真鱈マダラ Pacific Cod は、タラ目・タラ科に分類される魚の一種。北
太平洋に広く分布する大型のタラで、重要な漁業資源となっている。日
本では他にタラ、ホンダラなどとも呼ばれる。
成魚は全長1mを超える大型魚である。体色は褐色で、背中側にまだら模
様がある。スケトウダラやコマイと同様、下顎には1本のひげがあり、背
びれが3つ、尻びれが2つに分かれる。
マダラは日本に分布するタラ類3種の中では最大種である。上顎が下顎よ
り前に出ていて、体側にまだら模様がある。また、頭身が小さく、腹部
が大きく膨らむ。
我々秋田県人は真鱈の身は食べない。頭と内臓だけを塩味の鍋にして食
べる。丸太から四角い柱をとった残りを秋田弁ではざっぱ、津軽弁では
じゃっぱというので、この鍋料理を秋田弁ではざっぱ汁、津軽弁ではじ
ゃっぱ汁と言って珍重する。冬、最高の楽しみである。
煮えたぎった大き目の鍋に荒塩を入れ、そこへ真鱈の頭と内臓を小分けし
てぶち込む。葱、豆腐、白菜を加えてお終い。生姜を利かせたほうが生
臭みを消して美味となる。
いうなれば秋田では下層階級の冬の馳走だが、裕福な家庭に育った友人
たちも「身は要らない」とざっぱをしゃぶる事に専念する。大きな椀で
お代わりを6杯もした人もいる。
今年は都合で2月初めになったが、故郷にいる友人が祝いに「鉈漬け」
を送ってくれる。大根を切れの良くない鉈で削って塩と麹で漬け込む秋
田漬。東京で漬けても気温が高くて酸っぱくなるだけ。秋田で無いと美
味くない。お陰で6人で日本酒を4升も呑んだ。
ところで真鱈は黄海、日本海、東北地方以北の太平洋岸、北はベーリン
グ海、東はカリフォルニア州まで北太平洋に広く分布する。
沿岸から大陸棚斜面の底近くに生息する。夏は深場に移り、水深800mく
らいの深海にも生息するが、冬は浅場に移動して来る。食性は肉食性で、
貝類、頭足類、甲殻類、小魚などいろいろな小動物を捕食する。産卵期
には十分脂が載っているから美味い。
秋田、津軽や北海道周辺海域での産卵期は12月〜3月で、分離沈性卵を産
卵する。産卵前は雄雌共に脂が乗っている。1匹のメスの産卵数は数十万
〜数百万個に及び、これは魚類の中でも多い部類に入るが、成長できる
のはごくわずかである。
稚魚は1年で全長20cmほどに成長するが、この頃までは沿岸の浅場で生活
し、以後体が大きくなるにつれて深場へ移動する。
旬は冬で、底引き網、定置網、延縄、釣りなどで漁獲される。20世紀後
半頃からは輸入ものが多く流通している。
身は柔らかく脂肪の多い白身で、ソテーやムニエル、フライなどの他、
汁物や鍋料理にもよく使用される。身を干物にした「棒鱈」(ぼうだら)
も様々な料理に使われる。生のものを料理する際は傷みが早いことと身
が柔らかいことに注意する必要がある。
また、白子(しらこ)と呼ばれる精巣もこってりとした味で珍重され、
流通する際はメスよりオスの方に高い値がつく。白子は「キク」「キク
コ」などとも呼ばれるが、これは房状になった外見がキクの花に似るた
めである。秋田では「だだみ」と称して高値を呼ぶ。
北海道では「タチ」(マダラは真ダチ、スケソウダラは助ダチ)とも呼
ばれ、新鮮なものが寿司ねたなどで生食されている。
マダラのたらこ(卵巣)はスケトウダラよりも硬いが、未熟なものは柔
らかくスケトウダラよりも大型でボリュームがあるため、煮付けや焼き
物にすると美味である。北陸地方では「真子(まこ)」と呼ばれ良く食
される。
他にも肝臓から取り出した脂肪は肝油に用いられる。
チャンジャマダラやスケトウダラの胃を唐辛子などの香辛料、砂糖、塩
などに漬け込んだものをチャンジャといい、コリコリとした食感を楽し
む。もとは韓国の食材だが日本でも売られるようになった。
真鱈の 陸揚げ漁港(2002年度)
第1位 - 石巻漁港(宮城県)
第2位 - 歯舞漁港(北海道)
第3位 - 羅臼漁港(北海道)
第4位 - 八戸漁港(青森県)
第5位 - 女川漁港(宮城県)
資料: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』