2007年12月16日

◆巴里だより 「セントパンクラス駅の床」

                   岩本宏紀(在仏) 

ロンドンのユーロスターの駅が、この11月、ウォータールーから
セント・パンクラスにかわった。

古いレンガ造りの建物を改造した、ちょっと洒落た駅だ。
汚れをきれいに落としたレンガの壁が歴史を感じさせる反面、
ガラスがふんだんに使ってあり清潔感と斬新さが漂う。

ぼくが特に気に入ったのは床だ。木でできている。
15年前によく利用した、コペンハーゲン空港の床を思い出した。
タイルよりもじゅうたんよりも木の床をぼくは好む。
特にヨーロッパの寒い冬の日には、適度の暖かさを感じるからだ。

中学校の校舎は木造2階建てだった。高校一年のときも同じく木造2階建て。なぜかキリマンジャロというあだ名で呼んでいた。
大学でもぼくがいた学部は木造だった。
しかしもう何年も前から、新しく建てられる校舎は鉄筋コンクリートと
決まっている。

いつだったか「子どもの情操を育む意味では、木造校舎が適している。
木の温かみを感じながら床や腰板に雑巾がけして磨きこんでいれば、
校舎への愛情が自然に湧くだろう。」という意見を雑誌で目にしたことがある。

思い出せば木造校舎の隙間風はたしかに寒かったが、鉄筋コンクリートとは
違いどこかほのぼのした風情があった。

それは歩けば軋む廊下、雑巾がけが終わったあとの床の光沢、
そして生き物だった木の温かみが醸し出したものだと思う。(完)

(125)2007-12-4StPancrasRE.jpg 
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