2017年04月19日

◆日米会談、謎の35分は霧の中

杉浦 正章
 


北への軍事圧力強化では一致
 

安倍・ペンス会談を一言で形容すれば、中国の北朝鮮への働きかけを当分見守るというところにあるのだろう。従って米国が当面軍事行動に出ることはまずあり得ない。会談からは、軍事行動が迫っているような雰囲気は感じ取れなかった。しかし、禁止用語を避ければ「クレージーマンに刃物」を持たせたような金正恩が、突如核実験に踏み切れば事態は軍事衝突へと一変する。


米国務省高官は「金正恩政権の転覆は求めない」とまで言い切っているが、これも筆者が前回指摘したとおり中国との「密約」の急所だ。これがなければ中国は金正恩を説得する手段がない。したがって米空母打撃群は、北と中国をにらんだ脅迫材料として朝鮮半島周辺に存在し続けるだろう。


会談での注目点は、首相・安倍晋三が「米国が全ての選択肢がテーブルの上にあるという考え方で対処しようとしていることを評価する」と軍事行動への支持を正式に表明したことだろう。ペンスにしてみれば安倍発言は願ってもない支持表明であり、日米の一致した軍事行動も辞さない構えは、北への抑制効果を一段と増幅されることになる。


ペンスは「戦略的忍耐の政策は終わった」と、優柔不断のオバマの政策からの決別を明言した。また「国際社会が団結して北に圧力をかければ、朝鮮半島の非核化達成の好機が生まれる」と日米韓の中国との結束の必要を強調した。両者の口ぶりからは、北への圧力をひたすら強化しなければならない現状が分かる。この方向を公表しなければ、ペンスの同盟国歴訪の意味がないからだ。


しかし、ソウルが甚大な被害を受けかねない韓国が、ペンスに軍事行動への慎重論を説いたといわれるように、北の攻撃にさらされる恐れがある日本も、むやみやたらに主戦論に傾いているわけではあるまい。北のミサイルにはまだ原爆は搭載されていないが、サリンなど化学兵器をイタチの最後っ屁のように一発でも撃ち込まれてはたまらない。


従って会談では公表以外のきわどいやりとりがあった可能性がある。会談は一時間の昼食が終了した後、人数を絞って35分間行われている。そこでの話し合いは、機密事項であり推測するしかないが、あえて推測すれば、まず中国がどこまで本気で北朝鮮を説得するかが話し合われたのではないか。米中両国はこのところ頻繁な接触を繰り返しており、ペンスは米国の感触を伝えたはずだ。


また公表されていないが、米国が攻撃に踏み切る場合の日本との事前協議についても話し合われた可能性がある。安倍は15日の参議院予算委で、朝鮮半島有事の際について「米国海兵隊は日本から出て行くが、事前協議の対象になるため、日本が了解しなければ韓国を救援するために出動できない」と述べている。既に日本政府は米政府に対し、北朝鮮への軍事行動に踏み切る場合には事前協議を行うよう求めているといわれる。


こうした方向を安倍がペンスにも再確認することはあり得るだろう。政府高官は「北が核実験を行った場合の対応については、今日のやりとりはなかった」と述べているが、既にトランプは「核実験=軍事行動」を明確にしており、ここの“急所”が話し合われなかっただろうか。米側から何らかの見通しの説明があってもおかしくはあるまい。

 
こうした中で、北朝鮮の“口撃”は佳境に達している。日朝国交正常化担当大使宋日昊は「我々はアメリカだけでなく日本軍国主義も主たる敵だ。戦争になったら一番の被害を被るのは日本だ」と毒づいている。既に北は3月に、金正恩が在日米軍基地を攻撃する任務を負った部隊による4発のミサイル発射実験を指揮しており、露骨な嫌がらせを展開している。日米の離反を目指す戦略が見え見えだが、こうした言動が繰り返されるたびに、眠っていた日本国民の国防意識を目覚めさせていることが分かっていない。


日本の極端な右傾化が、朝鮮半島にとっては、米国より怖いことは歴史が証明している。これを知らない金正恩の挑発と火遊びはいいかげんにしないと、火の粉は自分に降りかかることを肝に銘ずるべきだ。いずれにしても、すべては中国の対北外交の成り行き待ちだが、金体制を崩壊させないことを前提条件としていることは、金正恩をいよいよつけあがらせるだけとも言える。中国が原油ストップなどよほどの強硬策をとらない限り、水面下での中朝交渉はラクダを針の糸に通すくらい困難であろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年04月18日

◆米中結託で北朝鮮説得に動く

杉浦 正章

 

北の体制維持で“米中密約”か


金正恩に軟化の兆候も


まるで北朝鮮をめぐって米中結託の様相である。トランプは「習近平主席を気に入った。尊敬する。素晴らしい人だ。どうなるかを見ていよう。努力をしてくれると思う」と臆面もなく秋波を送った。脅したうえで、なだめすかすトランプ流の「手口」が垣間見える。


これに対して中国は「対話による平和的解決」(外務省報道官)と応え、水面下で核実験、ICBM実験中止へと動く。中国の対北政策は一変したかのように見える。中国の北に対する基本政策は、米国への防波堤としての存在価値を利用する点にあったが、トランプ・習近平会談がこれを微妙に変化させたのだ。北の体制維持を米国が認めたとされる「密約」があることが大きく作用していると言われる。


しかし、中国の北への説得工作が短期的には奏功しても、北が核とミサイルを永久に放棄することはあり得ないだろう。したがって、金正恩体制を崩さない限り、極東の緊張緩和は達成できない。
 

米中間の接触は極めて頻繁である。6,7日の首脳会談に続いて、12日には電話首脳会談。16日には国務委員楊潔チと国務長官ティラーソンが電話会談している。こうした会談を通じて、米側は「中国がやらなければ米国がやる」(トランプ)を基本姿勢に、習近平を揺さぶった。空母カール・ビンソンを朝鮮半島に近い西太平洋に展開、中東でシリアへの巡航ミサイル攻撃、ISへの大規模爆風爆弾(MOAB)使用など、明らかに北朝鮮と中国をけん制する軍事行動に出た。これが中国の尻をたたいた。


こうしたムチに加えて中国のアキレス腱である対米貿易黒字に関しても、為替操作国指定を見送るなどのアメも提供した。
 

トランプ政権の狙いは、とりあえず北の核とICBMの実験を中止させるところにある。こうして中国は水面下での対北説得工作を展開し始めたのだ。その説得材料は、現体制を潰さないとする密約をもとに、場合によっては原油パイプラインを止めることや、中朝友好協力相互援助条約の「中国参戦条項」の不履行をほのめかしながらの脅しだろう。


原油パイプラインのストップは環球時報が「中国は北への原油供給を制限するなどかつてない制裁を考えている」と報じた。一方、中朝条約不履行は有事における北の壊滅を意味するだけに大きい。同条約第2条は「一方の国が戦争状態に陥った場合、他方の国は全力で軍事援助を与える」と規定しているが、第1条では「両国は世界平和を守るためあらゆる努力を払う」と規定されている。


中国は北の核開発は1条に反しているという立場だ。さらに中国にしてみれば、北の核を認めれば、日本や韓国の核武装へと極東情勢が誘導される可能性があり、そうなれば中国一国が極東で「核優位」に立つ戦略上のアドバンテージを失うことになる。これも避けなければならないという事情がある。
 

中国による最大限の圧力に北がどう反応しているかは定かではない。その一挙手一投足から推理するしか方法はない。一つは金日成生誕105周年記念式典で、西側の記者団を人質に取るかのように招待して、米国のピンポイント攻撃を回避したうえで姿を表した金正恩が、軍服ではなく背広姿であったことだ。精一杯の「平和志向」のシグナルと解釈できる。

さらに党副委員長崔竜海は15日、式典での演説で「全面戦には全面戦で、核戦争には我々式の核打撃で対応する」と述べた。その一方で、「我々は平和を愛する」とも付け加えたのだ。こうした北の反応は、一見強気にみえる金正恩が、相当な圧力を感じていることを物語る。米国と全面戦争をすることは避けたいというのが本音であろう。


問題は中国と米国が現在予定されている核実験や、ICBMの実験を中止させることに懸命であるかのようであることだ。米中が唱える朝鮮半島の永続的な非核化は現実問題として極めて難しいといわなければなるまい。なぜなら、北朝鮮の伝統的な基本戦略は核ミサイル保有国として米国と対等の対話が出来る国になることであり、その戦略に何が何でもしがみつこうとするからだ。


韓国に亡命した元駐英北朝鮮公使太永浩が昨年12月「1兆ドル、10兆ドルを与えると言っても北朝鮮は核兵器を放棄しない」と述べたが、まさにその通りであろう。これまでの6か国協議が結局失敗に終わったのは、何をしようと北の核ミサイル願望は消滅しないのだ。従って極東の危機は米国が金正恩を“除去”するまで続かざるを得ないのだろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年04月14日

◆トランプ、対中改善に大きく前進

杉浦正章



対露関係は機熟さず「史上最悪」
 

安倍訪露は好機か
 

日本や西欧など同盟国との関係を構築した米大統領トランプは、オバマが悪化させたロシア、中国との関係再構築に取りかかっている。しかし、対中関係改善が大きく先行したのに対して、対露関係は自ら「史上最悪」と言い切るほど好転していない。トランプは選挙中にロシアに大接近したものの、その先兵となったマイケル・フリンを国家安全保障補佐官から外した。


大統領就任前にロシア大使と接触した疑惑が理由である。代わりに就任させたマクマスターらに主導権が移りシリア攻撃など、ロシアの神経逆なでの行動に出た。米政権内部の主導権争いも作用したのだ。国務長官ティラーソンをモスクワに派遣したがシリアをめぐる亀裂だけが際立った。
 

トランプと習近平との関係は驚くほど好転している。習近平がトランプに気軽に電話するような関係になったのだ。おまけに12日の電話会談の中身たるや、出来るだけ早期の訪中を望む習近平に、トランプは快く応ずるという蜜月ぶりだ。会談でもっとも注目されるのはトランプが習近平に国連安保理におけるアサドの化学兵器使用を非難する決議への配慮を求めたことにどのような対応をするかであった。


これに対して、習近平は「棄権」という対応に出たのだ。拒否権を行使したロシアは完全に孤立した。6年にわたるシリア内戦中にロシアが拒否権を行使したのは8回目。同じく常任理事国で過去に6回拒否権を行使している中国が棄権、ロシアに同調しなかった事は外交上大きな意味を持つ。トランプは「素晴らしい。だが棄権したことに驚きはない」と得意げに自らの根回しをほのめかしている。「習近平氏とはケミストリーが合う」とまで言いきっている
 

しかし対中関係も北朝鮮の核ミサイル開発問題をめぐっては、さらなる制裁を求めるトランプに対して、習が石油の供給制限などドラスティックな対応をするかどうかの問題もありまだ予断を許さない。こうしたトランプ外交も身内の進言に左右されることが分かって来た。 夫ジャレッド・クシュナーとともにその絶大な影響力からトランプの「秘密兵器」とも呼ばれているイバンカは、シリアへのミサイル攻撃にまで影響を及ぼしている。


実弟エリック・トランプは英テレグラフ紙に「イバンカは3人の子供を持つ母親で、大きな影響力を持っている。彼女はきっと『聞いてお父さん、こんなのひどすぎる』という具合に言ったと思う。父(トランプ)は、そういう時には動く人だ」と証言している。
 

こうした内情が反映して中国とは対照的に、対露関係は「険悪」ともいう事態になっている。しかし、筆者はシリアへの一回限りの攻撃で関係悪化が長期に継続するとは思えない。ティラーソンが外相ラブロフと5時間、トランプと2時間も会談したことの意味は、両者がそうとう突っ込んで様々な問題を語り合ったことを物語っている。両外相は冷戦後最悪と言われるほど悪化した米ロ関係の改善に取り組む必要性では一致している。


加えてプーチンは、アメリカ軍による空爆が過激派組織ISなどのテロ組織を対象にする場合、いったん閉鎖した連絡窓口の運用を再開する用意があることを確認している。就任後初めてロシアを訪れたティラーソンに対し、ISとの戦いでは、トランプ政権と協力していく姿勢を示して、花を持たせたものとして注目される。報道官ペスコフも「非常に建設的な会談だった。さまざまな問題の解決策を探るため、対話を維持することが必要だという指摘があった」と述べている。
 

米露会談で重要な点は対露制裁問題が話し合われたかどうかだ。合計7時間もの会談の中で、すくなくともロシア側が言及しないことはあるまい。ウクライナ問題に端を発して対露制裁措置を講じている主要国は米国と欧州連合(EU)であり、カナダ、豪州、日本は独自の制裁を発動している。トランプは政権に就く前は対露制裁解除に前向きであった。更迭されたフリンはその意を受けて駐米ロシア大使と対露制裁について協議していたのであろう。


EUは昨年末の首脳会議で対露経済制裁を1月の期限から半年延長することで合意した。欧州諸国はイギリスが強硬論であるのに対して、ドイツ、フランス、イタリアなどには「制裁疲れの様子」が見え始めているようだ。5月のシチリア・サミットでも話し合われる公算が強いが、問題の焦点はやはりトランプがどう動くかに絞られよう。
 

こうした情勢の中で首相・安倍晋三の訪露は4月下旬行われる予定だ。安倍はロシアとの共同経済活動を先行させて領土問題につなげるという大きな方針転換を行った。この経済活動によって日露の信頼関係を深め、主権の問題を解決しようという試みは、世界的に見ても前例のないアプローチである。四面楚歌のプーチンに対して譲歩を迫る好機とも言える。一方で、るる述べてきたような激動する世界情勢を大局的な見地から話し合うこともまた重要だろう。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年04月13日

◆中国、北への原油供給制限を検討かー環球時報

杉浦 正章

 

習近平は米に抑制的対応を求める


米の攻撃は核実験とICBM次第か
 

韓国が「朝鮮戦争以来最大の危機」(中央日報)と焦燥感を強めている中で、中米、日米の外交的接触が活発化している。中国は習近平が2日のトランプとの電話会談で「平和的解決を」と抑制的対応を求めれば、日本は米国に対して攻撃する場合には事前協議をするよう要求した。


こうした中でトランプが北への攻撃に踏み切るかどうかを判断するポイントが、北の核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の2点に絞られつつある。中国もいずれかの実験をすれば、米国の攻撃を傍観する可能性すら生じている。ひしひしと迫る米国の重圧の中で、金正恩が予定通り早期の核実験とミサイル実験に踏み切るという「自殺行為」をするかどうかだ。


韓国では新月の4月27日を狙って爆撃を開始するとの情報がネットで拡散しているが、筆者はおそらくトランプは、北が核かICBMの実験をしない限り攻撃を先送りするかもしれないと思い始めている。

 

中国は昨日書いたように大きくその姿勢を変化させている。習近平は電話会談でも厳しい口調はなく、説得調であったといわれる。その証拠に習近平はトランプの年内訪中を再確認している。もちろんトランプがこれに応じたのは言うまでもない。習近平の「平和的解決」要請にトランプがどう応じたかは霧の中だが、少なくとも中国の北への圧力強化を求めたことは間違いあるまい。


トランプが原油供給問題に言及した可能性もある。北への圧力強化は、既に中国が実施に移している石炭の輸入1年停止では足りまい。最大の焦点は中国が北の首根っこを押さえている原油の供給停止か供給制限に踏み切るかどうかであろう。北朝鮮は原油の9割を中国に依存しており、原油が止まれば北の経済は崩壊する。金正恩体制も危機に瀕することは自明の理だ。
 
 

原油は豆満江をわたるパイプラインで供給されているが、驚くことにその中国に石油供給を制限するという説が台頭し始めた。読売によると中国共産党系のタブロイド紙環球時報は、12日の社説で「北朝鮮が今月、追加の核実験やICBMの発射に踏み切れば、中国が原油の供給の制限に踏み切る可能性」を示唆したという。環球時報は共産党機関誌『人民日報』の国際版とも言えるが、人民日報ほど高級志向ではなく、大衆的だ。


しかし、中国首脳が環球時報を使って観測気球を上げるケースが多く、今回もその可能性が強い。北に対して「禁じ手をあえて使うぞ」というどう喝に出たのであろう。

 

一方、日本政府も米国に対して攻撃の場合には事前協議をするように求めている。官房長官菅義偉は否定しているが、ありそうな話だ。


北は日本の米軍基地を名指しで攻撃すると言っており、突然米軍に攻撃されてはたまらない。事前協議は、60年に安保条約を締結した際の交換公文で在日米軍が戦闘作戦行動をする際に事前協議をするよう規定されている。今回のケースはカールビンソンを使う場合には在日米軍基地は使用しないから適用外だが、横須賀で点検整備中の空母ドナルド・レーガンが北に向かって攻撃のための出撃する際には当然対象となる。

 

各社報道していないが事前協議の対象は、もう一つある。それは沖縄返還時に日米間で交わされた、米軍による有事の際の日本への核兵器の持ち込みに関する密約のことだ。米国政府は核兵器の所在について否定も肯定もしない政策をとる一方、沖縄返還に当たってはいったん撤去した沖縄の核を再持ち込みする事がありうるとの立場を強硬に主張した。日本政府は「核兵器を持たず・作らず・持ち込ませず」を“国是”としており、これと矛盾するが、米国の強い要求に佐藤内閣はこれを認めた。


しかし、密約として公表されなかった。従って国会でも社会党の追求の的となった。どちらのケースかは状況によるのだろう。いずれにしても北が核でどう喝するという、異常事態の発生である。有事寸前の事態でもある。米軍の核持ち込みが必要とされるケースはあり得るのであり、事前協議を経てこれを認めるのは日本防衛の要であり、当然であろう。
 

もっとも、簡単に米軍による北攻撃が行われると見るのは早計であろう。米統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォードが昨年3月の議会軍事委員会で「北の軍事力は世界第4位だ」と発言している。しかし軍事分析会社グローバル・ファイヤーパワー(Global Firepower)による「世界の軍事力ランキング2016年版」では上位10位は米国、ロシア、中国、インド、英国、フランス、ドイツ、トルコ、韓国、日本の順で北朝鮮は36位となっている。


ダンフォードの指摘は陸上の白兵戦を意味するのかもしれない。いずれにせよ北を叩くといってもそう簡単ではない。第一次朝鮮戦争では3万6000人の米軍人が戦死しており、空爆だけで北が降伏すれば簡単だが、地上戦ともなれば甚大な被害が予想される。シリアの空爆などとは比べようもない。本格戦争を覚悟しなければなるまい。また極度に緊張が高まれば米国の先制攻撃どころか、北が誤判断などから先制攻撃に出る可能性すら否定出来ない。


従って、軍事行動を示唆して最大限の圧力を行使し続けるものの、北が核実験の実施やICBMを発射しない限り、トランプといえどもそう簡単に全面戦争に踏み切れるものでもない。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年04月12日

◆中国、朝鮮半島沈静化に動く

杉浦 正章
 


北の核保有を認めず


金正恩は外交・安保で孤立
 

読売が12日付社説で北朝鮮の核・ミサイルによる挑発行為について「中国の実質的関与を促したい」と間の抜けた主張をしている。なぜ間が抜けているかと言えば、中国が、北朝鮮の非核化に向けて本格的に動き始めたのを見逃している。


中国外務省の朝鮮半島問題特別代表武大偉が10日訪韓して外務省韓半島平和交渉本部長金ホン均と会談、「中国はいかなる場合でも北朝鮮の核保有国としての地位を認定、黙認しない」と金正恩をこれまでになく強く批判したのだ。中国は、ICBMの打ち上げや核実験をやれば見捨てると言っているのだ。これは明らかにトランプが習近平との会談で「中国が役割を果たさないなら我々が単独でやる」と“説得とどう喝”で「行動」を促したことを反映している。


空母カールビンソンと横須賀停泊中のロナルド・レーガンに取り囲まれ、中国まで離反して外交・安保両面に渡り北は完全に追い込まれて孤立化した。こうした米中の方針は韓国の大統領選の帰趨に大きな影響を及ぼしつつあり、トップを走っていた親北の「共に民主党」の文在寅が失速しつつあり、戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)容認など保守票を意識した中道・国民の党の安哲秀が世論調査で劇的な逆転となり有利となっている。

 
習近平はよほどこたえたとみえる。米中首脳会談から3日後に武大偉を派遣している。それに首相李克強も10日、北京で元衆院議長河野洋平らと会談し「北朝鮮情勢は緩和すべきだ。中国もやるべきことがあるし、中日でも共にできることがある」と日本との連携すら示唆している。明らかに中国は対北政策で金正恩への圧力をかけ始めるという重大な北朝鮮政策の方向を転換した。


一面トップ並みの動きだが、日本のマスコミの多くがこの動きを見逃している。韓国中央日報によると武大偉は「北朝鮮が核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射のような『戦略的挑発』を敢行する場合、国連安全保障理事会の決議に基づき強力な追加の措置があるだろう」と発言した。


両者は@北が追加で挑発すれば、よりいっそう強力な安保理決議はもちろん、制裁と圧力を持続的に強化するべきであるA北の非核化のために韓中協力と5カ国(韓・米・日・中・露)の連携が重要だB韓中は核問題の緊急性・厳重性に対する評価を共有し、北の挑発を懸念して反対するという立場で一致した。

 
こうした中国の動きは、ひしひしと朝鮮半島に迫る「4月危機」に対して、とりあえずは緊張緩和に動かざるを得ない状況に立ち至ったことを意味する。習近平はトランプとの会談で韓国へのTHAAD配備に懸念を表明しているが、その基本的な立場は維持しつつも、今後金正恩が核実験やICBM実験、さらにはICBMへの核搭載に踏み切れば事態は抜き差しならぬ戦争に突入しかねないという危機感を抱いたのであろう。


もともと習近平は金正恩を毛嫌いしているといわれており、就任以来朴槿恵とは会談しても金とは会談していない。しかしこのまま放置すれば第2次朝鮮戦争、ひいては第3次世界大戦まで誘発しかねない事態へと発展しかねない。朝鮮戦争ともなれば最終的には米国主導で韓国による半島統一に向かう事は必定だ。これはなんとしても防がなければならないという考えに立ち至ったのであろう。

 
それで武大偉を韓国に派遣したのであろうが、こうした動きは北に対して極めて厳しい威圧になる。問題は中国がこうした動きを背景に北への説得に動くかどうかだ。金正恩を説得するには包囲網だけでは足りない。武大偉は韓・米・日・中・露5か国の連携の必要を提起しているが、これがかつて堂々巡りを繰り返した6か国会議と同じことになる可能性は否定出来ない。


やはり中国自らが石油の禁輸などドラスティックな制裁をかけることで北を脅し、金正恩を外交的に屈服させるしか方法はあるまい。習近平がそこまで踏み込むかどうかが当面の焦点となる。


◇大統領選は安哲秀がリードの情勢
 
一方で韓国の大統領選はこうした極東情勢を強く反映したものとなりつつある。5月9日の投開票に向けて事実上文在寅と安哲秀の一騎打ちの様相を呈してきた。先月には8.4の支持率しかなかった安哲秀がここ1週間で急速に支持率を上乗せして文在寅を逆転した。


8〜9日に聯合ニュースが実施した世論調査の結果によると、候補者5者への調査で安の支持率は36.8%で、文の32.7%より4.1ポイント高かった。また候補を2人に絞った場合も安は49.4%で、文の36.2%を13.2ポイントの差でリードした。テレビ朝鮮の調査も安候補が34.4%、文候補が32.2%。2人に絞っても、安が51.4%で、文の38.3%より13.1ポイント高かった。

 
この結果がなぜ導かれたかと言えば朴槿恵への反発から「当選したらまず北へ行く」と述べる親北朝鮮の文在寅へと流れた支持が、北による半島危機によって限界を示し、逆に中道とはいえ米国との連携に大きく舵を切った安哲秀に支持が向かったといえよう。とりわけ安哲秀がこれまで反対してきたTHAAD配備を支持する方向に転換したことも、行き場がなかった保守層の支持を獲得し始めたものとみられる。


こうした状況は1か月後の投票に向けて加速するような気がする。安哲秀が勢いを付けたまま投票に突入する公算が大きい。しかし、最近の選挙はトランプ当選を誰も予想しなかったように「魔物」が潜んでいる可能性もあり、断定は出来まい。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年04月09日

◆トランプは韓国への核配備に本気のようだ

杉浦 正章



日本は非核三原則論議再燃か


 米中会談はきわどいやりとり


日本の報道では何やら歯切れが悪く平行線をたどった米中首脳会談であったように見えるが、トランプと習近平の間では北朝鮮の核ミサイル対策でかなり激しいやりとりがあったようである。より深刻な対応を迫られている韓国の報道を見れば、トランプは戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)配備について「韓国に対して報復措置を取らないように求めた」(東亜日報)という。これに対し習近平はTHAAD配備に反対するとともに、米韓軍事演習について「軍事的圧力を停止すべきだ」と逆襲している。かなりきわどいやりとりである。


一方、トランプが「中国がやらなければ米国が独自の行動について準備が出来ている」と伝えたことについて、軽佻(けいちょう)浮薄なる民放テレビのコメンテーターらが「すわ軍事行動」とばかりに騒いでいるが、そうとは限るまい。軍事行動の前に行いそうな最大の一手は、韓国への戦術核配備であろう。韓国に核配備する以上、トランプが日本にも有事の際の核持ち込みを求める可能性がないとは言えまい。極東情勢の激変で非核三原則の是非について、国会での議論が再燃する可能性もある。
 

首脳会談を経て米国はここ当分は中国の北への動きを注視することになるだろう。会談のポイントはトランプが習近平の尻をたたいたことにあるからだ。米中首脳会談を狙ってシリアへの巡航ミサイル攻撃を断行、国家安全保障会議(NSC)に韓国への核配備を提言させるなどどぎつい対中圧力を展開したトランプは、中国がこれに促されて北に対して行動を起こすかどうかを見守るのだろう。起こさなければ、矢継ぎ早に対策を打つだろう。


既に下院が可決した北のテロ支援国家再指定を実行に移し、北と取り引きする第3国の企業・個人への制裁、同盟国のミサイル防衛網の整備などをちゅうちょなく打ち出すであろう。そしてその白眉とも言えるものが韓国への戦術核の再配備である。
 

トランプは就任後国家安全保障チームで韓国に核を配備して北への“劇的な警告”を行うことを検討してきた。これを習近平の訪問を待っていたかのようにNBCテレビにリークして「米国家安全保障会議(NSC)が在韓米軍への核兵器の再配備をトランプ大統領に提案した」と報じさせた。グアムに配備している戦略核はミサイルや爆撃機でいつでも使用できるから、韓国への配備を検討するのは戦術核であろう。戦術核とは局地戦で使用するもので、戦場単位で通常兵器の延長線上での使用を想定した核兵器である。


かつて在韓米軍は核弾頭を装着できる地対地ミサイル「オネスト・ジョン」と280ミリ核大砲、空中投下核爆弾、超小型破壊用特殊核爆弾などを搬入した。しかし、冷戦終了への流れがはっきりしてきた1991年、ジョージ・ブッシュが軍縮計画に添って、これらの戦術核兵器を朝鮮半島から撤収した。現在、北大西洋条約機構(NATO)では、5ヵ国の米空軍基地6ヵ所に戦術核兵器約150〜200個が備蓄されている。核兵器の再配備先としては、ソウル南方にある烏山(オサン)空軍基地が候補に挙がっている。タイミングとしては金正恩が6回目の核実験をやった直後かもしれない。
 

トランプのNSCは、金正恩の臆面もないミサイル打ち上げと核開発で、極東が核危機の状況になりつつあると見ており、韓国への核配備は戦略上も欠かせなくなってきたと判断したようである。韓国内は5月9日の大統領選挙に向けて保革伯仲の戦いが展開されているが、この戦術核配備が争点になりつつある。「核武装」すら主張する与党保守勢力は歓迎しており、文在寅など野党候補は反対している。選挙結果は配備に影響するかもしれないが、トランプは選挙に関わりなく配備する構えのようだ。
 

こうして昔懐かしい核の傘論や非核三原則論が日本でも活発になるだろう。「造らず、持たず、持ち込ませず」の非核3原則は佐藤内閣時代から「国是」となっている。佐藤栄作は1967年衆院予算委員会で「核は保有しない、核は製造もしない、核を持ち込まないというこの核に対する三原則のもとにおいて日本の安全はどうしたらいいのか、これが私に課せられた責任でございます。」と答弁、非核三原則を表明した。2006年には安倍が衆議院予算委員会で「我が国の核保有という選択肢は全く持たない。非核三原則は一切変更がないということをはっきり申し上げたい。」と堅持を表明している。
 

重要なのはこの非核三原則があるかぎりアメリカは安心であるということだ。なぜなら「造らず」「持たず」があるかぎり日本の核武装はなく、米国の世界戦略は安泰であるからだ。経緯を知らないトランプが「持ち込みくらいいいだろう」と言い出さないとも限らない。しかし非核三原則は一体であり、持ち込むとなれば大きな反核闘争を巻き起こし、死に体のようになっている民進党と、共産党を利するだけということになる。よほどの有事になれば別だが、今のところは平時だ。平時に波風を立てる必要はない。有事にはどさくさに紛れて持ち込むことも可能だ。

<<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2017年04月08日

◆度肝を抜かれた習近平、プーチン、金正恩

〜シリア空爆〜

杉浦正章



トランプ起死回生の世界戦略に成功
 

北への戦略応用は容易ではない
 

一挙に米国のリーダーシップを回復させ、四方八方に目配りしたこの見事な世界戦略は、トランプの立案とは思えない。おそらく国家安全保障担当大統領補佐官マクマスターが国家安全保障会議(NSC)をリードして成し遂げたに違いない。解任されたマイケル・フリンの後を継いだマクマスターは政権のダークベイダー・スティーブン・バノンをNSCから追い出したが、この“政変”もシリアをめぐる中東政策の違いが原因ではないかと思えるくらいだ。


シリア空爆をあえて「見事な世界戦略」と形容するのは、フロリダで会談中の習近平、シリアに存在感を増すプーチン、増長の極みの黒電話の受話器ヘアの金正恩の度肝を抜いたからである。加えて35%まで落ちたトランプ支持率を大きく押し上げる効果も生じよう。


なぜならアサド政権への攻撃は道徳的な側面が強く、米国民の好きな正邪の戦いでもあるからだ。まさに八方にらみ、一石四鳥の世界戦略である。朝日は8日付け社説でミサイル攻撃を「無責任な単独行動」と相変わらず唯我独尊的に批判しているが、放置すればアサドは図に乗って毒ガスをばらまく。それでいいのか。首相・安倍晋三がトランプの決断を支持したのは全く正しい。読売も社説で安倍を支持している。
 

度肝抜かれのナンバーワンは習近平であろう。華麗で和やかなる晩餐会は東部時間午後8時から9時半まで続いたが、事もあろうにトランプはその最中の午後8時40分にトマホーク巡航ミサイル59発をシリアのシャイラート飛行場へと発射するよう指示していたのだ。トランプがこれを習近平にささやいたかどうかは分からないが、おそらくささやいていないだろう。なぜなら空爆の成功を確認できないうちに、言えることではないからだ。


トランプが発表したのは空爆成功を確認した食事後であり、習近平はその後知らされた可能性が高い。もともとシリア政府軍攻撃は急ぐ話ではなかった。2日や3日遅れても問題が生ずる話ではない。従ってトランプは“わざと”晩餐の時を狙った可能性が高い。まさに巧妙なる“作戦”に、習近平はこけにされたことになる。トランプのアッパーカットを食らって、今日の米中首脳会談までに態勢を整えるのに懸命の有様が目に浮かぶ。
 

次に度肝を抜かれたのはプーチンだ。プーチンはトランプを大統領選挙で陰から助けたといわれており、対露強硬路線のクリントンが政権を担わないでほっとしていたところだろう。イランとともにシリア内戦に介入して、冷血動物のようなアサドを支持し、アサドがサリンのような神経ガスや塩素ガスなどの化学兵器を使ったことを否定してきた。プーチンはトランプが親露である以上、一挙に攻撃には出まいと誤算していたのだ。

しかし、プーチンの主張とは逆にミサイル攻撃が、化学兵器による爆撃の拠点となったシリア中部のホムス空軍基地に限定されたのは、米国が空撮などの動かぬ証拠を握っているからだという説が強い。米国務長官ティラーソンは来週訪ロするが、これに先立って「米露関係がどのような方向に進むかはロシア側から聞く内容次第」とすごんでいる。


ニューヨークタイムズはティラーソンがプーチンに会うと報道しているが、外相ラブロフだけとなるかははっきりしない。いずれにせよプーチンは、あくまでアサドをまもるか、米国との関係を考慮するかの選択を迫られる形だ。米露が対立すれば内戦はより複雑化して長引くだろう。
 

一方、超度肝を抜かれたのは北の黒電話ヘアだろう。ヘアが逆立ったかもしれない。金正恩は、「戦略的忍耐」と称して優柔不断だったオバマしか知らないから、トランプになってからもミサイルの打ち上げを続け、6回目の原爆実験も準備している。金はトランプが安倍に「全ての選択肢がテーブルの上にある」と、軍事行動示唆の発言しても実感を伴って理解出来ないでいたのだろう。しかし、巡航ミサイル59発の威力を映像で目の当たりにして、金正恩は隠れ家の地下壕をより深く掘れと命じたかもしれない。


自民党副総裁・高村正彦はNHKに「『無法国家』にアメリカの決意を知らせることになり、『無法』ができなくなるということが考えられる。その反面、北朝鮮が、『シリアは核を持っていないから攻撃された』と、ますますミサイルや核が必要だと考えるかもしれない。トランプ政権はオバマ政権と違い、レッドラインを越えたと思えば思い切ったことをやるというメッセージが、『無法国家』を抑制させる効果が出ればいい」と延べ、看破している。高村の言うとおり国内的には核開発の口実になり得るが、実体的には相当の抑制効果となる可能性が大きい。
 

しかし、トランプの世界戦略がマクマスターによって動かされている限りにおいては、米国がアサド政権に対するように北朝鮮への奇襲攻撃を軽々に断行するかについては疑問がある。なぜならマクマスターの戦略のプロとしての思慮分別が強く働くからだ。というのもソウルは北の報復砲撃によって火の海になるし、傲岸不遜にも金正恩は日本の米軍基地をミサイル攻撃の標的にすると公言している。


特に東京周辺の基地にサリンを積んだミサイルで攻撃をかけられれば、被害は甚大だ。日本国内でトランプに対する怨嗟の声が澎湃(ほうはい)と起こり、野党は鬼の首を取ったように矛先を安倍政権に向けるだろう。


ただまだ核ミサイルを保持していない現段階での北朝鮮攻撃は最後のチャンスとも言える。その場合も、北の反撃が出来ないように一挙に800カ所もの拠点を壊滅的に攻撃しない限り、日本がミサイル攻撃を受ける可能性がある。問題はそれを米国が出来るかどうかだ。


外交的にはカギを握る中国が、シリア攻撃を目の当たりにしてトランプに同調するかどうかだが、習近平はしたたかであろう。まるでキューバにソ連が核ミサイルを持ち込もうとした「キューバ危機」のような様相が北東アジアで展開されるかもしれない。その場合秋田での避難訓練が大都会でも行わなければならなくなる可能性がある。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年03月24日

◆理事長の信憑性には疑問山積だ

杉浦 正章



破れかぶれの「抱き合い心中」を狙う
 

自民党は偽証罪で籠池を告発せよ
 

裁判で「やっていない」という主張に対して「やった」という事実の証明をすることを悪魔の証明という。結論は完全否定は不可能であるとされる。籠池泰典が首相・安倍晋三をはじめ夫人昭恵や大阪府知事松井一郎を指さして疑惑があるかのような発言を繰り返しているが、これも完全否定は出来ない。それではどうするかだが便法を講ずることは出来る。安倍は「私や妻、事務所も含め、小学校の認可や国有地払い下げには一切関わっていない。関わっていたら首相も国会議員も辞める」と発言したが、これがいわば準悪魔の証明であろう。


松井もそれしか手はないと見えて「学園の理事長と2人で会ったとか、森友を優遇せえ、という指示をしていたら、辞めます」とまねをした。まるで辞めるの「二重奏」となった。しかし、今回の場合は証言の信憑性を否定することは可能だ。
 

まず「妻を辞める」というわけにもいかない昭恵はどうするかだ。悪魔の証明は出来なくても、悪魔の証明に「肉薄」することは可能だ。それは籠池の「空想性虚言症的な側面」(自民党幹部)を状況証拠から立証すればよい。虚言症は自己顕示欲の強い人間がなりやすいが、国会における証人喚問ではその自己顕示欲の塊のような籠池の性格が明らかになった。
 

まずその最大のものは天皇陛下すら自らの利得に結びつけようとする性癖だ。森友学園のホームページで籠池は「天皇陛下が森友学園を訪問された」と書いている。書かせたのかもしれないが責任者だから書いていると言ってもおかしくない。これを参院で追及された籠池は「私は知りませんでした。恐縮です」と釈明した。理事長である自らの責任を問われ、「お越しになっていらっしゃらないものをお越しになっていらっしゃるというのは事実に沿いませんので、それについて記載されているのであれば申し訳ないことだと思っております」と平謝りに徹した。


ここから三段論法ができる。三段論法とは「植物は生物である」の大前提から「松は植物である」の小前提を導き「故に松は生物である」に達する論法だ。籠池は「天皇が来たと嘘をついた」から「籠池は嘘つきである」を導き「故に昭恵は嘘をつかれて関わっていない」に到達できるのだ。
 

さらに籠池が嘘つきであるということの悪魔の証明を加えれば、森友学園の3つの建設契約書に到達する。籠池は国に23億8千万、大阪府に7億5千万、大阪空航運営会社に15億5千万円の契約書を3つ作った。国に最も高いものを提出したのは、明らかに多額の補助金を得るためであり、大阪府をもっとも低くしたのは自らの財務状況で建築可能であるとみせかけるためのものだろう。


これは国に対する有印私文書偽造の疑いが生じいてくる。簡単に言えば、国や自治体に対する詐欺行為である。詐欺罪で刑事告発可能ではないか。松井は業務妨害の疑いで刑事告発することを検討している。察知した籠池は証人喚問で「刑事訴追を受ける可能性があるので控えさせてもらう」という答弁を連発して、逃げまくった。
 

さらに新しい小学校が愛知県の進学校「 海陽中等教育学校」に推薦枠を設けることで合意したという話である。愛知の進学校は全く関与していないと全面否定している。これらの3大虚言からみれば、昭恵をめぐっても虚言をねつ造したことは十分考えられる。資金繰りの窮状からの脱出を考えた籠池は昭恵の携帯に電話して留守電状態だったため伝言を残した。昭恵付きの事務官谷査恵子はファクスで「大変恐縮ながら現状では希望に添うことは出来ません」と回答している。


まさに官房長官・菅義偉が言う「ゼロ回答」であった。財務省に谷が問い合わせた上での対応であったといわれるが、民進党の枝野幸男が鬼の首を取ったかのような追及をしても、これ以上の問題には発展しまい。


そもそも野党は9億6000万の土地が森友に1億3000万で売却されたという「大幅値引き」を問題視しているが、8億3000万はゴミ処理費用であり価格は適正だ。同じように隣接している国有地が豊中市にたったの2000万円で売り渡されている。豊中市が14億円をゴミ処理にかけたからだ。
 

籠池がなぜ政府・与党を大向こうに回して破れかぶれの「抱き合い心中」のような動きに出た背景だが、どうも安倍の国会答弁がきっかけらしい。安倍は2月24日の国会答弁で、「安倍晋三記念小学校」の名称について「絶対にやめてもらいたいと再三申し上げている」ことを明らかにしながらも、籠池を「非常にしつこい」と批判したのだ。籠池は証人喚問でこの「しつこい」にこだわっていた。逆恨みのようである。


また昭恵から「口止めとも取れるメールが届きました。あんなに開校を楽しみにしてくれていた、どうしてなのか割り切れない」と、恨み節をたらたらと述べた。メールの真否についても官邸は公表の用意があるとしており、早期に公表して疑いを晴らすべきだ。
 

ことの核心は教育者の風上にも置けないような人間が、安倍の力をフルに活用してその野望を成し遂げようとしたおこがましさにある。最初は教育者であり保守的であることから夫人が心を許した側面がないわけではないが、その行動は図々しく、首相の力を借りれば法を無視できると考えたフシが濃厚だ。


これに気付いた安倍や夫人が籠池との関係を断ち切ろうとしたのは、自然であり、全く正しい。証人喚問のやりとりをつぶさに検証したが、籠池の憶測や見当外れの恨み節が目立つばかりで、ロッキード事件の証人喚問でにじみ出たような“異臭”などは全然感じられなかった。


新聞テレビは籠池を全面的に信用してあたかも疑惑の発覚であるかのような報道に徹しているが、センセーショナリズムを慎むべきだ。野党は被害者である昭恵を証人喚問に呼ぼうとしているが、もういいかげんにした方がよい。極東情勢が一朝有事になりかねない時期に、大阪くんだりの馬鹿馬鹿しい事件に国会が振り回されているときかと言いたい。事件は事件として処理すればよい。


自民党はさっさと偽証罪で告発すべきであり、捜査当局も疑惑の解明に着手せよ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年03月23日

◆始まった野党・マスコミの“風評”戦術

〜テロ等準備罪法案〜

杉浦 正章
 


政府は広報態勢を整えよ
 
読売が「共謀罪とは別」と大見出しで報ずれば、朝日は「共謀罪全面対決へ」と真っ向から反対の方針を打ち出す。東京に至っては社説で“風評”を展開する。例によって民放のコメンテーターは「デモをしようとすれば取り締まられる」と“虚言”を弄(ろう)する。世論は真否取り混ぜ、真っ二つに割れる傾向だ。政府が閣議決定した「テロ等準備罪法案」は、14年の秘密保護法や15年の安保法制の時と同様に、政府・自民党と風評を戦術とする反対勢力との一大決戦になろうとしている。


しかしNHKの世論調査では同法案を「必要とするもの」が45%で、「必要ない」の11%を大きく上回った。オリンピックに向けてのテロを国民の多くが危惧していることを物語る。首相・安倍晋三がこれをテーマに解散・総選挙を断行すれば、既に目一杯議席を取っている自民党だが、大幅に負けることはあるまい。しかし同調査は32%が「どちらとも言えない」としており、政府・自民党が「広報」のハンドリングを間違えると、反対が勢力を増し、拮抗する恐れがある。
 

風評は朝日の22日付け朝刊トップ記事から始まった。同紙は1面左に<おことわり>を掲載「政府が国会に提出した組織的犯罪処罰法改正案には、犯罪を計画段階で処罰する『共謀罪』の趣旨が盛り込まれており、朝日新聞はこれまでと同様、原則として『共謀罪』の表現を使います。」と宣言した。「『テロ等準備罪』という政府の呼称は、必要に応じて使用していきます。」としているが、おそらくカギ括弧でくくる要人の発言などは「テロ等準備在法案」を使うが、それ以外は「共謀罪」で通すつもりのようだ。過去3回廃案になった「共謀罪」の悪い印象を維持するための巧妙なるイメージ作戦であろう。


官房長官・菅義偉は「3年後の五輪・パラリンピック開催に向け、テロを含む組織犯罪を未然に防止するため、万全の体制を整える必要がある。かつての共謀罪とは明らかに違う別物だ」と定義づけている。しかし、日本を代表する大新聞が、公正中立の報道の社是をかなぐり捨てるかのように法案の名前をあえてねじ曲げる報道は、あまりにも恣意的であり、自らが「風評バラマキ作戦」の先頭に立つ意志表示のようである。
 

法案の内容を意図的にねじ曲げる報道も民放を中心に始まった。東京新聞に至っては社説で「盗みを働こうと企(たくら)む二人組がいたとしよう。現場を下見に行ったとしても、良心が働いて断念する、そんなことはいくらでもある。共謀罪が恐ろしいのは、話し合い合意するだけで罰せられることだ。この二人組の場合は共謀し、下見をした段階で処罰される。そんな法案なのだ。」と書いているが、全くの事実誤認だ。


テロ等準備罪法案は確かに凶悪犯罪の準備段階で逮捕する場合を想定しているが、対象は「テロリズム集団とその他の組織犯罪集団の活動」と限定している。「その他の組織犯罪集団」とは「暴力団。麻薬密売組織。振り込め詐欺など反社会的組織」であり、こそ泥の計画まで織り込んではいない。だいいち日本の警察は忙しくて未遂のこそ泥など捕まえている余裕などない。まさに秘密保護法の際にも同様だった。「戦前の特別高等警察がやったように飲み屋で秘密情報を話しただけでしょっ引かれる」と朝日は流布したが、いまだに「飲み屋からしょっ引かれた」例は皆無だ。安保法制では「やがては徴兵制が敷かれる」と野党は主張したが、いまだに「徴兵のちょの字」も聞こえてこない。デモの参加が逮捕につながるなどということはあり得ない。
 

朝日は「日本の刑法は行った犯罪を処罰するのが原則」と主張するが、凶悪犯罪は事前に取り締まることが可能だ。例えば殺人に関していえば「殺人未遂罪」「殺人予備罪」が存在する。総じて反対論は、テロ対策が世界的な脅威の状況になっていることを無視している。かつての一国平和主義の「平和は天から降ってくる」時代ではないという認識に欠けている。日本でもオウムの地下鉄サリン事件を体験しているにもかかわらずだ。イスラム国(IS)が日本をテロの対象として名指ししている事など、どこ吹く風と忘れてしまっている。オバマやトランプが述べているように、世界的には「対テロ戦争」の時代であるという認識に欠けている。
 

たとえば同じくオリンピックを成し遂げたブラジルは犯罪の準備段階での捜査を可能とする法律を整備した結果、ISに共鳴し、テロの準備を進めていた集団を通信傍受などで内偵を進めることができ、摘発した。テロを企てた疑いで同国籍の十数人を逮捕し、オリンピック・テロ等準備罪法案で未然に防いだのだ。ISが東京オリンピックをターゲットにすることは十分予想される。


9.11の際のように既に先行してテロ実行犯を潜入させているかもしれない。それにもかかわらずノーテンキに日本にテロはないから法案は必要ないという論理が成り立つからこの国は面白い。それでは今回の法案が成立しなかったらどうなるかだが、ISは「しめた。日本はテロ天国だ」と手をたたいて喜ぶに違いない。
 

毎日が「処罰の規定は人の内心に踏み込む」と反対しているように「内心」論議も活発になろうとしている。憲法第19条の「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」は、内心の精神活動を外部に表明する自由も保障しているとする学説に基づいた反対である。政治的な多数の意思によって介入すべきでない個人の心の領域を保障すべきであるとの思想だ。思っただけで、逮捕されると危惧する説だが、テロ等準備罪法案は思っただけで逮捕されない。あくまで準備行為があっての逮捕である。


対象はテロリストや暴力団であり、その「内心」に踏み込んでも問題はない。むしろ憲法13条の国民の幸福追求の権利を阻害するテロリストの内心は排除されるべきものであり、ずかずかと踏み込んでも結構だ。
 

そのテロ等準備罪法案が将来の全体主義国家への道を開くという議論も甘ったれている。言論や思想の自由とは基本的にはマスコミと政権の対峙の中から戦い取るものであり、天から与えられるものでもない。テロ等準備罪法案があろうがなかろうがこの構図には変わりはない。法案があろうがなかろうが常時対峙して、ウオッチすべきである。


それに今回の法案を見れば、とてもこれにより日本が全体主義に陥り、言論活動や思想の自由が抑圧される性格のものとは思えない。政府・自民党はちゅうちょなく法案の今国会成立を実現すべきだ。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年03月22日

◆小池は豊洲移転を早期に決断せよ

杉浦 正章
 


自業自得の「進むも地獄退くも地獄」
 

まさに「大山鳴動して小池一匹」の様相だ。大局が分からない都議会野党と都庁詰めメディアが重箱の隅を突っついているから事態は混迷する。大騒ぎしている築地市場の移転問題は、政治的には全て小池百合子の「延期ごり押し」に起因すると考えればよい。議会にも諮らない独断政治の失敗だ。ここにきて小池は新聞から社説で早期決断を迫られている。


しかし、読売も毎日も社説ではどちらを選択すべきかは明言しないという無責任さだ。筆者は、豊洲移転しか方策は無いと思う。石原慎太郎には様々な問題があるが、百条委員会における証言を詳細に分析する限り石原が正しい。物事を政局がらみで判断する小池には、決着を都議選まで引き延ばして自らの候補を有利にしようという邪心すら垣間見える。さらに数ヶ月にわたる血税垂れ流し路線だ。小池ポピュリズムは行き詰まった。一刻も早く豊洲移転に踏み切るべきだ。
 

移転問題で小池が置かれた立場は、一見自民党を攻めているように見えるが逆だ。政治的には「進むも地獄退くも地獄」の事態に直面している。なぜかといえば豊洲移転へと「進む」場合は、なんで決断を延期したかの責任を問われるからだ。おまけに延期で獲得した都民の支持を大きく損なう。延期のために都民の血税を膨大に垂れ流しした責任も当然問われる。


逆に築地再構築に「退く」場合には、豊洲建設にかかった6000億もの費用が水疱と帰することに加えて、築地の更地化と建設にかかる費用は6000億を大幅に上回るだろう。1兆円を優に超える血税を都民に回してよいのか。当選以来「都民ファースト」という衆愚政治を展開してきたツケが眼前にあるのだ。
 

豊洲市場は6000億をかけて完成した。業者は冷蔵庫や、設備費に既に300億円を投入している。小池の延期により今後都は業者への補償費として50億円が必要である。加えて建物の警備管理費として1日500万円が毎日すっ飛んでゆく。当面は独立採算の市場会計から支払うが、長引けば都民の血税の垂れ流しとなるのは火を見るより明らかであり、石原が「何で民事訴訟が起きないのか不思議だ」と述べるのはもっともだ。


一方で築地の場合は、開放型の市場であり、大きなドブネズミが夜な夜な出没しているばかりではなく、カラスやスズメなど野鳥はフンをするは、建物は老朽化して、放置すればアスベストがむき出しになるはの状況だ。大地震にも致命的な大打撃を被る恐れが濃厚だ。3階建て以上の建物16棟のうち6棟が強度不足で倒れるとみられている。
 

こうした事態を背景にして百条委では石原が、地上と地下を分離して考えるとの立場を表明した。「小池都知事は安心と安全がこんがらがっている。地下水を地上で使うわけがない。東京の水道は世界最高の水であり、小池知事の主張は風評の前に科学の真実が負ける印象だ」と食いついたのだ。確かに小池は築地について「築地はコンクリートやアスファルトに覆われているから安全だ」と致命的な無知をさらけ出している。


言うまでもなく豊洲もコンクリートとアスファルトで覆われている。まさに小池は築地と豊洲にダブルスタンダードを当てはめようとしているのであり、無理筋の話だ。加えて築地にはコンクリートやアスファルトにひびが入り、じくじくと水分が表面に出でてきている箇所も多く、安全であるとは決して言えない。最近はヒ素まで検出されている。


一方豊洲は近代的な強化コンクリートやアスファルトで30センチから50センチもの層があり、外に有害物質が出ようにも出られない構造である。それでも心配なら現代科学を駆使してさらなる封じ込め策を講じればよい。
 

おまけに小池は「安心」というきわめて人間的な判断基準を錦の御旗に立てているが、これは確かに科学的ではない。そこいらのザーマス夫人が喜びそうな基準だが、これを基準にする限り小池は独善的な都政運営から脱却は出来ない。


都の方針では汚染された地下水は濾過して海に流すのであり、飲んだり、魚の洗浄に使うのは、石原のいうように世界で最もきれいな水道水なのである。専門家会議座長の平田健正が、地下水の汚染について「去年の4月以降に地下水をくみ取るシステムが動き出したため、汚染が出てきたのだろう。法的、科学的には安全基準を満たしている」と述べているが、この発言が一番信用できる。汚染が新たに出てきたのならやがては消える事もありうる。
 

こうみてくると結局豊洲しかあり得ない。石原に軍配が上がる。小池はまたまたポピュリズムにすがるしかない姿を露呈した。都議会を自派に有利な構造にして、国政進出を狙うその姿は、都民の血税などはどうでもよく、政策そっちのけでひたすら自らの野望を達成するための政治に専念する姿を鮮明にさせている。決断を7月の都議選以降にして、小池が擁立する候補を有利にさせようとしているとの見方があるが、これこそ究極のポピュリズムであり、唾棄すべきことでなくて何であろうか。


また小池周辺が住民投票による決着を画策しているという説がある。この場合の住民投票は、知事が自らの責任を放棄して、責任を都民に転嫁する政治だ。これこそ“衆愚”に頼る小池政治の姿そのものだ。小池ポピュリズム対策としては、地下水汚濁の封じ込めを現代科学を駆使して徹底的に推進する。豊洲の地上の洗浄水などを常時モニタリング調査して、数値に異常があればサイレンを鳴らすような措置を取ればよい。


それでもザーマス奥さんが「嫌だ」というなら、豊洲のおサカナをお買い上げにならなければよい。庶民は安くなって助かる。繰り返すが小池は豊洲を早期に決断すべきだ。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年03月16日

◆野党は「稲田追及」より「極東危機」に目を向けよ

杉浦 正章
 


政界波及の疑獄などあり得ない
 

北朝鮮がミサイルを近海に打ち込み、米国が軍事行動を取るかもしれないと言う緊迫した極東情勢をそっちのけで、野党は大阪くんだりの詐欺めいた話を国会で取り上げ、閣僚の思い違いを鬼の首を取ったように追及し、辞任を迫っている。そんな時かと言いたい。


そもそも公文書偽造や公金横領詐欺で刑事告発されそうな事件は、捜査当局に委ねるべきであり、いちいち国会で取り上げる問題ではない。野党は根本的に時局認識が間違っている。それとも外交安保問題では首相・安倍晋三に歯が立たないからなのだろうか。一昔前の社会党が大出俊、岡田春夫、羽生三七などそうそうたる外交安保の論客を予算委に登場させれば、閣僚席に緊張が走ったものだ。いまは閣僚も楽でいい。
 

そもそも共産、民進両党主導の追及は、朝日がゴミネタでも何でもトップにもって来て、民放ニュース番組がこれを請け売りにする効果を意識したものであり、明らかに意図的ではないにしても連動している。教育者というより、政界仕掛け人の言動に踊り、あたかも「政治の大きな力」が作用した疑獄事件に発展させようと懸命になっている姿は報道機関としての客観性を忘れており、見苦しい。


野党と朝日は当初は首相・安倍晋三と昭恵夫人を狙い撃ちにしたが、安倍が「私や妻が関わっていれば辞任する」と究極の打ち消しをしたことから、無理と判断したのか方向転換。今度は、答弁技術に難のある防衛相・稲田朋美に矛先を向けた。
 

野党は稲田に対してはその“記憶喪失症”的な性癖を突くことに専念している。@13年前の籠池をめぐる裁判に稲田が出廷していたこと忘れているA1万2千円の献金を忘れているB2年前にパーティーで会ったのに忘れているーの“三大忘却”を追及、稲田と籠池の関係を浮き彫りにしようとしている。


しかし@は夫の代理で出席したものであり、弁護士には出廷してもほとんど発言もしないケースがよくある。Aは広く浅くの政治献金の原則を守っているだけのことであり、いちいち子供のこづかい程度の、たったの1万2千円の献金者を覚えている方がおかしい。Bの2年前に会ったと言うが、パーティーですれ違った程度のことであり、これも覚えている方がおかしい。


籠池は夫婦そろって稲田に何か恨みでもあるらしく、破れかぶれの陥れ発言をマスコミに繰り返しているが、“三大忘却”は愚にも付かない話ばかりであり、とても疑獄として本質に迫れるようなものではない。従って野党やマスコミが「虚偽答弁」と大げさに迫る問題ではない。あえて言えば「うっかり答弁」「ど忘れ答弁」の類いだ。
 

稲田の答弁のはしばしから推理するしかないが15日も民進党の杉尾秀哉が、まるで鬼の首でも取ったかのように籠池夫人の「2年前に夫と会った」という発言を取り上げた。これに対して稲田は「奥様らしいと思う」と答えたが、その裏には(でたらめを抜かしやがって)という、意味が込められている。映画でよくあるうわさに生きる長屋の「おかみさん」的な、無責任発言だと言いたいのだろう。


稲田発言が特異に感じたのは「10年前に大変失礼なことをされたので関係を絶っている」の部分だが、その「失礼なこと」の中身はともかくとして、言わずもがなと思える発言をしたのはなぜか。狙いは「関係を絶つ」を強調するところにあり、国会議員になってからは何ら接触がないことを明確にしたかったのであろう。
 

一連の稲田発言に対して感ずるのは、答弁が下手なのに加えて、思い違えが激しいことだ。陸上自衛隊が参加する南スーダンの国連平和維持活動(PKO)では、派遣部隊の日報をめぐる大臣報告が約1カ月もかかり、省内を掌握していない状況が浮き彫りになった。この答弁もちぐはぐで、不必要に野党の攻撃を集中させた。


稲田は安倍の秘蔵っ子だ。安倍が副幹事長の頃稲田のスピーチを聞いて、スカウトして12年前に初当選させた。安倍とともに靖国参拝をしたこともある。14年に政調会長に抜擢、今度は閣僚にした。安倍はかつて「将来の総理候補として頑張ってもらいたい」と激励したことすらある。
 

自民党の女性総理候補は小池百合子、野田聖子、稲田と続いたが、小池はポピュリズム一辺倒で脱落。野田は焦りすぎて失敗。今度は稲田が国会答弁の迷走で「とても無理」の印象を与えてしまった。そもそも、日本の女は、まだまだ一国のリーダーになるほど政治的に成長していないことをいみじくも露呈させてしまった。長年政治記者をやっていると政治家を見る目だけは肥えてくるが、稲田は無理だ。


しかし野党が居丈高になって辞任を求めるようなケースではあるまい。また辞任する必要もない。野党は、辞任という「無理筋」を追及する前に、目を世界情勢に向けよ。こんなことを言っても八百屋でタコくれというようなものか。ちなみに安倍の内閣支持率は野党とマスコミあげての追及にもかかわらず大きな変化はない。50%以上を維持している。日本国民のことの真否を見分ける判断力も相当なものだ。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年03月15日

◆公明の“裏切り”にうろたえるばかりー自民執行部

杉浦 正章
 


露呈し始めた「小池風評劇場」の弱点
 

「公明がなくても自民は地力を発揮して勝ち抜く」と自民党幹事長二階俊博が気勢を上げているが、なにやらむなしく響く。俳句でいえば「春寒(はるざむ)」だ。問われるのは公明党のまぎれもない“裏切り”が分かっていながら、なすすべなく放置した二階や都連会長下村博文の“非力”にあるのではないか。都議選を「勝ち抜く」事などとても無理だ。まず大敗だろう。


公明党執行部は、「中央政治とは別」としているが、背景には安保法制などで公明党を無視するがごとく突っ走った首相・安倍晋三に対する、“意趣返し”の意味が含まれているに違いない。上から下まで鉄の団結を誇る公明党の都議会が独走することはあり得ない。上が陰で指図している構図だ。おりから小池百合子はメディアの社会部記者を味方に付け、当たらざるべき勢いだ。国政にも進出しそうな構えを見せている。しかし、その築地市場移転をめぐって「小池風評劇場」にも矛盾撞着が出始めた。
 

とにかく下村の優柔不断は“別格官幣大社”だ。公明が裏切りを浮上させてもなお「公明党に自主投票になるようお願いしていきたい」だそうだ。選挙対策委員長斉藤鉄夫から「既に決まった方針だ」と一蹴されてぐうの音も出ない。都議会における自民党の現有勢力56議席は半減しかねない状況だろう。自民党が手も足も出せないのは、全国における公明党票を意識してのことだろう。国政選挙での“弱み”を握られているのだ。
 

一方で公明党に“弱み”がないかといえば、ないわけではない。それは政権政党の“蜜の味”を知ってしまったことだ。政権政党であるかどうかは陳情1つとっても格段の違いが出てくる。その“弱み”を突く方策がないわけではない。人事で対応するのだ。安倍はこのような重要ポイントで裏切る政党に、閣僚ポストなどを振り分ける必要はなくなってきたのではないか。将来閣内不統一になりかねない事態だ。


せいぜい副大臣、政務次官程度で済ませるべきであろう。閣僚ポストなしなら公明党代表・山口那津男の責任を問われる問題になりかねない。まさに“弱み”を突くことが出来る。さらに加えて維新も連立に引き入れることも考えられる。維新の立ち位置は、安倍とも波長が合うし、公明よりもすっきりしており、入閣させれば新鮮味も出てくる。
 

他方、小池は自民党に籍を置いたまま、これまた「反党的裏切り」行為に出ようとしている。国政進出だ。小池は近く自らの希望の塾4000人から参加者を選んで「国政研究会」を立ち上げる。明らかに国政進出を目指すものであろう。これだけの行為を野放しにしておいて、自民党は「小池切り」に出る事が出来ないままだ。問題は国政に進出して、小池が最終的に狙うとされている「首相の座」を目指せるかということだ。


都民は民度が低いからあの薄気味悪い「流し目」にだまされても、民度が高く、一時的なブームに惑わされにくい道府県民がだまされることはないということだ。ブームがあるうちなら、かなりの数の国政政党に発展することは可能であろうが、あの維新ですら離合集散の末、現在衆院14、参院12の小党にとどまっている。一世を風びした新自由クラブなどは影も形もない。一時のブームはしょせんは化けの皮がはがれるのだ。
 

小池劇場も今が頂点だろう。その風評路線をいみじくも露呈させたのが14日の都議会予算委だ。答弁に大矛盾が生じたのだ。小池はかねてから築地の安全性について「コンクリートで覆われているから法令上の問題はない」と述べてきたが、都議会で「豊洲もコンクリートで覆われている」と追及を受けると、「安全性は確保されているが安心とは言えない」と答えたのだ。


同じく土壌がコンクリートで覆われた豊洲市場については法令上の安全性は確保されているとしながらも、消費者の信頼が得られていないことから安心だとは言えないとする認識を示したのだ。これは専門家が20年にわたる調査に基づいて築き上げた安全性を認めながら、「安心」というもっとも非科学的な言葉で逃げようとしていることにほかならない。


一方で大きなドブネズミが夜な夜な徘徊し、カラスがフンをまき散らす築地の安全性について小池は確信を持っているような口ぶりである。これはまさに自分がまき散らした豊洲は安心できないという風評にしがみついている姿を露呈したものであり、その背景に科学的な根拠など存在しない論理矛盾がある。本来この感覚的な認識は理性と意思によって制御されるべきものだが、「小池風評劇場」は、そんなことはどこ吹く風だ。都民の税金の無駄遣いなど知ったことではないのだろう。


まさに、都政などそっちのけで、逆に都政を政局に使おうという邪心が見え見えだ。自らをジャンヌダルクに例える小池だが、ジャンヌダルクは異端の罪で火刑場の灰と消えた。まさに小池は異端なのだ。
 

こうした公明の裏切りと、小池旋風なるものを一挙に打破できるのは早期解散しかあるまい。4月解散なら小池の国政進出準備はまだ整わない状況にあるし、会期末解散7月2日選挙なら都議会とのダブル選挙になって、公明と小池の選挙協力を打ち砕くことが可能だ。


安倍の支持率も依然高くチャンスではあるが、天皇の退位関連法案処理がネックとなる公算もある。異例だが選挙後の特別国会で処理できないことでもない。重要法案の審議・採決のために特別国会の会期を長く定める場合もある。安倍は伝家の宝刀を抜くべきだが、抜けるかどうかは、まだ見通せない。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年03月14日

◆韓国が羅針盤なしの漂流を始めた

杉浦 正章



“左傾化大統領”が誕生すればさらなる混迷も
 

一部に軍事クーデター説
 

国家にも踏んだり蹴ったりの「女(め)どき」があるのだろう。今の韓国がそれだ。韓国は自らが招いていることとはいえ、羅針盤なしの漂流段階に入った。取り巻く環境がそうさせている。中国は戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)配備をめぐって露骨な経済制裁を仕掛け、北朝鮮は狂ったかのごとくミサイルを打ち上げる。次期大統領の最有力候補は、親北朝鮮で有名であり、THAAD配備や対日軍事情報包括的保全協定(GSOMIA)に真っ向から反対だ。当選して公約を実行すれば日米との離反へと舵を切りかねない。


そうすれば極東での完全孤立だ。ささやかれ始めたのは3度目の軍事クーデター説だ。まだ海のものとも山のものともつかないが、これまでも政権の左傾化時にはちょくちょく台頭しているが今回もその例に漏れない。
 

朴槿恵の就任早々は習近平が訪韓するは、自らが訪中して反日軍事パレードに参列するはの蜜月ぶりを誇示していたものだが、その後、路線を修正して、日韓慰安婦合意などに至った。しかし米国のTHAAD配備は中韓関係を180度暗転させた。中国の環球時報はその実態を一面コラムで見事に描いている。「韓国との長期的な対立に入る準備を」と題した記事は「我々の報復は敵軍1000人を殺し、自軍800人を失うやり方ではなく、韓国だけに大きな損害を与える分野で中国の消費者が主力軍となり、韓国を本当に苦しめる方式でなければならない」と主張しているのだ。


そのやり方は韓国商品を買わず、韓国旅行に出かけず、韓国ドラマを見るなと国民に求めるものだ。真綿で首をじわじわと締め付けているのだ。まさに共産党一党独裁国家でなければできない制裁だ。韓国の対中輸出額は約14兆円に上り、対米輸出の2倍、対日輸出額の約5倍となっている。16年に韓国を訪れた外国人観光客は約1700万人で、うち中国人はほぼ半分に当たる約800万人にも上る。旅行客が激減し、輸出にセーブをかけられては、ただでさえ悪化の一途をたどる韓国経済への影響は甚大とみなければなるまい。
 

このため韓国紙の多くが12年の尖閣漁船衝突事件後に中国がレアアース(希土類)の輸出を規制した例を挙げ、日本が沈着な対応で乗り切ったことを教訓にすべきだとしている。日本が対中投資を激減させるなど対抗措置をとったことなどを指している。


ハンギョレ新聞は「韓国は日本のように中国の攻勢を耐え忍ぶ体力と反撃手段に欠け、そして外交力が相対的に弱い」と悲観論を述べている。しかし右寄りの東亜日報は「中国のTHAAD報復に屈服すれば国じゃない」との社説で「中国がカネの力で韓米同盟を揺さぶることができると考えるなら錯覚だ。中国がTHAAD問題で韓国をテストしようとすれば、中国も代価を払わなければならないだろう」と開き直っている。


こうして朴槿恵の作った中韓蜜月ムードは、韓国が袖にされてあえなく終わったが、問題は5月上旬までに行われる大統領選挙で親北朝鮮のばりばりである「共に民主党」前代表文在寅が大統領に選ばれそうなことである。世論調査ではダントツの30%を獲得しており、「共に民主党」が候補を統一すれば圧倒的な強みを見せるとみられている。


これに対して保守党のていたらくは今のところ見る影もない状況だ。そこで文在寅がこれまでに唱えてきた選挙公約を見れば驚くほどの反米、反日路線であることが分かる。韓国紙などによると、まず米国が配備を進めているTHAADに関しては、「朴槿恵大統領の職務が停止している中でTHAAD配備を強行することは適切でない」と反対。GSOMIAについても、「協定を通じてどのような情報が共有されるかを確認し、再検討する必要がある」と主張している。また一昨年末の慰安婦合意について「正当性は認めにくい」とし、「日本の法的責任と謝罪を明確にするため、新たな協議が必要だ」と主張している。


文在寅に関しては盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代、国連北朝鮮人権決議案について北朝鮮に意見を求めた「内通」疑惑が浮上したのは有名だ。これに加えて文在寅は「当選したら米国よりもまず北に行く」とも発言している。
 

まるで朝鮮半島を昔懐かしいことばである「赤化統一」しかねない時代錯誤の言動である。反米、反日を絵に描いたような人物だが、問題は実際に行動に移せるかどうかだ。自らの路線を進めるとすればまず中国との“和解”が必要だが、中国は対米関係を考慮して下手な手出しはしない可能性が強い。あまりにおいしい話には返って乗りにくいものだ。


おまけにただでさえ手を焼いている北の金正恩がますます増長して、統一への主導権を握りかねない。もちろん在韓米軍や米国からの圧力も相当のものが予想される。その路線が意味するものは韓国が極東において完全に孤立する亡国路線であることでもある。従って実行に移すことは困難とみられるが、陰に陽に北との融和策に出る可能性は否定出来まい。
 

こうしたなかで保守運動の指導者でジャーナリストの趙甲済が、自身が主宰するネットメディアで「クーデター」の可能性にしばしば言及するようになったという。「民衆革命は必ず反応を呼ぶ。4・19学生革命は5・16軍事革命の原因となった。」といった具合だ。


韓国には過去に2度のクーデターの歴史がある。最初は大統領朴正煕が少将時代の1961年に主導した5・16軍事クーデター。二度目は朴が1979年に暗殺され、政治空白が生じたとき、北の脅威や安全保障を理由に陸士11期卒の全斗煥国軍保安司令官らが決起して戒厳令を敷き、民主化運動の『ソウルの春』をつぶし、1980年に軍政を敷いた例だ。3度目の正直が起きるとすれば後者の例に似ているが、こればかりはまだ眉唾物だ。


こうして韓国は国論の分裂と、激動期に指導者がいないために政治の空白が生じ、対外政策で身動きがとれない状況に立ち至っている。朴槿恵を退陣に至らしめた「広場民主主義」の危うさを感じざるを得ない。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)