2007年10月22日

◆百花斉放・百家争鳴

                       渡部亮次郎

毛沢東は生涯、しばしば嘘をついて大衆を油断させ、気を許して近寄ってきたところをふんじばって処刑した。ソ連に見捨てられた時の「自力更生」、文化大革命の「造反有理」もそうだが「百花斉放百家争鳴」は最も悪どい。

「百花斉放」広辞苑にも出てくる。種々の花が一斉に咲きそろう意。科学・文化・芸術活動が自由・活発に行われること。「百家争鳴」は「多くの学者が自由に自説を発表し論争すること」とした上で「1956年に中国政府が百花斉放と併せて提唱したが、その結果、共産党批判が起こったため、反右派闘争に転じた」と解説している。

「ウィキペディア」によれば、1956(昭和31)年、毛沢東は百花斉放・百家争鳴を打ち出し、党批判を奨励した。 「我々は批判を恐れない。なぜなら我々はマルクス主義者であり、真理は我々の側にあるからである」と胸を張った。

しかしいったん批判を許したら、党に対して建設的な意見を具申するのではなく、党を裁判にかける行為が目に付くようになった。

このため、毛沢東は翌年百花斉放・百家争鳴を撤回。党に対して対等な批判を行った者(その多くは知識人)に、党の公式見解に沿った自己批判をさせた。また少なくとも全国で50万人以上を失脚、下放させ、投獄した。

この闘争で国民個々の思想まで国が監督しはじめ、後の大躍進、文化大革命へと突き進んでいく。逆に言えば、反右派闘争までは公務員、資本家を除き社会には比較的自由な空気が存在した。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

友人は自らのブログのタイトルを「百家争鳴」としているが、私はこれを見るたびに百花斉放百家争鳴といって不満分子に自由に発言させ、その途端に「反右派闘争」と称して50万人以上を失脚や投獄した毛沢東の「いんちき」を連想して憂鬱になる。

広辞苑と同じ岩波書店の「現代中国事典」(1999年5月20日)によると、毛沢東が唱えた(撒いた餌)「百花斉放百家争鳴」のことは「双百」というそうだ。

それはともかく毛に近い学者の解説によれば、毛は1956年の時点つまり建国僅か6年にして商工業の社会主義的改造が基本的に完成して経済建設が中共の基本中心となった。そこで、この先は知識人の協力が必要となった。

そこで毛はそれまでの知識人の思想改造政策を転換すると明らかにし「民主諸党派との長期共存、相互監督」と「百花斉放・百家争鳴」を党の基本方針とすると発表(1956年4月の政治局拡大会議)。

5月26日には陸定一中央宣伝部長に講演を行わせ「文学芸術活動と科学研究活動において独立思考の自由を持ち言論の自由を持つべきこと」を提唱した。知識人の弱いところを突いたもので、客観的に考えて「罠」である。

文学芸術活動と科学研究活動において独立思考の自由を持ち、というところまでは分かるが、言論の自由を持つべきことを許すというのは行き過ぎである。これでは共産党は生きられない。独裁でなければ生存不可能である。

流石に党副主席の劉少奇は戒めたが毛は調子づいたように翌57年2月「整風運動についての指示」まで出し、党外人士が共産党の官僚主義を批判するよう要請した。

そこまで言うならと知識人は発言しだした。章伯釣民主同盟副主席が「民主諸党派の政治参加を要求して政治設計院」の設置を提唱。儲安平「光明日報」総編集長は共産党の「党の天下」思想を攻撃した。

毛は途端に危機感を募らせ6月には共産党の指導権を攻撃する勢力をブルジョア「右派」と名づけ、徹底的な弾圧を指令。留まらず
「反右派闘争」が開始された。

先の章伯釣なぞは羅隆基と共に章羅同盟の名の下に糾弾され、すべての職務を失った(1年後に一部の職務を回復、64年には第4期全国政務委員)。

毛の百花斉放百家争鳴が反右派闘争に転換した結果、毛の人民内部矛盾論に基づく民主化政策の限界と人民内部矛盾論が持つ欠陥を明らかにした。早い話、人民は手を緩めれば付け上がり、共産党がやっていけなくなる、ことを身にしみて感じたということだ。

だから中国では1960年代から70年代に掛けての文化大革命以降も、民主化・自由化の声が表面化するたびに「双百」が発出される。
トウ小平による1989年6月4日の天安門事件はそれを象徴している。

トウ小平としては自ら下した経済の改革開放路線の結果起きた政治の改革開放要求に応えれば共産党独裁という政治体制そのものが崩壊すると判断したから、平然として人民に銃を向けたのである。

そうした見地からすると今回の17回党大会で政治局のメンバーに多少の異動はあるにせよ政治的民主化の気配は微塵も無いはずである。あれば何かの間違いに過ぎない。2007・10・21
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