石岡荘十(ジャーナリスト)
京都・川端警察署が、業務上過失致死の疑いがあるとして告発されてい
た京都大学病院の内山卓前院長らを書類送検したことが分かった。
送検されたのはほかに前副院長で手術の安全管理の責任者だった橋本信
夫前脳外科教授(4月から国立循環器センター総長に栄転)、それに一
山智前検査部教授(副院長)の3人。
3人は一昨年(’06年)3月、京都大学病院で行なわれた手術患者が脳
死肺移植手術後死亡した医療事故について、移植手術にしては珍しいこ
とだが、脳酸素の飽和度を示すモニターを設置していなかった。
患者は30歳の女性で、手術が肺手術であるため呼吸器外科を主担当に、
麻酔科と心臓血管外科の3科が協力する体制が取られた。手術は順調に
進んだかに見えた。しかし患者は全脳虚血による脳障害を起こし、手術
後も意識を回復することなく、10月死亡した。
この手術をめぐって、“病院当局”は患者死亡から2ヵ月後の一昨年暮
れ、いわば手術の助っ人だった心臓血管外科の米田正始(こめだまさし)
教授(当時)に対してだけ、突然「心臓手術差し止め」を宣告し、事実
上、教授のメスを取り上げた。
米田教授はその後、京大病院を辞任した。しかし、手術の安全管理に責
任がある送検された3人の責任は重いとして、米田元教授が手がけた患
者関係者が告発状を川端警察署に提出し、その取り扱いが注目されてい
た。(経緯の詳細は、昨年「新潮45」10月号でリポートした)。
告発状によると、「平素から医療の安全管理に努め、手術担当医師らが
手術中の患者の異常を直ちに発見し、これに即座に対処できるよう脳組
織酸素飽和度モニターなどを設置するなど---(中略)の義務があるのに、
これを怠った。これが業務上過失致死に当たる---」としている。
その京大学病院は、4月7日、「心臓外科の手術差止めに関する
外部評価委員会」がこれまでの調査内容を公表した。このなかで、評価
委員会は「(患者が死亡したのは)米田が周囲とのチームワークをとっ
ていなかったという観点の批判になっていている」(米田元教授)。
委員会の発表内容は、地元の京都新聞で一面トップで扱われているほか、
朝・毎・読でも比較的詳しく伝えている。しかし、4月3日に行なわれた書
類送検については、川端警察署も大学側もこれを公表しなかった。
告発人の代理で、送検(4/3)の事実を今日(4/7)確認したとい
う高田良爾弁護士によると、警察が送検の事実を公表しなかったのは
「大学病院に気を使ったからでしょう」という。
都合のいい情報だけを盛大に発表し、そうでない情報には触れないのは、
海の向こうの”大国”だけではないようだ。
米田教授辞任後のその京大心臓血管外科はどうなったか。愛知や神奈川
の民間の心臓専門病院でメスを握っている米田元医師によれば、京大に
はドクター4・5人が残っているが、成人の心臓手術患者は月数人事実
上、ゼロで、診療科としての心臓血管外科は消滅した。若いドクターの
中の何人かが、今後の身のみの振り方について相談してきているという。
200080407
2008年04月09日
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