2015年11月17日

◆日本はIS絶好の“ソフトターゲット”

杉浦 正章



掃討は経済支援に徹して軍事支援は避けよ
 

善良なる大多数の中東諸国の旅行者には申し訳ないが、リュックを背負って新宿を歩いている姿を見かけると、自然と距離を置く自分を発見したりする。

パリでのすさまじい同時多発テロが、日本でも起こりうるかといえば、警備が緩やかなソフトターゲットが日本ほど散らばっている国はない。オウムのサリン事件の例を挙げるまでもなく、イスラム国(IS)がやろうと思えばできるのだが、おそらくその余裕はないだろう。ISが日本を狙うモチベーションがまだ現段階では低いからだ。

しかし来年の伊勢志摩サミット、2019年ラグビーのワールドカップ、2020年のオリンピックと重要行事がひしめいており、これをISまたはこれに代わるテロリストが狙う公算は否定できない。テロリストに隙を見せないことが重要だ。
 

ISは明らかにそのテロ戦略をソフトターゲット作戦に転換した。主として空爆でのダメージが大きく、手当たり次第にテロの対象とするしか自らの存在を誇示する方途がなくなってきたからだろう。イラク軍が指導者バグダディを空爆し、おそらく殺害したことに加えて、斬首人・ジハード・ジョンも空爆で殺害されるなど有志連合による空爆の効果が表れ始めた。ISは焦燥感があるとみられる。


しかしシリアの内戦が続く限り、これに乗じたISが勢力を維持することは間違いない。その内戦にとどめを刺すべくテロ翌日にウイーンで開催された「シリア問題多国間協議」がアサド政権と反体制派の戦いに区切りをつけ、「移行政権」を6か月以内に作る方針を目標として定めたことは一るの希望が生じたことを意味する。


米ソの代理戦争の様相が出ていた内戦が集結すれば、本腰を入れたIS の掃討が可能となるのだ。
 

だが空爆だけではISを根絶やしにすることは不可能である。所詮は空爆で衰えさせたISを地上軍によってとどめを刺すしかないと専門家の多くが見ている。シリア政府軍でそれが可能ならばよいが、少なくとも米仏は地上軍を支援の形で出さざるを得ないだろうとみられている。


現状であれば、日本の役割は経済的支援にとどまらせればよいが、地上軍投入となれば日本に対する何らかの役割を米国が求めてくる可能性がないとは言えない。しかしその場合でも日本は安易に応じてはなるまい。


なぜなら米国やシリアの旧宗主国であるフランスとは全く立場が異なるからだ。とりわけフランスは500万人ものイスラム教徒が定住しており、欧州で最も多数の若者がISに参加している特殊な国だ。加えて欧州諸国とイスラム社会は十字軍以来の文明の敵としての戦いを繰り返している。


そこへ、のこのこと自衛隊が出動して、たとえ後方兵站活動でも「参戦」すれば、間違いなくテロの標的国家としてのモチベーションは高まる。大きなテロがあれば日本はその対応に追われ、テロ対策への財政支援どころではなくなる。これは世界のテロ対策に取っても大きなマイナスとなる。戦わない戦い方を選択すべきであろう。サソリの穴に手を突っ込むのは避けるべきだ。


日本で起きうるテロをシュミレーションすれば、「弱い脇腹」は腐るほどある。サミット開催を狙ったテロは2005年7月、英国G8でのロンドン同時爆破事件がある。地下鉄の3か所がほぼ同時に爆破され、その約1時間後にバスが爆破され、56人が死亡している。


伊勢志摩サミット会場は最も攻めにくい地理上の好条件を備えているが、地下鉄や新幹線はサリン事件の例を見るまでもなくソフトターゲットになり得る。マドリードでは2004年に早朝の通勤列車を狙った「同時多発列車爆破テロ」が発生している。原発がターゲットになる可能性もある。航空機による自爆テロも考えられなくもないが、9.11のように事前の訓練なしに突然狙おうとしても無理だろう。
 

世界ラグビーやオリンピックまでISがその勢力を維持出来るかと言えば無理だろうと思う。いくら何でも世界総がかりでのIS戦はここ2、3年で終了にこぎ着けるだろうと思われる。ISのイメージの「十字軍」に、日本が入っていないのは歴史的にも地理的にも当然である。


したがってここはあえてISを強く刺激する手段を避け、米国などから要請があっても集団的自衛権の行使は控えるべきであろう。ISが国家に死活的な影響を与えるものとは思えないからでもある。その点政府・与党が安保法制実現後も「行け行けどんどん」でないことは、賢明である。
 

テロ対策として有効なのは市民の協力である。交番に指名手配中の犯人の写真が貼ってあるが、これと同様に市民による通報制度を作れば、日本のような単一民族の閉鎖的社会的構造では有効に作用するかも知れない。電車にも張ってあるが、警察も「テロの臭いは通報を」と言ったキャッチフレーズで国民に呼びかけるべきであろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年11月13日

◆公明が“躍進共産”に受け身でたじたじ

杉浦 正章



あおりを食らうのは民主党の構図
 

かつて自民党副総裁・川島正次郎が「70年代は自共対決の時代になる」と予測したが、2010年代後半も「自共対決」を軸に展開しそうな雲行きとなってきた。現在公明党が自民党の“代理戦争”の形でバトルを展開しているが、論戦といい地方選挙といい押され気味だ。


なぜかというと支持母体である創価学会に安保法制を推進した公明党を批判する層があり、その急所を共産党が突く戦術をとっているからだ。実に巧みな作戦であるが、おそらく公明党は態勢を立て直すだろう。


一方で、とばっちりを食うのは共産党に接近している「岡田民主党」だ。共産党に安保批判票を掘り起こされ、支持基盤を取られる危険性を内包している。政党支持率から見る限り一強自民に「第二強の共産」が目立ち、他党はかすんでいる。
 

共産党が巧みなのは一強自民を直接相手にせず、自民と安保で共闘した公明を狙い撃ちにしていることだ。その作戦は8月頃から始まった。共産は安保たけなわの国会審議をフル活用して、地方選挙で公明を責め立てた。


仙台市議選で書記局長・山下芳生が「公明党支持者の中に戦争法案に強い危機感を感じる人が多い。その気持ちをくんだ運動を発展させたい」と、まさに他人の懐に手を突っ込む作戦を展開した。すぐさま公明党代表の山口那津男は「各政党の支持団体などについて、他の政党がとやかく言って、運動に取り込む姿勢はいかがなものか」と反論したが、受け身であることは否めなかった。


その結果共産党は仙台市議選で3選挙区トップ当選を果たした上に、10月の宮城県議選では議席を8に倍増させて県議会第2党に躍り出た。事実上の公明大敗北の図である。


こうして公明党の共産党に対する怒りは頂点に達し、これが噴出したのが10月25日のNHKの日曜討論だ。筆者も見ていて既に書いたが、番組終了間際になって、公明党政調会長・石田祝稔が突然「ちょっと一言、私も」と声を荒げて発言、「50年も60年も自衛隊は違憲だとか、日米安保廃棄と言っていたのを、それを脇において選挙で一緒にやりましょうというのはおかしい」と共産党批判を展開。


これに対して共産党の政策委員長・小池晃は、「これだけ立憲主義と憲法を守らない政権を倒すためには、緊急課題で団結するのが政党の責任だ」とカエルの面に小便のごとく受け流した。


このやりとりについて「しんぶん赤旗」は「平和の党を看板にしながら自民党とともに戦争法を推進する自らの無責任さには思い至らない石田氏の滑稽さが浮き彫りになった場面」と勝ち誇ったような論評を加えた。


もともと公共両党は支持層が似通っており、古くから党員獲得競争や激しいビラ合戦を展開してきた。こうした中で1974年、共産党の支持者であり創価学会会長・池田大作と対談をしたこともある作家松本清張の斡旋もあり、関係正常化に向けて相互不干渉を定めた「創共協定」を結んだ。しかし対立は収束しなかった。


1980年には、創価学会の顧問弁護士・山崎正友を中心とした学会員が、共産党委員長・宮本顕治宅を盗聴した事件が発覚して両者の対立は決定的となり、協定の更新は行われなかった。


その宿命の対決が「平和の党」の看板争いのごとく急浮上して展開しているのが公共対決の現状だ。公明党はかつてない党基盤の危機にひんしており、参院選挙に向けて態勢を立て直さざるを得ない状況に直面している。


しかし、組織としての創価学会に弱体化の傾向は少なく、テコ入れをすれば参院選に向けて基盤強化は達成できるだろう。


自公対共産の対決で、あおりを食らっているのが民主党だ。地方選挙を見ても民主党が食われる傾向を示し、民主党は「安保法制反対」の受け皿になっていない。共産党がすべての安保批判票を平らげているのが実情だ。


代表・岡田克也が参院選挙に向けて共産投票に“舌なめずり”しており、昨日書いたように党内右派が治まらない。事実上党内抗争に発展しつつあり、読売の調査でわずか7%という支持率もあって、いまや「落ち目の三度笠」でどこへゆくかは風次第だ。


こうして自公対共産の対決が軸となって参院選も戦われることになるが、煽りを食らうのは民主党という構図になりそうな気配だ。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年11月12日

◆保守派の巻き返しで岡田路線が窮地に

杉浦 正章



民主党解党論が勢いを増す
 

ついに民主党内右派が本格的に動き始めた。時事通信によると前原誠司と細野豪志が維新の前代表・江田憲司と11日夜会談、民主党解党で合意に達した。解党の上で維新との合流を目指すというものであろう。

これは共産党との連携を進める代表・岡田克也との路線上の対立が抜き差しならぬところまで来たことを物語る。背景には安保法制の成立と共産党による「国民連合政府」構想が大きな影を投げかけている。党内は保守派による維新との合流と、左派リベラル勢力による共産党との接近に分断される色彩を濃くしており、左派路線に乗ってきた岡田は窮地に陥りつつある。
 

岡田が細野との代表選に左派の支援を受けて勝って以来、民主党は左派ペースで動いてきた。安保法案への対応でも共産党と歩調を合わせてデモを“扇動”するような傾向が強く、岡田の党運営に右派は不満を内蔵しながらも、なすに任せるしかない状況であった。


こうした動きを見て共産党委員長・志位和夫が打ち出したのは「国民連合政府」構想だ。志位の構想は(1)まず参院選に向けて選挙協力を民主党との間で推進、将来は自民党政権を倒す(2)その上で「国民連合政府」を結成、安保法制を廃止するーというものだ。


これに対する岡田の考えは、各選挙区で2万票に達する共産党票は欲しいが、一緒に政権を取るのは無理だというものだ。共産党には「連合政府は無理だが、選挙協力は推進したい」と回答している。これには、かつて2009年の総選挙で、民主党圧勝と読んだ共産党が選挙区への候補擁立を自主的に見合わせ、民主党政権への流れを後押ししたことから、その夢よもう一度という思惑がある。
 

こうした民共接近の動きに保守派は「政策なしの野合」と反発、まず若手が動いた。岸本周平ら中堅若手衆院議員7人は去る9月3日、自民党に対抗する勢力をつくるため、民主党を解党した上で、新党を設立するよう求める要望書を岡田に手渡した。


しかし看板にこだわる岡田は解党に否定的で、記者会見で若手の要望を「相当気が早い」と取り合わなかった。さらに「先の構想が提案されているわけではない。党名を変えればいいというものではない」と述べている。


こうした中で保守派幹部がようやく重い腰を上げ始めた。11月5日党幹部らによる「8者会議」で細野が、共産党との連携志向の岡田に対して「政策の差がありすぎる。一緒にやるわけにはいかない。共産党と組んだら民主党は政権を担当するつもりがあるのかと疑われる」と真っ向から反対する姿勢を示した。


その日の夜細野は前原や元防衛副大臣・長島昭久らと会合、選挙での票にこだわるあまりに共産党と手を組むべきではないという方針を確認し合った。保守派は安保法制についてもあくまで部分修正で行くべきだとの立場だ。共産党は党綱領の根幹を凍結させ、日米安保条約も自衛隊も容認する方針を打ち出したが、保守派は共産党のなりふり構わぬ姿勢を民主党分断工作と受け止め、これに秋波を寄せる岡田への不信感が頂点に達していた。11日の会合はついに堪忍袋の緒が切れた形であろう。
 

岡田の政権獲得のためには悪魔とでも手を組むと言う姿勢は、生活の党代表の小沢一郎にけしかけられた色彩が濃厚だ。小沢は最近共産党と極めて接近しており、共産党側もこれを利用している。その小沢と岡田はたびたび会談しており、岡田の動きには「小沢・共産党ライン」の影響が濃厚に反映している。


しかしいくら躍進しているからといって、日本に極左政権ができるかといえば疑問がある。09年の総選挙では、自民党政権のあまりの体たらくに自民党支持層が離反して、民主党政権が出来たという解釈が妥当である。だいいち共産党が民主党に付くとなれば、民主党独自の票が逃げる可能性が強い。「2万票もらっても3万票が逃げる」という保守派の主張は言い得て妙である。 


ここは共産党から目くらましを受けている岡田が、目を覚ますべき時だろう。「悪魔」と手を組んだ「ツケ」は大きいと見なければなるまい。


当面は地道に党勢拡大に努め、09年の時のようにいつになるか分からないが自民党が高転びに転ぶ時を待つしか民主党には生きる道はないのだ。保守層を味方につけられるかどうかが民主党が政権にカムバックする唯一の道なのだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年11月11日

◆「謝らぬ安倍」が日韓支持率を直撃

杉浦 正章



うなぎ登りの安倍に朴は低迷
 

ついつい自慢してしまうが、政治の予測が当たるかどうかが、もうじき後期高齢者になる年寄りの唯一の生きがいだから御寛容願いたい。


今度は世論調査予測が当たった。安保法制成立に際しての9月19日の記事で「安倍の支持率は一時的には下がるだろうが、新聞とはいえ私企業が行う世論調査などに一喜一憂する必要は無い。好きな外交に専念すれば、自ずと支持率は回復する。」と書いたがその通りとなった。


報道機関の調査では安保法成立の頃は支持不支持が逆転していたが、首相・安倍晋三の「好きな外交」が功を奏して読売、NHK、産経などで軒並み逆転が解消した。朝日だけがまだ逆転しているがこれは設問や聞き方に欠陥があるからだろう。
 

日本の世論の傾向でとりわけ注目すべきは、安保問題での議論の「一過性」であることだ。筆者は岸信介による60年安保による政権への不人気が、池田の所得倍増計画で吹き飛んで、半年後の総選挙で自民党が勝利を収めたことを指摘して、安倍の支持率の回復を予測した。


読売の調査によると、まず安全保障関連法の成立を「評価する」とした人は、成立直後の9月調査の31%から、10月は36%、今回は40%と2か月連続で上昇傾向を示している。要するに「アンポ」は国民に保革の対立軸をもたらすが、日本のような島国で平和な国にとっては「観念論」になりやすいのだ。


上昇傾向はとりわけ最後にその「観念論」の象徴である曲学阿世の学者に頼った野党の戦術も失敗に終わったことを物語るのだ。野党と学者らのやれ「戦争法案だ」やれ「徴兵制だ」という国民へのすり込みも、事が終わって冷静になれば安倍は戦争はしないし、徴兵制も実行に移さない。


自民党副総裁・高村正彦が「抑止力は伝家の宝刀だ。集団的自衛権が一部容認されたが、10年、20年と発動されることなく終わることを期待しているし、そうなると思う」と述べている通りである。安保改定でも安保法制でも目的は抑止力であることが賢明な国民にはやがて分かって来るのだ。


さらに見逃してはならないのは、日韓首脳会談への支持が日韓で大きな相違が出て、これが両国の内閣支持率の明暗を分けたことだ。会談を支持するかどうかは「支持する」が読売が76%、朝日が75%と圧倒的だ。


これに対して、韓国ギャラップの調査では「成果がなかった」とする韓国国民が46%で、「あった」の23%の倍となった。おまけに政権への支持率も安倍と朴で決定的な差が出た。安部内閣への支持は読売が5ポイントアップの51%、NHKが4ポイントアップの47%となった。


これに対して朴の支持率は支持・不支持が逆転して、支持がマイナス3ポイントの41%なのにたいして不支持がプラス5ポイントの49%となった。
 

この原因は何かといえば、簡単である。安倍が慰安婦問題で「謝らず」、朴が安倍を「謝らせられなかった」結果である。日本国民は朴政権になってからの韓国と言えば慰安婦問題での陳謝要求を繰り返す国という印象ばかりで、もう陳謝などはうんざりなのに対して、韓国民は愚かな団体に扇動されて首相が来れば謝るものという「癖」がついてしまったのだ。


安倍が朴政権の陳謝要求に対して徹頭徹尾応じない姿勢を維持したのは正解であり、日本国民はこれにやんやの喝采をしたのだ。国民は見るべきところをみているものなのだ。


一方韓国民は、当てが外れて矛先が朴に向かった。もともと朴は慰安婦をめぐる「反日強硬姿勢」だけが“売り”であり、その姿勢で韓国民に「すり込み」をしてきたことがあだとなって返ってきたのだ。「何だ。遠吠えだけか」という落胆が満ち満ちたのだ。
 

加えて朴の「狭量」さへの批判も生じた。安倍への昼食会すら拒否したことにたいして、本質的には「人の良い」韓国人が、やり過ぎではないかと反応したのだ。見送りに出た朴が「これからどうされます」と日程を聞いたのに対して安倍は「韓国料理を食べます」と嫌味ではなく答えたのだが、韓国民に「大統領は客に対する礼儀を欠いた」という反応をもたらしたのだ。


この世論調査の結果で気をつけなければいけないのは、朴が支持率挽回を目指して、また強硬姿勢に転ずる可能性がないかということだ。


11日から両国の外務省の局長協議がソウルで開かれる。日韓首脳会談で、いわゆる従軍慰安婦の問題について早期の妥結を目指し協議を加速させることで一致したことを受けたものだ。朴は10日、閣僚らに従軍慰安婦の問題について、「可能な限り早期に解決されることを望む」とのべた。


日本側は慰安婦問題について、「法的には解決済みだ」という立場を堅持したうえで、人道的な見地から元慰安婦に対する財政的な措置を検討する方針を固めつつあるようだが、朴の言う「年内妥結」への流れが生ずるかどうかは微妙だ。
 

とりわけ政局を一筋に読んできたプロとして驚がくするのは、自民党支持率の高さだ。読売では何と40%に達した。過去最高ではないかと思う。逆に民主党は7%と二ケタを割った。まるで国民は民主党政権3年3か月に対して、いまだに「遺恨試合」をしているかのようである。10日の予算委閉会中審査をつぶさに見たが、野党の追及のいいかげんさに記事を書く意欲も湧かなかった。


これでは臨時国会など開く必用は全くない。民主党は複数の問題が浮上する復興相・高木毅を追及したが、攻め手を欠くお粗末な質疑に終わった。高木の薄汚さはぬぐえないが、攻めるならもっと決定的な問題を独自調査でえぐり出さなければ駄目だ。新聞、週刊誌の切り抜きを掲げても、迫力はない。


自民党幹部が「返り血を浴びせる材料など腐るほどある」とすごんでいるとおり、野党も政権サイドに弱みを握られているのが実情だ。その他の問題でもテーマが拡散して、政権を追及しきれなかった。

<<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年11月10日

◆中台会談は総統選に「逆効果」が鮮明に

杉浦 正章


中国「札束外交」より「日本文化」の影響大
 

新聞の見出しが「一つの中国確認」といずれも踊ったが、中台首脳会談を冷静に見れば大きな変化はない。同床異夢の現状維持にプラスアルファが生じただけだ。むしろ会談自体が「歴史的」と評価される性格のものであった。


この構図から明らかになる会談の実像は、中国国家主席・習近平による、1月の台湾総統選挙への“干渉”であり、これが第一目標であったことはまぎれもない。


しかし会談後の世論調査の結果は、馬英九総統の国民党の支持率は下落、民進党の支持率を大きく上昇させている。逆効果の流れが早くも出始めているのだ。さらに言えば台湾における「中国経済」VS「日本文化」対峙の構図も浮かび上がる。
 

新聞の言う「一つの中国確認」の意味をひもとけば、「1992年合意」にたどり着く。同合意は双方の窓口機関が確認したものだが、その解釈は中国が「台湾は中華人民共和国の一部である」と受け止め、台湾国民党側は「どちらも中華民族の土地であり、台湾政府が中国を代表する」と解釈する。


要するに、「あいまい部分」を詰めずにおき、本質的には「現状維持での平和志向」を肯定したものであろう。その基本に立ったプラスアルファとは習近平の一路一帯構想にもとづくアジアインフラ投資銀行(AIIB)への台湾参加を習近平が事実上認め、経済面での緊密化路線を一層推進する流れを打ち出したことである。


中国にしてみれば台湾に対するどう喝や武力行使を前面に出さず、経済的に取り込み溶解させる、“アメーバ戦略”であろう。「切っても切れぬ関係」を作り、台湾をがんじがらめにした上で、吸収してしまう、深謀遠慮である。
 

しかし、“総統選挙干渉”への習近平の思惑は、早くも外れた。台湾の4大紙の一つである自由時報の調査によれば、国民党の支持率は会談前の20.7%から会談後は19%に下落。逆に「92年合意」など認めていない民進党支持率は41.7%から46.7%に上昇したのである。


これが意味するものは何かと言えば、札びらでほっぺたを叩いても、台湾には通用しないのだ。台湾は李登輝が総統となって90年半ばから民主主義路線を定着させたが、その結果民主化教育を受けた20代から30代の青年層に、共産党1党独裁の中国に対する反感が横溢した。昨年の3月にひまわり学生運動に賛同する学生と市民らが、立法院を占拠した動きはその象徴であり、一般市民の学生への共感度も高い。
 

学生運動の根幹は自由と民主主義であり、中国共産党の1党独裁路線とは相いれないものがある。日本では政治・経済面だけにとらわれて、とかく見逃されがちだが、最近の東南アジア諸国の民衆の親日感情はかつてない高まりを見せている。


中国の影響力が目立つミャンマーの総選挙での街頭インタビューで「日本のような国になりたい」という素朴な声を耳にして感動した人も多いだろう。


ベトナムは台湾と並んで好きな国第1位が日本だ。クレジットカードのVISAの最近の調査で、台湾人の一番人気の海外旅行先は「日本」。回答者の70.1%が「1年以内に是非、行きたい旅行先」だ。


日本側の台湾との窓口機関である公益財団法人交流協会が2008−12年度に実施した「台湾における対日世論調査」では4回連続で、日本が「最も好きな国・地域」の第1位となった。調査では、「日本が最も好きな国」とした人は43%、「日本に親しみを感じる」が65%、「感じない」は15%、日本に対するイメージで、何らかの「プラスイメージ」を選択した人はなんと98%にのぼった。
 

この潮流を分析すれば、政治・外交より圧倒的に文化面での影響が大きい。若者の多くが日本旅行を経験しており、その経験から日本人の親切さ、性格の良さ、街の清潔さ、景色の多様さ、民主主義の有り様、治安の良さなどを経験して帰るのだ。アニメを初め日本映画や音楽などの影響力も、戦後西部劇に熱中してアメリカ文化に憧憬の念を抱いた日本の若者と相似形をなしている。


そのあこがれの国の日本を旅行で体験して帰り、これが、中国との対比で総統選挙に大きな影響力となって作用する流れとなっているのだ。


一方で、台湾を旅行する中国人は、かつての醜いアメリカ人、それを一時は受け継いだ醜い日本人に成り代わるかのように爆買いはするが横柄で台湾人を見下す風潮が治まらない。反感は募る一方だ。
 

「強権的な中国は嫌い、優しい日本が好き」の構図だ。このように日本は「最強の無手勝流」で中国に対抗している現実があることを掌握すべきであろう。つまり日本文化が黙っていても、中国の札束外交に打ち勝っている例が、台湾なのである。


中国が経済的に取り込みを図るのに対して、日本は台湾人の精神や心の部分に影響を及ぼしているのだ。社会福祉団体「金車教育基金会」が高校・大学生を対象に実施したアンケート調査によると、「台湾に最も非友好的」な国について、87.9%が「中国」と回答。


反対に「台湾に最も友好的な国」では、56.1%が「日本」と答えた。この流れが1月の総統選挙に強い影響力を及ぼしており、どの調査を見ても親日・反共の民進党主席・蔡英文が国民党主席の朱立論を2倍上回る40%以上の支持率で独走しているのだ。


首相・安倍晋三が先月蔡英文と極秘裏に日本で会談して“先物買い”しているが、台湾の風潮を掌握した上での会談であり、先見の明があったと言えるだろう。


習近平と馬英九の会談は、中国側の思惑外れだ。大きな流れは独立色の濃い民進党が総統選挙で躍進し、国民党は予見しうる将来衰退の道をたどらざるを得ないのだろう。総統選は、ある意味で中国を選ぶか日本を選ぶかの側面が濃厚でもあるのだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年11月06日

◆習近平の「台湾総統選干渉」は失敗に終わる

杉浦 正章



何をするか分からない馬英九の危うさ
 
このところ外交攻勢で乗りに乗っている中国国家主席・習近平が、こんどは66年ぶりという中国・台湾トップ会談を選択した。紛れもなく来年1月の台湾総統選挙を意識した露骨な選挙干渉である。民進党が現政権与党である国民党を20ポイントもリードしている現状の「逆転」をはかろうとしているのだ。

しかしおそらくこの試みは失敗に終わるだろう。場合によっては民進党の躍進につなげてしまうかも知れない。首相・安倍晋三はその民進党主席の蔡英文と先月“秘密会談”を行ったが、習近平はまるでこれに触発されたかのように、7日に国民党主席・馬英九と会談する。安倍は“先物買い”だが、習近平はあえて「落ちる間際のリンゴ」を食べて何をしようというのか。焦っているのだろうか。


訪米、訪英、独仏首脳との会談と習近平の外交がその成否は別としてめざましい。これは明らかに共産党内部や国内紛争対策が一段落して、国家主席としての地位も当面は安定、外交に乗り出す余裕が出来たことを意味する。外交重視の安倍にとっても対外プロパガンダで“強敵”が登場したことになる。

しかし、1月の総統選挙に向け苦戦し、来年5月には総統の座を降りるレームダック・馬英九との会談で習が一体何を目指すかである。まず一つは一か八かの選挙干渉で国民党候補を逆転勝利に導きたいのであろう。


先の抗日戦勝利70年式典の軍事パレードについて筆者は、日米と台湾総統選挙へのけん制があると指摘したが、そのけん制の効果は全く生じていない。民進党はかえって有利になった形だ。このため、馬英九との会談で親中路線を取る国民党敗北ムードにとどめを刺そうと、大きな賭に出たのが今回の会談である。

しかし過去の例を見れば選挙干渉が成功した例は08年に馬英九が当選した時くらいであろう。選挙に先立って中国は反国家分裂法を作成した。同法は台湾に関して「独立の動きがあれば武力攻撃も辞さない」という内容であり、かなりの“脅迫効果”があったとうけ止められている。


しかしその他の選挙干渉はすべてが裏目だ。初の直接選挙となった1996年の総統選では台湾海峡にミサイルを撃ち込み露骨な干渉に出たが、李登輝の票はかえって押し上げられた。2000年の総統選挙では中国首相・朱鎔基が台湾に対する脅迫発言をして返って逆効果となり、民進党・陳水扁の票を増やした。


今回の場合はなぜマイナスかと言えば、中台サービス貿易協定をめぐる学生の動きに象徴される世論の潮流を見れば分かる。14年3月にひまわり学生運動に賛同する学生と市民らが、立法院を占拠した動きだ。中台統一を嫌うが、台湾独立を掲げるまでに到らない潮流が、総統選挙を支配する方向となっているのだ。また若者らの嫌中感情は高まる一方だ。


習近平はこうした“風潮”があるにもかかわらず、なぜ馬英九と会うかだが、66年ぶりの会談への「自信過剰」があるのではないか。その過信が選挙逆転を可能とみるに至らしめているのだ。例え負けた場合でも、会談したという実績は誰がなろうとあるのであり、蔡英文もそのうちに尻尾を振って会いたがるとの読みがあるのだろう。


また習近平は馬英九との会談で“仕掛け”をする可能性がないとは言えない。元総統・李登輝は「馬英九は何をしでかすか分からない」と述べている。一部観測筋には習近平が和平協定を台湾との間で締結し、それに伴い台湾が「一つの中国」を認めてしまえば、後は誰がなろうと後戻りできなくできるから、それを狙っているとの見方がある。何を企むか分からない習近平と何をしでかすか分からない馬英九の会談は、いくら注目しても仕切れない「危うさ」が伴っているのである。
 

一方中国は蔡英文が訪日する前から怒りまくっている。外交部の報道官は「蔡英文の訪日に断固反対する。日本が一つの中国の原則を順守し、台湾独立を唱えるいかなる人物にも台湾言論に関するいかなる空間をも提供しないことを要求する」と噛みついた。


蔡英文が山口県を訪問したことについても「なぜ山口県を訪問しなければならないのか。そこで屈辱的な下関条約を結んだことを忘れたのか。山口県は安倍首相の出身地であり、安倍首相との関連を象徴している」と憤っている。


ところが蔡英文と安倍が極秘裏に会ったと報道されると、またまた、非難を繰り返した。習近平にも報告が届いていることは間違いあるまい。これが習近平の馬英九との会談に踏み切らせた理由の一つになっていることはまず間違いあるまい。


台湾のメディアは安倍が10月8日の正午過ぎから東急ホテルの橘の間で安倍と会食したと具体的に報道しており、会談は間違いないだろう。日本側は中国への配慮があるから公表しないが、台湾側は会談をリークさせて一定の効果を出す戦術だ。


米国は南沙諸島では中国と鋭く対決して、「習・馬会談」には歓迎の意向を表明、まるで左右の股にくっつく二股膏薬を張っているかのようである。しかし歓迎の姿勢は表向きだろう。中東対策や南沙諸島対策に追われ、それ以外の地域にエネルギーを注ぐ余裕は正直言ってないという事情がある。

しかし台湾がなし崩しに中国の実効支配下にのみ込まれることも戦略上適切ではない。馬英九が最後に“危ない置き土産”をするのではないかということへの警戒感があるのが本当のところだろう。

アメリカ政府の台湾での代表機関「アメリカ在台湾協会」の元代表・ダグラス・パールは「総統選にプラスになる可能性は小さい。マイナスの方が大きい」と読んでいる。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年11月05日

◆韓国限定版「女性基金」再構築がよい

杉浦 正章



対決よりも慰安婦に寄り添って“妥結”せよ


ギリシャの諺に「始めよければ半ば成功」(Well begun is half done)があるが、日韓首脳会談が、日本にとって良かったか悪かったかといえばよかった部類に属する。会談すること自体に意義があるからだ。


首相・安倍晋三は韓国大統領・朴槿恵の意固地なまでに固い殻をこじ開け、“追い込む”ことに成功した。しかし「半ば成功」は達したものの、問題は「後の半分」だ。慰安婦問題の「解決」は1965年の日韓請求権協定により「解決済み」であるから、


「妥結」という“新語”を合い言葉にしたのだが、これはどっちでも同じだ。煎じ詰めれば、慰安婦問題の妥結は早い話がカネだろう。韓国側のごり押しで中途半端に終わった「アジア女性基金」事業を日韓双方が受け入れられる形で再構築するしか手はないように見える。
 

蝋人形がようやく笑ったようで気味が悪いが、朴槿恵も相当大変だったのだろう。就任以来筆者が名付けた「告げ口」外交を展開、国際世論に訴えたが、しょせんは素人外交であった。主要各国はこれに乗らず、日本が戦後培った「信用」に破れたのだ。これを朴槿恵が愕然とするほど悟ったのは今年2月である。


米国務省次官・ウェンディ・シャーマンの発言が潮目を変えたのだ。シャーマンは「愛国的な感情が政治的に利用されている。政治家たちにとって、かつての敵をあしざまに言うことで、国民の歓心を買うことは簡単だが、そうした挑発は機能停止を招くだけだ」と発言、朴を戒めたのだ。


頼みの米国から突き放され、今度は最大の貿易相手国の中国主席・習近平だけが頼りの綱となったが、習は、対米分断が出来るからウエルカムであったものの、肝心の経済がバブルの崩壊でがたがたになってしまって韓国どころではなくなった。おまけに安倍が韓国無視で習との関係を構築し始め、まさに韓国は、政治経済両面で孤立化の危機に瀕したのだ。
 

韓国経済もウォン安で輸出が不振、当初は朴の「反日」路線を支持してきた財界からも対日関係是正の声があがり、朴の路線を支持した浅薄なるマスコミも、手のひら返しをし始めた。こうして大統領官邸・青瓦台あたりから、孤立化回避のための軌道修正の動きが出始めたのが4月頃からだ。


名付けて「2トラック」作戦。慰安婦問題と、外交・安保・通商を切り離すことにしたのだ。この基調路線が「安倍・朴会談」へとつながったのだ。会談はまず少人数で「慰安婦」を主議題に1時間、その後出席者を拡大して45分行われた。
 

その結果慰安婦問題は「早期妥結を目指して交渉を加速」で一致した。事務レベル協議の妥結の時期について朴は「年内」を主張、安倍はこれに応ぜず、「早期妥結」で一致した。出来てしまえば、こんなごく当たり前の意思確認がなぜできなかったのかと言うことになるが、一にかかって狭量なナショナリズムにこだわってきた朴に責任がある。

朴が急ぐのは来年4月に総選挙が予定されており、これへの影響を最大限抑えたいのだろう。しかし安倍だって夏に参院選挙を控えており、立場は同じだ。
 

安倍は「解決済みという日本の立場は変わらない。その中でどのような知恵があるのか。お互いの国民が完全に納得できることは難しいが、交渉を続けてゆく中から一致点を見出すことも出来る」と謎のような言葉を発している。少人数会談だけあって会談の中身はいまだに出てこないが、過去を分析し将来を予測すれば、人間のやることだから滲み出てくるものだ。


過去の政権が知恵を絞って出したのが「アジア女性基金」だ。一方で存命の元慰安婦は47人。筆者のない知恵とある知恵を絞れば2007年に中途半端のまま解散した「アジア女性基金」の韓国限定版の再構築がよいのではないか。基金の残額8000万にプラスアルファして「償い金」とする。これには韓国政府や民間企業も資金参加してもよい。


とりわけ韓国政府が金額の如何を問わず参加すれば、日本の世論への緩和剤として作用することは確実だ。要するに事の本質をを国家観の対立の焦点とせず、あくまで不幸な境遇にあった元慰安婦への「心の痛み」(安倍)と「思いやり」に置くべきであろう。既に民主党政権時代であるが、当時の首相・野田佳彦が「日本政府の資金を使った支援金」での打開を試みており、行き着くところは同じだろう。
 

これに先立つか並行して韓国政府がなすべき課題がある。それはこれまですべての問題の元凶であった、慰安婦支援団体の「韓国挺身隊問題対策協議会」を強権を持って解散させることである。


そもそも朝日の大誤報によって、「女子挺身隊」を慰安婦と間違えて名付けられた団体であり、日韓両政府の慰安婦問題解決に向けた歩み寄りをことごとく妨害してきた。


一市民団体が、慰安婦問題解決の「拒否権」を握っているのは、韓国政府自体にとって両刃の剣となっていることを心すべきである。加えて、あの忌まわしい銅像の早期撤去を推進すべきだ。日本にとっては全く痛痒の感じない慰安婦像だが、韓国にとって民族的偏狭性を世界に誇示している事に思いが到るべきだ。


ベトナムが多数の韓国兵によるレイプ、殺人問題で像を造ったとは聞かない。日本兵の買春とは比べものにならない残虐行為であった。朴訪米に会わせて行われた受難女性たちの抗議活動は、韓国の恥を世界にさらしたものであり、国家間においても「因果応報」はあることを思い知るべきだ。

       <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)


2015年10月30日

◆沖縄の「民意」に移設推進論が顕在化

杉浦 正章
 


国と翁長の対決は勝負がついた
 

政府は名護市辺野古の沿岸部で、普天間移設計画の中核となる埋め立て工事に着手した。これに対し、沖縄県知事・翁長雄志は強く反発、国と沖縄県の対立が深まるなかで工事が続くことになった。


露骨に翁長を応援する朝日新聞は「翁長知事長期選の構え」と期待するが、政府と翁長の対立は勝負がついた形となった。翁長は今後打つ手がほとんどなく、国の第三者委員会に審査を申し出るが「沖縄側に立つ判断は100%ない」(政府筋)と言う状況だ。

最終的には裁判に持ち込まれるが、これも翁長には勝ち目がないうえに、裁判中に滑走路は完成する。翁長はしきりに「沖縄の民意」と壊れたレコードのように繰り返す。「民意無視」「県民すべてが反対する移設」と言った具合だが、もとより民意は分裂しているのであって一枚岩ではない。


もちろんエキセントリックに反米、反基地、反安保の報道を繰り返す、沖縄タイムス、琉球新報の現地二紙が「民意」でもさらさらない。翁長が両紙と結託するかのようにあたかも全県民の意思であるがごとく表明し続けるのは、自治体の長としてあってはならぬバランス感覚の欠如である。真の「民意」を分析すれば、別の流れが見えてくる。
 

まず翁長が中国にすり寄り、沖縄を日本から分断させようとしている姿が浮かび上がってくる。なぜなら翁長は中国公船による尖閣諸島での領海侵犯には金輪際言及せず、まるで容認しているように見えるからだ。


自分の県内の出来事であるにもかかわらずである。前防衛相・小野寺五典は中国にすり寄る元首相・鳩山由紀夫を“国賊”と見事に形容したが、翁長の場合“売国”の表現が適切だ。なぜなら先に報じたように4月の訪中で李克強と会談した興奮もさめやらぬかのように沖縄独立論と受け取れる発言をしているからだ。


那覇空港で何と「沖縄は自立の道を歩む重要な局面だ」と言い放ったのだ。中国で翁長は「沖縄はかつて琉球王国として、中国をはじめ、アジアとの交流の中で栄えてきた歴史がある。」と胸を張った。李克強が喜んだのは言うまでもない。翁長をたらしこめば、日米同盟に決定的なくさびが打ち込めると思ったのであろう。


翁長は中国と那覇の定期航空便の設立を提案したが、李克強はすぐさまこれに応じて福建省と那覇の定期便を就航させている。公安によると観光客に紛れてスパイめいた人物がしょっちゅう行き来しているという。その中国と「民意」は仲良くなれと言っているのだろうか。


県が昨年末に実施した県民意識調査によると、中国に対する印象は「良くない」が92%を占め、本土の調査をはるかに上回っている。尖閣問題が翁長の無視とは異なり、大きく作用しているのであろう。
 

この「大分断」の動きに比べれば、政府が名護市の久志(くし)、辺野古、豊原の「久辺(くべ)3区」と呼ばれる地区に、総額3千万円の振興費を市長・稲嶺進の頭越しに交付したのは、翁長や稲嶺や朝日が目くじら立てて、分断という程のものではない。むしろ快挙である。3区は翁長の言う「民意」とは真逆で、移設推進論や承認論が圧倒的だ。


なぜならろくに産業もない地域であり、工事では労働力が提供できるうえに、周辺の商店は活況を呈することが予想されるからだ。基地から受ける利益で潤っている沖縄自治体も多数あり、その「民意」は独自に存在するのである。職業的な反基地デモとは一線を画しているのだ。


それにしても、官房長官・菅義偉の交付判断は「正当なる民意」を助長させる意味で、極めて適切であった。ましてや翁長の「売国的分断」に比べれば、分断というより「政府と真の民意の接合」とも言うべきであろう。


朝日は「税金の使い方として公平性、公正性を欠く」と指摘するが、翁長が県庁に「辺野古新基地問題対策課」を新設、莫大(ばくだい)な税金を使って、反基地闘争推進の砦としているのは、県民のすべての意に沿った血税の使い道であると言えるのか。翁長が使えば血税はすべてが公平なのか。朝日の論説ももっと周りを見渡してものを書けと言いたい。


さらに「民意」を体した自治体の長の動きもある。5月には沖縄県内11市のうち那覇市と名護市を除く9市長が「保守系市長の会」を結成、移設推進に動いている。こうした動きにもかかわらず、翁長は「県民の総意が移設反対」などと言えるのか。翁長が尖閣と同様に全く言及しないのが「普天間基地の危険性」である。


世界で一番危険な基地の放置こそ、行政が最初に取り組まなければならない問題であるのにそっちのけだ。それとも隣接する小学校に米軍機が墜落して、児童の犠牲の上に反基地闘争が盛り上がるのを待っているのだろうか。沖縄の民意は「一刻も早い普天間移設」にあるのは間違いない。
 

総じてこうした翁長の言動の論理矛盾は、反安保、反米、反自民党政権の極左イデオロギーに立脚しており、それを露骨に表明せず、辺野古移設反対を主張するところから生じているのだ。たかだか知事選で有権者109万人のうち36万票、33%を獲得しただけで「民意」などとはおこがましいのだ。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年10月29日

◆日中韓首脳会談の地歩は安倍が確保

杉浦 正章



経済重視だが焦点は政治の駆け引き
 

韓国大統領・朴槿恵は日中韓3か国首脳会談を1日に開催して、国民向けに“指導力”をアピールして落ち目の支持率の回復を図る。


その一方で慰安婦で成果を得られない首相・安倍晋三との会談は翌日に回して、昼食もせずにそそくさと済ませる方針だという。女の淺知恵とはよく言ったもので、この日程を見る限り全く大局観のない大統領であることが分かる。


読売は「冷たい首脳会談になる」との見方を紹介したが、言い得て妙である。安倍はもとより慰安婦問題などでの謝罪要求に応じる必要などはない。日本国民は「慰安婦にうんざり」が世論調査で80%に達し、米政府も「うんざり一色」だ。慰安婦偏執大統領のペースにはまることもない。


3年半ぶりの3国首脳会談は、(1)米イージス艦の南沙進入初戦での中国の敗北(2)中韓抜きでのTPP(環太平洋経済連携協定)妥結(3)中韓経済の失速と対照的に好調なアベノミクスーなどで安倍は中韓に対して外交・経済で有利な地歩を確保している。会談をリードするのは安倍だろう。
 

11月は日中韓首脳会談に続いて15,16日はG20、18,19日はAPEC首脳会議、21,22日はASEAN首脳会議と重要外交日程がひしめく。安倍は米国とともにこれらの会談をリード出来る立場にあり、中国とこれに追随する韓国は、どちらかと言えば孤立化させられる潮流がある。その手始めが日中韓首脳会談となる位置づけだろう。


3国首脳会談は官房長官・菅義偉が強調するように経済問題が主議題となるだろう。緊迫する極東情勢を、大きく緊張緩和へと導くには経済、環境、医療、文化などで協力関係の突破口を築くのが最良の道だ。とりわけ中国首相・李克強は経済通であり、安倍とは話が合うだろう。


折から中国はバブルの紛れもない崩潰で経済が失速、日米主導によるTPPの成立で、戦略的にも経済的にも封じ込められたという焦燥感がある。その裏返しが、習近平のボーイング300機購入、英国に7兆円の巨額契約など、臆面もない札束外交であろう。成金のように札束を見せて中国経済の躍進ぶりを誇示するのだが、「払えるのか」とボーイング株は下落、英国世論も「金で節操を売った」と政府に批判的だ。
 

こうした中で中国は本音ベースではTPPに加盟したいのだろう。安倍はリップサービスでもいいから、「中国もTPPに入ったら」と言えばよい。だが、実現はなかなか容易ではない。


日米は対中戦略として交渉を妥結へと導いた側面があり、とりわけ米国はハードルを上げるだろう。米国は中国が入りたいのなら自由主義経済のルールを守れというだろうし、TPP自体がそのルールの上になり立っているのであって、株価を操作し、国費を使って特定企業の輸出を支援するような国ではそもそもの加盟条件が満たされない。


安倍は朴槿恵も「TPPに入りなさいよ」と対中経済一辺倒の朴をけしかけることも出来る。安倍は日本がバブルから脱した経験を李克強に語ることが出来るし、環境対策で青い空と、鮎の住む河川を回復したノウハウを伝えることも出来る。
 

こうしてまず極東緊張緩和への突破口としての日中韓首脳会談だが、どうしても政治が大きな陰を落とすことは避けられまい。とりわけ米艦の南沙進入問題の初戦は、習近平の面目を丸つぶれにした上に、追尾するだけで手も足も出ない中国の完敗に終わった。


この事実は、尖閣諸島への“ちょっかい”が最近鎮まってきたことと合わせれば、なりふり構わぬ中国の膨張主義がいよいよ限界に到達した事を意味するだろう。首相補佐官・柴山昌彦はテレビで安倍が南沙問題で発言する方向にあることを明らかにした。これによると安倍は「力による現状変更は国際社会共通の懸念事項である」と中国の自制を求めるという。


朴はどっちつかずの「コウモリ路線」だが、オバマから首脳会談後の記者会見ではっきりと物を言うようにたしなめられており、右往左往するしかあるまい。
 

問題は慰安婦問題での「中韓共闘」にどう対処するかだが、李克強は朴ほど歴史認識にこだわることはなく、朴につきあう程度だろうとみられる。その落差を突くのがうまいやり方ではないか。例えば中国の歴史認識問題には言及しても、朴の慰安婦言及は無視するといった具合だ。


朴は朴でこれまで慰安婦問題を日韓首脳会談の前提としてきたにもかかわらず、オバマにきつく言われて渋々会談するだけに、一言言わないで済ませる気持ちはないだろう。安倍は基本的には「解決済み」の門前払いを食らわせばいい。せいぜい譲歩してもこれまでの言っているお詫びに言及した「河野談話の継承」くらいだろう。


韓国政府は「昼食会も行わない」と世論向けに強い姿勢を見せているが、この国はいつも民族的な偏狭さを感じさせる。もっともちまちました韓国料理など食わしてもらう必要も無い。日本で会談を行うときは、度量を見せてやればよい。

朴は外向きは「会ってやる」の姿勢だが、安倍にしてみれば、朴が慰安婦を前提にしない会談に追い込んだことになり、持久戦に勝った意味がある。朴は台所で手ぬぐいくわえて「悔しい−!」と金切り声を上げても遅いのだ。こうして構図の上では2対1の会談だが、環境は安倍が有利な地歩を占めることになった。 

     <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2015年10月28日

◆米南沙強硬策テコに中国包囲網強化を

杉浦 正章


「管理された緊張状態」の長期化に備えよ


 産経のようにはやばやと「日米で共同パトロール」だとか、安保法制適用だとか馬鹿丸出しの軍艦マーチを鳴らしてはいけない。米艦による中国の人工島の12カイリ内航行が意味するものは、まだまだけん制の段階であり米中両国とも「管理された緊張状態」を続ける魂胆とみなければなるまい。


そしてこの状態は長期に継続する。おそらく事前にすべての情報を得ていたであろう首相・安倍晋三は、支持を表明したものの日本の軍事的対応には踏み込んでいない。官房長官・菅義偉も共同パトロールなどを否定している。政府が当面取るべき対応は米国の強硬策を奇貨として、外交的な対中包囲網強化に動くべきだ。


11月にはG20の首脳会議やアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が立て続けにある。これを好機ととらえ、14年5月に安倍がアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)で「日本は,ASEAN各国の,海や,空の安全を保ち,航行の自由,飛行の自由をよく保全しようとする努力に対し,支援を惜しまない」と発言、万雷の拍手で歓迎されたように、外交的に中国の孤立化に追い込むべきだ。
 

22日の原稿「米艦船の中国人口島沖派遣が秒読み段階に」で書いたように、20日の米国家安全保障会議(NSC)のアジア上級部長・クリテンブリンクと首相補佐官・河井克行の会談で米側は詳細に「航行の自由作戦」の内容を伝えてきたに違いない。


安倍や菅の談話を見ても、事前に周到な準備があったことが明白だ。安倍は作戦を「国際法にのっとった行動であると理解している。南シナ海における大規模な埋め立てと拠点構築は現状を変更して緊張を高める一方的な行動であり国際社会共通の懸念である。我が国は開かれた平和な海を守る為に同盟国である米国を始め国際社会と連携してゆく」と支持を表明した。
 

米国がこの時期を選んだのは時期的に中国包囲網を結成する絶好のチャンスであるからだ。また政権揺さぶりのチャンスでもある。おそらく米国はそれも狙ったのであろう。


折から中国は共産党の重要会議第18期中央委員会第5回総会(5中総会)が開かれている。26日から29日までの会議は、外部には漏れにくいがこれまでも共産党の改革派と保守派が真っ向から論争を展開しており、国家主席・習近平の面目丸つぶれの米国による「領海侵犯」が論争の対象になる可能性が高い。


反習近平派にとってはもってこいの揺さぶり材料になる。「ボーイングの旅客機300機購入する返礼がこれか」といううことになるのだ。
 

オバマは明らかに、米中首脳会談が南沙問題をめぐって決裂した結果を受けて、作戦を決断したに違いない。会談後の記者会見では「米軍は国際法が許す場所であればどこでも行く」と海軍による南沙諸島航行を明言。


これに対して習近平は「南シナ海の島々は古来中国の領土」と譲らなかった。習の対応を見て迷えるオバマは、ようやく国防総省が主張してきたとおり作戦を実行せざるを得ないと思ったのだろう。任期切れまで1年あまりとなったオバマにしてみれば、いったん強攻策に踏み込んだ以上任期中は後には引かないし、引くに引けないことを意識したに違いあるまい。


明らかに中国側には誤算があった。オバマはまさか軍事行動には出ないだろうと思っていたのである。中国側の当面の対応も抑制的であり、イージス艦の通過を追尾しながらも黙認するという“屈辱的”な対応しか出来なかった。


人民日報系の環球時報は、15日の社説では「中国は海空軍の準備を整え、米軍の挑発の程度に応じて必ず報復する」「中国の核心的利益である地域に米軍が入った場合は、人民解放軍が必ず出撃する」と勇ましかったが、結果は“遠吠え”であったことが分かる。
 

習近平も就任当初は、とかく“独走”しがちな軍部に抑制的に動くことが出来なかったが、最近では力を付けて、コントロールが利くようになってきたと思う。習近平にとってみれば米国と一戦を交えれば完敗するのであり、完敗すれば自らの地位が危うくなる。終いには共産党政権自体が揺さぶられることにもなりかねない。
これはどうしても避けたいのである。


一方、オバマの唱えるリバランス(アジア回帰の再均衡)は、中国の南沙進出で口で唱えるだけでなく、実際の行動を求められる段階へと移行した。しかし、米国にとっても大きな貿易相手国である中国との経済関係を毀損(きそん)することは避けなければならない。米国の抱えるジレンマは、自ずと軍事行動に抑制的に働くのである。
 

こうして両国とも、直接的な武力衝突には慎重なのである。しかし、いったん踏み込んだ以上、米国は南シナ海における軍事的プレゼンスを後退させるわけには行くまい。したがって南シナ海は中東や、ウクライナ同様に一触即発の状態が継続するだろう。


イージス艦1隻程度の侵入で済ましているうちはよいが、長期的かつ全面的な対峙に発展すれば、当然米国は日本やオーストラリアなど同盟国との連携に動く。日本としても南シナ海はシーレーンの急所であり、死活的に重要なポイントである。


“長期戦”で息切れした米国が日本に協力を求めることはあり得ることだ。日本もかつてインド洋で給油活動をしたように、将来的には何らかの後方支援と連携が必要となるに違いない。


さらに安倍が表明しているようにフィリピンやベトナムへの巡視船の提供など、関係国支援も急がなければなるまい。米軍との共同パトロールはまず隣接国のベトナム、フィリピンに委ね、そのための船舶を提供すれば十分だ。日本は東シナ海のパトロールも重要であり、南シナ海まで常時カバーする余裕はあるまい。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2015年10月27日

◆小沢が打倒安倍で悪魔の盟約に暗躍

杉浦 正章



共産党票を狙って最後の仕掛け
 

生活の党となんとかの共同代表・小沢一郎の“生き強さ”にはほとほとあきれる。非自民・非共産で細川護煕政権を造ったのは記憶に新しいが、今度はその「非共産」であるはずの共産党までたらしこんで、非自民・非公明の「国民連合政府」の構想を打ち出させ、暗躍している。


この結果民主党は左右の対立が激化する様相を示し、右派の元外相・松本剛明が27日離党する。民主党代表・岡田克也は小沢に追い込まれた形だ。その策略の基本はすべてが選挙優先の数合わせだ。さすがの細川も「自民党を引きずり下ろすためには悪魔とでも手を結ぶ」と述べたものの共産党だけは敬遠した。


ところが、小沢はなりふり構わず最後に残った「悪魔」である共産党と手を結ぼうとしている。小沢最後の仕掛けが「打倒安倍政権」での「悪魔の盟約」である。


その手始めがさきの岩手県知事選だ。8月20日告示されたものの、現職の達増拓也以外に立候補の届け出がなく、無投票で3選を決め、一強自民党を屈辱の「不戦敗」に追い込んだ。これには6月17日の小沢と共産党委員長・志位和夫の選挙協力での合意がプラスに作用している。


以後小沢と志位の会談は6〜7回行われている。共産党は宮城県議選でも躍進しており、党勢拡大の流れが止まらない。小沢が目を付けたのはこの集票能力だ。小沢は安保法制の反対デモでも志位にすり寄って手をつないでバンザイをしているが、利用できるものはなりふり構わず利用する精神構造にある。そこには恥も外聞もなく「力」の根源を味方につけようとする「政治屋」の面目躍如が感じられる。


共産党はもともと小沢は不倶戴天の敵であった。例えば「しんぶん赤旗」は保守の堕落の象徴として小沢を攻撃してきた。


2010年4月28日の赤旗社説は、検察審査会の「小沢氏起訴相当」との議決に「政治的道義的責任は、もはや逃れることはできません」と批判している。


ところが最近は、安保法制反対の国会前のデモで小沢が演説すると、「大きな拍手が起きた」と報ずるという変わり方だ。この変容ぶりの背景は、どこにあるかだが、間違いなく志位が選挙での躍進に有頂天となっている姿が浮かぶ。


共産党も「小沢小悪魔」の誘惑に応じて、「政局」への参画を目指し始めたのだ。もっとも共産党にしてみれば真面目な党員は志位の小沢大接近に不満を内在させているといわれ、党内で何が起きるか分からない問題を抱えている。
 

小沢が狙うのは言うまでもなく共産党の集票能力だ。2012年の衆院選は小選挙区470万票、比例区370万票であったものが、2014年には小選挙区700万票、比例区600万票と大幅に拡大しているのだ。1選挙区当たり平均2万4000票の集票能力は、創価学会の集票能力に迫るものまで成長したのである。


小沢にしてみればこの票がかつて自分が目もくれなかった革命政党の票であろうが何であろうが、数さえあればよいのである。これは、ケ小平の現実主義政治信条「白猫黒猫論」とそっくりである。「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕る猫が良い猫である」というわけだ。
 

共産党の集票力を分析すると、来年夏の参院選に選挙協力が実現すれば、新たに1人区となる選挙区を含め、七つの1人区で野党候補が自民を逆転することが分かった。この共産党の「毒まんじゅう」が民主党代表・岡田克也にとっては垂ぜんの的であることはいうまでもない。


しかし焦点の安保法について岡田は「部分修正」であるのに対し、共産党は「安保関連法廃止」の一点で暫定連立政権の樹立を目指しており、大きな食い違いがある。ここに岡田のジレンマが発生する。節操もなく「共産党票」に尻尾を振るか、民主党の政治路線を堅持するかである。まさに岡田と志位は同床異夢の関係にあるのだ。


折から安保法制ではなりを潜めてきた右派が、強く反発し始めた。元防衛副大臣・長島昭久はブログで、岡田・志位の大接近を「いつからこんな民主党に成り下がった」と批判した。松本の離党の最大の理由も岡田の共産党への接近にあるといわれる。
 

冒頭述べたように小沢の投げた球は民主党を共産党に結びつける意図に加えて、民主党内への揺さぶりも狙ったものである。


こうした動きに対して政府・与党は公明党がいきり立っている。票田が重なるうえに共産主義は基本的には宗教を否定しており、創価学会とは相いれない。政調会長・石田祝稔は25日のNHKで「50年も60年も自衛隊は違憲だとか安保廃棄だと言ってきたのにそれを脇に置いて選挙で一緒にやろうとするのはおかしい」と噛みついた。


これに対して書記局長・山下芳生は「公明党は平和の党の看板を戦争の党と書き直せ」とあおることしきりだ。官房長官・菅義偉が「選挙目当て」と“野合批判”すれば、志位が「これを『選挙目当て』としか批判できないの?政府の知的貧困は深刻です」と反論すると言った具合でボルテージは上がる一方だ。


もっともかつて1970年代に共産党が躍進し、自民党副総裁・川島正次郎が「70年代は自共対決の時代になる」と予言したことが、かえって共産党の存在を際立たせる効果を生じたことがある。


政府・与党の対決姿勢はほどほどにした方がよい。黙っていて来年の参院選で野党共闘が進みそうなら、安倍にはダブル選挙で共闘をくしゃくしゃにして連合政府構想をぶち壊してしまう手がある。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年10月23日

◆政府・与党は臨時国会より党首討論を

杉浦 正章

 

野党は「世界の安保ツアー」で常識を磨け
 

こともあろうに産経までが社説で臨時国会問題について「『召集の必要性は感じない』と口にする政権の鈍感さにはあきれる。」と浅薄な論調を展開しているが、政府・与党は野党の自己顕示のための臨時国会など招集する必要は無い。


秋に長期の臨時国会を召集したら、政府・与党は一年中国会にかかりっきりになり、内政・外交上の重要課題処理に支障を来す。なぜなら通常国会を戦後最大の95日間も延長し、これが事実上臨時国会の代わりになっているからだ。


3か月の臨時国会といえば、最長の部類に属する。政府は閉会中だからと言って休暇に入るわけではない。野党も遊んでいないで安保法制で示した狭い了見を改めるため外遊して、国際常識を身につけるべきであろう。ただ与党が検討している予算委の閉会中審査に加えて、多忙な政務の時間を割いて首相・安倍晋三が党首討論に応じてはどうか。
 

いくらひまだからと言って真面目に勉強している真面目な生徒を、野党は脇からいじめて勉強の邪魔をするいたずら小僧であってはなるまい。真面目な生徒は外遊日程や予算日程などが立て込んでいる。


首相・安倍晋三は現在訪問中のモンゴルに加えて月内はほぼ中央アジアにいる。11月は1日に日中韓首脳会談であり、15日から21日まではG20の首脳会議やAPECの首脳会議が立て込んでいる。12月に入れば待ったなしの予算編成だ。


民主党は昨年秋に、松島みどりや小渕優子の不祥事を鬼の首を取ったかのように取り上げて追及、辞任に追い込んだが、結局両議員とも不起訴に終わっている。大臣の首を取ることが仕事であっては、民主党はじめ野党の支持率が全く上がらず低迷するのも無理もないではないか。


今回も3閣僚の不祥事追及を最大の眼目として臨時国会召集を主張するが、その内容はゴミネタもいいところだ。週刊誌如きの報道でいちいち大臣更迭に持ち込んでも、絶対に支持率が上がることはないのだ。単に国政の邪魔をしているだけということになる。


そもそも民主党政権の体たらくを考えてみるがよい。2011年9月に招集した臨時国会は、たったの4日間。解散国会を除けば講和条約会議に出席する吉田茂が、報告のため3日間招集したのに次ぐ短さだ。


それも短い理由は首相・野田佳彦の外国人献金疑惑が浮かんだからに他ならない。その後野党の要求に応じて延長しているが、自分のしたことを棚に上げて、伴食閣僚のゴミみたいな話を取り上げて、安倍の緊迫する国際情勢への取り組みを邪魔していいのか。


だいいち先に通常国会を延長議したから気にくわないと国会を止めたのは野党ではないか。言っていることと、することが違いすぎるのだ。
 

政府・与党も朝日が唱え、野党がおうむ返しで追随するように「安保隠し」や「3閣僚隠し」などというケチなことで、国会開催を拒否しているわけではあるまい。安保は紛れもなく圧勝して、国民の内閣支持率は上昇している。もう済んだ話である。3閣僚も国外に逃亡をはかるわけではない。


質問するなら週刊誌如きの報道を根拠に行わず、自らの調査にもとずいて通常国会で質問しても遅くはないのだ。首を取れれば参院選が近いから有利になることが分からんとは、野党でなくてキツネ憑き「野狐(やこ)」や野狸(のだぬき)の類いかと思いたくなる。
 

政府・与党は臨時国会を召集すれば、吉田や民主がしたようにごくごく短期のものをやれないわけではない。しかし名目と形式だけの臨時国会を招集して何になるのか。それよりも暇を見て実質的な審議に応ずれば十分だ。


既に決めている11月10日と11日の両院の予算委員会集中審議に加えて、TPP(環太平洋経済連携協定)関係で農林水産委員会と経済産業委員会の合同審査をやれば、実質的に論点を浮かび上がらすことが出来るではないか。これに加えて筆者は党首討論をやればよいと思う。


通常党首討論は国会開会中に行われるが、国会が解散されれば選挙中でも行われる。形式は国会でやろうが、マスコミ主催でやろうがどちらでもいい。時間も45分などと短いものではなく、野党もすべて参加できるものにすればよい。2〜3時間じっくり討論して問題点を浮き彫りにしてはどうか。政権が多忙なことを理解して野党もごり押しばかりせず、自ら勉強する期間とすべきではないか。


安保法制で見せた偏狭な世界観を改めるため「世界の常識ツワー」でも企画して外遊してはいかがかな。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年10月22日

◆米艦船の中国人口島沖派遣が秒読みに

杉浦 正章



南シナ海「一触即発」の状況
 

中国が埋め立てを進めている南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島への米艦船を派遣する「航行の自由作戦」が、秒読み段階に入った。中国の主張する「領海」12カイリ以内に米国は艦船と航空機を送り込み、軍事行動で「航行の自由」を確保する動きに出る。


米国の方針内定は今年6月だが、この間オーストラリア、フィリピン、ベトナムなど周辺諸国は一致して米国支持に固まった。中国側がどう出るかが注目される。米中とも軍事的衝突は避けるものとみられるが、62年のキューバ危機で米ソが対決して以来の海洋における大国対決の構図が鮮明となることは間違いない。
 

なぜ米国が突然独自の軍事行動を起こさず、リークにリークを重ねて来たかと言えば、周辺国への配慮と軍事行動の国際的基盤固めがある。今回の軍事行動について米国は、戦略的な位置づけを第1に考え、それには周辺国の同調が不可欠と判断したのだ。


リークの中でもとりわけ注目されたのは「2週間以内に踏み切る可能性がある」と報じた8日の英紙フィナンシャル・タイムズだ。米高官のリークによるものだが、2週間を経た現在いみじくも中国国家主席・習近平が訪英で大歓迎を受けている。


英紙へのリークは同盟国英国の中国資金欲しさの大接近をけん制したものでもあったことが分かる。これによって周辺諸国の動きが一段と早まった。


米国の事前リーク作戦は、関係諸国の態勢固めへの布石でもあった。リークと直接的情報提供工作により米国は「航行の自由作戦」への布石を着々と打った。


まず豪州とは米ボストンで、12、13両日、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開催。4閣僚は共同声明を発表し、南シナ海・南沙諸島で岩礁埋め立てや建設工事などを進める中国に対し「強い懸念」を表明した。


一方直接埋め立ての影響を受けているフィリピン、ベトナムへの工作も欠かさず進めた。この結果、ベトナムのファム・ビン・ミン副首相兼外相とフィリピンのデルロサリオ外相は21日にハノイで会談、南シナ海における航行の自由の保障が重要と確認するとともに、両国関係を「戦略的パートナー」へ格上げすることで合意した。
 

韓国に対してもオバマが16日の朴槿恵との会談後の記者会見で「中国が国際法や規範に従わない場合、韓国が反対の立場を示すよう期待する」と中韓接近を厳しくけん制。これを反映してか 韓国外務省報道官は20日「航行・上空飛行の自由を保障し、紛争につながりかねない行為を自制する必要がある」と、初めて対中批判と受け取れる発言をした。


日本に対しては動きが目立っていないが、ここに来て米国家安全保障会議(NSC)のアジア上級部長・クリテンブリンクが20日 、首相補佐官・河井克行とワシントンで会談、米国の作戦について伝えた。内容は発表されていないが、ことは秒読み段階であり、詳細にわたる作戦規模と期日などを伝達したことは間違いあるまい。


同盟国や周辺国への事前根回しで、米国は南シナ海で期せずして対中包囲網の結成に成功したことになる。これを背景に軍事的行動に出る態勢が固まった。


読売によると米軍の作戦は人工島の12カイリ内で、〈1〉艦船による航行〈2〉艦船による調査・訓練〈3〉潜水艦による潜行航行〈4〉軍用機による上空通過―などが検討されているようだ。


問題はこれに対して中国がどう出るかだが、艦船による追尾、進路妨害、強制排除などが考えられるという。しかし中国側でいきり立っているのは人民日報系の「環球時報」のみで、15日の社説では「中国は海空軍の準備を整え、米軍の挑発の程度に応じて必ず報復する」「中国の核心的利益である地域に米軍が入った場合は、人民解放軍が必ず出撃する」と勇ましい。


確かに軍部が独走すればそうなる可能性はあるが、果たして習近平が“踏み切るか”と言えば、話は別だろう。共産党中央軍事委員会副主席・范長竜は北京での安全保障フォーラムで17日「軽々に武力に訴えることは決してしない」と沈静化に努めている。
 

武力衝突は避けるものとみられるが、最低限追尾くらいはするだろう。双方とも自制を働かせるとみられるが、米国防総省はぎりぎりの範囲で示威行動を展開し、「中国の敗北」を際だたせるものとみられる。


したがって南シナ海が一触即発的な状況になることは避けられまい。これを機に中国がスプラトリー環礁の軍事要塞化を断念することはまずないものとみられるが、一方で米軍の示威行動も常態化する可能性がある。まさに米中冷戦時代を象徴することになる。当然米国は、日本の海上自衛隊の参加を要請してくる可能性がある。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)