頂門の一針 6293号
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2022(令和4年)年 10月18日(火)
大東亜戦争の夢:加瀬英明
【変見自在】変声人語:高山正之
北方謙三氏は言った:前田正晶
第3次世界大戦へのシナリオ:北野幸伯
防衛力強化を言い訳にした増税:三橋貴明
重 要 情 報
身 辺 雑 記
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頂門の一針(まぐまぐ)
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大東亜戦争の夢 両親の面影をみる幼少期
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加瀬英明
アジア解放に憧れて
今年、月刊『文藝春秋』誌が創刊100周年を迎えた。今から30年ほど前だろうか。『文藝春秋』誌が新聞に社主・故菊池寛以下、創刊以来の執筆者を寄稿回数が多い
順に並べた1ページ広告をのせたことがあった。
私は自分でも驚いたが、70数番目という上位にあった。
『文藝春秋』にいまでも「おやじ」、「おふくろ」という、それぞれ1ページのコラムがある。私は「おやじ」の平成13年2月号に寄稿しているが、「おふくろ」のほう
は気が乗らなかったので、書くことがなかった。
父親は仕事に没頭していたから私を叱ったことがなく、ペットもどきに扱ったので兄のようだったが、母親は私の一挙一動を意にそわせようとして躾け、教育に煩く、好意
をいだけなかった。
父はエリート外交官だったが、外交官は身のまわりの出費が多いから、裕福な家の娘を娶る者が多かった。父もその一人だった。母は典型的なお嬢様だった。有名銀行の頭取の娘で、“バター臭い”家庭で育ち、敬虔なキリスト信者だった。
私は母のお嬢様のようなところが、友人たちに恥しかった。まさか随筆に母を嫌っていたとは書けなかった。いって母を嫌っていたわけではない。そりが合わなかったのだ。もっとも外から見たらふつうの母と息子だったろう。
私はアメリカに留学した時に、アメリカに「マイ・マザー、ドランク・ノア・ソバー(泥酔していても、シラフでも、わたしの母(マザー))」という諺があるのを知って
その通りだと思った。
私が幼稚園に通っている時に、英米に対する戦争に突入していた。コロナによって2年中断されているが、毎年、クラス会を開いてきた珍しい幼稚園だ。クラスメートのな
かに、東大総長になった蓮實重彥がいる。
戦時下の小学校へあがった。「贅沢は敵だ」というスローガンを信じていたので、母親の西洋気(か)触(ぶ)れの派手な服装がうとましかった。「和魂洋才」と和魂
当時の世界は、白人至上主義のもとにあった。
アメリカではトランプ政権からBLM(ブラック・ライブス・マター)運動が全土を風靡したが、私が生まれ育った世界では、世界の大半を占める有色人種が白人の支配下
にあって、ブラック・ライブス・マターの逆境を強いられていた。私が物心がついたことから、支那事変(左が日中戦争と呼ぶ)が続いていた。
アメリカが日本にけしかけていると教えられたが、いまから振り返っても、多分に正しい見方だった。私も子供たちも、日本がアジアを白人から解放する使命を授かっていると信じていた。
終戦の年に国民学校(小学)3年生だったが、いまでも「興亜の大業」という難しい言葉を覚えている。母親の西洋気触れを嫌ったのは、浅薄なことだった。日本が近代化を遂げて先進国になれたのも、西洋の主要国と戦うことができたのも、国をあげて西洋を模倣したからだった。
「和魂洋才」といわれたが、洋才を駆使するためには、洋魂を取り入れねばならなかった。私が高校生のころも、欧米へ渡るのを「洋行」といって憧れたし、試験でよい成績をとると、「上等舶来(じょうとうはくらい)」と叫んだ。
連合国と国連
日本陸海軍は観閲式で指揮刀を抜いて、唇の前に立てて鞘に収めることを行ったが、これは十字軍の礼式だ。刀身と鍔が交差しているのを十字架に見立てて、接吻したの
だった。皇軍がキリスト教の礼法を用いたのは、滑稽だっただろうか。
アメリカのルーズベルト政権は日本が屈服した後に、白人至上主義の世界支配を続けるためのシステムをつくろうと思い立った。「ユナイテッド・ネーションズ」(日本訳
で、国際連合)を創設することだった。
ルーズベルト大統領は日本が真珠湾を攻撃した翌月の1942年1月1日に、日本と戦っていた諸国をワシントンに招集して、「これから私たちの同盟を『ユナイテッド・
ネーションズ(連合国)』と呼ぼう」といって、「連合国」の名称が決まった。
日本軍が第2次大戦の最後の年となった1945年5月に、沖縄に来攻した米軍を迎えて勇戦していた時に、急死したルーズベルトに代った、トルーマン大統領が、サンフ
ランシスコに国連を創設する会議を招集した。新しい国際組織の名称は「ユナイテッド・ネーションズ」とすることが決定された。日本と戦っていることが、加盟国の条件
とされたために、慌てて日本に宣戦布告した国が多かった
昭和20年の朝日新聞を読むと、十月まではサンフランシスコで誕生した『ユナイテッド・ネーションズ』を正しく「連合国」と呼んでいるが、11月から、突然、「国際連合」「国連」に変更している。
国連が「連合国」であっては、日本を敵とする機構であるのがみえみえだ。広島、長崎に爆弾を投下したのも、「連合国(ユナイテッド・ネーションズ)」ではなかったか。だが、今日の世界のどこを探しても、“国際連合”という名称の国際機関は存在していない。
中国では国連を「連合国」、韓国も「ヨンハプグク(連合国)」同じ敗戦国のドイツ、イタリアも「連合国」とそのまま使っている。アジアの独立戦争勝利が世界戦争の終結私の事務所はいつも千客万来で賑わっている。議員、作家、芸能人、労働組合幹部、外国の学者など、あらゆる職種の人たちが集まってくるから楽しい。『カレント』の矢
野弾先生も、その一人だった。今年急逝されたが、惜しい人を失った。
矢野先生の縁で事務所に立ち寄られたのか覚えていないが、Aさんという高齢美形の女性がおられる。みるからに良家の令嬢で、仏教伝来について学術書も出版されており私がその本の内容を批判したことから、会話のよき伴侶となるようになった。
私はAさんにお目に掛かるたびに、生真面目、教養人で、西洋に憧れてキリスト信者でおいでのところも、母によく似ているのに驚いた。最後にお会いした時に、Aさんが「世界戦争が終わって、国連、国連機関のユネスコが生まれ、ユネスコ憲章は気高い」といわれたので、「ユネスコ憲章はクズみたいなものです。ユネスコは平和に有害です」と答えた。
私がその直後に入院したので申し上げる機会がないが、先の世界戦争はまさか日本が降伏した時に終わっていない。その意味で、日本が第2次大戦に参入した時に、「大東亜戦争」と名づけたのは正しかった。日本が降伏した後に、アジアを再び植民地とするために、連合国軍がインドネシア、ベトナム、マレーシアなどに攻め込んだ。
日本が剣を捨てた時に、アジアの同胞が日本の大東亜戦争を戦い続けた。先の世界戦
争は、インドネシア、ベトナムなどが独立戦争に勝った時にようやく終わった。アフリカ大陸も呼応して、次々と独立していった。
緒戦で日本が勝っていたころは、私もアジア太平洋につぎつぎと日の丸が書き込まれるのを見て、狂喜した。開戦時に決定した「大東亜戦争」という戦争の呼称も使ってい
たが、サイパン島が失陥したあたりから、しだいにアジアの解放の夢が語られなくなり、「本土決戦」「一億総特攻」に変わってしまった。
今日の日本では先の戦争を白人優位主義史観に従って、「太平洋戦争」と呼ぶのが良識で「大東亜戦争」だと時代遅れの右翼だとみられる。「大東亜戦争」のほうが正しい
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【変見自在】変声人語
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高山正之
ポルポト派がカンボジアの首都プノンペンを制圧したとき、朝日新聞の和田俊記者は「アジア的な優しさが溢れていた」から、きっと明るい社会主義国家ができるだろうと書いた。その翌日から170万人の大虐殺が始まった。
すぐばれる嘘を書いた理由は一つ。朝日の記者どもは取材しない。当てずっぽうで書くからだ。その大虐殺を裁く特別法廷が先日、最後の大物キュー・サムファンに終身刑を言い渡して閉廷した。
そしたら天声人語がよせばいいのに、それをネタに一文を書いた。キュー・サムファンが虐殺を始める前、周恩来から「小さくてもいい。きらりと光る共産国家になれ」と武村正義みたいなことを言われたとか。
「でも忠告は無視された」と天声人語は続ける。
以下、ポト派は「都市人間を農村に下放し、強制労働させ、知識人を殺し、ついには国民の4人に1人を殺すキリングフィールドを脱出した」と、まあ十年一日というか、昔から言われてきた話を並べる。
余りに新鮮味がないと本人が思ったか「スパイをでっち上げ、処刑した背景には困難を誰かのせいにする統治の手法が窺える」と鹿爪らしく結ぶ。
そんなものは毛筋ほども窺えない。
執筆者は最後の法廷の訴因すら読んでいないらしい。そこには「チャム族などの虐殺を問う」という件がある。
それはポト派大虐殺が「極端な共産主義思想」(朝日の社説)などではないことを十分に仄めかしているが、天声人語の筆者にはそれが分からない。
ここで言うチャム族とはベトナムに滅ぼされたチャンパ国の民のこと。今はベトナム南部からカンボジアにかけて分布する亡国の民で、彼らが織る絹絣(きぬかすり)は世界的に知られる。
ポト派はクメール・ルージュを名乗るが、その主張は共産主義より前に、民族自決がくる。まずよそ者のチャム族や仏領時代に入り込んで彼らの国の政治経済を壟断するベトナム系住民を絶滅し、クメール人の国を取り戻すことにあった。
天声人語の執筆者は知らないが、キュー・周恩来会談と同じ時期にもっと大物のヘン・サムリンが毛沢東に会っていた。
会見の主題は淘汰すべき「よそ者」の線引きだった。一口によそ者と言ってもベトナム人もいれば華僑系もある。現にヘン・サムリン自身もフン・センも父親は華僑だった。それに純粋華僑も12万人はいた。
彼らをどうするか。毛の答えは「構わないからみんなやっちまえ」だった結果外人はみな粛清の対象とされた。
最初に淘汰されたのはメコン川に沿う一帯のベトナム系農民とチャム族たちで、その日からメコン川は死体で埋まった。次に都会に住むベトナム系がやられ、華僑もやられた。彼らの処刑場チュンエクは皮肉にも華僑の墓地だったところだ。
カンボジア外交官と結婚した内藤泰子も右に同じ。下放され、夫と子はみな死亡。彼女もタイ国境の村で救出されるまで丸4年間の地獄の辛酸を嘗めた。
ポト派は民族自決を掲げ、カンボジアを蚕食するベトナム人を標的にして大量虐殺をやった。後に中越紛争を仕掛けるくらいベトナムを憎む支那がそれで早くからポト派を支援した。
自身も華僑系ゆえに粛清を察知したフン・センがベトナムに寝返り、ポト派は潰された。入り乱れる民族間の憎悪。それを抜きにポト派を語れないのに、この天声人語には民族のミの字もない。おまけに文章は超へたくそとくる
先日の天声人語は安倍さんの国葬に「10億円以上」かかるとか埒もない文句を並べていた。朝日の慰安婦の嘘で日本は韓国にもう100億円を超す国費を使っている。それを弁償してから言え。
そしたらこの秋から執筆陣がやっと変わると社告があった。嘘と不勉強と傲慢はもうやめてほしい。
〈新潮社編集部より〉
高山正之氏の本紙連載が、単行本になりました。
『変見自在バイデンは赤い』(定価1650円)絶賛発売中。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
松本市 久保田 康文
『週刊新潮』令和4年10月20日号採録
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北方謙三氏は言った
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「日本語に愛を持てない者は去れ」と:前田正晶
以下は私が昨年の10月15日に発表したものである。今になって読み返してみると、今日でもそのまま主張したい内容である。そこで、少し手を加えて再録してみようと思った次第だ。願わくは、熟読玩味して頂き、私の主張をご理解願いたいのである。
北方氏は週刊新潮に連載しておられるコラム「十字路が見える」で件名のように明快に指摘しておられた。21年の10月21号に掲載された分である。私にしてみれば「カタカナ語排斥は孤軍奮闘ではなかった。有り難い」との思いで読んだ。言うまでもない事でカタカナ語に関して、である。カタカナ語(北方氏は「横文字」と表現しておられる)については、2ページ目に書いておられることが我が意を得たりなので、少し引用してみようと思う次第だ。
>引用開始
まず、訊きたい。インバウンドとはどういう意味なのかな。もし外国人旅行者のことを言うのなら、そのまま日本語で言った方が、はるかにわかりやすくないか。多分、日本語では表現できない、深い深いところで大いなる意味を持っているのだろうが、それならそれで、遣っている人たちがきちんと説明しろよ。しかし、必然性の問題だな。横文字にするのに必然性があるとしたら、日本語の方にそうとう大きな問題がある、ということだろう。日本語で言えないので、インバウンドなどと言ったりするのだろう。インバウンドが外国人旅行者だとしたら、それほど日本にとって不都合な人たちになるのか。
いやだなあ。私は、ほんとうにいやだよ。テレビのニュースでも、平然とインバウンドと言っている。せめて公共放送ぐらいは、率先して日本語を破壊するようなことは、やめてくれないかな。疫病関係の言葉も、横文字で表現して、括弧の中で日本語で説明するという滑稽さである。三密を、人流を、横文字にしてくれ。できないなら、ほかのもするな。特に公共的な立場にいる人、日本人だろう。日本語を遣おうよ。君もだぞ。
<引用終わる
「北方様、よくぞ言って下さいました」と心の底から賛成すると同時に感謝申し上げたい。私が長年主張してきたことが「日本人だろう。日本語を遣おうよ。君もだぞ」なのであるから。北方氏のようなカタカナ語にすれば「インフルエンサー」とでも言えるだろう著名人で、横文字(=カタカナ語で良いと思うが)を排斥しておられる方は極めて少ないと思っていたし、自分自身は孤軍奮闘であると思ってきた。何分にも「嫌味だ」とまで言われた経験まであるのだから。
念の為に振り返っておくと、私は「インバウンド」は既に批判していた。それは、北方氏も指摘しておられたように“inbound”という単語には「外国人旅行者」などという意味はないのだから。もしかして“inbound
traveler”とでもいう熟語があって、flip
chartのflipだけを切り取って「フリップ」にしてしまったのと同様な手法かも知れない。「ウイルス感染の再拡大」を簡単に言えば「はね返る」という意味のreboundから取って「リバウンド」としたのも同様な手口だ。「リバウンド」だけでは何が跳ね返ったのか、再度拡大したのか特定できていない。
私は1990年からカタカナ語というべきか、英語の単語をそのまま日本語の中に組み込んで「粋がっていたり、格好が良いと錯覚したり、時代の先端を行っているとでも思い込んでいる現象を批判してきた。そんな格好の良さなど不要だ」と言って。ところが、この格好付けの傾向は拡大する一方で、21世紀の初め頃には私が一寸集めてみただけで200語近くにも増えていた。2008年に行ったプリゼンテーションでは、大雑把に「造語(和製英語)」、「ローマ字式発音」、「言葉の乱造・濫用・借用」、「合成語・複合語」に分類しておいたが、これらのどの分野でも新語が続々と現れている。
このようなカタカナ語化された英語の単語の例はこれまでに数限りなく取り上げてきた。「インバウンド」も勿論そのうちに入っていた。そこで、今回は近頃特に気になっている例を一つだけ挙げておこう。それは「メイン」である。これは既に解説したことで「如何なる辞典を見ても『名詞の前に使う』形容詞」とある。即ち、main
streetやmain dishやmain entryのような形だ。
だが、多くの方は「主に」や「主として」や「主体にして」の意味で、言わば名詞形に使っているのだ。また同じ事を言うかと思われるだろうが「このような過ちは単語の意味だけを覚えさせて、文章の中でどのように使うべきか」を教えていない英語教育の欠陥であると思う。第一、日本語化してしまったとは言え、何も「主に」を「メイン」と言う必然性はないと思う。
一つだけとは言ったが、もう一例挙げたくなった。それは「ウインウイン」である。この表現は故安倍元総理が好んで使っておられた印象が濃厚だ。これも「名詞の前に使う」のが正しい英語の在り方だ。即ち、We
were in win-win
situation.のような文章になるのだ。「ウインウイン」単体で「双方が満足できる状態」という名詞形で使ってはならないのだ、英語では。
私はこういう現象が起きる最大の原因に「我が国の至らざる英語教育、就中単語を覚えさせようとする教え方」を挙げてきたし、この見解を変える気はない。単語を沢山覚えさせることは結構なことだ。だが、単体で覚えさせるだけで、流れの中での使い方を教えず、口語体、文語体、俗語、慣用句等に分けて覚えさせないのが困るのだ。長い年月アメリカの大手企業の中にいて、支配階層の人たちと語り合い話し合っていても、collaboration,
overshoot, quest, renewal
openなどと見たことも聞いたこともない表現が、スラスラと出てくるのには恐れ入るだけだ。日本語にしようよ。
参考資料:週刊新潮 21年10月21日号
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★第3次世界大戦へのシナリオ
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北野幸伯
今回は、予測というか、「可能性」に関するお話です。
私自身、「絶対に起こってほしくないシナリオ」について。それでも「可能性がある」ので書かないわけにはいきません。
▼追い詰められたプーチン
私は以前から「プーチンは、戦略家ではなく戦術家。だから進めば進むほど苦しくなっていく」と書いてきました。
今回のウクライナ侵攻がはじまる前から、「プーチンの戦
略的敗北は不可避」と書いてきました。
実際、何が起こったのでしょうか?
2月24日、プーチンは、ウクライナ侵攻命令を下します。
当初は「3日でキーウを攻略して終わらせる」予定だっ
た。それで「戦争」ではなく、「特別軍事作戦」という用語を使ったのです。ところが、キーウは落ちませんでした
3月末、ロシア軍はキーウ攻略を断念します。新たな目標は、「5月9日の対ドイツ戦勝記念日までに、ルガンスク州、ドネツク州を完全制圧し、勝利宣言すること」になりました。5月9日、ロシア軍は、ルガンスク州、ドネツク州を制圧できていませんでした。
7月3日、ロシア軍はようやくルガンスク州を完全制圧した
と発表しました。プーチンは歓喜し、「次はドネツク州だ!」と小躍りしたことでしょう。ところが、ロシア軍の進撃は、ここでストップ。以後、ウクライナ軍が反転攻勢を強めるようになっていくのです。
プーチンは弱気になり、「停戦交渉派」になっていきます
プーチンの停戦条件は、
・ウクライナは、クリミアをロシア領と認めること。
・ウクライナは、ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共
和国の独立を認めること。
・ザポリージャ州、ヘルソン州をロシア領と認めること。
ゼレンスキーは、こんな無茶な要求を呑めるわけがありま
せん。それで、停戦交渉再開を拒否していた。そうこうしているうちに9月11日、ハリコフ州の戦いでロシア軍が大敗した。ウクライナ軍は5日間で、東京都よりも大きな土地を奪還することに成功しました。
この敗北は、ロシアの支配者層に大きな衝撃を与えました。プーチンは、「このままでは、ロシア軍が実効支配している、ルガンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州も維持できないかもしれない。ロシアは負けるかもしれない!」と思ったことでしょう。
つづいてイメージされるのは、プーチン自身の未来です。
辞任に追い込まれるのはまだマシで、捕まったり、殺され
たりすることもイメージできたでしょう。プーチンは「自分の体面、権力、命を守るために」この戦争に勝利しなければならない。
▼プーチンに残され二つの選択肢
でも、どうやって?二つしか方法は、ありません。
・動員をかけて、兵士の数を激増させること。
・戦術核を使うこと。
それで9月21日、プーチンは、「部分的動員令」を出した
のです。「部分的」といいますが、ロシア全土で大々的に動員が行われています。「部分的」という言葉は、「戦争」を「特別軍事作戦」言い換えたのと同じ詭弁です。
国民がパニックを起こさないよう「総動員」という言葉を
避けた。実際は、「総動員」と変わりません。
▼戦術核使用のロジック
9月30日、プーチンは、東部ルガンスク州、ドネツク州、
南部ザポリージャ州、ヘルソン州を併合しました。併合したからといって、ウクライナ軍が攻撃をやめることはないでしょう。何が変わったのでしょうか?
ロシア側のロジックでは、4州は、すでに「ロシア領」で
す。ウクライナ軍が4州を攻撃することは、「ロシア領を攻撃している」ことになる。そうなるとこれは、ロシア側によると、「ウクライナ軍がロシア領を侵略している」
ことになるのです。
かなり異常な論理ですが、プーチンのロジックは、まさに
そういうことになります。そして、ロシアの軍事ドクトリンによると、
「自衛のためなら核を使用することができる」のです。
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ロイター9月30日。
<ロシアのプーチン大統領は30日、ウクライナ東・南部4州の併合を宣言する演説で、米国が第二次世界大戦末期に広島と長崎に原爆を落とし、核兵器使用の「前例」を作ったと指摘した。プーチン大統領は最近、自国の領土を守るために核兵器を使用する用意があると述べ、核兵器使用が懸念されている。プーチン氏は演説で「米国は日本に対し核兵器を2回使用した」とし「米国が核兵器使用の前例を作った」と述べた。>
要するにプーチンは、「アメリカも核を使ったよね。
だから、俺が使っても文句ないよね」と主張している。
▼ロシアが戦術核を使ったらアメリカは?
その時、アメリカはどう動くのでしょうか?
サリバン大統領補佐官は9月25日、核を使えば「ロシアに
破滅的な結果を与える」と警告しました。彼は、ロシア政府に、直接同様の警告を繰り返ししているそうです。
「破滅的な結果」とは何でしょうか?
サリバンさん自身は語っていません。しかし、ホッジス元米陸軍欧州司令官は以下のように語っています。
<米国の反撃は核兵器ではないかもしれない。しかしそう
であっても極めて破壊的な攻撃になるだろう。例えばロシ
アの黒海艦隊を殲滅させるとか、クリミア半島のロシアの
基地を破壊するようなことだ。>
(FNNプライムオンライン10月3日)
ロシアが戦術核を使えば、「黒海艦隊をせん滅させる」そうです。実際にそうなるかわかりません。しかし、それをするとすれば、米軍・NATO軍が黒海艦隊を壊滅させるのでしょう。そうなると、ウクライナ対ロシアの戦争ではなくなります。NATO・ウクライナ 対 ロシアの戦争になる。
第3次世界大戦勃発です。
▼最悪のシナリオ
NATO軍の攻撃で、黒海艦隊が全滅した。プーチンは、「やべえ!やっぱNATOにはかなわねえ。降伏しよう!」となるでしょうか?ならない可能性が高い気がします。そうなると、「黒海艦隊のかたき」を討たなければならない。
どうやって?
たとえばNATO加盟国であるバルト三国やポーランドに対する戦術核使用。これは、NATO加盟国への核攻撃ですから、当然NATOも核で反撃する可能性がでてくる。核の撃ち合い最悪です。そうなると今度は、「プーチンは、いつ戦略核の使用を決断するのか?」といった話になってきます。
▼超最悪のシナリオ
さらに悪いシナリオもあります。欧州で、NATO対ロシアの戦争がはじまった。アメリカは、ロシアとの戦いで忙しい。その時、習近平は、「アメリカが欧州方面で戦っている今がチャンスだ!」と考えないでしょうか?
習は、「千載一遇のチャンスを活かさなければ!」と考え
台湾に侵攻する。そうなると、日本と中国の戦争もはじまってしまいます。なんとも、恐ろしいシナリオでした。
しかし、このシナリオの最初の部分、「プーチンが戦術核を使う可能性がどんどん高まっている」というのは、事実です。クリミア大橋が爆破された。
これでまた、「プーチンが戦術核を使用する可能性が高ま
った」と見るべきなのです。私には夢がある。「第3次世界大戦が起こっていない世界で、2023年を迎えること」
戦術核が使われませんように。
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防衛力強化を言い訳にした増税
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三橋貴明
予想通りとはいえ、非常にまずい流れになってきました。
とにかく、財務省は緊縮財政特に増税ができればいいわけで、そのためには、
1. 有識者会議(と称する御用会議)で増税、
支出抑制を議論させる
2. 有識者会議の決定を
「総理指示」として閣議決定する
3.自民党に「党方針」とさせる
というプロセスで進めてくるわけです。
防衛予算の増額と引き換えの「増税」については、
そろそろ「1」の段階が終わろうとしています。
『防衛費増額の財源「国民全体で負担を」
有識者会議の議事要旨政府は9月30日に開いた「国力としての防衛力を
総合的に考える有識者会議」の初会合の議事要旨を発表した。
防衛費を増額する財源について国債に頼らず、国民全体で負担すべきだとの主張が相次いだ。会議は座長の佐々江賢一郎元外務次官ら10人の有識者が参加する。
「歳出改革の取り組みを一層進めるとともに現役世代の負担が必要」「恒久的な財源の確保を」との声があった。
有識者の発言者名は記さなかった。(後略)』
ちなみに「歳出改革」とは、日本では「歳出削減」を意味します。歳出削減と同時に、「現役世代の負担」を増やす。「恒久的な財源を確保」する。
これ、下手したら防衛費増額をきっかけに、消費税増税の議論にまで進みかねませんよ。というか、財務省が「あわよくば」を狙っているのは確実です。
タイミングを合わせたように、財務省の飼い犬の一人、経済同友会の桜田謙悟が「消費税率を現行の10%から
13%に引き上げるべき」と提言しています。
防衛費増額と引き換えの増税については、法人増税が取りざたされていますが、これは「経済産業省」の権益と激突するので、一筋縄ではいきません。
それに対し、消費税の増税は、霞が関的には楽なのですよ。何しろ、どの省庁の権益も侵さない。(国民の困窮と引き換えになりますが)そもそも、「恒久的な財源」は「政府の貨幣発行」すなわち「国債発行」です。
「政府の国債発行は財源になり得ない」と、主張する人は日本政府の債務残高(2015年時点)は名目の金額で1872年の3740万倍! 実質でも1885年の546倍!になっている。
それにもかかわらず、「何の問題も起きていない」現実を説明してくれ。
http://mtdata.jp/data_53.html#Seifusaimu
一体、いくらまで「クニノシャッキン」とやらを
膨らませれば、破綻するんだ?などと、今さら叫んでもむなしい限りですが、とにかくやれることをやりましょう。
この悪夢の事態を変えることができるのは、国会議員しかいません。
国会議員、さらには国民の「貨幣観」を正す。残念ながら、それ以外に「防衛力強化を言い訳にした増税」を回避する術はないのですよ。
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重 要 情 報
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◎10月16日のスポーツからー勝った者が本当に強いのか:前田正晶
昨16日は天皇杯のサッカーと女子の富士通レディースのゴルフを掛け持ちで見ていた。忌憚のない感想を述べていこうと思う。
J2が優勝した天皇杯のサッカー:
申し訳ない次第だが、最近のサッカーの動向にはさして注意していないので、テレビを見るまでJ2の甲府とJ1の広島の対戦とは知らなかった。先ず気が付いたことは、A代表のサッカーとは大いに異なる点があったこと。それは「責任逃れの無意味なパス回しがないこと」と「ピッチを広く使った、恰も思い切ったかのようにGKにまでも含めた後方へのバックウワード・パス(バックパス)が非常に少ないこと」だった。歓迎したい流れだった。
何故か知らないが、寄せ集め世帯であるA代表にサッカーには、昨日の試合のように「何とかして皆で頑張って勝ってやろう」という直向きな攻撃精神(当節流行りのカタカナ語では「アグレッシブ」だが)が見られないのだ。ところが、甲府も広島も全員が「勝とう、優勝したい」という精神を前面に出してイエローカードどころかレッドカードを出されそうな当たり方をして見せたのだった。
「何故、A代表はこういうサッカーができないのか」と思いながら見ていた。特にJ2の甲府には「技術の至らざるところは闘志で補っていこう」とでも形容したいような試合振りだった。その気迫は特に守りに現れて、先取得点をして広島を焦らせていたと見た。広島が後半の終わり頃になって綺麗なシュートを決めて同点にしたのを見ていると、何となく甲府に勝たせてやりたいという気分になっていた。
しかし、ゴルフと掛け持ちだったために、甲府のGKが延長に入ってからのPKを止めた場面も、PK戦でも止めた場面も見損なってしまった。見終わってからの正直な感想は「J1とJ2の差が何処にあるのか」だった。それは、「甲府がJ2のリーグ戦で18位だったというのに、広島が負けてしまったのは何故か」ということ。直向きだったアグレッシブさに、上位リーグのティームが負けるのは何故かと思っていた。もう一つは「A代表には何故直向きさがないのか」という率直な疑問。
アメリカ帰りが勝った女子のゴルフ:
アメリカに行って1回優勝した古江彩佳(22歳、153cm)が18番ホールでバーディーを決めて、1打差で優勝して見せたのは見事だった。アメリカというか世界の強豪が集う中で揉まれてきた成果だろうと、解説者たちは言っていた。その通りだろうとは思う。だが、女子のプロのゴルフ界は古い表現を使えば「群雄割拠」であり、21世紀生まれの若いゴルファーが次から次へと現れて優勝を浚っていっている。男子の世界とはえらい違いだ。
特に私の目に付くのは「昨年の覇者たちが、今年に必ずしも覇者たり得ない状態」であること。アナウンサーたちが「東京オリンピックの銀メダリスト」と紹介する稲見萌音は、今季は一度優勝して見せただけで、昨日も上位10者には顔を見せていなかった。これなどはほんの一例であり、今年になってからは20歳以下の言わば無名の優勝者が何名か現れて、高い身体能力と技術と「恐れを知らない強み」を見せてくれている。
私はこのような若手の台頭の意味するところは「前年度に勝って見せていた若手には、本当の意味での『真の技術に裏付けされた強さ』が備わっていたのではなく、怖い物知らずの勢いがあっただけだったので、同じような勢いだけで上がって来た新人たちに勝てないのでは」と疑いたくなった。だから、「岩井明愛はアメリカで揉まれてきた古江に最後の最後で追い抜かれたのではなかったか」と考えながら優勝スピーチを聞いていた。
そこで思い出したことがあった。それはウエアーハウザージャパンにいたスポーツ通が1980年代に指摘していた「女子の個人種目の選手たちが強いのは、女子にはプロ野球も相撲もないので、優れた人材が限られた種目に集中して集まるから」だった。あれから40年近くなった現代にも通用するのではないだろうか。
◎馬鹿は死ななきゃ治らない。愛国馬鹿もその一つ。
テーマ:ブログ北村維康
『森の石松』だったか、浪曲の最後に、「馬鹿は死ななきゃ治らねえ」といふのがありましたね。
実はこの三日ほど、那覇市の市長選挙で、保守系の知念候補の応援のために、那覇市にチラシ配布に行ってゐて、家を留守にしてゐたものですから、皆さんからいただいたメールは、本日、15日の夜に初めて拝見しました。
GHQから時の内閣に突き付けられたのは、非常識極まりない、言はば驚天動地の代物でした。そのため、日本国憲法そのものが成立した後、清水澄枢密院議長は、熱海の錦ヶ浦に投身自殺して、大日本帝国憲法に殉じました。その事の痛みを少しでも感じるならば、それが日本人です。三島由紀夫氏も、沼山光洋さん(靖国神社の職員であった方ですが、天皇陛下の靖国神社への御親拝が叶はず、その責任を取って、靖国神社の前で自決されたました)も、精神的な意味では、私の先輩です。私は、かつて、谷口雅春先生の薫陶を受け、先生の烈々たる憲法改正論は、骨の髄まで沁みとおってゐます。
餅は餅屋に、と言ふ諺があります。国家としての日本は、それなりの成文憲法を持つべきなのは勿論ですが、成文憲法を持たずに、不文憲法だけでフォークランド紛争を闘ひきったイギリスに、われらは多くのものを学ぶべきです。勿論、イギリスにも、様々な瑕疵はあり、かつては植民地を沢山抱へて、苛烈な政治をも行ひました。しかし、物事は是々非々で捉へなければいけません。そして私もこの一生を終る時には、「あいつも愛国馬鹿だったよなあ」と言はれることが、最大の賛辞だと受け止めます。天皇陛下万歳!
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身 辺 雑 記
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18日の東京湾岸は雨。
渡部亮次郎わたなべりょうじろう86歳。
元NHK政治部記者。当時「文芸春秋」に「赤坂太郎」で
政治評論を書いた。1字10円だった。
仙台、盛岡局勤務の後、東京の政治部へ。河野一郎を
担当。河野先生は酒 を一滴も飲めなかった。毎夜、赤坂の料亭に立ち 寄っていたが、お膳を前にお茶を飲んでいたとは。呑み助の私には想像も
できない。
外務大臣秘書官。その後、社団法人の理事長を18年間。
現在は年金生活者。メルマガ「頂門の一針」主宰者。
秋田県生まれ1936年1月13日。どこといって故障個所は無いから100位まで
は生きるだろう。このメルマガの届かなくなった日が私の死亡日です。
兄は81で、姉は91で死んだ。遺伝の話をすれば、 父親は60代に死んだが
母親は98まで生きた。
渡部 亮次郎
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渡部 亮次郎