渡部亮次郎
「政局には常にフィルター(色眼鏡)を掛けて見なけりゃ駄目だ」。これは故島桂次(元NHK会長)に繰り返し教えられた事だ。とんでも無い、想像もできないことが展開されているのでは無いか、常に疑惑の目で政局を見ろ、と言う教えだった。
<フィルター(フィルタ、filter)とは、与えられた物の特定成分を取り除く(あるいは弱める)作用をする機能をもつものである。ある成分以外の全成分を弱めることにより、その成分だけを強調する効果を得る場合もある。さらに、各成分に対し何らかの処理を施す場合もある。>出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
若い頃、青空に浮かんだ雲を、白さを強調して撮影するにはレンズに黄色いフィルターを嵌めて撮影した。すると青空と雲の白さのコントラストが強調してプリントできた。
そこで島論を現在の政局に当てはめてフィルターを用意するとなると、如何なる事が想像できるだろうか。順不同で考えてみる。
@ 自民党内に福田内閣打倒の動き。この不人気じゃ、とてもじゃないが選挙にならない。人気を取れそうな麻生太郎を担ごう、という動きは無いか。
A「たかり」に終始する公明党を排除するために自民・民主「大連立」を復活させる動きは無いか。
B社会党復活への動きは無いか。
C参院廃止を、憲法改正と関係なく実現する研究が進んでいないか。
D小泉カムバック作戦は無いか。
E小沢引退作戦は無いか。
F共産党解党はあり得ないか。
G考えれば切りがない。
しかし、若い政治記者と話してみると、目先の現象を追うばかりで、こうしたフィルターを1個も持ち合わせていない。だから渡邉恒雄構想に基づく「大連立」の動きを知る由も無かったわけだ。
先輩記者{共同通信社}の古澤襄さんは@の動きをとても注目している。1月21日の夜、不倶戴天で不仲と見られている福岡県選出の代議士麻生太郎、古賀誠両氏が、高村外相(高村派会長)、久間章生(津島派幹部)両氏を交えたとはいえ会談した事は、少なくとも麻生政権阻止を掲げてきた野中、古賀両氏に何らかの「決心の変更」があったのでは無いかというわけだ。
古賀氏が自民党の中核に歩を進め得たのは野中廣務氏の推薦によって幹事長のポストに座ったことがきっかけである。だから古賀氏が「中」宏池会の親分になれても彼の「親分」は依然として野中氏なのである。
元共同通信記者のノンフィクション作家魚住昭『野中広務 差別と権力』によると、
<麻生太郎は過去に野中に対する差別発言をしたとして、2003年9月11日の麻生も同席する自由民主党総務会において、野中に以下のとおり批判された。
「総務大臣に予定されておる麻生政調会長。あなたは大勇会の会合で『野中のような部落出身者を日本の総理にできないわなぁ』とおっしゃった。そのことを、私は大勇会の3人のメンバーに確認しました。
君のような人間がわが党の政策をやり、これから大臣ポストについていく。こんなことで人権啓発なんて出来よう筈がないんだ。私は絶対に許さん!」
野中の激しい言葉に麻生は何も答えず、顔を真っ赤にしてうつむいたままだったと同書には記されている。>(「ウイキペディア」)
先に安陪晋三氏が総辞職を決意した際、後継に麻生の浮上する事に危機感を持った野中氏は政界を引退した身であるにも拘らず郷里京都から急遽、上京し、大車輪で麻生政権の芽を摘んだ。
それが半年も経たずして子分古賀氏に麻生氏との会談を許した事は野中氏に心境の変化をもたらす何事かがあったと推測したくなるのである。
21日夜の4者会談は、古澤氏によれば「洞爺湖サミット前の衆院解散はさせない」ことで一致した。しかし勘繰ればサミット後は福田首相に何も「保障」はしないことで一致したとも取れる。
或いはサミットを花道にして福田を引退させ、後継は麻生と言う事で阿吽の呼吸、と言う事も勘繰れる。しかし、新聞、TVには「フィルター」のかかった観測記事は1行も出ていない。 2008・01・24
2008年01月25日
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