毛馬 一三
大阪・枚方市の中司宏市長が、うだるような暑さの中、7月31日午前大阪地検特捜部に談合(競争入札妨害)容疑で逮捕された。同市長は、記者会見や議会での答弁でも「談合には一切関与していない」と何度も開き直っていたが、その強気の姿勢も刎頚の友と信じていた盟友の自供であっけなく崩れた。
「お互い首を刎ねられても悔いはない」とする誓いを結んだ仲が、「刎頚の交わり」「刎頚の友」の故事の由来といわれ、ロッキード事件の小佐野賢治が田中角栄の刎頚の友といわれたことは記憶に新しい。
市長のその友とは、この枚方市発注の清掃工場建設をめぐる談合事件・汚職事件で逮捕された、20年来の友人・大阪府警捜査2課警部補の平原幸史郎被告(47)と元市議で府議会議員・初田豊三郎被告(49)、それに側近の副市長・小堀隆恒被告(61)である。
この人脈がこの事件の裏側で巧妙に動いた。平原被告と初田被告が大手ゼネコン大林組元顧問の森井繁夫被告(64)に市長を引き合わせる仕掛けをした。
副市長・小堀被告は、市長から紹介された上記2被告に受注工作に関する情報や動きを流し、それを掴んだ2被告は勇んで大林組側へ乗り込み発注させる工作をしたとされる。
しかもこの裏工作のあと、大阪市内のホテルや料亭で、市長は初田被告同席のもと大林組元顧問の森井被告と会食、大林組が工事を受注するよう話を持ちかけた。これが市長に対する談合容疑の要件である。
特捜部は5月末の捜査着手以来、市長室を家宅捜索する一方、中司市長からも密かに6月下旬から数回にわたって任意で事情を聞いてきている。しかし市長は「関与」をひたすら否認してきたという。
それには、かの盟友たちが、自分を守ることはあっても絶対に不利になる証言はしないとの確信があったため、あの強気の発言を繰り返してきたのだろうと市幹部の何人かも口を揃える。果たして盟友たちは、逮捕された当初は中々意中を明かさなかったそうだ。
事実、「金の流れ」は府議と元警官にはあったものの、市長には結びつかなかった、金が市長に渡ったかどうか不透明な段階で、競争入札妨害罪(談合)だけで強制捜査に踏み切れるかどうか、これをめぐり検察内部で議論が上がっていたことで時間がその分経過したのも真実だ、と関係者は証言する。このため事件は、市長不関与で終結かという情報が流れたのも事実だ。
とこらがそんな中、特捜部の追及に遂に盟友たちが崩れ落ちた。市長“関与の行動”を自供しだしたのだ。
枚方市は、市発注の清掃工場建設の予定価格を39億円で1回目の入札をしたが、大林組は採算ラインを大きく下回ったため辞退する方向に出たため、市は清掃工場の建物工事を追加して予定価格を約56億円に引き上げた結果、市の思惑通り予定価格の98%に当る55億6000万円で大林組と浅沼組の共同企業体が落札している。市長関与を窺わせる、辻褄の合うシナリオだった。
特捜部はこうした経緯を踏まえ、例え市長に「金が渡っていなくとも」、市長自身がこうした刎頚の友で構成する人脈の中で、事件を成り立たせる役割を十分果たした疑いがあると判断。競争入札妨害罪(談合)の共犯であっても厳しく姿勢で臨むことに踏み切る最終結論に達したようだ。
31日遂に逮捕された市長は、「金を受け取ってない」ならば、身は安全と踏んでいたかもしれない。ただ心配だったのは、あの会食の席上で落札先の大林組に受注するよう持ちかけた秘密の話の全容がバレないかどうかだったのではないかと、関係者はいう。しかし盟友たちは、結局自供してしまった。
「刎頚の友」なんてもうこの世に存在する筈がない。「今日の友は、明日の敵」と思っていなければこの世は渡れないというのは言い過ぎか。
(了)07.07..31
2007年07月31日
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