2016年06月30日

◆都知事候補は安倍が出ないとまとまらない

杉浦正章

官邸も自民も小池は総スカン
 

「せこい知事が辞めてせこい女が手を挙げた」と自民党幹部に嘆かれるようでは小池百合子も出はなを折られる。「せこい」もそうだが「嫌な女」という感じがする。だいたい「崖から飛び降りる覚悟」といわれても、年が分かるような表現に同情するメディアはない。


小池の立候補の狙いはメディアが湧くと誤算したところにあると見たが、おおむね新聞の報道ぶりは狙いとは逆に好意的ではない。第一に都知事の顔をしていない。世界最大級の都市の顔としてはもう少し締まって、きりりとしていないといけないが、井戸端会議で通行人の邪魔をしているおばさんのようではいけない。客観的に自分がどの程度の人物かが分かるのが良い政治家であるが、小池は分かっていない。


報道が好意的でないのは紙面作りにも現れている。30日の朝日も読売も一面や政治面でなく社会面処理だ。小池の名前の見出しも小さい。なぜマスコミの評判が悪いかと言えば出馬表明が見え見えだからだ。小池は自民党の選考で本命である前総務事務次官・桜井俊の名前が消えたと判断、「そうとなれば自分しかない」と思ったのだ。このタイミングを外すとチャンスがないと思ったに違いない。


だから記者会見も唐突であり、都連会長の石原伸晃への連絡もない。事前に立候補するらしいという情報を入手した石原は、小池に電話をかけたが居留守を使って電話に出なかった。わずかに出馬表明5分前に都連幹部の衆院議員・平沢勝栄に「これから記者会見で出馬します」と通告しただけだ。この事実は、いかに小池が都連から無視されていたかの裏返しでもある。
 

もちろん会見では都政へのビジョンを語るわけでもなく、唯一目立った発言が次回の都知事選がオリンピックにぶつかることを理由に「任期を3年半にする」と述べた事だ。しかし今期の都知事はまさにオリンピックをやるための都知事であり、9割方準備が完了した段階で「辞任」の選択はない。むしろ知事職を継続して責務を果たそうとするのが最重要ポイントであるはずだ。


これを見誤るようでは、都知事候補としてまず失格と言わざるを得まい。自民党内で人気が沸かないのはかつての小沢一郎側近という経歴もある。とにかくすさまじいほど政党を転々としている。最初は細川護煕の日本新党、次に新進党で小沢にすり寄り、自由党分裂で小沢と決別、保守党を経て自民党という経歴。まるで歌謡曲「流れの旅路」である。だから自民党内には全く信用がない。


したがって政府・与党は苦り切っている。官房副長官・萩生田光一が「都連に何の相談もなく出馬表明をすることには違和感を覚える」と発言したが、「違和感」とはぎりぎりに抑えた表現であり、相当な憤りがあることを物語っている。首相・安倍晋三も内心では怒り心頭に発していいるらしい。したがって官邸からは「小池は300%ない」といった声が聞こえる。小池が踏み切った最大の理由は桜井の不出馬にあるが、桜井は本当に完全に消えたのだろうか。まだ手段があるような気がする。それは安倍本人が裏で打診していない事に尽きる。


官僚が首相から頼まれればまず「ノー」とは言いにくい。表に出るときは手打ちの合意会談だが、裏で説得出来るのは安倍しかいまい。29日は石原伸晃が直接説得を試みたが、ネガティブであったようだ。しかし朝日によると「都連関係者は『固辞されたというわけでもないようだ』と漏らしている」という。まだ完全にあきらめきってはいないようだ。桜井が出馬となれば、小池の出馬もすっ飛ぶだろう。“空き巣狙い”ができなくなるからだ。


一方で最強と言えた蓮舫に逃げられた民進党も、これはという候補はなく、混沌としている。都連が有力候補としたのは前鳥取県知事の片山善博だが、本人は否定している。反安倍の評論でコメンテーターとして目立つが、自公優勢の都議会を思えば本人は知事孤立へと思いが到るのだろう。都連は党内から擁立する場合の候補として江田憲司、長島昭久、柿沢未途、海江田万里の名前を発表したが、いずれもカリスマ性に乏しく、「勝つ候補」にはなりにくいだろう。元日本弁護士連合会長・宇都宮健児も本人にはやる気があるが野党4党の共闘だと難しいとみられている。
 

立候補すれば蓮舫なき後の知事選で最強の集票力があるのが前大阪市長・橋下徹だ。本人は「はっきり言いますが出ません」とネットで宣言しているが、出ないと言って出るのが橋下。このケースも殿・安倍のお出ましが必用だ。盟友関係にある安倍か官房長官・菅義偉が説得すれば動くかも知れない。桜井も橋下も殿の下知を待っているのかも知れない。裏で動くべきだ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年06月29日

◆「人殺し予算」が民共共闘を直撃

杉浦 正章




「100万票減」と公明代表


昔反党行為を犯した極左政党の党員が、まるで執行部を前にして懺悔をするかのようであった。「人を殺すための予算」発言で政策委員長を更迭されたあとの藤野保史は「党の方針とは異なる」「党の方針とは全く違う趣旨」と記者会見で繰り返した。


しかし防衛費を「人殺し予算」と断定した未曾有の大失言は、中国のことわざ「一言既出,驷马难追」(一言口に出せば,四頭立ての馬車でも追いつけない)そのものだ。あっという間に参院選野党共闘を直撃、「比例票では既に100万票減らした」(山口那津男)という惨状となった。首相・安倍晋三を始め自公は千載一遇のチャンス到来とばかりに残る2週間共産党と、同党と共闘する民進党などに照準を合わせて攻撃を続ける。
 

これまで発言を黙殺してきた朝日も、さすがに辞任劇ともなれば報道せざるを得なくなったようだ。4面ながら報じている。日曜のNHKの討論番組を見ていて気付いたのは、藤野発言に対して即座に「それは言い過ぎだ」と反応したのは自民党政調会長・稲田朋美。公明やおおさかもこれに追随したが、民進党政調会長・山尾志桜里は無反応。意図的沈黙というよりどう反応して良いか分からないかの様であった。


政治家としての熟練度の違いを見せた。山尾にしてみれば何よりも大切な共闘相手であり、批判すれば共闘にひびが入ると判断したのかもしれない。その共闘相手共産党が、さすがに藤野を切り捨てざるを得なかった。
 

委員長・志位和夫ら幹部は、当初は発言を取り消せば済むと考えたのだろう。26日夕方になって藤野に取り消させたが、まさに発言は燎原の火のごとく広がり手がつけられないような様相となった。それもそうだろう、共産党は戦後各種“闘争”でたびたび殺人事件を起こしているが、自衛隊は発足以来1人も他国の人命を奪っていない。


おまけに東日本大震災や熊本地震では、自衛隊がなければ多くの尊い人命が失われていた。熊本の病院では自衛隊の給水継続により350人の人工透析患者を救ったという。熊本選挙区では民進党幹部から「まるで民共共闘を殺す発言だ」と悲鳴が上がるほどだ。少なくとも熊本では統一候補の当選はあり得なくなった。
 

志位としても藤野を更迭せざるを得ない立場に追い込まれたのだ。藤野に辞任会見をさせた志位は「党の方針ではないと強調せよ」と命じたに違いない。ところが「人を殺すための予算」発言は共産党の「本音」に極めて忠実に沿ったものであることは明白だ。第一に似ているのは共産党が好きなレッテル貼りだ。安保法制を「戦争法案」と決めつけ、同法成立を「徴兵制に道」と断定する“手口”にそっくりではないか。加えて自衛隊を憲法9条違反の違憲として解消する党是も変更はない。
 

共産党は大矛盾を抱えている。自衛隊解消の党是について志位自身は記者会見で「日本を取り巻く国際環境が平和的な成熟が出来て、国民みんなが自衛隊はなくて大丈夫だという圧倒的多数の合意が熟したところで9条全面実施の手続き、すなわち自衛隊の解消に向かう」と発言している。


つまりこの地球上に未来永劫(えいごう)実現しないユートピアが出来て初めて自衛隊を解消するという方向だ。戦後長期にわたって維持してきた自衛隊解消の方針を三百代言の論法を駆使して、「国民連合政府」実現のため事実上転換したのだ。それにもかかわらず党是はそのままだ。これが矛盾出なくて何であろうか。
 

その機微を理解しない藤野は、過去に勉強したとおり党是に忠実に自衛隊を違憲の組織と判断し、国防上の役割を否定して「人を殺すための予算」発言をしてしまったのだ。こうして民進党にとっては共産党との共闘がプラスかマイナスか分からないような状況になってきた。


今後政府・与党は、「人殺し予算」発言を最後の最後まで選挙戦に使い続けるだろう。民進党内も右派が前原誠司のように「自衛隊は専守防衛で極めて重要な役割を果たしている。極めて悪質な発言だ」と真っ向から批判に出ている。前原としてはもともと共産党との共闘に批判的であり、「それ見たことか」という思いが強い。
 

こうして民進党は選挙中に、再び遠心力までが生じ始めたのだ。苦し紛れか代表・岡田克也は「地元の三重選挙区で敗れた場合」に辞任する意向を表明したが、これは党が惨敗しても三重が残れば辞めないという布石のように聞こえ、哀れである。いよいよ改選45議席が15議席以上減る流れが現実味を帯び始めている。共産党との共闘という「毒食った報い」で民進党は自ら墓穴を掘ったとしか考えられない状況である。


おおさか維新の会代表の松井一郎が「共産党は少しずつ化けの皮がはがれてきている。共産党と組むということはそういう考え方で一致するということだ」と述べ、「人殺し予算」発言を批判。共産党は民進党にとって童話の「おんぶお化け」になりつつあり、これから逃れることは選挙中は不可能だろう。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年06月28日

◆離脱ショックはトランプを不利にする

杉浦 正章



反グローバリズムに頂門の一針


焦点は、英国の「衆愚の選択」が米国に波及してトランプを勢いづけるかどうかだ。半可通のテレビ・コメンテーターらは「トランプ有利」と反応したが、離脱ショックに加えてトランプショックを受けたら世界は紛れもなくカオスに突入する。しかし米国民の選択はイギリスショックを奇貨とし、反省してクリントンに向かっているかのようである。


一方、衆愚による選択を英国の政治がどう取り繕うかと言えば、まず時間をかけるだろう。来年どころか5年先になっても最終決着はしないと思えば良い。離脱は「方向」であって「決定」ではないのだ。その間事態は「離脱」から「離脱撤回」の間を行きつ戻りつして、数々の弥縫策も浮上しては消えるだろう。日本は慌てふためくことはない。構造的な円高になれば「新アベノミクス」で対処するだけだ。
 

歴史の審判などを悠長に待つ必要はない。すぐに分かる。鳥瞰図で見れば、まずすべての元凶は議会制民主主義の国イギリスの首相・キャメロンの大誤算にある。議会制民主主義つまり間接民主主義を否定して国民投票という直接民主主義の愚かな選択をしてしまった。EU離脱などという国家の命運を左右する問題は、官僚が積み上げ、政治が判断を下すという議会主義の鉄則に委ねるべきであった。


それを大衆の判断に委ねた結果、判断は大英帝国の復活などと言うとてつもない空想的感情論まで生じて僅差で勝利をおさめてしまったのだ。その感情論の衆愚が後悔し始めたと聞くが、後悔は先に立たず。その愚かさは二乗しても足りない。
 

背景には世界を覆い始めた反グローバリズムの独善に向かいかねない潮流がある。第2次大戦後に世界がようやく培ってきた、国連やEUなどにより戦争を未然に防ぐという超国家主義という大理念を、一国繁栄主義で崩そうとするエゴイズムの台頭である。その先例がまさに英国ショックとなって現れたのであり、これはヨーロッパ各国に伝搬し、米国にも波及する可能性がああるものだ。将来、米国史上愚かなる大統領候補の筆頭にあげられるであろうトランプは、この英国民の選択に小躍りした。


「イギリスの国民投票と、私の選挙戦は、実によく似ている。人々は自分の国を取り戻したいのだ。国民は国境を求めている。どこからやって来たのかもわからない人々を自分の国に受け入れたいと思わないだろう」と発言したのだ。反移民政策、人種差別発言に象徴される自らの主張がイギリスで実現したと喜んでいるのだが、果たして米国民の大勢に波及するだろうか。
 

筆者は逆だと思う。米国民にとってイギリスショックは反面教師となったのだ。今後英国民が味わうであろう英国経済の停滞、ロンドン金融市場の低迷、国論の分裂、国家の分裂などの“地獄の辛酸”がトランプ支持の米国民を我に返らせるのだ。大統領選挙までの4か月はこれでもかと言うほど、英国民の選択の過ちが、米国民に伝わり続けるのだ。


既にその兆候は現れている。これまでクリントンとの間で拮抗(きっこう)していた支持率が、クリントン有利に展開し始めたのだ。アメリカのABCテレビとワシントン・ポストが26日に発表した世論調査にると、民主党の指名獲得を確実にしたクリントンの支持率は、先月よりも7ポイント増えて51%、共和党の指名獲得を確実にしたトランプの支持率は7ポイント減り39%となった。


さらに、66%の人がトランプはイスラム教徒や女性などに対して偏見があると答えたほか、トランプが大統領に必要な資質がないと答えた人は、これまでで最も高い64%に上った。明らかに英国ショックはトランプに今後もマイナスに作用し続け、負の選択ではあるがクリントンを優位に立たせるだろう。焦ったトランプは選挙参謀をクビにしている。
 

今後英国とEUの交渉は長引くだろう。離脱はリスボン条約によって通知があって初めて開始され、それ以後2年間をかけて協議が続く。その通知は英国内の事情によっていくらでも遅らせる事が可能だ。紛れもなくEUの危機が続くことになるが、「早期に手続きを進めるべき」とするEU内の空気に、各国指導者を抜きん出て見事な発言が目立つのがドイツ首相・メルケルだ。


「急ぐつもりはない」「短期間に結論を得ようとは思わない」「ブレーキをかけるつもりもアクセルを踏むつもりもない。英国が考える時間を必用とすることは承知している」など、いずれも大局を見詰めた発言である。英国政府の置かれた立場を見抜いて、なお時間的な余裕を持たせようとする発言には、危機に際したリーダーの模範とすべきものがある。
 

日本政府の対応も、休日を利用して様々な沈静化策を打っており、世界中から注目された週明け東京株式市場も暴落どころか、350円の上げで終了した。初戦はまず国民の冷静な判断と、政府の対応の適切さを物語るものであった。


野党は民進党代表・岡田克也が「通貨の乱高下が景気破たんに拍車をかける。宴は終わった」と唱えれば、共産党委員長・志位和夫は「ショックに弱いアベノミクス路線は駄目」と専らアベノミクス批判のボリュームを上げている。しかしこういった事態をまるで予測したかのように首相・安倍晋三は消費増税再延期を実施し、サミットで世界経済の前途に警鐘を鳴らした。


野党はこれを、批判しまくった自らの立場を棚に上げての批判である。まさに何でも活用して批判をすればよいのが民共両党であり、視野狭窄(きょうさく)であり、国民への訴求力はない。安倍は円安が恒常的になるかどうかを見定めて、円安を基盤としたアベノミクスを、円高対応型に切り替え、予定通り早期に臨時国会を召集して財政出動など景気対策を打ち出せば良い。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年06月24日

◆参院選、安倍自民圧勝の構図が濃厚に

杉浦 正章



改憲3分の2,自民単独過半数も視野 


安倍の任期延長論台頭へ


序盤の参院選情勢が24日各紙いっせいに出た。読売だけがびびったか慎重だが、朝日、日経、産経、毎日の4紙は「改憲勢力が3分の2議席をうかがう」で一致した。自民党単独過半数についても4紙はその可能性を強く示唆した。昔の世論調査はあたらなかったが、最近はあたるから、よほどの不祥事や失政、政権首脳の大失言などが生じない限り、このままの流れになる可能性が高い。


いずれにせよ自民党圧勝の構図が明らかになった。首相・安倍晋三が就任して以来国政選挙に3連勝。自民党総裁としては衆・参・衆・参と4連覇することになり、選挙の強さにおいて前代未聞の総裁となる。恐らく自民党内では次期衆院選を待たずに総裁の任期を6年から9年に延長、オリンピックも安倍首相でという動きが台頭する可能性がある。


まず主見出しから見れば一斉に改憲への可能性に見出しを取った。朝日が「改憲2/3うかがう」、毎日「改選勢力3分の2うかがう」、日経「自民が単独過半数に迫る・改憲勢力、3分の2うかがう」、産経「改憲勢力3分の2うかがう」でそろった。読売だけが「与党改選過半数の勢い」と、極めて当たり障りのない見出しを取った。読売は文中では「自民、公明、おおさか維新、こころの4党で改憲に必用な78議席をうかがう情勢となっている」としながら見出しに取らなかった。


次の焦点である自民が単独過半数につながる57議席に達するかどうかについては、朝日が「自民党は前回2013年の65議席には及ばないものの、選挙区で30議席後半、比例区では20議席近くの50議席後半となりそうだ」と57議席以上を強く示唆。日経は「自民党は改選50を上回り、非改選とあわせれば単独過半数となる57議席に迫る勢い」。毎日も「自民党の獲得議席は58以上になりそうで、非改選の65議席と合わせると27年ぶりの参院単独過半数となる勢いだ」。


産経も「自民党は単独過半数に必用な57議席を獲得しそうだ」としている。ところが読売だけは「自民党は1人区16の選挙区で優位に戦いを進めているのに加えて、比例区でも第1党の勢い。ただ非改選の65議席と合わせ、27年ぶりの単独過半数に回復に必用な57議席の獲得は微妙な情勢だ」と極めて慎重。


この読売の慎重姿勢は思慮深いのか、洞察力に欠けるのか分からないが、全般的に言えば紙面に弾みがなく、読売センセーショナリズムが消えたようでちょっと寂しい。深い読みが背景にあってあたればたいしたものだが、あたらなければ社内でも問題になるだろう。小生の記事を愛読している読売OBも場合によっては怒るべきだ。


一方野党の選挙情勢については共通して共産の改選3議席からの躍進ぶりが目立つ。朝日が「共産は選挙区で2議席程度、比例区でも6議席程度獲得する見込み。選挙区では前回の13年に続き、東京で議席獲得の可能性がある」。読売は「選挙区で3議席を獲得する可能性が出ている。比例区を含めると13年参院選の8議席を上回る勢い」とした。


産経は「東京に加え、神奈川や千葉でも当選圏内につけている。比例代表も含めて2ケタをうかがう勢い」と一番多く読んでいる。日経は「改選3議席から大きく増やし、躍進した前回参院選の8を超える議席も視野」だ。共産党は勝てない1人区をほぼ捨てて民進支持に回ったが、複数区などで着実に勢力を伸ばし、ケタは違うが自民と同様に躍進の気配だ。自共決戦の様相を見せている。
 

一方、起死回生とばかりに共産党との統一候補を擁立した民進党は改選45議席には遠く及ばない様相だ。民進びいきの朝日は共闘が「一定の効果を示している」としながらも「民進は選挙区で19議席程度。比例区で11議席程度の計30議席ていどになりそう」と15議席減の可能性を予測。産経は「10議席以上減らす事ほぼ確実な情勢。改選4人区の神奈川や大阪でも議席を獲得できなくなる可能性がある」と分析している。


日経は「前回の17議席は上回る見通し。それでも改選45には届かない公算が大きく、30議席程度になる可能性がある」とやはり15議席程度減を予測。読売はこれまた「非改選の17議席は上回るものの、改選議席45の維持は難しい」と数の明示には慎重。毎日も「全体では改選議席を大きく割り込む見通し」にとどまった。民進党代表・岡田克也の辞任は避けられまい。


公明党は創価学会の支援で手堅く「選挙区で7人全員当選の可能性。比例区では前回と同じ7議席程度」(朝日)の線だろう。
 

総じて世論調査の結果は50%前後という高い内閣支持率を色濃く反映したものとなっており、浮動層・無党派層が自民党支持に回っていることを示している。安倍が勝敗ラインとして、与党で改選過半数の61議席を掲げたが、この勢いが続けば大きく越えて自民党が単独過半数を手中にする可能性が濃厚である。その場合でも公明との連立解消はないだろう。構造的に切っても切れない関係にあるからだ。


何と言ってもアベノミクスの成功が大きく作用している。野党の「アベノミクスは失敗」と批判する作戦は、有効求人倍率の好転、大企業、中小企業の史上最高利益などの数字によって成功が立証され、説得力がないことを物語っている。 自民党は1989年の参議院選挙で、「山が動いた」と述べた土井たか子社会党に惨敗、過半数を失った。それ以来、単独で過半数を握ったことはない。27年ぶりに念願の単独過半数を達成すれば快挙と言わざるを得まい。


たとえ改憲3分の2や単独過半数に達さなくても圧勝の流れは変わるまい。総務会長・二階俊博が5月に「1回『支持する』」と言ったら、その内閣が施策や色々なことを終えるのに、最後まで支持する。総裁任期は延長するのが一番手っ取り早いが、今の党則だって変えてもいい。当然あり得る」と述べているが、安倍はまさに自民党中興の祖となりつつあり、今後任期延長論が動き出すものとみられる。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年06月23日

◆浮動層無視の民進“縮み”志向

杉浦 正章



与党は極東安保の危機を訴えよ


◇与野党バンザイの珍風景も

どう見ても攻めの首相・安倍晋三に対して、防戦一方の民進党代表・岡田克也の姿が浮き彫りになってしまう。そもそも勝敗ラインの設定がひどい。岡田の言う「与党の改憲阻止」に必用な4野党議席はかなり水準が低い。


民主、共産、生活、社民の改選議席の合計は54議席だが3分の1以上必用な改憲阻止は、民共共闘で多数でる無所属も合わせて同数の54議席以上取ればよい。非改選が4党で27議席だから合計で81議席で3分の1超となる。民共統一候補は無所属が多いからこれを加えて「勝った」になってしまうのだ。民主党の改選45議席を下回っても「勝った」なのだ。体裁が悪いのか岡田が勝敗ラインをなかなか言わなかったのは、このからくりがばれるのを恐れてのことであった。


一方安倍は安倍で自民、公明両党で改選議席(121議席)の過半数61議席の獲得を打ち出したが、現有59議席に2議席プラスすれば良い。これも2議席で「勝った」になってしまう。場合によっては、与野党が共にバンザイするという珍風景が生じてもおかしくないというのが勝敗ラインの実体だ。この参院選挙は与野党激突の割には緊迫感が伴わないのはこの辺にも事情があるようだ。


◇ウイングが広がらない
 
政策を見ても、岡田は重要ポイントを隠している。安倍は「この戦い、前進か後退か、日本を成長させ、地域を豊かにしていくのか、あるいは4年前に逆戻りしてしまって、あの暗い低迷した時代に戻るのか、それを決める選挙だ」と一応明快にアベノミクスの是非の選択を迫っている。ところが岡田は「3分の2の議席を許せば、安倍首相は必ず憲法改正をやる。30代、40代になっても給料が増えず、結婚すら諦めざるをえない若者がたくさんいるのが現実で、分配と成長を両立させる政策こそ、本当の意味の経済政策だ」と主張する。


まず前提条件がおかしい。定かでない「与党で3分の2」を仮定して「改憲だ」と言っているのであり、あやふやなものを攻撃目標にしても訴求力があるのか。「30代40代で結婚をあきらめる若者がたくさんいる」というのは政治が関与しなければならないほど問題が大きいことなのか。貧しくても結婚する若者はしない若者を大きく上回って存在するのであって、これも前提が成り立ちにくい。


重要ポイントが安倍の「成長と分配の両立路線」に対して、岡田は一応「分配と成長」と言及はしているものの、成長に関する具体策には全く言及しない。あきらかに社会主義政党にありがちな“分配”の言葉のみでごまかしている。要するに岡田の打ち出す政策は党勢拡大を創出するような意欲に欠け、専らアベノミクスにケチを付けることにとどまっているのだ。


たとえば2007年の参院選は「消えた年金」問題の追及で、与党惨敗に追い込み政権交代への道を開いた。このような国民の共感を得られ、浮動層やライトウイングにまで幅を広げた政策が全く見られない。党内左派が辛うじて維持している党組織を、タブーである共産党との共闘をテコに確保するのが精一杯の実体を垣間見せるのである。縮み傾向を隠せないのだ。


◇共産党はトロイの木馬
 

その共産党との共闘は、民主党にとって断崖絶壁にぶら下がり、眼下に深淵を見るようなものになっていることに気付かない。共産党委員長・志位和夫が、狙っているのは「トロイの馬」戦略だ。この参院選挙での共闘で、民進党の地盤、人脈に食い込み、総選挙でそれをフル活用して党躍進につなげる。岡田はこれに引っかかっていることに全く気付かないで、喜々としてトロイの馬を引き入れているのだ。


志位が第一声で「あれこれの政策の違いがあったとしても、これを横に置いてでも、最優先にやるべき仕事ではないか」と述べているのは、まさに政策無視の野合をしてでも、党勢拡大につなげるという「共産党宣言」に他ならない。


◇与野党に欠ける外交・安保論議
 

さらに第一声では岡田だけでなく4野党に共通して、外交・安保への深い言及がないことだ。日本を取り巻く環境がこれは言及すればするほど不利になるという実情を物語っている。加えてサミットからオバマの広島訪問にいたる安倍外交の成果に触れることになりかねないことも外交・安保論争から野党を遠ざけている。東・南シナ海での中国の覇権行動、北朝鮮のミサイル発射など目の前にある情勢の激変に、野党は全く言及しないのはどうしたことか。


与党までつられて言及を避けているが、野党に安保法制がなければこの難局を乗り切れるかどうかの瀬戸際意識がないのは当たり前だが、与党にも薄いのは野党への刺激を避けるためなのか。中国艦船の領海、接続水域への侵入、南シナ海での暴挙、北朝鮮の「ムスダン」ミサイル発射などは、まさに抑止力としての安保法制がなければ極めて危ういものになっていたであろう現実を国民に説く絶好のチャンスである。


中国の横暴と北のミサイルは自民党にとってプラスに作用しているのであり、野党につられていることはない。正々堂々と安保法制の正しさ、その破棄は敵前逃亡に等しい愚挙であることを切切と国民に訴えるべき時であろう。

<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2016年06月22日

◆日本記者クラブは「いがみの権太」か

杉浦 正章


節度と知性のある会見を取り戻せ
  

義経千本桜の「いがみの権太」か、白浪五人男の強請(ゆすり)の「弁天小僧」か。まるでやくざの世界を見るようであったのが、党首討論における日本記者クラブ側の質問者たちであった。まぎれもなく気が弱い自らの性格をドスの利いた声で補うかのように、首相・安倍晋三や野党政治家を締め上げる。


その質問の内容たるや政治は知らない、経済も知らない。ただただ自己顕示と、売名だけが目立つ浅薄さだ。筆者はホワイトハウスや国務省、国連の記者クラブなどを熟知しているが、格段に冷静で紳士的で論理的だった。日本の政治記者がここまでレベルが落ちたとは知らなかった。昔は厳しい質問はしても、礼節は心得ていた。
 
戦後マスコミ界の偉人である時事通信代表の長谷川才次にたたき込まれたのは「記者は紳士的であれ」の一言と「平衡の感覚」だ。紳士的でないとやくざと間違えられる稼業でもあるからだ。ところが21日の党首討論は、「ヤー公」もびっくりの、すごみと脅しの連続であった。それもピタリと安倍に寄り添うが如き読売特別編集委員の橋本五郎と、反安倍のバリバリの毎日の倉重篤郎が好対照であり、記者に不可欠なバランス感覚などはどこ吹く風であった。
 

まず橋本は揉み手をするがごとく安倍に当たり障りのない質問。「安倍政権は折り返し地点を越えたが、これから経済以外で何をしようとしているのか。憲法改正なのか、拉致問題なのか、東京オリンピックの開催なのか。正直な気持ちを吐露してほしい」 だそうだ。経済が焦点の選挙で「経済以外」はあるまい。容易に答えられる質問ばかり並べた。これを悪女の深情け、またはひいきの引き倒しという。ごますり質問も休み休みやれと言いたい。
 

一方で野党には打って変わった厳しさに豹変。生活の党代表・小沢一郎に対して、「本来ならばこの席の中央に座ってもおかしくないのに、いまは、端っこのほうにいなければいけない。一体なぜそうなってしまったのか。なぜ自分がいま零(れい)落した状況にあるのか、ここはきちんと説明していただく責任がある」とただした。公開の全国民が見ているテレビで、仮にも一流の政治家を「零落」 と表現したのだ。


小沢は「零落していない」と述べたが、内心怒り心頭に発していたであろう。小沢が零落していようとなかろうと、今日本の政治が直面している問題と、どのように関連してくるのか。質問の意味が不明で独善そのものだ。古来日本には武士の情けという土壌がある。敗者を深追いしないという美風だ。橋本はまるで3流やくざのように、他人の傷に塩を塗り込むような発言である。底意地が悪く、弁天小僧のゆすりの方がもっと可愛げがある。
 

さらに橋本は民進党代表・岡田克也の安倍政権批判に対して「安倍政権は、内閣支持率が不支持よりも、いまもう10ポイント以上高い。変ですね、これ。そんなに悪い政権ならば、もっと不支持が増えていい。民主党の支持率がなぜ低いのか」とねちねちと絡んだ。何も好きで支持率が低迷しているわけでもない。安倍の支持率が高いのも橋本のせいでもない。余計なお世話を記者クラブの代表ヅラしてやって欲しくない。筆者が官邸キャップの時に首相番の駆け出しでうろちょろしていたのが、「偉い様」になりすぎた。
 

もっとどうしようもないのが倉重だ。橋本の2乗くらいどうしようもない。相変わらずの知性を疑われるような横柄な態度で質問したかと思うと、安倍の答弁を数度にわたってさえぎるという、常識外れな質疑を繰り返した。まるでいがみの権太だ。経済に的を絞っていたが、聞けば聞くほど浅薄な経済知識が露呈して、経済専門家から見ればトンチンカンでまるで分かっていない。全都道府県で1を越えた有効求人倍率が物語る景気の回復ぶりなど全く無視している。


揚げ句の果ては「消費税は罪深い」と悟ったような問いかけをした。国民挙げて歓迎している延期がなぜ罪深いのか。新聞が特権階級でもあるかのように新聞代だけ軽減税率に押し込み、口を拭って知らぬ顔をしているほうが、500倍も罪深いのだ。
 

要するに橋本も倉重も自分の売名と講演やテレビ出演の増えるのを狙って党首討論を活用したのではないかとさえ思いたくなるような、質問ぶりであった。日本記者クラブもこのような質問者に代表で質問させるようでは、レベルが落ちた。高い会費を徴収しているのだから、然るべき幹部が海外の記者会見の様子を見学に行ってはどうか。発足当時は幹部がワシントンのナショナルプレスクラブなどを見学に来て、筆者が案内したこともある。低開発国の記者会見の方がよほど紳士的で知性的である。
 

それに新聞記者、とりわけ政治記者が居丈高なのは、まだ「オレは政治家の発言や意向を伝えてやっている」という思い上がりが背景にあるとしか思えない。いまやネットで情報が得られる時代であり、安倍を始め政治家はFacebookなどをを活用して、発信を繰り返している。2人の恥さらしの発言でネットは炎上している。このままでは天下に恥をさらし続けるだけだ。


新聞は、威張って報道してやる時代は去ったことを思い知るべきだ。まず謙虚さがなければ斜陽の状況から抜け出すことは出来まい。

     <今朝のニュース解説から抜粋>(政治評論家)

2016年06月21日

◆東大生右傾化の潮流を探る

杉浦 正章



新有権者票は参院選を左右しない
 

東大の右傾化は今に始まったことではないが、まさか自民党への支持率が今世紀最高の30.3%で民進党のそれが4.5%、共産党1.7%とは驚いた。


今年入学した新入生への東大新聞のアンケート調査である。NHKの政党支持率が、自民党が38.1%、民進党7.6%、共産党3.2%だから、ほとんど一般人と傾向が変わらない。同じように選挙権を得た18歳、19歳に対する朝日新聞の郵送調査は自民20%、民進5%だから、東大生の右傾化は著しく目立つ。

相当悔しいのか首相・安倍晋三を不倶戴天の敵とばかりに連日批判を繰り返す元外交官・孫崎享が、メルマガで「東大生は社会正義の感覚すら身につけていないのか、自分だけ『勝ち組』に入ればそれでいいのか」 と怒髪天を突くような怒りかたをしているが、「社会正義」と政党支持率がどう関係するのか。常日頃思うのだがどうもこの評論家の論旨はあさってどころか、しあさってを向いている。


安倍批判のための批判に堕している。それにしても東大がこれでは、早稲田や慶応などほかの大学は推して知るべしだろう。参院選挙における240万人の18歳、19歳の新有権者の動向は、どうも政治を左右する勢力にはなりそうもない。
 

東大生と言えば安保闘争で死んだ樺美智子や、全学連初代委員長・武井昭夫、安田講堂立てこもり事件などを思い出す。筆者は都立駒場高校の生徒の頃「東大駒場祭」ヘ行って1串10円の焼き鳥をぱくぱく食べたら、翌日新聞に「駒場祭、犬を殺して焼き鳥」と出たのにはぶったまげた。犬の腸を食わされたのだ。そういえば駒場周辺には野良犬がいなかった。


寮は一部屋に数人が住んでおり、まるで貧民窟のような有様だった。ビラや張り紙は安保反対が圧倒的で、自民党支持など1クラスに1人か2人いればいい方だった。要するに左翼思想が圧倒的に東大の風潮を支配し、旧制一高以来のバンカラと同居していた。最近ネットで見つけた1953年当時の東大生による各政党支持率は、左派社会党32.0%、右派社会党11.2%、日本共産党7.5%、自由党1.6%、改進党0.8%、労農党0.8%だった。


これが今年の新入生は自民党30.3、共産党1.7だから完全に逆転している。今回の参院選で野党4党は安保法制破棄の一点でのみ合意に達して、戦おうとしている。その安保法制についても東大調査は、評価する41%、評価しない36%だ。この逆転の潮流はなぜ発生したかだが、ひとえに入試制度のなせる業だろう。

塾などない時代の東大生は、貧乏人の子だが頭が抜群によくて、学校の先生が両親を説き伏せて東大に行かせるようなケースが多かった。頭が良ければ受かった時代だ。その意味では貧乏人でも門戸が開かれていた。
 

ところが受験競争の激化と共に、受験産業が台頭して、専門家による学習でなければ受験技術が体得できない時代へと変貌した。紛れもなく学歴は親の金次第となった。東大の調査では89.5%が塾に通った経験がある。塾に長期に通えるというのは親の経済力が大きく物を言う。


教育統計学者・舞田敏彦の調査によると世帯主が40〜50歳で世帯年収が950万円以上ある家庭の割合は、一般世帯で22.6%に対し、東大生の家庭では57.0%を占めたという。


家計を支えている父親の勤務先は「従業員1000人以上」が48.4%と半数近い。職種では「管理的職業」43.4%、「専門的・技術的職業」22.6%の順に多い。これは親の職業が、エグゼクティブ層や医者などの専門的なものが多いことを物語っている。


これらの親が息子や娘とどんな会話をしているかと言えば、エスタブリッシュメントの支配階級だから、まず民進党や共産党支持者はいない。安保法制も是認が圧倒的だろう。夕食での会話で父親は「戦争法案と呼称するのはおかしい。安保法制は自衛的なものだ」と正確に分析し、「徴兵制になるというのは嘘だ」と言い切っていたに違いない。そして法案が成立、施行されても戦争は起きないし、徴兵制は施行されない。「やっぱり父さんの言うとおりだ」ということになって、野党の主張など信用出来ないことが分かる。これが若者の傾向だ。
 

対照的に「戦争法反対」「徴兵制反対」を今でも唱えるSEALsとかいいう、学生組織はどうか。近ごろさっぱりマスコミが取り上げないが健在なのかと言えば、いることはいるという感じだ。19日に奥田愛基が有楽町で4党党首と合同演説会をしている場面に偶然遭遇したが、昨年の国会前で見せた新鮮味が消えた。奥田が司会をやっていたが、最後に「ちょっとだけコールさせてください」とことわって、「野党は共闘」「市民も共闘」「今回ばかりは野党を応援」などと叫んでいた。


なにやらかつてのオウムが衆院選でわけのわからん“呪文”を唱えたごとくに、しんぶん赤旗と同じ陳腐なコールを続けている感じがした。観衆も動員以外は全く沸かなかった。やがては共産党に引き込まれてゆくのであろう。
 

こうして若者の保守化傾向には、もともと存在するネトウヨに加えて最近ではネトウヨ主婦までが加わる様相。新有権者240万人は一般人の政党支持率と大差がない傾向を示して、有権者総数1億424万人のわずか2%でもある。聞かれれば70%〜80%が投票に行くと答えるが、疑わしい。


例えそうでも他の有権者と同様の傾向ではインパクトは少ない。若者の投票より倍以上の積極的な投票行動を見せる60歳以上の老人パワーの動向の方がより注目される流れであろう。

    <今朝のニュース解説から抜粋> (政治評論家)

2016年06月17日

◆都知事選、蓮舫軸に展開

杉浦 正章



凋落民進に救いの女神か
 

かつて国会で「政党助成金を2500万円も貯め込んでいる」と共産党に追及された蓮舫の答弁が見事であった。何と「私が国会議員を辞めたときに国庫に返納するためにも大切に使って、無駄遣いと言われないようにしている」と答えているのだ。青山学院で幼稚園から大学まで過ごした「いいとこのお嬢さん」でなければ、言えない答弁だろう。

日本との間で貿易業を営んでいた台湾人の父・謝哲信と、「ミス・シセイドウ」だった母・斉藤桂子の長女として東京都で生まれた。民進党はいまこの蓮舫が救いの女神のように見えるに違いない。
 

だから最初に名前出して潰されてはならないと、代表・岡田克也も幹事長・枝野幸男も大事にして、一切名前を口にしない。ただ一部の利口でない評論家が分析している自公との相乗り候補について、枝野は「任期途中で辞めた2代の都知事を作った自公と相乗りするような話はない」と真っ向から否定している。


まさに民進党にとっては千載一遇のチャンスが到来したのだ。それも党の政策が良い悪いではなく、専ら蓮舫という都知事候補にうってつけの人物にひとえに依存するチャンスなのだ。このチャンスをこともあろうに宿敵自公と分け合うことなどあり得ない。だから同党保守系の長島昭久を候補にすることなど真っ先に消えたのだ。
 

要するに都知事選は後出しじゃんけんなのだ。先に名前が出た候補がつぶれて、後出しした方が本格候補になる可能性が高いのだ。加えて蓮舫を擁立する際は、共産、社民、生活との4党選挙協力を実現させるため、事前の根回しが必要だ。参院でも4党、都知事選でも4党を実現して相乗効果を狙うのだ。その場合前回宇都宮健児を擁立した共産党がどう出るかだが、今回は蓮舫に乗りそうだ。共産党幹部が朝日に「蓮舫なら勝てる」と漏らしている。あまりにいい玉だから名前が出てしまうのだ。


一方、民進党最大の支持母体・連合の神津里季生も名前を出してしまった。「アピール性がある清潔な候補が求められている。蓮舫さんはこの条件にかなう人ではないか」と言ってしまった。蓮舫自身も「名前を挙げていただいて光栄だ。ただ舛添さんがおやめになっていないし、まだ態度表明の段階ではない」「ぎりぎりまで考えて決める」「仲間の声は大事だ」などと前向き姿勢である。
 

千載一遇というのは都知事選に勝てば、これが全国に波及しうる効果をもたらすのだ。これを最小限にとどめるために、先を読んだ自公は舛添要一の辞任を21日まで遅らせ、参院選とのタイミングを辛うじて外したのだ。だから参院選は22日公示で、7月10日投票だが都知事選は7月14日告示の31日投票へとずらしたのだ。これで地方への影響は少なくなるだろうが、参院選と都知事選は事実上ダブル選挙となる。


都内の街頭演説では都知事選だか参院選だか分からないような形となるのだ。多かれ少なかれ連動してしまうのだ。したがって参院候補である蓮舫が都知事に転出しても、その蓮舫人気が蓮舫に代わる民進党の参院候補を押し上げる効果をもたらすのである。まさに相乗効果である。そして都知事候補としての蓮舫が参院選では大活躍するというのが民進党の打算であろう。
 

これに対して自公はどう出るのだろうか。小池百合子を候補にして、女の対決で盛り上げることもあり得るが、蓮舫に比べたら顔で負ける。小池の顔は永田町臭くて、蓮舫のようなはつらつさがない。化粧も蓮舫の方がうまい。したがって蓮舫には負ける。自公候補で蓮舫といい勝負が出来るのは、総務事務次官で嵐とかいうアイドルグループの櫻井翔とかいう歌手の父親・桜井俊だろう。


やはり官僚で官房副長官だった元都知事・鈴木俊一と「俊」の字が似ているが、「政治家はもういい。真面目な官僚を」という真面目な都民には受けるだろう。しかし今後生じるであろう「蓮舫効果」というか「蓮舫現象」には勝てそうもないように思える。本人も及び腰だ。
 

そこで自公候補の切り札は前大阪市長の橋下徹だが、これはいい勝負になりそうだ。大阪で「都構想」とかいう訳の分からんものを持ち出しても、人気を保ち続けただけあって、今度は「東京国構想」(冗談)でも掲げて、得意の口から出任せで演説すれば、東京人は大阪人よりインテリでだまされにくいが結構説得力があるかも知れない。


本人は出馬を否定しているが、盟友関係にある首相・安倍晋三や官房長官・菅義偉が説得すれば受けるかも知れない。しかし蓮舫には紙一重で負けそうな気がする。負けても衆院選に出る足場を築いたことになるから、橋本にとっては悪い話ではあるまい。蓮舫が出馬すればハードルが高くなり、その他候補の石原伸晃や、東国原英夫。もしやと本人が期待している片山善博、完全否定の長妻昭、そして鈴木大地などは蓮舫の敵ではない。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年06月16日

◆3度目の「自共対決」の背景を探る

杉浦 正章



共産は庇(ひさし)を貸して母屋を取る狙い
 

参院選は戦後政治史における3度目の「自共対決」選挙の様相を帯びてきた。首相・安倍晋三の発言も共産党への警戒心をあらわにするものが増え、共産党もしんぶん赤旗などで自共対決をプレーアップしている。共産党は民主党が大失政で政権を降り、2大政党による政権交代の時代が遠のいた結果をフル活用しているかのようである。その間隙(かんげき)を突くかのように勢いづいているのだ。1人区での民共共闘を成功させて、総選挙での躍進につなげる。これが共産党の長期戦略だ。
 

舌戦のボルテージが上がっている。専ら安倍の“先制攻撃”が目立つ。それもうまい。民共統一候補について「気をつけよう甘い言葉と民進党」と言うかと思えば、「民進党には、もれなく共産党がついてくる」といった具合だ。

前者は警察の「気を付けよう。甘い言葉と暗い道」をもじり、共産党との共闘の危うさを浮き彫りにした。「もれなく付いてくる」はよくあるコマーシャルの請け売りだが、1人区での共闘の現実を浮き彫りにして、すっと頭に入る。電通のプロにでも頼んだのだろうか。なかなか素人では作れない。
 

この“挑発発言”が相当利いたのか民進党代表・岡田克也と共産党委員長・志位和夫が頭から湯気を立てて怒っている。岡田が「これが総理大臣の言葉かと思う。共産党が大嫌いだという気持ちで、度が過ぎている。まるで共産党は非合法政党だと言わんばかりで遺憾だ」のだそうだ。


与党には共産党に戦後の火焔瓶事件や白鳥事件以来の暴力革命政党のイメージがあるが、民進党には全く警戒心がないのだろうか。自民党総務会長・二階俊博ら党幹部も安倍に歩調を合わせて「民進党にとっては気の毒なことだが、共産党にすべてを握られてしまった。


共産党に右向け右、左向け左と言われたら、その方向に連立を組んでいるのだから、動いていかなくちゃいけない。共産党に日本の政治を任せていいかどうか、この分かれ目がこの参院の選挙にあるとすれば、極めて重大な選挙だ」とこれまた挑発に出ている。
 

これに対する民進党幹部の発言はどうも言い訳じみている。選対委員長・玄葉光一郎は「共産党と政権を共にするわけではない。参院選は政権選択選挙ではない」と押され気味だ。一方対照的なのは共産党。与党の「自共対決」論が嬉しくて仕方がないのか、赤旗でも連日プレーアップしている。志位も安倍発言について「このような低次元の誹謗(ひぼう)中傷をやるべきではない。まともな政策論争ができない。政府与党による野党共闘攻撃、反共攻撃は日本の平和と民主主義、国民生活に対する攻撃にほかならない。


同時に彼らがいかに野党と市民の共闘を恐れているかを示すものにほかならない」と真っ向から取り上げて批判に出ている。共産党にしてみれば久しぶりの「自共対決」を前面に出して戦えるのは、願ってもない僥倖(ぎょうこう)なのだ。自民党と“対”で扱われること自体が、党内外に存在感を誇示できるチャンスでもある。
 

確かにこのところ共産党の躍進は著しい。2013年の参議院選挙で躍進、2014年の総選挙では議席数をこれまでの8議席から21議席に増やし、2015年の統一地方選挙では、県議空白だった7つの県で議席を獲得し、同党史上初めて全国すべての都道府県議会に党議員を獲得した。


この間、自民党も党勢を挽回しており、明らかに共産党は民主党退潮の穴埋めとして党勢を拡大しているのだ。したがって、共産党があえて参院1人区で候補を降ろして民進党などと統一候補を立てる背景には、各選挙区でこれまで取れなかった“情報”を入手し、対人関係も作って総選挙の決戦に役立てようとしている意図がある。
 

共産党躍進の歴史を見ればまず最初の躍進が1970年代前半だ。自民党副総裁・川島正次郎が「70年代は自共対決の時代になる」と予言したとおり、共産党は衆参50議席を越えている。第2次躍進は自民党幹事長・加藤紘一が「自共対決の足音が聞こえる」と述べた90年代後半から2000年にかけてだ。96年総選挙で15議席から26議席へ、98年参院選は選挙区7、比例代表8の計15議席の大幅な議席増となった。


そして今回の「自共対決」だ。共産党は民進党を推すわけだから代理戦争とも言えるが、安倍発言が象徴するように自民党の照準は共産党に合わされている。勝敗の焦点は、有権者が民共統一候補を“野合”と見るかどうかだろう。


確かに自民党選対委員長・茂木敏充が指摘するように“選挙野合”の側面が目立つ。なぜなら政策の一致点は「安保法制廃棄」の一点であり、財政、経済、外交、安保で両党の主張はバラバラである。したがって、万一政権を取った場合、安保法制破棄だけは実現するが、他の重要政策では一致せず、政権は分裂の危機にさらされることになる。

この大矛盾がある限り、「野合」であることは紛れもないのだろう。共産党は明らかに共闘という庇を貸して、自分の総選挙躍進という母屋を取ろうとしているのだ。

  <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年06月15日

◆自民党は内規で公私混同を戒めよ

杉浦 正章



舛添「貝殻追放」は「政治家狩り」の端緒
 

舛添要一は紛れもなく死に体となった。辞職は不可避である。この追放劇を鳥瞰(ちょうかん)すれば巨大なる「村八分」というか、広義の「貝殻追放」というか、法律よりも感情優先の側面が濃厚に感じられる。法律違反ではなくても、政治家を“野垂れ死に”させる新たな手段をマスコミとりわけ週刊誌が入手したことになる。


すべては政治資金の「使途」に関して法律がザル法であることが原因となっており、多くの政治家が首をすくめているのが現状だろう。今後扇情主義のイエロージャーナリズムの「政治家狩り」 が始まる可能性があり、これをいかに食い止めるか。法改正か、政党が独自の規律を一層厳しくして使途を制限するか。それ以外に方法は考えられない。
 

筆者が初めて「せこい」という言葉を使ったのが1か月前。舛添問題は「せこい」に始まって「せこい」に終わった。東大法学部1971年卒業と言えば、厳しい受験競争がたけなわの頃入学している。 一浪はヒトナミと言われ2浪、3浪は特に珍しくなかった時代だ。その東大法学部卒が舛添にあだとなった。物事を法的側面から見ることにはたけていても、政治家としての「統治」のセンスには決定的に欠けていたからだ。東大卒に良くある平衡感覚の欠如だ。政局が分からないから、自分が政局になっていることも分からない。一般有権者とのコミニケーション能力の欠如が、方向音痴の発言を繰り返す。
 

恐らく舛添は当初から法的に問題がないから乗りきれると判断したのだろう。たしかに政治資金規正法には使途の規定がなく、不記載と虚偽記載だけが有罪となる。政党助成法に到っては4条で何と「使途を制限してはならない」とまで規定している。だから舛添はヤメケン弁護士を第3者として引っ張り出した。「法的には問題ない」 と言う結論が分かっていたからだ。


加えて政治資金規正法も、過去の判例から見て本人が「政治活動だ」といえば通りやすい。だから「美術品は日仏交流の材料」「競馬は国際関係の研究」といった、発言を繰り返したのだ。問題は法的に通用しても、庶民の感覚で通用するかどうかなのだ 。
 

会社のつけに回せるかどうかで毎日四苦八苦している一般サラリーマンが、「家族旅行」「家族の食事」のつけまで政治資金に回している舛添に怒り心頭に発することが全く分かっていなかった。家庭の主婦にしてみても、10円でも安いスーパーに買いに行き、正月の家族旅行などは夢のまた夢。世論調査で圧倒的な多数の都民が、舛添の政治資金の使途を「ノー」と答えるのは当然だ。これが「貝殻追放」なるゆえんだ。


舛添の判断能力の欠如は、繰り返すが東大法学部卒のバランス欠如のなせる業であった。言っておくが逆に東大法学部卒で平衡感覚のある政治家は、首相になる素質があり、過去にも佐藤栄作などいくらでも例がある。今回のケースはカネで雇われたヤメケンですら「法律違反ではないが、不適切な支出」と指摘せざるを得なかった。舛添は法的には通用する言い訳が、だれからも蔑視されることに思いが到らなかったのだ。
 

問題は冒頭指摘したように、この「舛添ケース」が、政治資金をめぐるマスコミの摘発のハードルを極単に下げる第一歩となったことだ。週刊誌はいとも簡単に政治家を倒す手段を入手したことになり、こんご気にくわない政治家がいれば、「政治資金の使途」で追い詰めて辞任させることができるようになった。イエロージャーナリズムが日本で跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)しかねない情勢でもある。


しかし共産党を除いて、各政党は法改正には及び腰であることは確かだ。2013年の場合、自民党本部の収入の64.6%、民主党は82.5%が政党助成金であり、議員に分配されるほか、選挙費用、広報宣伝費などに使われる。民進党は民主党時代から助成金を貯め込んで選挙費用に回しているのが有名だ。
 

今回の場合は「公私混同」が問題なのであり、これは政治資金規正法と政党助成法が使途に関してはザル法であることが原因となっている。本来なら、法改正を推進すべきだろうが、ザル法を完全に抜け道がない方向で改正するには、まだこれから超大物議員らに対するマスコミの追及を経なければ難しいだろう。当面緊急措置として出来ることは、各議員への政党交付金支給にあたって、党の内規で一層厳しく制限をして、各議員に公私混同を戒めるしかあるまい。


とりわけ与党は早期にこれを実施しなければ、参院選で舛添絡みの集中攻撃を受けかねない。何事も先手を打つ事が重要だ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>(政治評論家)

2016年06月14日

◆安保法破棄では「侵入」に対処できぬ

杉浦 正章



野党「改憲論」でも空振り


「気を付けよう、甘い言葉と民進党」と首相・安倍晋三が、挑発すれば、民進党代表・岡田克也はかっとなって「まるで非合法政党だ。遺憾である」と反撃。水銀柱の上昇と正比例するかのように選挙選がヒートアップしてきた。自公は専らアベノミクスと安全保障に的を絞り、野党はこれに応じては状況不利と「憲法改悪」を攻撃の足がかりにする。


しかし改憲は自公に具体的な動きがなく、民進・共産の主張も「参院で与党に3分の2取らせたら改憲」と前提条件が付き、机上の空論の空振りになりがちだ。逆に与党は今そこにある安保の危機と、アベノミクスの実績という現実論で勝負しようとしている。


机上の空論対現実論の戦いであり、論戦は7対3で与党に有利に展開と見る。一方舛添問題は、自公が都議会で辞任に直結する不信任案を出しかねない辞任必至の状況にいたり、参院選での論点には、なりにくい情勢だ。
 

奇妙なことに共産党と社民党、朝日新聞の三者の見方が安倍の選挙姿勢批判で一致している。共産党委員長・志位和夫は「安倍首相は選挙戦をアベノミクス一本で戦い、選挙が終わると憲法を破壊する政治を繰り返した。これを2度行った。私たちは3度目は通用しないとはっきり言いたい」と指摘した。3年前の参院選後に秘密保護法を強行、1年半前の衆院選後に安保法制を実現させ、今度は改憲だと訴える。


朝日も「選挙が終わると、世論に左右されることなく持論の政策にアクセルを踏む。逆に、選挙が近づくと新たな経済政策を前面に打ち出す。首相は、こうした安倍政治の『二つの顔』を第2次政権の発足から繰り返し使い分けてきた」と批判。


社民党幹事長の又市征治もNHKで朝日の請け売り発言をしていた。期せずしてか図りに図ってか左翼政党と左傾化言論機関が一致した。岡田も「安倍首相のねらいは憲法改正だ」と指摘したうえで、「アベノミクスによる争点隠しは認められない」と、何が何でも「安倍イコール改憲」に結びつけたい姿勢だ。しかし、安倍が2年あまりの残る任期で、国会の憲法調査会が具体化への議論も全く進めていない改憲を一挙に推進できるかと言えば、まさに机上の空論であり、無理なのだ。
 

この「アベノミクスが改憲の争点隠し」という主張は、いみじくも経済論争では民進党不利という姿勢が滲み出ている。「争点隠し」というのは、アベノミクスの効果を認めていなければ出ない言葉だ。


野党はアベノミクスに対しては、大企業も中小企業も収益が過去最高、有効求人倍率は全国で1を超えるという新記録、3年半で21兆円の税収増という数字に対抗する有効手段が見当たらないからだ。民主党選挙対策委員長・玄葉光一郎は「民主党時代のGDPの高さ」を指摘するが、デフレ要因がGDPの大半を占めていたのだから主張に無理がある。国民はGDPより就職の機会であり、景気の上昇だ。やがて実質賃金にも反映してくるから、希望を持てるのである。どの政党も自分の政策の成果で選挙戦を戦うのであり、自民党がアベノミクスを前面に出すことは不自然ではない。民主党が党内の政策はバラバラのまま、ただただ「消えた年金」だけを主張、政権に就いたのと同じだ。
 

とりわけクローズアップしてきているのは安保論争だ。民進と共産の共闘は、安保法破棄の一点だけで一致しており、両党ともこれで市民運動を盛り上げ選挙を有利に運ぼうとしているが、それが可能だろうか。繰り返される北朝鮮の核とミサイルの実験、南シナ海のスカボロー礁をめぐる米中の激突含みの対峙。これに新たに加わったのが、中国フリゲート艦の接続水域侵入による東シナ海での日中激突の危機だ。


玄葉は接続水域侵入について「我々もしっかり対応する。対応力は強化する」と言明したが、安保法を破棄して対応力が強化できるのか。安保法による日米防衛協力の強化は北にも中国にも大きな抑止力として働いているのである。民主党政権の漁船衝突事件におけるうろたえぶりからみて、現在も民主党政権が続いていれば中国艦船はとっくに接続水域を越えて領海に入っていただろうと思う。


安保法は東・南シナ海の緊迫に辛うじて間に合ったのであり、これを破棄して国の安全が確保出来るかということだ。民共は60年安保破棄党争に匹敵する愚挙を臆面もなく前面に出しているのだ。
 

安保法破棄だけで一致する民共選挙協力は、まさに自民党選対委員長・茂木敏充が「野合」と指摘するとおりで、他の政策での一致が見られないままだ。共産党書記局長・小池晃は野合批判について「市民の求める共闘が野合のはずはない」と断定しているが、一体共産党の言う市民とは誰か。共産党の支持率1.4%(時事)が市民か。指導者たるもの用語の使い方に気をつけた方がいい。
 

こうしてアベノミクスでは不利、安保論争でも不利な民共共闘が、ただ一つのより所とするのが「憲法改悪」という構図が浮かび上がってきているが、「仮定の論議」に警告を発しても説得力がない。茂木が「野党は対案を出して論議すべきだ」と指摘するとおりだ。自民党改憲案を否定するなら堂々と対案を提示すべきである。それがなければ「ケチを付ける」だけと言うことになる。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年06月10日

◆中国、ロシア艦船に“便乗”の姑息(こそく)

杉浦 正章



政府対応は民主党政権と格段の差
 

南シナ海から琉球諸島を抜け、対馬海峡を経てウラジオストクに向かうロシア艦隊のルートは、日本海軍に殲(せん)滅させられたバルチック艦隊の昔から同じだ。インドネシア沖での対テロ軍事演習を終えてロシア艦船が帰還するルートを中国が予測するのは容易であっただろう。


そして、あたかも“中露結託”のように見せかけて接続水域への侵入を図ろうと手ぐすねを引いたのだ。練りに練った歴史に残る茶番劇だが、それを筆者に看破されるようでは中国海軍もたいしたことはない。
 

政府が8日深夜から9日未明にかけて中国フリゲート艦とロシア艦艇の動きを別物であり、シンクロナイズしていないと短時間の間に判断したのは正しかった。中国の狙いの第一は日本の即応能力の掌握にあり、防衛省の連絡を外務省が受け、官邸が首相・安倍晋三以下冷静沈着に陣頭指揮に当たったのは、尖閣漁船衝突事件で慌てふためいて国益を大きく棄損した民主党政権と比較して格段の差がある。


とりわけ安倍の「不測の事態に備えよ」発言が注目される。これは、領海内に入れば自衛隊に海上警備行動を発令するとの意思表示であり、軍事行動も辞さぬ政府の決意の強さと隙の無さを垣間見せた。参院選を前に願ってもない好材料の発生だ。


政府のすべての動きを象徴させるのは9日午前2時に外務次官・斎木昭隆が中国大使の程永華を呼びつけ「勝手な振る舞いは許さない。今後このようなことが起これば必用な行動を取る」と厳重警告したことだ。この「午前2時の警告」は、日本外交史に残るものであろう。


「私が深夜に呼ぶのは初めてだ。それだけ事態は深刻だ」と述べる斎木の気迫に押されるように、大使が「エスカレートを望んでいない」と述べたのも当然のことであろう。大使が中国が東南アジア諸国に対して行っている“いじめ”が日本には通用しないことが分かった瞬間である。
 

中国が“挑発レベル”を急速に高めた背景には、日米主導の中国孤立化の動きへの反発が第一に挙げられる。伊勢志摩サミットでは「東シナ海および南シナ海における状況を懸念し、紛争の平和的管理および解決の根本的な重要性を強調する」とする“中国非難宣言” が発せられたのも痛手であった。


シャングリラ会議や、これに続く米中戦略・経済対話でもスカボロー礁をめぐって中国批判が集中し、習近平の海洋進出膨張路線は、とん挫しかねない状況に追い込まれている。米空母艦隊は南シナ海で中国海軍をけん制し、日本も最新鋭の護衛艦や潜水艦を送り込んでいる。習近平はひしひしと対中包囲網による孤立化を感ぜざるを得ない状況となっているのだ。
 

こうした状況のままでは習への求心力は弱体化せざるを得ず、ただでさえパナマ文書をめぐる「習近平の疑惑」がボディブローとして利きつつある。報道を抑えても、幹部の間では口コミで伝わり、権力闘争に影響するのだ。加えて中国経済の不振は目を覆わんばかりである。内政・外交ともに厳しい状況に置かれているのが実体だ。


こうした窮地を脱するために歴代中国政権が行ってきたことは、国民の目を外に向けることだ。東シナ海上空で米軍偵察機に戦闘機で急接近をし、今度は時々接続水域に入るロシア艦船の動きと習性を察知した侵入へと到るのだ。しかし今回の場合は、ロシアとの連携がさも成立しているかのような印象を与える姑息(こそく)そのものの動きであり、余りに幼稚であきれ返る。


ロシア大使館も「ロシア海軍の駆逐艦が尖閣諸島接続水域に入ったことに関して誤解があり、コメントする。当海域では中国と関係ない。ロシア海軍は定例の演習の帰途であり日本の領海に入ることも当然ない」と説明しているが、その通りだろう。すぐにばれてはどうしようもない。
 

ただ、習近平が一番誤解しているのは中国海軍のそれと比較した場合の海上自衛隊の戦闘能力だ。英国BBCは元自衛隊士官の山内敏秀による興味深い分析を最近報道している。これによると「中国海軍は数で勝っているものの、戦艦は博物館入りするようなものばかりで、052型ミサイル駆逐艦はまずまずだが、日本などの先進的な艦艇とまともに戦えるのはこの1種類だけだ」と述べたという。


確かに海上自衛隊の戦力は中国をはるかに上回るという専門家は多い。世界最強の米海軍将校が、海自と共同演習をした結果、「操船技術、航海技術などの練度といい、シーマンシップなどの礼節といい素晴らしい。世界有数の海軍だ」と感嘆の声を上げているという。
 

そもそも日本が中国海軍に敗れたのは663年の白村江の戦いだけであり、その後は元寇も追い返し、日清戦争での黄海海戦も圧勝している。習近平は中国がしょっちゅう脅しをかけているフィリピンやベトナムなどとは、格段の差があることを銘記して、日本に手を出せば大やけどすることを知るべきだ。


それにつけても沖縄県知事・翁長雄志は自分の県内の出来事なのに寂として声なしなのはいかがなものか。中国のやることはすべて黙認するのか。中国が沖縄を占領すれば中国国旗を振って歓迎するのか。いずれにせよ、参院選挙を前にして、またまた中国が与党に大きなプレゼントをしてくれた形となった。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年06月09日

◆スカボロー礁は米中激突の危機内包

杉浦 正章



中国不利の裁判結果が契機に
 

南シナ海のきな臭さは尋常ではない。中国が西のパラセル諸島、南のスプラトリー諸島の人口島造成に次いで東のスカボロー礁まで触手を伸ばそうとしているからだ。この3か所を結べば南シナ海における「牛の舌」と呼ばれる戦略拠点が完成する。完成すれば中国は防空識別圏を敷く。牛の舌に南シナ海は舐め取られることになる。


米太平洋軍司令官・ハリスが「砂の長城」と呼ぶ人工島戦略の完成である。オバマがフィリピンの眼前のこのスカボロー礁に人口島を作らせるか作らせないかは、習近平の海洋膨張戦略を食い止められるかどうかの決定的ポイントとなろうとしている。月内に予定されているオランダの常設仲裁裁判所の判断が、すべてのスタートとなる。


防衛相らのシャングリラ会議とこれに続く米中戦略・経済対話における米中のせめぎ合いは、煎じ詰めればすべてスカボロー礁問題に集約される。まさに米中激突の構図が浮き彫りとなった。まず米国防長官・アシュトン・カーターが中国が埋め立てを開始する場合について「米国や各国は行動を起こすことになる」と言明した。さらにカーターは「中国は仲裁裁判所の判断に従う必要がある」と強調した。


この「行動を起こす」という言葉は言うまでもなく軍事行動を意味しており、よほどのことがない限り米政府高官の口から出る言葉ではない。国際海洋法条約に基づいて設置されている同裁判所の判断は、中国に不利なものになることを察知した上での発言である。


これに対して中国統合参謀部副参謀長・孫建国は、「少数の国が混乱を起こすのを座視しない」と猛反発した。国務委員・揚潔チも「仲裁裁判を受け入れないという立場は変わらない」と受け入れ拒否を明確にした。まさに中国の「核心的利益」は死守するという立場の表明である。


一方、防衛相・中谷元はカーターと歩調を合わせ「中国が判断に従わなければ、法の支配を重視する観点から日本としても強く声を上げざるを得ない」と旗幟(し)を鮮明にさせた。自衛隊は既に、スカボロー礁と目と鼻の先にあるスービック湾に護衛艦や潜水艦「おやしお」を入港させたりしており、米軍と歩調を合わせて一種の示威行動を展開している。米国はスービック湾に海軍基地を再開する方向で準備を進めている。
 

最大の影響を受けるフィリピンは大統領・アキノが「米国はフィリピンを守らなければ地域からの信頼を失う」と、スカボロー礁がフィリピンの主権の範囲であることを鮮明にした。確かに排他的水域の200カイリ内に、ずかずかと入り込んできて同礁の実効支配を続ける中国には主権国家として我慢できないものがあろう。問題はアキノの任期が6月30日で終わり、トランプに似たロドリゴ・ドゥテルテが大統領に就任することである。


一時は対中対話姿勢に転じそうな気配もあったが、最近では「自国の権利を譲ることはない」と言い出している。中国もドゥテルテ抱き込み狙っていると見えて、外務省報道官の洪磊が「対話のドアは常に開かれている」などと発言している。次期大統領が腰折れになっては元も子もなくなる危険性は存続する。ドゥテルテをめぐって米中の抱き込み合戦が展開される。
 

こうした中で米国の対中抑止戦略はどのように進展するのだろうか。まず、中国を心理的に追い詰めようとするだろう。仲裁裁判所が判断を出せば、中国は当然拒絶する。同裁判所は中国も締約国である国際海洋法条約に基づいて設置されたものであり、拒絶は「法の支配」の原則を白昼堂々と無視したことになる。これを米国は国際世論に訴え、「中国異質論」に拍車をかけることになろう。


もちろん大多数の国は対中批判に回り中国は孤立する。既にインドネシア大統領のジョコ・ウィドドは同国が南シナ海での係争国ではないにもかかわらず「裁判所の判断は尊重されるべきだ」と言明している。中国から鉄道を敷設してもらっていることなど度外視して批判に回っている。米国は国際世論をまず味方につけるだろう。軍事行動はその上でのことである。
 

そうこうするうちに米国はスービック湾に海軍基地を再開して地歩を築くことが予想される。かっては世界一の海軍基地であったが、米軍がここから撤退したことが中国の進出を許したことは紛れもない史実だ。その反省にたっての動きとなるだろう。こうした動きに対して中国がどう出るかだが、もし性急にスカボロー礁の埋め立てに乗り出せば、米国は第7艦隊を派遣して阻止行動に出るだろう。米中直接対決になる。


弱虫オバマが在任中にその事態に発展させるかどうかは別にして、国務省、国防総省は共にスカボロー礁の戦略的価値は「死守するに値する」という点で一致している。日本にとっても、スカボロー礁問題で米国が敗退すれば、次に中国が触手を動かすのは東シナ海であることは目に見えている。何らかの協力は不可欠となろう。


こうした動きを知って習近平があえて火中のクリを拾うかどうかは予断を許さない。中国は隙を見せれば必ず砂の長城を完成に導こうとするが、隙がなければ「待ち」の姿勢に転ずる国である。しかし基本戦略を変えることはない。いずれにせよ仲裁裁判所の判断以降の南シナ海は「波高し」となる。固唾をのんで見守る必要がある。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)