2007年10月11日

◆江東ゼロメートル地帯

渡部亮次郎

東京・江東区は隅田川と荒川に挟まれた地域だから地盤は軟弱に決っている。毛利という町内で再開発された旧同潤会アパート(20階
2棟}の一隅に住んでいるが、古老の話では岩盤まで打った杭は地下60メートルに達したそうだ。

ここから100メートルぐらいのところにあった繊維工場が操業を止めて跡地をマンション業者に売った。一昨年秋のことである。敷地は70坪、そこに予定されたマンションは13階建て。

・・・の筈だった。板囲いの掲示では完工予定平成19年7月15日となっているが、工事そのものが一向に始まる気配が無い。実は昨年の夏ごろ、地盤調査みたいな事が行われたが、それっきりなのだ。

公園への散歩の行きかえり、囲いの隙間から見ると、土地に隣接して建っている4階建ての古いビルが左に大きく傾いているではないか。地盤調査で掘り返したら、隣のビルが傾いた。中止、中止!

多分、これが真相である。マンション業者、隣で傾いたビル、元の繊維工場、関係者、団子になってもめている事だろう。

江戸の歴史を読むと、江東地帯は、徳川家康が着任した当時は水浸しの湿地帯だった。

田中角栄氏の先祖みたいに土建の才能豊かだった家康は、この湿地帯を一目見てひらめいた。ここを立派な住宅地に「開発する」。

早速縦横に運河を掘った。掘ればそこへ土中の水が排水されて湿地は乾く。乾いた土地に土盛りをすれば立派な宅地に変貌するではないか。竪川(たてかわ)、横川の地名が残っている。竪川は今は立川と書いて「たてかわ」と読ませている。落語の一派がここから出たのではないか。

私の住まいする地名「毛利」を三省堂の「コンサイス地名辞典」1975年1月30日初版で調べると「区内最古の埋立地。竪川の上に都心と千葉を結ぶ首都高速道路7号線がある。紀州の毛利藤左衛門{伊勢屋藤左衛門}が埋め立てたと伝えられる、とある。

但し「総武本線錦糸町駅南500Kmは酷い誤植。ただの500m。又ここには江戸時代には幕府の材木蔵があったとあるが、今は都立猿江恩賜公園になって、私の散歩場所になっている。

そういうわけで江東区も墨田区も江戸川区も地盤が悪い。総称して「江東ゼロメートル地帯」といわれていたが、最近はあまり騒がれなくなった。

江東区環境清掃部 環境対策課 が最終更新日:2005年09月16日に出した資料によると、ゼロメートル地帯は湿地帯だったからゼロになったのではなく地下水汲み上げ過ぎによるものだった。

地下水を大量に汲み上げることによって、地下水位(水圧)が下がり、それが地層の収縮をもたらし、地表面が徐々に沈んでいく現象。一度沈んだ地表が再び隆起することはなく、しかも広範囲にわたるなどの特徴がる。

地盤沈下により建物や地下埋設物に被害を及す。江東区南砂では、大正7年以来、実に4・5メートルも沈下している。染色工場は厖大な水を使うが、汲揚げを止められ、操業を止めた例もある。

地盤が著しく沈下した地域では、台風による高潮や地震が起きた時に堤防決壊による洪水等の危険がある。ひとたび被災した場合には、人の生命や財産の被害は極めて大きなものになる。

もともと江東地区では大正時代の初期、大阪市西部では昭和に入ってから地盤沈下がみられるようになった。その後、急速に沈下が進み、建物の崩壊あるいは高潮による被害が生じ、地盤沈下が大きな社会問題になった。

昭和20年3月10日の米軍大空襲でこれらの地域にあった工場が壊滅してからは、地下水の採取量が減少したので地盤沈下は一時的に停止したが、昭和25年の朝鮮戦争を契機に産業活動も復興し、地下水の採取量も増え、そのため再び地盤沈下が激しくなった。

また、沈下地域も東京や大阪の下町地域だけでなく、内陸部や隣接する埼玉県や千葉県にも拡大し、新潟平野、濃尾平野、筑紫平野といった全国各地でみられるようになった。

東京地域では、昭和36年以降の地下水採取の規制によって昭和40年と41年には一時沈下が鈍化したものの、昭和42年頃から再び沈下が急速に進んだ。経済の高度成長期だったからだ。

しかし、昭和47年以降、地下水採取規制の強化や水溶性天然ガスの採取を停止するなどの対策によって、地盤沈下はようやく鎮静化しつつある。バブル崩壊後は工場が閉鎖されてマンションに生まれ変わっているので地盤沈下に歯止めがかかっているはずだ。

それでもゼロメートル地帯は荒川下流地域や城北地域に出現し、その面積は、満潮時で区部の21・7%にあたる124・3平方キロメートルにも及んでいる。

大正7年以来、実に4・5メートルも沈下した江東区南砂では昭和40年代の末頃からは、沈下が鎮静化しマンションが盛んに建っている。

江東区内の地下水採取は、「工業用水法」および「建築物用地下水の採取の規制に関する法律」、「東京都環境確保条例」により行われており、井戸の深さや口径等について規制されている。この基準に適合しない井戸は廃止しなくてはならず、また新設することもできない。2007・09・02
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック