2007年10月31日

◆解離性大動脈瘤

                      渡部亮次郎

初代防衛大臣久間章生(きゅうま ふみお)氏が解離性大動脈瘤
の治療を受けるため、2007年10月30日、どこかの病院に入院した。

折から国会や東京地検で騒ぎになっている「山田洋行」問題に関係しているのでは無いかと囁かれている中での入院とあって、いろいろな憶測が流れているが、親しい関係者の話からすると、実態は緊急を要する「本物」のようだ。

今から42年前の昭和40年7月8日夜、急逝した自民党の「実力者」河野一郎氏の死因も当にこれで、破裂した後だったから、駆けつけた日本医師会会長武見太郎氏、心臓病の世界的権威榊原しげる博士も打つ手が無かった。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると解離性大動脈瘤は別名で、正式には大動脈解離(大動脈乖離とも、だいどうみゃくかいり、Aortic dissection)という。

なんらかのきっかけによって、3層構造を作っている大動脈のうち真ん中の層の膜(中膜)に血流が入り込んでしまい、層構造が別々に剥がれていく(解離してしまう)病気である。大動脈瘤の一種として分類されることがある。

快楽亭ブラック (2代目)、俳優の故・石原裕次郎、加藤茶らが罹患した疾病である。両人とも緊急手術で生還した。しかし瘤が破裂してしまったら河野さんのように死ぬ。

後に弟で参院議長になる謙三さんも解離性大動脈瘤になったが、破裂前に検査で発見できて手術で生還している。

症状としては強烈な痛みは患者の96%に見られ、解離の場所を推定するのにも重要な症状である。心不全症状を起こすこともあるほか、初発症状が突然死であることもある。

また、解離によって血圧の上昇または低下が起こるほか、胸水の貯留が見られることもある。

検査・診断
激痛から大動脈解離を疑う。胸部X線で大動脈陰影や上縦隔の拡大が見られることがあるが、特に所見が見られないこともあるため、基本的にCTやMRIで診断する。

CT
静脈内に造影剤を注入して造影する撮影法が基本である。真腔、偽腔、フラップの検出が可能で、感度は83〜87%、特異度は87〜100%と高い。最近登場したヘリカルCTはより正確な診断が可能であり、感度は96%、特異度は100%にも及ぶ。

MRI
さまざまな断面で鮮明な画像を得られるのが特徴である。解離の範囲や状態を正確に把握するのに適している。感度・特異度はともに96%。

心エコー
内膜フラップを検出できれば確定できる。

病態として、正常な層構造が壊れた大動脈は弱くなり、最悪の場合破裂してしまう。

また、大動脈の出発点である大動脈起始部(バルサルバ洞)から心臓にかけて解離が進めば、そこから出ている冠動脈の血流を阻害して心筋梗塞を起こしたり、大動脈弁輪拡張に伴い大動脈弁を壊したり(大動脈弁閉鎖不全症)、心臓を包む心嚢という袋の中に出血を起こしたりする(心タンポナーデ)。これらの合併症は死に至るものであり、大動脈解離が危険な病気である所以といえる。

治療・予後をどうするか。予後はStanford AであるかStanford Bのどちらかによって大きく異なる。

Stanford Bの場合、脳に血流を送る腕頭動脈、左総頚動脈が保たれるため、保存的に治療が行われる。

ただし、腹腔動脈、腎動脈に解離が及んだ場合は手術適応となりえる。Stanford Aの場合、腕頭動脈、左総頚動脈に血流が減少し脳死の危険が高いので、緊急手術適応となる。大動脈弁に解離が及んで大動脈弁閉鎖不全、心筋梗塞、心タンポナーデを起こした場合、非常に予後は悪い。

以下、心臓手術体験者で文藝春秋社から著書の出している元NHK記者石岡荘十氏の見解を付します。

国内で心臓(血管)外科の看板を掲げている病院は400を超えるが、年間100例の実績のある病院はその3分の1に満たない。

さらに、日本で心臓血管外科専門医を標榜する医師は1900人に上るが、「まあまあ信頼できる実績を持つ医師」は、100人いるかどうかだといわれる。最も悲観的な数字は、「お任せできる心臓外科医」はという数字を挙げる専門家もいる。

そこで、こんな名医をどうやって見つけるかだが、手っ取り早いのは病院のホームページ検索だ。神の手を持つといわれる京都大学の正始元教授は、「年間200例の実績がなければまあまあの技術レベルは維持できない」という。

例えば、政治家ご贔屓の虎ノ門病院。「手術日は毎週月、火、水、金で、2004年4月から2005年3月31日までの手術総数は150例であった。内訳は冠状動脈バイパス術が45例----」とある。

小渕元首相が入院した順天堂大学病院は、年間(‘06年)473件。橋本元首相が入った慶応病院は年間手術例の数は公表していないが、ポートアクセス法の成功例を誇っている。

大学病院は地域医療の中心的存在だが、こと医療技術に関する限り、ブランドが実力を表すとは限らない。中には年間数例の実績しかないところもある一方で、大和成和病院(神奈川県・大和市)のように年間500例を超える心臓専門の民間病院も存在する。

久間氏の“職権”がらみで推測すると防衛医科大学も候補の1つたりうるが、ここの実績(’06)は、「心臓血管手術総数192例、冠動脈バイパス手術27例---」とある。

久間氏がどのような基準や情報にもとづいてどの医師と病院を選択したのかは分からないが、他人事ではない。高齢者は例外なく心臓病の予備軍である。 心臓手術の経験者としてはこの際、久間さんの無事な生還を切に祈る。2007・10・30



この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック