2017年03月09日

◆やはり解散・総選挙は“常在戦場”だろう

杉浦 正章


来年秋説は鬼が笑いころげる
 

来年のことを言うと鬼が笑うというが、鬼が笑いころげるのは解散が来年秋以降という報道だ。朝日がトップで書き、後追いの時事が後追いしているから火のないところに煙は立たない。おそらく首相側近が首相の指示に基づいて打ち消しているのだろうが、逆に読売は来年秋説も紹介しながら「4月解散」を見出しに取っている。


なぜこうも違うかと言えば読売は政局を読んでいるが、朝日は読んでいないという差であろう。だいいち朝日は、昨年暮れに「1月解散」とトップで書いたと思ったら、新年早々に「解散は今年秋以降」、今度は「解散は来年秋も視野」だそうだ。


むかしテレビに出ると「解散だ」と騒いで1つも当たらなかった民放記者が「解散小僧」と自民党担当記者の集まり平河クラブで馬鹿にされていたが、朝日に「解散小僧」呼ばわりは恐れ多い。名付けるとすればより高尚な「いつでも解散症候群」だろうか。ということは4度目の正直でまた変わりうるのだ。
 

解散の理由について朝日は「報道各社の世論調査で内閣支持率は今のところ堅調で、民進党など野党の支持率に勢いはみられない。このため政権幹部は、任期満了に近い来年秋まで衆院解散を先送りしても、勝機を見いだせない『追い込まれ解散』となる可能性は低いと判断している」と書いているが、これも不可解だ。今の内閣支持率が来年秋まで持つ保証などどこにもない。支持率ほど揺れ動くものは無い。政権幹部がそう考えているとしたら「ノーテンキ」もいいところだろう。屁理屈だ。
 

解散、首相退陣など政局問題は、政治記者にとって一番困難な判断力が要求されるものだが、解散には定理がないようで一定の定理はある。それは任期が2年を過ぎたらまさに解散・総選挙は常在戦場の段階に入る。ドラえもんのどこでもドアではないが、「どこでも解散」の状況に至るのだ。極端に言えば解散風は一か月ごとに流れるという段階に入るのだ。この定理を基準に考えればとても解散が一年半後などという、悠長な判断はできまい。


それではなぜ安倍側近らしき者が解散をリークをしたのだろうか。おそらく安倍が4月解散とか、都知事小池百合子を蹴散らすための夏の都議選とのダブル選挙を考えているフシがあるからだろう。日経などが書いている。これが図星だから安倍はかっとなって、側近に全面否定を命じたのではないか。側近も「解散ド素人」だから、解散の定理などは知らない。だから出来るだけ遠くに設定してしまえというわけで、来年秋などという発想が出てきたに違いない。
 

逆に安倍ほどだまし討ち解散を狙う首相は珍しい。その根拠として判断するのは支持率だ。現在内閣支持率は60%前後と高く、自民党支持率もNHKで38%と高止まりしている。蓮舫不人気で民進党は6%だ。支持率が60%などという首相は滅多にいない。60%あれば、前回取り過ぎたから目減りはしても、大幅に負けることはあるまい。


蓮舫不人気は解散のチャンスでもあるのだ。だいいち自民党幹事長・二階俊博の記者会見で平河クラブは朝日の「来年秋説」を質すと思ったら、これを無視して4月解散の可能性を聞いている。二階は安倍が17年度予算案成立後の4月にも衆院解散を断行するとの観測が政府・与党内にあることについて「今のところ、何の根拠もなく言っていることだと受け止めている」と述べた。


しかし「私たちは常在戦場で、常に選挙を考えなければならない立場だ。刺激になって、早く調整や準備をしなければならないと感じさせてくれる、大変いいご意見だ」とも皮肉った。否定も肯定もしていないということは、まだ4月説が生きているということだろう。
 

注目すべきは公明党代表・山口那津男の発言だ「解散のタイミングは首相の専権事項だ」と述べるにとどまっている。普通なら4月解散はともかく、少なくとも都議選とぶつかるような解散には反対するところだが、珍しく反対を述べない。これは都議会公明党が自民党に反旗を翻して小池に急接近していることを引け目に感じているからかもしれない。従って安倍は都議会との同日選挙をぶちかます戦略も確保出来ているということになる。
 

そもそも来年秋の任期満了選挙が駄目なのは、それを狙ったら途端に首相の求心力が失われるからだ。首相というのは解散という伝家の宝刀をいつでも抜けるようにしておくからこそ、求心力が増すのだ。リーク源は「18年の総裁選圧勝の勢いを勝って総選挙になだれ込む」などと勇ましく話しているようだが、もともと勝つ総裁選挙が総選挙の「勢い」になるとも思えない。


若い記者は麻生太郎の例を引いて任期満了選挙の不利を説いているが、もっと政治史を遡れば三木武夫が田中角栄に解散を封じ込められて任期満了選挙に追い込まれて大敗、退陣したことが一番の好例だ。三木は田中派の閣僚が閣議で解散に反対したため、解散を断行できなかったのだ。こう見てくるとやはり解散・総選挙問題はいつでもありの常在戦場とみなければなるまい。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年03月08日

◆まず「準先制攻撃能力」で北に対応すべきだ

杉浦 正章
 


安倍は慎重か、米紙が報道


米CNN放送によると、トランプが「金委員長は正気でないのか、抜け目のない戦略家なのかを見極めようとしている」のだという。トランプにしてはいいところを突いている。確かに金正恩の正体は分からないが、興味深い話がある。それは金正日の元専属料理人、藤本健二(仮名)が昨年4月に再訪した北朝鮮で、第1書記金正恩がミサイル実験について「戦争する気はない。外交の人間がアメリカに近づくと無理難題を突き付けてくる。むかっとしてミサイルを発射している」と発言したということだ。


これによると時々むかっとして、正気を失っていることになるが、金正男の暗殺といい、このところ正気喪失の様相が続いていることは間違いない。
 

日米首脳が7日の電話会談で「北の弾道ミサイル戦力が新たな段階に入った」と言う認識で一致したことが何を意味するかだ。常識的には多数のミサイルが同時に発射され同一水域に落下したことを意味するのだろう。加えて在日米軍基地を攻撃すると公言したことも新しい段階だ。しかしそれだけではありきたりの見方で説得力がない。問題は首相・安倍晋三がそう発言する根拠だ。誰も指摘していないが、おそらく自衛隊は北のミサイル発射のたびにイージス艦や地上から迎撃のシミュレーションを実施しているに違いない。


なぜなら政府は北ミサイルへの破壊措置命令を常時発令しており、ミサイルの軌道を追ってシミュレーションをしなければいざ実戦の時に役立つはずがない。それが出来なければ防衛態勢を取る意味がない。従って4発同時に落下した今回も、それを実施しておそらく同時迎撃不能の結果が出たに違いあるまい。これは最高機密に属するから漏洩は秘密保護法違反になる。従って誰も漏らすことはないが、名探偵明智小五郎が推理すればそういうことになる。安倍が「今回の弾道ミサイル発射は、北が新たな脅威になったことが明確になった」と述べる根拠はそういうことであるに違いない。米第七艦隊も同様のシミュレーションを実施して、完全なる迎撃不能との結論に達したのだろう。だから安倍とトランプはその認識で一致したのだ。
 

そもそもイージス艦が1隻で何発のミサイルを同時に撃ち落とせるかだが、2発説が有力だ。今回の場合は地上からの迎撃ミサイルを含めても4発全部を落とせなかったに違いない。例えば実戦において200発あるノドンを5カ所から4発ずつ発射した場合20発が飛来することになるが、この飽和攻撃に耐えられる迎撃態勢確立は並大抵ではないことを物語る。それではどうするかだが、戦略的には先制攻撃をすると同時に迎撃することが極めて重要になってくる。


ところがこれに安倍は慎重であると米有力紙が伝えている。ウォールストリート・ジャーナルによると、北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射の準備をしていることが分かった場合、米軍が関連施設を先制攻撃する「軍事手段」のカードがトランプの対北戦略に盛り込まれる見通しだという。同時に、現在行われている米韓合同訓練「斬首作戦」では、金正恩政権の転覆も視野に入れている。
 

ウオールストリート紙はトランプ政権の軍事力行使について、「事情に詳しい関係者によれば、米政府は最近の同盟諸国との協議の中で、対北朝鮮戦略に軍事的側面が含まれる可能性を強調している。2月に日本の安倍晋三首相とトランプ氏が2日間にわたって首脳会談をした際は、米側が北朝鮮に対して全ての選択肢が検討されていると複数回にわたり述べた。このとき日本側に伝えられた選択肢の中には、北朝鮮が大陸間弾道ミサイルの発射実験をする構えを見せた場合などに、米国が軍事攻撃をすることも含まれているという」と報じている。


さらに重要なことに同紙は「この関係者は『日本側はこのシナリオを危惧していた』と話す。米国の同盟諸国は数年にわたって米政権と足並みをそろえ、核開発計画を阻止するため外交・経済面で北朝鮮に圧力をかけ続けてきた。しかし新たな戦略見直しが大幅な方針転換を示唆していることで日本と韓国は不安になっている」との見方を伝えている。安倍と名指しではないが、この文脈から推定するとおそらく安倍は危惧の念を伝えたのだろう。
 

安倍がなぜ慎重かと言えば、先制攻撃に失敗した場合に生ずる日本国民への惨禍を想定しての事と思われる。今回の電話会談でトランプが軍事行動をほのめかしたのか、安倍がどういう主張をしたかは知るよしもないが、ことの重大性は北がミサイル発射を「在日米軍基地攻撃の訓練」と日本をあざ笑うような表現をしたことにある。


場所は特定していないが、例えば、現在も朝鮮国連軍後方支部が存在するキャンプ座間を狙えば首都圏である。原爆ならその被害は計り知れない。しかし、大気圏再突入時に核爆弾を熱で損傷させない技術はまだ確立されておらず、先制攻撃をするとなれば今しかないことをは確かだ。
 

いずれにしても、先制攻撃能力は日本も保持しなければならない事態ではないか。平和が天から降臨する時代は終わった。天から降るのは北のミサイルだ。それも日本名指しでやると言っている。地上配備型イージスシステムや終末高高度防衛ミサイル(THAAD)システムなど防御拡大も肝要だが、決め手は米国の判断通り先制攻撃にある。防衛省は莫大な金がかかるというが、常に完璧なシステムを求める同省の主張は脇に置いて、必要最小限の対応で行けばよい。「準先制攻撃能力」でも相当な抑止になる。


最初からフル装備など不要だ。米国の攻撃を補完出来るようなものでいい。例えば新型戦闘機F35に先制攻撃能力を付けることから始めればよい。米軍との連携体制を作れば可能になるではないか。知恵を出すときだ。
 

米国は万一韓国で大統領選挙が行われた場合THAAD反対の候補が大統領になることを危惧してか、7日に急きょ配備作業を開始した。さすがに米国のやることは素早くて舌を巻く。けんかのやり方を知っている。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年03月07日

◆“森友学園疑惑”は「安倍勝利」が確定

杉浦 正章



共産・民主主導の“ぬれぎぬ誘導”は破綻
 
新聞は国有地格安取得がブーメランに
 

要するに問題の核心は、籠池泰典という“教育者”の働きかけに政界が踊らされ、共産党の印象操作に同調したかのように朝日を中心とするマスコミがあたかも大疑獄が隠れているかのように報道してしまったということにある。とりわけマスコミの多くが、財務省や国土交通省航空局がゴミで埋まった“わけあり物件”を一日でも早く処分したいと焦っただけなのに、「大きな政治の力」が作用したとあたかも首相・安倍晋三が背後にいて操作しているかのような邪推をした。


昭恵夫人が森友学園の名誉校長に祭り上げられていた事となんとか関連付けようとしたのだ。しかし安倍がカンカンになって6日も再度「私も妻も不当な働きかけ、売却あるいは認可には一切関わっていない。関わっていれば職を辞すると明確に申し上げている通りだ」と“究極の打ち消し”発言したことで、多くのメディアが「待てよ」と踏みとどまらざるを得なくなった。そして安倍の答弁が「安倍の勝ち」を判定するものとなったのだ。


そもそも大手新聞社は、1970年代から80年代にかけて政治部が中心となって東京本社用の国有地払い下げに必死となって政治家に働きかけ、格安で入手したのを棚上げにしていいのか。やればやるほどブーメランとして返ってくる事案である。
 

複雑にみえるが数字は3つだけ覚えればよい。焦点は9億5600万円の国有地を1億3400万円で払い下げたことが妥当であったのかということだ。 国が埋設物撤去費用を8億1974万円減額した結果である。安倍も6日指摘していたが、これだけ安く減額するには大きな政治的な力が働くという「推理」は誰でもできる。


しかし共産・民主両党のように証拠のない推理を邪推という。自民党の西田昌司が6日指摘したようにこの問題は「その思い込みから始まった」のだ。従って西田が「はっきり言って安倍首相はえん罪である。疑惑を言うマスコミは事実をしっかり報道していない。トランプさんに言わせればフェークニュースだ」と断定した。うごめいた“雑魚”は別として、首相の犯罪性はゼロとなった。


満を持した民主党の福山哲郎の質問は宙に浮き、蓮舫の質問にいたっては事件への無知を露呈させ、安倍をあきれさせた。新聞と軽佻浮薄な思い込み報道を繰り返した民放テレビは反省すべきだ。朝日は執拗に7日の社説でもまだ昭恵夫人を“追及”しているが、首相夫人として外交内政で国のためにめざましくボランティア活動をしている希有な存在であり、ケチを付けてはいけない。
 

「安倍えん罪」の根拠は国会における事務当局の答弁がようやく分かりやすくなったことにもある。おそらく質問者西田との事前の調整があったのだろうが、まず航空局長佐藤善信が積算の根拠を詳細に明らかにした。「公共事業の積算根拠に基づいて廃材などの量に単価をかけて算定した。処理費用は複数の事業者の費用を比較した」のだという。そしてなぜ国が撤去費用を見積もったのかという核心部分について理財局長佐川宣寿が、「小学校の建設を滞りなく進めるためだ。」と発言、4月の開校に間に合わせるためだったことを明らかにした。


要するに事務当局が売り急いだのは物件が紛れもなく“わけあり”であるからで、隣接地の売却価格が高かったのはゴミ処分を買い主に委ねたからにほかならない。
 

しかし、国の財産を、得体の知れない“教育者”に売ってよいものだろうかという疑問は残る。あまりにひどい右より偏向教育をしていたのだ。判断力のない園児に「安倍首相頑張れ」はともかく「安保法案の国会通過よかったです」と言わせることはないだろう。教育勅語の暗唱もやっていた。まるで昭和8年から使用された小学国語読本の「ススメススメヘイタイススメ」のようである。明らかに教育基本法第14条2の、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」に抵触する。


大阪の親御さんたちは寛容なのだろうか。東京だったら一発で園長の首が飛ぶ。このような教育を小学校でもやろうとしているかと思うとさすがの筆者も慄然とする。籠池に教育者としての資質があるのか疑問だ。籠池は、四月開校を目指す小学校の児童確保策として、愛知県蒲郡市の私立「海陽中等教育学校」と推薦入学枠の提供で合意したとする文書を大阪府教育庁に提示したが、同校側が合意や交渉の事実を否定していることが分かった。でたらめのねつ造癖がここでも明確に分かる。


このところ冴えた発言をする大阪府知事松井一郎が、「学校としての体質と教育者としての体質に疑問が付く。私学審の意見を聞いて教育庁の判断になるが今月中の認可は難しい。物事を確認するだけで時間がかかる。物理的に難しい」と述べているのは当然だ。今月中どころか篭池の申請である限り、永遠に認可先送りが正しい。4月開校は無理と言うべきだ。
 

一方冒頭述べたマスコミの国有地入手だが、調べたら日本維新の会丸山穂高が、2月24日の衆院財務金融委員会で国有地格安売却を取り上げた中で、「朝日新聞と読売新聞も同じことをやっている」と追及していた。しかし、新聞がどこも1行も報じなかったのは言うまでもない。筆者も政治記者として当時の働きかけ状況を感じていたが、全ての全国紙が国有地払い下げを受けている。


朝日新聞は今の築地の一等地の新社屋を作るにあたって、1975年3.3平米(1坪)あたり200万円は下らないと言われている土地を、56万円の安さで払い下げを受けた。読売新聞も、大手町の600万円の土地を、83万円で払い下げを受けている。竹橋の毎日新聞も同様。産経、日経は大手町、共同通信・フジテレビ関係会社は汐留の払い下げを受けている。その他地方主要都市の国有地も新聞社が払い下げを受けている。
 

こうした新聞は、まず朝日の社説が森友学園の払い下げについて「問われているのは、国民の共有財産である国有地が格安で売却されたのではないかという重大な疑惑だ。」と書いている。これはそのままブーメラン返しで「朝日に問われているのは・・・」と置き換えられる。


また読売は「政治家や家族には、その肩書を利用しようと、様々な業者が接近する。便宜供与を期待するケースもあるだろう。疑惑を招かない細心の注意が必要だ」と書いたが、これも「報道機関は疑惑を招かない細心の注意が必要だ」と置き換えられる。なにも新聞に追及の手を緩めよと言っているわけではない。記者が権力を正しい目で監視することは重要だが、自らのよって立つ基盤を考えたら、安倍の“えん罪”を追及する前に“先祖”のやってきたことをよく勉強すべきだと言いたい。


一方で事件のポイントは昭恵夫人が、籠池の接近を「教育者」という仮面と「保守」というだまし絵についついつられてか、許してしまったという脇の甘さにあることも確かだ。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年03月02日

◆グローバリズムの否定で「強い米国」は無理

杉浦 正章



財源なき唯我独尊路線では迷走不可避
 

トランプの施政方針演説を聴いて
 

議会のしっぺ返しがブーメランとなって帰ってくることを予感させる演説であった。CNNの調査では米国民は8割が好感を持って迎えたが、感情に訴える“演出”に惑わされたに違いない。総じて米国民は人がよい。トランプの施政方針演説の内容を精査すればするほど、アンチ・グローバリズムの保護主義と唯我独尊が目立ち、実施に移せば短期では“目くらまし”できても、長期的には米国のみならず世界の経済秩序に大きな影響を及ばさざるを得まい。


1兆ドルの公共投資と法人税の大減税は、民主党が伝統的に主張する大きな政府と、共和党の小さな政府がトランプ演説の中で相反して存在する矛盾を露呈している。おまけに財源は見えず、予算が組めるのかという疑問すら抱かせる。議会がこれに目を付けないわけがなく、予算案をめぐりトランプは対議会交渉で厳しい局面に立たされるだろう。
 

対日関係については、かつて中国、メキシコと同列においた貿易批判は影を潜めた。逆に「最も緊密な同盟国の中にも、数十年前には、世界大戦で敵と味方に分かれて戦った相手がいる。こうした歴史は、世界がよりよい場所になる可能性があると信じる根拠を与えてくれる」と、日米蜜月を強調している。首相・安倍晋三のトランプへの“先物買い”が効を奏したことになる。


しかし一方で名指しは避けたものの「われわれのパートナーは、財政面での義務も負わなくてはならない。われわれは、NATO、中東、太平洋の地域を問わず、パートナーに対して、戦略、そして軍事の両面において、直接的で意味のある役割を担い、公平に負担するよう求める」と言明した。これはNATOに対してGDP比2%への軍事費増額を求めたのと同様に、日本にも将来求めてくる可能性を示唆している。日本は名指しされなかったが中国は「中国が2001年にWTOに加盟してから、6万もの工場がなくなった。去年の貿易赤字は8000億ドル近くに達した。」と名指しで批判されている。
 

冒頭指摘したように矛盾の最たるものは経済政策だ。「インフラ整備に1兆ドルを投資する法案の承認を要請する。官民の資本から拠出され、数百万の雇用を生み出す。」と言明したことに加えて、減税政策を実施して、財源がどうなるかとの疑問がすぐに生ずる。トランプは「法人税減税のための歴史的な税制改革を策定中だ。企業がどこでも、どんな相手とでも競争し、成功を収めることができるようにする。同時に、中間層に対しても大規模な減税を実施する。」と言明した。


今回は数字を述べなかったがロイターとのインタビューでは、法人税を現在の35%から「15%から20%までの間までさげることを目標にする」と表明している。海外にモノを売って得た収益の課税を免除する国境税を「支持する」とも明言している。さらにに加えて国防費も「私は議会に、軍を再建し、国防費の削減をやめ、アメリカ史上最大の規模となる国防費を増額する予算を要請する。」と述べた。その規模については、事前に「10%540億ドル(約6兆円)」」と述べている。
 

いったいこれだけの大盤振る舞いを何でまかなおうとしているのだろうか。国務省予算や環境予算や海外援助の削減だろうか。また国境税だろうか。このうち国境税については輸入税を増加させて、輸出税を減少させることを考えており、10年間で1兆数千億ドル増収となるとされる。これは航空機産業など輸出に依存する大企業にはプラスに作用するが、輸入で生きている企業はどうなるかということだ。


当然物価は高騰して消費は減少する。金利は上昇して住宅ローンは組めなくなる。ホワイトハウスとは常に共同歩調を取ってきた連邦準備制度理事会(FRB)議長のジャネット・イエレンが「財政収支が持続可能であることを望む」と悲鳴を上げるのも無理からぬところであろう。


このトランプによるグローバリズムの否定は、長期的には保護主義そのものであり、世界貿易機関(WTO)の基本理念に背くばかりではなく、米国自身の景気悪化を招くブーメランとなることは自明の理である。また本人が唱える「強いアメリカ」への道筋を迷路にしてしまいかねないのだ。
 

演説でトランプは失業者の増加に度々言及、「南部の国境沿いに巨大な壁の建設をまもなく始める」と述べたが、失業者など現在の米国には存在しないに等しい。失業率4.7%の数字は、紛れもなく米国では、希望するものが職を得られる完全雇用を意味している。トランプが何度も主張することで、ちまたに失業者があふれているような印象を受けるが、これはトランプが選挙戦のために作った幻影にすぎない。


要するに演説は選挙演説と同様に、はったりと、独断と、矛盾に満ちたものであるのだ。オバマケアを真っ向から否定しても、それに代わる医療保険制度は提示できないままである。無責任と言わざるを得まい。
 

演説中は共和党席が拍手とスタンディングオベーションを繰り返したが、民主党席はしらけて座ったままで好対照であった。よく言うよと思ったのはトランプが「不和と分断のくさびを打ち込むのではなく、協力と信頼の橋をかけなければならない」と分断に言及した点である。


さらにトランプは「われわれが政策において分断された国であるかもしれない一方で、あらゆる形の憎悪や悪意を非難することにおいては一致団結する国であることを改めて思い出させる」とも述べた。これは自らが国の分断を招き、主要都市では反トランプデモがとどまることなく続き、メディアの“総スカン”を食らっていることを無視する唯我独尊にほかならない。大体トランプは演説の際、右側の民主党席は見ず、拍手をする左側の共和党ばかりを見て演説を続けたが、これこそ分断の象徴でなくて何であろうか。
 

トランプに対して野党・民主党を代表してスティーブ・ベシアが全米に向けてテレビ演説して、「大統領が自分の思いどおりにならないからといって司法やメディア、それに情報機関や一市民を攻撃することはわれわれの民主主義を破壊しているようなものだ」と痛烈に批判。「トランプ氏みずからの言動で国の分断を深めている」と指摘したのはもっともだ。今後来年11月の中間選挙に向けて対立色を強めることは確実だ。


共和党も拍手とスタンディングオベーションは“ご祝儀”的な側面もあり、議会対策はは極めて難航するだろ
う。

         <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2017年03月01日

◆「北」抑圧のカギは米国が握る

〜“米中連携”の様相だが〜

杉浦 正章



金正恩は化学兵器使用で世界的に孤立
 

韓国民全員を殺傷してもあまりある化学兵器を保有する北朝鮮が、これを金正男暗殺に使ったことが、金正恩の大誤算になりつつある。事件がピストルや刃物であったら、衝撃はより少なかったであろうが、原爆に匹敵する殺傷力を持つVX兵器をあえて暗殺に使ったことは、金正日が、禁断の領域に踏み込んだことを意味している。


暗殺手法は、パズーカ砲や最近では高射砲まで使って要人の処刑を断行してきた紛れもない異常性格者のこれまでの手口をそのまま反映したものだ。金の直接指示があったことなどは言うまでもないことだ。


さすがに中国も黙っていられなくなった。石炭年内輸入禁止という北の態勢を崩しかねない瀬戸際政策を打ち出した。米国もトランプが「オバマは北朝鮮を甘やかせてきた」と、何やらすごんでいる。トランプは自らの政権批判に集中するマスコミや国民の目を海外にそらす絶好のチャンスでもある。北にもっとも大きな影響力を持つ米中両国が“連携”ともみえる動きを開始したのだ。
 

北朝鮮の化学兵器保有量は25種、2500〜5000トンにのぼる。米国、ロシアに続き世界第3位だ。韓国国民を全員殺傷しても余る量だ。炭疽菌など生物兵器も13種もある。北朝鮮はこのような生物化学兵器工場を17持っている。韓国の新聞は「より大きな問題は、北朝鮮が有事の際はもとより、平時にも生物化学兵器で韓国の要人暗殺や社会混乱を引き起こす危険性が高いということだ。」と戦慄すべき見方をしている。油断すれば、日本でも同様のテロが発生しうると見なければなるまい。
 

こうした事態を深刻にとらえて米中の接触も頻繁となった。13日の暗殺以来両国は、17日に国務長官ティラーソンと外相王毅が初会談した。会談でティラーソンは「北朝鮮の脅威が高まっている。挑発行為抑制のために中国が可能なすべての手段を使うよう希望する」と発言、北に対する強固な政策を要求した。中国は米中外相会談の2日後にかってない規模の石炭輸入停止という経済制裁を打ち出した。事件の6日後だから素早い対応であった。


輸入停止の理由について中国は「2017年の北からの輸入が国連決議の上限に近づいている」ことをあげた。そしてこの報告もあってか外交最高責任者で国務委員の楊潔チも21日にティラーソンと電話協議した。国連決議は年間4億ドルを上限としており昨年の輸入は約12億ドルである。早くも上限に達したかどうかは疑問があるが、これは中国がようやくにして国連決議の履行に踏み切ったことを意味する。石炭は北の輸出の4割を占め、停止となれば北の経済にとって大打撃となるが、中国との国境線は長い。様々な抜け道があると見なければなるまい。外国経由の輸出もあるだろう。
 

いずれにせよ中国が本格的な制裁に乗り出したことは新局面を意味する。両国メデイアも前代未聞のバトルを繰り広げている。朝鮮中央通信が「大国と称する国が定見もなく米国の拍子に踊り、幾ばくかの金銭を遮断することで我々の核兵器や大陸間弾道ミサイルを作れないと考えること自体この上なく幼稚」と毒づけば、環球時報は「制裁を忠実に実行し北の反応に影響されてはならない。北に中国と全面対決する能力はない」といった具合だ。
 

中国が初めて真面目に国連制裁決議に動いたのは、トランプ政権の動向にただならぬものを感じたからに違いない。オバマが「戦略的忍耐」と称して、中国の南シナ海への進出を許し、北の核・ミサイル開発を野放しにした戦略は改められると感じ取ったのだろう。トランプが中国が後生大事にする「一つの中国」政策に、一時難癖を付けたのも利いたのだろう。楊潔チが2月27日から28日まで米国を訪問することも視野に入れたに違いない。


トランプが28日に初めて議会演説に臨むのを前に中国側の立場を改めて説明する。事前の地ならしというわけである。しかし、中国の北に対する制裁措置は石炭の輸入停止が最大のものであろう。なぜなら北の崩壊は、国境線が米韓軍事同盟と接することを意味しており、これが共産党一党独裁政権にとって最大の脅威ととらえられる事態となるからだ。
 

こう見てくると劇的に朝鮮半島情勢を動かすには中国よりやはり米国がカギとなる。トランプは首相・安倍晋三との会談後の記者会見で「北朝鮮のミサイルからの防衛は極めて高い優先事項」と発言、北の出方によっては軍事行動もあり得る姿勢を示唆した。


ロイター通信には「金正恩のしてきたことには激怒している」とも発言している。こうした発言と合わせて「力による平和」を唱えるトランプは米国防予算を現在の10%に当たる540億ドル(約6兆円)増額する方針を表明した。これが何を意味するかだ。南シナ海や中東をにらんでのことであろうが、北朝鮮も視野にないとは言えまい。何らかの「軍事行動」も辞さぬ構えと受け取れないだろうか。少なくとも中国との裏折衝では、中国が本気で制裁をかけないなら、軍事行動もあり得ることを取引的にほのめかすことはあり得るだろう。
 

対北制裁の動きは世界的な広がりを見せており、欧州連合(EU)も対北朝鮮制裁を決定した。石炭・鉄・鉄鉱石など鉱物取り引きを北朝鮮とは行わないことに加えて、北朝鮮にヘリコプターや船舶も販売しないという厳しいものだ。


北は完全に孤立化した。金正恩はこうした動きに慌てて高官を中国とマレーシアに派遣して火消しに懸命だ。中国に外務次官李吉聖を、マレーシアには前国連次席大使リ・ドンイルら代表団を派遣した。異例の対応は国際社会の反応のすごさに戸惑う姿を垣間見せている。おりから米韓両軍は恒例の合同軍事演習を史上最大規模で開始する。一方、北はICBMの実験を示唆しており、なにやらきな臭さは増す流れとみなければなるまい。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年02月28日

◆トランプは記者魂の根幹に触れている

杉浦 正章
 


報道の自由の憲法すれすれの抑圧
 

「これがメディアへの弾圧の始まりかどうかの判断は急がなくてもいい」ホワイトハウス記者会会長のジェフ・メイソンは落ち着いている。同記者会の一部に台頭している報道官の記者会見ボイコット論にはくみしないという。ということはどういう状況かと言えば、トランプ政権対メディアの戦いが早くも佳境に入っていることだろう。


ワシントン特派員としてウオーターゲート事件でのニクソン政権とメディアの全面対決を目の当たりにした筆者も、血湧き肉躍る状況の再現である。問題はトランプ側近にメディア対策のプロが存在しないことだ。逆に君側の奸はたくさん居る。その筆頭バノンは「メディアは敵だ」「メディアは黙れ」とけしかけ続けている。トランプはこの人物に依然として全体重を乗せているかのようで危ない。


背景にはトランプの大統領選対策と女性スキャンダルも含めた「ロシア疑惑」がある。FBIは本来大統領を守る核であるにもかかわらず、トランプは「漏洩」を激しく非難する。罵倒と言ってもよいくらいだ。いわく「FBIは漏洩組織ではないはずだ」「FBIは漏洩するものを見つけられない」といった具合だ。これは為政者がツイッターで書くことではない。まるで蛸が自分の手足を食らうような姿であるからだ。あのニクソンですら、やはりリーク源のFBIを直接非難したことはない。裏で必死に見つけようとしたが見つからなかった。
 

トランプの最大の欠点はメディアにリーク源の公表を求めていることだ。これは対メデイア戦を圧倒的に不利にしている。なぜならリーク源を守って匿名記事を書くケースは記者の命であるからだ。本人の了承を得ない限り「政府筋によると」と書いて、「FBIの誰々によると」などとは決して書かないのが記者魂だ。為政者は記者と報道機関の最も基本的な倫理に干渉してはいけない。匿名を自ら暴露することはジャーナリズムの死を意味する。
 

ウオーターゲート事件のリーク報道で社名を上げたワシントン・ポストで「世紀の情報源」の人物を編集局次長が「ディープ・スロート」と名付けた。当時のポルノ映画をもじったものだが、電話でのどの奥深くから声を出したからだという。当時誰かと言うのが最大の関心事となり、キッシンジャーまでが名前に上がったが、ポスト紙は名前を出さなかった。


その後、33年を経て2007年になってFBIの副長官であったマーク・フェルトが自分であったと表明。それを聞いて特ダネを書き続けたボブ・ウッドワードも初めてこれを認めた。33年も取材源を守り通したのだ。トランプの「実名を出さない限り情報源を使うのは許されるべきではない」という発言は、マスコミというものの実態を知らない姿をさらけ出している。
 

商売人トランプの基本的な誤算は、自らが商売敵を叩き潰してきたように、メディアの基本的な報道の姿勢を潰せると思っている事である。だからメディアを「国民の敵」呼ばわりできるのだ。メデイアは「国民の側」に立っているからこそ存在価値があることを理解しない。だからバノンの受け売りで「メディアは野党」などと言えるのだ。トランプの忠実な下部(しもべ)というか、茶坊主のような報道官スパイサーが、通常の記者会見を避け、別室で限られた人数でブリーフをしたことも、ホワイトハウス記者会の激怒を買った。


おべんちゃらのFOXニュース、ネットのブライトバート・ニュースなどを報道官室に招き入れ、ニューヨークタイムズ、CNNを除外したのだ。憤慨したロサンゼルス・タイムズ、AP、BBC、タイム誌などは参加しなかった。こうしたトランプ政権の姿勢は言論弾圧へとすすむ危うさを内包している。トランプにメディア対策を諫言(かんげん)する側近が存在しないことがこの政権最大の弱点だ。 
 

こうしたトランプ政権の対メディア姿勢について米自由人権協会(ACLU)は声明を出し、「政府による検閲の可能性がある」と非難。報道の自由の原則に対するトランプ政権のいかなる脅しも、憲法修正第1条の「力強い防御」に阻まれるだろうと指摘した。修正第一条(the First Amendment)は言論および出版の自由を制限することが出来ないなどと規定している。トランプ政権のさらなる言論抑圧が続けば、言論及び表現の自由を監視する国際的非政府機関である国際新聞編集者協会(IPI)などが動き刺す可能性もある。


IPIは2001年に韓国をロシア、ベネズエラ、スリランカ、ジンバブエ等と並び、「言論弾圧監視対象国」に指定しており、現在米国の有様をかたずをのんで見守っているに違いない。この組織が行動に移せば、トランプの国際的評価は地に落ちる。さらに弾劾要求の動きや、ウオーターゲート事件で懐かしい「特別検察官」任命論も台頭している。正副大統領を捜査できる特別検察官はニクソンが首を切ったが、その後法改正で第3者的権限を一段と強化された。
 

辛辣なメディア批評で知られるジャック・シェーファーはツイッターで「報道陣は罵倒され、おとしめられ、中傷され、侮辱されるものだ。それも仕事のうちだ」と語っており、もっともではある。


しかし多くの米メディアはそんなことは織り込み済みだろう。トランプ側のメディア批判は、批判されたメディアにとっては勲章のようなものであろう。米国のメディアは驚くほど執拗だ。バノンが「メディアとの関係は悪化しており、毎日が戦いとなる」と宣言しているが、最後に笑うのは十中八九メディアであろう。


ただし日本の一部メディアや三流コメンテーターのようにことごとく首相・安倍晋三を目の敵にして「批判のための批判」を繰り返すのは浅薄だ。ツイッターなどでもその傾向が見られるが、国民の支持率が60%を超える政権は久しぶりに日本という国が手にした、貴重なる政治資源であり、トランプとは別次元のものと見るべきであろう。ニクソン辞任劇は田中角栄辞任要求に大きな影響を及ぼしたが、無理に風潮を“伝染”させる必要はない。それを猿まねという。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年02月23日

◆「ダースベーダー」を潰すか、米政権が潰れるか

杉浦 正章



今をときめくバノンの運命やいかに
 

古くは孝謙天皇の寵愛を受けた弓削道鏡か、それともロシア帝国崩壊の一因をつくった怪僧ラスプーチンか。どうもトランプの懐深く入り込んだスティーブン・バノンの有様を観察すると、その種の陰謀請負人のような感じがする。とりわけトランプがホワイトハウスになかった首席戦略官の地位を与えた上に、国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーに抜擢するという異例の人事を断行したことに驚く。別名「極右の火炎放射器」に、戦争と平和を左右しかねないパワーを付与してしまったのだ。


バノンにとって目の上のたんこぶだった国家安全保障担当のマイケル・フリンを失脚させたのはCIA情報だが、バノンが陰で暗躍したというのは常識のようだ。しかし、トランプ政権1か月を見ると、国務・国防両長官は世界中を駆けずり回ってバノン主導による過激な「トランプ発言」の“火消し”に懸命になっている。


フリンの後任になった「物言う軍人」陸軍中将ハーバート・マクマスターはバノンの“強敵”になり得る。米政権内はスターウオーズではないが、邪悪なる別称「ダースベーダー」に対する正義のヒーローには事欠かない。しかしバノン潰しは容易ではない。
 

62歳のバノンは昨年8月にトランプの選対本部長に就任、自らの過激発言を口移しでトランプに発言させ、勝利を得た。メディアはみな選挙判断を間違ったが、バノンは「メディアは負けたのであり、屈辱を味わいしばらく黙っていろ」と反メディア色を鮮明にした。トランプがこのところよく使う「メディアは野党だ」のフレーズも、バノンの受け売りだ。


バノンは、人種差別や反ユダヤ主義の主張が飛び交うネット上の運動であるオルタナ右翼(もうひとつの右翼)「ブライトバート・ニュース」の前会長だ。オルタナ右翼とは右翼思想の一種で、トランプを支持し白人ナショナリズム、白人至上主義、反ユダヤ主義、反フェミニズム、排外主義、アンチグローバリズムなどを中核的な思想としている。
 

トランプは負けると思った選挙に勝ったのはバノンの過激戦略であるから、ちやほやするのは無理もない。大統領執務室に最も近い部屋を与え、いつ何時でも接見を許している。もともとトランプは売ってナンボの世界に生きてきた“商売人”であり、政治信条などさらさらなかった。というより国家の命運を左右する安全保障に関する基礎的なノウハウや、人種のるつぼである米国統治の基礎的な知識などゼロと言ってもよかった。


これに「思想」というものを、吹き込んだのがバノンであった。バノンの右翼ポピュリズム的な思想が、砂漠に染み入る水のごとくトランプの脳内を右寄りに活性化させ、その口からバノンの言葉をおうむ返しのごとく発言し続けたのだ。
 

米国民はこの異質な大統領候補をまるで西部劇のヒーローのごとく受け止め、当選させたのが実態だろう。「メキシコ国境に壁」「在日米軍引き揚げ」「NATOは古い」の“3ばか発言”もバノンからの受け売りだ。さすがに官僚組織は、これを国家的な危機の到来と認識した。日米同盟、米欧同盟は国家の成り立つ基本であり、これを毀損しては対中、対北、対露、対中東戦略が全く成り立たない。だから真っ青になったマティスが最初に日本を訪問、トランプ発言の打ち消しに懸命になったのだ。


国務長官ティラーソンはNATOとの関係を修復。今度はティラーソンと国土安全保障長官ジョン・ケリーが22〜23日にメキシコを訪問し、大統領ペニャニエトや外相のほか、内務、国防相ら複数の関係閣僚と会談する。明らかに「壁」発言で生じた亀裂を再構築しようというものだ。
 

さらに重要なのはバノンが、そのアンチ・グローバリズムの極みである、中東7か国からの移民差し止めの大統領令を出させたことである。結果は、行政は大混乱、司法は違憲と判断して大統領令を差止め、
西欧諸国から総スカンという結果となった。まさに大失態であり、大失政である。日本なら首謀者バノンは真っ先に国会やマスコミに追及されて、辞任に追い込まれるケースだろう。
 

こうしたバノンによるトランプ操縦の失策はニューヨークタイムズをして、痛快にも「スティーブン・バノンほど、自身の権力基盤を厚かましく強化した側近は、これまでいなかった。そして、ボスの名声や評価をこれほど早く傷つけた人物も、かつて見当たらなかった」と書かしめるに至ったのだ。まさに「君側の奸」の実態が明らかになった。


トランプはこうした事態に至ってもバノンを重用し続けるのだろうか。おそらく当分重用し続けるだろう。なぜならいままだ“夢心地”であるからだ。バノンの“催眠術”にかかっている可能性もある。しかしバノンは次第に政権内部で孤立化してゆくだろう。ティラーソン、マティス、マクマスターら正常なる方向感覚を持っている政権幹部も、バノンの尻拭いに甘んじているようなヤワな人種ではない。双方の激突がやがて始まるのは火を見るより明らかだ。


加えてメディアの対バノン戦も一段と苛烈さを増すに違いない。だいいち早く切れば切るほどトランプ政権は長続きするのであり、これに早くトラさんが気付くかどうかにかかっている。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年02月22日

◆自民は、特例法で早期に退位を実現せよ

杉浦 正章
 


民共は「皇室典範」で“引き延ばし”をするな
 

天皇退位問題はまさに船頭多くして船山に登るがごとき状態に立ち至った。新聞を読んでも誰も分からないその構図を分かりやすく説明すれば、自民党政権プラス読売Vs民主・共産両党プラス朝日の構図が浮き出てくる。焦点も自公維が特例法による一時的措置を目指しているのに対して、民共は皇室典範による永久的な対応を主張していおり180°異なる。背景には政権与党のすることは何でも反対の社会党に先祖返りしたような民進党と、「天皇制」そのものを綱領で否定する共産党の連合による自民党政権との対決の姿勢がある。


民共は退位を支持しながらも、その実は難癖を付けて「引き延ばし作戦」を展開しているとしか思えない。ここは国民の選挙によって「船頭」と決まった、自民党が主導して特例法を軸として、ちょっとだけ民主党の顔を立てつつ今国会中の法案成立を図るしかない。ご高齢の天皇のお言葉に添うにはこれしかない。
 

まず、皇室典範の改正がなぜ難しいかといえば陛下の82歳というご高齢にある。皇室典範改正の迷路に立ち入れば、10年たっても決着のつく話ではない。民間なら「オレも年じゃで家督をせがれに譲る」で済む話だが、ことは天皇の存在そのものを規定する憲法と皇室典範の解釈の問題が絡む。


そもそも人間の「引退」の要件を恒久立法で規定することは極めて困難だ。なぜなら、時代によって変化するからだ。高齢者の定義一つとっても江戸時代は50にもなれば高齢だが、今は「40,50は、はなたれ小僧」で後期高齢は75だ。職務遂行能力にしても、会社なら上司が部下の能力を判断すれば済むことだが、天皇の場合その理由を法律に書くことが可能かということになる。このような議論を延々と始めることは昨年8月に「第二の人間宣言」をされた、天皇の引退表明の意向に背くことになるのだ。
 

反対論を唱える民主党幹事長野田佳彦が自信ありげな理由はどこにあるかと考えていたが、どうも朝日とツーカーである感じが濃厚となった。朝日の“教育的指導”を受けているとすら思いたくなる。朝日は社説で「天皇の退位の意思と皇室会議などの議決を併せて必要とすれば、進退を天皇の自由な判断に委ねることにはならず、憲法の趣旨に反するとは思えない。」と主張しているがこれは民進党の主張と全く同じである。


皇室会議は、日本の皇室に関する重要な事項を合議する国の機関である。皇族、衆参議長、首相、最高裁判事などで構成されるが、問題は天皇のご意思と会議の議決が相反した結果となったらどうするかということだ。退位という極めて人間的、個人的な意思を会議で決められるものだろうか。天皇の退位の意思は会議とは別格なのだ。
 

さらに朝日の社説は特例法に対して「一代限りの退位に道を開けば、この先、政権や多数党の意向で天皇の地位が左右される恐れが生まれ、禍根を残すことになる」と反対している。これも意味不明である。一代限りは一代限りのことで、将来への禍根とならないのではないか。


例えば100年後に今回の例のように天皇が退位したいとの意思を表明すれば、そのときの状況に応じて対処すればよいことであり、制度化して縛る必要はない。それに100年後には今回の例を先例としてスムーズな退位が実現するかもしれない。第一自民党が100年後に多数党であるかどうかは予知できることではない。この主張には民進党が多数党になった場合ならその意向を反映してもよいのだという、政党のエゴイズムが垣間見える。


一方で読売は社説で「仮に、天皇の意思を退位要件とすると、『天皇は国政に関する権能を有しない』と定めた憲法4条に違反しかねない。こうした理由で、制度化に否定的な自民党の姿勢には、うなずける」として、自民党案支持だ。
 

問題は民進党が明らかに引き延ばし戦術を取ろうとしていることだ。同党の長浜博行はテレビで「各党の国会議員はもう一度象徴天皇制の意義とか、憲法とか、皇室典範とかに真正面から取り組んで議論する必要がある」と主張しているが、このような基礎的な問題からとりかかっていては、再び「船山に登る」のは必定である。議員立法による処理も主張しているが、事は天皇の退位問題であり、政府の責任において法案を作成し、国会の議決を経て実施に移すのが憲政の常道だ。
 

こうした中で日本維新の会幹事長の馬場伸行は「皇室典範そのものを改正するのではなく、『特例法を設けて決める』旨を皇室典範の付則として付ければよい」と提案している。皇室典範はいじらないが付則で処理するという案は筆者もかねてから指摘していたが、民進党のメンツも立つのではないか。


ことは自公維で軽く3分の2を超える勢力が推進する問題であり、民共も突っ張ったり、引き延ばししたりする場面ではない。そもそも民共朝による“共闘の構図”は過去の例を見ても概ね失敗に終わるのが政治の宿命だ。

       <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)  

2017年02月21日

◆安倍は敵基地攻撃能力保持を決断する時だ

杉浦 正章



狂気の北指導者の前に躊躇している時ではない
 

「疾きこと風の如く」は、今金正恩のお家芸だ。ミサイルと核兵器の開発で孫子の兵法を実践しつつある。叔父殺しに次いで異母兄を殺りくして、狂気の独裁者の本性を現し、ミサイルと原爆小型化は佳境に入った。これに対して日本の防御態勢は整いつつあるものの、同時多発の飽和攻撃に耐えられるのか。一発でも撃ち漏らせば確かに金正恩が公言するごとく東京は火の海だ。その一発が致命傷となるにもかかわらず、日本はいまだに平和は天から降ってくるとばかりに、米国に敵基地攻撃を全面的に頼っていてよいのか。敵基地を殲滅(せんめつ)しない限り、極東の平和は維持出来ない。


専門家によれば敵基地攻撃能力の環境は既に8割方機が熟しており、憲法上可能との見解も61年前から確立している。後は首相・安倍晋三の判断に委ねられているのが実態だ。金正恩に日本攻撃を断念させるためにも早期実施による抑止の確立に踏み切るべきだ。もう国連決議など、北を支える中国がある限り何度繰り返してもムダだ。
 

政府は国民に迅速に情報を伝える体制を整えるため、23日と24日に、都道府県の担当者らを対象にした説明会を開く。説明会では、ミサイルが日本の領土・領海に落下するおそれがある場合、Jアラート=全国瞬時警報システムなどを使って、推定される落下地点などの情報を発信することを説明し、機器の取り扱い方法を確認するよう要請することにしている。国民の尊い命を守るためには必要な措置であるが、なにやら狂った野良犬を放置して、かまれたらどうするを説くようで情けなく感ずる。
 

問題は金正恩が核ミサイルを発射する場合、日本を最優先する可能性があるだろうかということだ。おそらく、対韓攻撃が先行する可能性が大きいが、日米韓を同時に攻撃する可能性もないわけではない。韓国は防ぎようがないから自分で守ってもらうしかないが、日本到達までには最短で約7〜8分とみられ韓国よりは余裕がある。迎撃ミサイルSM-3搭載のイージス艦は、防衛庁の公表資料によると、これまでの試験で20発の迎撃ミサイルのうち16発が命中した。しかしこの確率でいくと、単純計算では200発の日本向けのノドンが発射された場合、40発が到達することになる。
 

また肝心なのは米国が日本を完璧に守ろうとするだろうかということだ。まず本国へ向かうICBMを処理するのに専念し、日本は二の次になる可能性も否定出来ない。一発ぐらいの日本への着弾は仕方がないと考えないだろうか。しかし、日本にとってはその一発が致命傷なのである。国家としてはたった1人でも日本国民から北ミサイルの犠牲者を出してはならないことは、国の有りようの鉄則である。飽和攻撃の際にそれが可能かと言うことだ。おそらく自信のある専門家は皆無であろう。
 

これでは対北ミサイル戦略は成り立たない。ほぼ完全にブロック出来る態勢が確立するのは早くても5年はかかるといわれる。昨年6月のムスダン発射は、通常軌道に比べ高高度に打ち上げ、短い距離に着弾させる「ロフテッド軌道」で発射された。ロフテッド軌道だと落下速度がさらに増すため、迎撃が非常に困難になる。専門家は「現在の自衛隊の装備では撃破は難しい」としている。また昨年9月にはノドン3発を同時に発射し、日本の防空識別圏内に400キロ以上入って日本海に落下したという。まさに飽和攻撃の予行演習を誇示したことになる。
 

こうして傍若無人の核戦略は指導者と同様に増長の一途をたどる。技術は日進月歩だが、矛と盾の原理があって、盾を突き通す矛は常に製造可能と見なければなるまい。そこで誰が考えても必要なのは、矛そのものを殲滅させる戦略であろう。それには敵基地攻撃能力を日本自らが身につけるしかないのだ。もちろん専守防衛の方針は逸脱するが、いまどき専守防衛の空理にしがみつく国は日本以外にない。攻撃こそ防御なのだ。


よく「やられたらやりかえす」(元外相前原誠司)というが、この戦略は核ミサイル時代には成り立たない。「やられる前にやる」しか、国家が生き延びる道はないのである。ただし「やられた」が韓国や米国を指すなら、やがては日本にも発射されるから「やられたらやりかえす」概念は成り立つ。
 

元首相中曽根康弘が会長の世界平和研究所が1月12日に発表した提言は、敵基地攻撃能力の保有を政府に求めており注目される。日本が第三国から武力攻撃を受けた場合、「さらなる攻撃を防ぎ、反撃するため、巡航ミサイルなどを保有し、もって日本独自の抑止力を持つべきだ」と提唱した。


同報告書の発表を主導した東京大学名誉教授北岡伸一は安倍の外交・安保分野の「家庭教師」と呼ばれる人物であり、政府とはツーカーの報告書であろう。もともと政府は、自衛のための敵基地攻撃能力の保有について、憲法上は容認されているとの立場だ。1956年には国会で首相鳩山一郎が「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは、どうしても考えられない。他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」との統一見解を示している。


なんと61年前からこの見解があるにもかかわらず、社会、共産両党などの反対で実施に踏み切れなかったのだ。敵基地攻撃には弾道ミサイル、巡航ミサイル、ステルス性のある戦闘機F35と空対地ミサイルなどが必要だ。加えて、敵基地を特定できる人工衛星などの情報や、戦闘機の長距離飛行を支援できる空中給油機、これらのすべての作業をコントロールする早期警戒管制機(AWACS)などの装備体系が必要となる。高い金を出してF35を配備する以上、敵基地攻撃能力を備えるべきだ。でないと宝の持ち腐れになる。


これらの装備を備えるには防衛予算を対GDP比1%の上限を突破させる必要があるが、中曽根研究所は「当面はGDP比1.2%を追求すべきだ」としている。米国は北大西洋条約機構(NATO)に2%目標の早期達成を促したが、これをテコにやがて日本にも要求してくる可能性がある。先手を打って1%を突破する方がよい。マスコミの論調も読売と産経が敵基地攻撃能力保持論であり、政党も維新が積極的だ。自民維新で推進すれば、公明党の山口那津男や民進党の一部は後から付いてくるだろう。場合によては安倍は夏に解散・総選挙を断行し、民意を問えばよい。自民党は圧勝するだろう。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年02月17日

◆「Madman理論」の恐怖政治が佳境に入った

杉浦 正章



金正恩は残酷性と冷静な計算が併存か
 

カインの末裔(まつえい)とは、旧約聖書に登場する兄弟殺しという人間の罪深さを諭すものである。アダムとイヴの息子の兄カインが、弟アベルを殺害した神話だ。有島武郎が同名の小説を書いている。日本の古事記にも海幸彦と山幸彦の骨肉の争いがあるが、最終的には兄と弟は仲直りした。しかし兄源頼朝が弟義経を殺害した例もある。金正恩による尊属殺人は、叔父張成沢殺しに始まって、ついに異母兄弟の長男金正男へと至った。政権樹立以来殺害した朝鮮労働党や軍の幹部は140人あまりに達しており、スターリンによる処刑は約68万人といわれ遠く及ばないが、極東では戦後まれにみる殺りくである。

ニューヨーク・タイムズは、昨年5回目の核実験の後、この金正恩の「恐怖政治」を「狂人理論」(Madman Theory)と説明した。
 

金正恩の殺害指示の状況証拠は数限りないほどあるが、決定的なものは最高人民会議常任委員長金永南が、15日の金正日生誕75周年式典で発言した内容につきる。「偉大な将軍様は後継者問題を完全に解決した。最も偉大な業績である」という発言が、「確信犯」金正恩の全てを物語っているのである。


殺されたマレーシアでは北朝鮮と韓国の「遺体争奪戦」が展開されている。米国の中央情報局(CIA)も絡んでいるが、マレーシア政府は副首相が「北朝鮮に引き渡す」と言明した。マレーシアは、北と外交関係を樹立しており、ビザなしで北朝鮮に渡航できる唯一の国だ。しかし米韓の巻き返しは強く、どうなるかは予測は困難だ。北がクアラルンプールでの殺害を意図したのは、遺体の確保まで計算に入れた可能性が強い。しかしいくら親北朝鮮でもマレーシアは徹底的な調査、分析を国際社会から求められることは必定であろう。
  

NYT紙によるとMadman Theoryとは「好戦性と予測不可能性で武装し、敵に狂人と見せることで交渉を有利な局面に導こうとするという論理」だという。NYTは「残酷性と冷静な計算は矛盾するものではなく、互いに協調関係にある」と解釈した。また「朝鮮半島を一触即発の戦争危機状態に追い込むことが、北朝鮮が体制維持のための唯一の方法として見ているという指摘が多い」と説明し、「力の弱い国家が大国を敵として向かい合ったとき、平和を実現するための理性的な方法」と分析している。


さらに米学者の「北朝鮮の指導者たちの国内外での行動が嫌悪感を抱かせることがあっても、理性的に自国の利益をよく考えている」という見方を紹介している。確かにNYTは冷静で当を得た政治分析である。
 

まさに金正恩は冷徹なる殺りくを繰り返しており、その立場は小国の政治家が大国のはざまで、生き抜く知恵とでもいうことになる。Madman Theoryはなぜ、権力掌握以来金正男を偏執狂のようにつけ狙ったかの問題も解ける。頼朝がそうであったように、家督相続人は少ないほど自らの安全が保てるのであろう。


金正恩は金正男を就任以来つけ狙い続けた。なぜ狙い続けたかと言えば、政権を狙うと見ていたからだ。本人が狙わなくても韓国在住の脱北者は昨年11月に3万人に達しており、祭り上げるには絶好の人物であった。金正男が日本のメディアに「3代世襲には反対だ」と述べたことが金正恩の怒りに火を付けたといわれる。殺害指示は就任早々から始まり、2012年には北京で実行されそうになったが危うく逃れた。


朝鮮日報は、金正男を救うため韓国大統領李明博が12年に正男に対し、韓国への亡命を打診していたことが16日までに分かったと報じている。元高官が「当時、正男氏に対する暗殺未遂があったため『韓国に来た方が安全なのではないか』と打診した。しかし本人が、そのまま海外に滞在することを望んだため、その話は消えた」と述べているという。
 

叔父の張成沢が13年12月に、金正男を担ぎかねないとして「国家転覆陰謀行為」で処刑されてからは、まさに風前の灯となった。金正男はそのころ金正恩に命乞いの書簡を送っている。その内容は「将軍様、私と家族を殺さないでください。私には行くところも逃げるところもありません。自殺するしかありません」という切々たる内容であった。


今後は金正男の長男金漢率(キム・ハンソル21歳)が狙われるとの見方が中韓両国で高まっている。金漢率は2012年フィンランド公営テレビでのインタビュウで「韓半島(朝鮮半島)を二つに分断しているのは政治的な問題にすぎない。だから僕はどちらかの肩を持つということはしない」と発言。さらに「北朝鮮に戻って人々の暮らしを楽にしたい。また、(南北)統一を夢見ている」と将来の夢を語っている。利発な青年のこの発言は金正恩の神経を逆なですることが予想されるものだ。しかし、家族は現在中国の保護下にあるようであり、護衛をしやすい北京に向かいつつあるとの見方もある。
 

最大の焦点は今後日米韓3国がどう動くかだ。とりわけトランプの反応が注目される。Madmanにmaddogマティスがかみついたら大変だ。トランプはオバマと異なり挑発を我慢するタイプではない。こちらも予測不能だ。日米韓外相は日本時間17日未明ドイツ・ボンでの20カ国・地域(G20)外相会合で会談、北に対して3国が連携する共同声明を発表した。暗殺問題も協議したとみられる。岸田文雄、国務長官ティラーソン、尹炳世による話し合いの内容が注目される。


いずれにせよ傍若無人の殺人を国際社会は看過すべきではない。米国は1988年に北朝鮮をテロ支援国家に指定、2008年に解除しているが、当面はこうした政策で圧力をかける可能性がある。また国連でも対応をリードするものとみられる。一方で、北の暴発に中国首脳は怒り心頭に発していると言われ、今回の場合は国連などでかばうことは難しい者とみられる。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年02月16日

◆中韓、安倍訪米で牽強付会の論調

杉浦 正章



中国は「朝貢外交」と批判、韓国はひがむ
 

どうして中韓両国の論調はかくまでも牽強付会なのであろうか。日米首脳会談をめぐるメディアの論説が15日までに出そろったが、世論を誘導するマスコミが道理をねじ曲げ、都合の良いように理屈を無理にこじつけている。中国が首相・安倍晋三の訪米を「朝貢外交」と決めつければ、韓国の場合はひがみ根性丸出しの論調すらある。中国の論調は誤解、誤認の山だ。これら感情丸出しの論調がいかに自国の民度を低く押し下げているかが分かっていない。
 

まず公的な見解を披露すれば中国外務省の耿爽・副報道局長は13日の定例会見で、トランプが尖閣諸島を日米安全保障条約第5条の適用対象だと確認したことに対し、「誰が何を言おうと、何をしようと、釣魚島が中国のものだという事実は変えられない。国家主権と領土を守るという中国の意志と決心を動揺させることもできない」と全面否定。「日本が不法な領土を主張し、安保条約を名目に米国を抱き込むことに反対する」と言い切った。


東シナ海で古来実効支配もしていない島々を自分のものだと主張し、虎視眈々(こしたんたん)と領土領海を広げようとする自らの主張を棚上げにしてよく言えたものである。
 

中国共産党機関誌人民日報のニュースサイト人民網は15日、「まるで朝貢外交?安倍首相の訪米、経済面で譲歩」との見出しで、「首脳会談の結果、安倍首相は今回の訪問の核心的な目的を達成したようにみえ、米日同盟が変化するのではないかとの外部の懸念をある程度払拭することができた。だが実際の得失を考えると、安倍首相の今回の訪米で採用したまるで『朝貢』のような外交政策は、日本国内からの批判にさらされてもいる」との分析を掲載している。
 

まず「よく言うよ」と言いたいのは、「朝貢外交論」だ。筆者は14年の中国におけるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際、習近平が各国首脳を出迎える姿を「APEC史上見たこともないけばけばしい朝貢外交的な演出は国内対策である」と看破したが、「朝貢」とは中国王朝時代に外国人が来朝して、皇帝に三拝九拝して貢ぎ物を奉ることであり、共産党一党独裁国家にはあり得ても、民主主義国間ではあり得ないことである。


トランプは自動車も為替も言及はなく、日本側も提示しなかった。問題は日米の「枠組み」に先送りされたのであり、事実誤認も甚だしい。さらに「日本国内からの批判にさらされてもいる」との指摘は全く当たらない。その証拠に共同の調査によれば日米首脳会談を「よかった」と評価する回答が70.2%、「よくなかった」は19.5%だった。内閣支持率も前回1月より2.1ポイント増えて61.7%となっている。こんな批判のない首脳会談は佐藤・ニクソンの沖縄返還実現会談以来のことである。
 

さらに人民網は14日「同盟関係を盲信、日本は道を誤った」と題して「在日米軍の駐留経費の負担問題はひとまず話題に上らなかったが、トランプ大統領は日本に負担増を求めることを示唆しており、日本を含め同盟国が負担を求められることは確実だ」と大きく誤報している。


なぜ誤報かと言えば、トランプは駐留費問題に関して日本が75%を負担していることを指して「我々の軍隊を受け入れてくれる日本国民に感謝したい」と述べている。米国はさっそく日本の高負担を参考に北大西洋条約機構(NATO)にも負担増を求めている。米国防長官マティスは15日からのNATO国防相理事会に出席、負担問題を協議する。事前の根回してNATO諸国は国防支出拡大に応える方針だ。日本にこれ以上の負担増を求めるというのは誤報だ。
 

一方韓国は朝鮮日報が「北ミサイル発射に米日が蜜月演出、韓国は置いてけぼり」と社説で嘆いた。ミサイル発射と同時に安倍とトランプが共同記者会見に臨んだことについて「トランプ大統領の安倍首相に対する際だった配慮と二人の緊密な関係を目の当たりにするとき、本来韓半島(朝鮮半島)でわれわれが当事者のはずの一連の問題がどこか他人ごとのようにも感じられる。それはわれわれにとってより心配すべきことかもしれない」と論じた。これも偏狭なる“ひがみ”の分析である。


そもそも朝鮮半島の防衛は「日米蜜月」があってこそ成り立つ問題である。日米どちらが欠けても成り立たない構図であることが分かっていない。韓国は「置いてけぼり」と嘆く筋合いではない。


この点中央日報は大人の論調を掲げている。社説は「安倍首相の対米外交をめぐる解釈が分かれている。『朝貢外交』やら『屈従外交』やらと批判する面々があるかと言えば、『実利外交」とは何かを見せてくれた』という評価もある」と韓国内の空気を正直に書いている。そして「韓国の大統領が安倍首相のようにしたら、どのように評価されただろうか。屈辱外交などとさんざん非難を浴びたかもしれない。名分に捕われて外交の基本も逃してしまうのではないか、考える時だ」と結んでいる。韓国も同様の外交をしなければならないと言いたいのだ。


しかし、誰が大統領になっても「安倍外交」ほどの成果を上げあれるかは別だが、まずは釜山の慰安婦像撤去から始めることが外交成果へのカギと心得るべきであろう。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年02月15日

◆安倍は朝日に勝った、トランプはNYTに負けた

杉浦 正章



リスクの伴う対メディア戦


首相・安倍晋三とトランプの会談を評して、前原誠司が「猛獣に従うチキン」と評すれば、脇から後藤祐一が「ポチだ!」と野次る。


前原は続いて「近づきすぎるとリスクがある」と指摘した。民主党は誰が見ても成功裏に終わった日米首脳会談をこの程度にしかとらえられない政党であったか。猛獣にチキンは従わない。逃げる。「近づきすぎ」と言うが、虎穴に入らずんば虎児を得ずの格言を知らないのか。北のミサイルや中国の軍事挑発は、より大きなリスクではないのか。


衆院予算委の追及は、浅薄でどうもやっかみが先に立つ。「負け犬の遠吠え政党」そのものだった。それにつけても産経の「私は朝日新聞に勝った」「俺も勝った!」のスクープは見事であった。安倍とトランプの意気投合ぶりを端的に言い表している。リークした方も、他の新聞でなく産経を使ったのは、産経しか大きく扱わないからだろう。狙いを定めた「リーク」であろう。
 

産経が11日付けの2面トップで報じた記事の内容は、「大統領選で日本に対しても厳しい発言を繰り返してきたトランプが、これほど安倍を厚遇するのはなぜか」と問いかけ、「実は伏線があった」と続く。


以下は、昨年11月の米ニューヨークのトランプタワーでの初会談で、軽くゴルフ談議をした後、安倍はこう切り出した。「実はあなたと私には共通点がある」。怪訝な顔をするトランプを横目に安倍は続けた。「あなたはニューヨーク・タイムズ(NYT)に徹底的にたたかれた。私もNYTと提携している朝日新聞に徹底的にたたかれた。だが、私は勝った…」。


これを聞いたトランプは右手の親指を突き立ててこう言った「俺も勝った!」と。トランプの警戒心はここで吹っ飛んだと思われる。というものだ。
 

問題は、ここで安倍が「勝った」と胸を張った理由は何かということになるが、直感的には慰安婦強制連行をめぐる安倍と朝日との10年戦争を指すものと推定される。安倍は第一次安倍内閣の2007年に「政府発見の資料の中には軍や官憲によるいわゆる強制連行を示すような記述は見当たらなかった」とする答弁書を閣議決定した。


朝日はこれをを無視し続けたが、14年になってついに慰安婦報道をめぐり、朝鮮人女性の強制連行の虚偽を認め、記事を取り消した。社長以下陳謝の記者会見に臨んだものだ。安倍はその後「閣議決定は批判されたが、改めて間違っていなかったことが証明されたのではないか」と強調した。


さらに「報道によって多くの人たちが悲しみ苦しむことになったのだから、そうした結果を招いたことへの自覚と責任感の下、常に検証を行うことが大切ではないか」とも述べた。まさに対朝日戦は安倍の圧勝に終わったことになる。
 

一方トランプの対NYT戦だが、これは選挙中の戦いが選挙後も白熱戦を展開した。朝日などの報道によるとNYTは大統領令で中東・アフリカの7カ国の国民が米国に入るのを禁止した問題を大きく報じ、1月28日の社説では「臆病で危険」と断定した。また、別の社説では「トランプ氏が真実に耐えられるのか」と、迫った。これに対してトランプは29日朝には、NYTを「偽ニュースで経営不振」とこき下ろし、「誰か適性と確信を持つ人が買収し、正しく経営するか、尊厳をもって廃刊させるべきだ」とツイッターで発信した。


トランプはこれを称して「勝った」と唱えたのだろう。もちろん大統領選で勝ったことも確かだ。しかし、NYTは逆に購読者数を伸ばし、昨年11月の大統領選後わずか7日間で約4万人を獲得。電子版の有料購読者は昨年10〜12月期に27万6000人増え、5年ぶりの大幅な伸びとなった。これが物語るものは、その実トランプは勝ってはいないとも言えることになる。おそらくトランプ支持層ではなく、国論分断でインテリ層がNYTに付いたものとみられる。
 

安倍の発言は昔1960年代末から1970年代にかけて日本で発生した言論出版妨害事件を若干ほうふつとさせる「危うさ」がないわけではない。同事件は、新宗教団体・創価学会と同団体を支持母体とする公明党が自らに批判的な書籍の出版、流通を阻止するために、著者、出版社、取次店、書店等に圧力をかけて妨害した事件だ。


当時の日本のマスコミは戦前戦中の軍部による言論抑圧へのアレルギーがなお後を引いており、こぞって批判を展開、公明党がその路線を大きく転換するきっかけとなった。これを他山の石として自民党政権は言論抑圧と受け取られることに細心の注意を払ってきた。
 

安倍のようにメディアの報道を勝ち負けで判断する発言は、ともすれば民主主義にとって「危うさ」が大きいと受け取られやすい。憲法のうたう言論の自由に抵触しかねないからだ。しかし、安倍にそこまでの意図はない。ことの本質は長年の“宿敵”朝日に対する意趣返しであろう。ヒトラーや日本の軍部なら批判などせずに、弾圧を実行に移す。安倍からはその気配など全く感じられない。


一方朝日は報道機関としての中立性を社是で標榜しながらも、実態はそれを否定している。安倍は14年に国会答弁で「安倍政権打倒は朝日の社是」と発言している。この発言は同社の元朝日新聞主筆の故・若宮啓文が、評論家から「朝日は安倍というといたずらに叩(たた)くけど、いいところはきちんと認めるような報道はできないものなのか」と聞かれて「できません。社是だからです」と答えたことに立脚している。


朝日がなすべき事は、この「社是」を見直し、自民党政権への“偏見”から脱却することだろう。まあ、無理だろうが。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年02月12日

◆日米会談は安倍優勢勝ちの様相

杉浦 正章



トランプ、経済ナショナリズムを封印
 

「聞く耳を持つ」側面が出た
 

たった30数分の首脳会談が物語るものは、首相・安倍晋三もトランプも事務当局の作った文書を確認しただけということだろう。従ってアジア太平洋の安全保障では、満額回答。貿易経済に関してはトランプがあえて持ち出さず、新たに作る「財務相麻生・副大統領ペンスらの枠組み」への先送りで激突は回避。欧州、メキシコ、豪州首脳から総スカンで四面楚歌のトランプは明らかに安倍との会談に活路を求めたことになる。


この結果首脳会談から見る限り、6対4で安倍が優勢勝ちした。トランプは選挙中の過激な発言を修正した結果となった。トランプは経済ナショナリズムを封印し、日米安保重視の共和党の姿勢を踏襲したことになる。今後安倍に“つけ”が回ってくることはあっても、日米関係は好調な滑り出しとなった。
 

といっても、尖閣に安保条約適用など極東安保関係はオバマとの合意が踏襲されただけだ。従ってこれはトランプ流の高値をふっかけ、値引きする交渉の術中にあったといえる。しかし、トランプが「我々の軍隊を受け入れてくれる日本国民に感謝したい」と言明したのには驚いた。歴代大統領の基本姿勢は「日本を防衛してやる」であり、トランプ自身も選挙戦で米軍撤退に言及するなど、一番強硬であった。おそらく歴代の安全保障政策を踏襲する国防長官マティスや国務長官ティラーソンが極東情勢の重要さをトランプに進言し、これをを聞いたことが最大のポイントだろう。


つまりトランプは「聞く耳」を持っているということだ。加えて緊迫感を増す極東の情勢への対処は、米国の世界戦略の礎であり、トランプはようやくこれが分かって来たことを意味する。
 

さらに安保関係で重要な点は前日トランプが習近平と電話し、「一つの中国」を確認したことだ。ホワイトハウスによると、両首脳の電話会談は「非常に和やか」なもので、幅広い話題について長時間にわたり意見交換したという。


トランプは、昨年12月、台湾総統の蔡英文と異例の電話会談を行い、米メディアに対して「一つの中国」政策を疑問視する発言をしたが、これを明確に修正したことになる。これは歴代米政権が維持してきた「一つの中国」政策に戻ったことになり、米中関係ののどに刺さったとげは、いとも簡単に抜いてしまった。おそらくキッシンジャーが影響しているのだろう。


ということは日本にとってはニクソンの悪夢「日本頭越しの米中接近」がいつ起きるか分からないことを意味している。警戒する必要がある。トランプとしては安倍と安保上の接近をすることで、中国が「誤解」して暴発することを避けたとも言える。こうしてトランプは選挙でのドラスティックな発言から現実路線へと舵を切りつつあるということになる。
 

一方貿易経済問題は経済閣僚の議会承認が遅れており、本格的に動き出すのはまだ先であろう。安倍の提案した「枠組み」はその意味でトランプの独断専行を阻止することでもきわめて有効な一打であった。「枠組み」は、誰も気付いていないが池田内閣で1961年に発足した日米貿易経済合同委員会と酷似する構想だ。


両国閣僚による同委員会は佐藤内閣では日米繊維交渉が最大の議題になった。当時の通産相田中角栄が、アメリカの主張に譲歩し、繊維業者の機織り機を政府のカネで買い上げて廃棄するという奇策に出てまとめた。その後休止状態にある。「枠組み」は自動車問題、金融為替問題、インフラへの事業協力などを話し合うことになる。日本側としては時間稼ぎになるが、なかなか安倍の目指す「日米の相互利益の追及」というわけにもいくまい。


会談後トランプが「貿易関係では自由で公平を重視し、日米両国が恩恵を受けなければならない」と発言したが、これはかつての赤裸々な保護貿易主義からの明らかなる転換を意味する。会談では円安批判も出ないし、自動車輸出への批判も出なかった。ディールの先送りで安倍、トランプ双方の利益が一致する。安倍にしてみれば時間を稼げるし、環太平洋経済連携協定(TPP)にしても、トランプを翻意させるよう根回しが可能となる。


一方で、トランプは、日米激突の構図を避けることにより、世界的な孤立無援の状況に突破口を開くことができるのだ。今年中と決まったトランプ来日までにめどを付けるよう迫られるかもしれない。
 

こうした中で米国のマスコミは、トランプに“荷担”した安倍にかんかんだ。中東・アフリカ7カ国の国民の入国を一時禁止した大統領令ついて安倍は「入国管理や難民政策は内政問題なのでコメントを差し控えたい」などと突っぱねたのが気に入らなかったとみえる。


朝日によると、 NBCニュースの政治担当ディレクター、チャック・トッドはツイッターで「メイ英首相よりもさらに、日本の安倍首相はトランプ大統領に取り入ろうとしている」と投稿。米タイム誌(電子版)は「首相は記者会見で大げさに大統領をほめた」などと皮肉った。ニュース専門局MSNBCのアナリスト、デビッド・コーンもツイッターで「こんなに大統領におべっかを使う外国の首脳は見たことがない」と述べているという。


これは坊主憎けりゃ袈裟まで憎いの類いで、他国の首相に対して失礼千万であり、極東の緊迫した情勢下での日米蜜月は米国の利益に直結するという大局など全く頭に入っていないうつけの類いだ。ホワイトハウス記者団も質が落ちたものだ。
 

一国の首相のフロリダの滞在費まで問題にした。問題が提起された背景には、トランプの不動産ビジネスが大統領職と利益相反を起こさないかとの懸念がある。米メディア記者は八日の大統領報道官スパイサーの定例会見で追及したが、ホワイトハウス側は、安倍夫妻の滞在費はトランプが負担し、日本側が支払うことはないとの考えを示した。一国の首相の滞在費まで問題として追及するとは、あきれかえる。大局を見よといいたい。


少なくとも日本の記者はこれほど失礼な発言は恥ずかしくて出来ない。まるで何でも扇情的に報道する米国伝統のイエロー・ジャーナリズムの復活のようだ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

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