2016年04月22日

◆タックスヘイブンがサミットの焦点に

杉浦 正章


大胆で実効性のある対策が不可欠
 

世界的な「パナマ文書疑惑」が来月26,27日のサミットに向けて最高潮に盛り上がる流れを見せている。

プーチン、習近平、キャメロンら政治家のみならず、租税回避地に設立された約21万4000社の会社名や株主、役員などの企業データベースを国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が5月前半に公表する方針だからだ。

これまでもサミットは事務当局レベルで租税回避問題を取り上げてきたが、今回は首脳レベルの議論と意見集約に“昇格”せざるを得まい。効果の伴う国際的な課税逃れ対策に向けて議長役の首相・安倍晋三の手腕が問われる事態となってきた。大胆で実効性のある方針をいかに打ち出すかが焦点だ。
 

パナマ文書をめぐる報道でいつも思うのだが、世界を直撃して、資本主義の根幹を揺さぶる文書がどのような経路で南ドイツ新聞に廻ったのかが全く不明な点だ。筆者がすぐに思い浮かぶのはロッキード事件の発端となった「誤配事件」である。

ロッキード社にとっては絶対、部外者には見せられない極秘書類の小包が、なぜこともあろうに多国籍企業のお目付け役である米上院外交委多国籍企業小委員会(チャーチ委員長)事務所に届けられたのだろうか。現在でも不明だ。筆者は田中角栄と仲が悪い国務長官・キッシンジャーがCIAを使って行った陰謀であったと思うが、証拠はない。アメリカはそうした細工を極めて巧妙にやる国である。
 

パナマ文書もCIA説がある。なぜなら米国や同盟国日本の政治家名は一切出さずに専ら中国、ロシアの指導層を狙っているように見えるからだ。キャメロンや辞任したアイスランド首相はお飾り程度の意味しかない。怒り心頭に発したプーチンは「政権への不信感を社会に植え付けて、ロシアを内部から揺さぶる試みだ」と述べているが、親しい友人ばかりの名前が挙がっていることが不思議だ。クロだと思う。

慌てふためいたのは習近平だ。自ら先頭を切って腐敗撲滅運動と称する政敵撲滅を推進してきた張本人習の義兄が引っかかってはどうしようもない。タックスヘイブンの場合親戚とか友人とかの名前が出るが皆本人とみた方が分かりやすい。実際に本人の代わりにやっている事であろうからだ。

習近平はお得意の言論統制に出た。NHKの報道はシャットダウンされるし、ネットの検索も不可能だ。姉の夫が関与しているから、中国語の義兄である「姐夫」での検索も不可能だ。中国の場合は富裕層が海外に資産を移して、将来政治状況が変われば逃亡しようとしているという社会的構造があり、「義兄」は氷山の一角に過ぎない。プーチンも習近平も民主主義国であったら致命的なスキャンダルであっただろう。
 

G7に関連してくるのはキャメロンだ。国民の間に亡父のファンドに投資して利益を上げたことを認めたキャメロンへの辞任要求の声は高く、満身創痍(そうい)でのサミット出席である。ただ本人が法的責任を問われる可能性は少なく、辞任に到る確率も低い。キャメロンはタックスヘイブン問題では企業の情報開示の推進など課税逃れ対策を強化しようとしている。

結局パナマ文書が提起した問題は議長・安倍がオバマとタッグを組んで推進するべき問題であろう。いくらキャメロンが引っかかっているからと言って、手を抜くようなことがあれば世界中の目がその動向に集中しているときである。いいかげんな対応ではサミットの存在感を問われる結果となりかねない。いかにストライクのボールを投げるかが問われている。
 

既に主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は15日、タックスヘイブンを使った課税逃れ対策を共同声明で、@国際的な情報交換の仕組みにすべての関係国が遅延なく取り組むA銀行口座などの情報を交換し合う枠組みに参加するすべての国が、2017年のG20首脳会合までに一定の導入水準を満たすー事などを求めている。


G7はG20の動きを支持すると共に、金融口座の情報を自動的に交換する協定の締結を目指して一致した行動をとる流れとなりそうである。各首脳の発言も極めて注目されるところであろう。問題は新たな規制策が打ち出されれば、金融マフィアはその裏をかくといういたちごっこがこれまで繰り返されてきたし、これにどう歯止めをかけるかがキーポイントとなりそうである。いかにして大胆で実効性のある方針を打ち出すかが焦点だ。


翻って日本との関わり合いが5月の発表でどの程度出るかメディアは固唾をのんで注目している。地方創生相・石破茂はテレビで政治家などの名前が出ないことについて「5000万円を超える所得を海外に持つ人は確定申告書に添付する必要があり、これが利いている」と述べている。

しかしタックスヘイブンを活用している企業名や役員の名前が公表されれば、当然政治家への献金が問題となり道徳的にも指弾される可能性はある。また北朝鮮との関係が問われる企業名が出される公算が強く、これも問題化しよう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年04月21日

◆「ダブル選挙なし」のスクープの裏側

杉浦 正章


 
地震で「奇道」の選択不可能に
 

政治状況をいち早く掌握、洞察して伝えることは政治報道の基本だが、今回筆者が先陣を切った政局原稿「会期末解散・同日選挙は事実上不可能に 熊本地震で政治日程も地核変動」は、乾坤一擲(けんこんいってき)の大勝負であった。


100%自前の「1人通信社」でも、解散の判断で間違っては、政治報道の真価が問われるからだ。筆者の原稿は他のサイトでも無料で自由に使わせており、無礼にも無断で使っているサイトを含めれば推定では毎朝10万人を超える読者がいると思われる。サイトによっては見出しの強烈さにちゅうちょしたのか、当たり障りのない見出しに差し替えると言う判断をしたケースも出てきたほどだ。


筆者の場合官邸にも政党にも情報源はあるが、ほとんど必要ない。表面化した情報を一日がかりで集めて、分析して、洞察して、払暁までに1人判断して書くのが基本だ。
 

筆者の判断は、全国紙が後追いして正しさが立証されるのが常だ。今回も本格的な政局原稿としては、産経が20日朝刊トップで「首相、同日選見送りへ」、日経が21日朝刊で「首相、衆参同日選見送り 震災復旧・景気テコ入れ優先」と報じ、通信社も共同が20日午後1時に「政府、与党内で同日選見送り論」と追いかけ、時事も午後10時過ぎ「衆参同日選、見送りで調整」と書いた。


朝日は抜かれて恥ずかしいのか4面で「同日選慎重論に傾く」。読売も4面で「同日選与党から回避論」と書きながら「首相サイドは両にらみ」と未練たらたらの記事だ。
 

これまで、筆者もマスコミ各社も「ダブル選挙あり」を前提に政局原稿を組み立ててきた。首相官邸からの発信が常にダブルに向かっているように見えたからだ。


新年早々に首相・安倍晋三も夏の参院選について、自民、公明両党だけでなく、おおさか維新の会など一部野党も含めた改憲勢力で、憲法改正の国会発議に必要な参院の3分の2議席を目指すとの考えを示している。これが意味することは通常の参院単独選挙でなく、ダブル選挙を狙っている事を意味する。


選挙情勢を分析すれば参院単独では達成が不可能な議席であり、衆院の3分の2を維持したうえで参院の3分の2を確保するには、相乗効果が可能となるダブル選挙しかあり得ないからだ。とりわけ2月25日に筆者だけが発信した安倍の「世界経済の大幅な収縮」発言を「消費増税先送りへの新条件」ととらえ、解散に結びつけた見方は、全紙が2日遅れで追いかけて政界に定着した。
 

こうしてダブル選挙への流れはよほどの天変地異でも生じない限り不可避と見られる状況に到った。ところが熊本大震災である。天変地異が発生してしまったのである。こればかりは天の裁量としか思えない事態である。


筆者は10万人が避難生活という事態を前にして、まずダブルは不可能になったと直感した。東日本大震災の時は被災地での統一地方選挙ですら延期となった。それに塗炭の苦しみに国民が置かれているのに、党利党略の権化のようなダブル選挙を実施する為政者はまずいないと判断した。しかし滔滔(とうとう)として続くダブルへの流れは止められるだろうかとも思った。


その時、かつて田中角栄から教わった重要なる教訓を思い出した。「政治のすべては一般庶民のためにある。杉浦君も国民目線で政局を判断しなさい」と述べた言葉だ。
 

そうだこれだと思って書いたのが「震災後1か月半で国会を解散するのは憲政の常道から言っても不可能の類いである。震災の粉じんも治まらず、塗炭の苦しみに国民が置かれている状況下で、政権与党の優位のみを目指して解散することは、困難であるうえに、国民の間に怨嗟の声が湧き起こる可能性が大きい」の文章である。


これを「同日選不可能」の判断の根幹に据えた。憲政の常道とは政治の常識を意味する。ダブル選挙は「奇道」であり、通常の政治状況なら許されるが、この事態では「お天道様が許さねぇ」の事態となるのである。こうして潮流に真逆に棹(さお)さす1人通信社の大スクープが誕生したのだ。「ダブル」でも先行、「ダブルなし」でも先行したのだ。1人通信社だから特ダネ賞は出ない。1人悦に入るだけだ。
 

安倍政権は奇道を選ばずに常道に戻った。会期を参院の任期7月25日まで延長すれば、粉じんも治まりダブルの復活もあり得たが、延長せずが大勢となった。安倍が中曽根康弘の真似をして死んだふりをして会期末に解散することもあり得ない。前から指摘しているとおり、北海道5区の衆院補選の動向など、全く政局を左右する要素にはならない。


翻って考えれば安倍には何と言っても衆院291議席がある。圧倒的多数であり、今後の国政選挙は衆参とも単独選挙が基本となる。安倍は衆院の議席を大切に守って長期政権を維持する流れとなろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2016年04月20日

◆オスプレイは熊本地震にどんどん活用せよ

杉浦 正章
 

新聞・野党が災害時まで反米イデオロギー
 

半世紀以上報道に携わっているが熊本大震災に際して朝日、毎日両紙と民進、共産両党が展開しているオスプレイ反対論ほど異質なものを知らない。異質というのは10万人が避難生活を送り、一刻も早い支援を待っている今この時に、救出の“手段”にまで反米のイデオロギーを持ち出すのかということだ。


同じ日本人かと思う異質さだ。まるで救急車が危険だから大八車を使えという議論だ。これこそ国民の生命の危機を政治利用していることになる。政府・与党は堂々と反論すべきであり、米軍の“オスプレイ支援”をちゅうちょなく受け入れ、継続させるべきだ。
 

まず朝日は19日の朝刊で「被災地にオスプレイ」の見出しに「必要性疑問の声」「政治的な効果」という中見出しで疑問を提起。共産党の書記局長・小池晃をけしかけて「オスプレイに対する国民の恐怖感をなくすために慣れてもらおうということで、こういう機会を利用しているとすれば、けしからんことだ」と語らせている。


一方毎日も同日の紙面で「熊本地震、オスプレイ物資搬送『政治利用』の声も」との見出しで「オスプレイの風圧で2015年のネパール大地震で住宅の屋根が破損したとの報道もあった」などと批判的記事を展開している。
 

さらに朝日は民進党常任幹事会議長・原口一博の「オスプレイはハワイの事故で、砂を吸い込んで落ちている。防衛省の資料を見ると、我が国の航空機がヘリコプターを含めたくさん活躍している。わざわざオスプレイをもってきて、避難している皆さんも非常に不安に思われている。砂を吸い込んで落ちるものが、噴煙に対して大丈夫なのだろうか」という談話を掲載。


一方共産党の畠山和也は国会で、「懸念されるのはオスプレイを活用されること。廃棄熱での火災や民家の屋根が吹き飛んだとの報告もある。二次災害の危険性はないのか」と反対論を展開している。まずいのはこれがデマゴーグとして日本中に流布されていることだ。
 

これら左傾化メディアと左翼政党の反対論は戦後の反米イデオロギーに根ざしたものであり、オスプレイの米軍導入に対する反対闘争をこともあろうに大震災の粉じんが収まらない中でぶり返そうとしている姿勢がありありと見える。


だいいちに原口の言うように被災者からオスプレイに懸念の声が本当にあがっているのか疑わしい。朝日と毎日の記者は恐らく防衛省詰めの社会部記者だろうが、あきれるのは防衛省側が反対論調を助長するような“ミスリード”をしていることだ。


その証拠を挙げれば、朝日によれば、防衛省関係者が「米軍オスプレイの支援は必ずしも必用ではないが、政治的な効果が期待できるからだ」と述べたという。毎日も「省内でオスプレイを政治的に見せつける作戦との冷ややかな見方も出ている」と報じている。あ然とするような防衛省の広報ぶりであり、両社記者に“おもねる”防衛官僚の姿を露呈している。防衛省は大丈夫かと言いたい。
 

こうした論調が間違いなのはオスプレーの実績から見れば明白だ。


まず2013年11月に超大型台風がフィリピンを襲った際も、米軍が普天間基地からオスプレイを派遣、大活躍した。救出した被災者は2万人近くにも及ぶという。共産党が取り上げたのは2015年のネパール大地震で住宅の屋根が破損したことだろうが、一体どんな屋根か。もともと地震で破損しているブリキ屋根ではないのか。小さな事を主張して大きな方向を見誤ることを「木を見て森を見ない」と言うがまさに左翼の論調はそれだ。
 


オスプレイは時速500キロと普通のヘリの2倍以上のスピードがあり、航続距離は3900キロだ。朝日は、「ほかにヘリコプターがある」と指摘しているが、災害救済能力には格段の差がある。東日本大震災に投入されたヘリは空自のCH-47、陸自のUH-60、海自のSH-60などで人命救助に大活躍したが、惜しいのは燃料切れが早く、涙をのんで基地に引き返さざるを得なかったケースが多く出た。


オスプレイは空中給油も可能で、全国何処にでも急派できる。長時間に渡る救援活動が可能であり、東日本大震災の前に運用が始まっていれば、多くの人命が救えたことは間違いない。専門家も「被災地上空を飛び回るマスコミのヘリより安全だと」指摘している。
 

朝日、毎日が、政府によるオスプレイの「政治利用」を指摘しているが、防衛省のミスリードはともかくとして、事の本質はオスプレイ反対の編集方針にある。編集方針は勝手であり、報道は自由だ。愛読する読者がいるから書くだけだが、両社にはこういった記事を書く記者が良い記者であるという独特の雰囲気があるに違いない。


結果的に見れば、「災害の政治利用」をしているのは両社と左翼政党であり、大災害時においても人命よりイデオロギーを先行させる姿勢にはあきれ返るとしか言いようがない。関東大震災や南海地震への備えもあって政府はオスプレイを18年度に17機調達するが、もっと数を増やして大都市周辺に展開させておくべきだ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年04月19日

◆会期末解散・同日選挙は事実上不可能に

杉浦 正章



熊本地震で政治日程も地核変動
 

熊本を襲った大震災は、会期末解散・衆参同日選挙など首相の重要政治日程を組み替えざるを得ない状況に直面させている。


また消費増税の再延期または凍結も不可避となった。さらに大震災に対応する2016年度補正予算案も喫緊の課題となり、通常国会会期内で成立を図るか、延長国会で成立させるかも検討課題となっている。会期は参院議員半数の任期である7月25日まではぎりぎりまで延長することも不可能ではないが、高度の政治判断を要する問題となっている。
 

首相が通常国会を1月4日召集で閉会を6月1日としたことは、会期末解散、7月10日同日選挙を意識したものと解釈されてきた。しかし4・14熊本大震災の発生は、大局から見て政局展望をがらりと変えざるを得ないものとした。政局も地殻変動である。


同日選挙もいわば党利党略であり、通常の政治状況ならあり得る戦略であったが、震災後1か月半で国会を解散するのは憲政の常道から言っても不可能の類いである。震災の粉じんも治まらず、塗炭の苦しみに国民が置かれている状況下で、政権与党の優位のみを目指して解散することは、困難であるうえに、国民の間に怨嗟の声が湧き起こる可能性が大きい。
 

政府の熊本大震災への対応は1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災の経験をもとに、手抜かりのないものであり、自衛隊員2万5000人の投入など立ち上がりは迅速であった。首相・安倍晋三以下首相官邸の対応も落ち着いており、菅直人の原発事故でのうろたえぶりと比較すれば民主党政権とは雲泥の差がある。


しかし地震対策の正念場はこれからであり、会期末までの政治日程は極めて立て込んでいる。G7サミットが5月26、27両日開催される予定であり、そこへ向けて首相の連休中の欧州、ロシア訪問などが予定されている。サミットの延期は困難と見られるし、予定通りの実現は可能だ。


しかし外遊日程そのものは流動性を帯びるかもしれない。外相など代理の派遣でしのごうとしても、サミット諸国は突発事態を考慮して了解するだろう。しかしロシア訪問は北方領土問題で極めて重要な位置づけとなっており、結局予定通り首相は訪欧日程をこなすことになりそうだ。
 

ここに来て重要なのは災害対策の補正予算案である。首相・安倍晋三は18日の国会答弁で「補正予算も必要では」との問いに、「あらゆる手段は講じていきたい」と述べ、補正予算案の編成検討に含みを持たせた。


3・11東日本大震災の時は第1次災害対策補正予算4兆153億円を4月22日に閣議決定、同28日に国会提出、5月2日に成立させている。2か月弱で成立にこぎ着けた。今回もその段取りで行けば会期末ぎりぎりか、延長国会での成立を目指すことになる。
 

政治日程はサミットを挟んで極めてタイトであり、環太平洋連携協定(TPP)などの成否にも影響が生じる会期延長をどうするかが問題となる。自民党幹事長・谷垣禎一は15日の記者会見で、6月1日までの会期を延長する可能性について「ないとは言っていない。日程は非常にタイトだとは繰り返し申し上げてきた」と含みを持たせている。


谷垣が「タイト」と言うのは参院選があるからだ。参院選挙の年は通常会期の延長は行わない。公選法32条1項で参院選は任期の終わる日の前30日以内に行うとなっているからだ。しかし同2項では任期切れが会期中となった場合の日程を定めている。したがって今回は参院議員の任期満了が7月25日となっており、それを越えて国会を延長することは出来ないが、同日までの延長は不可能ではない。


しかし政府としては地震対策に忙殺されるうえにサミットなど山積する外交課題がある。これに国会対策が加われば、政治力を分散されることになり、官邸には延長に慎重論が強い。
 

一方で延長すれば最大で約2か月の余裕をもたせることが出来、その場合の参院選は8月下旬となりそうだ。


しかし平成に入ってからの参院選は会期を延長した場合なぜか自民党が敗退している。89年は宇野宗佑が女性問題で惨敗。社会党委員長・土井たか子を「山が動いた」と喜ばせた。98年には橋本内閣が惨敗、退陣に直結している。07年には第1次安倍内閣で歴史的惨敗となり、参院自民党は民主党に第1党の座を譲った。


仮に安倍が7月25日までの延長を断行した場合、いったん断念したダブル選挙が再浮上しないとは言えない。その意味からも政治日程上の選択肢は広がることになる。
 

加えて政策面では来年4月の消費増税が極めて困難となった。安倍は18日「リーマン・ショック級、大震災級の事態にならなければ、予定通り引き上げていく」と従来の答弁を繰り返したが、もうその段階ではない。「大震災級の事態」は、今そこに発生しているのである。


大震災に増税の追い打ちをかける政治はあり得ない。14日に開かれた20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議も各国が金融政策、財政出動などを動員して成長を目指す方向で一致しており、サミット議長の安倍としてもこの潮流を踏襲せざるを得まい。したがって消費増税は延期か凍結の流れがいよいよ強まった。

    <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2016年04月15日

◆朴は「反日カード」を切らないだろう

杉浦 正章
 


日米韓安保は維持、慰安婦履行は足踏み続く 
 

韓国の総選挙で与党過半数割れの大番狂わせがあったから、日韓慰安婦合意の挫折など日韓関係に大きな影響が出るという見方が生じているが、果たしてそうだろうか。物事はそう短絡的に見ない方が良い。


大統領・朴槿恵は政権担当4年目に入っても依然4割台の高支持率を維持しており、基盤の弱体化は当面支持率で補って行くだろう。韓国を取り巻く情勢は北朝鮮の核・ミサイル実験で緊迫化の一途をたどっており、3月31日の日米韓トップ会談での安保連携合意の構図の重要性に変化はない。


朴がこれを停滞させることはないだろう。しかし韓国側が努力を約束した大使館前の慰安婦像撤去など慰安婦合意の具体化には影を落とさざるを得まい。
 

総選挙の展望について大統領府は、完全に読み間違えていたようだ。朴側近の中にはセヌリ党が300議席の過半数割れの143−145議席になると予想する向きがいたようだが、マイナス25議席の122議席まで落ちるとは予想していなかった。セヌリ党幹部に到っては180議席を予想、全く時流の変化を読めていなかった。


結果を左右したものは若年層の票であった。大学を出ても職はなく若者の就職率は極めて低い。貧富の差は開く一方だ。この不満が野党への投票行動につながったのだ。韓国国会は野党の「共に民主党」が123議席で第1党に躍り出たものの過半数には達せず、「国民の党」が38議席でキャスチングボートを握った形となった。大統領府は複雑な議会対策を余儀なくされるだろう。
 

対日関係で好都合なのは、朴も日本政府も慰安婦問題が総選挙の争点化することを避け、刺激的な言動を控えたことであった。この結果慰安婦合意に野党は反対であるものの、公約に書いて戦うまでに到らなかったのだ。しかし朴が対議会対策においてはレイムダック化の様相を色濃くしてゆくことは避けられまい。


韓国では任期が1年を余す段階に入ってレイムダック化するのが普通であるが1年8か月を残してレイムダック化は珍しい。レイムダック化した大統領は過去に反日カードを切って、しのぐという動きに出るケースが多かった。李明博のように竹島上陸というパフォーマンスをするのだ。政権末期の反日がお家芸の国である。
 

しかし朴が反日に戻るかと言えばそうとも言えない。なぜなら就任以来3年という長期にわたる「告げ口外交」がもたらしたものは、対日経済関係の悪化と、目を覆わんばかりの不況であった。


昨年12月の慰安婦合意は対中関係を第一義に据えていた朴が、日米韓の関係重視に戻ったことを意味する。歴史認識に固執した“代償”は極めて甚大であったことは間違いない。これは自ら選んだ大転換であり、容易に反転できる構図にはない。安倍と朴はおりにふれ電話会談するに到り、その関係良好化の頂点が、対北朝鮮をめぐって日米韓首脳会談で確認した極東安保で協調強化の合意である。


今後北はそれこそ何をするか分からない異常な指導者の下で緊張感をあおり続ける事が予想され、軍事協力の必要は増加しこそすれ減退する流れにない。
 

逆に言えばこの極東安保の構図が慰安婦問題を律している側面があるのだ。したがって議会が過半数を割ったからといって、朴がそれではすぐ反日というわけにはいかないのだ。しかし現実問題として慰安婦問題での象徴である慰安婦像の撤去が促進されるかというとそう簡単ではない。


安倍が撤去なしに慰安婦支援の団体に10億円を拠出することも考えられまい。したがって朴政権による慰安婦団体への説得工作の可非が依然として焦点となる。合意の具体化が長期化することは避けられないものとみられる。朴は自分の任期中に合意を達成する努力を重ねるものとみられる。 
 

一方で、日韓安保関係では北朝鮮の核・ミサイルなどについて機密情報を共有できる軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結などが課題だが、現在生じている促進の機運を双方とも維持発展させなければなるまい。基本的には信頼関係の構築を図りつつガラス細工のような日韓関係を発展させてゆく必要があるのだ。
 

朴のレームダック化は次期大統領選への動きを公然化させる可能性が強い。ここで問題なのが、日本にとってばかりか韓国国民にとっても最悪の候補・国連事務総長潘基文の登場だ。今年末の任期切れをいいことに早くも事前運動に精を出している。


先の朴訪米に際しては4日間で7回も朴と会談や接触をしている。セヌリ党に有力候補がいないことをよいことに、露骨な「後継」への売り込みだ。しかし潘基文の国連事務総長としての評判は掛け値なしで史上最悪だ。米上院外交委員長コーカーは13日、公聴会で国連が平和維持活動(PKO)の要員らによる性的暴力が多発している問題に対処できていないとして、「いかにして国連の無能な指導者に我慢するかが問題なのだ」と酷評。
 

国連内部の人事も韓国人ばかりを重用、国連職員組合が「親類縁者や友人を頼った求職」を批判する文書を採択する事態まで生じた。ところが韓国民はこれらの愚行を知らない。むしろ英雄視しており、実家は観光コースになっている。


次期大統領候補としては最高の21%の支持率だ。狡猾にも韓国内の評判を狙って対日関係でも反日すれすれの国連外交を繰り返している。公平であるべき事務総長としてあるまじき行為だ。このような人物が大統領になった場合に極東情勢に与える影響は極めて憂慮されるところだろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年04月14日

◆補選ごときがダブルを左右するという噴飯論議

杉浦 正章



オバマ広島訪問など好材料は山ほどある
 

確かに政治に大きな影響を与えた補選が過去に2度ある。いずれも政権が打ち出した消費増税が原因だ。


まずは何と言っても岩手参院補選ショックだ。87年3月前年のダブル選挙圧勝に勢いづいた中曽根康弘が打ち出した売上税に対する反対運動が盛り上がる中で、補選が行われ、反対を掲げた社会党候補が圧勝した。89年2月の参院福岡補選では、有権者が当時の竹下登が進めていた「消費税導入」に嫌気して、社会党候補が自民党候補に完勝した。中曽根も竹下も程なく退陣している。


たしかに補選が政治に影響を与えるケースは多いが、今回の北海道5区の衆院補選が、一部新聞の書き立てるほどの影響を持つかと言うと、ちょっと違うような気がする。今回は補選が大局を左右することは少ないと思う。
 

とかく政治記者は短絡的に政局の動向を断ずる傾向がある。駆け出しほどそうだ。駆け出しは、読みが出来ないから、記事より自己顕示欲が先行して、考えないで突っ走る。今回も補選に勝てばダブル選挙、負ければ参院シングル選挙という判断が、一部政治部の弱い報道機関から出されているが、強いところはさすがにそう断じてはいない。


読売も朝日も決定的な表現を避けている。そもそも「解散様」は一番偉いのであり、補選が如きに左右されてはならないのだ。地方の一選挙区が中央政治のすべてを左右する構図はいけないのだ。だいいち誰も分かっていないが、5区で万一自民党が破れても、大接戦だ。ダブルを断行すれば相乗効果で3か月で議席を奪還できる。


もっとも補選に負ければ新聞の論調を首相・安倍晋三が逆に“活用”して、いったんダブルのムードを抑える可能性はある。そうしておいて、サミット後に解散断行を宣言するのだ。中曽根がやった「死んだふり解散・ダブル選挙」だ。アナウンスメント効果を狙うならこれだ。憎らしいことに中曽根は後で「定数是正の周知期間があるから解散は無理だと思わせた。死んだふりをした」と得意満面で語ったものだ。
 

補選に負ける話ばかりをしているが、接戦でせり勝つという分析もある。安倍は補選候補を勢いづかせるために、消費税延期か凍結の判断を先送りせずに、いま行ってしまう選択もある。方向は定まっているのであり、断言でなくても事実上延期の感じでもいい。


安倍がこれを打ち出せば、追い風になることは間違いない。しかし中途半端な表現でなく、新聞のトップを狙う表現でなければならない。20日に予定されている党首討論あたりの“活用”がいいかもしれない。
 

勝った場合はダブルへの流れは決定的になってゆくだろう。負けた場合でも政治状況を展望すれば、これを補える要素は腐るほどある。だいいちに安倍の支持率が50%前後と驚異的に高い。竹下の場合は89年には3%まで下がった。中曽根も売上税で下がったが、断念して上昇した。さらに、消費増税延期・凍結を歓迎しない国民はいない。


野党は民進党が“ハムレットの悩み”でもたもたしており、絶好の選挙用の材料だ。加えて外交だ。ここに来て“神風”が吹き出した。それはオバマの広島訪問が一段と現実味を帯びる流れとなってきていることだ。実現すればプラハの核兵器廃絶演説に勝るとも劣らない演説をしようとしているに決まっている。


これは歴代自民党政権が維持し、いまや国是となっている「もたず、つくらず、もちこませず」の非核3原則にもマッチする。日米首脳協調の核廃絶宣言は、ダブル選に向けて野党の顔色を失わせる絶好の材料となる。
 

加えてサミットでは景気対策が主眼となる。大きな世界的な潮流は中国など新興国の不振をG7が一致して財政出動することにより回復しようという方向であり、議長国として安倍はこの方向に棹さすわけにはいかない。既に実施に移った予算の前倒しに加えて、消費税延期・凍結と10兆円規模の補正を秋に実現する流れを作れば景気に大きなプラスとなるだろう。


ただでさえアベノミクスを契機に事実上の完全雇用が達成され、企業の収益大好調の状況がある。補選に負けようが勝とうが、小さい小さい。大状況は安倍にとって有利なものばかりだ。
 

こうした潮流に警戒の色を隠さないのが野党だ。共産党書記局長・小池晃は正直にも本心を吐露している。「衆参同日選挙なんてあまりにも邪道過ぎる。今回の補選の結果がこうした無謀な企てを止めさせる方に動く結果となる」のだそうだ。民共選挙協力を分断されるダブルが「怖い怖い」と言っているのだ。

また民進党も幹部が「衆参ダブル選挙になれば野党の協力は分断される。補選に勝ちダブルを阻止したい」とこれまた正直に述べている。いずれもダブルだけはしないでくれと嘆願しているようでもある。嘆願されても安倍は許さないことが大事だ。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年04月13日

◆「ポスト安倍は安倍」だが、岸田も善戦

杉浦 正章



万一の場合はダークホースで菅もあり得る


産経と日経が広島でのG7外相会合の成功で外相・岸田文男が「ポスト安倍」 に向けて存在感が高まったと報じているが、果たしてそうか。確かに「一強多弱」の政治構図のなかで「多弱」の中から頭一つ抜きん出た感じはある。目立ったからである。


しかし産経と日経の論法で言うならば本番サミットで首相・安倍晋三がリーダーシップを発揮すれば「ポスト安倍は安倍」ということになってしまう。安倍がダブルに踏み切って衆参で絶対安定多数を維持すれば、ますます「一強」ぶりは高まる。焦点は外交と言うより夏の“政治決戦”の動向にあるのだろう。
 

確かに自民党内が、政局に向けて今ほど「寂(せき)として声なし」の状況は珍しい。長期政権で最長の7年6か月2,798日を達成した佐藤栄作の場合を例に挙げれば、実に4回にわたり総裁選を繰り返している。つまり党内抗争を繰り返した上での厳しい政権維持であったが、安倍の場合は昨年の総裁選に候補者が立たず無投票で2018年9月まで3年の任期を確保している。無競争で6年が維持される例は自民党史上希有のことである。


場合によっては任期を延長してオリンピックも安倍という事もないではない。この安定の原因は何処にあるかだが、何と言っても選挙に強い首相であることだ。過去3回の国政選挙で与党を圧勝させた首相が依然として支持率50%前後を維持しているのでは、文句の出ようもない。衆参議員は自分の当選が何より大切なのであって、支持率が高いリーダーが自分の為にも必要不可欠なのだ。
 

これには小選挙区制という選挙制度が強く作用している。佐藤の場合は中選挙区制であり、同一選挙区内で自民党各派が戦う構図である。勢い党内もぎすぎすして、総裁選をめぐって怨念の戦いが繰り広げられることになる。


その最大の構図が田中角栄対三木武夫、田中角栄対福田赳夫の戦いであった。小選挙区制では敵は野党であり、党内には敵が生じにくいのだ。加えて安倍の巧みなる党内操縦術がある。将来候補になりそうな岸田文雄、石破茂、石原伸晃を閣内に取り込み、谷垣禎一を幹事長に据えて挙党態勢を形作っているのだ。


これでは、誰も手を出そうとしないし、手を出せば狙い撃ちされるのがオチだ。筆者は週に一度くらい多摩動物園にタカの写真を撮りに行くが、岸田の場合は鷹の大ケージに入ったハトのようなものだ。出来るだけ目立たないようにしていなければ、一発でタカに食われてしまう。その他はスズメでありケージには出入りするが、タカが来ればすぐにケージの外に出てしまう。


こうした中で冒頭書いたように頭一つ出たのが岸田だろう。田中角栄は首相候補の条件として、「幹事長、蔵相、外相の経験があることが必用だ」としたが、自分は外相経験はなかった。
 

確かに歴代首相を見れば吉田茂に始まって岸信介、佐藤栄作、三木武夫、大平正芳などそうそうたる首相が「外務省出身」である。


しかし宇野宗佑から羽田孜、小渕恵三、麻生太郎となるとがくんとレベルが落ちる。岸田は外務省が久しぶりに手にしたエースであり、官僚は先を読むから最大限頭を絞ってG7外相会議を成功に導こうとする。その御輿の上に乗って岸田は、頭角を現したのだ。


昨年末の日韓慰安婦合意もG7に勝るとも劣らない成果であろう。対照的に冴えないのが地方創生相・石破茂だ。紛れもなく伴食大臣の椅子をあてがわれたが、その存在感の無さは格別である。田中角栄とは真逆の対応である。


田中は佐藤から幹事長を外されたとき、冷や飯に甘んじるような男ではなかった。党内に都市政策調査会を作って日本列島改造構想を打ち出し、政権獲得の支柱にした。ところが石破からは「地方創生」で、何ら斬新的な構想を聞けないままである。若手に小泉進次郎がいるが、まだ10年早い。麻生太郎の復帰などは論外だ。


女性政治家は、昨年の総裁選で推薦人も確保出来なかった野田聖子にせよ、高転びに転んだ民進党政調会長・山尾志桜里といいこのところ無能力さが露呈されている。委員会で携帯をいじくり大あくびする元法相・松島みどりなどを見れば、日本の女は政治家には適さないのだろうとつくづく思う。
 

しかしいくら強い首相でも、万一のケースがないとは言えない。病気で倒れたり、不慮の出来事に遭遇したりする可能性は否定出来ない。その場合だれがなるかだが、衆目の一致するところは谷垣であろう。人格といい、党内に敵を作らない姿勢といい常識的にはあり得る。しかし官房長官・菅義偉というダークホースが存在することを忘れてはなるまい。


石原慎太郎は“雑文”「天才」を書いても田中角栄の敵だったから知るまいが、かつて大平が急逝したとき、キングメーカー田中は一時官房長官・伊東正義に視線が及んだことがあった。伊東が固辞したため鈴木善幸になったが、結局「暗愚帝王」と呼ばれて政権を投げ出した。


伊東は大平の緊急入院で内閣総理大臣臨時代理を務めたが、周囲からいくら勧められても首相執務室には入らずに官房長官執務室で仕事を続けた。田中は「伊東があったんだ」と漏らしていた。


その伊東に勝るとも劣らない能力を発揮して内閣を支えているのが菅であろう。絶妙のバランス感覚があり、官邸は菅がいるから持っているようなものだ。万一と言うことがあれば菅への禅譲もあり得ると見る。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年04月12日

◆「謝罪なし」でオバマの広島訪問実現の公算

杉浦 正章

 

ケリーの「ゴー」サインが方向付け
 

歴史問題は、どこかの国のように「謝れ」一点張りでは物事は進展しない。本当の意味での忍耐を「ならぬ堪忍するが堪忍」と言うではないか。米国務長官・ケリーに継いで大統領オバマが原爆死没者慰霊碑に献花をすれば、それが謝罪でなくて何であろうか。言葉は使わなくてもボディーランゲージを読めば明らかに謝罪である。


ケリーの米閣僚初訪問自体が安倍政権による外交の成果であり、これにオバマと続けば大成果と言えるものだろう。ここは半ば実現しかかっているオバマの広島訪問を、万難を廃して実現させるべき時だ。夏の国政選挙に向けてプラスに作用することは間違いない。
 

それにしてもホワイトハウスは大統領選挙の最中という極めて微妙なときに広島訪問の可能性をよくリークしたものである。折から共和党候補のトランプが日韓両国の核保有論を唱えて、核問題が大統領選の争点として浮上している最中である。


民主党寄りのニューヨークタイムズも「大統領が日本への謝罪を示す言動は大きな政治問題となる」と“忠告”しているほどである。それではなぜホワイトハウスがワシントンポストにリークしたかと言えば、トランプ発言を逆手に取れば逆攻勢となりうると判断した可能性が高い。トランプは広島訪問が実現すれば口を極めてオバマ非難に転じて「大統領は懺悔と謝罪の旅に出た」などと批判することは目に見えている。
 

トランプ発言に対しては既にホワイトハウスは大統領副補佐官ローズが「戦後70年堅持してきた核の分野における外交政策の前提は、核兵器の拡散防止だ。どの政党が政権を握ってもこの立場に変わりはなかった」と説明、「既存保有国以外への拡散容認は悲惨な結果をもたらす」と痛烈に批判している。


オバマがこの核拡散防止路線の維持を広島で発言すれば、大きなクリントン支援となるだろう。ポストへのリークで米政府高官は「プラハで核なき世界を訴えた時のような演説をする可能性がある」と述べて、オバマが核なき世界を訴えたプラハ演説の“完結”としての演説をする可能性を示唆している。


8年前の演説後オバマはノーベル平和賞を受賞しているが、その後ウクライナをめぐる米ロ対立で核兵器削減は思うように進まず、北朝鮮への拡散など“核危機”はかえって増大している。
 

加えてオバマ自身の広島、長崎への「思い」がある。2009年の首相・鳩山由紀夫との会談後の記者会見でも、「将来、(広島、長崎)両市を訪問することは当然光栄なことであり、非常に意義深いことだ」と語っていた。6年半ぶりにやっと宿題を果たすことになる。この流れを促進しているのが駐日大使・キャロライン・ケネディであるといわれる。ケネディは自ら「原爆の日」の平和記念式典に出席、折を見てオバマも訪問するようアドバイスしている。
 

ホワイトハウスは「大統領選の年に広島を訪問することで外交上の批判が生ずる可能性を十分認識している。ケリー長官の広島訪問を大統領訪問の前哨戦として注視している」とも述べ、ケリーの広島訪問をオバマ訪問の最終判断をする上でのテストケースと位置づけている。


恐らくケリーは帰国後オバマから見解を求められることになるが、ケリーの発言を分析すればオバマに対しては「ゴー」のサインを送るに違いない。


ケリーが広島訪問で見ていたのは、日本政府だけでなく国民やメディアの反応であっただろう。まず日本政府はこれまで主張してきた「核兵器の非人道性」の表現を「広島宣言」から取り下げた。もちろん背景にはオバマ訪問実現への深謀遠慮があった。


また核廃絶に関しても広島宣言は「現実的で漸進的なやり方でなければ達成できない」と主張した。これは国連に台頭している非核保有国の急進的な核兵器禁止の動きと一線を画し、米、英、仏など核保有国の主張に寄り添ったものである。


さらにケリーが注目していたのは「謝罪」の要求が国民の間にどれほどあるか、またマスメディアがどう反応するかであった。謝罪することは、米国の世論調査で依然として「日本への原爆投下は正当化される」という答えが56%と半数を超え、原爆の投下を肯定的にとらえる評価が強いこともあって、事実上困難である。
 

ケリーも謝罪はしなかったがその発言は謝罪の意味を含むものといえる内容であった。例えば資料館の感想で「衝撃的な展示で胸をえぐられる思いだ」と述べているのはその例だ。ぎりぎりの表現で日本国民に分かってもらおうとしている。芳名帳には、「世界中の人々がこの資料館を見て、その力を感じるべきだ」と記した。記者会見では「いつか大統領もそのひとりとなってほしい」と発言した。


これらの発言を総合すれば、ケリーの“露払い”は、オバマ訪問への道を開いたと受け取れる。
 

日本としては核保有は論外であるにしても、核兵器を振りかざし、今にも使用しそうな発言を繰り返す狂気の指導者が北朝鮮に存在する限り、米国の抑止力としての核は不可欠である。オバマの言う「核なき世界」の実現は容易ではないが、広島でオバマがこの信条を繰り返す可能性は強く、この路線は総じて歓迎されるべきものであろう。

要するに歴史問題は未来志向を優先させるべきだ。「謝罪」の言葉にこだわり続ければ民族の度量が疑われることになる。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年04月08日

◆山尾を担いだ“飯島人事”で大失敗

杉浦 正章



「民進再生」の切り札が「民進死ね」に
 

いつも政局を読み間違える内閣“参与”飯島勲が、今度は民進党を誤導した。週刊文春3月24日号で山尾志桜里を褒めちぎり、「新党の政調会長に抜てきすべき」とアドバイス。これまたしょっちゅう読み違える代表・岡田克也がまる乗りして、山尾を民進再生の最後の切り札とばかりに政調会長に抜擢。


ところが地球5週分のガソリン代を政治資金収支報告に計上していたことがばれて、山尾は高転びに転んで脳振とう状態。民進党は7日政調会長続投にお墨付きを与えて、かばったが、この問題は選挙次元で尾を引く。北海道5区の衆院補選や夏の国政選挙への影響は限りなく大きい。
 

飯島の文春コラム・激辛インテリジェンスの「民主“救いの女神”山尾志桜里」は罪深い。飯島が仕掛けた“わな”かと思いたくなるほど見事に山尾を持ち上げている。持ち上げて、人事で抜擢させ、逆さ落としに落とすわなではないかと思いたくなるほどなのだ。


コラムは「いやー、パリのルーブル美術館で観たあの名画が思い浮かぶぜ。十九世紀フランスの画家ドラクロワが、1830年の七月革命を描いた大作『民衆を導く自由の女神』を知ってるかな」に始まって、「落ちるところまで落ちた野党陣営に射したたった一筋の光明、救いの女神ってわけだよ。」と山尾を持ち上げている。


しまいには「お前マゾか」といいたくなる表現まである。「オレも一度、追及されてみたいくらいよ」だそうだぜ。そして最後に「民主党も国民に全く理解されない維新の党との合併だの、党名変更だのゴタゴタしている暇があるなら、山尾議員を新党の政調会長に抜てきすべきよ。国会のあらゆる委員会で質問の先頭に立たせれば、支持率の急上昇は請け合いだぜ」と締めくくっている。
 

しかし飯島に政治家を見る眼がないのは“美貌?”に目がくらんだのだろうか。本質を突いていないとしか思えないのだぜ。飯島が褒めちぎった山尾の国会質問は、筆者が1月15日に“いちゃもん質問”と断じた部分を、逆に褒めあげているのだ。

飯島は「首相が架空の安倍家の家計に例えて説明しただけの『仮にパートタイムで月収二十五万円だとして』の言葉尻を捕まえて『二十五万円のパートがどこにあるんですかっ!』と切り込んだ」と褒めあげた。加えて「首相も『そんな枝葉末節の議論ばかりだから、民主党の支持率は上がらない』とやり返したけど、『枝葉末節の女性議員』は引き下がらないからスゴイぜ」なのだそうだ。


野党質問を褒めあげ、首相答弁をやっつける内閣参与も珍しいぜよ。したがって、やっぱりわなではあるまいぜ。本気でそう思っているようだぜ。
 

そもそも飯島が「女神」とあがめる山尾にそのカリスマがあるかだ。1989年の参院選でマドンナブームを作り上げて社会党を圧勝に導いた土井たか子と比較すれば天と地の開きがある。おたかさんこそ社会党にとって「女神」であったのだ。


おたかさんは庶民性があったが、山尾はつんつんとしていて、エリート根性丸出しだ。弁明も「蓋然性があった」とか「その事案は」などと検事の口調丸出しで安っぽい。引かれ者の小唄ではないが、引かれ者が検事の口調で弁明しても説得力はない。


おたかさんはふくよかで人を引きつける魅力があったが、山尾は魔女風冷血女のように見える。能面のようで表情がない。おたかさんは女性にしては太めの声だったが、山尾の声は声変わりしない中学校の女生徒のようで、キンキンとうるさい。だからもともとブームなど起きるわけがないのだ。
 

そのうるさい声で弁明しても誰もが納得しない。かつて自分が政権側を追及した言葉がブーメランとして返ってくるからだ。その一番良い例を挙げれば前経済再生担当相・甘利明を追及したときの発言だ。


山尾は「知らなかったで済まされる問題じゃないです。政治収支報告書に目を通さない議員なんか民主党にはいません。私ももちろん把握してます。秘書が知らなかったと言えば秘書が犯罪や泥棒をしてても雇い主の議員が知らなければ責任取らないでいいんですかって話ですよ。例え、甘利議員が知らなかったとしても秘書の犯罪、もしくは犯罪に準ずる行為があったならば、雇い主として議員辞職もしかるべきだと思います」と追及しているのだ。


まさに「民主党にはいない収支報告に目を通さない議員」が本人であったことになる。検事のプロなら一目見て1000万円の上限超えなどは分かる。それとも自分の能力に嫌気がさして「やめ倹」になったのだろうか。「責任取らなくていいんですか」は、国民みんなが山尾に対して思っていることだ。まさに「議員辞職もしかるべき」であろう。
 

民進党内には山尾を代表に担ぎあげて、ダブル選挙を戦うべきだという「岡田降ろし」まで始まろうとしていたようであるが、表面化する前に山尾がつぶれて良かったと思う今日この頃のようだ。それにしても、岡田は自分で掘った穴に落ちるようではどうしようもない。「山尾落ちた民進党死ね」にならないことをひたすら祈るぜよ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年04月07日

◆財務省が増税延期で条件闘争か

杉浦 正章


またも1年半延期説が台頭


自分は増税延期だが首相・安倍晋三は延期したら総辞職せよとは驚いた。民進党代表・岡田克也の主張は天地があべこべだ。そもそも民進党は野田政権がリードして3党合意で10%増税を決め、公約として掲げたのであり、延期すれば公約違反の最たるものは自らの党ではないか。


曲がった牛の角をまっすぐにするために叩いたり引っぱったりすると、牛は弱って死んでしまうことを「角を矯めて牛を殺す」というが、その最たるものが公明党代表・山口那津男だ。自分の「手柄」としている軽減税率にこだわるあまり、増税延期反対論を声高に発言している。


これは選挙母体である創価学会の大勢とはマッチしない。学会の大半を占める低所得層は増税そのものに反対なのであり、増税がなければ軽減税率もない方が有り難いのは当然だ。そしてここに来て、身の危険を感じ始めたのか、財務官僚が“条件闘争”に転じ始めたようだ。
 

世の中矛盾撞着はつきものだが、消費増税再延期が「アベノミクスの破たんである」という論調は、民進党と朝日・毎日の安倍攻撃の中核となっている。これは、国政を政争の具とする愚論の典型であり、アベノミクスは安倍が旗を掲げ続ける限り破たんしないことが分かっていない。すべてはスティグリッツが官邸の会合で「大低迷」と形容した世界経済の収縮に原因があり、その原因をアベノミクスが作ったわけではない。


中国経済の低迷、石油価格の下落は他律的な要因であり、今後世界経済の低迷は3年は続く。それに対応して政策を柔軟に転換させることができるのは自民党政権であり、状況変化に対応出来ずにつぶれたのは民主党政権だ。そもそも企業収益が史上最高となり、事実上の完全雇用を国民が謳歌(おうか)できるのはアベノミクスがあるからだ。保育児童問題も完全雇用からの派生問題であり、安倍政権批判は的外れだ。
 

確かに安倍は、14年11月18日、消費増税の延期を公表した記者会見で「再び延期することはない。はっきりと断言します。景気判断条項も付すことなく確実に実施する。3年後に消費税引き上げの状況を作り出すことができる」と発言した。


しかし政治は状況の変化に応じて臨機応変の対応をすべきであり、その判断基準は国民大多数の安寧にある。「何が何でも増税するから庶民は死んでください」というのは政治ではなく独裁だ。
 

岡田はNHKで「首相はリーマン・ショックのようなことがない限り、必ず来年4月に消費税を上げると言って解散した。先延ばしは、重大な公約違反だ。内閣総辞職に値する」と発言したが、肝心の増税延期については「苦渋の選択だが先延ばしも一つの選択肢になる」と述べた。

冒頭述べたように自分は延期してもいいが安倍はいけないという小学生でも唱えない論理矛盾を公の場で展開するようでは、“出戻り新党”も先が見えた。


民進党にとってジャンヌダルクかと思われた政調会長・山尾志桜里も、自らが代表を務める政党支部の政治資金収支報告書に多額のガソリン代を計上していたことがばれて高転びに転んだ。検事が脱法行為を働いてはいけない。保育所問題で政権を追及する前に、自分の頭のハエを追うことが先決だろう。焦点の北海道5区の衆院補選に応援で使える状況ではとてもなくなった。どこまでついていない政党なんだろうかとつくづく思う。


やはり3年3か月にわたる政権党としての大失政の連続が天罰を下しているのだろう。
 

公明党の山口も遠吠えが度を過ぎている。「簡単に消費税率の引き上げを先送りすべきではないと思う」と延期反対論を展開しているが、これも群を率いるリーダーとして素質を問われる。先には同日選に反対しながら、安倍との会談後に賛成に転じたが、臆面もなく“転ぶ”人のイメージが定着している。消費増税延期支持は読売の調査で65%に達しており、おそらく創価学会員は大多数が延期支持ではないか。支持母体の真の意向を確かめてから発言した方が良い。
 

そしてここに来て注目の財務省が転向し始めたという話が永田町に伝わっている。同省は「歯止め付きの延期」という条件闘争に変わってきているというのだ。財務省は大蔵省の昔から官邸に対峙して、第2官邸の“権勢”を意のままにしてきたが、安倍官邸の強靱さに折れざるを得ないと判断しつつあるというのだ。


場合によっては官邸から人事で仕返しをくらいかねない状況になってきているのが、恐怖感を生じさせているのだ。その条件闘争とはまたまた1年半延ばすというものだという。1年半の延期で17年4月実施を18年10月実施にする、という説だが、安倍の任期は延長がなければ18年9月だから、安倍がいなければもう延期はないと判断しているというのだ。まるで政局を知らない官僚らしい対応だ。
 

財務省は法律に時期を明記して歯止めにするというが、今回の例を見ても法改正されればおしまいだ。官邸サイドからは消費増税凍結論や、何と減税論まで出ている。8%を7%にするとか、5%に戻すなどという説が出ているがこれは財務省へのけん制だろう。


いくら何でも減税はないだろうと思う。社会福祉予算を減らすと財務省が言い出せばおしまいだ。凍結があるかどうかだが、2回にわたる延期が物語るものは、デフレ期の増税は成り立たないということである。18年はオリンピック景気が頂点に達しつつある時期だが、オリンピックが終われば不況がすぐに来る。延期を繰り返すよりいっそ当分凍結した方が効果的ではないだろうか。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年04月01日

◆日米韓が「対北準軍事同盟」の色彩強める

杉浦 正章



極東のパワーバランスに決定的影響
  

対中けん制の側面も


今にも北朝鮮が5回目の核実験を断行するという緊迫した状況下において、日米韓3国首脳が31日、北朝鮮の核ミサイルに対抗し、これを抑止するために安全保障と防衛協力の推進で一致、事務当局に具体化を指示することを決めた。


これは、紛れもなく北朝鮮の核脅威に対する3国準軍事同盟の色彩を濃厚に打ち出したものであり、極東のパワーバランスに決定的な影響を与えることが確実視される。


安保法制を実現させた日本は、一朝有事の際は集団的自衛権の限定行使の範囲内で最大限の貢献を求められることになる。この事実上の対北朝鮮3国同盟は、今後極東の安全保障の核となることが予想され、極東で孤立気味の中国の警戒を呼ぶことは必至であろう。


国務次官補・ダニエル・ラッセルが自民党総務会長・二階俊博との会談で3国首脳会談について「北朝鮮の問題についても議論することになっており、非常に重要な話し合いになる」と述べている。言葉使いに慎重な外交官が「非常に重要」と表現したことが気がかりであったが、まさにこれだったのだ。


会談後記者団に首相・安倍晋三は「地域の平和と安定に責任を有する3首脳が一堂に会し、法の支配やルールに基づく行動の重要性を確認し、北朝鮮やグローバルな課題について、率直に意見交換できたことは極めて有意義だった」と強調した。


そのうえで、安倍は、「3か国が直面する地域情勢を考えれば日米韓が協力を緊密にしていく必要がある。特に北朝鮮が核ミサイルの能力を向上させていることは3か国だけでなく国際的な脅威だ。3か国の外務・防衛当局間で具体的な安全保障・防衛協力を推進するため、3首脳が事務当局に指示することとした」と述べた。


つまり安倍とオバマと朴槿恵は北のいまそこにある「核危機」に対して、場合によっては軍事的な対応をせざるを得ないという情勢認識で一致したのだ。北の攻撃に対しては共同して軍事行動を取る方向を確認したことになる。安全保障の構図としては日米安保条約と米韓相互防衛条約をブリッジとして3国が協力する構図であろう。


これまで3か国は北の脅威に直面しつつも、慰安婦問題をめぐる日韓対立が足かせとなって協力体制は確立できなかった。ところが昨年末の安倍と朴槿恵による「慰安婦合意」は、安全保障面での情勢をがらりと変えた。


朴槿恵は中国を刺激するTHAADミサイル配備で米国との交渉に入り、習近平との関係は悪化した。日韓関係は安保面でも秘密情報を共有・保護するための法的な枠組み=GSOMIAの早期締結に向かって動き出している。これはワシントンにおける朴槿恵の首脳会談の日程を見ても明らかだ。会談は韓米、韓米日、韓日会談の後に習近平との会談を設定しているのである。
 

オバマはこの潮流の変化を好機ととらえ、日米韓安保協力の枠組みの実現へと動いたのだ。朝鮮戦争当時は日本の軍事協力は不可能であったが、「第2次朝鮮戦争」が発生すれば日本は軍事的貢献をせざるを得なくなるだろう。


折から北は核の小型化を達成するための第5回核実験を行う寸前の状況にある。これにミサイルの大気圏再突入の技術が加われば米国への核恫喝が現実味を帯びてくる。金正恩は「国家防衛のために実戦配備した核弾頭を任意の瞬間に発射できるよう常に準備せよ」と軍に指示している。心理戦だが、まかり間違えば何をするか分からない独裁者である。


北が核兵器を使おうとしただけで、確実に全面核戦争に発展する。安倍が「3か国だけでなく国際的な脅威」と発言したのは当然であり、そのために手をこまねいているわけにはいかない。


一方オバマがこの3か国軍事連携に北への圧力に加えて、対中けん制の意味を持たしていることは否定出来まい。既に日米豪は準同盟国的な関係が出来上がっており、南沙諸島問題を抱えるフィリピンやベトナムとも共同歩調を取り、対中包囲網を作りつつある。


しかし肝心の極東では慰安婦問題がネックとなって3か国協力体制が出来なかったのだ。対北関係は6か国による話し合い解決など現段階では不可能な状況となっている。中国は米国が北との話し合いに乗り出すよう説得する方向にあるが、まず早期に実現する空気にない。話し合いを主張するなら中国は金正恩を説得しなければならないが、北との関係は悪化の一途をたどっておりその可能性も小さい。
 

こうして詰まるところは軍事力によって北を封じ込めるしか当面手立てがないのだ。史上最大の米韓合同軍事演習の目玉である金正恩暗殺を狙う「斬首作戦」は、北の出方によっては現実味を帯びるものとなる。こうした中での日米韓安保協力の体制確立は国民の生命財産維持にとって不可欠のものとなる。

【筆者より 春休みを取って旅行するため再開は7日となります】

       <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2016年03月31日

◆トランプの本質は“幼児的攻撃性”の小商人

杉浦 正章



「対牛弾琴」だが反論する
 

なんともはや米大統領選はとんでもない“化け物”を生んでしまったようだ。本選挙では民主党のクリントンが勝つだろうが、米国社会の歪みを見る上で極めて興味深いのが、共和党候補が実業家のドナルド・トランプになりそうなことだ。


その発想たるやすべてを自分の不動産業の経験から割り出す、「経費削減至上主義」だ。最近では日本への軍事経費を削減するため、日本の核武装を勧めるに到っている。すべてが安全保障への無知から来る“小商人(こあきんど)”の発想であり、成り上がりの財界人にみられる「幼児的攻撃性」の権化のようでもある。


北朝鮮にも金正恩という幼児的攻撃性の権化が存在しており、まさに世界の2大奇人が太平洋をへだてて向き合っている。いずれも論語の「小利を見れば大事ならず」で、常に小さな利益を重視して、大きな事業ができるような政治家ではない。


幼児的攻撃性は専門家によると先の先まで読むことが出来ず、常に敵を作る傾向がある。自分の目的や願望を拒むものは両親ですら敵という精神状態だ。


最近のトランプは移民に対する差別発言ばかりでは票にならない事に気づいたか、矛先を日本に向け始めた。最大かつ最良の同盟国を敵に回す発言だ。牛に琴を弾いて聞かせても意味がないことを「対牛弾琴」というが、ここは反論せざるを得ない場面でもある。
 

まずトランプは「米国が日本を守っていることをほとんどの米国人が知らない。日本に金を払わせる。負担を大幅に増やさなければ在日米軍を撤退させるべきだ」と、自分の無能なる尺度を丸出しにして発言した。これは無知から来る愚者の理論だ。日本が世界で唯一「思いやり予算」として今後5年間に9465億円を払う約束をしたことを知らない。


年間1848億円であるが、それとは別に基地周辺対策費、施設の借料、土地の賃料などを加えると年間なんと6710億円の支払いとなる。人種差別主義者だけあって、北大西洋条約機構(NATO)には何も言わないが、NATOが思いやり予算を払っているなどと言うことは聞いたことがない。


湾岸戦争の際にも130億ドル、約1兆5500億円もの戦費を負担しており、現在の中東危機に対する経済的貢献も大きい。日本のカネがなければ米国の世界戦略は成り立たないのだ。「その無知を恥じよ」と言っても馬耳東風だろうが。
 

さらにトランプは「日本は北朝鮮から自分の国を守った方が好都合だ。北朝鮮が核を持っている以上日本も核兵器を持った方がいい」と日本核武装論を展開した。これは日本に核武装させないというのが米国の極東安保の基本であることすら知らない。


なぜなら日本が核武装すればだいいちに「核の真珠湾」が怖い。信長の昔から奇襲攻撃に長けた民族であるからだ。トランプの居るホワイトハウスに正確に命中する核ミサイルなどすぐにでも完成できる。


第2の理由は世界第3の経済大国の核武装は日本が軍事大国化することを物語っており、単に極東のみならず世界の勢力バランスが大きく崩れる。


したがって世界の安全保障は常に動揺する。核不拡散条約は崩壊し、世界の政治・外交・安保の秩序も予測不能の事態となり、もともと機能を発揮しない国連はさらなる弱体化を招く。米国の地位は相対的に低下して、小商人が目指す「米国の復活」などは絵空事となるのだ。


トランプは格好づけか「外交政策チーム」なるものを作ったが、そのトップに据えたのが上院議員・ジェフ・セッションズ。共和党では最右派に属し、不法移民問題に熱心に取り組んでいる議員だが、共和党本流からは馬鹿にされている。ブレーンとして機能するわけがない。


さすがに国務省のカービー報道官は、荒唐無稽(むけい)の対日発言に「ケリー国務長官も当惑している。アメリカは日本や韓国との条約を真剣に守るという考えに変わりはない」と、しごく当たり前の発言で沈静化に懸命だ。しかしただでさえ日本の一部にある核武装論を刺激してしまった。


大阪府知事・松井一郎は29日核保有の是非も含め安全保障政策の議論を進めるべきだとの考えを示した。松井は「日本はどうするのか政治家が真剣に議論しないといけない。完璧な集団的自衛権の方向か、自国で軍隊を備えるのか。そういう武力を持つなら最終兵器が必要になる」と述べた。まともな核武装論としては最初のものだ。
 

こうして米国内にとどまらず、世界中に迷惑をもたらす奈良騒音傷害事件の騒音おばさんのように、騒音老人がかしましいが、日本のマスコミ、とりわけ民放テレビは、今にも大統領になるような面白半分の報道を繰り返さない方がいい。予備選で大統領候補になっても本選挙が物事を決める。


共和党も分裂するかも知れない。まだ曲折があるうえに世論調査は冷静な傾向を示している。CNNの最新の世論調査でも全体の56%がクリントンが本選を制するだろうと回答。トランプの勝利を予想したのは42%にとどまっている。トランプの大衆催眠術にかかった米国民も、やがては目覚めると思う。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年03月30日

◆ナイヤガラ瀑布は誰も止められない

杉浦 正章



同日選へ与野党が雪崩を打って走り出した


 ナイヤガラ瀑布の流れは誰に求められない。だいいち誰も止めようとしていない。首相もだ。


予算成立で政局は雪崩を打って衆参同日選挙に向けて走り始めた。29日の記者会見は首相・安倍晋三が衆参同日選挙を止める最後のチャンスであったが、「頭の片隅にもない」と述べるにとどまった。本当は「やるかやらないか」と「やるにはどうするか」で頭の中が98%いっぱいなのに「片隅にもない」とは傑作だ。

しかし会見ではそのいっぱいの頭の中の傾向をちらりと垣間見せた。それは「予算の成立こそ最大の景気対策と申し上げてきた。早期に執行することが必要だ。可能なものから前倒し実施するよう麻生財務相に早速指示する」という発言だ。


明らかに選挙を意識した景気対策である。安倍はサミットを前に予算とは別に秋にも補正予算の編成も含めた経済対策を打ち出すことを考慮しているようであり、サミットでは財政刺激策の必用で一致する流れとなってきている。


こうした状況を見れば、走らせておいて参院選だけの選挙を選択する余地は極めて少ない。シングルで参院選に敗北した場合、久しぶりの“政局”が待っているからだ。首相の姿を読んでか、こっそり首相からささやかれたからか、これまでダブルに反対だった公明党代表・山口那津男が、筆者が「反対論の公明はしょせん“転ぶ” 」と予言したとおりにすぐ転んだ。


山口はダブル選挙について「解散権を持っているのは首相だ。安倍が決断すれば、受けて立たざるを得ない立場だ」と述べ、安倍の判断尊重に大きく転換した。やっと支持母体の創価学会のダブル容認論が伝わったかのようである。


山口は「仮に打診があれば、その理由や勝てる可能性、国民に説得力があるかを真摯(しんし)に相談したい」とまで述べたのだ。しかし未練たらしく「ダブル選は望ましくないと言ってきた。(自民党との)選挙協力がしづらくなるし、政権すら失ってしまうリスクが高い」と付け加えたが、引かれ者の小唄のように見える。
 

一方、幹事長・谷垣禎一も変わった。これまで谷垣は参議院議員会長・溝手顕正が正直にも「ダブルに賛成」と述べたことに対して「参議院側の願望も含めての話ではないか。ばらばらに、いろいろな発言が出てくるのはいかがか」と苦言を呈するなど慎重だった。ところが29日の記者会見で、衆参同日選に関し「同日選や衆院選については現在、口をきかないことにしている。


幹事長が『こうだ、ああだ』と言い出したらしようがない。私は慎重だから今は発言を差し控える」と述べた。口を利かないというのは党内が走り出すことを認めるということなのだ。


こうした与党幹部の言動を固唾をのんで観察している野党が「すわ解散」と踊り出さないわけがない。民進党の岡田克也代表に到ってはもはやとどまるところなきがごとく選挙一色の様相だ。結党後の記者会見で「衆参ダブル選の可能性があるので、候補者擁立をさらに進めていきたい。新しい党になったので公募も新たに行いたい」と言明。


両院議員総会でも「結党の勢いを衆院補選や参院選につなげたい。とにかくしっかり結果を出していこう」とハッパをかけた。「出戻り新党」と揶揄(やゆ)され、共同通信の調査でも、民進党について「期待する」が26.1%、「期待しない」が67.1%。「結党の勢い」が何処にあるのか分からないがとにかく括弧付きの「結党の勢い」なのだ。しかし民進党には大きなジレンマがある。
 

政策上のジレンマだ。共産、社民と共同で安保関連法廃止法案を提出して、これを軸にダブルを戦おうとしていることだ。シールズなどという何も知らない若い衆をだまして動員し、国会前を占拠して、「安保反対が国論」とばかりに示威行為をするのが基本戦略だ。これが成り立つかどうかだが、極東情勢を展望すれば時代錯誤もいいところである。 


筆者は安保法制の抑止力がなければ北朝鮮が本気で露呈させる「極東の危機」を乗り越えられないだろうとみる。そしてその危機は今そこにあるのだ。安倍が記者会見で「先般、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際、従来よりも日米はしっかりと情報を共有しており、体制整備も、以前より格段に進歩した。


これはハリス太平洋(軍)司令官もそう述べている。まさに助け合うことのできる同盟は、その絆を強くした、その証左であろうと思う」と言明したが、まさにその通りである。日米の信頼関係、とりわけプロである制服組のそれは法制により大きく進歩した。
 

これに異論を唱えて選挙に勝てるだろうか。今後北は31日からの核サミットに合わせて狂気の核実験をしかねない状況があり、ミサイルも狂ったように撃ちまくる。民主党は一部で臆測されているように金正恩が核サミットに合わせて核実験をやりかねない状況を何と見ているのだろうか。日米協調で北の暴挙を阻止する安保法反対で日本の安全は確保出来ると見ているのだろうか。まさに反対論は国民の生命財産無視の観念論に過ぎない。
 

こうして流れは滔滔(とうとう)とダブル選挙に向かっているのだ。自民党幹部の中には総裁特別補佐の下村博文のように「4月24日の北海道5区の衆院補選で自民党が敗北した場合は、ダブルは困難になる」などと若い記者をだます発言をする向きがいるが、気は確かかといいたい。


同補選はまず現在リードしている自民党が勝つと思うが、負けてもダブルの流れには影響は出ない。そもそも小局が大局を左右したためしがない。木の葉を見て森を見ない浅薄なる“読み”であろう。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)