2017年04月27日

◆安倍は政権の緩みを引き締めよ

杉浦 正章



ダメージコントロールは水際立った  
 

野党は集中審議を北朝鮮情勢でせよ


「東北でよかった」という投稿がツイッターで受けている。青森ねぶた祭や仙台の七夕の写真が添付され、美しい東北の桜や紅葉も満載だ。すがすがしいツイッターにエールを送りたい。それにつけても辞任した復興相今村雅弘の異常さはどこから来ているのだろうか。


筆者は新入社員の面接の際は東大法学部というと身構えたものだ。どうも経験値からいうとマスコミの場合は外れが多い。もちろん東大法学部卒は政治家でも岸信介、佐藤栄作など超大物がいて、極めてバランスがとれた政治を行ったが、当たり外れが多いのだ。今村は見事に外れた例だろう。どうも勉強しすぎの人間には人間性の幅がない。のりしろがなくて遊び、ゆとりが感じられない。それが発言に出でてしまうのだ。そういう政治家は、閣僚どころか政治家にも不向きだ。
 

今村の発言危うさはその性格から見ても、いつかかは危険水域に到達するものであった。被災者が故郷に帰れないことを「本人の責任」と言ったころからこれはおかしいぞと感じていたが、ついに東日本大震災について「まだ東北で、あっちの方だったからよかった」と発言してしまった。ひとえに、こういう人物を任命してしまった首相・安倍晋三に責任があるし、本人もこれを認めている。政権の緩みを引き締め態勢を立て直す必要がある。


しかし、安倍のダメージコントロールは水際立っていた。25日夜の二階派のパーティーでの発言を安倍が聞いたのは経済財政諮問会議終了後だ。発言を知ると、官房長官・菅義偉と協議の上、直ちに会場に駆けつけて「今村大臣の講演で東北の方々を傷つける極めて不適切な発言があったのでおわびする」と陳謝した。そして事実上の更迭に踏み切った。これだけスピード感のある対応は、半世紀の政治ウオッチで初めて見た。即断即決の危機管理が動いている証拠である。
 

ところが、自分の派閥で党に迷惑をかけながら幹事長・二階俊博 の対応は月とすっぽんであった。なんと記者会見で今村の発言をめぐる一連の報道について、「政治家が何か話をしたら、マスコミが、余すところなく記録を取って、1行悪いところがあれば、『これはけしからん、すぐ首をとれ』となるが、なんということか。言葉の誤解はないほうがいいに決まっているが、いちいち首をとるまで張り切らなくてもいいのではないか」とマスコミ批判に転じてしまったのだ。


ばかも休み休み言えといいたい。「マスコミが、余すところなく記録を取って」記事にするから、今の安倍政権があることを分かっていないのだ。マスコミが総じて民主党政権の有り様を否定したから、自民党に政権が戻ったのだ。二階にはどうも政治の見方に対する厳しさが足りない。マスコミは何でも政府・与党を支持するべきだという甘さがある。国会議員の活動の基本は言論であって、問題はすべて言論によって決定されるのが国会の有りようなのだ。言論の府の政治家はその発言が全てであり、その表現力には自らの政治生命がかかっていると思うべきなのだ。
 

安倍は土日返上で被災地を訪れ、被災者に寄り添ってきた。それにもかかわらず、こうした浅薄なる党内の発言が、まるでコツコツと積み上げたさいの河原の石を突き崩すことになることを自民党幹部は肝に銘ずるべきだ。一方、民進、共産など野党が鬼の首でも取ったように欣喜雀躍しているが、民主党政権のていたらくを思い出さざるを得ない。


安倍政権は5年間で5人が辞めているが、民主党政権は3年間でなんと8人が辞任している。これに鳩山由紀夫と菅直人の辞任を加えれば10人が辞めている。鳩山はワシントンポスト紙に、「気が狂う」とか「頭が変な」という意味の「ルーピー」と名付けられたように、失言を繰り返し、首相を辞めてからはなんと「尖閣列島は係争地である」と宣うた。防衛相・小野寺五典が「国賊という言葉が一瞬頭をよぎった」とあきれたものだ。菅直人も福島原発であらぬ指示を頻発させて、へりで視察した結果、ベントを遅らせると言う致命的なミスをした。不倫報道されて「一夜を共にしたが、男女の関係は無い、こんなことに説明責任は無い」と発言したこともある。


野党は他人の失言を追及している暇があったら、緊迫感が募る北朝鮮情勢の対応策でも提言してみてはどうか。この国難に野党はまるで知らぬ顔の半兵衛だ。野党は自らを省みて対応すべきであり、ゆめゆめテロ対策法などを人質に取って、国会審議を遅らせるような対応をすべきではない。集中審議などは本来北朝鮮情勢で行うべきだ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年04月26日

◆日露首脳は「半島非核化」で合意せよ

杉浦 正章



対北で「日露協調」を目指すべきだ
 

G7に対露制裁で食い違い
 

金正恩が米空母艦隊の攻撃を恐れ核実験もICBM実験もちゅうちょし始めたなかで、首相・安倍晋三は明日27日からロシア、イギリス訪問に出発する。17回目のプーチンとの会談では北方領土問題が主議題になるが、安倍は25日「少しでも前進させたい」と発言した。これは、既に合意した「4島での共同経済活動」を平和条約締結に向けての一里塚と位置づけて、現地調査の実施などでの合意を目指す構えだろう。ただ極東の極度の緊張を反映した北朝鮮問題や、欧州に「制裁疲れ」が見え始めた対露制裁問題も協議の対象となる公算が高い。


筆者は北朝鮮問題では日露首脳が「朝鮮半島非核化」では一致し得る環境が整いつつあると思う。一致すれば北は日米露中に非核化を迫られる形となり、金正恩が聞くかどうかは分からないが、外交的には大きな成果となろう。
 

ロシアは日米韓と中国が対北圧力を強める中で、ロシアは対日密輸や工作員の潜入で悪名高きマンギョンボン号の定期航路での運航を決めた。月6回にわたり北朝鮮北東部の羅津港とウラジオストク間を往復するが、ロシア側は国連安保理決議の制裁品目を輸出はしないとしており、日用品が中心となるようだ。北朝鮮が四面楚歌の中でのロシアが融和策とも受け取れる行為に出たのはなぜか。


筆者は背後にプーチンの狡猾なる戦略があるものとみる。それは金正恩を“手なずけ”て、最終的にはロシアの影響力を世界に示そうというものだろう。核実験を諦めさせるための迂回作戦ではないか。
 

ロシアのドミトリー・ビリチェーフスキー駐日公使は民放番組で「ロシアは北朝鮮の核武装を支援することはない」と明言するとともに、北とは次官級の会談を行い、核実験やICBM実験を抑える動きをしていることを明らかにしている。


一方中国は朝鮮半島問題特別代表武大偉が韓国を訪問して「中国はいかなる場合でも北朝鮮を核保有国として認めない」と発言している。武大偉は25日来日、4日間滞在して外務省アジア大洋州局長の金杉憲治と会談する。半島非核化を主張するものとみられる。こうした中での安倍訪露は、朝鮮半島非核化合意に向けての大きなチャンスとなるだろう。安倍はプーチンに金正恩説得を勧めるのもよいかもしれない。ロシアはまだ金正恩との首脳会談を行っていない。接触は次官クラスにとどまっている。
 

対露制裁に関してEUでは、昨年末に制裁を半年延長することを決めた。しかし、EUの中では、期限切れを控えて変化ともみられる流れが生じている。もともと欧州はイギリスが対露強硬論であるものの、ドイツ、フランス、イタリアは柔軟姿勢をとりつつある。中でも注目すべきはドイツ首相メルケルのロシア訪問だ。


既にメルケルは2015年5月にモスクワでの対独戦勝70周年記念式典に欧米諸国首脳でただ1人出席している。ウクライナ情勢を巡ってロシアと対立する欧米諸国の首脳らは出席を見送った。今回のメルケルのロシア訪問は5月2日に予定されている。
 

これまでのところ欧州による対ロ制裁が解除される見通しは立っていない。ただ、メルケルはロシア訪問で、プーチンと制裁問題を協議する用意があるようだ。メルケルの訪問に先だった安倍のロシア訪問で制裁解除問題が話し合われるかどうかだ。しかし、日本の対露制裁はもともと欧米との協調に主眼が置かれたものであり、日本が主体的に解除することは難しい。とりわけイギリス首相のメイが強硬論を維持している。


メイは1月の演説でトランプに対し「プーチン大統領と関わるのはいいが、注意すべきだ」と警告している。これに対して在英ロシア大使館はツイッターで「冷戦はずっと前に終わったはず」と不快感を示した。英国とロシアの対立が一番厳しいようだ。安倍はメイとの会談で欧州連合離脱に際して、在英日系企業が不利益を受けないよう配慮を要請することになるが、対露関係是正のアドバイスをしてもおかしくない。米露関係もトランプの選挙公約とはうらはらに、大統領補佐官マクマスター、国務長官ティラーソン、国防長官マティスらによって伝統的な対露警戒路線に回帰してきている。
 

こうした状況から、5月26、27日に開かれるシチリア・サミットは対露制裁をめぐってG7内部が割れる危険性を帯びている。とりわけ米、英、仏、伊が初参加であり、出席通算6回目の安倍と、12回目のメルケルが果たす役割は大きい。またプーチンが安倍やメルケルを利用して分断の動きに出るかもしれない。警戒はしなければなるまい。


いずれにしても朝鮮半島の緊張感を解除するためにはサミットの団結は不可欠であり、安倍の“橋渡し”と“調整”が極めて重要になる。G7とロシア、中国が足並みをそろえて、北に核開発の中止を迫る構図は日本にとっても極めて重要であろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2017年04月25日

◆民共は国際的「テロ戦争」に目を向けよ

杉浦 正章



法相の首など狙っているときか
 

「草」とは忍者で敵地に住み込み、敵地の住民と同化して、2代、3代に渡って破壊テロのチャンスを狙う者を指す。その北朝鮮の「草」が、いざ朝鮮動乱ともなれば新幹線や原発を狙って大がかりなテロを行いかねない時である。


ところが民進、共産両党は、これを未然に防止するテロ等準備罪法案の国会審議で、法相ごときの“斬首作戦”を展開している。この国の野党の国際感覚のなさは今に始まったことではないが、すぐそこにある危機ですら見えない。野党は戦前の治安維持法による監視社会に戻ると言うが、もし、オリンピックで未曾有のテロが成功すれば、日本は間違いなく監視社会に逆戻りする。


極右が台頭して、警察国家になるかもしれない。それこそ本当の危機ではないのか。大義は政府・与党にある。テロ法案は早期に成立を図るべき時だ。
 

共産党の田村智子は「国会周辺を歩くことが花見なのか、組織犯罪のための下見なのかどうして分かる」と質問した。愚問の最たるものだ。狙いは平和に花見をする一般国民が捜査の対象になるとこじつけたいのだろうが、花見の国民1億2千万人を捜査するほど警察は暇ではない。花見であろうが何であろうがテロリストが集まれば、捜査当局が動くのは当然だ。


そのような捜査は江戸時代からあった。由井正雪によるテロ未遂事件だ。歌舞伎では丸橋忠弥が千代田城のお堀の深さを小石を投げて図ろうとしているのを、松平伊豆守が見とがめて、忠弥の“内心”を読みとった。その場の逮捕ではないが捜査を進めて一網打尽にした。皇居や周辺の花見で刑事が勘を働かせて、怪しいとわかれば逮捕につなげる。これは捜査の常識ではないか。内心が読み取れなければ、敏腕な刑事とは言えない。
 

民進党は「保安林でキノコを採る行為を処罰することがテロ対策なのか」と、これまた愚問を提示した。277本の対象法案には、森林法の森林窃盗罪が含まれることを「理由が分からない」と鬼の首を取ったように追及するが、日本は憲法31条の罪刑法定主義をとっていることすら理解していないのか。人を犯罪者として処罰するためには、法律によって、 あらかじめ罪(構成要件)と罰を明確にしておかなければならないという原則だ。これがなければ、逮捕も起訴も出来ないのだ。なぜ森林法かと言えば、仮に松茸を3000本盗めば、十分テロ資金になる。ましてや鉱物資源などを盗めばテロ資金は潤沢だ。
 

自民党政調会長茂木敏充はNHKで「犯罪組織が水道水に毒物を混入した場合、その毒物を準備しても現行法体系では処罰できない」と述べた。テロ等準備罪法案の端的、明快なる説明である。野党は、早くも地下鉄サリン事件を忘れたのかと言いたい。犯罪組織オウムがサリンを製造し保有しているのをキャッチしておりながら、それだけでは逮捕に踏み切れなかった結果が死者13人、負傷者多数という未曾有の事件になったのだ。
 

野党による政府追及の手本となるのが、テロ法案を「共謀罪法案」と誤報し続ける朝日の社説だが、この社説も法相が愚鈍だから法案を通してはならないという、驚くべき反対論を展開している。4月22日の社説では「法相が自分の言葉で説得力のある説明をし、国民の理解を得る。それが法案に責任を持つ立場としての責務だ。それができないなら閣僚の資格はないし、法案は通してはならない。」と主張している。


朝日は法案の中身ではなく、1法相の資質で、法案の可否を決めるのか。社説子は、自ら議会制民主主義を否定していることが分かっていない。さらに社説は「野党の反対を押し切り、刑事局長を政府参考人として出席させることを委員長の職権で採決し、賛成多数で決めた。参考人の出席は全会一致で決めるのが慣例で、それを踏みにじったのは現行制度で初めてだ。」とも批判した。


しかし朝日は出先記者の原稿をデスクが直さないのだろうか。専門性が要求される法案においては、専門家である刑事局長の答弁が当然必要とされる。その方が質問者と答弁者が「知らぬ同士のチャンチキおけさ」にならなくて審議がスムーズに進むではないか。本末転倒の社説とはまさにこのことだ。
 

世論調査を見ても朝日の“偏り”が際立っている。朝日が15、16日に実施した世論調査では「テロ法案」に対する賛否が賛成35%、反対33%と拮抗(きっこう)した。しかし、読売のほぼ同じ時期の調査では、賛成が58%で、反対25%を大きく上回った。産経・FNNでも法案に賛成57・2%、反対32・9%だった。毎日の調査では賛成49%が、反対30%を上回った。明らかに聞き方や質問者の態度による違いが生じている。
 

今は間違いなく「テロ戦争」の時代だ。幸いにも日本にはISやアルカイダによるテロは発生していない。しかし、これらの組織が存在する限り、オリンピックは絶好のチャンスである。現にISは日本名指しでテロ実行を宣言している。国際的なテロの高まりに対して米欧は警察力の強化によって社会秩序を守るべきとする思想が台頭している。これはややもすると、社会の安全のためにはプライバシーの自由や個人の権利を制約されても仕方がないという動きに直結しかねない。


フランスでは極右のルペン支持者が増え、米国では移民の入国を制限するトランプイズムが多くの国民に支持されている。全てがテロ戦争対策である。野党は目先の重箱の隅を突っつく前に、この世界情勢に目を向け、テロ法案反対を撤回すべきである。国民への風評戦術が秘密保護法や安保法制で大失敗して、支持率が低迷している原因となっていることを想起すべきである。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年04月21日

◆米、北へのサイバー攻撃実施の可能生

杉浦 正章



16日のミサイル発射失敗が怪しい


NYTやCNNが報道


サイバー攻撃などは宇宙戦艦ヤマトの専売特許かと思っていたが、なかなかどうして米軍では実戦に配備されているかのようだ。とりわけ16日の湿った花火のような北朝鮮のミサイル発射実験失敗は怪しい。発射後数秒で爆発している。ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙によるとやはりその可能性が高いようだ。もともと米軍にはオバマ時代から「Left of Launch作戦」(発射寸前作戦)があり、時々北のミサイルにサイバー攻撃やレーザー攻撃を仕掛けているようだ。


もちろんトップシークレットである。サイバー兵器問題を漏らした米軍幹部が処分されている。サイバー攻撃が米軍によって採用されているとすれば、すでに北との“暗闘”が宣戦布告なしに展開されていることになる。この重大な事態を日本の全国紙が掌握していないのか、ほとんど報道しないのにはあきれた。


NYTは米軍から最近までサイバー攻撃について書かないように要請されていたが、15日付の同紙は「北朝鮮と米国の間では、過去3年にわたり、ミサイル計画をめぐる隠密の戦争が行われてきた」と暴露した。確かに16日の実験の失敗はアメリカによるサイバー攻撃が原因である可能生がある。NYTはこの種の攻撃は少なくとも過去3年にわたって展開されてきた「Left of Launch作戦」だという。


北朝鮮は今年2月から3月にかけて北極星2型およびスカッドERの発射に成功したが、3月以降、ミサイル発射は3回連続で失敗した。今月5日には、新浦から弾道ミサイルを発射したものの、飛行距離は60キロにとどまっている。16日に新浦から発射した弾道ミサイルは、発射後わずか4−5秒で墜落した。


さらにNYTは、北朝鮮が使用しているロシア製ミサイルの発射成功率が低いのは、アメリカが北朝鮮のミサイル関連ソフトを操作したり、北のネットワークを妨害しているからだという。同紙によると、北朝鮮の失敗が多いのは、ミサイル関連インフラがロシアのそれには及ばないという事情はあるものの、北朝鮮のミサイルがベースとしている旧ソビエト時代のミサイルの発射失敗率が13%だったのに対し、北朝鮮のミサイルは88%もの確率で失敗していると指摘している。この失敗の確率の高さは、米国が部品の輸入段階でのサプライチェーンを使って欠陥を生じさせている可能性もあるようだ。


16日の実験失敗の経緯について米CNNは来日した副大統領ペンスに空母ロナルド・レーガン上でインタビューしている。サイバー技術などを使った可能性について質問されたペンスは、「我が軍の電子およびIT能力についてはコメントできない」と発言。「私に言えるのは、(北朝鮮のミサイル発射が)失敗したということだ。あれはさらなる挑発だった。そしてそれは終わらせなければならない」と強調した。「ノーコメント」として否定も肯定もしなかったのだ。


サイバー攻撃は人工衛星や、U2やグローバルホークなど有人無人偵察機、ドローン、スパイ情報、通信情報などを通じて得た情報をクロスチェックしたうえで実施されるようであり、戦時には針の落ちる音すら見逃さない精度があるという。従って新浦での動きは掌握されているのであろう。新浦に接近しているイージス艦などが攻撃の役割を果たすものとみられる。ひょっとしたら16年には実戦配備されているはずのレーザー兵器を使っている可能生も否定出来ない。


レーザー兵器は、2010年にイギリス国際航空ショーで軍艦に設置された米レイセオン社製レーザー兵器が、約3.2キロ先を時速480キロで飛行する無人飛行機4機を破壊している。最新の技術情報によれば、ポーランドで遠距離到達も可能な極めて高出力のレーザー衝撃波を生成する技術的なブレークスルーがあり、小型艦船・迫撃砲弾・ロケット弾などへの攻撃・迎撃にも使用可能となっているといわれる。


従って今後北朝鮮の核実験にもサイバー攻撃やレーザー攻撃が行われる可能生も否定出来ない。既に核施設へのサイバー攻撃はイランに対して行われている。2009年にイランの核燃料施設を破壊したサイバー攻撃プログラムは、NSA(米国家安全保障局)のサイバー集団がイスラエル軍と共に作り上げたものだ。このサイバー攻撃作戦は、大統領ジョージ・W・ブッシュの下で立案され、オバマに引き継がれて決行され、成功している。


北は衛星写真向けに、核実験場前の広場で職員にバレーボールをやらせて、「実験はまだしない」と訴えているかのようだが、する兆候が察知されれば攻撃されると覚悟した方がよい。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年04月20日

◆踏んだり蹴ったりの韓国外交

杉浦 正章
 


米中双方からこけにされる


善意の安倍発言まで曲解
 

大統領という政治の核を失った韓国が“漂流”し続けている。対米、対中、対日外交で明確な指針を失い、これに北朝鮮のどう喝が加わる。マスコミは相変わらずの対日批判に終始し、近頃は、首相・安倍晋三の発言を曲解して報道、国民を煽る。今こそ米韓同盟と日米同盟を基軸に対北朝鮮政策で団結力を示さなければならないときなのに、まるで大局観を喪失したかのようである。


こうした中で韓国のマスコミの間で、脱北した超エリート外交官韓進明による金正恩の心境分析が的確であると評判を呼び、しきりにインタビューが行われるようになった。日本でもTBSが放映した。これらの報道によると金正恩は先制攻撃に出る可能性はないという。

 

韓国はまさに踏んだり蹴ったりの様相である。まず信頼すべき米国のトランプが米メディアに、なんと韓国を「中国の一部」と発言してしまったのだ。誇り高き漢民族の神経逆なで発言である。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューによると、トランプは「習主席が(6〜7日の米中首脳会談で)中国と朝鮮半島の歴史について話した。数千年の歴史と数多くの戦争についてだ。韓国は実は中国の一部だった」と述べたのだ。おそらく習近平がそのように受け取れるレクチャーしたのを請け売りしたのであろう。


聯合ニュースによると韓国の外交部当局者は「一考の価値もない」と強く反発した。同当局者は「報道内容が事実かどうかと関係なく、数千年間の韓中関係の歴史で韓国が中国の一部ではなかったことは、国際社会が認める明白な歴史的事実であり、誰も否認できない」と反論した。しかし、これは歴史的事実を知らない発言だ。


例えば元によって支配されている。モンゴル帝国による高麗侵攻は1231年から始まり、1259年高麗はモンゴル帝国に降伏、属国的な扱いを受けて日本侵攻に協力させられている。文永の役(1274年)、弘安の役(1281年)の蒙古襲来では、戦艦の漕ぎ手として朝鮮人が使われているのだ。

 

また「中国による露骨な韓国外しだ」とメディアが騒いでいるのが、来月開催される一帯一路首脳会議に韓国首脳が招待されなかったことだ。習近平の一帯一路構想にもとづくアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、日米が主導するアジア開発銀行(ADB)の向こうを張ったものだが、韓国も参加している。中央日報によるとこの会議に首相にも閣僚にも招待状が来なかったというのだ。


韓国政府当局者は「THAAD配備問題で韓国政府代表を意図的に招待しなかったようだ」との見解を示している。これに関連して、中国の外交部報道官陸慷は、「来月、韓国の新しい大統領が決まったら招待する意志はあるか」との質問に「仮説的な状況については答えることはできない」と述べている。

 

韓国メディアは安倍の国会答弁にもかみついている。安倍が17日、朝鮮半島有事の際に避難民が流入した場合について、「避難民の保護に続いて上陸手続き、収容施設の設置および運営、わが国が庇護すべきものに当たるか否かのスクリーニングといった一連の対応を想定している」と述べたことが、気にくわないようだ。マスコミにせっつかれるがままに外交部報道官の趙俊赫が「朝鮮半島状況と関連し、仮想的な状況を前提として誤解を招き、平和と安全に否定的な影響を与え得る言及は自粛する必要がある」と批判したのだ。ネットも炎上し「日本が地震で滅べば避難民を受け入れるものの、選別的な受け入れ基準を設けるべきだ。


朝鮮半島の核戦争よりは日本の大地震のほうがより近い未来だ」といった反発が乱れ飛んでいる。しかしこれも実態を掌握していない感情論だ。安倍が善意で言っていることを曲解している。朝鮮戦争では韓国軍が敗走を続け、北朝鮮軍に釜山周辺にまで追い詰められたことを忘れている。この経験から言えば韓国からの避難民が海を越えて流入することも考えられる。しかし北の工作員などが原発や新幹線爆破などの目的で紛れ込む可能性があり、そのチェックは当然必要だ。

 
まさに度しがたい感情論が目立っている。こうした中で脱北した北朝鮮の元外交官・韓進明の発言が注目される。15年に亡命した韓進明は平壌出身で、超エリート校金日成総合大学卒業後、08〜13年まで外務省で勤務し、13〜15年までベトナム大使館で書記官を務めた人物。韓によると、北朝鮮の外務省のスローガンは「即時受付、即時実行、即時報告」で、直ちに仕事を処理しなければならない。


特に金正恩の指示はその日のうちに実行、報告するように義務づけられている。ちょっとしたミスが命取りになり、金正日時代とは緊張感がまるで違うという。また出先の大使館は「信じられないほどカネがなく、自動車を秘密裏に購入し、転売して資金を分配していた」という。

 

さらに韓進明は金正恩の心境を読み取って「金正恩は単なる暴君ではない。自らの行為を1歩踏み間違えると大変なことになることが分かっている」と分析した。また金正恩が先制攻撃に出るかどうかについて「政策決定の過程をよく知っているが、北の国民性から言っても絶対に発砲(ミサイル発射)して開戦の火蓋を切ることはない」と言い切った。北の外務次官韓成烈らが、「アメリカが先制攻撃を企てるなら我々は核の先制攻撃で応ずる。全面的な戦争になる」などと吠えまくっているのとは別の見方である。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年04月19日

◆日米会談、謎の35分は霧の中

杉浦 正章
 


北への軍事圧力強化では一致
 

安倍・ペンス会談を一言で形容すれば、中国の北朝鮮への働きかけを当分見守るというところにあるのだろう。従って米国が当面軍事行動に出ることはまずあり得ない。会談からは、軍事行動が迫っているような雰囲気は感じ取れなかった。しかし、禁止用語を避ければ「クレージーマンに刃物」を持たせたような金正恩が、突如核実験に踏み切れば事態は軍事衝突へと一変する。


米国務省高官は「金正恩政権の転覆は求めない」とまで言い切っているが、これも筆者が前回指摘したとおり中国との「密約」の急所だ。これがなければ中国は金正恩を説得する手段がない。したがって米空母打撃群は、北と中国をにらんだ脅迫材料として朝鮮半島周辺に存在し続けるだろう。


会談での注目点は、首相・安倍晋三が「米国が全ての選択肢がテーブルの上にあるという考え方で対処しようとしていることを評価する」と軍事行動への支持を正式に表明したことだろう。ペンスにしてみれば安倍発言は願ってもない支持表明であり、日米の一致した軍事行動も辞さない構えは、北への抑制効果を一段と増幅されることになる。


ペンスは「戦略的忍耐の政策は終わった」と、優柔不断のオバマの政策からの決別を明言した。また「国際社会が団結して北に圧力をかければ、朝鮮半島の非核化達成の好機が生まれる」と日米韓の中国との結束の必要を強調した。両者の口ぶりからは、北への圧力をひたすら強化しなければならない現状が分かる。この方向を公表しなければ、ペンスの同盟国歴訪の意味がないからだ。


しかし、ソウルが甚大な被害を受けかねない韓国が、ペンスに軍事行動への慎重論を説いたといわれるように、北の攻撃にさらされる恐れがある日本も、むやみやたらに主戦論に傾いているわけではあるまい。北のミサイルにはまだ原爆は搭載されていないが、サリンなど化学兵器をイタチの最後っ屁のように一発でも撃ち込まれてはたまらない。


従って会談では公表以外のきわどいやりとりがあった可能性がある。会談は一時間の昼食が終了した後、人数を絞って35分間行われている。そこでの話し合いは、機密事項であり推測するしかないが、あえて推測すれば、まず中国がどこまで本気で北朝鮮を説得するかが話し合われたのではないか。米中両国はこのところ頻繁な接触を繰り返しており、ペンスは米国の感触を伝えたはずだ。


また公表されていないが、米国が攻撃に踏み切る場合の日本との事前協議についても話し合われた可能性がある。安倍は15日の参議院予算委で、朝鮮半島有事の際について「米国海兵隊は日本から出て行くが、事前協議の対象になるため、日本が了解しなければ韓国を救援するために出動できない」と述べている。既に日本政府は米政府に対し、北朝鮮への軍事行動に踏み切る場合には事前協議を行うよう求めているといわれる。


こうした方向を安倍がペンスにも再確認することはあり得るだろう。政府高官は「北が核実験を行った場合の対応については、今日のやりとりはなかった」と述べているが、既にトランプは「核実験=軍事行動」を明確にしており、ここの“急所”が話し合われなかっただろうか。米側から何らかの見通しの説明があってもおかしくはあるまい。

 
こうした中で、北朝鮮の“口撃”は佳境に達している。日朝国交正常化担当大使宋日昊は「我々はアメリカだけでなく日本軍国主義も主たる敵だ。戦争になったら一番の被害を被るのは日本だ」と毒づいている。既に北は3月に、金正恩が在日米軍基地を攻撃する任務を負った部隊による4発のミサイル発射実験を指揮しており、露骨な嫌がらせを展開している。日米の離反を目指す戦略が見え見えだが、こうした言動が繰り返されるたびに、眠っていた日本国民の国防意識を目覚めさせていることが分かっていない。


日本の極端な右傾化が、朝鮮半島にとっては、米国より怖いことは歴史が証明している。これを知らない金正恩の挑発と火遊びはいいかげんにしないと、火の粉は自分に降りかかることを肝に銘ずるべきだ。いずれにしても、すべては中国の対北外交の成り行き待ちだが、金体制を崩壊させないことを前提条件としていることは、金正恩をいよいよつけあがらせるだけとも言える。中国が原油ストップなどよほどの強硬策をとらない限り、水面下での中朝交渉はラクダを針の糸に通すくらい困難であろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年04月18日

◆米中結託で北朝鮮説得に動く

杉浦 正章

 

北の体制維持で“米中密約”か


金正恩に軟化の兆候も


まるで北朝鮮をめぐって米中結託の様相である。トランプは「習近平主席を気に入った。尊敬する。素晴らしい人だ。どうなるかを見ていよう。努力をしてくれると思う」と臆面もなく秋波を送った。脅したうえで、なだめすかすトランプ流の「手口」が垣間見える。


これに対して中国は「対話による平和的解決」(外務省報道官)と応え、水面下で核実験、ICBM実験中止へと動く。中国の対北政策は一変したかのように見える。中国の北に対する基本政策は、米国への防波堤としての存在価値を利用する点にあったが、トランプ・習近平会談がこれを微妙に変化させたのだ。北の体制維持を米国が認めたとされる「密約」があることが大きく作用していると言われる。


しかし、中国の北への説得工作が短期的には奏功しても、北が核とミサイルを永久に放棄することはあり得ないだろう。したがって、金正恩体制を崩さない限り、極東の緊張緩和は達成できない。
 

米中間の接触は極めて頻繁である。6,7日の首脳会談に続いて、12日には電話首脳会談。16日には国務委員楊潔チと国務長官ティラーソンが電話会談している。こうした会談を通じて、米側は「中国がやらなければ米国がやる」(トランプ)を基本姿勢に、習近平を揺さぶった。空母カール・ビンソンを朝鮮半島に近い西太平洋に展開、中東でシリアへの巡航ミサイル攻撃、ISへの大規模爆風爆弾(MOAB)使用など、明らかに北朝鮮と中国をけん制する軍事行動に出た。これが中国の尻をたたいた。


こうしたムチに加えて中国のアキレス腱である対米貿易黒字に関しても、為替操作国指定を見送るなどのアメも提供した。
 

トランプ政権の狙いは、とりあえず北の核とICBMの実験を中止させるところにある。こうして中国は水面下での対北説得工作を展開し始めたのだ。その説得材料は、現体制を潰さないとする密約をもとに、場合によっては原油パイプラインを止めることや、中朝友好協力相互援助条約の「中国参戦条項」の不履行をほのめかしながらの脅しだろう。


原油パイプラインのストップは環球時報が「中国は北への原油供給を制限するなどかつてない制裁を考えている」と報じた。一方、中朝条約不履行は有事における北の壊滅を意味するだけに大きい。同条約第2条は「一方の国が戦争状態に陥った場合、他方の国は全力で軍事援助を与える」と規定しているが、第1条では「両国は世界平和を守るためあらゆる努力を払う」と規定されている。


中国は北の核開発は1条に反しているという立場だ。さらに中国にしてみれば、北の核を認めれば、日本や韓国の核武装へと極東情勢が誘導される可能性があり、そうなれば中国一国が極東で「核優位」に立つ戦略上のアドバンテージを失うことになる。これも避けなければならないという事情がある。
 

中国による最大限の圧力に北がどう反応しているかは定かではない。その一挙手一投足から推理するしか方法はない。一つは金日成生誕105周年記念式典で、西側の記者団を人質に取るかのように招待して、米国のピンポイント攻撃を回避したうえで姿を表した金正恩が、軍服ではなく背広姿であったことだ。精一杯の「平和志向」のシグナルと解釈できる。

さらに党副委員長崔竜海は15日、式典での演説で「全面戦には全面戦で、核戦争には我々式の核打撃で対応する」と述べた。その一方で、「我々は平和を愛する」とも付け加えたのだ。こうした北の反応は、一見強気にみえる金正恩が、相当な圧力を感じていることを物語る。米国と全面戦争をすることは避けたいというのが本音であろう。


問題は中国と米国が現在予定されている核実験や、ICBMの実験を中止させることに懸命であるかのようであることだ。米中が唱える朝鮮半島の永続的な非核化は現実問題として極めて難しいといわなければなるまい。なぜなら、北朝鮮の伝統的な基本戦略は核ミサイル保有国として米国と対等の対話が出来る国になることであり、その戦略に何が何でもしがみつこうとするからだ。


韓国に亡命した元駐英北朝鮮公使太永浩が昨年12月「1兆ドル、10兆ドルを与えると言っても北朝鮮は核兵器を放棄しない」と述べたが、まさにその通りであろう。これまでの6か国協議が結局失敗に終わったのは、何をしようと北の核ミサイル願望は消滅しないのだ。従って極東の危機は米国が金正恩を“除去”するまで続かざるを得ないのだろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年04月14日

◆トランプ、対中改善に大きく前進

杉浦正章



対露関係は機熟さず「史上最悪」
 

安倍訪露は好機か
 

日本や西欧など同盟国との関係を構築した米大統領トランプは、オバマが悪化させたロシア、中国との関係再構築に取りかかっている。しかし、対中関係改善が大きく先行したのに対して、対露関係は自ら「史上最悪」と言い切るほど好転していない。トランプは選挙中にロシアに大接近したものの、その先兵となったマイケル・フリンを国家安全保障補佐官から外した。


大統領就任前にロシア大使と接触した疑惑が理由である。代わりに就任させたマクマスターらに主導権が移りシリア攻撃など、ロシアの神経逆なでの行動に出た。米政権内部の主導権争いも作用したのだ。国務長官ティラーソンをモスクワに派遣したがシリアをめぐる亀裂だけが際立った。
 

トランプと習近平との関係は驚くほど好転している。習近平がトランプに気軽に電話するような関係になったのだ。おまけに12日の電話会談の中身たるや、出来るだけ早期の訪中を望む習近平に、トランプは快く応ずるという蜜月ぶりだ。会談でもっとも注目されるのはトランプが習近平に国連安保理におけるアサドの化学兵器使用を非難する決議への配慮を求めたことにどのような対応をするかであった。


これに対して、習近平は「棄権」という対応に出たのだ。拒否権を行使したロシアは完全に孤立した。6年にわたるシリア内戦中にロシアが拒否権を行使したのは8回目。同じく常任理事国で過去に6回拒否権を行使している中国が棄権、ロシアに同調しなかった事は外交上大きな意味を持つ。トランプは「素晴らしい。だが棄権したことに驚きはない」と得意げに自らの根回しをほのめかしている。「習近平氏とはケミストリーが合う」とまで言いきっている
 

しかし対中関係も北朝鮮の核ミサイル開発問題をめぐっては、さらなる制裁を求めるトランプに対して、習が石油の供給制限などドラスティックな対応をするかどうかの問題もありまだ予断を許さない。こうしたトランプ外交も身内の進言に左右されることが分かって来た。 夫ジャレッド・クシュナーとともにその絶大な影響力からトランプの「秘密兵器」とも呼ばれているイバンカは、シリアへのミサイル攻撃にまで影響を及ぼしている。


実弟エリック・トランプは英テレグラフ紙に「イバンカは3人の子供を持つ母親で、大きな影響力を持っている。彼女はきっと『聞いてお父さん、こんなのひどすぎる』という具合に言ったと思う。父(トランプ)は、そういう時には動く人だ」と証言している。
 

こうした内情が反映して中国とは対照的に、対露関係は「険悪」ともいう事態になっている。しかし、筆者はシリアへの一回限りの攻撃で関係悪化が長期に継続するとは思えない。ティラーソンが外相ラブロフと5時間、トランプと2時間も会談したことの意味は、両者がそうとう突っ込んで様々な問題を語り合ったことを物語っている。両外相は冷戦後最悪と言われるほど悪化した米ロ関係の改善に取り組む必要性では一致している。


加えてプーチンは、アメリカ軍による空爆が過激派組織ISなどのテロ組織を対象にする場合、いったん閉鎖した連絡窓口の運用を再開する用意があることを確認している。就任後初めてロシアを訪れたティラーソンに対し、ISとの戦いでは、トランプ政権と協力していく姿勢を示して、花を持たせたものとして注目される。報道官ペスコフも「非常に建設的な会談だった。さまざまな問題の解決策を探るため、対話を維持することが必要だという指摘があった」と述べている。
 

米露会談で重要な点は対露制裁問題が話し合われたかどうかだ。合計7時間もの会談の中で、すくなくともロシア側が言及しないことはあるまい。ウクライナ問題に端を発して対露制裁措置を講じている主要国は米国と欧州連合(EU)であり、カナダ、豪州、日本は独自の制裁を発動している。トランプは政権に就く前は対露制裁解除に前向きであった。更迭されたフリンはその意を受けて駐米ロシア大使と対露制裁について協議していたのであろう。


EUは昨年末の首脳会議で対露経済制裁を1月の期限から半年延長することで合意した。欧州諸国はイギリスが強硬論であるのに対して、ドイツ、フランス、イタリアなどには「制裁疲れの様子」が見え始めているようだ。5月のシチリア・サミットでも話し合われる公算が強いが、問題の焦点はやはりトランプがどう動くかに絞られよう。
 

こうした情勢の中で首相・安倍晋三の訪露は4月下旬行われる予定だ。安倍はロシアとの共同経済活動を先行させて領土問題につなげるという大きな方針転換を行った。この経済活動によって日露の信頼関係を深め、主権の問題を解決しようという試みは、世界的に見ても前例のないアプローチである。四面楚歌のプーチンに対して譲歩を迫る好機とも言える。一方で、るる述べてきたような激動する世界情勢を大局的な見地から話し合うこともまた重要だろう。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年04月13日

◆中国、北への原油供給制限を検討かー環球時報

杉浦 正章

 

習近平は米に抑制的対応を求める


米の攻撃は核実験とICBM次第か
 

韓国が「朝鮮戦争以来最大の危機」(中央日報)と焦燥感を強めている中で、中米、日米の外交的接触が活発化している。中国は習近平が2日のトランプとの電話会談で「平和的解決を」と抑制的対応を求めれば、日本は米国に対して攻撃する場合には事前協議をするよう要求した。


こうした中でトランプが北への攻撃に踏み切るかどうかを判断するポイントが、北の核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の2点に絞られつつある。中国もいずれかの実験をすれば、米国の攻撃を傍観する可能性すら生じている。ひしひしと迫る米国の重圧の中で、金正恩が予定通り早期の核実験とミサイル実験に踏み切るという「自殺行為」をするかどうかだ。


韓国では新月の4月27日を狙って爆撃を開始するとの情報がネットで拡散しているが、筆者はおそらくトランプは、北が核かICBMの実験をしない限り攻撃を先送りするかもしれないと思い始めている。

 

中国は昨日書いたように大きくその姿勢を変化させている。習近平は電話会談でも厳しい口調はなく、説得調であったといわれる。その証拠に習近平はトランプの年内訪中を再確認している。もちろんトランプがこれに応じたのは言うまでもない。習近平の「平和的解決」要請にトランプがどう応じたかは霧の中だが、少なくとも中国の北への圧力強化を求めたことは間違いあるまい。


トランプが原油供給問題に言及した可能性もある。北への圧力強化は、既に中国が実施に移している石炭の輸入1年停止では足りまい。最大の焦点は中国が北の首根っこを押さえている原油の供給停止か供給制限に踏み切るかどうかであろう。北朝鮮は原油の9割を中国に依存しており、原油が止まれば北の経済は崩壊する。金正恩体制も危機に瀕することは自明の理だ。
 
 

原油は豆満江をわたるパイプラインで供給されているが、驚くことにその中国に石油供給を制限するという説が台頭し始めた。読売によると中国共産党系のタブロイド紙環球時報は、12日の社説で「北朝鮮が今月、追加の核実験やICBMの発射に踏み切れば、中国が原油の供給の制限に踏み切る可能性」を示唆したという。環球時報は共産党機関誌『人民日報』の国際版とも言えるが、人民日報ほど高級志向ではなく、大衆的だ。


しかし、中国首脳が環球時報を使って観測気球を上げるケースが多く、今回もその可能性が強い。北に対して「禁じ手をあえて使うぞ」というどう喝に出たのであろう。

 

一方、日本政府も米国に対して攻撃の場合には事前協議をするように求めている。官房長官菅義偉は否定しているが、ありそうな話だ。


北は日本の米軍基地を名指しで攻撃すると言っており、突然米軍に攻撃されてはたまらない。事前協議は、60年に安保条約を締結した際の交換公文で在日米軍が戦闘作戦行動をする際に事前協議をするよう規定されている。今回のケースはカールビンソンを使う場合には在日米軍基地は使用しないから適用外だが、横須賀で点検整備中の空母ドナルド・レーガンが北に向かって攻撃のための出撃する際には当然対象となる。

 

各社報道していないが事前協議の対象は、もう一つある。それは沖縄返還時に日米間で交わされた、米軍による有事の際の日本への核兵器の持ち込みに関する密約のことだ。米国政府は核兵器の所在について否定も肯定もしない政策をとる一方、沖縄返還に当たってはいったん撤去した沖縄の核を再持ち込みする事がありうるとの立場を強硬に主張した。日本政府は「核兵器を持たず・作らず・持ち込ませず」を“国是”としており、これと矛盾するが、米国の強い要求に佐藤内閣はこれを認めた。


しかし、密約として公表されなかった。従って国会でも社会党の追求の的となった。どちらのケースかは状況によるのだろう。いずれにしても北が核でどう喝するという、異常事態の発生である。有事寸前の事態でもある。米軍の核持ち込みが必要とされるケースはあり得るのであり、事前協議を経てこれを認めるのは日本防衛の要であり、当然であろう。
 

もっとも、簡単に米軍による北攻撃が行われると見るのは早計であろう。米統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォードが昨年3月の議会軍事委員会で「北の軍事力は世界第4位だ」と発言している。しかし軍事分析会社グローバル・ファイヤーパワー(Global Firepower)による「世界の軍事力ランキング2016年版」では上位10位は米国、ロシア、中国、インド、英国、フランス、ドイツ、トルコ、韓国、日本の順で北朝鮮は36位となっている。


ダンフォードの指摘は陸上の白兵戦を意味するのかもしれない。いずれにせよ北を叩くといってもそう簡単ではない。第一次朝鮮戦争では3万6000人の米軍人が戦死しており、空爆だけで北が降伏すれば簡単だが、地上戦ともなれば甚大な被害が予想される。シリアの空爆などとは比べようもない。本格戦争を覚悟しなければなるまい。また極度に緊張が高まれば米国の先制攻撃どころか、北が誤判断などから先制攻撃に出る可能性すら否定出来ない。


従って、軍事行動を示唆して最大限の圧力を行使し続けるものの、北が核実験の実施やICBMを発射しない限り、トランプといえどもそう簡単に全面戦争に踏み切れるものでもない。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年04月12日

◆中国、朝鮮半島沈静化に動く

杉浦 正章
 


北の核保有を認めず


金正恩は外交・安保で孤立
 

読売が12日付社説で北朝鮮の核・ミサイルによる挑発行為について「中国の実質的関与を促したい」と間の抜けた主張をしている。なぜ間が抜けているかと言えば、中国が、北朝鮮の非核化に向けて本格的に動き始めたのを見逃している。


中国外務省の朝鮮半島問題特別代表武大偉が10日訪韓して外務省韓半島平和交渉本部長金ホン均と会談、「中国はいかなる場合でも北朝鮮の核保有国としての地位を認定、黙認しない」と金正恩をこれまでになく強く批判したのだ。中国は、ICBMの打ち上げや核実験をやれば見捨てると言っているのだ。これは明らかにトランプが習近平との会談で「中国が役割を果たさないなら我々が単独でやる」と“説得とどう喝”で「行動」を促したことを反映している。


空母カールビンソンと横須賀停泊中のロナルド・レーガンに取り囲まれ、中国まで離反して外交・安保両面に渡り北は完全に追い込まれて孤立化した。こうした米中の方針は韓国の大統領選の帰趨に大きな影響を及ぼしつつあり、トップを走っていた親北の「共に民主党」の文在寅が失速しつつあり、戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)容認など保守票を意識した中道・国民の党の安哲秀が世論調査で劇的な逆転となり有利となっている。

 
習近平はよほどこたえたとみえる。米中首脳会談から3日後に武大偉を派遣している。それに首相李克強も10日、北京で元衆院議長河野洋平らと会談し「北朝鮮情勢は緩和すべきだ。中国もやるべきことがあるし、中日でも共にできることがある」と日本との連携すら示唆している。明らかに中国は対北政策で金正恩への圧力をかけ始めるという重大な北朝鮮政策の方向を転換した。


一面トップ並みの動きだが、日本のマスコミの多くがこの動きを見逃している。韓国中央日報によると武大偉は「北朝鮮が核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射のような『戦略的挑発』を敢行する場合、国連安全保障理事会の決議に基づき強力な追加の措置があるだろう」と発言した。


両者は@北が追加で挑発すれば、よりいっそう強力な安保理決議はもちろん、制裁と圧力を持続的に強化するべきであるA北の非核化のために韓中協力と5カ国(韓・米・日・中・露)の連携が重要だB韓中は核問題の緊急性・厳重性に対する評価を共有し、北の挑発を懸念して反対するという立場で一致した。

 
こうした中国の動きは、ひしひしと朝鮮半島に迫る「4月危機」に対して、とりあえずは緊張緩和に動かざるを得ない状況に立ち至ったことを意味する。習近平はトランプとの会談で韓国へのTHAAD配備に懸念を表明しているが、その基本的な立場は維持しつつも、今後金正恩が核実験やICBM実験、さらにはICBMへの核搭載に踏み切れば事態は抜き差しならぬ戦争に突入しかねないという危機感を抱いたのであろう。


もともと習近平は金正恩を毛嫌いしているといわれており、就任以来朴槿恵とは会談しても金とは会談していない。しかしこのまま放置すれば第2次朝鮮戦争、ひいては第3次世界大戦まで誘発しかねない事態へと発展しかねない。朝鮮戦争ともなれば最終的には米国主導で韓国による半島統一に向かう事は必定だ。これはなんとしても防がなければならないという考えに立ち至ったのであろう。

 
それで武大偉を韓国に派遣したのであろうが、こうした動きは北に対して極めて厳しい威圧になる。問題は中国がこうした動きを背景に北への説得に動くかどうかだ。金正恩を説得するには包囲網だけでは足りない。武大偉は韓・米・日・中・露5か国の連携の必要を提起しているが、これがかつて堂々巡りを繰り返した6か国会議と同じことになる可能性は否定出来ない。


やはり中国自らが石油の禁輸などドラスティックな制裁をかけることで北を脅し、金正恩を外交的に屈服させるしか方法はあるまい。習近平がそこまで踏み込むかどうかが当面の焦点となる。


◇大統領選は安哲秀がリードの情勢
 
一方で韓国の大統領選はこうした極東情勢を強く反映したものとなりつつある。5月9日の投開票に向けて事実上文在寅と安哲秀の一騎打ちの様相を呈してきた。先月には8.4の支持率しかなかった安哲秀がここ1週間で急速に支持率を上乗せして文在寅を逆転した。


8〜9日に聯合ニュースが実施した世論調査の結果によると、候補者5者への調査で安の支持率は36.8%で、文の32.7%より4.1ポイント高かった。また候補を2人に絞った場合も安は49.4%で、文の36.2%を13.2ポイントの差でリードした。テレビ朝鮮の調査も安候補が34.4%、文候補が32.2%。2人に絞っても、安が51.4%で、文の38.3%より13.1ポイント高かった。

 
この結果がなぜ導かれたかと言えば朴槿恵への反発から「当選したらまず北へ行く」と述べる親北朝鮮の文在寅へと流れた支持が、北による半島危機によって限界を示し、逆に中道とはいえ米国との連携に大きく舵を切った安哲秀に支持が向かったといえよう。とりわけ安哲秀がこれまで反対してきたTHAAD配備を支持する方向に転換したことも、行き場がなかった保守層の支持を獲得し始めたものとみられる。


こうした状況は1か月後の投票に向けて加速するような気がする。安哲秀が勢いを付けたまま投票に突入する公算が大きい。しかし、最近の選挙はトランプ当選を誰も予想しなかったように「魔物」が潜んでいる可能性もあり、断定は出来まい。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年04月09日

◆トランプは韓国への核配備に本気のようだ

杉浦 正章



日本は非核三原則論議再燃か


 米中会談はきわどいやりとり


日本の報道では何やら歯切れが悪く平行線をたどった米中首脳会談であったように見えるが、トランプと習近平の間では北朝鮮の核ミサイル対策でかなり激しいやりとりがあったようである。より深刻な対応を迫られている韓国の報道を見れば、トランプは戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)配備について「韓国に対して報復措置を取らないように求めた」(東亜日報)という。これに対し習近平はTHAAD配備に反対するとともに、米韓軍事演習について「軍事的圧力を停止すべきだ」と逆襲している。かなりきわどいやりとりである。


一方、トランプが「中国がやらなければ米国が独自の行動について準備が出来ている」と伝えたことについて、軽佻(けいちょう)浮薄なる民放テレビのコメンテーターらが「すわ軍事行動」とばかりに騒いでいるが、そうとは限るまい。軍事行動の前に行いそうな最大の一手は、韓国への戦術核配備であろう。韓国に核配備する以上、トランプが日本にも有事の際の核持ち込みを求める可能性がないとは言えまい。極東情勢の激変で非核三原則の是非について、国会での議論が再燃する可能性もある。
 

首脳会談を経て米国はここ当分は中国の北への動きを注視することになるだろう。会談のポイントはトランプが習近平の尻をたたいたことにあるからだ。米中首脳会談を狙ってシリアへの巡航ミサイル攻撃を断行、国家安全保障会議(NSC)に韓国への核配備を提言させるなどどぎつい対中圧力を展開したトランプは、中国がこれに促されて北に対して行動を起こすかどうかを見守るのだろう。起こさなければ、矢継ぎ早に対策を打つだろう。


既に下院が可決した北のテロ支援国家再指定を実行に移し、北と取り引きする第3国の企業・個人への制裁、同盟国のミサイル防衛網の整備などをちゅうちょなく打ち出すであろう。そしてその白眉とも言えるものが韓国への戦術核の再配備である。
 

トランプは就任後国家安全保障チームで韓国に核を配備して北への“劇的な警告”を行うことを検討してきた。これを習近平の訪問を待っていたかのようにNBCテレビにリークして「米国家安全保障会議(NSC)が在韓米軍への核兵器の再配備をトランプ大統領に提案した」と報じさせた。グアムに配備している戦略核はミサイルや爆撃機でいつでも使用できるから、韓国への配備を検討するのは戦術核であろう。戦術核とは局地戦で使用するもので、戦場単位で通常兵器の延長線上での使用を想定した核兵器である。


かつて在韓米軍は核弾頭を装着できる地対地ミサイル「オネスト・ジョン」と280ミリ核大砲、空中投下核爆弾、超小型破壊用特殊核爆弾などを搬入した。しかし、冷戦終了への流れがはっきりしてきた1991年、ジョージ・ブッシュが軍縮計画に添って、これらの戦術核兵器を朝鮮半島から撤収した。現在、北大西洋条約機構(NATO)では、5ヵ国の米空軍基地6ヵ所に戦術核兵器約150〜200個が備蓄されている。核兵器の再配備先としては、ソウル南方にある烏山(オサン)空軍基地が候補に挙がっている。タイミングとしては金正恩が6回目の核実験をやった直後かもしれない。
 

トランプのNSCは、金正恩の臆面もないミサイル打ち上げと核開発で、極東が核危機の状況になりつつあると見ており、韓国への核配備は戦略上も欠かせなくなってきたと判断したようである。韓国内は5月9日の大統領選挙に向けて保革伯仲の戦いが展開されているが、この戦術核配備が争点になりつつある。「核武装」すら主張する与党保守勢力は歓迎しており、文在寅など野党候補は反対している。選挙結果は配備に影響するかもしれないが、トランプは選挙に関わりなく配備する構えのようだ。
 

こうして昔懐かしい核の傘論や非核三原則論が日本でも活発になるだろう。「造らず、持たず、持ち込ませず」の非核3原則は佐藤内閣時代から「国是」となっている。佐藤栄作は1967年衆院予算委員会で「核は保有しない、核は製造もしない、核を持ち込まないというこの核に対する三原則のもとにおいて日本の安全はどうしたらいいのか、これが私に課せられた責任でございます。」と答弁、非核三原則を表明した。2006年には安倍が衆議院予算委員会で「我が国の核保有という選択肢は全く持たない。非核三原則は一切変更がないということをはっきり申し上げたい。」と堅持を表明している。
 

重要なのはこの非核三原則があるかぎりアメリカは安心であるということだ。なぜなら「造らず」「持たず」があるかぎり日本の核武装はなく、米国の世界戦略は安泰であるからだ。経緯を知らないトランプが「持ち込みくらいいいだろう」と言い出さないとも限らない。しかし非核三原則は一体であり、持ち込むとなれば大きな反核闘争を巻き起こし、死に体のようになっている民進党と、共産党を利するだけということになる。よほどの有事になれば別だが、今のところは平時だ。平時に波風を立てる必要はない。有事にはどさくさに紛れて持ち込むことも可能だ。

<<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2017年04月08日

◆度肝を抜かれた習近平、プーチン、金正恩

〜シリア空爆〜

杉浦正章



トランプ起死回生の世界戦略に成功
 

北への戦略応用は容易ではない
 

一挙に米国のリーダーシップを回復させ、四方八方に目配りしたこの見事な世界戦略は、トランプの立案とは思えない。おそらく国家安全保障担当大統領補佐官マクマスターが国家安全保障会議(NSC)をリードして成し遂げたに違いない。解任されたマイケル・フリンの後を継いだマクマスターは政権のダークベイダー・スティーブン・バノンをNSCから追い出したが、この“政変”もシリアをめぐる中東政策の違いが原因ではないかと思えるくらいだ。


シリア空爆をあえて「見事な世界戦略」と形容するのは、フロリダで会談中の習近平、シリアに存在感を増すプーチン、増長の極みの黒電話の受話器ヘアの金正恩の度肝を抜いたからである。加えて35%まで落ちたトランプ支持率を大きく押し上げる効果も生じよう。


なぜならアサド政権への攻撃は道徳的な側面が強く、米国民の好きな正邪の戦いでもあるからだ。まさに八方にらみ、一石四鳥の世界戦略である。朝日は8日付け社説でミサイル攻撃を「無責任な単独行動」と相変わらず唯我独尊的に批判しているが、放置すればアサドは図に乗って毒ガスをばらまく。それでいいのか。首相・安倍晋三がトランプの決断を支持したのは全く正しい。読売も社説で安倍を支持している。
 

度肝抜かれのナンバーワンは習近平であろう。華麗で和やかなる晩餐会は東部時間午後8時から9時半まで続いたが、事もあろうにトランプはその最中の午後8時40分にトマホーク巡航ミサイル59発をシリアのシャイラート飛行場へと発射するよう指示していたのだ。トランプがこれを習近平にささやいたかどうかは分からないが、おそらくささやいていないだろう。なぜなら空爆の成功を確認できないうちに、言えることではないからだ。


トランプが発表したのは空爆成功を確認した食事後であり、習近平はその後知らされた可能性が高い。もともとシリア政府軍攻撃は急ぐ話ではなかった。2日や3日遅れても問題が生ずる話ではない。従ってトランプは“わざと”晩餐の時を狙った可能性が高い。まさに巧妙なる“作戦”に、習近平はこけにされたことになる。トランプのアッパーカットを食らって、今日の米中首脳会談までに態勢を整えるのに懸命の有様が目に浮かぶ。
 

次に度肝を抜かれたのはプーチンだ。プーチンはトランプを大統領選挙で陰から助けたといわれており、対露強硬路線のクリントンが政権を担わないでほっとしていたところだろう。イランとともにシリア内戦に介入して、冷血動物のようなアサドを支持し、アサドがサリンのような神経ガスや塩素ガスなどの化学兵器を使ったことを否定してきた。プーチンはトランプが親露である以上、一挙に攻撃には出まいと誤算していたのだ。

しかし、プーチンの主張とは逆にミサイル攻撃が、化学兵器による爆撃の拠点となったシリア中部のホムス空軍基地に限定されたのは、米国が空撮などの動かぬ証拠を握っているからだという説が強い。米国務長官ティラーソンは来週訪ロするが、これに先立って「米露関係がどのような方向に進むかはロシア側から聞く内容次第」とすごんでいる。


ニューヨークタイムズはティラーソンがプーチンに会うと報道しているが、外相ラブロフだけとなるかははっきりしない。いずれにせよプーチンは、あくまでアサドをまもるか、米国との関係を考慮するかの選択を迫られる形だ。米露が対立すれば内戦はより複雑化して長引くだろう。
 

一方、超度肝を抜かれたのは北の黒電話ヘアだろう。ヘアが逆立ったかもしれない。金正恩は、「戦略的忍耐」と称して優柔不断だったオバマしか知らないから、トランプになってからもミサイルの打ち上げを続け、6回目の原爆実験も準備している。金はトランプが安倍に「全ての選択肢がテーブルの上にある」と、軍事行動示唆の発言しても実感を伴って理解出来ないでいたのだろう。しかし、巡航ミサイル59発の威力を映像で目の当たりにして、金正恩は隠れ家の地下壕をより深く掘れと命じたかもしれない。


自民党副総裁・高村正彦はNHKに「『無法国家』にアメリカの決意を知らせることになり、『無法』ができなくなるということが考えられる。その反面、北朝鮮が、『シリアは核を持っていないから攻撃された』と、ますますミサイルや核が必要だと考えるかもしれない。トランプ政権はオバマ政権と違い、レッドラインを越えたと思えば思い切ったことをやるというメッセージが、『無法国家』を抑制させる効果が出ればいい」と延べ、看破している。高村の言うとおり国内的には核開発の口実になり得るが、実体的には相当の抑制効果となる可能性が大きい。
 

しかし、トランプの世界戦略がマクマスターによって動かされている限りにおいては、米国がアサド政権に対するように北朝鮮への奇襲攻撃を軽々に断行するかについては疑問がある。なぜならマクマスターの戦略のプロとしての思慮分別が強く働くからだ。というのもソウルは北の報復砲撃によって火の海になるし、傲岸不遜にも金正恩は日本の米軍基地をミサイル攻撃の標的にすると公言している。


特に東京周辺の基地にサリンを積んだミサイルで攻撃をかけられれば、被害は甚大だ。日本国内でトランプに対する怨嗟の声が澎湃(ほうはい)と起こり、野党は鬼の首を取ったように矛先を安倍政権に向けるだろう。


ただまだ核ミサイルを保持していない現段階での北朝鮮攻撃は最後のチャンスとも言える。その場合も、北の反撃が出来ないように一挙に800カ所もの拠点を壊滅的に攻撃しない限り、日本がミサイル攻撃を受ける可能性がある。問題はそれを米国が出来るかどうかだ。


外交的にはカギを握る中国が、シリア攻撃を目の当たりにしてトランプに同調するかどうかだが、習近平はしたたかであろう。まるでキューバにソ連が核ミサイルを持ち込もうとした「キューバ危機」のような様相が北東アジアで展開されるかもしれない。その場合秋田での避難訓練が大都会でも行わなければならなくなる可能性がある。

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年03月24日

◆理事長の信憑性には疑問山積だ

杉浦 正章



破れかぶれの「抱き合い心中」を狙う
 

自民党は偽証罪で籠池を告発せよ
 

裁判で「やっていない」という主張に対して「やった」という事実の証明をすることを悪魔の証明という。結論は完全否定は不可能であるとされる。籠池泰典が首相・安倍晋三をはじめ夫人昭恵や大阪府知事松井一郎を指さして疑惑があるかのような発言を繰り返しているが、これも完全否定は出来ない。それではどうするかだが便法を講ずることは出来る。安倍は「私や妻、事務所も含め、小学校の認可や国有地払い下げには一切関わっていない。関わっていたら首相も国会議員も辞める」と発言したが、これがいわば準悪魔の証明であろう。


松井もそれしか手はないと見えて「学園の理事長と2人で会ったとか、森友を優遇せえ、という指示をしていたら、辞めます」とまねをした。まるで辞めるの「二重奏」となった。しかし、今回の場合は証言の信憑性を否定することは可能だ。
 

まず「妻を辞める」というわけにもいかない昭恵はどうするかだ。悪魔の証明は出来なくても、悪魔の証明に「肉薄」することは可能だ。それは籠池の「空想性虚言症的な側面」(自民党幹部)を状況証拠から立証すればよい。虚言症は自己顕示欲の強い人間がなりやすいが、国会における証人喚問ではその自己顕示欲の塊のような籠池の性格が明らかになった。
 

まずその最大のものは天皇陛下すら自らの利得に結びつけようとする性癖だ。森友学園のホームページで籠池は「天皇陛下が森友学園を訪問された」と書いている。書かせたのかもしれないが責任者だから書いていると言ってもおかしくない。これを参院で追及された籠池は「私は知りませんでした。恐縮です」と釈明した。理事長である自らの責任を問われ、「お越しになっていらっしゃらないものをお越しになっていらっしゃるというのは事実に沿いませんので、それについて記載されているのであれば申し訳ないことだと思っております」と平謝りに徹した。


ここから三段論法ができる。三段論法とは「植物は生物である」の大前提から「松は植物である」の小前提を導き「故に松は生物である」に達する論法だ。籠池は「天皇が来たと嘘をついた」から「籠池は嘘つきである」を導き「故に昭恵は嘘をつかれて関わっていない」に到達できるのだ。
 

さらに籠池が嘘つきであるということの悪魔の証明を加えれば、森友学園の3つの建設契約書に到達する。籠池は国に23億8千万、大阪府に7億5千万、大阪空航運営会社に15億5千万円の契約書を3つ作った。国に最も高いものを提出したのは、明らかに多額の補助金を得るためであり、大阪府をもっとも低くしたのは自らの財務状況で建築可能であるとみせかけるためのものだろう。


これは国に対する有印私文書偽造の疑いが生じいてくる。簡単に言えば、国や自治体に対する詐欺行為である。詐欺罪で刑事告発可能ではないか。松井は業務妨害の疑いで刑事告発することを検討している。察知した籠池は証人喚問で「刑事訴追を受ける可能性があるので控えさせてもらう」という答弁を連発して、逃げまくった。
 

さらに新しい小学校が愛知県の進学校「 海陽中等教育学校」に推薦枠を設けることで合意したという話である。愛知の進学校は全く関与していないと全面否定している。これらの3大虚言からみれば、昭恵をめぐっても虚言をねつ造したことは十分考えられる。資金繰りの窮状からの脱出を考えた籠池は昭恵の携帯に電話して留守電状態だったため伝言を残した。昭恵付きの事務官谷査恵子はファクスで「大変恐縮ながら現状では希望に添うことは出来ません」と回答している。


まさに官房長官・菅義偉が言う「ゼロ回答」であった。財務省に谷が問い合わせた上での対応であったといわれるが、民進党の枝野幸男が鬼の首を取ったかのような追及をしても、これ以上の問題には発展しまい。


そもそも野党は9億6000万の土地が森友に1億3000万で売却されたという「大幅値引き」を問題視しているが、8億3000万はゴミ処理費用であり価格は適正だ。同じように隣接している国有地が豊中市にたったの2000万円で売り渡されている。豊中市が14億円をゴミ処理にかけたからだ。
 

籠池がなぜ政府・与党を大向こうに回して破れかぶれの「抱き合い心中」のような動きに出た背景だが、どうも安倍の国会答弁がきっかけらしい。安倍は2月24日の国会答弁で、「安倍晋三記念小学校」の名称について「絶対にやめてもらいたいと再三申し上げている」ことを明らかにしながらも、籠池を「非常にしつこい」と批判したのだ。籠池は証人喚問でこの「しつこい」にこだわっていた。逆恨みのようである。


また昭恵から「口止めとも取れるメールが届きました。あんなに開校を楽しみにしてくれていた、どうしてなのか割り切れない」と、恨み節をたらたらと述べた。メールの真否についても官邸は公表の用意があるとしており、早期に公表して疑いを晴らすべきだ。
 

ことの核心は教育者の風上にも置けないような人間が、安倍の力をフルに活用してその野望を成し遂げようとしたおこがましさにある。最初は教育者であり保守的であることから夫人が心を許した側面がないわけではないが、その行動は図々しく、首相の力を借りれば法を無視できると考えたフシが濃厚だ。


これに気付いた安倍や夫人が籠池との関係を断ち切ろうとしたのは、自然であり、全く正しい。証人喚問のやりとりをつぶさに検証したが、籠池の憶測や見当外れの恨み節が目立つばかりで、ロッキード事件の証人喚問でにじみ出たような“異臭”などは全然感じられなかった。


新聞テレビは籠池を全面的に信用してあたかも疑惑の発覚であるかのような報道に徹しているが、センセーショナリズムを慎むべきだ。野党は被害者である昭恵を証人喚問に呼ぼうとしているが、もういいかげんにした方がよい。極東情勢が一朝有事になりかねない時期に、大阪くんだりの馬鹿馬鹿しい事件に国会が振り回されているときかと言いたい。事件は事件として処理すればよい。


自民党はさっさと偽証罪で告発すべきであり、捜査当局も疑惑の解明に着手せよ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)