2008年03月05日

◆舞い上がった新市長

毛馬 一三

就任早々の平松邦夫新市長を窮地に追い込んでいるのが、大阪市の「裏金問題」。総額2億5000万円の「裏金」が発覚した平松市長は、「情けない。市民にどうお詫びしたらいいか分からない」と、打ちひしがれている。

自治体の「裏金」問題は、今や全国的に蔓延状態。宮崎県でも知事就任直後に表面化した。大阪でもほんの1年前、大阪府23部局で6850万円に上る「裏金」が露呈。その金が職員への冠婚葬祭費、夜勤帰宅のタクシー代、職員同士の飲食代、陳情先の国の担当者への手土産用ビール券・商品券の購入代などに使われていたことがわかり、府民の怒りを買った。

その時大阪府は、「裏金」の6850万円に年5%の利息分を合わせて約1億円を関係部局の職員に返還させると共に、担当職員を横領で刑事告発して、この忌まわしい「裏金」騒動を強引に幕引きした。

この区切りの付け方のお陰で、大阪府の新知事に就任したばかりの橋下徹知事は、この「裏金」問題に些かも身を晒すことなく、 幸いなるかな府財政再建を目指す選挙公約実現に、毎日奔走している。

ところが当の大阪市の平松新市長は、降って沸いたようなこの「裏金」問題の災難に立ち向かわされ、意思に反して火中の栗を拾わされる羽目に陥らされる恰好となった。

就任以前の役所組織が関与した卑劣な「裏金作り」の体質が生み出したこの「暗部」に、取材経験の薄いTVキャスター経験だけの同市長にとって、就任以前の大阪市にそのような暗部が横行していたなど想定外であっただろうし、知り得るチャンスさえなかった筈だ。

だが、市長に就任した限りは、「裏金」の調査結果を洗いざらい、市会と市民には開示しなければならない責務を負う。少数与党に支えられる同市長が、多数野党の市会の厳しい追及を控えて、今から舞い上がるのは当然のことだ。

大阪市東住吉区に端を発したこの「裏金」問題は、市法務監査室が調べていくにつれ、新たに発覚した額が1億2948万円にのぼり、これまでの判明分と合わせると、総額は前記のように2億4520万円に達した。

調査に当った市法務監査室によると、「裏金」の捻出工作は、カラ残業やカラ出張でプールするケースと、出入業者に水増し請求させて工面した金を「預け金」とする2例が存在するという。

中でも悪質なのは、業者に預けて保管してもらう「預かり金」で、このこと自体が業者との癒着そのものの犯罪性の高い事例だと厳しく指摘する。

しかし、問題はこの「裏金」のプールの仕方だけではなく、そこまでして何に使ったか、その使い途のことだ。当然大阪府で表面化したように、職員に対する職員への冠婚葬祭費や職員同士の飲食代も含まれるといわれる。

だが市職員関係者によると、そんなことより問題なのは、各区にある連合町会、防犯協会、商店主会などの幹部役員に支払われてきた冠婚葬祭費や打ち合わせ費等に対する引当金だ。実はこの引当金は、過去市長選挙対策のための支出や地元対策費に当てられてきたものだと、眉をひそめる。

この「裏金」の運用は、市労組対策などに対しても同様で、全体として市政運営への協力や市長選挙支援などのために恒常的に使われてきたと漏らす。

平松市長は、突如降りかかってきたこの難題を解決し、市会と市民の信頼を取り付けるために、「裏金」の実態が明るみになれば、関与者に対しては懲戒免職処分をとる他、返還請求を求める方針だという。

新市長になりたてホヤホヤの平松氏が、永年にわたり巧妙かつ緻密に築き上げられてきたこの組織ぐるみの悪弊に、一気にメスを入れられるだろうか。「行政素人」を旗印に、一人でも多い味方につけたいために今行っている平松人事工作の最中に、職員からソッポを向けられるかも知れない事態に腹を括って、立ち向かえるのか。自治体の暗部を全く知らない新市長が、市民派の市長としてこの事態を切り抜け、市民の期待に応えられだろうか。

今舞い上がっている平松市政の今後の進路を伺える試金石として、この「裏金問題」の処理の仕方に市民の関心が高まっている。(了)
                         08.03.04

★本稿は全国版メイル・マガジン「頂門の一針」1114号 平成20年3月06日(木)号に掲載されました
      同号<目次>
        
・「107」人が目指すもの:渡部亮次郎
        ・舞い上がった大阪新市長:毛馬一三
        ・モーツアルトに救われた:前田正晶
        ・初めての耳の手術:内田一ノ輔
        ・津軽の国際交流現場:須藤尚人

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