2008年03月17日

◆求心力なき「ポスト胡」

                  渡部亮次郎

報道によれば、昨年秋の中国共産党大会で中央入りしたばかりの習近平氏が、15日の全国人民代表大会で賛成2919票、反対28票で国家副主席に選ばれた。

これで習氏は現時点でポスト胡錦濤の最有力候補となったが、絶対的な実力をもつカリスマ指導者による指名ではなく、拮抗(きつこう)する各派閥による妥協の結果によって選ばれた。その求心力には疑問が残り、5年後、権力継承が無事に行われるかは不明だ(産経新聞北京の矢板明夫記者2008.3.15)。

“次点”となったのは習氏のライバルで筆頭副首相に就任予定の李克強氏。得票はわずか5票だったが、信任投票のためは習氏の名前しか印刷されていなかった投票用紙に、それを消して、李氏の名前をわざわざ書き込んだ者が5人もいたということになる。

共産党内部の権力闘争の痕跡を外部に見せない中国では、選挙で非立候補者が複数票を獲得することは珍しい。事前の根回しを無視した5票は、密室談合で候補者を決めた現指導部に対する、李氏支持の一部代表による不快感の表明といえる。

習氏は、11年前の党大会中央委員候補選挙で、151人中最下位で当選するなど、党内での評判は決して芳しくない。現在の権力構造の中で、各派閥にとりあえずは受け入れられた人選に過ぎない。

産経北京の野口東秀記者によれば、習氏は太子党である。たいしとうとは中国共産党の高級幹部の子弟等で特権的地位にいる者たちのこと。太子は英語のPrinceの意。

党組織だけでなく、コネを生かして企業経営等に関わる場合もある。なお大抵は親の方が地位・知名度共に上だが、曽慶紅のように子のほうが出世した例もある。

習氏は故胡耀邦元総書記にも近かった故習仲勲の息子。1953(昭和
28)年生まれの54歳。文革時代は地方に下放された経験もあるが85年以降はとんとん拍子で出世。ついにポスト胡の最前線に躍り出た。しかし、求心力も人気も無いという。

それは出世の陰に不人気の江沢民前国家主席の「ヒキ」が存在するからだという。これについて野口記者は党政治局の派閥抗争のバランス上、今回、習氏がトップに立ったがこれから試される指導力如何ではどうなるか分からないとしている。

とくに矢板明夫記者は「今後、状況が変化する可能性もある。政治手腕が問われる中、すきがあれば、ライバル李克強氏を代表格とする共産主義青年団(共青団)による巻き返しも予想される」と。

矢板氏はまた「中国の指導者は、約20年前の江沢民政権から建国にかかわった革命経験者がほぼいなくなった。

戦時中の軍功と違って、平和時代に群を抜く実績を積むことは難しく、その後の幹部選抜の際、権力闘争の激しさが増したといわれる。
カリスマ不在の中国の政治はさらに不透明な時代に突入する」と指摘している。2008・03・16
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