2007年10月08日

◆ミャンマーの「真相」

                     渡部亮次郎

1995年から3年間、日本のミャンマー大使を務めた、知り合いの山口洋一氏が2007年10月11日号の「週刊新潮」に特別手記を寄せている。「スーチー女史が希望の星というミャンマー報道は間違っている」というもの。

山口氏は本籍佐賀県70歳。私が外務大臣秘書官の頃は本省の海外広報課長から昭和天皇の御用係に出向していた。その後、インドネシア大使館の参事官などを経てミャンマー大使を務めた。

週刊新潮の手記は4ページに及んでいるが、「勲章ジャラジャラの軍服を着た為政者と、民主化を目指す軟禁中の女性・・・。誰が見ても悪役は前者である。デモの取材中、日本人ジャーナリストが射殺された事件は、ますますミャンマー政府の悪逆非道を印象付けた。

が、元ミャンマー大使の山口洋一氏は、新聞、テレビの偏向した報道を指摘する。もはや、スーチー女史は希望の星ではないのだと」

以下<  >で括って内容を紹介する。

<欧米の殆どすべてのメディアと日本の新聞、テレビはミャンマーで起きた僧侶中心のデモを、軍事政権の圧政に対し民主化を求める民衆が蜂起したという構図で報じてきた。あまりに単純すぎる>

<今回のデモの規模10万とは誇大な数字だ。メディアは反政府運動の規模を5~6倍、酷い時には10倍にする。在任中アウンサンスーチー女史の自宅前の集会が連日3―4000人と報道されていたが、部下に数えさせたら5―600人しかいなかった>

<今回のデモでもスーチー女史の率いる政党NLDが市民にカネを払って参加させている事実、デモ隊が投石し、武器を奪おうとしたので治安部隊が止む無く発砲した事実を殆ど伝えていない>

<ある地方では治安部隊を僧侶が僧院に押し込め、その車に火を放つといったおよそ「平和的な抗議活動」とは思えない振る舞いを見せたそうだが、日本では報道されていない>

<かつて日本人記者は「本社が期待しているのは、ミャンマーの首都が、反政府運動の闘士たちの血の海になっているような記事です」言っていた>

<日本のマスコミは、「軍政は政治犯を釈放すべきだ」と主張するがミャンマーに純粋な意味での政治犯は1人もいない。「道路や公園など公共の場所で5人以上の政治目的の集まりは禁止」「屋内における50名を超える政治集会は許可制」といった古くからの法律に違反したものばかり。法治国家として当然のことを怪しからんというのは(どうか)>


<スーチー女史は自宅に広い庭があるのにわざわざ演説集会を自宅前の道路で開き、野次馬を集めて政府を挑発。取り締まろうとすると「民主化を妨害している!」>

<ビルマ人のスーチー女史を見る目は大きく変わった。それはアメリカから資金的、物的な援助を受け、政治的な指示も仰いでいる事が広く国民に知られてしまったから。英国の植民地時代の苦い経験から、ビルマ人ほど外国勢力との結託に嫌悪感を抱く国民は無い>

<翳りのもう1つはスーチー女史は軍事政府に反対しているだけで具体的な国家ビジョンが1度も聞かれないこと。それで国民は失望しスーチー離れや反スーチー感情が生じている>

<96年、ヤンゴン市内でスーチー女史の乗った自動車が暴漢に囲まれて立ち往生。警官隊が排除という事件があったのもその証拠。怯えた彼女は政府に保護を要請。自宅軟禁には警官による保護の面もあるのに、彼女に不利な事実は一切報じられていない>

<88年、18の少数民族が内乱を起こしたが、軍政はこれを鎮圧。血で血を洗う内戦を全面的に終結させた事は軍政の最大の功績となった>

<今回、デモの発端となった燃料費の大幅値上げなどの失政はあるものの、経済成長は毎年ほぼ5%を維持しており、国民の信頼を得る原因の1つとなっている>

<これらの事から現在のミャンマー国民の大半は軍事政権を容認し、命を賭けてまで反政府運動を行おうとする者など殆どいない。憲法の基本原則を審議する国民会議は8月にすべての作業を終えた>

<ミャンマーの一般国民は現状をベストとは思っていないものの、民主化への中間段階として仕方がないものと捉え、容認しているのだ>

<植民地や独裁という複雑な歴史を背負ったこの国では、今日、明日に完全な民主主義が定着する事はまず不可能。準備が整っていないところに形だけの民主主義を持って来ても、政治家は利権漁りに狂奔し、有権者は買収され、早晩、破綻するのは目に見えている>

<だから軍政は、まず民主主義の準備期間、一定限度の軍による政治への関与を残した「踊り場民主主義」を作り、ワンステップ置いた後に、最終段階へ進もうと考えており国民はそれを理解している>

<実情を正しく見極め、まずスーチー女史が善玉で政府が悪玉という時代劇のような構図でミャンマーを報じるのを止めることが国際社会として心得るべき第1歩ではないか>2007・10・06
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