2008年01月22日

◆牛の刺身は命がけ

                  渡部亮次郎

死亡率70%という超強力菌「ボツリヌス」が日本の飼育牛にも集団発生していることが分かった。場合に依ってはステーキのレアは勿論、牛の刺身を食べることは命懸けということになりかねない。

<牛350頭が「ボツリヌス症」に、04年以降8県で

牛のボツリヌス症の集団発生が国内で2004年以降相次ぎ、8県で350頭を超す牛が死亡または廃用となったことが小崎俊司・大阪府立大教授(獣医感染症学)の調査でわかった。

1994年に北海道で52頭が初めて報告され、99年に神奈川県で28頭が報告されて以後、途絶えていた。

しかし04年、神奈川県で17頭の発症を確認。05年は兵庫県で127頭のほか秋田、愛知、三重、鳥取の4県でも発生し、06年は鹿児島、岩手県、07年も愛知県で感染が確認された。突然倒れたりした後、1日から1週間で死ぬ例が多く、致死率は極めて高い。

豪州やブラジルでは肉や牛乳の汚染を懸念し、牛へのワクチン接種などの対策が進んでいるが、日本では検査薬やワクチンも市販されていない。

ボツリヌス毒素は、いくつかの型があり、今回の牛の集団発生の型と人の食中毒の型は異なるが、動物実験では同様の毒性を持つことが確認されている。>(2008年1月19日09時06分 読売新聞)

ボツリヌス菌。典型的な毒素型食中毒の代表原因菌。もともと芽胞(細菌胞子)の形で存在する土壌細菌で、自然界に広く分布する。

ボツリヌスとはラテン語でソーセージの意味で、この菌に汚染されたハムやソーセージ、缶詰、飯ずし(ハタハタ鮓など)などを摂取すると、菌の混入によって食品中に排出されていたタンパク質性の毒素が、腸管から吸収されて食中毒がおこる。

<飯寿司(いずし)とは、ご飯と魚・野菜・麹を混ぜて桶に入れ、重石をのせて漬け込み、乳酸発酵させて作る「なれずし」の一種。飯鮨とも書く。

飯寿司は、主に北海道から東北地方で、冬季に作られる郷土料理である。一般に漬け込まれる魚には、ハタハタ、鮭、ニシンなどが、野菜には、キャベツ、大根、ニンジン、ショウガなどが使われる。サンマ、ホッケ、カレイや、きゅうり、タマネギ、サンショウが使われることもある。他のなれずしに比べると漬ける期間は短く、匂いは穏やか。米の甘さと乳酸の酸っぱさのバランスが良い。

すしの分類として、「イズシ」または「イズシ系」と分類名に使うこともある。この場合は、「飯+魚+野菜+塩+麹」で構成されるなれずし全般を示し、石川県のかぶらずしなどもこの系統とされる。

北陸以北の日本海側と北海道の寒い地域に集中した明確な分布圏がみられる。>この項出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ボツリヌス菌の作る毒素は、免疫学上の違いから、A〜Gの7型に分けられる。このうちヒトに中毒をおこすのは、A、B、E、Fの4つ。

腸管内で吸収されると24〜72時間で症状が顕れ、末梢神経(まっしょうしんけい)の筋肉への神経接合部がおかされて筋肉麻痺を起こし、呼吸困難から死亡することが多い。毒素が神経に結合した後の治療はむずかしく、70%の死亡率を示す食中毒もおこる。

この菌に汚染された肉類がソーセージや缶詰に加工される場合に、加熱が不十分であると芽胞は生き残り、酸素の無い嫌気状態である食品の中で増殖して毒素をつくる。野菜や果物の缶詰は比較的安全で、その理由は、酸がこの菌の増殖を抑制するからと考えられている。

日本では、北海道や東北地方において、飯鮓からの感染によるE型毒素中毒が多い。1984年(昭和59)に九州で芥子蓮根による集団食中毒が発生したが、これはA型菌によるものだった。

秋田県の海岸に産卵のため冬にやってくるハタハタの下腹にボツリヌスのくっついている事がある。飯鮓にする時はハタハタを良く洗えば菌は落ちるが、水道の普及が十分でなかった昔の農村では、良く洗わないまま鮓に漬けこんだ。

ボツリヌスは飯鮓の状態が最も好きで繁殖する。目では分からない。田植え時、それを樽から取り出して、田圃で農作業の手伝い人たちに振舞う。24〜72時間で症状が顕れ、昔のことだから救急車なんて無い。戸板で担がれて医者に行ったが大抵、帰っては来なかった。

水道の普及した現在では、こういうことは無くなったし、飯鮓そのものを農家が作らなくなった。海辺の各所にハタハタ鮓の専門店が出来て、年中いつでも販売しているようになった。

全く知られていない話だが、アラスカで製造された鮭缶詰の中にボツリヌス菌の入っている疑いがあるとして厚生省(当時)が密かに調査したことがあるが、幸い被害が無く表沙汰にならなかった。

1980年ごろのこと。鮭はアラスカの海で捕るが缶詰の缶はアメリカ本土から空輸する。缶はから。空気を空輸するようなものだから潰して空輸。現場で膨らます。このとき小さな穴の開いたのを見逃した。

生の鮭を缶に詰めて密閉の上、煮沸。それを水に漬けて冷却するのだが、水の中にボツリヌスがいて穴から缶に侵入。確か英国で死者が出た。同じ生産ルートのものが日本にも輸入されていたと分かって秘密裏に調査。しかし、事なきを得た。

日本でも牛にボツリヌスが蔓延した理由について、先の小崎教授は「飼料などに付いた菌が牛の腸で増え、ふん尿の混じった水や餌を介して広がった可能性が高い」と見る。

しかし畜産農家に届け出義務はなく、集団感染を自主報告した例がほとんどで、実際はさらに広がっている可能性があるという。

欧米や豪州ではソーセージ、日本では飯鮓が対象だったが、牛にも及んでいるとなるとステーキのレアや牛サシなどは大いに警戒しなければならなくなった。ボツリヌスで死んだ牛を偽装して売り出す人間が畜産業界には居ないという証拠のない今日この頃ではないか。

ボツリヌス毒素は熱に比較的弱く、80°C、30分間の加熱で毒性はなくなる。しかし、芽胞は熱に対する抵抗性が強く、死滅させるには煮沸では5時間以上、180°Cのオーブンでも5〜15分かかる。
参考:マイクロソフト「エンカルタ」。2008・01・21

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