2008年01月16日

◆ドクターヘリの運用に課題

                     石岡荘十

大阪でドクターヘリがテイクオフするが、「よかった、よかった」と手放しで喜んでばかりはいられない。じつは効率的な運用をするために解決しなければならないいくつかの課題がある。

最大の問題は、地上での患者の受け入れ体制である。現場にドクターヘリが到着した。同乗した医師が直ちに初期治療に当たる。ドクターはここで病状に応じて患者をどこへ搬送するかを判断することになる。

もともとドクターヘリは事故対応が目的だったのだが、2006年東京で開かれたシンポジュームで、示されたドクターヘリの先進国ドイツのデータによると、2005年の出動目的実績は交通事故が15%、産業事故とスポーツ事故が合わせて16%、心筋梗塞や脳梗塞を含む内因性疾患の患者が48%を占めていた。

つまりほぼ半数は、高齢者に多い心臓や脳疾患の患者なのである。ドクターは患者の状態によってどこの病院に搬送すべき病院の選択をしなければならないが、現場であちこちに電話をして病院を探す余裕はないから、救急車との連携を含めて調整を行なう「救急コントロールセンター」の設置がどうしても必要になる。

次の問題は、24時間救急患者を受け入れる病院、スタッフを含めた受け入れ体制である。ドイツには「15分ルール」というのがあって、国内どこでも15分以内に患者を病院に搬送できる体制が整っている。

せめて日本でもヘリコプターが30分以内で患者を搬送でき、いつでも対応できる基幹病院の整備は出来ているのか。

加えて、広域救急体制の整備だ。医療体制の地域格差と医師不足が問題となっている日本では、妊婦や小児が県境を越えてたらいまわしにされる“事件”が相次いでいる。

個人開業医が多い婦人科、産科、小児科病院の統廃合はドクターヘリの実効を挙げるために解決しなければならない、日本特有の最大の難問である。

地域救急医療に見られる格差の解消のために、ドクターヘリが有効な手段であることが認識されつつある。大阪周辺には医療過疎地が少なくない。大阪府内でヘリの運用が成果を挙げていけば、こうした隣接した過疎地域からの要請が増えることも考えられる。

遅かれ早かれ広域救急の体制整備を求められるだろう。このことも想定しておかなければならない。

ドクターヘリが、救命率の向上や患者の予後の改善に大きな成果をもたらすことは、既にいくつもの研究により明らかにされている。ドイツのデータでは交通事故で7割、脳卒中や心臓発作でも7割の人が助けられている。治療のタイミングを逃して後遺症に余分な医療費を喰われることを考えると、ドクターヘリは医療費の節減にも貢献しているという研究成果もある。

そのことを市民に理解してもらうために、提案がひとつある。

運用開始のその日からホームページを作って、すべてのケースを日報形式で(勿論、個人情報に配慮しながら)公開してはどうだろう。市民の間で茶の間で話題となることは、地方自治を推進する上で大切なことだ。

問題は山積しているが、「命を大切にする大阪」というキャッチフレーズを目指して、誰になるにしても新知事も努力されることを期待する。
                      2008,01,15


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