2007年10月19日

◆大阪市長選 与野党対決の具に

                    毛馬 一三

11月24日に告示が迫ってきた大阪市長選挙は、切迫している衆議院選挙の前哨戦として、中央の「与野党対決」そのままの構図が持ち込まれる公算が強まってきた。停滞に歯止めが効かない大都市大阪市の再生の政策論争が主軸から外され、中央政治の思惑に先取りされることが見えてきたことから、市民の間では早くも“白けムード”が高まりつつある。

任期満了に伴う大阪市長選挙は、現職の關淳一市長(72)と元大阪市立大学教授の橋爪伸也氏(46)、それに共産党元市議の姫野浄氏(72)の3人が立候補表明をしていた。

ところがここに来て、民間放送の元アナウンサーの平松邦夫氏(58)が、18日に立候補表明を行い、同選挙はこの4人で争われる激戦模様となった。

東京都に次ぐ第2の大都市圏の中核大阪市は、近年在阪大手企業が東京への一極集中へ奔り、同関連主力工場が隣国中国へ移転、近隣県へ拠点を移したことなどで、経済基盤の弱体化とこれに伴う税収の激減に見舞われ、都市の円滑運営が見えない大きな岐路に立たされている。

従って今や名古屋・横浜などの後塵を拝するに到った大阪市をこれからどう甦らせるかを、この市長選の最大の争点にすべきだとの期待が市民の間で広まっていたことは事実。「都市規模を縮少」させたいとする現職市長に対し、「大都市復活」を目指す都市工学専門家の元私大教授との、相対立する論争展開に注目が集まりだしていたのは当然だった。

が、状況が変わり出した。上記2候補から公約の説明を受けた市会与党自民会派は即、關氏推薦を決めてしまったのだ。自民府連では、一時、自民本部の協力を得て、テレビで売れっ子のあの某弁護士に折衝したが、結果的には体よく断られたため、急遽關氏推薦に矛先を変えたという秘めた裏話がある。

一方、議会軽視の姿勢に厳しい批判を突きつけている同じ与党会派の公明は、關氏への推薦には応じたくないとして態度保留中だが、市会与党の枠組みは壊すべきではないとの判断から、最終的には自民党と足並みを揃えるだろうというのが、関係者の見方だ。

ここへ来て、事態急変を一段と加速させたのは、これまで候補者見送りを公言してきた民主党が、一転して平松氏を擁立したからである。「自民党が擁立する現職を勝たせる訳には行かない」との党本部からの強い要請を受けて民主府連は、候補者探しに奔走。

民主党傘下の某団体とも個人的につながりが在り、長年ニュースキャスターを務めて知名度もある同氏を党本部首脳にも引き合わせ、ついに口説き落としたものだった。「仮に敗れたとしても、来る衆院選挙で空席となる大阪3区の議席を保証する」との秘密の約束が取り交わされたとうわさも、関係者で取りざたされている。

民主党本部では、先の参議院選挙の大勝をこの大阪市長選の勝利に結びつけて党勢を誇示し、次いで迫る衆院選挙の事前運動に弾みを付けたいと狙っていることは、容易に察せられる。

一方自公連立内閣でも、福田体制が誕生して初めての大都市の市長選であり、これに躓けば、切迫してきている次期衆議院選挙への大きな痛手になりかねないとの判断から、単なる地方政令都市の市長選挙だとは微塵にも考えていない。事実、自民党本部からは大阪府連に対し連日檄が飛んで来ているという。

このように、本来「まちづくり政策」をめぐる論争に集中すべき大阪市長選挙が、何と与野党激突の中央政治情勢をそっくり大阪の場に引き継ぐという異常事態となってきたのだ。大都市首長選挙だから、特に現下の「与野党対峙」の中だからという理由で、中央政治の政争の具に利用されていい筈がない。

おそらく選挙公示後は、与野党の党首らが続々と來阪し、「政権交代」や「政権維持」を巡る論陣を張るのは目に見えている。低迷の極にある大阪の都市基盤と市民の快適生活維持という大阪にとって最大のテーマは片隅に追いやられることも明白だ。中央政治の介入は誠に迷惑千万なことだ。地方首長選挙には、地方の自治を巡る論争が焦点となるべきで、中央与野党のプロパガンダは迷惑至極なことは論を待たない。

大阪の未来を見出す4年に1度の絶好の機会を、“心ならずも”政争の具に奪われて仕舞うことに、市民の間から 早くも“白けムード”が漂い出してきている。
(了)             07.10.18


◆同上原稿は、「渡部亮次郎氏の全国版メイル・マガジン 頂門の一針  第969号」・平成19年10月19日(金)に掲載されました

<第969号の目次>
・キャリア廃止は「没」:渡部亮次郎
・習近平(上海市書記)を大抜擢:宮崎正弘
・ヒラリーのアジア外交:古澤 襄
・大阪市長選 与野党対決の具に:毛馬一三
・インドネシア雑感(7):平井修一
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