2018年09月11日

◆党員・党友票でも安倍が優勢

杉浦 正章


石破「正直・公正」撤回でつまずく

次期首相を狙う以上、安倍政治の欠陥をつき、自らの主張を鮮明にすべき
だと思うが、石破の10日の発言からはそれがうかがえなかった。むしろ
主張があいまいで「挑戦の限界」すら感ずる立ち会い演説会であった。

肝腎の改憲論にしても自衛隊条項新設の姿勢を鮮明にさせた首相・安倍晋
三に対して、石破茂は参院選の合区解消など緊急性の薄い問題を取り上げ
9条問題の本質に迫ることを避けた。相次ぐ災害など緊急事態を前にし
て、挑戦者が首相交代という“政争” ばかりにうつつを抜かせない現状を
鮮明にさせた演説会であった。

首相の座に挑戦する政治姿勢について石破は「なにものも恐れずただ国民
のみを恐れて戦っていく」と意気込みを述べたが、当初の「正直・公正」
をキャッチコピーとして打ち出すことには陣営内で個人攻撃に対する異論
が生じ、結局採用を避けた。安倍のどこが不正直でどこが不公平なのかは
指摘しにくく、もともとこのコピーには無理があり、最初からつまずいた
形だ。

安倍の「現職がいるのに総裁選に出るというのは現職にやめろと言うのと
同じだ」という主張に対しても、石破からは明確な理由の説明がなかっ
た。石破の「政治の信頼を取り戻す」と言う発言からは、意気込みばかり
が先行して、具体策に欠ける姿勢が鮮明になるだけだった。

石破は記者会見で「安定した政権運営は特筆すべきだ」と安倍政権をたた
えたが、賞賛しながら立候補という矛盾は総裁選の歴史から見ても珍しい。

焦点の憲法改正について、安倍は「あと3年間でチャレンジしたい」と、
任期中の9条改正に意欲を表明。これに対し、石破は「丁寧に説明してい
かないといけない」と拙速な動きをけん制、首相との対立軸を明確にした。

改憲論議は、もともと安倍が昨年5月、9条1項(戦争放棄)、2項(戦
力不保持)の規定を維持して自衛隊を明記する案を提起したことから始
まっている。

石破は従来「9条改正が緊急性があるとは考えていない。9条改正は国民
の理解を得て行うべきであり、スケジュールありきで行うべきではない」
との立場である。

しかし、安倍は「いよいよ憲法改正に取り組むときがきた。自衛隊が憲法
違反ではないと言いきることができる憲法学者はわずか2割に過ぎない。
自衛隊員が誇りを持って任務をまっとうできる環境を作るのは政治家の使
命だ」と9条の改正に踏み込んでおり、石破の姿勢とは異なる。憲法改正
をめぐって、安倍が意欲を示す「自衛隊の明記」について、石破は、かね
てから「緊急性があるとは思わない」と指摘している。

石破は「憲法改正は必要なもの急ぐものから取り組むべきだ」として参院
選での合区の解消や、大規模災害など非常事態の際に政府に権限を集中さ
せ、国民の権利を制限する緊急事態条項などを「喫緊の課題」とした。石
破は従来から9条改正について「国民の理解を得て世に問うべきだ。理解
なき改正をスケジュールありきで行うべきではない」と、その緊急性を否
定している。しかし、9条改正は自民党の結党以来の党是であり、改憲す
る以上は9条に取り組むべきであろう。

石破が主張している「防災省」の設置についても、安倍は「防災省を作っ
ても、自衛隊や海上保安庁、厚生労働省を動かすには総理大臣が指示しな
ければならない。そこをどう考えるかだ」と指摘するとともに、「スピー
ディに政府を糾合できるのは首相だけだ」と屋上屋を重ねることに否定的
な考えを示した。

総裁選の進展状況は、まず国会議員票で安倍が石破を圧倒的にリードして
いる。選挙は議員票405票と地方票405票で争われる。安倍陣営には党内7
派閥中、安倍の出身である細田派など5派と竹下派の一部が参加。国会議
員405人の85%は安倍支持に回るとみられている。

一方、石破に接近しているのは参院竹下派。尾辻秀久元参院副議長が選対
本部長として旗振り役を演ずる。尾辻は「武士道を真ん中に据え、正々
堂々、真正面から戦おう」と宣言しているが、広がりが見られないようだ。

石破が唯一活路を見出そうとしている地方党員・党友票についても首相が
先行しているとみられている。6年前は石破を大きく下回ったが、今回は
完勝を目指して安倍は47都道府県のうち7割超の地方議員と面会するなど
先行している。

安倍選対の事務総長を務める元経済再生担当相甘利明は10日、党員・党
友票について「6年前に石破茂元幹事長が取った得票率は超えたい」と述
べ、55%以上の得票率を目指す考えを示している。安倍の圧勝は動かない
情勢だ。

2018年09月08日

◆トランプ暴露本の波紋広がる

杉浦 正章


マティス国防長官「トランプは、小学5,6年生」

ワシントンポストの著名記者ボブ・ウッドワードが、短気で予測不可能な
トランプを制御しようと苦闘する米政府高官の実態を暴露した。11日に出
版される「Fear(恐怖)」は、米政府高官らの生々しいトランプ批判を報
じている。ウオーターゲート事件以来の内部告発である。内容はトランプ
の愚かさを告発しているが、一種の“舌禍事件”であり、政権にとってはイ
メージダウンになっても致命傷にはなるまい。

ウッドワードは74歳になるが、ウオーターゲート事件でカール・バーンス
タイン記者と共に内部告発者“デイープスロート”から数々のスクープを掲
載、ニクソンを退陣に追い込んだ。筆者はワシントンポスト紙が販売にな
る午前零時過ぎにワシントンの街角で購入、両記者の署名入りの特ダネ記
事を度々転電したものだ。

「Fear(恐怖)」の抜粋を報じたウオールストリートジャーナル紙な ど
によると、トランプ側近らが、いかにトランプを軽蔑しているかが分か
る。抜粋はまずトランプが、今年1月の国家安全保障会議(NSC)で、
在韓米軍の常駐に関し「あの地域にどうして軍事資源を投入する必要があ
るのだ」と疑問を提起。

これに対してマティス国防長官は「我々は第3次 世界大戦を防ぐために
やっている」と米軍のプレゼンスの重要性を説いた が、トランプの退席
後、側近に「行動も理解力も、まるで小学5年生か6 年生だ」と漏らし
たという。

この席でトランプはあきれたことに「我々は 愚かなことをしなければ、
もっと金持ちになれる」など発言して、不満気 であったという。「金持
ち」になることが政権運営の尺度であるとは恐れ 入った。

 トランプはダンフォード統合作戦本部長に対して北朝鮮への先制攻撃計
画を策定するよう指示するという、驚くべき行動もとった。 政権発足当
時から問題になったロシア疑惑に関しても、マーラー特別検察官の事情聴
取を想定して弁護士と打ち合わせたが、事実認識が全くなく、作り上げで
お茶を濁そうとして、弁護士をあきれさせた。

こうしたトランプについて、「Fear(恐怖)」は、トランプの側近や閣
僚からも不満の声が漏れ聞こえるようになっているという。大統領首席補
佐官のジョン・ケリーまでがトランプを「ばか」「錯乱している」「かれ
に何かを理解させるのは無理」と述べたという。

これについてケリーは声 明で、自身がトランプ氏をばか呼ばわりしてい
たというのは事実ではない と打ち消した。「トランプ氏との関係は強固
で率直に何でも言い合える」 とも述べ、不和説の打ち消しに懸命になっ
ている。トランプも4日のツ イッターで「Fear(恐怖)の証言は嘘ばか
りで国民をだますものだ」と憤 りをあらわにした。

 この舌禍事件はトランプ政権の裏側を余すことなく伝えていて興味深い
が、その本質はニクソン政権が倒れたウオーターゲート事件とは天地の違
いがある。ウオーターゲート事件は1972年6月17日にワシントンD.C.の民
主党本部で起きた盗聴侵入事件に始まったアメリカの一大政治スキャンダ
ルである。

盗聴、侵入、司法妨害、証拠隠滅、特別検察官解任、大統領弾 劾発議、
大統領辞任と続いたが、盗聴、侵入は犯罪であり、今回の側近の 不平不
満とは性格を異にする。久しぶりに名前が登場したウッドワード も、老
記者の健在ぶりを示したが、本人が「この本で政権は終わる」と予 言す
るほど簡単には政権は倒れまい。ただ2か月後に控えた議会の中間選 挙
には民主党が下院で過半数を取る可能性が出てきており、そうなればト
ランプの政権運営は苦しくなる。

2018年08月27日

◆石破立候補は“消化試合”か

杉浦 正章


3年後には「岸田の壁」

「我が胸の燃ゆる思ひにくらぶれば煙はうすし桜島山」ー首相・安倍晋三
の桜島を背景にした出馬表明を聞いて、筑前(現在の福岡県)の勤王志
士・平野国臣が詠んだの短歌を思い起こした。

安倍が意図したかどうかは別として、薩長同盟が明治維新という歴史の舞
台を回転させたことを意識するかのように、激動期の難関に立ち向かう政
治姿勢を鮮明にさせたのだ。日々水銀柱の高止まりに連動するかのように
安倍批判を繰り返している石破茂に対して頂門の一針を打ち込んだ形でも
ある。今後9月20日の総裁選に向けてボルテージは高まる一方となった。
 
安倍の26日の演説は、総じて「格調」を重視したかのようであった。堰を
切ったように「まさに日本は大きな歴史の転換点を迎える。今こそ日本の
あすを切り開く時だ。平成のその先の時代に向けて、新たな国造りを進め
ていく。その先頭に立つ決意だ」と3選への決意を鮮明にさせた。その背
景には自民党国会議員の大勢と、地方票の多くが安倍に向かうとの自信が
あるようだ。

既に固まっている議員票は自派の細田派(94)を筆頭に麻生派(59)、岸
田派(48)二階派(44)衆院竹下派(34)をほぼ確保。さらに73人いる無
派閥へと浸食しつつある。

今回は議員票405票、地方票405票合計810票の争奪戦だ。前回12年の総裁
選では石破に地方票で大差を付けられたことから、安倍は夏休み返上で地
方行脚を続けている。しかし地方票が前回のような石破支持に回るかと言
えば、そうではあるまい。

地方票は議員票に連動する傾向が強いからだ。前回石破に地方票が流れた
のは安倍が首相になる前であったからだ。現職の総理総裁は、油断しなけ
れば地方票の出方を大きく左右させるだろう。総裁選後足を引っ張られな
いためにも最低でも半分以上は取る必要がある。

これに対して石破は自派20と反安倍に動く元参院議員会長・青木幹雄の支
援を得て参院竹下派の大勢の支持を得つつある。しかし、議員票は不満分
子を含めてもせいぜい50票弱を獲得するする方向にとどまるものとみられ
る。石破は愛知県での講演で「自由闊達(かったつ)に議論する自民党を
取り戻さなければいけない」と首相の党運営を批判した。

この石破の置かれた立場を分析すれば将来的な展望がなかなか開けないこ
とに尽きる。なぜならポスト安倍の本命は岸田と受け止めるのが党内常識
であるからだ。岸田が今回の総裁選に立候補しなかったのは3年待てば安
倍支持グループの支持を得られるという計算がある。

従って今後安倍が3年、岸田が2期6年やった場合、10年近く石破政権は
実現しないことになる。立ちはだかる「岸田の壁」は今後ことあるごとに
石破を悩ますだろう。石破派幹部は佐藤3選阻止に立候補した三木武夫
が、田中角栄の後政権についた例を指摘するが、田中の場合はロッキード
疑惑に巻き込まれて短期政権にとどまったのであり、慎重な岸田が高転び
に転ぶ可能性は少ない。


いずれにしても、今回の総裁選は野球で優勝チームが確定してから行う
“消化試合”のような色彩が濃厚である。なぜなら例えば石破が地方票の半
分を確保しても安倍が票の過801半数を確保する流れに変化は生じないか
らだ。石破が得をしていることと言えば、軽佻浮薄な民放テレビ番組が、
まともな対立候補として取り上げ、面白おかしくはやし立てることしかない。

世論調査で石破支持が安倍を上回るケースがある理由は、民放番組にあ
る。安倍陣営は気にする必要はない。石破はなんとかしてテレビ討論を実
現したいようだが、軽々に応ずる必要はない。石破を実体以上に大きく見
せてしまう。やるなら両者が日本記者クラブと会見して、それをテレビが
中継すれば良い。

2018年08月14日

◆首相、「改憲」軸に政局運営へ

杉浦 正章


求心力維持し、来年発議の構え

総裁3選後をにらんで、自民党総裁・安倍晋三が12日、憲法改正戦略を一
層鮮明にした。改憲案の「次の国会提出」を明言したのだ。安倍の5年半
を超えた政権では経済は長期にわたり景気を維持し、外交安保でも積極路
線で日本の存在感を高めており、大きな失政もない。

自民党内は3選で政権を継続させることに依存も少ない。9月の総裁選
は、石破茂が立候補しても安倍の圧勝となる方向は事実上確定しており、
求心力は「改憲」軸に維持されよう。

新聞や民放はただ一人の対立候補石破が安倍総裁との一騎打ちになるとは
やし立てるが、「一騎打ち」とは 敵味方ともに1騎ずつで勝負を争うこと
である。結果としてそうなったにしても彼我の力量の差は歴然としてお
り、アリが巨像に向かう事を一騎打ちとは言うまい。

なぜアリ対巨像かといえば、まず自民党内の議員勢力に雲泥の差がある。
安倍支持は自派の細田派(94人)を筆頭に、麻生派59人、岸田派48人、二
階派44人、石原派12人と圧倒している。

石破支持は同派の20人と参院竹下派の21人程度に過ぎない。前回安倍が大
敗した地方票も、安倍自身の地方行脚で基礎を固めており、支持も広がっ
ている。陳情一つとっても石破では話が通じないからだ。今回の総裁選
は、まるでプロスポーツの“消化試合”の様相だ。

長期政権はその求心力をいかに維持するかが最大の問題となる。7年半続
いた佐藤栄作政権は「沖縄返還なくして選後は終わらない」をキャッチフ
レーズに求心力を維持した。

安倍の叔父の佐藤栄作は72年5月の沖縄返還実現を見て、同年7月に退陣
している。安倍はここに来て自民党結党以来の悲願である憲法改正を推し
進める姿勢を鮮明にしている。

日の講演で「憲法改正は全ての自民党員の悲願であり、その責任を果たし
て行かなければならない。いつまでも議論だけを続けるわけにはいかな
い」と改憲発議への姿勢を明確に打ち出した。改正の焦点は「陸海空軍そ
の他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」という9
条2項だ。まぎれおなく羹(あつもの)に懲りた米占領軍の影響下にある
条項だが、独立国の常識としてまさに噴飯物の内容を構成しているといえる。
 自民党は今年の春に戦力不保持を定めた9条2項を維持した上で、「9
条の2」を新設して自衛隊を明記する案を固めた。これは安倍のかねてか
らの主張に沿ったものだ。安倍は2項を維持した上で、自衛隊の合憲を明
確にするとしている。

自衛隊を憲法に明記して古色蒼然たる違憲論争に終 止符を打とうとする
ものだ。国内の違憲論争に決着を付ける意味は大き く、世界の標準に合
致することになる。

これに対して石破は「2項を削除 して自衛隊の保持を明記し、『通常の
軍隊』と位置づける」としており、 首相と「維持と削除」で決定的な差
がある。石破の削除案には党内右派の 一定の支持はあるが、首相案の方
の支持が大勢の流れとなっている。加え て大規模災害時などに政府によ
る国民の生命・財産の保護義務を明確にす る緊急事態条項も創設される
方向だ。

自民党が総裁選での最大の焦点に改憲問題をテーマとするケースは珍し
い。これは自民、日本維新の会など改憲勢力が衆参両院で必要な3分の2
を占めていることが、現実味を帯びさせているのだろう。

安倍戦略は、9 月の総裁選を機に改憲への基盤を固め、秋以降の国会を
改憲にとって千載 一遇のチャンスと位置づけ、自民党の改憲案を提示
し、通常国会での発議 に持ち込む構えであろう。2020年の新憲法施行へ
とつなげたい 考えのようだ。

この結果、最大の政治課題は、既定路線の3選そのものにはなく、3選
後に何をやるかに焦点が移行しつつあり、改憲は佐藤が沖縄返還で最後ま
で求心力を維持したこととオーバーラップする。ただ、連立を組む公明党
は来年の参院選を控えて慎重論が強く、安倍の憲法改正発言に警戒を強め
ている。今後折に触れ、クギを刺したり、横やりを入れる動きを見せそう
だ。野党も立憲民主党や国民民主党を中心に警戒論が高まろうとしている。

2018年08月09日

◆竹下派、「自主投票」と言う名の「分裂投票」

杉浦 正章


竹下(亘)の力量不足が主因ー自民総裁選

名門竹下派の総裁選への対応が空中分解して、自民党総裁・安倍晋三の事
実上独走態勢が固まった。安倍は9月の総裁選挙で所属国会議員8割以上
の支持を受けて3選される流れとなっている。安倍3選は筆者がもともと
「決まり」と報じてきたが、ますます「決まり」となった。

国会議員の安倍支持勢力は細田派94人、麻生派59人、岸田派48人、二階派
44人、石原派12人の大勢となる見通しだ。405票ある国会議員票の8割近
くを安倍がまとめつつある。

一方竹下派の参院議員は大勢が元幹事長・石破茂を支持する方向だ。立候
補の意欲を見せる石破は、自派と参院の竹下派21人程度の支持で、せいぜ
い50票弱を獲得するする方向にとどまる。

石破の狙いは3年後の総裁選にあるが、安倍の圧勝は、立候補を見送り安
倍支持に回った前外相・岸田文男に勝てない流れを生じさせそうだ。岸田
が立候補する際には安倍派が岸田に雪崩を打つからだ。

竹下派の内部事情は衆参で月とすっぽんほど異なる。その原因は総務会
長・竹下亘の指導力欠如に如実に表れている。同派の衆院側は、経済再生
担当相・茂木敏充、厚生労働相・加藤勝信ら8割超が安倍支持へ動いている。

一方参院は元参院議員会長・青木幹雄が反安倍路線であり、政界引退後も
影響力を保持している。その理由は極めて個人的で、青木の長男一彦がは
2016年参院選から合区された「鳥取・島根」選挙区で、石破の手厚い
支援を受けていることだ。青木としては、石破の協力を得て、一彦の選挙
基盤を盤石にしたい思惑があるのだ。

竹下はこのほど同派衆参両院議員らから総裁選への対応を聴取したが、衆
院23人が安倍支持を表明、石破支持は竹下自身を含めて6人程度にとど
まっている。

参院側は21人の大半が石破支持であり、青木の影響を感じさせる。「鉄の
結束」を誇り、遠く佐藤栄作派に源流を置く竹下派も、近年では総裁選で
自派候補を出せないままとなっている。

異母兄に当たる故竹下登と亘の政治力の差が如実に出ているのだろう。竹
下は自分自身が石破支持のようであり、この方向で派内をまとめようとし
たが、安倍支持勢力の反発を食らい、力量の不足を見せつけた。8日の幹
部会でも竹下は一本化を試みたが、実現に至らなかった。結局竹下派は
「自主投票」という名の分裂投票に突入するしかない方向となって来た。

福田康夫の任期途中での総裁辞任に伴う2008年総裁選挙でも、派内の 支
持は3候補に分断されている。自民党内7派閥のうち態度を表明してい
なかった石原派12人は9日の幹部会合で安倍支持を打ち出す方向だ。


2018年08月02日

◆竹下派が“分裂総裁選”へ

                                  杉原 正章


“ラスプーチン”も暗躍

自らの将来を思うと暗然とした気分にならざるを得ないのが元幹事長・石
破茂だろう。依然として自民党総裁、すなわち首相への道は見えてこない
と言わざるを得ないからだ。ジタバタすればするほど、先が見えなくなる
のが石破の置かれた立場のように見える。

それにもかかわらず参院竹下派が、たった21人とはいえ石破支持に動くの
も解せない。どうも暑さで政治家も、意識が朦朧として判断力が鈍ってい
るかのようだ。

竹下派は保守本流を行く名門派閥だ。遠く吉田派に端を発し、佐藤→田中→
竹下→小渕→橋本→津島→額賀→竹下派と続いてきたが、常に時の政権の基盤
となる動きが目立ったものだ。

ところがここにきて9月の総裁選で参院側が各派のトップを切って総裁選
への態度を決定、石破を推す流れとなった。参院竹下派は31日、幹部8人
が会合、石破支持の方向を確認したのだ。「反旗」をかかげたが、一方
で、竹下派の衆院議員は、経済再生担当相茂木敏充らをはじめ首相支持派
が8割以上に上る見込み。同派は分裂投票となる。

派閥会長竹下亘は、板挟み状態となった。判断力が試されている。総裁選
の大勢は、事実上細田、麻生、岸田、二階の4派の支持を取り付けている
安倍の圧倒的優位は変わらない。

新聞はすぐにこうした動きを「森友・加計を抱える安倍への国民の不信
感」に結びつけたがるが、森友・加計は1年半たっても何も政権直撃の疑
惑など生ぜず、朝日と野党の結託が生じさせた虚構にすぎない。

加えてこの参院竹下派の動きの背景には政局と言えば顔を出す怪僧ラス
プーチンの暗躍がある。政界引退後も竹下派に影響を持つ元参院議員会
長・青木幹雄だ。

今回の青木の“仕掛け”は極めて個人的な原因に根ざしているようだ。鳥取
出身の石破が、前回の参院選における「鳥取・島根」合区選挙区で青木の
長男、一彦の再選に尽力したことへの“返礼” の意味があるといわれてい
るのだ。

引退後も“参院のドン” は健在ということになる。竹下派の参院議員らも
「石破を支持して安倍に圧力をかける」と威勢は良いが、この選択は得る
ものが少ないことを分かっていない。

というのも大きな政局の流れは安倍の3選が確実であり、安倍政権はあと
3年継続する。安倍の後は岸田が本命であり、岸田政権は6年は続くだろ
う。当然安倍の後を石破も目指そうとするだろうが、安倍支持グループの
大勢が石破を推すことはまずあり得ない。岸田を推す者が多いだろう。

そうなれば、石破派と支持グループは、かれこれ10年冷や飯を食らうこと
になりかねないのだ。10年の冷や飯ということは、政治家にとっては夢も
希望も失せるのであり、致命傷だ。従って石橋支持の選択肢はいずれ潰れ
るのが落ちだ。

青木も「真夏の夜の夢」を見るのは自由だが、議席を失ってまで政局に口
を出すのは「年寄りの冷や水」と心得た方がよい。

こうした中で幹事長二階俊博が31日、ソウルで「安倍総理への絶対的支
持を表明する。国民が真のリーダーシップを託せるのは安倍総理をおいて
他にない」と支持を表明。

衆参で総裁選対応が割れる可能性が出てきた竹下派についても、「私らの
グループはこっちが安倍さんを支持し、そっちが誰かを支持するとか、そ
んな器用なことはやらせたことはない。そんなのは派閥とは言えない」と
酷評した。確かに総裁の選択という重要局面で衆参の判断が異なるとは、
派閥の体をなしていない。名門竹下派も凋落したものだ。

こうした中で派閥間の動きも活発化しはじめており、31日夜には岸田、石
破、前経済再生相・石原伸晃、元防衛相・中谷元が会合。石破が岸田に
「私が立候補の際はよろしく」と支援を要請するなど、水銀柱の上昇と比
例するかのように生臭さが一段と強まってきた。


2018年07月25日

◆石破の仕掛けは“無理筋”だ

杉浦 正章


地方党員票でも“劣勢”の可能性

オリンピックの始祖クーベルタンではないが、元自民党幹事長石破茂も
「参加することに意義がある」のか。9月7日告示、20日投開票予定の総
裁選が岸田文雄の不出馬宣言で、自民党総裁・安倍晋三と石破の一騎打ち
となる。

一騎打ちと言っても、国会議員票はもちろん地方議員票も大勢は安倍支持
であり、石破が大逆転を起こす可能性はゼロだ。石破は次につなげる狙い
だが、次は安倍の支持を得るであろう岸田が圧倒的に有利であり、石破へ
の展望は開けない。要するに石破は“無理筋”の仕掛けをしようとしている
のだろう。一方、女だてらに出馬への意欲を見せる野田聖子は、推薦人も
ままならずもともと無理。

焦点は最近3回行われた安倍・岸田会談だ。特に23日夜のすぐにばれた
“極秘会談” が岸田不出馬の決め手となったのだろう。自民党内ではこの
場で3年後の禅譲を自民党総裁・安倍晋三がほのめかしたとの噂がある
が、疑わしい。

そもそも首相が禅譲を明言した例は過去にも少ない。よく知られている例
は1946年敗戦後の占領下で鳩山一郎から吉田茂の間で政権移譲の約束
が交わされた例がある。有名なのは福田赳夫と大平正芳による いわゆる
「大福密約」だ。

禅譲約束が少ないのは首相が禅譲をいったん表明してしまったら、政治は
次に向かって動き始めてしまうからだ。まだ3年も任期があるのに、安倍
が自らの手足を縛ることはあり得ない。

ただここで岸田が「出馬せず」を選択したことは、ポスト安倍の総裁候補
としての道を開いたことは確かだ。自民党内の大勢はそう見ている。出馬
すれば、安倍に敗退して「非主流派」への転落が不可避であり、選択はそれ
しかなかったにせよ、結果としては安倍に「恩を売る」ことになるからだ。

また岸田が地方選で石破に負けて、3位になる場合もあり得るし、これも
まずい選択だ。3位では将来への弾みになりにくいからだ。岸田派内では
不出馬について侃々諤々(かんかんがくがく)の賛否両論があったが、結
果的には派閥の結束を優先しつつ安倍支持しか方途はなかった。

岸田は次の総裁選で細田、麻生、二階3派の支持を得る戦略を選択したの
だろう。

自民党総裁選挙は新規定により国会議員票405票と党員票も同じ405票で争
われる。安倍支持は第1派閥の細田派(94人)、第2派閥の麻生派(59
人)、第4派閥の岸田派(48)、第5派閥の二階派(44人)が明確にしつ
つある。これに石原派や谷垣グループも大勢が支持して300票を超える圧
倒的な多数を形成しようとしている。態度表明が遅れている竹下派も、安
倍支持の幹部が多く大勢は安倍に回るだろう。
 
これに対して石破派は2015年に旗揚げしたときは、石破を含めて20人で
あったが、それ以来増えていないのである。立候補するには本人を除いて
20人の推薦人が必要だが、誰か派閥以外から引っ張り込まないと立候補
できない。今後石破は必死の勧誘をする方針だが、推薦人の数が確保出来
ても議員票で優位に立つ可能性はゼロだ。石破としては、負けを承知で
「3年後」につなげるための総裁選と位置づけざるを得ないのだ。
 焦点は地方票の動向に絞られる。来年は統一地方選挙と参院選が行われ
る年であり、地方党員にとっても、誰を選挙の顔の総裁にするかが重要と
なる。今回も地方票がどの程度石破に向かうかが興味深いところだ。

2012年の総裁選では石破が党員票165票を獲得して、87票の安倍 の心胆を
寒からしめた。安倍が議員票で押し返して総裁に選出された。 従って石
破は、夢よもう一度とばかりにこのところ地方行脚を活発化して いる。

目の付け所は悪くはないが、地方党員が前回のように石破を支持す るか
と言えば、ことはそう簡単ではない。地方党員は選挙を意識して、物 心
両面での支援を党執行部に求める傾向があるのだ。

安倍だけでなく、党 幹部や派閥首脳の応援が必要となるのであり、これ
は政権側が強い。石破 は一人で孤立気味だ。したがって、石破が地方票
に突破口を求めても、実 情はそう簡単ではない。石破は国会議員票でも
地方党員票でも劣勢を余儀 なくされているのだ。こうして由井正雪の変
ならぬ「石破の変」は、「安 倍幕藩体制」を揺るがすほどの事態に陥る
ことはあり得ず、安倍政権は9 月の自民党総裁選で3選すれば来年2月
に吉田茂、20年8月に佐藤栄作 をそれぞれ抜いて超長期政権となる流
れだ。


2018年07月18日

◆原発ゼロで結託、しらける自民内

杉浦 正章



真夏と言えば怪談話だが、最近永田町の柳の影から夜な夜な「政権交代だ
ぞ〜」という幽霊が現れるようだ。あの懐かしい仕掛け人二人だ。一人は
「変人」と呼ばれる元首相の小泉純一郎。他の一人はいまや「政権交代の
権化」ともいえる自由党代表小沢一郎だ。

この“小・小コンビ”は、全く波風が立たない政界に、これもとっくに忘れ
去られている「原発ゼロ」を合い言葉に政権交代を目指して結託してい
る。首相・安倍晋三の足をなんとしてでも引っ張りたい朝日はこの動きを
とらえてはやし立てるが、野党はおろかな低俗民放ですら無視。とても政
権揺さぶりの“うねり”など、生ずる気配もない。

 小沢、小泉の両人とも共通した特性がある。年を取っても若い頃が忘れ
られず「血が騒ぐ」のだ。政治家の発想の原点などは単純なもので、小泉
は安倍が、政治の師でもある自分の在任期間である1981日を5月に抜き、
9月の自民党総裁選で3選すれば来年2月に吉田茂、20年8月に佐藤栄作
をそれぞれ抜く超長期政権となる流れとなっているのが口惜しくてたまら
ないかのように見える。小沢は何が何でも政局化の人だ。

その小沢と小泉が“小・小コンビ”でくっついたのだから、政界は面白
い。小沢は16日、東京都内で開かれた自らが主宰する政治塾で講演し、
「野党が政権の受け皿を形成しなければ、いつまでも安倍政権、一強多弱
の状況が続く」と述べた。

さらに小沢は15日に政治塾で講師を務めた小泉と、同日夜に会食したこと
も紹介。小泉が「野党が一つになって『原発ゼロ』で勝負すれば必ず選挙
で勝てる」と発言し、小沢は「その通りだ」と応じたという“陰謀”を明ら
かにした。

反安倍の“野合”も勝手だが、安倍にはなかなか隙が見つからない。
2012年以降の安倍政権は、戦後日本政治史の中でも珍しい強靱(きょ
うじん)性」を発揮しており、小沢や小泉も突くに付けないのが実態なの
であろう。だから仏壇の奥からはたきをかけて原発ゼロなどと言うキャッ
チフレーズを持ち出さざるを得ないのだ。

しかし、いまやマスコミは原発ゼロなどには新鮮味を感じない。2011年の
福島原発の事故は、日本の科学技術力によって「沈静化」されたのであ
り、小沢や小泉が“血気”にはやっても、朝日以外のマスコミは乗らないのだ。

朝日は16日付けの記事で「小沢氏増す存在感」「3度目の政権交代へ最後
の挑戦」となりふり構わぬ“よいしょ”を小沢に送った。

「小沢氏が約50年に及ぶ政治家人生でめざした政治主導の一つの帰結
が、この政治状況だけに舌鋒(ぜっぽう)は鋭い」だそうだが、この政治
状況とは何か。政権が揺らいでほしいのは分かるが、意味不明の浅薄な表
現では読者は戸惑う。

さらに朝日は「参院選を1年後に控えて意識するのは、第1次安倍内閣の
退陣の引き金になった07年参院選だ。民主党を率いて年金記録問題などの
政権不祥事を追及し、民主単独で60議席を得た。

対する自民は37。衆参の多数派が異なるねじれ状態に持ち込み、政権交
代の素地をつくった」だそうだ。この表現の根幹にあるのは来年の参院選
への特異な期待であって、公正な選挙情勢や政治状況の分析ではない。

政権を野党やマスコミが突くには経済状況の悪化が一番だが、官房長官・
菅義偉がいみじくも「ようやくデフレでない状況まで日本の経済を築き上
げることができた」と発言しているとおり、今日本経済は戦後まれに見る
活況を呈しているのであり、経済状況につけいる隙はない。

小沢や小泉が“老人性血気”にはやっても、自民党内はよほどの偏屈しか付
いてゆかないのだ。自民党総裁に誰がふさわしいかという朝日の調査をみ
れば、国民の空気は一目瞭然だ。安倍が28%でトップ、石破23%、野田
7%、岸田5%だ。政界は寸前暗黒が常だが、それにだけこだわっては政
局を読むことはできない。



2018年07月13日

◆蓮舫も大災害予想の夜に「乾杯!」

杉浦 正章


参院立憲民主党幹事長蓮舫も朝日も自ら反省すべきではないか。蓮舫は問
題として安倍を批判するが、自分も5日夜に酒席のパーティーに出ていた
ではないか。朝日、蓮舫は気象庁により広範囲での豪雨が予想されたにも
かかわらず、首相・安倍晋三以下自民党幹部が酒席を共にしていたと非難
がましく取り上げているが、問題の5日夜の段階で西日本の災害を予測で
きた人間が1人でもいたかということだ。

これだけの被害が予想されていたら安倍が酒席に臨席した可能性はないの
だ。蓮舫も朝日も「人のふり見てわがふり直せ」と言いたい。ブーメラン
返しとはこのことだ。

朝日は他人を非難するなら、まず自らの判断力の欠如を反省すべきだ。6
日の朝刊紙面を見れば、大被害の予想など全く出ていなかった。同日の
トップの見出しは「東京医大理事長が不正合格決定」であり、わずかに社
会面で「列島各地に大雨のおそれ」とあるだけだ。

それにもかかわらず12日の朝刊では、自民党幹部らが5日の会合で笑っ
ている写真を掲載「自民懇親会、大雨予想の夜、西村氏、首相らと出席」
と報じた。朝日のこの報道がトリッキーなのは、自分の判断力の欠如を棚
に上げて、他人を追及する臆面のなさが露骨であることだ。

問題はその後の官邸の動きが適切であったかどうかだが、初動から対応は
ぴしゃりと決まっていた。

5日に関係省庁災害警戒会議、6日には官邸連絡室設置。官房長官・菅義
偉が会見で「早めの避難、安全確保」を呼び掛け。7日は首相が鹿児島訪
問を取りやめ、官邸で関係閣僚会議を開催。8日に非常災害対策本部を設
置。9日には11日からの首相による欧州・中東訪問中止を決定。11日に
首相が岡山県の被災地視察。非の打ち所のない対応をしている。自民党も
派閥研修会の先送りなど自粛ムードが高まっている。

 一方蓮舫は、またまたブーメラン返しを食らっている。自分の行動を棚
に上げて安倍以下の会合を「責任感が欠如しているとしか思えない」と
切って捨てたのだ。

しかし、自分が何をしていたかと言えば憲政記念館で開かれた手塚よしお
のパーティーに出席、なんと乾杯の音頭を取っていたのだ。蓮舫理論なら
ば大災害の夜に乾杯とは、不謹慎の極みではないか。自らが何をしていた
かは日程をみれば明らかになることであり、他人を批判する資格などな
い。かねてから思うのだが、これほど自らの行為を棚に上げてものを言う
女も珍しい。パーティーには枝野幸雄、長妻昭、辻元清美ら党幹部も出
席、杯を傾けて歓談したという。


2018年07月11日

◆安倍一強にないないづくしの候補ら

杉浦 正章

石破も打つ手なしのの苦衷

宮本武蔵の決闘伝説のようで、初めから勝負が分かっている果たし合いが
行われようとしている。9月の自民党総裁選である。どこか首相・安倍晋
三に隙がないかと鵜の目鷹の目で探してみるが、はっきり言って兎の毛で
突くほどの隙もない。

だからときの声を上げる元幹事長・石破茂や総務相・野田聖子も、横綱に
ふんどし担ぎが群がるような感じであり、岸田文雄に至っては土俵に上が
るのさえちゅうちょしている。

はっきりいって五十数年政局一筋で観察してきて、これほど簡単に見通せ
る総裁選も珍しい。だから面白くないが、筆者としては正直に書くしかない。

豪雨被害優先は当然で、政局は休戦の状態だが、反安倍に凝り固まったよ
うな民放テレビ出演などでホットなのは石破だ。8日のTBS「時事放談」
では、昔の親分の渡辺美智雄の言葉を引用して、出馬の弁をまくし立てた。

石破によれば渡辺は「政治とは勇気と真心を持って真実を語ること」と述
べていたそうで、石破はこれを踏襲するのだそうだ。踏襲すれば「国民に
分かったもらえる」のだそうだ。

この発言から分かることは石破は「国 民」に照準を合わせているので
あって、国会議員は二の次なのである。石 破戦略は、今後党員票獲得に
向けて発言を強め、その“効果”を背景に、国 会議員票を動かそうとして
いるかのようである。

石破のこの戦略は12年の自民党総裁選で石破が地方票で勝って、安倍 の
心胆を寒からしめたことが経験則として根強く存在する。しかし、12年の
総裁選は安倍が首相になる前であり、今回の総裁選で同様の地方票が 出
るかというと甘くない。首相になった安倍を地方組織といえども敵に回
せばどうなるかは自明の理であり、安倍側に油断のない限り、勝てっこな
い石破に投ずる地方票は激減することは確実だ。

それでは国会議員票はどうか。まず国会議員の心理を読めば、3選確実
の現職首相をさておいて、誰がみても敗北する石破に自らの“身命”をなげ
うって投票するケースが大量に生ずるだろうか。

石破支持は、今後3年間 の“冷や飯”につながりかねないのである。議員
は陳情などで選挙区とつな がっているのであり、陳情の効果がない議員
からは票が逃げるのが実情 だ。加えて、石破派なるものの実態がどうも
弱々しいのだ。

2015年に 旗揚げしたときは、石破を含めて20人であったが、それ以来増
えていな いのである。立候補するには本人を除いて20人の推薦人が必要
だが、誰 か派閥以外から引っ張り込まないと立候補できない。その注目
の「誰か」 のなまえがなかなか出てこないのである。

 自民党幹部は「石破さんのないないづくしはきりがない」と揶揄してい
るが、そのないないづくしとは「カネがない。面倒をみない。閣僚や党役
員のポストを取ってこない」のだそうだ。

石破のただ一つの期待は筆頭副 幹事長小泉進次郎の支持だ。小泉はこの
ところ反安倍色を強めており、そ の発言も民放テレビで頻繁に取り上げ
られている。新潟知事選で党本部が 応援を依頼しても、独自路線を行く
小泉は応じなかった。石破派は、この 小泉を抱き込んで気勢を上げたい
のだ。これを察知した安倍陣営は、官房 長官・菅義偉が小泉と会談、言
動に気をつけた方がよいと忠告している。

一方、野田聖子も口だけはやる気十分だが、立候補できるかどうかも危
うい。危ういと言うよりできない公算の方が強い。とても推薦人20人が
集まるような雰囲気ではないのだ。本人は「安倍さんとの約束は大臣の職
を務め上げることだ」と言うかと思えば「独自の政策を7月の終わりか8
月には発表する」と立候補に意欲を見せたり、大きくぶれている。どうも
器ではないような気がする。

岸田は主戦論者から「いつまでハムレットをやっているのか」とじれる
声が出始めているが、まだ悩んでいるようだ。岸田はかつて「熟柿が落ち
るのを待っていられるほど世の中は甘くはない。

ただ戦う以上は勝たねば ならない」と“名言”を述べている。その“ハム
レット路線”を打ち消すため に「派閥のメンバーの意見を聞かせてもらい
つつ最後は私が判断する」と 言明しているが、このような優柔不断の背
景には、安倍からの禅譲を期待 する心理状況が垣間見える。

所属する池田勇人以来の名門派閥宏池会は、 2000年の「加藤の乱」でみ
そを付けて分裂。以来首相を輩出すること なく、今日に至っている。た
だ3年後のポスト安倍を見渡したところ、 やっと“本命”の呼び声がかか
りそうな気配となって来ている。ここは安倍 に協力して立候補せず、次
を狙うのが常道であるかのように見える。 


2018年07月06日

◆ポンペオ訪朝で確認、仕切り直しか

杉浦 正章


どうもおかしいと思っていたら、米大統領トランプと北朝鮮労働党委員長
金正恩の米朝首脳会談での非核化合意は、危うい土台の上に築かれた砂上
の楼閣であった可能性が強まっている。米国内で北朝鮮の非核化の意思を
疑問視する報道が相次いでいるのだ。

トランプも気まずいのか、国務長官ポンペオを5日北朝鮮に派遣する。こ
の訪朝は一種の仕切り直し的な色彩を濃くしている。ポンペオは帰途日本
に立ち寄り首相・安倍晋三や外相河野太郎と会談し、日米韓外相会談も開
催する。

歴史的に米国は過去2人の大統領が、北朝鮮に非核化でだまされており、
6月の会談も、疑問視する見方が強かった。合意された包括的文書では、
トランプが北朝鮮に体制保証を約束する一方、金正恩は朝鮮半島の「完全
な非核化」にむけて、断固として取り組むことを確認している。今回はそ
の合意の土台が、早くもぐらつき始めているのである。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは2日の社説や記事で、米朝首脳
会談の本質を暴露して、警告している。同紙は米ワシントンのシンクタン
ク、スティムソン・センターの専門家の分析によると、寧辺核施設のプル
トニウム生産炉の冷却システムが改修されているという。

別の建物の屋根にある汚れは、遠心分離器を使って兵器級の濃縮ウランが
生産されていることをうかがわせるという。さらに咸興(ハムフン)市に
ある主要ミサイル製造拠点の大幅な拡張工事を完了させつつあることも分
かった。

新たな衛星写真で製造拠点を検証した専門家らが明らかにしたという。こ
の拠点では日本などアジア圏に展開する米軍に素早く核攻撃をしかけられ
る固形燃料型の弾道ミサイルが作られている。また米本土も射程圏内に入
る長距離ミサイルの弾頭向けに、再突入体も製造されているという。

北朝鮮はミサイル発射や核実験を中止したが、大量破壊兵器を造る能力は
維持しており、核開発プログラムを継続させていることが明白となったのだ。

こうした状況について当初「北朝鮮の脅威はもうない」と断言したトラン
プは、この発言を修正しはじめた。

トランプは議会に送った文書で「朝鮮半島での兵器に使用可能な核分裂物
質の拡散の現実とリスク、および北朝鮮政府の行動と方針は、米国の安全
保障、外交、経済に引き続き異常で並外れた脅威をもたらしている」とし
て、元大統領ジョージ・W・ブッシュが始めた経済制裁を延長すると宣言
したのだ。

これはトランプが北朝鮮の非核化の詳細は未定であり今後の交渉で決めな
ければならないという判断に戻ったことを意味する。国務長官ポンペオの
極東への派遣もその一環であろう。

米大統領報道官サンダースの発表に寄れば、ポンペオは5日に北朝鮮訪問
に出発する。平壌到着は6日の予定。ポンペオの訪朝は6月12日の米朝首
脳会談後初めてで、通算3回目となる。

ポンペオは過去2回と同様に金正恩と会談する見通し。首脳会談で合意さ
れた「完全な非核化」の具体的手順について詰めの協議をする。ポンペオ
はその後、7〜8日に初来日し金正恩との会談内容を日本政府に報告す
る。一方、韓国外務省は4日、外相康京和が8日に訪日すると発表した。

東京で開かれる日米韓、日韓、米韓の各外相会談に出席する予定だ。

 米国はできれば「完全な非核化」へのタイムスケジュールを確認したい
方針だが、金正恩がやすやすと応じるかどうかは、予断を許さない。

ポンペオも6月下旬に米メディアに工程表の作成は時期早々との判断を示
している。こうした情勢を反映して、国務省報道官ナウアートは3日「交
渉の予定表を作るつもりはない」と言明、具体的な期限にこだわらない方
針だ。

一方で、金正恩には常に中国国家主席習近平の影がつきまとっており、最
近3回の会談で、金正恩は習近平に“教育的指導”を受けている感じが濃厚だ。

中国にとって北の核保有は日米同盟や米韓同盟への牽制となる可能性があ
るからだ。朝鮮半島をめぐる極東情勢は依然として大国の利害や思惑が交
錯する場であり続けるのだ。

さっそく朝日新聞などは、政府が国内東西2個所に導入を進めている陸上
配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」のレーダー購入に反
対の社説を展開している。その理由として朝鮮半島情勢が緩和の流れに
入ったことを挙げているが、これはまさに国防の素人論議だ。国家の防衛
は普段から二重三重の体制を確立してこそ、仮想敵の戦意をなくすことが
可能なのである。

2018年06月28日

◆党首討論は存在意義を問われる、抜本改革を

杉浦 正章


枝野は「演説」する場面ではない

与野党党首が党首討論の歴史的使命が終わったと言うのだから、本当に終
わったに違いない。党首討論は英国の議会を参考にして自民党幹事長の小
沢一郎が主導、大局的見地から質疑をしようと2000年に始まったものだ。

しかし、最初から指摘されていたが討論時間が45分間と短く、ほとんどの
党首が自らの主張を繰り返すにとどまり、一問一答型の紳士的な質疑応答
によって、国政に新風を吹き込むという構想からは、ほど遠い形となって
しまった。各党の思惑が空回りするばかりで、存在意義が問われる事態だ。

そもそも党首討論のあり方を否定したのは立憲民主党・枝野幸男が最初
だ。前回5月の討論後、枝野は、首相の答弁が長いことを理由に「今の党
首討論はほとんど歴史的使命を終えた」と語った。

これを2日の討論で取り上げた首相・安倍晋三は「枝野さんの質問という
か演説で感じたが、前回党首討論が終わった後、枝野さんは『党首討論の
歴史的な使命は終わった』と言った。まさに今のやりとりを聞いて、本当
に歴史的な使命が終わってしまったなと思った」と述べた。

枝野は「安倍 政権の問題点を7つ列挙したい」として、短い15分の質問
の7分を使っ て森友・加計学園問題の問題点を延々と並べ、「演説」を
行った。これで は大所高所からの討論ではなく野党の演説会になってし
まうのだ。枝野が 党首討論をマスコミ受けに“活用”しようとしたのは言
うまでもない。

こうした討論のやり方には疑問がある。第一に挙げられるのは討論時間
の短さだ。首相の答弁を含めて45分間では、1日に7時間から8時間も
質疑を行う予算委員会の集中審議と比べても短かすぎる。

各党首の質問も数 問で終わってしまう。加えてイギリスの質疑は紳士的
な傾向が強いが、日 本の場合は政権を陥れるような質問が繰り返され
る。27日も共産党委員 長・志位和夫の暴言が目立った。

志位は「愛媛県と今治市で加計学園への 補助金は50億円から93億円に膨
れあがった。首相の『腹心の友』加計 孝太郎理事長が経営する学園が首
相の名をたびたび使い、巨額の税金をか すめ取っていたのではないか」
と発言した。

「かすめ取る」とは下卑極ま る表現だが、安倍は 「補助金は県と市が主
体的に判断することだ。私は あずかり知らない」と全面否定した。事程
左様に理性に欠ける質問に、応 答をするわけだから、とてもイギリス議
会を手本にした紳士的討論とはほ ど遠くなるのである。

枝野や志位に比べて国民民主党共同代表の大塚耕平 が、外国人労働者問
題を取り上げたのは建設的であった。外国人労働者の 受け入れ拡大は、
国の政策の大転換であり、安倍からも外国人労働者受け 入れに前向きな
答弁を引き出した。

だいたい自民党執行部の感覚も疑う。極東情勢を見れば北朝鮮をめぐっ
てトランプと金正恩の動きが活発化し、日本はまごまごすると潮流に乗り
遅れかねない側面がある。にもかかわらず野党の提案に乗って1年半も論
議して、何の疑惑も政権を直撃していないモリカケ問題を取り上げること
に応じてしまったのである。

ここは、大きく極東の安全保障の構図を変え かねない北朝鮮問題やトラ
ンプ外交への対応など、国家の命運に関わる外 交安保問題を取り上げる
べきであった。

党首討論も確かに現在のやり方では、予算委質疑へのプラスアルファ
的な側面ばかりが目立つ。質疑時間といい、内容といい、真に与野党が対
話を通じて国の政治を切磋琢磨する場に変貌させる必要があることは言う
までもない。たっぷり時間を取って首相が野党に質問しても良いではない
か。抜本的な党首討論改革に与野党とも取り組むべきだ。

2018年06月20日

◆自民総裁選は安倍独走の形勢

                             杉浦 正章


尖る石破・野田、岸田は禅譲狙いか

英語のdead angle を語源とする死角が自民党総裁選挙にあるだろうか。
まずない。首相・安倍晋三は圧倒的にリードしていて、死角を探してもない。

自民党内を見渡したところ虎視眈々とその安倍にチャレンジしようとして
いるのが元幹事長・石破茂だ。大勢は首相・安倍晋三3選支持の流れであ
り、石破は孤立気味だ。石破は昔、佐藤栄作の長期政権を阻止しようとし
た三木武夫を思い起こす。

「男は1回勝負する」とチャレンジしたが、敗北。その後ロッキード事件
が幸いして首相になったものの、党内の支持は得られず、すぐに潰れた。
しかし、立候補者がいないと自民党内は活気が出ない。石破に限らず、野
田聖子など例え売名でもオリンピック精神で出馬すればよい。

総裁候補としては事実上安倍が独走している。森友・加計問題はまるで朝
日と民放と野党の独壇場だったが、贈収賄疑惑があるわけでなし、予算委
の終了と共に影を潜めた。

攻め手がなく、今後も忘れた頃にぽっとか細く火が付く程度のものだろ
う。内閣支持率もモリカケがなくなって回復しはじめている。読売の調査
では45%で支持が不支持を逆転した。

朝日や産経、民放の支持率も同様の上昇ぶりを示している。長期政権は一
時的な高支持率より、30から40%を安定して維持することが大切だ。佐藤
内閣がそうであった。

これを反映して6月10日の新潟知事選では、事前の世論調査では、接戦と
の見方が多かったが、開票結果は花角英世54万6670票に対して池田千賀子
50万9568票と、3万7000票余りの差を付けた。与党系は「快勝」であり、
政局で安倍にプラスの結果となった。

こうした中で、総裁候補とされる面々は,動くに動けない情勢である。国
会会期は7月22日まで延長されるが、この間は表立った動きをすれば世論
の反発を受けるし、国会終了後総裁選まで2か月しかない。短期決戦を余
儀なくされるが、安倍の独走を阻止できる候補は存在しない。

政調会長・岸田文男も、早々に旗を巻きそうな気配だ。4月16日に安倍と
会談したのに続き、18日にも2時間半にわたって会食している。岸田は記
者団に「北朝鮮、終盤国会、(自民党)総裁選の話をした」と語ったが、
内容については「ノーコメント」とした。

岸田の狙いは秋の総裁選で奪い取るのではなく、安倍の3選を認めて3年
我慢をして禅譲を狙うところにあるのかもしれない。昔池田勇人にオリン
ピック花道論があった。池田は癌であることをひた隠しに隠して、任期を
残して退陣する演出を行った。

東京オリンピック閉会式翌日の10月25日に退陣を表明、自民党内での後継
総裁選びの調整を見守った上で11月9日の議員総会で佐藤栄作を後継総裁
として指名したのだ。佐藤は「待ちの佐藤」といわれたが、岸田も「待ち
の岸田」として、昔のインスタントラーメンではないが「3年待つのだ
ぞ」が、今考えられる最高の戦術だろう。

総裁選への流れは、安倍が楽勝のように見えるが、油断は出来ない。問題
は党員らの投票による地方票の動向も作用する。12年総裁選では、石破が
党員らの投票による地方票で安倍を上回っだのだ。

決選投票で議員票を固めた安倍に敗れたが、決選投票に地方票を加えた現
行制度なら、石破が当選していたといわれる。閣僚を離れた石破は、活発
に地方行脚を繰り返している。

しかし、石破にとっての致命傷は派閥の人数が少ない点だ。国会議員の人
望がないから数が集まらない。衆参合わせて20人で6番目では、なかなか
突破口を開くのは難しいだろう。安倍は5年の在任の結果、地方票がかな
り集まる状況にあり、油断しなければ、石破はそれほど獲得出来ないかも
知れない。

総務相野田聖子も、発言を先鋭化させている。15日に日本記者クラブで記
者会見し、選択的夫婦別姓の導入などを総裁選の主要政策に掲げる考えを
示した。安倍との対立軸を明確にする狙いがあるが、支持の広がりには全
く欠けているのが実情だ。空回りな発言も目立ち、20人の推薦人確保がで
きるかどうかも不透明だ。

安倍は意気軒昂だ。16日の読売テレビでは「まだまだやるべきことがたく
さんある。北朝鮮の問題、拉致問題、これはやはり私自身の責任で解決を
しなければならないという強い使命感も持っている」と政権維持に強い意
欲を表明している。そして最終決断の時期については味な発言をした。

「東京近辺のセミの声がうるさいと感じられるようになってきたら」だそ
うだ。もっとも、考えてみればこの発言は事実上の出馬表明にほかならない。