「なにくそ、目にものを見せてやる」
とばかりにいい仕事をする者が結構いる。当初の恨みつらみは恩讐の彼方
となり、彼らはやがて良き側近になったりする」(君主論第20章「君主が
常に頼りにすするもの」のキモ)
艱難汝を玉にす、そんな経験のないだろうチヤホヤ育ちの岸田首相で大
丈夫か。一点突破、全面展開、まずは安倍氏の「アメリカとの核シェアリ
ングをタブー視せずに(実現に向けての)議論をすべきである」を断行す
べきだ。
<しかし、安倍氏の発言に対して、岸田首相や岸防衛大臣は「非核三原
則を遵守するという日本政府の立場からは、核シェアリングは認めること
はできない」と直ちに火消しに回った。
核シェアリングの議論を封じるそうした日本国内の動きに対して、アメ
リカからは「日本防衛当局はこの機会を潰してしまうのか」と不満の声も
上がっている(北村淳:軍事社会学者、JPpress 2022/3/10)>
脳内お花畑、危機感もなさそうな羊が1億日本のリーダー・・・このまま
の無為無策が続けば日本は間違いなく「倭人自治区」になる。
━━━━━━━━━━━━━━━━
中国の金融秩序を破壊したトカ
━━━━━━━━━━━━━━━━
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
☆◇◆◇◆☆◇◆◇◆☆◇◆☆◇◆◇☆◆◇◆☆◇◆◇☆◇◆◇
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和四年(2022)8月22日(月曜日)
通巻第7434号 <前日発行>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
肖建華に懲役13年、会社に81億ドルの罰金
中国の金融秩序を破壊したトカ。インサイダー取引のスケープゴート
*****************************
中国のインサイダー取引のチャンピオンだった肖建華は江沢民派の資金
源にもなったという。
香港を舞台に派手に繰り広げられた金銭ゲームの中枢にいた肖建華は2017
年1月に香港の豪華ホテルから拉致され、五年間消息がなった。カナダ国
籍を持っていたため、カナダ政府が屡々安否を確認してきた。
8月19日、中国の裁判所は肖建華に懲役13年、彼が率いた明天証券に81
億ドルの罰金を科した。中国金融界の安定を破損させ、多くの投資家が被
害に被ったというのが罪状だった。明天証券グループの九社は国有化され
またカネの引き出しとして駆使した包商銀行も国有化された。
これで中国バブルの「四悪」とされた海航集団と安邦保険は倒産、生き延
びたのは大連万達集団一社だけとなった。
この類いのボンジスキーム(ネズミ講)、或いは金融詐欺は、デリバ
ティブ金融商品の複雑な投資スキームがあって犯罪の立証が難しい。
過去、資本主義の本場アメリカでもエンロン、ワールドコム、そしてア
ルケゴスという『三大金融詐欺犯罪』があった。
エンロンは石油先物取引などエネルギーや天候の金融商品で、デリバ
ティブ商品として混ぜてしまうので被害は国際的に広がる。州の年金や日
本の投資集団もひっかかった。エンロンは本社見学をするとずらっと並ん
だコンピュータで社員たちが懸命に取引していた(あとで、これは演技と
判明した)。
エンロンは不正商法がばれて破産、被害総額は160億ドルだった。つい
で「ワールドコム事件」が2002年7月、被害総額は410億ドルとなった。
直近は投資集団「アルケゴス」だろう。ボンジスキームの実態を隠し、
複雑はデリバティブ商品をまぜあわせて成績を上げ、一時は全米の有名人
も投資していた。
往時、レバレッジによる取引は邦貨換算で11兆円、21年3月に倒産し
たが、被害額は360億ドルだった。
□☆□☆み□☆☆□や☆□☆□ざ☆□☆□き
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
++++++++++++++++++++++++++ 樋泉克夫
のコラム 樋泉克夫のコラム
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
♪
樋泉克夫のコラム
@@@@@@@@
【知道中国 2409回】
──習近平少年の読書遍歴・・・「あの世代」を育てた書籍(習75)
▽
次に『珍宝島英雄賛』(本社美術通訊員編絵 上海人民出版社)だが、
巻頭に「警戒を厳に、祖国を防衛せよ。人民のために戦に備え、飢えに備
えよ」との『毛主席語録』をドカーンと掲げる。
その本の内容に相応しい一節を『毛主席語録』から引っ張り出し巻頭に掲
げるようになったのは上海人民出版社が最初で、1970年辺りから本格化し
たように思う。
「警戒を厳に、〔中略〕飢えに備えよ」との『毛主席語録』からの一節
に次いで、「偉大なる領袖の毛主席と彼の親密なる戦友の林副主席の批准
により、中共中央軍事委員会は珍宝島におけるソ連修正主義の武装挑発を
反撃する自衛戦争において鮮血と生命を盾に偉大なる祖国の神聖な領土を
防衛した孫玉国ら十人の同志に『戦闘英雄』の光栄ある称号を授与した。
人民に、党に、偉大なる領袖の毛主席に無限に忠誠を尽くした英雄たちの
気高い心栄えを、よりよく学習するために」と記している。
『珍宝島英雄賛』は、67年から69年にかけて起こった中ソ国境を限る珍
宝島(ロシア名でダマンスキー島)の戦場において「一不怕死、二不怕死
(断固として死を恐れず)」に戦った10人の「戦闘英雄」を顕彰し、「彼
らの断固として戦い抜く輝かしき戦闘作風を学習する」ために出版された
連環画である。
連環画とは中国伝統の解説付きの絵本式読み物で、『三国志』『水滸
伝』『西游記』なども、こういった形で子供たちの間に広まったのであ
る。いわば連環画という伝統的メディアを使って、子供たちの脳裏に毛沢
東思想万歳と祖国防衛の意義を徹底して刷り込もうとした。共産党が利用
するほどに、伝統は宣伝(洗脳)力を秘めているということだろう。
67年11月24日、酷寒の中で最前線警備に当たる孫玉国と3人の戦士は、
国境を侵犯する7人の完全武装したソ連修正主義兵士を発見した。
そこで直ちに「中国人民に対する重大な挑発だ。即刻立ち去れ」と厳重に
抗議する。
すると厚顔無恥にもソ連兵は雪の上に1つの島を描いて「1868」と記
し、この島が1868年からソ連(ロシア)領だと主張する。そこで孫は強く
抗議し、雪の上に記された島と1868の上に大きく「×」を印した。孫玉国
が右の胸にシッカリと抱いていたのは、もちろん赤いビニール製表紙の
『毛主席語録』だ。真っ赤な表紙が白雪に鮮やかに映えたことだろう。
『珍宝島英雄賛』は、孫がは「1868年当時、ここは島ではなく中国側の
河岸の一部だった。土砂が堆積し、20世紀初頭になって島となったのだ。
1860年にロシアの老いぼれクソ皇帝が中露北京条約を中国人民に強要し
た。ここは一点の疑念の余地もない中国の領土だ」「これは断固として改
竄することのできない歴史的事実だ」との思いを込めて雪の上に「×」を
記した、と解説する。
それにしても僅か1個の「×」印ながら、左程までに深い歴史的主張が
込められていたとは驚きである。想像するに、さぞやソ連兵士も戸惑った
に違いない。
時移り69年3月2日、ソ連機甲部隊が狂ったように国境を侵犯する。
烈火のごとく怒る孫は敵機甲部隊の進路を敢然と立ち塞いで、「止まれ。
ここは中国の領土だ。お前らの強盗のような所業は中華人民共和国への重
大な挑発だ。直ちに撤退せよ」と一喝する。
だがソ連軍の前進は止まず、戦端が開かれた。
孫は、右手にシッカリ持った『毛主席語録』を銃の代わり打ち振りなが
ら、「我らは毛沢東思想で武装している。筋金入りだ。天が崩れてきても
支えることが出来るぞ」と兵士を督戦する。こうして「ソ連修正主義の戦
車、装甲車、武装部隊による狂気の侵攻を粉砕し、祖国の神聖なる領土を
勝利のうちに防衛した」のであった。
弱々しく描かれるソ連兵士に対して中国兵士は雄々しく勇ましい。中国
の子供ならずとも、中国兵士に憧れるはずだ。洗脳工作はイケイケドンド
ンで深化して行く。
【知道中国 2410回】(76)
『紅山島』の舞台は東南沿海に位置する貧しく小さな「紅山島」であ
る。解放(建国)前、ここでも蒋介石勢力は横暴を極め、貧しい漁民は苛
斂誅求に泣くばかり。人々は「共産党と毛主席が領導する人民解放軍は我
ら貧乏人のために戦っている。ほどなく紅山島は解放される。我ら貧乏人
が恨みを晴らす時はもうすぐやってくる!」との思いを胸に耐え忍ぶ。そ
の中には、貧しい家庭の娘である海英もいた。
人民解放軍が島に上陸するや、彼女は案内役となって解放軍を勝利に導
く。その功績に報いるべく解放軍が贈った毛沢東の肖像画を捧げ持ち、彼
女は「毛主席! あなたは我ら貧乏人にとって大きな、とても大きな救い
の星です!」と賛嘆の声を上げる。
やがて彼女は民兵に志願し、島の奪還を企てる蒋介石一派の残党に対す
る殲滅戦に獅子奮迅の活躍を果たすのであった。
『紅山島』の最後の頁に描かれた彼女は男と見紛うようだ。太い眉に厚
い唇。ガッチリした体を民兵の軍服で包んでいる。彼女の背後には男の民
兵と解放軍の兵士が立つ。3人の背後は波打つ紅旗で埋め尽くされてい
る。3人は「政権を産み出す銃」を手に東方洋上を見つ、視線の先に雲間
から顔を覗かせた真っ赤な太陽を捉える。
かくて「太陽が昇り、輝ける陽光が空いっぱいに広がる。海英と解放軍兵
士は共に海上防衛の前線に立ち、守りを固める。我々を侵そうとする一切
の敵を完全に、徹底して、キレイさっぱりと殲滅すべく常に備えを固め、
社会主義の赤い大地を守り、プロレタリアの赤い政権を守り、偉大なる領
袖・毛主席を守ろう!」と結ばれる。
『永遠緊握手中槍』の舞台は『紅山島』と違って山村だが、ここでも人民
解放軍は貧しい村人を救うために大活躍である。
主人公の猛子の父親は抗日武装勢力の連絡員として働くが、日本軍と通じ
ていた村の顔役に殺されてしまう。父親の恨みを晴らそうと、猛子は解放
軍への入隊を志願する。先ずは少年連絡員として働くことになるが、「美
●反動派殲滅戦」の戦場で大人顔負けの軍功を挙げたことから、正規の解
放軍兵士として入隊が許される。
最後の頁には銃を手に、両脇を部隊幹部に守られた猛子の雄々しい姿が
描かれ、「猛子よ、毛主席は我々に『世界は銃によってこそ改造できるの
だ』と教えておられる。
銃を永遠にシッカリと握り、毛主席に従い、中国全土に紅旗を翻すの
だ!」との言葉が添えられる。
次いで連環画とは体裁の異なる『夜航石頭沙』、『胸懐朝陽戦冰雹』、
『宋師傅学外語』、『優秀的共産党員 ──陳波』、『為革命読書』を見て
おきたい。共に16cm(縦)×13cm(横)で20頁前後の小冊子風で、イラス
トに簡潔で調子よく読める文章で構成されている。内容は毛沢東式勧善懲
悪、あるいは毛沢東思想を活学活用しての刻苦勉励物語といったところ。
先ずは『夜航石頭沙』だが、秋も深まった一夜、長江の河口を白波蹴立
て進む航標五号は、やがて崇明島の北部海岸に碇を下ろした。静まり返っ
た船内では、その日の作業を終えた党支部副書記の程志敏が、いつものよ
うに灯火の下で一心不乱に毛沢東の著作を学習している。
と、そこに「近くの呉淞口に停泊中の外国船が折からの強風に座礁し船体
破断の危機。大至急救援に向かうべし」との緊急電報が飛び込む。早速、
乗組員全員が非常呼集され、幹部からの命令を待つ。
呉淞口は上海港の喉元に位置するだけに、事態を早急に収拾できなかっ
た場合、多くの船舶の航行にとって障害となるばかりか、「中国革命と世
界革命とに大きな損失をもたらす」と程志敏は考えた。救難作業を急行す
べきだが、安全な通常航路を航行していたのでは現場到着は明日の明け方
にズレ込んでしまう。
最短航路の石頭沙水路を抜けることを提案したが、そこは穏やかな天候で
も航行が容易ではない難所中の難所であった。
□☆●□☆●□☆●☆□☆●□☆●□
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
☆⌒☆⌒☆⌒☆ ☆⌒☆⌒☆ ☆⌒☆⌒☆⌒☆
読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
♪
(読者の声1)宮崎正弘先生の次回生放送ニュース解説番組の「フロント
JAPAN」への出演は8月31日午前11時の予定です。
ホストは上島嘉郎(元『政論』編集長)。テーマは未定です。(日本文化
チャンネル桜)
━━━━━━━
重 要 情 報
━━━━━━━
◎「カリスマ経営者の言行録」への反響に思う事ー経営者の質が変化した
のか:前田正晶
昨21日にPresident氏から引用して取り上げた「経営者の言行録」につ
いて、北欧を代表するかのような多国籍企業の日本法人で副社長を勤めら
れた論客のK氏から、下記のようなご意見が寄せられた。
「皆、亡くなった人ばかり。彼らの時代が黄金時代だったのか。それと
も、その後に、歴史をつくれる人が出ていないのか。共通しているのは、
官僚的な人は皆無。80年代以降、新卒入社、年功の階段を上がり上に気に
入られた人が、経営陣になる。経営とは無縁の評価基準ハングリーな外国
人に負けていく。」
誠に尤もな見解であると思って読んだ。確かに現代大手企業で経営陣に
おられる方々はPresident誌が採り上げた故人とは違って、新卒での入社
から能力と年功序列等の我が国独得の企業社会の文化の中で努力を積み重
ねて経営陣に入ってこられたと思って見ている。私はそういう方々は、例
えば松下幸之助氏などとは異なっていて、自分の資金で会社を創立し運営
しておられるのではない「経営担当者ではないのか」と指摘してきた。
更に、新卒で入社されてからK氏の指摘のように努力を積み重ねられて階
段を上り詰めてこられたので、地位が上がるほどにその地位を守ることに
も懸命の努力を傾注されたので、ともすると「守り」の態勢に入られたの
ではないのかと、勝手に外部から視察してきた。その態勢にあっては、あ
のような言行録に入るような思想や経営の哲学を語られる精神的な余裕も
暇(イトマ)がなかったのかなどと考えている。
だが、現代の世界のように諸々の情勢が時々刻々と変化していく時代に
あっては、あのPresident誌が引用した方々の20世紀の経営理念が通用し
なくなったのかも知れないのだろうかとも言える気がする。上述のような
経営者の質の変化については、大手製紙の元社長の某氏は冷ややかに「経
営者の劣化だろう」と決めつけておられた例もあるが。
私はリタイア後に恵まれた1990年代末期頃の機会に、数社の上場企業乃
至はそれに準ずる会社の若手の精鋭たち(現在40歳台後半から50歳台前
半)から、「現在の我が社の部課長級が役員になる頃には、当社が没落し
ている危険性が見えるので不安だ。そう言う根拠はあの年齢層は自分たち
の地位を守ることに汲々としているだけで、何ら時代に即応した新機軸を
産み出していない。何とかしてあの年齢層(団塊の世代)を追放しておか
ないと」と聞かされたものだった。
そう言ってしまえば、何処の会社か容易に分かるだろうある商社では、
社長の大英断の下に「団塊の世代に1億円の退職を出すから」と、早期退
職を勧誘して一掃していしまった例もあった。その社長さんは「辞めて欲
しくない. 将来当社を担うだろう有望株が辞めていくことは承知で打った
手だった」と聞かされていた。その商社のその後の躍進振りは夙に知られ
ているところだ。
この例から見えてくることは「質の劣化」と言うよりも「一個人の能力
だけで対応して即応していくのが非常に困難になっていく一方の時代の変
化と、それに加えて進歩発展の大きな促進の材料となっている情報化と
ICT化とAI等の急速な普及があり、一個人のカリスマ性では対応しきれな
いのではないのか」と思うのだが、如何だろう。
━━━━━━━
身 辺 雑 記
━━━━━━━
23日の東京湾岸は晴。
渡部亮次郎わたなべりょうじろう86歳。
元NHK政治部記者。当時「文芸春秋」に「赤坂太郎」で
政治評論を書いた。1字10円だった。
仙台、盛岡局勤務の後、東京の政治部へ。河野一郎を
担当。河野先生は酒 を一滴も飲めなかった。毎夜、赤坂の料亭に立ち
寄っていたが、お膳を前にお茶を飲んでいたとは。呑み助の私には想像も
できない。
外務大臣秘書官。その後、社団法人の理事長を18年間。
現在は年金生活者。メルマガ「頂門の一針」主宰者。
秋田県生まれ1936年1月13日。どこといって故障個所は無いから100位まで
は生きるだろう。このメルマガの届かなくなった日が私の死亡日です。
兄は81で、姉は91で死んだ。遺伝の話をすれば、 父親は60代に死んだが
母親は98まで生きた。
渡部 亮次郎
--
渡部 亮次郎