2008年05月16日

◆永年の「悪習」の果て

                    毛馬 一三

「裏金問題」で大揺れに揺れている大阪市で、新たに「職員の不正行為」が明るみに出て、懲戒免職を含む計121人が大量処分されるという不祥事が起きた。公務員としての「倫理感」はここまで堕ちているのかと非難の的の大阪市だ。

「裏金調査」で同総額が6億4130間円に達したことが表面化した時、平松邦夫新市長は事態の深刻さに動転。報道陣の詰問に答え、その背景を、「前例を踏襲する職場風土と倫理感の欠如」が職員間に介在するためだと指摘した。

ところが今回発覚した不祥事も、まさしく新市長の想定通りのことで、業務現場で長期にわたり繰り返されていた「不正行為」そのものだった。大阪市は「裏金」決着を前に、急遽この処分の方を先行させたのだ。

さてその処分だが、最も重い懲戒免職の対象者は、市建設局の出先・東南公営所の40才の技術職員。勤務中に負った怪我が完治したにも拘らず、「リハビリのため」と称して、03年4月から07年10月まで4年半にわたって1209時間、勤務中に職場を1人抜け出し、近くの公営プールで泳いでいたもの。

また、諭旨免職になったのは、同じ市建設局の出先・南部下水道管理事務所の47才の主任。胴回りが肥満してマンホールの中で汚水内作業が出来ない48才の部下を、ほかの職員同様の作業に従事したように書類を改竄、43日分、3万3110円を不正に受給させていたもの。「肥満」の部下に金銭的便宜を図るという、聞いた事も無い珍事だ。

さらに、信じられないのは、停職2ヶ月の処分を受けた41才の市健康福祉局の係長。「年次休暇より取りやすかった」として、06年3月から07年6月の間に、妻の両親、祖母2人、おじ1人、おば3人が亡くなったことにして、12回の忌引休暇を取ったもの。忌引休暇の不正取得での処分対象者は、この係長の他に4人いる。

以上、今回の不祥事の処分の内訳は、懲戒免職1名、諭旨免職1名、停職3ヶ月3名、停職2ヶ月2名、停職1ヶ月6名、停職10日17名、減給16名、戒告18名、戒告・注意57名―合わせて121人となる。


この不祥事は、08年2月大阪市建設局の出先・十八条下水道センターの37才の職員が、カラ残業の協力を拒んだ同僚を暴行し逮捕されたことが発端。これを機に市が全職員を対象に出勤状況などを調査した結果、この不祥が発覚した。この暴行事件が無かったら、平松新市長を震撼させるこの「悪行」の露呈はなかったのだから、なんとも皮肉な話だ。

「前例を踏襲する職場風土と倫理感の欠如」が、一連の不祥事の諸因だと市長は述懐するが、なぜその「悪習」が改善されないのか。大阪市の関係者に聞くと、「永年引継がれて常態となっているものを、良くないという認識があっても、職場で改めるにはどのような立場であろうとも、それなりの勇気と決断がいる」と、中々取り組めない訳を明かす。

たしかに接待、内輪の慰労会など大規模浪費の節約などは中止されるなど改善はすすんでいる。しかし市長選挙に絡む支援団体への配慮や各区役所と繋がる市民団体への支援は、事実上健在。また市政関係者への冠婚葬祭の支出金のプールが「裏金」として確保されてきた実態は、今後一挙になくなるとは思えない。

まして今回発覚した職員同士の互恵の構図である、架空時間外労働、出退勤時間の不正操作、架空出張などの不正行為は、調べればまだ出てくるだろうと、市関係者はいう。

となれば、この永年の「悪習」を無くすのにはどうすればいいのか。やはり初の民間出身の新市長が、勇断を以って職員の意識改革に臨むことに期待するしかない。

今、大阪府の財政改革に反対意向を恰好良く主張している平松邦夫新市長だが、それより足元の市政改革に本腰を入れて貰いたいのだが、どうだろうか。(了)
          08.05.15

★同上記事は、全国版メイル・マガジン「頂門の一針」1189号
  平成20(2008)年5月17日(土)に掲載されました(編集部)

◆1189号の<目次> 

・拉致を招いたカーター:渡部亮次郎
・永年の「悪習」の果て:毛馬一三
・海南島に潜水艦基地:宮崎正弘
・「従軍記者」事始(2):平井修一
・中国各地で異常気象相次ぐ:大紀元日本

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