2008年02月27日

◆魂の入っていない仏像

                  渡部亮次郎

現代日本における危機管理の第一人者佐々淳之さん(初代内閣安全保障室
長)が、ご自身のウエブサイト(2008.2.20)で有事の報告は「ショート
・サーキット」でと教示しておられる。

思い起こせば「第10雄洋丸事件」。1974(昭和49)年11月、東京湾で当時
国内最大級の石油タンカー「第10雄洋丸」と貨物船が衝突・炎上した。
死者33人。

しかし10日以上経っても鎮火しなかったため、東京湾外に曳航した上、
海上保安庁の要請で防衛庁(宇野宗佑防衛長官)が、護衛艦4隻と魚雷
を積んだ潜水艦、対戦哨戒機14機を出動させ、まる2日にわたり烈しい
砲雷爆撃を加えて、火災発生から20日後にようやく第10雄洋丸を沈没さ
せた。

ところが宇野長官への報告は防衛庁のルートではなく海上保安庁長官か
ら「ご協力ありがとうございます。ようやく沈みました」との報が先に
入った。

防衛庁は何をして報告が遅れたのか。当時は報告いちいち暗号を組んで
いたからである。沈没を確認した護衛艦長→護衛隊司令官→護衛隊群司
令官→護衛艦隊司令官・・・と段階的に順を追って報告されて行った。

さらに地方総監、潜水群司令官、航空隊司令官などへの報告も加わり、
しかも各報告は暗号化するきまりだったため、その暗号を組んだり解い
たり、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしながらノロノロと上にあが
っていったのだ。

あれから34年。防衛省に昇格したからと言って、あの時の暗号報告が平
文報告に変わっただろうか。自衛隊にとって、あらゆる活動は「戦闘」
であり、それらはすべて敵に知れてはならない秘匿事項だから、あると
ころでは暗号が使われているのではないか。

今回、自動操舵で直進していたイージス艦の見張り員が、清徳丸の灯光
を目視で確認したのは、2月19日午前3時55分(衝突の12分前)。

しかし、イージス艦は、4時6分までは従来通りの自動操舵を続け、衝突1
分前の時点で、急遽逆推進(後退する体制・ブレーキをかけた状態)に
切り替えたものの、間に合わず衝突したと言われている。

直後からの通知連絡報告の時系列が、次の通りだった。

 4:07 衝突事故発生
 4:23 イージス艦から第3管区海上保安本部へ連絡
 4:48 護衛艦隊司令部が海上幕僚部へ事故報告
 5:頃 防衛省の内部部局へ連絡

 5:36 付近の試験艦・護衛艦が到着
 5:40 石破防衛大臣へ連絡
 5:50 町村官房長官へ連絡
 5:55 官邸に情報連絡室を設置

 6:00 テレビが第1報
 6:05 福田首相へ連絡
 6:18 防衛省に連絡室を設置

事故発生から福田首相に報告が届くまで約2時間を要している。これが昔
の暗号使用のためかどうかは部外者には分からない。仮にそうだとして
も防衛省は内情を明らかにはしないだろう。当然である。

これは民間の事件ではない。北朝鮮や中国の注目は救助能力に集中して
いるのだから、明らかにしてはならない。

一体、マスコミは死者2人に同情して視聴者の涙を絞った方が視聴率が
上がると踏んだものだから、始めからイージス艦悪者説に立脚した。

これについて書こうとしたら別の情報が入ってきた。

<内局職員が速報怠る イージス衝突で防衛相に≫と言うニュースが入
ってきた。 2008/02/25 【共同通信】

<石破茂防衛相へのイージス艦衝突事故の第1報が遅れた問題で、発生
時に統合幕僚監部のオペレーションルームに当直勤務していた内局(背
広組)職員が、同ルーム責任者の制服組(自衛官)幹部から石破氏に速
報するよう指示されたにもかかわらず防衛相秘書官への連絡を怠ってい
たことが24日分かった。防衛省筋が明らかにした。

防衛省には「重大な事故・事件は各幕僚監部が(内局を経由せず)防衛
相秘書官に1時間以内に速報する」とした事務次官通達があり、今回は
統幕か海幕が石破氏に直接速報すべきだった。(暗号でではなかった)。

しかし統幕、海上幕僚監部オペレーションルームいずれの責任者も通達
を認識していなかったことに加え内局職員も対処しなかったことで石破
氏への連絡が発生から約1時間半後になる結果となった。

石破氏は今回の事態を受け、各幕僚長が防衛相に直接速報する仕組みに
通達を改めたが、さらに内局と各幕の情報伝達の在り方を見直す方針だ。


自衛隊は憲法で認められておらず、一見軍隊らしく見えるが、魂の入っ
ていない仏像見たいな者。いくら拝んでもご利益のない仏像同様、国民
が頼りにしても、軍隊のような反応は無いわけだ、事件、事故が発生す
るたびに国民を失望させるのはこのためである。

憲法改正によって自衛隊を正式な軍隊と認知しない限り、同様の事故と
間抜けな連絡体制は何時でも再現される。軍隊ではない。単なる就職機
関である限り、仏像に「憲法に保障された国民の支持」という魂は入っ
てはいない。

言い換えれば自衛隊は災害出動には人道上、応じるが、命を賭けた戦闘
はしないだろう。憲法が要求していないからである。2008・02・25


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