2007年08月28日

◆<巴里だより>・宝塚と少子化

  
岩本宏紀(在仏)

歌舞伎は男が女役を演じ、宝塚は女が男役を演じる。ぼくが好きな、
あるいは好きだった八千草薫や小柳ルミ子が宝塚出身ということで
多少は興味をもっていたが、わざわざ観に行こうと思ったことはなかった。

最近雑誌で、日本の女性は戦後、日本文学の中に恋愛を求めることを諦め、
宝塚の舞台にそれを求めている、という文章を目にした。日本独特の
この文化を、一度は自分の目で見ておくべきだと思い、お盆の一時帰国の際、
宝塚まで足を伸ばした。

劇場入り口のそばに、ブロマイドや写真集を売っている大きな店があった。
見とれてしまうほどハンサムな男役、お姫様のような女役がずらりと並んでいる。

メイキャップの技術に恐れ入った。男の観客はごくわずかで居心地が悪いだろう、と覚悟していたがそうでもない。おかまっぽい若い男性も数人見かけたが、奥さんとお嬢さんを連れた中年男性が意外と多いので安心した。

午後3時、いよいよ開演。 照明、舞台装置、衣装、とにかく派手である。
けれども決して下品ではない。


そして男役。「うーん。」と唸ってしまった。背が高い、肩幅がある。もちろん美男子。

塩野七生は、撫で肩ゆえにどうしてもポール・ニューマンのファンになれず、
ずっとクラーク・ケーブルに憧れていると言っていたが、宝塚はまさに
クラーク・ゲーブル風のかっこ良さだ。ただし髭は似合わない。吹き出してしまった。

一番感心したのは、何もしないときの立ち姿と腰掛け姿である。演劇部にいたとき、台詞も動作もなくただ立っている、あるいはただ座っている演技に非常に苦労したことを思い出した。両手をポケットに突っ込んで、やや上向きにすっくと立つ姿。
胡坐をかくように大胆に腰掛け、頬杖をついたポーズ。背筋がピーンと伸びて実にかっこいい。

首を傾ける角度、手の位置、視線、すべてが計算し尽くされた感がある。
相当厳しい訓練を重ねてきたに違いない。外股で肩をゆすりながら、しかしひかがみをしっかり伸ばして大股で歩く姿も小気味よい。

けれどもちょっと心配になってきた。これだけかっこいい男役に見慣れてしまうと、本物の男が不細工に見え始めるのではないか。男との恋愛に興味をうしない、結婚もしない、その結果少子化がさらに進むのではないか。

本気でそう思ったほど、宝塚の男役はかっこ良かった。(完)
2007年8月27日


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