2016年04月13日

◆「ポスト安倍は安倍」だが、岸田も善戦

杉浦 正章



万一の場合はダークホースで菅もあり得る


産経と日経が広島でのG7外相会合の成功で外相・岸田文男が「ポスト安倍」 に向けて存在感が高まったと報じているが、果たしてそうか。確かに「一強多弱」の政治構図のなかで「多弱」の中から頭一つ抜きん出た感じはある。目立ったからである。


しかし産経と日経の論法で言うならば本番サミットで首相・安倍晋三がリーダーシップを発揮すれば「ポスト安倍は安倍」ということになってしまう。安倍がダブルに踏み切って衆参で絶対安定多数を維持すれば、ますます「一強」ぶりは高まる。焦点は外交と言うより夏の“政治決戦”の動向にあるのだろう。
 

確かに自民党内が、政局に向けて今ほど「寂(せき)として声なし」の状況は珍しい。長期政権で最長の7年6か月2,798日を達成した佐藤栄作の場合を例に挙げれば、実に4回にわたり総裁選を繰り返している。つまり党内抗争を繰り返した上での厳しい政権維持であったが、安倍の場合は昨年の総裁選に候補者が立たず無投票で2018年9月まで3年の任期を確保している。無競争で6年が維持される例は自民党史上希有のことである。


場合によっては任期を延長してオリンピックも安倍という事もないではない。この安定の原因は何処にあるかだが、何と言っても選挙に強い首相であることだ。過去3回の国政選挙で与党を圧勝させた首相が依然として支持率50%前後を維持しているのでは、文句の出ようもない。衆参議員は自分の当選が何より大切なのであって、支持率が高いリーダーが自分の為にも必要不可欠なのだ。
 

これには小選挙区制という選挙制度が強く作用している。佐藤の場合は中選挙区制であり、同一選挙区内で自民党各派が戦う構図である。勢い党内もぎすぎすして、総裁選をめぐって怨念の戦いが繰り広げられることになる。


その最大の構図が田中角栄対三木武夫、田中角栄対福田赳夫の戦いであった。小選挙区制では敵は野党であり、党内には敵が生じにくいのだ。加えて安倍の巧みなる党内操縦術がある。将来候補になりそうな岸田文雄、石破茂、石原伸晃を閣内に取り込み、谷垣禎一を幹事長に据えて挙党態勢を形作っているのだ。


これでは、誰も手を出そうとしないし、手を出せば狙い撃ちされるのがオチだ。筆者は週に一度くらい多摩動物園にタカの写真を撮りに行くが、岸田の場合は鷹の大ケージに入ったハトのようなものだ。出来るだけ目立たないようにしていなければ、一発でタカに食われてしまう。その他はスズメでありケージには出入りするが、タカが来ればすぐにケージの外に出てしまう。


こうした中で冒頭書いたように頭一つ出たのが岸田だろう。田中角栄は首相候補の条件として、「幹事長、蔵相、外相の経験があることが必用だ」としたが、自分は外相経験はなかった。
 

確かに歴代首相を見れば吉田茂に始まって岸信介、佐藤栄作、三木武夫、大平正芳などそうそうたる首相が「外務省出身」である。


しかし宇野宗佑から羽田孜、小渕恵三、麻生太郎となるとがくんとレベルが落ちる。岸田は外務省が久しぶりに手にしたエースであり、官僚は先を読むから最大限頭を絞ってG7外相会議を成功に導こうとする。その御輿の上に乗って岸田は、頭角を現したのだ。


昨年末の日韓慰安婦合意もG7に勝るとも劣らない成果であろう。対照的に冴えないのが地方創生相・石破茂だ。紛れもなく伴食大臣の椅子をあてがわれたが、その存在感の無さは格別である。田中角栄とは真逆の対応である。


田中は佐藤から幹事長を外されたとき、冷や飯に甘んじるような男ではなかった。党内に都市政策調査会を作って日本列島改造構想を打ち出し、政権獲得の支柱にした。ところが石破からは「地方創生」で、何ら斬新的な構想を聞けないままである。若手に小泉進次郎がいるが、まだ10年早い。麻生太郎の復帰などは論外だ。


女性政治家は、昨年の総裁選で推薦人も確保出来なかった野田聖子にせよ、高転びに転んだ民進党政調会長・山尾志桜里といいこのところ無能力さが露呈されている。委員会で携帯をいじくり大あくびする元法相・松島みどりなどを見れば、日本の女は政治家には適さないのだろうとつくづく思う。
 

しかしいくら強い首相でも、万一のケースがないとは言えない。病気で倒れたり、不慮の出来事に遭遇したりする可能性は否定出来ない。その場合だれがなるかだが、衆目の一致するところは谷垣であろう。人格といい、党内に敵を作らない姿勢といい常識的にはあり得る。しかし官房長官・菅義偉というダークホースが存在することを忘れてはなるまい。


石原慎太郎は“雑文”「天才」を書いても田中角栄の敵だったから知るまいが、かつて大平が急逝したとき、キングメーカー田中は一時官房長官・伊東正義に視線が及んだことがあった。伊東が固辞したため鈴木善幸になったが、結局「暗愚帝王」と呼ばれて政権を投げ出した。


伊東は大平の緊急入院で内閣総理大臣臨時代理を務めたが、周囲からいくら勧められても首相執務室には入らずに官房長官執務室で仕事を続けた。田中は「伊東があったんだ」と漏らしていた。


その伊東に勝るとも劣らない能力を発揮して内閣を支えているのが菅であろう。絶妙のバランス感覚があり、官邸は菅がいるから持っているようなものだ。万一と言うことがあれば菅への禅譲もあり得ると見る。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年04月12日

◆「謝罪なし」でオバマの広島訪問実現の公算

杉浦 正章

 

ケリーの「ゴー」サインが方向付け
 

歴史問題は、どこかの国のように「謝れ」一点張りでは物事は進展しない。本当の意味での忍耐を「ならぬ堪忍するが堪忍」と言うではないか。米国務長官・ケリーに継いで大統領オバマが原爆死没者慰霊碑に献花をすれば、それが謝罪でなくて何であろうか。言葉は使わなくてもボディーランゲージを読めば明らかに謝罪である。


ケリーの米閣僚初訪問自体が安倍政権による外交の成果であり、これにオバマと続けば大成果と言えるものだろう。ここは半ば実現しかかっているオバマの広島訪問を、万難を廃して実現させるべき時だ。夏の国政選挙に向けてプラスに作用することは間違いない。
 

それにしてもホワイトハウスは大統領選挙の最中という極めて微妙なときに広島訪問の可能性をよくリークしたものである。折から共和党候補のトランプが日韓両国の核保有論を唱えて、核問題が大統領選の争点として浮上している最中である。


民主党寄りのニューヨークタイムズも「大統領が日本への謝罪を示す言動は大きな政治問題となる」と“忠告”しているほどである。それではなぜホワイトハウスがワシントンポストにリークしたかと言えば、トランプ発言を逆手に取れば逆攻勢となりうると判断した可能性が高い。トランプは広島訪問が実現すれば口を極めてオバマ非難に転じて「大統領は懺悔と謝罪の旅に出た」などと批判することは目に見えている。
 

トランプ発言に対しては既にホワイトハウスは大統領副補佐官ローズが「戦後70年堅持してきた核の分野における外交政策の前提は、核兵器の拡散防止だ。どの政党が政権を握ってもこの立場に変わりはなかった」と説明、「既存保有国以外への拡散容認は悲惨な結果をもたらす」と痛烈に批判している。


オバマがこの核拡散防止路線の維持を広島で発言すれば、大きなクリントン支援となるだろう。ポストへのリークで米政府高官は「プラハで核なき世界を訴えた時のような演説をする可能性がある」と述べて、オバマが核なき世界を訴えたプラハ演説の“完結”としての演説をする可能性を示唆している。


8年前の演説後オバマはノーベル平和賞を受賞しているが、その後ウクライナをめぐる米ロ対立で核兵器削減は思うように進まず、北朝鮮への拡散など“核危機”はかえって増大している。
 

加えてオバマ自身の広島、長崎への「思い」がある。2009年の首相・鳩山由紀夫との会談後の記者会見でも、「将来、(広島、長崎)両市を訪問することは当然光栄なことであり、非常に意義深いことだ」と語っていた。6年半ぶりにやっと宿題を果たすことになる。この流れを促進しているのが駐日大使・キャロライン・ケネディであるといわれる。ケネディは自ら「原爆の日」の平和記念式典に出席、折を見てオバマも訪問するようアドバイスしている。
 

ホワイトハウスは「大統領選の年に広島を訪問することで外交上の批判が生ずる可能性を十分認識している。ケリー長官の広島訪問を大統領訪問の前哨戦として注視している」とも述べ、ケリーの広島訪問をオバマ訪問の最終判断をする上でのテストケースと位置づけている。


恐らくケリーは帰国後オバマから見解を求められることになるが、ケリーの発言を分析すればオバマに対しては「ゴー」のサインを送るに違いない。


ケリーが広島訪問で見ていたのは、日本政府だけでなく国民やメディアの反応であっただろう。まず日本政府はこれまで主張してきた「核兵器の非人道性」の表現を「広島宣言」から取り下げた。もちろん背景にはオバマ訪問実現への深謀遠慮があった。


また核廃絶に関しても広島宣言は「現実的で漸進的なやり方でなければ達成できない」と主張した。これは国連に台頭している非核保有国の急進的な核兵器禁止の動きと一線を画し、米、英、仏など核保有国の主張に寄り添ったものである。


さらにケリーが注目していたのは「謝罪」の要求が国民の間にどれほどあるか、またマスメディアがどう反応するかであった。謝罪することは、米国の世論調査で依然として「日本への原爆投下は正当化される」という答えが56%と半数を超え、原爆の投下を肯定的にとらえる評価が強いこともあって、事実上困難である。
 

ケリーも謝罪はしなかったがその発言は謝罪の意味を含むものといえる内容であった。例えば資料館の感想で「衝撃的な展示で胸をえぐられる思いだ」と述べているのはその例だ。ぎりぎりの表現で日本国民に分かってもらおうとしている。芳名帳には、「世界中の人々がこの資料館を見て、その力を感じるべきだ」と記した。記者会見では「いつか大統領もそのひとりとなってほしい」と発言した。


これらの発言を総合すれば、ケリーの“露払い”は、オバマ訪問への道を開いたと受け取れる。
 

日本としては核保有は論外であるにしても、核兵器を振りかざし、今にも使用しそうな発言を繰り返す狂気の指導者が北朝鮮に存在する限り、米国の抑止力としての核は不可欠である。オバマの言う「核なき世界」の実現は容易ではないが、広島でオバマがこの信条を繰り返す可能性は強く、この路線は総じて歓迎されるべきものであろう。

要するに歴史問題は未来志向を優先させるべきだ。「謝罪」の言葉にこだわり続ければ民族の度量が疑われることになる。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年04月08日

◆山尾を担いだ“飯島人事”で大失敗

杉浦 正章



「民進再生」の切り札が「民進死ね」に
 

いつも政局を読み間違える内閣“参与”飯島勲が、今度は民進党を誤導した。週刊文春3月24日号で山尾志桜里を褒めちぎり、「新党の政調会長に抜てきすべき」とアドバイス。これまたしょっちゅう読み違える代表・岡田克也がまる乗りして、山尾を民進再生の最後の切り札とばかりに政調会長に抜擢。


ところが地球5週分のガソリン代を政治資金収支報告に計上していたことがばれて、山尾は高転びに転んで脳振とう状態。民進党は7日政調会長続投にお墨付きを与えて、かばったが、この問題は選挙次元で尾を引く。北海道5区の衆院補選や夏の国政選挙への影響は限りなく大きい。
 

飯島の文春コラム・激辛インテリジェンスの「民主“救いの女神”山尾志桜里」は罪深い。飯島が仕掛けた“わな”かと思いたくなるほど見事に山尾を持ち上げている。持ち上げて、人事で抜擢させ、逆さ落としに落とすわなではないかと思いたくなるほどなのだ。


コラムは「いやー、パリのルーブル美術館で観たあの名画が思い浮かぶぜ。十九世紀フランスの画家ドラクロワが、1830年の七月革命を描いた大作『民衆を導く自由の女神』を知ってるかな」に始まって、「落ちるところまで落ちた野党陣営に射したたった一筋の光明、救いの女神ってわけだよ。」と山尾を持ち上げている。


しまいには「お前マゾか」といいたくなる表現まである。「オレも一度、追及されてみたいくらいよ」だそうだぜ。そして最後に「民主党も国民に全く理解されない維新の党との合併だの、党名変更だのゴタゴタしている暇があるなら、山尾議員を新党の政調会長に抜てきすべきよ。国会のあらゆる委員会で質問の先頭に立たせれば、支持率の急上昇は請け合いだぜ」と締めくくっている。
 

しかし飯島に政治家を見る眼がないのは“美貌?”に目がくらんだのだろうか。本質を突いていないとしか思えないのだぜ。飯島が褒めちぎった山尾の国会質問は、筆者が1月15日に“いちゃもん質問”と断じた部分を、逆に褒めあげているのだ。

飯島は「首相が架空の安倍家の家計に例えて説明しただけの『仮にパートタイムで月収二十五万円だとして』の言葉尻を捕まえて『二十五万円のパートがどこにあるんですかっ!』と切り込んだ」と褒めあげた。加えて「首相も『そんな枝葉末節の議論ばかりだから、民主党の支持率は上がらない』とやり返したけど、『枝葉末節の女性議員』は引き下がらないからスゴイぜ」なのだそうだ。


野党質問を褒めあげ、首相答弁をやっつける内閣参与も珍しいぜよ。したがって、やっぱりわなではあるまいぜ。本気でそう思っているようだぜ。
 

そもそも飯島が「女神」とあがめる山尾にそのカリスマがあるかだ。1989年の参院選でマドンナブームを作り上げて社会党を圧勝に導いた土井たか子と比較すれば天と地の開きがある。おたかさんこそ社会党にとって「女神」であったのだ。


おたかさんは庶民性があったが、山尾はつんつんとしていて、エリート根性丸出しだ。弁明も「蓋然性があった」とか「その事案は」などと検事の口調丸出しで安っぽい。引かれ者の小唄ではないが、引かれ者が検事の口調で弁明しても説得力はない。


おたかさんはふくよかで人を引きつける魅力があったが、山尾は魔女風冷血女のように見える。能面のようで表情がない。おたかさんは女性にしては太めの声だったが、山尾の声は声変わりしない中学校の女生徒のようで、キンキンとうるさい。だからもともとブームなど起きるわけがないのだ。
 

そのうるさい声で弁明しても誰もが納得しない。かつて自分が政権側を追及した言葉がブーメランとして返ってくるからだ。その一番良い例を挙げれば前経済再生担当相・甘利明を追及したときの発言だ。


山尾は「知らなかったで済まされる問題じゃないです。政治収支報告書に目を通さない議員なんか民主党にはいません。私ももちろん把握してます。秘書が知らなかったと言えば秘書が犯罪や泥棒をしてても雇い主の議員が知らなければ責任取らないでいいんですかって話ですよ。例え、甘利議員が知らなかったとしても秘書の犯罪、もしくは犯罪に準ずる行為があったならば、雇い主として議員辞職もしかるべきだと思います」と追及しているのだ。


まさに「民主党にはいない収支報告に目を通さない議員」が本人であったことになる。検事のプロなら一目見て1000万円の上限超えなどは分かる。それとも自分の能力に嫌気がさして「やめ倹」になったのだろうか。「責任取らなくていいんですか」は、国民みんなが山尾に対して思っていることだ。まさに「議員辞職もしかるべき」であろう。
 

民進党内には山尾を代表に担ぎあげて、ダブル選挙を戦うべきだという「岡田降ろし」まで始まろうとしていたようであるが、表面化する前に山尾がつぶれて良かったと思う今日この頃のようだ。それにしても、岡田は自分で掘った穴に落ちるようではどうしようもない。「山尾落ちた民進党死ね」にならないことをひたすら祈るぜよ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年04月07日

◆財務省が増税延期で条件闘争か

杉浦 正章


またも1年半延期説が台頭


自分は増税延期だが首相・安倍晋三は延期したら総辞職せよとは驚いた。民進党代表・岡田克也の主張は天地があべこべだ。そもそも民進党は野田政権がリードして3党合意で10%増税を決め、公約として掲げたのであり、延期すれば公約違反の最たるものは自らの党ではないか。


曲がった牛の角をまっすぐにするために叩いたり引っぱったりすると、牛は弱って死んでしまうことを「角を矯めて牛を殺す」というが、その最たるものが公明党代表・山口那津男だ。自分の「手柄」としている軽減税率にこだわるあまり、増税延期反対論を声高に発言している。


これは選挙母体である創価学会の大勢とはマッチしない。学会の大半を占める低所得層は増税そのものに反対なのであり、増税がなければ軽減税率もない方が有り難いのは当然だ。そしてここに来て、身の危険を感じ始めたのか、財務官僚が“条件闘争”に転じ始めたようだ。
 

世の中矛盾撞着はつきものだが、消費増税再延期が「アベノミクスの破たんである」という論調は、民進党と朝日・毎日の安倍攻撃の中核となっている。これは、国政を政争の具とする愚論の典型であり、アベノミクスは安倍が旗を掲げ続ける限り破たんしないことが分かっていない。すべてはスティグリッツが官邸の会合で「大低迷」と形容した世界経済の収縮に原因があり、その原因をアベノミクスが作ったわけではない。


中国経済の低迷、石油価格の下落は他律的な要因であり、今後世界経済の低迷は3年は続く。それに対応して政策を柔軟に転換させることができるのは自民党政権であり、状況変化に対応出来ずにつぶれたのは民主党政権だ。そもそも企業収益が史上最高となり、事実上の完全雇用を国民が謳歌(おうか)できるのはアベノミクスがあるからだ。保育児童問題も完全雇用からの派生問題であり、安倍政権批判は的外れだ。
 

確かに安倍は、14年11月18日、消費増税の延期を公表した記者会見で「再び延期することはない。はっきりと断言します。景気判断条項も付すことなく確実に実施する。3年後に消費税引き上げの状況を作り出すことができる」と発言した。


しかし政治は状況の変化に応じて臨機応変の対応をすべきであり、その判断基準は国民大多数の安寧にある。「何が何でも増税するから庶民は死んでください」というのは政治ではなく独裁だ。
 

岡田はNHKで「首相はリーマン・ショックのようなことがない限り、必ず来年4月に消費税を上げると言って解散した。先延ばしは、重大な公約違反だ。内閣総辞職に値する」と発言したが、肝心の増税延期については「苦渋の選択だが先延ばしも一つの選択肢になる」と述べた。

冒頭述べたように自分は延期してもいいが安倍はいけないという小学生でも唱えない論理矛盾を公の場で展開するようでは、“出戻り新党”も先が見えた。


民進党にとってジャンヌダルクかと思われた政調会長・山尾志桜里も、自らが代表を務める政党支部の政治資金収支報告書に多額のガソリン代を計上していたことがばれて高転びに転んだ。検事が脱法行為を働いてはいけない。保育所問題で政権を追及する前に、自分の頭のハエを追うことが先決だろう。焦点の北海道5区の衆院補選に応援で使える状況ではとてもなくなった。どこまでついていない政党なんだろうかとつくづく思う。


やはり3年3か月にわたる政権党としての大失政の連続が天罰を下しているのだろう。
 

公明党の山口も遠吠えが度を過ぎている。「簡単に消費税率の引き上げを先送りすべきではないと思う」と延期反対論を展開しているが、これも群を率いるリーダーとして素質を問われる。先には同日選に反対しながら、安倍との会談後に賛成に転じたが、臆面もなく“転ぶ”人のイメージが定着している。消費増税延期支持は読売の調査で65%に達しており、おそらく創価学会員は大多数が延期支持ではないか。支持母体の真の意向を確かめてから発言した方が良い。
 

そしてここに来て注目の財務省が転向し始めたという話が永田町に伝わっている。同省は「歯止め付きの延期」という条件闘争に変わってきているというのだ。財務省は大蔵省の昔から官邸に対峙して、第2官邸の“権勢”を意のままにしてきたが、安倍官邸の強靱さに折れざるを得ないと判断しつつあるというのだ。


場合によっては官邸から人事で仕返しをくらいかねない状況になってきているのが、恐怖感を生じさせているのだ。その条件闘争とはまたまた1年半延ばすというものだという。1年半の延期で17年4月実施を18年10月実施にする、という説だが、安倍の任期は延長がなければ18年9月だから、安倍がいなければもう延期はないと判断しているというのだ。まるで政局を知らない官僚らしい対応だ。
 

財務省は法律に時期を明記して歯止めにするというが、今回の例を見ても法改正されればおしまいだ。官邸サイドからは消費増税凍結論や、何と減税論まで出ている。8%を7%にするとか、5%に戻すなどという説が出ているがこれは財務省へのけん制だろう。


いくら何でも減税はないだろうと思う。社会福祉予算を減らすと財務省が言い出せばおしまいだ。凍結があるかどうかだが、2回にわたる延期が物語るものは、デフレ期の増税は成り立たないということである。18年はオリンピック景気が頂点に達しつつある時期だが、オリンピックが終われば不況がすぐに来る。延期を繰り返すよりいっそ当分凍結した方が効果的ではないだろうか。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年04月01日

◆日米韓が「対北準軍事同盟」の色彩強める

杉浦 正章



極東のパワーバランスに決定的影響
  

対中けん制の側面も


今にも北朝鮮が5回目の核実験を断行するという緊迫した状況下において、日米韓3国首脳が31日、北朝鮮の核ミサイルに対抗し、これを抑止するために安全保障と防衛協力の推進で一致、事務当局に具体化を指示することを決めた。


これは、紛れもなく北朝鮮の核脅威に対する3国準軍事同盟の色彩を濃厚に打ち出したものであり、極東のパワーバランスに決定的な影響を与えることが確実視される。


安保法制を実現させた日本は、一朝有事の際は集団的自衛権の限定行使の範囲内で最大限の貢献を求められることになる。この事実上の対北朝鮮3国同盟は、今後極東の安全保障の核となることが予想され、極東で孤立気味の中国の警戒を呼ぶことは必至であろう。


国務次官補・ダニエル・ラッセルが自民党総務会長・二階俊博との会談で3国首脳会談について「北朝鮮の問題についても議論することになっており、非常に重要な話し合いになる」と述べている。言葉使いに慎重な外交官が「非常に重要」と表現したことが気がかりであったが、まさにこれだったのだ。


会談後記者団に首相・安倍晋三は「地域の平和と安定に責任を有する3首脳が一堂に会し、法の支配やルールに基づく行動の重要性を確認し、北朝鮮やグローバルな課題について、率直に意見交換できたことは極めて有意義だった」と強調した。


そのうえで、安倍は、「3か国が直面する地域情勢を考えれば日米韓が協力を緊密にしていく必要がある。特に北朝鮮が核ミサイルの能力を向上させていることは3か国だけでなく国際的な脅威だ。3か国の外務・防衛当局間で具体的な安全保障・防衛協力を推進するため、3首脳が事務当局に指示することとした」と述べた。


つまり安倍とオバマと朴槿恵は北のいまそこにある「核危機」に対して、場合によっては軍事的な対応をせざるを得ないという情勢認識で一致したのだ。北の攻撃に対しては共同して軍事行動を取る方向を確認したことになる。安全保障の構図としては日米安保条約と米韓相互防衛条約をブリッジとして3国が協力する構図であろう。


これまで3か国は北の脅威に直面しつつも、慰安婦問題をめぐる日韓対立が足かせとなって協力体制は確立できなかった。ところが昨年末の安倍と朴槿恵による「慰安婦合意」は、安全保障面での情勢をがらりと変えた。


朴槿恵は中国を刺激するTHAADミサイル配備で米国との交渉に入り、習近平との関係は悪化した。日韓関係は安保面でも秘密情報を共有・保護するための法的な枠組み=GSOMIAの早期締結に向かって動き出している。これはワシントンにおける朴槿恵の首脳会談の日程を見ても明らかだ。会談は韓米、韓米日、韓日会談の後に習近平との会談を設定しているのである。
 

オバマはこの潮流の変化を好機ととらえ、日米韓安保協力の枠組みの実現へと動いたのだ。朝鮮戦争当時は日本の軍事協力は不可能であったが、「第2次朝鮮戦争」が発生すれば日本は軍事的貢献をせざるを得なくなるだろう。


折から北は核の小型化を達成するための第5回核実験を行う寸前の状況にある。これにミサイルの大気圏再突入の技術が加われば米国への核恫喝が現実味を帯びてくる。金正恩は「国家防衛のために実戦配備した核弾頭を任意の瞬間に発射できるよう常に準備せよ」と軍に指示している。心理戦だが、まかり間違えば何をするか分からない独裁者である。


北が核兵器を使おうとしただけで、確実に全面核戦争に発展する。安倍が「3か国だけでなく国際的な脅威」と発言したのは当然であり、そのために手をこまねいているわけにはいかない。


一方オバマがこの3か国軍事連携に北への圧力に加えて、対中けん制の意味を持たしていることは否定出来まい。既に日米豪は準同盟国的な関係が出来上がっており、南沙諸島問題を抱えるフィリピンやベトナムとも共同歩調を取り、対中包囲網を作りつつある。


しかし肝心の極東では慰安婦問題がネックとなって3か国協力体制が出来なかったのだ。対北関係は6か国による話し合い解決など現段階では不可能な状況となっている。中国は米国が北との話し合いに乗り出すよう説得する方向にあるが、まず早期に実現する空気にない。話し合いを主張するなら中国は金正恩を説得しなければならないが、北との関係は悪化の一途をたどっておりその可能性も小さい。
 

こうして詰まるところは軍事力によって北を封じ込めるしか当面手立てがないのだ。史上最大の米韓合同軍事演習の目玉である金正恩暗殺を狙う「斬首作戦」は、北の出方によっては現実味を帯びるものとなる。こうした中での日米韓安保協力の体制確立は国民の生命財産維持にとって不可欠のものとなる。

【筆者より 春休みを取って旅行するため再開は7日となります】

       <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2016年03月31日

◆トランプの本質は“幼児的攻撃性”の小商人

杉浦 正章



「対牛弾琴」だが反論する
 

なんともはや米大統領選はとんでもない“化け物”を生んでしまったようだ。本選挙では民主党のクリントンが勝つだろうが、米国社会の歪みを見る上で極めて興味深いのが、共和党候補が実業家のドナルド・トランプになりそうなことだ。


その発想たるやすべてを自分の不動産業の経験から割り出す、「経費削減至上主義」だ。最近では日本への軍事経費を削減するため、日本の核武装を勧めるに到っている。すべてが安全保障への無知から来る“小商人(こあきんど)”の発想であり、成り上がりの財界人にみられる「幼児的攻撃性」の権化のようでもある。


北朝鮮にも金正恩という幼児的攻撃性の権化が存在しており、まさに世界の2大奇人が太平洋をへだてて向き合っている。いずれも論語の「小利を見れば大事ならず」で、常に小さな利益を重視して、大きな事業ができるような政治家ではない。


幼児的攻撃性は専門家によると先の先まで読むことが出来ず、常に敵を作る傾向がある。自分の目的や願望を拒むものは両親ですら敵という精神状態だ。


最近のトランプは移民に対する差別発言ばかりでは票にならない事に気づいたか、矛先を日本に向け始めた。最大かつ最良の同盟国を敵に回す発言だ。牛に琴を弾いて聞かせても意味がないことを「対牛弾琴」というが、ここは反論せざるを得ない場面でもある。
 

まずトランプは「米国が日本を守っていることをほとんどの米国人が知らない。日本に金を払わせる。負担を大幅に増やさなければ在日米軍を撤退させるべきだ」と、自分の無能なる尺度を丸出しにして発言した。これは無知から来る愚者の理論だ。日本が世界で唯一「思いやり予算」として今後5年間に9465億円を払う約束をしたことを知らない。


年間1848億円であるが、それとは別に基地周辺対策費、施設の借料、土地の賃料などを加えると年間なんと6710億円の支払いとなる。人種差別主義者だけあって、北大西洋条約機構(NATO)には何も言わないが、NATOが思いやり予算を払っているなどと言うことは聞いたことがない。


湾岸戦争の際にも130億ドル、約1兆5500億円もの戦費を負担しており、現在の中東危機に対する経済的貢献も大きい。日本のカネがなければ米国の世界戦略は成り立たないのだ。「その無知を恥じよ」と言っても馬耳東風だろうが。
 

さらにトランプは「日本は北朝鮮から自分の国を守った方が好都合だ。北朝鮮が核を持っている以上日本も核兵器を持った方がいい」と日本核武装論を展開した。これは日本に核武装させないというのが米国の極東安保の基本であることすら知らない。


なぜなら日本が核武装すればだいいちに「核の真珠湾」が怖い。信長の昔から奇襲攻撃に長けた民族であるからだ。トランプの居るホワイトハウスに正確に命中する核ミサイルなどすぐにでも完成できる。


第2の理由は世界第3の経済大国の核武装は日本が軍事大国化することを物語っており、単に極東のみならず世界の勢力バランスが大きく崩れる。


したがって世界の安全保障は常に動揺する。核不拡散条約は崩壊し、世界の政治・外交・安保の秩序も予測不能の事態となり、もともと機能を発揮しない国連はさらなる弱体化を招く。米国の地位は相対的に低下して、小商人が目指す「米国の復活」などは絵空事となるのだ。


トランプは格好づけか「外交政策チーム」なるものを作ったが、そのトップに据えたのが上院議員・ジェフ・セッションズ。共和党では最右派に属し、不法移民問題に熱心に取り組んでいる議員だが、共和党本流からは馬鹿にされている。ブレーンとして機能するわけがない。


さすがに国務省のカービー報道官は、荒唐無稽(むけい)の対日発言に「ケリー国務長官も当惑している。アメリカは日本や韓国との条約を真剣に守るという考えに変わりはない」と、しごく当たり前の発言で沈静化に懸命だ。しかしただでさえ日本の一部にある核武装論を刺激してしまった。


大阪府知事・松井一郎は29日核保有の是非も含め安全保障政策の議論を進めるべきだとの考えを示した。松井は「日本はどうするのか政治家が真剣に議論しないといけない。完璧な集団的自衛権の方向か、自国で軍隊を備えるのか。そういう武力を持つなら最終兵器が必要になる」と述べた。まともな核武装論としては最初のものだ。
 

こうして米国内にとどまらず、世界中に迷惑をもたらす奈良騒音傷害事件の騒音おばさんのように、騒音老人がかしましいが、日本のマスコミ、とりわけ民放テレビは、今にも大統領になるような面白半分の報道を繰り返さない方がいい。予備選で大統領候補になっても本選挙が物事を決める。


共和党も分裂するかも知れない。まだ曲折があるうえに世論調査は冷静な傾向を示している。CNNの最新の世論調査でも全体の56%がクリントンが本選を制するだろうと回答。トランプの勝利を予想したのは42%にとどまっている。トランプの大衆催眠術にかかった米国民も、やがては目覚めると思う。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年03月30日

◆ナイヤガラ瀑布は誰も止められない

杉浦 正章



同日選へ与野党が雪崩を打って走り出した


 ナイヤガラ瀑布の流れは誰に求められない。だいいち誰も止めようとしていない。首相もだ。


予算成立で政局は雪崩を打って衆参同日選挙に向けて走り始めた。29日の記者会見は首相・安倍晋三が衆参同日選挙を止める最後のチャンスであったが、「頭の片隅にもない」と述べるにとどまった。本当は「やるかやらないか」と「やるにはどうするか」で頭の中が98%いっぱいなのに「片隅にもない」とは傑作だ。

しかし会見ではそのいっぱいの頭の中の傾向をちらりと垣間見せた。それは「予算の成立こそ最大の景気対策と申し上げてきた。早期に執行することが必要だ。可能なものから前倒し実施するよう麻生財務相に早速指示する」という発言だ。


明らかに選挙を意識した景気対策である。安倍はサミットを前に予算とは別に秋にも補正予算の編成も含めた経済対策を打ち出すことを考慮しているようであり、サミットでは財政刺激策の必用で一致する流れとなってきている。


こうした状況を見れば、走らせておいて参院選だけの選挙を選択する余地は極めて少ない。シングルで参院選に敗北した場合、久しぶりの“政局”が待っているからだ。首相の姿を読んでか、こっそり首相からささやかれたからか、これまでダブルに反対だった公明党代表・山口那津男が、筆者が「反対論の公明はしょせん“転ぶ” 」と予言したとおりにすぐ転んだ。


山口はダブル選挙について「解散権を持っているのは首相だ。安倍が決断すれば、受けて立たざるを得ない立場だ」と述べ、安倍の判断尊重に大きく転換した。やっと支持母体の創価学会のダブル容認論が伝わったかのようである。


山口は「仮に打診があれば、その理由や勝てる可能性、国民に説得力があるかを真摯(しんし)に相談したい」とまで述べたのだ。しかし未練たらしく「ダブル選は望ましくないと言ってきた。(自民党との)選挙協力がしづらくなるし、政権すら失ってしまうリスクが高い」と付け加えたが、引かれ者の小唄のように見える。
 

一方、幹事長・谷垣禎一も変わった。これまで谷垣は参議院議員会長・溝手顕正が正直にも「ダブルに賛成」と述べたことに対して「参議院側の願望も含めての話ではないか。ばらばらに、いろいろな発言が出てくるのはいかがか」と苦言を呈するなど慎重だった。ところが29日の記者会見で、衆参同日選に関し「同日選や衆院選については現在、口をきかないことにしている。


幹事長が『こうだ、ああだ』と言い出したらしようがない。私は慎重だから今は発言を差し控える」と述べた。口を利かないというのは党内が走り出すことを認めるということなのだ。


こうした与党幹部の言動を固唾をのんで観察している野党が「すわ解散」と踊り出さないわけがない。民進党の岡田克也代表に到ってはもはやとどまるところなきがごとく選挙一色の様相だ。結党後の記者会見で「衆参ダブル選の可能性があるので、候補者擁立をさらに進めていきたい。新しい党になったので公募も新たに行いたい」と言明。


両院議員総会でも「結党の勢いを衆院補選や参院選につなげたい。とにかくしっかり結果を出していこう」とハッパをかけた。「出戻り新党」と揶揄(やゆ)され、共同通信の調査でも、民進党について「期待する」が26.1%、「期待しない」が67.1%。「結党の勢い」が何処にあるのか分からないがとにかく括弧付きの「結党の勢い」なのだ。しかし民進党には大きなジレンマがある。
 

政策上のジレンマだ。共産、社民と共同で安保関連法廃止法案を提出して、これを軸にダブルを戦おうとしていることだ。シールズなどという何も知らない若い衆をだまして動員し、国会前を占拠して、「安保反対が国論」とばかりに示威行為をするのが基本戦略だ。これが成り立つかどうかだが、極東情勢を展望すれば時代錯誤もいいところである。 


筆者は安保法制の抑止力がなければ北朝鮮が本気で露呈させる「極東の危機」を乗り越えられないだろうとみる。そしてその危機は今そこにあるのだ。安倍が記者会見で「先般、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際、従来よりも日米はしっかりと情報を共有しており、体制整備も、以前より格段に進歩した。


これはハリス太平洋(軍)司令官もそう述べている。まさに助け合うことのできる同盟は、その絆を強くした、その証左であろうと思う」と言明したが、まさにその通りである。日米の信頼関係、とりわけプロである制服組のそれは法制により大きく進歩した。
 

これに異論を唱えて選挙に勝てるだろうか。今後北は31日からの核サミットに合わせて狂気の核実験をしかねない状況があり、ミサイルも狂ったように撃ちまくる。民主党は一部で臆測されているように金正恩が核サミットに合わせて核実験をやりかねない状況を何と見ているのだろうか。日米協調で北の暴挙を阻止する安保法反対で日本の安全は確保出来ると見ているのだろうか。まさに反対論は国民の生命財産無視の観念論に過ぎない。
 

こうして流れは滔滔(とうとう)とダブル選挙に向かっているのだ。自民党幹部の中には総裁特別補佐の下村博文のように「4月24日の北海道5区の衆院補選で自民党が敗北した場合は、ダブルは困難になる」などと若い記者をだます発言をする向きがいるが、気は確かかといいたい。


同補選はまず現在リードしている自民党が勝つと思うが、負けてもダブルの流れには影響は出ない。そもそも小局が大局を左右したためしがない。木の葉を見て森を見ない浅薄なる“読み”であろう。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年03月29日

◆安倍外交が内政密着型で再始動する

杉浦 正章



米露にらんだウクライナ大統領来日
 

予算成立と安保法施行により首相・安倍晋三がその姿勢を大きく外交へと転換させる。伊勢志摩サミット(G7)を軸に対欧米外交、対露外交、対中韓など近隣外交を展開、この成果をもとに夏の国政選挙で国民の信を問う形となる。


サミットでは世界経済を牽引してきた新興国経済の低迷で、G7が再び世界経済のリーダー役を演じなければならなくなり、サミットはテロ対策と並んでかってなく経済重視型となり、議長役としても安倍のリードが極めて重要になる。そして財政出動で景気を刺激すべきとの世界の潮流は、安倍に消費増税再延期の決断をしやすくする。まさに外交が内政に影響し、内政が外交を動かすという状況へと突入する。
 

外交日程は激動の世界情勢を反映して極めて立て込んでいる。31日から米ワシントンで開かれる核安全サミットを機会に安倍はオバマや朴槿恵と会談する。4月は5日から3日間の日程でウクライナ大統領・ポロシェンコが来日する。中旬には露外相・ラブロフが来日して外相・岸田文男と会談する。5月26日・27日のG7に先だって安倍は4月下旬からの大型連休中に欧州のG7諸国を歴訪する。安倍は訪欧に合わせて、ロシアを訪問、プーチンと会談する方向で調整している。
 

サミットはもともと75年石油危機からの建て直しを目指して仏ランブイエで行われ、筆者は三木武夫が出席した同サミットを取材している貴重なる骨董品である。以来G7は経済が中心だが冷戦を反映して対ソけん制の意味合いも濃厚であった。


今回のサミットも欧州におけるテロの頻発で政治サミットの色彩も強いが、同時に待ったなしの対応が迫られるのが新興国経済の低迷で、世界経済の牽引役としての役割である。2月の上海における20か国財務相・中央銀行総裁会議(G20)は財政刺激策を各国に求めており、この潮流は変わらないものとみられる。日本は8%への引き上げで生じた経済不振からの脱却を明示しなければならず、その方策として安倍が消費増税再延期と財政出動を選択する公算は大きい。


G7全体としては財政出動による国際協調の構築を打ち出すものとみられる。テロ対策は当然盛り込まれるが、極東におけるサミットであるからこそ「核テロどう喝国家」北朝鮮の存在についても安倍は警鐘を鳴らし、非難して対策に盛り込むべきであろう。もちろんこれに先立つ核サミットでも同様の主張をする必要がある。
 

安倍はサミットに向けて主催国トップがそうしたように、参加国を廻って事前の調整をすることになる。問題はこれと合わせてソチでプーチンと会おうとしていることに米国が渋っている点だ。

オバマは2月の安倍との電話会談で訪露をサミット後にするよう要望したが、安倍は対露外交の重要性を指摘して断った。ホワイトハウスはカチンときているに違いないが、安倍は国家安全保障局長・谷内正太郎をワシントンに急きょ派遣、3月1日に大統領補佐官・ライスと会談させたが内容は一切漏れていない。しかしその後22日になって、ウクライナのポロシェンコの来日が発表されたのは怪しい。


ポロシェンコは4月5日から3日間公式訪問する。日本ではウクライナ問題など関心が薄く、新聞はまだ気が付いていないが、これがオバマ説得のカギではないかと思う。支持率わずか17%で国内でぼろくそに言われている大統領でも利用価値があるのだ。というのも米欧諸国に対して日本もウクライナ問題ではG7と歩調を合わせているというアリバイになるからだ。


恐らく安倍は歓待して何らかの経済援助を行うであろうし、ロシアが併合したクリミア問題でもウクライナ支持を表明するだろう。逆にポロシェンコが北方領土に対する日本の主張を支持する可能性も高い。ネットによるとロシアの高等経済学院の専門家、アンドレイ・フェシュンは「プロシェンコ大統領の訪日で安倍氏は米国の激しい怒りを和らげ、自らの政治的柔軟性をそれとなくアピールしようとしているのかもしれない。


ほらね。私はやっぱりロシアに行きますけど、その代わりウクライナ大統領を招きましたよ、ということなのではないだろうか」と看破している。
 

こうして安倍は米ロ両国を意識した、巧みといえば巧み、見え見えといえば見え見えの外交を展開する流れのようだ。ここに来て、早くもロシアはけん制に出た。北方領土に海軍基地を設営するなどと言い出したのだ。安倍はプーチン来日を実現して領土問題を一歩でも前進させたい考えのようだが、ここはアメリカが怒ろうがどうしようが、「根回し済みの自主外交」を貫くべき時ではないかと思う。
 

一方、安保法施行は安倍の外交的ポジションを強化しこそすれ弱めることはあるまい。日本が集団的自衛権の行使に前向きになれば欧米諸国にとってこれほど力強いことはない。しかし、よほどのことがない限り中東派兵などあり得ないことははっきりさせる必要がある。


当面はもっぱら北朝鮮対策に集団的自衛権は行使されるべきであり、中東やアフリカに自衛隊を派遣して戦死者などを出そうものなら、この国のマスコミは気が狂ったように安倍批判を展開する。南スーダンなどへの自衛隊派遣に新法適用などは金輪際行うべきではない。


北朝鮮の核ミサイルへの備えとしては安保法は極めて強い説得力があり、選挙対策には持ってこいだ。野党の安保法破棄の動きは今後5月9日の朝鮮労働党大会に向けて暴発を続ける金正恩を利することになり、これを批判すれば願ってもない選挙対策になる。

       <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2016年03月25日

◆F35配備で敵基地攻撃能力を実現せよ

杉浦 正章



議論より高度の政治判断のときだ
 

要するに天から核ミサイルを降らす狂気の指導者が近隣にいるのに、天から平和が降ってくるなどという専守防衛一点張りの思想など成り立たなくなったということだ。どの国もが持つ敵基地攻撃能力をミサイル迎撃能力と併せ持って、初めて北朝鮮の核から国民の生命財産を守ることが可能となる。


これは北がミサイルに原爆を搭載したか、しつつあるとかにかかわらず必用な戦略である。北が迎撃力を上回る大量のミサイルで「飽和攻撃」を仕掛けた場合、例え1、2発でも日本に核ミサイルが到達したらどうなるかを考えてみるべきだ。


おりから日本で組み立てている敵基地攻撃能力のあるステルス戦闘機F35が11月に完成、米軍も来年1月には岩国に配備する。政府・自民党はこれと連動して高度の政治判断を下すべきであろう。


自民党は、24日国防部会を開いて敵基地攻撃能力確保の問題について議論を開始したが、イロハのイからのスタートである。選挙を前にして穏便にという自民党執行部の方針は分かるが、今頃こんな議論を繰り返しているときかといいたい。


席上、防衛省の担当者が「従来から法制上は、ほかに手段がないと認められるかぎり、基地をたたくことは自衛の範囲に含まれ可能としている。ただ、自衛隊は従来から敵基地攻撃に適した装備体系は有しておらず、必要な装備の検討もしていない」と現状を説明。

これに対し、出席した議員からは「北朝鮮は複数のミサイルを同時に発射する能力を持っており、『撃たせないようにする』とか『撃つ前にたたく』ということは当然考えなければならない」という意見が出された。

また「敵基地攻撃能力の保有を議論することが北朝鮮に対する抑止力になる」といった指摘が出され、引き続き議論していくことになったという。
 

しかし既に同国防部会は09年の北朝鮮によるミサイル実験を受けて「座して死を待たない防衛政策としての策源地(敵基地)攻撃能力が必用」との結論に達している。


こうした意向を受けて13年の防衛計画大綱には、「ミサイル発射手段への対応の在り方を検討し、必要な措置を講ずる」と初めて敵基地攻撃能力について間接的に言及しているではないか。もう議論の段階は過ぎた。対応が遅れれば遅れるほど、北の核戦略を利することになる。


ただしこの問題は、安保法制のように政権与党だけで進めず、野党も含めて国論を形成する努力も必用だ。幸い民進党右派には元外相・前原誠司のように確信的な敵基地攻撃論者がいる。これらを巻き込んで実施に移す必要がある。


北の核ミサイルの現状は定かではないが、防衛省によると18日に発射した中距離弾道ミサイル「ノドン」は、「ロフテッド」と呼ばれる通常よりも高い軌道を描いていたという。おそらく弾道ミサイルの性能向上に必要な大気圏への再突入実験などを意図した可能性があるとみられる。


しかし米韓軍事演習に対抗して実施した上陸演習や、ミサイル再突入実験は、まさに噴飯物もいいところだった。米上陸用舟艇を真似したのかゴムボートのうえに張りぼてのような被いをつけて上陸したまでは良いが、降りる兵士は皆シャベルを持っていた。よほど古色蒼然の銃器など見せたくなかったかのようである。


再突入実験も先進国では高熱を出せる特殊な風洞を作って行うが、ガスバーナーを集めてレンガ製のの弾頭に炎を吹きかけるという「前代未聞の装置で行った」(専門家)という具合だ。


恐らく金正恩が思いついて急きょ映像を準備させたのだろうが、世界中の専門家によっていっぺんに見抜かれることまで考えが及んでいない。金の知識と判断力のレベルがうかがえるパフォーマンスだった。まさに精一杯背伸びする「弱者の選択」に懸命なのだろうが、馬脚が現れるとはこのことだ。


北はミサイルの発射が液体燃料注入でばれると判断してか、固体燃料の開発に成功したと発表したが、これも眉唾ものだ。しかし核兵器を開発しだして10年になる。先進国の開発は小型化に5,6年で成功しており、かなりのレベルに達していないとは言えない。


日本を狙うノドン200発に核を搭載すれば、まさに極東の戦略を左右する重大事態となる。冒頭述べたように飽和攻撃をかけられたらイージス艦や地上配備の迎撃ミサイルをすり抜ける公算が高い。核兵器を搭載した200発のノドンが日本に向けて発射されれば、迎撃が利かない飽和状態となり、必ずすり抜けるミサイルが出てくるのだ。
 

こうした狂気の行動にでかねない金はまさにルールを知らない指導者であり、彼による予測不能の事態に対処するには万全の対応をするのが国家戦略のイロハだ。国の安全保障は常に最悪のケースを想定して行われるべきものなのだ。


こうした事態に直面してマスコミにも敵基地攻撃を重視する論調が出始めた。産経が社説で「敵基地攻撃能力の保有検討を始めよ」と主張しているのはあり得ることだが、読売も加わった。社説で「迎撃システムだけで、すべてのミサイル攻撃を防ぐのは事実上不可能だ。巡航ミサイルなど、敵基地攻撃能力の保有についても本格的に検討する時期ではないか」と強調している。
 

安倍は昨年夏の安保国会では「武力行使の新3要件を満たせば法理上は認められる」との認識を表明したものの、「我が国は敵基地攻撃を目的とした装備は保有しておらず、想定していない」と語っている。しかし次期戦闘機F35は敵基地攻撃が可能である。米軍が岩国へのF35配備を決めたのも北への先制攻撃を意識したものとみられる。


これまで米国は日本の独走を警戒するあまり、敵基地攻撃能力を日本が持つことに消極的であったが、北は米本土を攻撃するミサイル開発に成功しつつある。事態は大きく変わってきているのであり、ここは日米韓協調の態勢確立へと急ぐべきであろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年03月24日

◆小沢・共産の「野合路線」が早くも空回り

杉浦 正章
 


安保反対も北の暴挙で共感呼ばず:野党戦略
 

まるで関ヶ原決戦を前にした西軍の分裂のような状態を野党が呈し始めた。生活の党代表の小沢一郎は共産党委員長・志位和夫との対談で「共産党とは組めないとか小沢は嫌いだと言っているようでは、安倍さんになめられる。その他の野党の器量の問題だ」と発言、民主党代表・岡田克也を暗に“器量”が無いと批判した。


確かに岡田は西軍の将・石田三成のように狭量なところがあり、野党全軍の将の器となれるか疑問だ。一方東軍の将・安倍晋三は選挙を「自公対民共の戦い」とクリアカットに位置づけ「決して負けるわけにはいかない」と旗幟を鮮明にさせた。


加えて注目すべきは政府が22日共産党を「現在においても破壊活動防止法に基づく調査対象団体である」「共産党の『いわゆる敵の出方論』に立った『暴力革命の方針』に変更はない」と改めて指摘する答弁書を閣議決定したことである。あきらかに共産党に接近する民主党に打撃となるうえに分断を狙った決定である。


若い人は知らないだろうが、共産党が1950年にスターリンの指示と資金を受けて事実上武装蜂起して火焔瓶闘争を展開したのは有名である。これを再びむしかえし、指摘したのだから、誰が見ても東軍の戦略の方が「家康風」で狡猾である。


西軍は小沢がやきもきするように安保関連法や消費増税といった重要政策で分裂の傾向を呈している。とりわけ小沢の「消費税延期先取り戦略」は、狡(こす)っ辛さここに極まれりであるのみならず、野党内に亀裂を生みかねない側面がある。


 
昨年夏の安保法制審議などをきっかけに小沢・志位会談は水面下でこれまでたびたび行われているが、雑誌の対談はその内容が分かる意味で貴重だ。この中で小沢は志位の参院選改選1人区で候補を取り下げるなど野党共闘を推進する姿勢を「日本の歴史を変えるきっかけになる」と褒めちぎった。まさに“一大よいしょ”を展開したのだ。


何としてでも共産党の集票力を確保して、政権交代の夢よもう一度と言う策略であり、目的のためには「悪魔」とでも組むという、なりふり構わぬ野合路線の露呈だ。


政局見通しについても「多分ダブル選挙になる」との見通しを述べ、志位も同調した。そして争点を「国民の多数が反対している」(志位)安保法破棄に絞ることでも一致した。


この場で目立ったのは小沢が、安倍の検討している消費増税再延期について「安倍政権より先に延期を打ち出すべきだ」と“延期先取り”を主張したことだ。大衆受けする政策ならなりふり構わず、生き馬の目を抜くがごとくに先手を打とうとする「小沢ポピュリズム」の面目躍如たるところが見える。  
 

27日に結党大会を開く民進党は他の弱小政党にも働きかけて、合併を促す方針だが、小沢に対してはどうも入党を拒否する流れが強まっている。小沢アレルギーが依然として根強く、岡田が党内をまとめられないからだ。


前首相・野田佳彦に到っては去る3日の連合の春闘決起大会で「方針が決まってもゴチャゴチャ言うのが民主党の悪いクセだ。一番ゴチャゴチャ言ったのは元代表だ」と名前こそ出さなかったが小沢批判を展開。それでも言いたりないのか野党糾合問題について「一番(私の)足を引っ張った(小沢)元代表さえ来なければ、あとは全部のみ込もうと思っている」とまで述べた。露骨なまでの小沢外しだ。


さらに党内では右派を中心に共産党アレルギーも根強く、元外相・前原誠司は共闘について「あり得ない。逃げる票の方が多い」と全面否定。京都選挙区で共産党と戦ってきた前原は「共産党の本質はシロアリ」とテレビで発言、侵入を放置すれば屋台骨ががたがたになることを強調した。小沢・共産の野合路線がまさに空回りの図である。
 

いまや共産党賛美の小沢はこうした民主党内の空気にしびれを切らしたと見えて、23日夜には何と民主党抜きで野党4党党首の会合を主催した。この場で小沢は志位との対談で持ち出した消費増税凍結法案の今国会提出を提案、会合は民主党に持ちかけることで一致した。


既にこの小沢の凍結案は民主党に吸収される維新の党でも代表・松野頼久が党内で、野党共同で国会提出する方針を表明している。しかし民主党内は安倍の検討している消費増税延期の方針について、政調会長・細野豪志らが既に「財政規律を重視する立場を打ち出し、延期を批判した方が戦いは有利」とする立場から「先延ばしするのであれば、安倍政権そのものが退陣するのが筋ではないか」と反対論を展開している。


幹事長・枝野幸男も慎重論であり、松野が復党して主張しても受け入れられる雰囲気にはない。早くも合流を前にして政策のずれが表面化する兆しを示している。
 

また安保法破棄を旗印とする路線が国民の共感を呼ぶかどうかも疑問だ。なぜなら安保法の正しさは北朝鮮の何をするか分からないトップの動向が日々立証しているからだ。狂ったようにミサイルを撃ち続ける姿を目の辺りにして国民は安保法がなかった場合の日本の姿に思いをいたさざるを得ないだろう。


簡単に言えば米国に向かうミサイルを無視したら、日本に向かうミサイルを米国が打ち落とさない可能性があったのだ。この緊迫した極東情勢下で、共産、民主に扇動された“安保天降り病”患者がまだ日本にいる方が奇跡だ。政局の焦点である消費税延期をめぐる思惑の相違も、野党の選挙共闘の柱となる政策が成り立たなくなる恐れがある。


加えてダブル選挙となった場合、野党は数々の選挙区で衆参のまた裂き状態に置かれることになる。一方で協力し一方で反目する混乱だ。政策で混乱した揚げ句のまた裂きでは、野党統一の選挙戦略そのものが根本的な打撃を受けかねない状態でもある。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年03月23日

◆サミット終了会見で「増税延期」表明か

杉浦 正章



反対論の公明はしょせん“転ぶ”
 

政界も財界も市場も消費増税先送り・衆参同日選挙をすべての前提として走り出した。この流れを止められるのは首相・安倍晋三一人だけだが、本人は「今年は大切な年になる。あえて申し上げないが皆様大体想像つくのではないか」と思わせぶり発言で、逆にあおっている。


自民党内各派は既に資金調達パーティーで同日選に向けた選挙資金調達に躍起になっている。各政治家たちも資金は会期末には底をつき、早く解散をの声は悲鳴に近くなる。安倍はサミット後に決断をするとしているが、国際経済情勢の流れは増税になく財政刺激策にある。

筋書きは、議長国として最終日5月27日の記者会見に日本としても増税延期と財政で国際経済好転に貢献すると表明、解散断行を最終的に表明することになりそうだ。これが筋書きだろう。
 

新年早々の原稿で増税延期で麻生太郎と財務省幹部の首を切らざるを得なくなる可能性を指摘したが、麻生が18日閣議後の記者会見で見せた醜態が財務省と首相官邸の確執を物語る。


何と麻生は消費税先送りと衆参同日選挙で紙面を全面展開した読売新聞の記者に向かって「お前、勝手に自分の話を作るな。いかにも政府が言っているような話に書き換えている。読売の得意とするところだけど、あんまり上品なやり方じゃないな。そろそろやめた方がいいぜ」と斜に構えて、まるで山口組幹部でも最近はしない口ぶりで脅しにかかったのだ。


学習院出身にしては余りの品位の無さにあっけにとられたが、読売は1面、2面、3面、4面、社説を使った全面展開をしており、明らかに社の全力を挙げた取材に基づく記事である。それをたかが財務省担当の一記者を「お前」呼ばわりしたうえに「やめたほうがいいぜ」はない。文句なるならナベツネに言うべきことだろう。麻生発言は言論出版妨害の最たるものである。
 

読売の記者も社への侮辱に黙って見過ごすことはなかった。「受け止めを」などとコメントを求めず、麻生発言の非を突くべきであったが、突然の攻撃に即対応することは難しいことも確かである。もっともこの発言はテレビカメラの前で行ったのであり、読売批判と同時に読売に情報を流した官邸への当てつけとも受け取れる。


それでは麻生は開き直った以上、延期になったら辞職覚悟で発言しているのだろうかと言えば、そうでもあるまい。財務省向けに俺は怒っていると言うポーズを見せたのでもあろう。事々左様に軽いのである。
 

こうして消費増税実施派は追い込まれて、逃げ場を失いつつある。テレビを見ても発言は筆者が新年以来指摘してきたことを、さも自分の意見であるかのように発言するコメンテーターばかりだ。目明き千人、めくら千人と言うが、いまではめくらは約1人だけとなった。


政局が苦手と見えるコメンテーターだが、その1人が「延期すればアベノミクスの失敗を認めることになる」と民進党と同様の発言をしている。冗談ではない。アベノミクスがなければ史上最高の企業利益や完全雇用は実現していなかった。大成功だ。その大成功を維持、発展させるために、世界中どの国もやったことがない民主党政権の負の遺産である消費税倍増などというとてつもなく馬鹿げた方針を遅らせようとしているだけなのだ。


あくまでアベノミクスを完成させ、デフレからの脱却を達成することにある。解散の大義はまずここにある。コメンテーターは「増税の収入を国民に給付金で全額返せば良い」などと荒唐無稽なことを言ったが、芸人の司会者から「それなら最初から上げない方がいい」と言われ失笑を買う始末。とにかく反対論には国際経済情勢の無知からか、国内政局ばかりを見ている発言が多い。
 

公明党がいい例だ。公明党代表・山口那津男は22日「不確定なことを軽々に言うべきではない」と真っ向から否定。さらに「政府・与党ともに、日本経済の基礎的条件はしっかりしているという認識を持っており、経済状況を理由に先送りするという判断には、今のところならない。


社会保障のさきざきを見据え、中長期的に安定的な財源を確保するという大局的な意義を見失ってはならない」と発言したが、これこそ国際情勢の大局を見誤っている最悪の事例だ。


国際経済はノーベル賞学者のスティグリッツが今年は最悪の去年より悪化すると述べている。またクルーグマンも22日の国際金融経済分析会合で、消費税をやるべきでないと主張、財政刺激の必用を強調した。これで会合の大勢はほぼ決した形だ。


山口は経済がデフレに戻れば、社会保障がもろに打撃を受ける危険を知らない。山口はせめてG20の共同声明くらい読んだらどうか。「機動的な財政政策を進めよ」と強調していることくらいは勉強すべきではないか。
 

筆者は公明党の反対はこれまで同様ぎりぎりで方向転換すると見ている。だいいち増税延期と連動する同日選挙に関しては支持母体の創価学会幹部の間から、「1回でやる方が2回やるより楽だ」という声が出ている。知らないのは山口だけだ。公明党は何より「自公政権命」なのであって、いくら超重要テーマでも連立解消を覚悟で最後まで押し通す度胸はあるまい。


こうして流れは決まりつつあるが、段取りとしては自民党議員の“勘”が大きく作用する。言い換えれば動物本能である。フツーの代議士なら「安倍はダブルに踏み切る」と判断して全力疾走するのであり、この潮流は誰も止められない。愚かな代議士だけが「選挙はない」などと言い続けて落選するのだ。


幹事長・谷垣禎一は増税延期を否定しているが愚かではなく過熱を冷やしているだけだ。官邸が「最終判断をサミット後にする」としているが、これには訳がある。サミットを俯瞰すれば、G20の通り各国首脳が財政刺激策の必用で一致することになろう。これはとりもなおさず増税路線とは真逆の方向であり、日本は財政出動を約束することになる公算が大きい。


安倍は議長国としてまとめ役にならざるを得ず、日本1国だけ消費増税を断行するという選択肢はない。これが本稿冒頭のサミット終了記者会見での発言につながると予想される根拠なのだ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2016年03月18日

◆核をもてあそべば北は自滅の道

杉浦 正章



金正恩は核戦略のイロハを知らない


オオカミ少年の寓話は子供の自滅だが、一国の指導者の自滅の話が面白い。昔、周の幽王(ゆうおう)が全く笑わない絶世の美女褒姒(ほうじ)を溺愛していたが、あるとき手違いで敵襲を知らせる狼煙(のろし)が上がってしまった。


すると空振りを食わされて慌てた諸侯の様子を見て褒姒が笑った。これに喜んだ幽王は度々嘘の狼煙を上げた。その後、実際に敵襲があったが誰も狼煙を信じる者がなく、幽王は褒姒ともども殺されてしまったというものだ。


まさに北朝鮮の核ミサイルをもてあそぶがごとき発言をくりかえす金正恩と、これに盲従する軍幹部の言動がこの運命を物語るかのようである。


北の狙いは“心理戦”であろうが、金正恩のヒトラーやスターリンに通ずる狂気の全体主義者的体質が、あり得ない話をあり得るものとしかねないところがまさにポイントなのだ。
 

たしかに北からは気違いじみた発言が続く。金がミサイルの大気圏突入実験に成功したと発表し「アメリカが我々の生存権を核で襲おうとするときは容赦無く核で先手を打つ」と核先制攻撃を明言。ついで国防委員会声明は「米本土を標的とする強力な核攻撃手段が常に発射待機状態にある」と威嚇する。


加えて人民軍参謀部声明に到っては「侵略者を射程圏内に入れた吾が軍隊は懲罰の発射ボタンを押す時刻だけを待っている」のだという。最新の大陸間弾道ミサイルKN08に核爆弾を登載して今にも発射するぞという、“やくざ国家”の脅しが続いている。専門家によるとこれを実行に移す場合は第一ターゲットが韓国大統領府。第二ターゲットが在日米軍基地とワシントンなのだそうだ。
 

こうした脅迫を裏付けるかのように、金は「核弾頭の爆破実験と様々な種類の弾道ミサイルの発射実験を断行する」と言明した。その時期がいつになるかだが、金日成や金正日と異なり金正恩のやることは、常々異常性がみられるが故に予測が極めて難しい。4月いっぱい続く米韓軍事演習の最中でもやりかねない気配がある。


現に10日午前、日本海に向けてスカッドミサイルとみられる短距離弾道ミサイル2発を発射している。3月31日からはワシントンで核サミットがあり、2014年の核サミットの際は直後にノドン2発を日本海に発射している。また2012年のソウル核サミットの際も、ミサイルを発射している。
 

しかし金の言う核弾頭の爆破と弾道ミサイルの発射実験については、専門家の大方の見方は5月上旬ではないかというものが多い。いくら金でも史上最大の米韓軍事演習の最中に実験をやって、米軍の攻撃に結びつくことは避けたいという“理性”が働くであろうというわけだ。


5月上旬である理由は、金が指導権確立を目指す36年ぶりの朝鮮労働党大会が上旬に予定されているといわれ、それに先だって行われる可能性が高いというのだ。
  

今度は金の言う核と弾頭の両方の実験となりかねない側面もあるようだ。金の狙いはかねてからの金王朝の理想がそうであったように、核弾頭登載の大陸間弾道ミサイルを入手することにより、米国に脅しをかけて韓国を放棄させ、朝鮮半島の統一を図るというところにある。しかし先祖はこの構図による統一など信じていないところがあったが、金はこれを信じ切っているところに危うさが存在するのだ。


しかし戦略核の使用について、これまで核大国が実行できなかった法則があることを金はまだ“学習”していないかのようである。それは核には核の報復があり自らも存在し得なくなるという単純明快な法則である。これが広島・長崎以来、どんなに情勢が緊迫しても核の使用がなかったことが物語る。金はイロハを知らないで騒いでいるのである。
 

考えてもみるが良い。北が核ミサイルを発射しかねないような緊迫した状況下において、発射台にミサイルが準備されれば確実に米国は核による先制攻撃を断行するだろう。移動式発射台の場合は発射をとらえ難い側面があるが、それでも発射されればミサイル防御網を突破しようがしまいが、北は核攻撃にさらされるのだ。


この場合中国もロシアも手を出すことをためらう可能性が高い。発射の場所を特定しにくければ北朝鮮全土に絨毯爆撃的な核攻撃が断行されるだろう。韓国大統領・朴槿恵が「北朝鮮が挑発を続ければ自滅の道をたどることになる」と述べているのはそういう事なのだ。だれか刈り上げ頭のドンにこの核戦略のイロハを教えてやって欲しいものだ。

【筆者より 21日が休日のため再開は23日です】

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2016年03月17日

◆米教授、首相の設定課題を次々クリア

杉浦 正章



増税“先送りカード”へ理論武装


民進党幹事長の枝野幸男が16日、「スティグリッツ氏から指摘されるまでもなく私も言っている」と得意げに発言しているが、カラスがライオンの吠え声を真似しても説得力は無い。首相でもないのに公明党の政調会長・石田祝稔が「今のところ予定を変える環境にない」と僭越にも発言しているが、これも超高度な経済判断が出来ないことを自ら露呈しているだけの話だ。


事々左様にノーベル経済学賞を受けた“権威”の発言というのは重いのだ。その重い発言をジョセフ・スティグリッツから引きだした首相・安倍晋三は、着々と消費増税“先送りカード”を切る準備に着手したかのようである。


そうでなければわざわざ「国際金融経済分析会合」などを設置する必要も無い。歴代首相と比較しても実に巧みな「政局運営」をするものである。急がば回れの政治手法なのである。
 

安倍の設定した消費増税再延期へのハードルが、次々に除去されたのが16日の会合だ。まず「リーマンショック並みの事態が起きない限り延期しない」は、スティグリッツが「2015年は08年の金融危機以降最悪の状況だったが、16年はさらに弱体化する」と述べた事によりクリアされた。


08年はリーマンショックのその年であり、現状は「リーマンショック並み」なのである。さらに安倍の条件「世界経済の大幅な収縮」についてはスティグリッツが「大低迷」と表現してクリアだ。


さらに重要なのは安倍が会合の冒頭で「伊勢志摩サミットでは世界経済情勢が最大のテーマになる。議長国として各国首脳と突っ込んだ議論を行い、世界経済の持続的な力強い成長に向けて明確なメッセージを発出したい」と発言した問題だ。


この「議長国の責任」は新たに設置したハードルだが、これもスティグリッツは「日本は非常に強い金融政策を実施して景気を刺激してきたが、それはもう限界に達しており、次に財政政策を取るということが重要だ。問題の根本的な原因の1つが総需要の不足であり、伊勢志摩サミットでは需要を刺激するような政策について各国で議論してほしい」と述べた。
 

これは財政出動の勧めであり、発言は2月に上海で開かれた主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議(G20)の共同声明に沿ったものといえる。同声明は「金融政策のみでは均衡ある成長につながらない。機動的に財政政策を実施するべきである」と強調している。


このスティグリッツ発言も、安倍にとっては、消費増税再延期を決断する後押しになるものに他ならない。消費税引き上げはまさにG20の声明に逆行するものになるからだ。サミット議長国としては世界経済の潮流を無視することはできまい。
 

スティグリッツは「現在のタイミングで消費税率を引き上げるのは間違った方向になる。世界経済がこんなに弱くなることを予想できていた人はおらず、経済情勢が変わったなら、政策もその変化に対応していかなければならない」と言明したが、これも安倍にとっては我が意を得たりの発言に違いない。


安倍は「景気が失速したら元も子もなくなる。日本を含めて世界の需要を作って行くことが重要だ」と応じている。毒づき枝野が増税再延期を「自らの経済運営の大失敗だと認めること」と批判しているが、民進党幹部は世界情勢の変化を度外視して、自ら想定すらしていなかったデフレからの脱却を安倍が成し遂げつつあることを、無視してはいけない。


誰も想定外の経済情勢なのであり、民主党政権でデフレ脱却、企業の史上最高の利益、事実上の完全雇用を実現出来たかということだ。野党は派遣と正社員の格差を突くが、派遣すら雇用できなかった自らのふがいなさを恥じるのが先決だろう。
 

こうして筆者が新年早々予言した政局展開、つまり増税再延期と衆参同日選挙に向けて安倍が着々と布石を打っている形が濃霧の中から浮き出るようになってきた。もちろん分析会合には慎重論も出ることが予想されるが、22日にはスティグリッツと同様にノーベル経済学賞受賞者で14年の消費増税延期決断に決定的な役割を演じたポール・クルーグマンが延期論を展開することになろう。


これで分析会合の流れは決まる。どこかの半可通記者が増税延期と同日選挙を「憶測」と書き立てているが、臆測とは「物事をいいかげんに推し量ること」であり、今の政治状況で使う用語ではない。教えてやれば少なくとも「観測」であろう。朝日も読売も産経も用語に注意する新聞は「観測」としている。


         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)