2015年11月06日

◆習近平の「台湾総統選干渉」は失敗に終わる

杉浦 正章



何をするか分からない馬英九の危うさ
 
このところ外交攻勢で乗りに乗っている中国国家主席・習近平が、こんどは66年ぶりという中国・台湾トップ会談を選択した。紛れもなく来年1月の台湾総統選挙を意識した露骨な選挙干渉である。民進党が現政権与党である国民党を20ポイントもリードしている現状の「逆転」をはかろうとしているのだ。

しかしおそらくこの試みは失敗に終わるだろう。場合によっては民進党の躍進につなげてしまうかも知れない。首相・安倍晋三はその民進党主席の蔡英文と先月“秘密会談”を行ったが、習近平はまるでこれに触発されたかのように、7日に国民党主席・馬英九と会談する。安倍は“先物買い”だが、習近平はあえて「落ちる間際のリンゴ」を食べて何をしようというのか。焦っているのだろうか。


訪米、訪英、独仏首脳との会談と習近平の外交がその成否は別としてめざましい。これは明らかに共産党内部や国内紛争対策が一段落して、国家主席としての地位も当面は安定、外交に乗り出す余裕が出来たことを意味する。外交重視の安倍にとっても対外プロパガンダで“強敵”が登場したことになる。

しかし、1月の総統選挙に向け苦戦し、来年5月には総統の座を降りるレームダック・馬英九との会談で習が一体何を目指すかである。まず一つは一か八かの選挙干渉で国民党候補を逆転勝利に導きたいのであろう。


先の抗日戦勝利70年式典の軍事パレードについて筆者は、日米と台湾総統選挙へのけん制があると指摘したが、そのけん制の効果は全く生じていない。民進党はかえって有利になった形だ。このため、馬英九との会談で親中路線を取る国民党敗北ムードにとどめを刺そうと、大きな賭に出たのが今回の会談である。

しかし過去の例を見れば選挙干渉が成功した例は08年に馬英九が当選した時くらいであろう。選挙に先立って中国は反国家分裂法を作成した。同法は台湾に関して「独立の動きがあれば武力攻撃も辞さない」という内容であり、かなりの“脅迫効果”があったとうけ止められている。


しかしその他の選挙干渉はすべてが裏目だ。初の直接選挙となった1996年の総統選では台湾海峡にミサイルを撃ち込み露骨な干渉に出たが、李登輝の票はかえって押し上げられた。2000年の総統選挙では中国首相・朱鎔基が台湾に対する脅迫発言をして返って逆効果となり、民進党・陳水扁の票を増やした。


今回の場合はなぜマイナスかと言えば、中台サービス貿易協定をめぐる学生の動きに象徴される世論の潮流を見れば分かる。14年3月にひまわり学生運動に賛同する学生と市民らが、立法院を占拠した動きだ。中台統一を嫌うが、台湾独立を掲げるまでに到らない潮流が、総統選挙を支配する方向となっているのだ。また若者らの嫌中感情は高まる一方だ。


習近平はこうした“風潮”があるにもかかわらず、なぜ馬英九と会うかだが、66年ぶりの会談への「自信過剰」があるのではないか。その過信が選挙逆転を可能とみるに至らしめているのだ。例え負けた場合でも、会談したという実績は誰がなろうとあるのであり、蔡英文もそのうちに尻尾を振って会いたがるとの読みがあるのだろう。


また習近平は馬英九との会談で“仕掛け”をする可能性がないとは言えない。元総統・李登輝は「馬英九は何をしでかすか分からない」と述べている。一部観測筋には習近平が和平協定を台湾との間で締結し、それに伴い台湾が「一つの中国」を認めてしまえば、後は誰がなろうと後戻りできなくできるから、それを狙っているとの見方がある。何を企むか分からない習近平と何をしでかすか分からない馬英九の会談は、いくら注目しても仕切れない「危うさ」が伴っているのである。
 

一方中国は蔡英文が訪日する前から怒りまくっている。外交部の報道官は「蔡英文の訪日に断固反対する。日本が一つの中国の原則を順守し、台湾独立を唱えるいかなる人物にも台湾言論に関するいかなる空間をも提供しないことを要求する」と噛みついた。


蔡英文が山口県を訪問したことについても「なぜ山口県を訪問しなければならないのか。そこで屈辱的な下関条約を結んだことを忘れたのか。山口県は安倍首相の出身地であり、安倍首相との関連を象徴している」と憤っている。


ところが蔡英文と安倍が極秘裏に会ったと報道されると、またまた、非難を繰り返した。習近平にも報告が届いていることは間違いあるまい。これが習近平の馬英九との会談に踏み切らせた理由の一つになっていることはまず間違いあるまい。


台湾のメディアは安倍が10月8日の正午過ぎから東急ホテルの橘の間で安倍と会食したと具体的に報道しており、会談は間違いないだろう。日本側は中国への配慮があるから公表しないが、台湾側は会談をリークさせて一定の効果を出す戦術だ。


米国は南沙諸島では中国と鋭く対決して、「習・馬会談」には歓迎の意向を表明、まるで左右の股にくっつく二股膏薬を張っているかのようである。しかし歓迎の姿勢は表向きだろう。中東対策や南沙諸島対策に追われ、それ以外の地域にエネルギーを注ぐ余裕は正直言ってないという事情がある。

しかし台湾がなし崩しに中国の実効支配下にのみ込まれることも戦略上適切ではない。馬英九が最後に“危ない置き土産”をするのではないかということへの警戒感があるのが本当のところだろう。

アメリカ政府の台湾での代表機関「アメリカ在台湾協会」の元代表・ダグラス・パールは「総統選にプラスになる可能性は小さい。マイナスの方が大きい」と読んでいる。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年11月05日

◆韓国限定版「女性基金」再構築がよい

杉浦 正章



対決よりも慰安婦に寄り添って“妥結”せよ


ギリシャの諺に「始めよければ半ば成功」(Well begun is half done)があるが、日韓首脳会談が、日本にとって良かったか悪かったかといえばよかった部類に属する。会談すること自体に意義があるからだ。


首相・安倍晋三は韓国大統領・朴槿恵の意固地なまでに固い殻をこじ開け、“追い込む”ことに成功した。しかし「半ば成功」は達したものの、問題は「後の半分」だ。慰安婦問題の「解決」は1965年の日韓請求権協定により「解決済み」であるから、


「妥結」という“新語”を合い言葉にしたのだが、これはどっちでも同じだ。煎じ詰めれば、慰安婦問題の妥結は早い話がカネだろう。韓国側のごり押しで中途半端に終わった「アジア女性基金」事業を日韓双方が受け入れられる形で再構築するしか手はないように見える。
 

蝋人形がようやく笑ったようで気味が悪いが、朴槿恵も相当大変だったのだろう。就任以来筆者が名付けた「告げ口」外交を展開、国際世論に訴えたが、しょせんは素人外交であった。主要各国はこれに乗らず、日本が戦後培った「信用」に破れたのだ。これを朴槿恵が愕然とするほど悟ったのは今年2月である。


米国務省次官・ウェンディ・シャーマンの発言が潮目を変えたのだ。シャーマンは「愛国的な感情が政治的に利用されている。政治家たちにとって、かつての敵をあしざまに言うことで、国民の歓心を買うことは簡単だが、そうした挑発は機能停止を招くだけだ」と発言、朴を戒めたのだ。


頼みの米国から突き放され、今度は最大の貿易相手国の中国主席・習近平だけが頼りの綱となったが、習は、対米分断が出来るからウエルカムであったものの、肝心の経済がバブルの崩壊でがたがたになってしまって韓国どころではなくなった。おまけに安倍が韓国無視で習との関係を構築し始め、まさに韓国は、政治経済両面で孤立化の危機に瀕したのだ。
 

韓国経済もウォン安で輸出が不振、当初は朴の「反日」路線を支持してきた財界からも対日関係是正の声があがり、朴の路線を支持した浅薄なるマスコミも、手のひら返しをし始めた。こうして大統領官邸・青瓦台あたりから、孤立化回避のための軌道修正の動きが出始めたのが4月頃からだ。


名付けて「2トラック」作戦。慰安婦問題と、外交・安保・通商を切り離すことにしたのだ。この基調路線が「安倍・朴会談」へとつながったのだ。会談はまず少人数で「慰安婦」を主議題に1時間、その後出席者を拡大して45分行われた。
 

その結果慰安婦問題は「早期妥結を目指して交渉を加速」で一致した。事務レベル協議の妥結の時期について朴は「年内」を主張、安倍はこれに応ぜず、「早期妥結」で一致した。出来てしまえば、こんなごく当たり前の意思確認がなぜできなかったのかと言うことになるが、一にかかって狭量なナショナリズムにこだわってきた朴に責任がある。

朴が急ぐのは来年4月に総選挙が予定されており、これへの影響を最大限抑えたいのだろう。しかし安倍だって夏に参院選挙を控えており、立場は同じだ。
 

安倍は「解決済みという日本の立場は変わらない。その中でどのような知恵があるのか。お互いの国民が完全に納得できることは難しいが、交渉を続けてゆく中から一致点を見出すことも出来る」と謎のような言葉を発している。少人数会談だけあって会談の中身はいまだに出てこないが、過去を分析し将来を予測すれば、人間のやることだから滲み出てくるものだ。


過去の政権が知恵を絞って出したのが「アジア女性基金」だ。一方で存命の元慰安婦は47人。筆者のない知恵とある知恵を絞れば2007年に中途半端のまま解散した「アジア女性基金」の韓国限定版の再構築がよいのではないか。基金の残額8000万にプラスアルファして「償い金」とする。これには韓国政府や民間企業も資金参加してもよい。


とりわけ韓国政府が金額の如何を問わず参加すれば、日本の世論への緩和剤として作用することは確実だ。要するに事の本質をを国家観の対立の焦点とせず、あくまで不幸な境遇にあった元慰安婦への「心の痛み」(安倍)と「思いやり」に置くべきであろう。既に民主党政権時代であるが、当時の首相・野田佳彦が「日本政府の資金を使った支援金」での打開を試みており、行き着くところは同じだろう。
 

これに先立つか並行して韓国政府がなすべき課題がある。それはこれまですべての問題の元凶であった、慰安婦支援団体の「韓国挺身隊問題対策協議会」を強権を持って解散させることである。


そもそも朝日の大誤報によって、「女子挺身隊」を慰安婦と間違えて名付けられた団体であり、日韓両政府の慰安婦問題解決に向けた歩み寄りをことごとく妨害してきた。


一市民団体が、慰安婦問題解決の「拒否権」を握っているのは、韓国政府自体にとって両刃の剣となっていることを心すべきである。加えて、あの忌まわしい銅像の早期撤去を推進すべきだ。日本にとっては全く痛痒の感じない慰安婦像だが、韓国にとって民族的偏狭性を世界に誇示している事に思いが到るべきだ。


ベトナムが多数の韓国兵によるレイプ、殺人問題で像を造ったとは聞かない。日本兵の買春とは比べものにならない残虐行為であった。朴訪米に会わせて行われた受難女性たちの抗議活動は、韓国の恥を世界にさらしたものであり、国家間においても「因果応報」はあることを思い知るべきだ。

       <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)


2015年10月30日

◆沖縄の「民意」に移設推進論が顕在化

杉浦 正章
 


国と翁長の対決は勝負がついた
 

政府は名護市辺野古の沿岸部で、普天間移設計画の中核となる埋め立て工事に着手した。これに対し、沖縄県知事・翁長雄志は強く反発、国と沖縄県の対立が深まるなかで工事が続くことになった。


露骨に翁長を応援する朝日新聞は「翁長知事長期選の構え」と期待するが、政府と翁長の対立は勝負がついた形となった。翁長は今後打つ手がほとんどなく、国の第三者委員会に審査を申し出るが「沖縄側に立つ判断は100%ない」(政府筋)と言う状況だ。

最終的には裁判に持ち込まれるが、これも翁長には勝ち目がないうえに、裁判中に滑走路は完成する。翁長はしきりに「沖縄の民意」と壊れたレコードのように繰り返す。「民意無視」「県民すべてが反対する移設」と言った具合だが、もとより民意は分裂しているのであって一枚岩ではない。


もちろんエキセントリックに反米、反基地、反安保の報道を繰り返す、沖縄タイムス、琉球新報の現地二紙が「民意」でもさらさらない。翁長が両紙と結託するかのようにあたかも全県民の意思であるがごとく表明し続けるのは、自治体の長としてあってはならぬバランス感覚の欠如である。真の「民意」を分析すれば、別の流れが見えてくる。
 

まず翁長が中国にすり寄り、沖縄を日本から分断させようとしている姿が浮かび上がってくる。なぜなら翁長は中国公船による尖閣諸島での領海侵犯には金輪際言及せず、まるで容認しているように見えるからだ。


自分の県内の出来事であるにもかかわらずである。前防衛相・小野寺五典は中国にすり寄る元首相・鳩山由紀夫を“国賊”と見事に形容したが、翁長の場合“売国”の表現が適切だ。なぜなら先に報じたように4月の訪中で李克強と会談した興奮もさめやらぬかのように沖縄独立論と受け取れる発言をしているからだ。


那覇空港で何と「沖縄は自立の道を歩む重要な局面だ」と言い放ったのだ。中国で翁長は「沖縄はかつて琉球王国として、中国をはじめ、アジアとの交流の中で栄えてきた歴史がある。」と胸を張った。李克強が喜んだのは言うまでもない。翁長をたらしこめば、日米同盟に決定的なくさびが打ち込めると思ったのであろう。


翁長は中国と那覇の定期航空便の設立を提案したが、李克強はすぐさまこれに応じて福建省と那覇の定期便を就航させている。公安によると観光客に紛れてスパイめいた人物がしょっちゅう行き来しているという。その中国と「民意」は仲良くなれと言っているのだろうか。


県が昨年末に実施した県民意識調査によると、中国に対する印象は「良くない」が92%を占め、本土の調査をはるかに上回っている。尖閣問題が翁長の無視とは異なり、大きく作用しているのであろう。
 

この「大分断」の動きに比べれば、政府が名護市の久志(くし)、辺野古、豊原の「久辺(くべ)3区」と呼ばれる地区に、総額3千万円の振興費を市長・稲嶺進の頭越しに交付したのは、翁長や稲嶺や朝日が目くじら立てて、分断という程のものではない。むしろ快挙である。3区は翁長の言う「民意」とは真逆で、移設推進論や承認論が圧倒的だ。


なぜならろくに産業もない地域であり、工事では労働力が提供できるうえに、周辺の商店は活況を呈することが予想されるからだ。基地から受ける利益で潤っている沖縄自治体も多数あり、その「民意」は独自に存在するのである。職業的な反基地デモとは一線を画しているのだ。


それにしても、官房長官・菅義偉の交付判断は「正当なる民意」を助長させる意味で、極めて適切であった。ましてや翁長の「売国的分断」に比べれば、分断というより「政府と真の民意の接合」とも言うべきであろう。


朝日は「税金の使い方として公平性、公正性を欠く」と指摘するが、翁長が県庁に「辺野古新基地問題対策課」を新設、莫大(ばくだい)な税金を使って、反基地闘争推進の砦としているのは、県民のすべての意に沿った血税の使い道であると言えるのか。翁長が使えば血税はすべてが公平なのか。朝日の論説ももっと周りを見渡してものを書けと言いたい。


さらに「民意」を体した自治体の長の動きもある。5月には沖縄県内11市のうち那覇市と名護市を除く9市長が「保守系市長の会」を結成、移設推進に動いている。こうした動きにもかかわらず、翁長は「県民の総意が移設反対」などと言えるのか。翁長が尖閣と同様に全く言及しないのが「普天間基地の危険性」である。


世界で一番危険な基地の放置こそ、行政が最初に取り組まなければならない問題であるのにそっちのけだ。それとも隣接する小学校に米軍機が墜落して、児童の犠牲の上に反基地闘争が盛り上がるのを待っているのだろうか。沖縄の民意は「一刻も早い普天間移設」にあるのは間違いない。
 

総じてこうした翁長の言動の論理矛盾は、反安保、反米、反自民党政権の極左イデオロギーに立脚しており、それを露骨に表明せず、辺野古移設反対を主張するところから生じているのだ。たかだか知事選で有権者109万人のうち36万票、33%を獲得しただけで「民意」などとはおこがましいのだ。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年10月29日

◆日中韓首脳会談の地歩は安倍が確保

杉浦 正章



経済重視だが焦点は政治の駆け引き
 

韓国大統領・朴槿恵は日中韓3か国首脳会談を1日に開催して、国民向けに“指導力”をアピールして落ち目の支持率の回復を図る。


その一方で慰安婦で成果を得られない首相・安倍晋三との会談は翌日に回して、昼食もせずにそそくさと済ませる方針だという。女の淺知恵とはよく言ったもので、この日程を見る限り全く大局観のない大統領であることが分かる。


読売は「冷たい首脳会談になる」との見方を紹介したが、言い得て妙である。安倍はもとより慰安婦問題などでの謝罪要求に応じる必要などはない。日本国民は「慰安婦にうんざり」が世論調査で80%に達し、米政府も「うんざり一色」だ。慰安婦偏執大統領のペースにはまることもない。


3年半ぶりの3国首脳会談は、(1)米イージス艦の南沙進入初戦での中国の敗北(2)中韓抜きでのTPP(環太平洋経済連携協定)妥結(3)中韓経済の失速と対照的に好調なアベノミクスーなどで安倍は中韓に対して外交・経済で有利な地歩を確保している。会談をリードするのは安倍だろう。
 

11月は日中韓首脳会談に続いて15,16日はG20、18,19日はAPEC首脳会議、21,22日はASEAN首脳会議と重要外交日程がひしめく。安倍は米国とともにこれらの会談をリード出来る立場にあり、中国とこれに追随する韓国は、どちらかと言えば孤立化させられる潮流がある。その手始めが日中韓首脳会談となる位置づけだろう。


3国首脳会談は官房長官・菅義偉が強調するように経済問題が主議題となるだろう。緊迫する極東情勢を、大きく緊張緩和へと導くには経済、環境、医療、文化などで協力関係の突破口を築くのが最良の道だ。とりわけ中国首相・李克強は経済通であり、安倍とは話が合うだろう。


折から中国はバブルの紛れもない崩潰で経済が失速、日米主導によるTPPの成立で、戦略的にも経済的にも封じ込められたという焦燥感がある。その裏返しが、習近平のボーイング300機購入、英国に7兆円の巨額契約など、臆面もない札束外交であろう。成金のように札束を見せて中国経済の躍進ぶりを誇示するのだが、「払えるのか」とボーイング株は下落、英国世論も「金で節操を売った」と政府に批判的だ。
 

こうした中で中国は本音ベースではTPPに加盟したいのだろう。安倍はリップサービスでもいいから、「中国もTPPに入ったら」と言えばよい。だが、実現はなかなか容易ではない。


日米は対中戦略として交渉を妥結へと導いた側面があり、とりわけ米国はハードルを上げるだろう。米国は中国が入りたいのなら自由主義経済のルールを守れというだろうし、TPP自体がそのルールの上になり立っているのであって、株価を操作し、国費を使って特定企業の輸出を支援するような国ではそもそもの加盟条件が満たされない。


安倍は朴槿恵も「TPPに入りなさいよ」と対中経済一辺倒の朴をけしかけることも出来る。安倍は日本がバブルから脱した経験を李克強に語ることが出来るし、環境対策で青い空と、鮎の住む河川を回復したノウハウを伝えることも出来る。
 

こうしてまず極東緊張緩和への突破口としての日中韓首脳会談だが、どうしても政治が大きな陰を落とすことは避けられまい。とりわけ米艦の南沙進入問題の初戦は、習近平の面目を丸つぶれにした上に、追尾するだけで手も足も出ない中国の完敗に終わった。


この事実は、尖閣諸島への“ちょっかい”が最近鎮まってきたことと合わせれば、なりふり構わぬ中国の膨張主義がいよいよ限界に到達した事を意味するだろう。首相補佐官・柴山昌彦はテレビで安倍が南沙問題で発言する方向にあることを明らかにした。これによると安倍は「力による現状変更は国際社会共通の懸念事項である」と中国の自制を求めるという。


朴はどっちつかずの「コウモリ路線」だが、オバマから首脳会談後の記者会見ではっきりと物を言うようにたしなめられており、右往左往するしかあるまい。
 

問題は慰安婦問題での「中韓共闘」にどう対処するかだが、李克強は朴ほど歴史認識にこだわることはなく、朴につきあう程度だろうとみられる。その落差を突くのがうまいやり方ではないか。例えば中国の歴史認識問題には言及しても、朴の慰安婦言及は無視するといった具合だ。


朴は朴でこれまで慰安婦問題を日韓首脳会談の前提としてきたにもかかわらず、オバマにきつく言われて渋々会談するだけに、一言言わないで済ませる気持ちはないだろう。安倍は基本的には「解決済み」の門前払いを食らわせばいい。せいぜい譲歩してもこれまでの言っているお詫びに言及した「河野談話の継承」くらいだろう。


韓国政府は「昼食会も行わない」と世論向けに強い姿勢を見せているが、この国はいつも民族的な偏狭さを感じさせる。もっともちまちました韓国料理など食わしてもらう必要も無い。日本で会談を行うときは、度量を見せてやればよい。

朴は外向きは「会ってやる」の姿勢だが、安倍にしてみれば、朴が慰安婦を前提にしない会談に追い込んだことになり、持久戦に勝った意味がある。朴は台所で手ぬぐいくわえて「悔しい−!」と金切り声を上げても遅いのだ。こうして構図の上では2対1の会談だが、環境は安倍が有利な地歩を占めることになった。 

     <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)

2015年10月28日

◆米南沙強硬策テコに中国包囲網強化を

杉浦 正章


「管理された緊張状態」の長期化に備えよ


 産経のようにはやばやと「日米で共同パトロール」だとか、安保法制適用だとか馬鹿丸出しの軍艦マーチを鳴らしてはいけない。米艦による中国の人工島の12カイリ内航行が意味するものは、まだまだけん制の段階であり米中両国とも「管理された緊張状態」を続ける魂胆とみなければなるまい。


そしてこの状態は長期に継続する。おそらく事前にすべての情報を得ていたであろう首相・安倍晋三は、支持を表明したものの日本の軍事的対応には踏み込んでいない。官房長官・菅義偉も共同パトロールなどを否定している。政府が当面取るべき対応は米国の強硬策を奇貨として、外交的な対中包囲網強化に動くべきだ。


11月にはG20の首脳会議やアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が立て続けにある。これを好機ととらえ、14年5月に安倍がアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)で「日本は,ASEAN各国の,海や,空の安全を保ち,航行の自由,飛行の自由をよく保全しようとする努力に対し,支援を惜しまない」と発言、万雷の拍手で歓迎されたように、外交的に中国の孤立化に追い込むべきだ。
 

22日の原稿「米艦船の中国人口島沖派遣が秒読み段階に」で書いたように、20日の米国家安全保障会議(NSC)のアジア上級部長・クリテンブリンクと首相補佐官・河井克行の会談で米側は詳細に「航行の自由作戦」の内容を伝えてきたに違いない。


安倍や菅の談話を見ても、事前に周到な準備があったことが明白だ。安倍は作戦を「国際法にのっとった行動であると理解している。南シナ海における大規模な埋め立てと拠点構築は現状を変更して緊張を高める一方的な行動であり国際社会共通の懸念である。我が国は開かれた平和な海を守る為に同盟国である米国を始め国際社会と連携してゆく」と支持を表明した。
 

米国がこの時期を選んだのは時期的に中国包囲網を結成する絶好のチャンスであるからだ。また政権揺さぶりのチャンスでもある。おそらく米国はそれも狙ったのであろう。


折から中国は共産党の重要会議第18期中央委員会第5回総会(5中総会)が開かれている。26日から29日までの会議は、外部には漏れにくいがこれまでも共産党の改革派と保守派が真っ向から論争を展開しており、国家主席・習近平の面目丸つぶれの米国による「領海侵犯」が論争の対象になる可能性が高い。


反習近平派にとってはもってこいの揺さぶり材料になる。「ボーイングの旅客機300機購入する返礼がこれか」といううことになるのだ。
 

オバマは明らかに、米中首脳会談が南沙問題をめぐって決裂した結果を受けて、作戦を決断したに違いない。会談後の記者会見では「米軍は国際法が許す場所であればどこでも行く」と海軍による南沙諸島航行を明言。


これに対して習近平は「南シナ海の島々は古来中国の領土」と譲らなかった。習の対応を見て迷えるオバマは、ようやく国防総省が主張してきたとおり作戦を実行せざるを得ないと思ったのだろう。任期切れまで1年あまりとなったオバマにしてみれば、いったん強攻策に踏み込んだ以上任期中は後には引かないし、引くに引けないことを意識したに違いあるまい。


明らかに中国側には誤算があった。オバマはまさか軍事行動には出ないだろうと思っていたのである。中国側の当面の対応も抑制的であり、イージス艦の通過を追尾しながらも黙認するという“屈辱的”な対応しか出来なかった。


人民日報系の環球時報は、15日の社説では「中国は海空軍の準備を整え、米軍の挑発の程度に応じて必ず報復する」「中国の核心的利益である地域に米軍が入った場合は、人民解放軍が必ず出撃する」と勇ましかったが、結果は“遠吠え”であったことが分かる。
 

習近平も就任当初は、とかく“独走”しがちな軍部に抑制的に動くことが出来なかったが、最近では力を付けて、コントロールが利くようになってきたと思う。習近平にとってみれば米国と一戦を交えれば完敗するのであり、完敗すれば自らの地位が危うくなる。終いには共産党政権自体が揺さぶられることにもなりかねない。
これはどうしても避けたいのである。


一方、オバマの唱えるリバランス(アジア回帰の再均衡)は、中国の南沙進出で口で唱えるだけでなく、実際の行動を求められる段階へと移行した。しかし、米国にとっても大きな貿易相手国である中国との経済関係を毀損(きそん)することは避けなければならない。米国の抱えるジレンマは、自ずと軍事行動に抑制的に働くのである。
 

こうして両国とも、直接的な武力衝突には慎重なのである。しかし、いったん踏み込んだ以上、米国は南シナ海における軍事的プレゼンスを後退させるわけには行くまい。したがって南シナ海は中東や、ウクライナ同様に一触即発の状態が継続するだろう。


イージス艦1隻程度の侵入で済ましているうちはよいが、長期的かつ全面的な対峙に発展すれば、当然米国は日本やオーストラリアなど同盟国との連携に動く。日本としても南シナ海はシーレーンの急所であり、死活的に重要なポイントである。


“長期戦”で息切れした米国が日本に協力を求めることはあり得ることだ。日本もかつてインド洋で給油活動をしたように、将来的には何らかの後方支援と連携が必要となるに違いない。


さらに安倍が表明しているようにフィリピンやベトナムへの巡視船の提供など、関係国支援も急がなければなるまい。米軍との共同パトロールはまず隣接国のベトナム、フィリピンに委ね、そのための船舶を提供すれば十分だ。日本は東シナ海のパトロールも重要であり、南シナ海まで常時カバーする余裕はあるまい。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家) 

2015年10月27日

◆小沢が打倒安倍で悪魔の盟約に暗躍

杉浦 正章



共産党票を狙って最後の仕掛け
 

生活の党となんとかの共同代表・小沢一郎の“生き強さ”にはほとほとあきれる。非自民・非共産で細川護煕政権を造ったのは記憶に新しいが、今度はその「非共産」であるはずの共産党までたらしこんで、非自民・非公明の「国民連合政府」の構想を打ち出させ、暗躍している。


この結果民主党は左右の対立が激化する様相を示し、右派の元外相・松本剛明が27日離党する。民主党代表・岡田克也は小沢に追い込まれた形だ。その策略の基本はすべてが選挙優先の数合わせだ。さすがの細川も「自民党を引きずり下ろすためには悪魔とでも手を結ぶ」と述べたものの共産党だけは敬遠した。


ところが、小沢はなりふり構わず最後に残った「悪魔」である共産党と手を結ぼうとしている。小沢最後の仕掛けが「打倒安倍政権」での「悪魔の盟約」である。


その手始めがさきの岩手県知事選だ。8月20日告示されたものの、現職の達増拓也以外に立候補の届け出がなく、無投票で3選を決め、一強自民党を屈辱の「不戦敗」に追い込んだ。これには6月17日の小沢と共産党委員長・志位和夫の選挙協力での合意がプラスに作用している。


以後小沢と志位の会談は6〜7回行われている。共産党は宮城県議選でも躍進しており、党勢拡大の流れが止まらない。小沢が目を付けたのはこの集票能力だ。小沢は安保法制の反対デモでも志位にすり寄って手をつないでバンザイをしているが、利用できるものはなりふり構わず利用する精神構造にある。そこには恥も外聞もなく「力」の根源を味方につけようとする「政治屋」の面目躍如が感じられる。


共産党はもともと小沢は不倶戴天の敵であった。例えば「しんぶん赤旗」は保守の堕落の象徴として小沢を攻撃してきた。


2010年4月28日の赤旗社説は、検察審査会の「小沢氏起訴相当」との議決に「政治的道義的責任は、もはや逃れることはできません」と批判している。


ところが最近は、安保法制反対の国会前のデモで小沢が演説すると、「大きな拍手が起きた」と報ずるという変わり方だ。この変容ぶりの背景は、どこにあるかだが、間違いなく志位が選挙での躍進に有頂天となっている姿が浮かぶ。


共産党も「小沢小悪魔」の誘惑に応じて、「政局」への参画を目指し始めたのだ。もっとも共産党にしてみれば真面目な党員は志位の小沢大接近に不満を内在させているといわれ、党内で何が起きるか分からない問題を抱えている。
 

小沢が狙うのは言うまでもなく共産党の集票能力だ。2012年の衆院選は小選挙区470万票、比例区370万票であったものが、2014年には小選挙区700万票、比例区600万票と大幅に拡大しているのだ。1選挙区当たり平均2万4000票の集票能力は、創価学会の集票能力に迫るものまで成長したのである。


小沢にしてみればこの票がかつて自分が目もくれなかった革命政党の票であろうが何であろうが、数さえあればよいのである。これは、ケ小平の現実主義政治信条「白猫黒猫論」とそっくりである。「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕る猫が良い猫である」というわけだ。
 

共産党の集票力を分析すると、来年夏の参院選に選挙協力が実現すれば、新たに1人区となる選挙区を含め、七つの1人区で野党候補が自民を逆転することが分かった。この共産党の「毒まんじゅう」が民主党代表・岡田克也にとっては垂ぜんの的であることはいうまでもない。


しかし焦点の安保法について岡田は「部分修正」であるのに対し、共産党は「安保関連法廃止」の一点で暫定連立政権の樹立を目指しており、大きな食い違いがある。ここに岡田のジレンマが発生する。節操もなく「共産党票」に尻尾を振るか、民主党の政治路線を堅持するかである。まさに岡田と志位は同床異夢の関係にあるのだ。


折から安保法制ではなりを潜めてきた右派が、強く反発し始めた。元防衛副大臣・長島昭久はブログで、岡田・志位の大接近を「いつからこんな民主党に成り下がった」と批判した。松本の離党の最大の理由も岡田の共産党への接近にあるといわれる。
 

冒頭述べたように小沢の投げた球は民主党を共産党に結びつける意図に加えて、民主党内への揺さぶりも狙ったものである。


こうした動きに対して政府・与党は公明党がいきり立っている。票田が重なるうえに共産主義は基本的には宗教を否定しており、創価学会とは相いれない。政調会長・石田祝稔は25日のNHKで「50年も60年も自衛隊は違憲だとか安保廃棄だと言ってきたのにそれを脇に置いて選挙で一緒にやろうとするのはおかしい」と噛みついた。


これに対して書記局長・山下芳生は「公明党は平和の党の看板を戦争の党と書き直せ」とあおることしきりだ。官房長官・菅義偉が「選挙目当て」と“野合批判”すれば、志位が「これを『選挙目当て』としか批判できないの?政府の知的貧困は深刻です」と反論すると言った具合でボルテージは上がる一方だ。


もっともかつて1970年代に共産党が躍進し、自民党副総裁・川島正次郎が「70年代は自共対決の時代になる」と予言したことが、かえって共産党の存在を際立たせる効果を生じたことがある。


政府・与党の対決姿勢はほどほどにした方がよい。黙っていて来年の参院選で野党共闘が進みそうなら、安倍にはダブル選挙で共闘をくしゃくしゃにして連合政府構想をぶち壊してしまう手がある。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年10月23日

◆政府・与党は臨時国会より党首討論を

杉浦 正章

 

野党は「世界の安保ツアー」で常識を磨け
 

こともあろうに産経までが社説で臨時国会問題について「『召集の必要性は感じない』と口にする政権の鈍感さにはあきれる。」と浅薄な論調を展開しているが、政府・与党は野党の自己顕示のための臨時国会など招集する必要は無い。


秋に長期の臨時国会を召集したら、政府・与党は一年中国会にかかりっきりになり、内政・外交上の重要課題処理に支障を来す。なぜなら通常国会を戦後最大の95日間も延長し、これが事実上臨時国会の代わりになっているからだ。


3か月の臨時国会といえば、最長の部類に属する。政府は閉会中だからと言って休暇に入るわけではない。野党も遊んでいないで安保法制で示した狭い了見を改めるため外遊して、国際常識を身につけるべきであろう。ただ与党が検討している予算委の閉会中審査に加えて、多忙な政務の時間を割いて首相・安倍晋三が党首討論に応じてはどうか。
 

いくらひまだからと言って真面目に勉強している真面目な生徒を、野党は脇からいじめて勉強の邪魔をするいたずら小僧であってはなるまい。真面目な生徒は外遊日程や予算日程などが立て込んでいる。


首相・安倍晋三は現在訪問中のモンゴルに加えて月内はほぼ中央アジアにいる。11月は1日に日中韓首脳会談であり、15日から21日まではG20の首脳会議やAPECの首脳会議が立て込んでいる。12月に入れば待ったなしの予算編成だ。


民主党は昨年秋に、松島みどりや小渕優子の不祥事を鬼の首を取ったかのように取り上げて追及、辞任に追い込んだが、結局両議員とも不起訴に終わっている。大臣の首を取ることが仕事であっては、民主党はじめ野党の支持率が全く上がらず低迷するのも無理もないではないか。


今回も3閣僚の不祥事追及を最大の眼目として臨時国会召集を主張するが、その内容はゴミネタもいいところだ。週刊誌如きの報道でいちいち大臣更迭に持ち込んでも、絶対に支持率が上がることはないのだ。単に国政の邪魔をしているだけということになる。


そもそも民主党政権の体たらくを考えてみるがよい。2011年9月に招集した臨時国会は、たったの4日間。解散国会を除けば講和条約会議に出席する吉田茂が、報告のため3日間招集したのに次ぐ短さだ。


それも短い理由は首相・野田佳彦の外国人献金疑惑が浮かんだからに他ならない。その後野党の要求に応じて延長しているが、自分のしたことを棚に上げて、伴食閣僚のゴミみたいな話を取り上げて、安倍の緊迫する国際情勢への取り組みを邪魔していいのか。


だいいち先に通常国会を延長議したから気にくわないと国会を止めたのは野党ではないか。言っていることと、することが違いすぎるのだ。
 

政府・与党も朝日が唱え、野党がおうむ返しで追随するように「安保隠し」や「3閣僚隠し」などというケチなことで、国会開催を拒否しているわけではあるまい。安保は紛れもなく圧勝して、国民の内閣支持率は上昇している。もう済んだ話である。3閣僚も国外に逃亡をはかるわけではない。


質問するなら週刊誌如きの報道を根拠に行わず、自らの調査にもとずいて通常国会で質問しても遅くはないのだ。首を取れれば参院選が近いから有利になることが分からんとは、野党でなくてキツネ憑き「野狐(やこ)」や野狸(のだぬき)の類いかと思いたくなる。
 

政府・与党は臨時国会を召集すれば、吉田や民主がしたようにごくごく短期のものをやれないわけではない。しかし名目と形式だけの臨時国会を招集して何になるのか。それよりも暇を見て実質的な審議に応ずれば十分だ。


既に決めている11月10日と11日の両院の予算委員会集中審議に加えて、TPP(環太平洋経済連携協定)関係で農林水産委員会と経済産業委員会の合同審査をやれば、実質的に論点を浮かび上がらすことが出来るではないか。これに加えて筆者は党首討論をやればよいと思う。


通常党首討論は国会開会中に行われるが、国会が解散されれば選挙中でも行われる。形式は国会でやろうが、マスコミ主催でやろうがどちらでもいい。時間も45分などと短いものではなく、野党もすべて参加できるものにすればよい。2〜3時間じっくり討論して問題点を浮き彫りにしてはどうか。政権が多忙なことを理解して野党もごり押しばかりせず、自ら勉強する期間とすべきではないか。


安保法制で見せた偏狭な世界観を改めるため「世界の常識ツワー」でも企画して外遊してはいかがかな。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年10月22日

◆米艦船の中国人口島沖派遣が秒読みに

杉浦 正章



南シナ海「一触即発」の状況
 

中国が埋め立てを進めている南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島への米艦船を派遣する「航行の自由作戦」が、秒読み段階に入った。中国の主張する「領海」12カイリ以内に米国は艦船と航空機を送り込み、軍事行動で「航行の自由」を確保する動きに出る。


米国の方針内定は今年6月だが、この間オーストラリア、フィリピン、ベトナムなど周辺諸国は一致して米国支持に固まった。中国側がどう出るかが注目される。米中とも軍事的衝突は避けるものとみられるが、62年のキューバ危機で米ソが対決して以来の海洋における大国対決の構図が鮮明となることは間違いない。
 

なぜ米国が突然独自の軍事行動を起こさず、リークにリークを重ねて来たかと言えば、周辺国への配慮と軍事行動の国際的基盤固めがある。今回の軍事行動について米国は、戦略的な位置づけを第1に考え、それには周辺国の同調が不可欠と判断したのだ。


リークの中でもとりわけ注目されたのは「2週間以内に踏み切る可能性がある」と報じた8日の英紙フィナンシャル・タイムズだ。米高官のリークによるものだが、2週間を経た現在いみじくも中国国家主席・習近平が訪英で大歓迎を受けている。


英紙へのリークは同盟国英国の中国資金欲しさの大接近をけん制したものでもあったことが分かる。これによって周辺諸国の動きが一段と早まった。


米国の事前リーク作戦は、関係諸国の態勢固めへの布石でもあった。リークと直接的情報提供工作により米国は「航行の自由作戦」への布石を着々と打った。


まず豪州とは米ボストンで、12、13両日、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開催。4閣僚は共同声明を発表し、南シナ海・南沙諸島で岩礁埋め立てや建設工事などを進める中国に対し「強い懸念」を表明した。


一方直接埋め立ての影響を受けているフィリピン、ベトナムへの工作も欠かさず進めた。この結果、ベトナムのファム・ビン・ミン副首相兼外相とフィリピンのデルロサリオ外相は21日にハノイで会談、南シナ海における航行の自由の保障が重要と確認するとともに、両国関係を「戦略的パートナー」へ格上げすることで合意した。
 

韓国に対してもオバマが16日の朴槿恵との会談後の記者会見で「中国が国際法や規範に従わない場合、韓国が反対の立場を示すよう期待する」と中韓接近を厳しくけん制。これを反映してか 韓国外務省報道官は20日「航行・上空飛行の自由を保障し、紛争につながりかねない行為を自制する必要がある」と、初めて対中批判と受け取れる発言をした。


日本に対しては動きが目立っていないが、ここに来て米国家安全保障会議(NSC)のアジア上級部長・クリテンブリンクが20日 、首相補佐官・河井克行とワシントンで会談、米国の作戦について伝えた。内容は発表されていないが、ことは秒読み段階であり、詳細にわたる作戦規模と期日などを伝達したことは間違いあるまい。


同盟国や周辺国への事前根回しで、米国は南シナ海で期せずして対中包囲網の結成に成功したことになる。これを背景に軍事的行動に出る態勢が固まった。


読売によると米軍の作戦は人工島の12カイリ内で、〈1〉艦船による航行〈2〉艦船による調査・訓練〈3〉潜水艦による潜行航行〈4〉軍用機による上空通過―などが検討されているようだ。


問題はこれに対して中国がどう出るかだが、艦船による追尾、進路妨害、強制排除などが考えられるという。しかし中国側でいきり立っているのは人民日報系の「環球時報」のみで、15日の社説では「中国は海空軍の準備を整え、米軍の挑発の程度に応じて必ず報復する」「中国の核心的利益である地域に米軍が入った場合は、人民解放軍が必ず出撃する」と勇ましい。


確かに軍部が独走すればそうなる可能性はあるが、果たして習近平が“踏み切るか”と言えば、話は別だろう。共産党中央軍事委員会副主席・范長竜は北京での安全保障フォーラムで17日「軽々に武力に訴えることは決してしない」と沈静化に努めている。
 

武力衝突は避けるものとみられるが、最低限追尾くらいはするだろう。双方とも自制を働かせるとみられるが、米国防総省はぎりぎりの範囲で示威行動を展開し、「中国の敗北」を際だたせるものとみられる。


したがって南シナ海が一触即発的な状況になることは避けられまい。これを機に中国がスプラトリー環礁の軍事要塞化を断念することはまずないものとみられるが、一方で米軍の示威行動も常態化する可能性がある。まさに米中冷戦時代を象徴することになる。当然米国は、日本の海上自衛隊の参加を要請してくる可能性がある。

          <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年10月21日

◆維新の抗争は両方が敗北の構図

杉浦 正章



橋下の遠隔操縦が破たんの主因
 

今や憎悪の鬼と化した橋下徹と松野頼久が、山口組もびっくりポンの抗争にうつつを抜かしている。何も生じない不毛の抗争である。その結果出てくるものは「希望」ではなく国民の「落胆」だけだ。


維新の四分五裂は実に面白いが、結果は両方が負けるのだ。大阪市長・橋下が目指す新党「おおさか維新の会」が、かつての「第三極ブーム」のように、世間にもてはやされることはもはやない。


民主党に後ろ足で泥をかけて離党した維新の党代表・松野頼久には「出戻り」しか道がない。2012年の総選挙では54議席を獲得して国政第3党に躍進した日本維新の会は、結局は海千山千の政治家に食い散らされてまさに断末魔の状態にある。


自民党を割った新自由クラブが既成政党に食いちぎられたように、2大政党の谷間に生まれた政党は、一時のブームだけが頼りでありブームが過ぎれば、しょせんは紙くずのように捨てられる運命にある。


維新の最大の欠陥は、橋下が大阪からの遠隔操縦で国政を牛耳れると判断したことにあるのだろう。石原慎太郎の人生最後の火遊びに利用されて分裂したかと思えば、今度はみんなの党を除籍された江田憲司が代表となった結いの党との合流で、いいように庇(ひさし)を貸して母屋を取られた。


すべてが目の届かない遠隔操縦に起因すると言ってよい。そしてついには2度目の分裂の憂き目を見ることになった。何のことはない。慎太郎も江田や松野も、ブームを利用するだけ利用しただけのことだ。


橋下は19日のツイッターで「維新の党は日本の国にとって百害あって一利なしです。これから潰しにかかります。これは政党交付金を少しでも国民の皆様にお返しするためです」と書いた。


仮にもかつて自らが指揮して有権者の選挙を経た議員らの政党を「百害あって一利なし」とこき下ろし、国民に政党交付金を返すと言うが、まるで「金返しやいいんだろう」と言うように聞こえる。国民にしてみれば「返してくれなくていいからまともな政治をして欲しい」というところだろう。


橋下は「党を作った者の責任として、維新の党を解散させる」と解党を宣言した。これに対して松野は「維新の党の財産が国庫に返納されるかのようなイメージを与えているが、実際に今解党したらマイナスしかない。国民に耳障りの良いようなイメージを与えている」と反論した。


返そうにも赤字で返せないということだが、貯金通帳と印鑑は橋下サイドが握っているのだから、返そうと思ったら返せる。今年の第3回分政党交付金約6億6000万円が維新の口座に振り込まれたばかりである。松野は「解散することは全くない」と反論するが、24日の臨時党大会に向けて主導権は橋下が握っており、阻止できるかどうかは疑問だ。


大阪派は議員の数は少なくても、党員数においては橋下が絶対的に有利だから、党大会では何でも決められる。では解党してどうなるかだが、幹事長・松井一郎(大阪府知事)は今後について「党を解散して、新しく出直そうということだ」と述べている。


つまり党大会での解散は「おおさか維新の会」結成のためであり、同時に松野らの「維新の会」をつぶす意図があるのだ。まさに今週末には食うか食われるかの段階に移行することになる。


しかし「本家」の象徴である通帳と代表印は、大阪が抑えており、これを守る議員まで常駐させている。松野は幹事長代行・松木謙公を大阪に派遣して印鑑と通帳の奪還作戦で本部に殴り込みをかけたが、新党組の衆院議員・井上英孝と浦野靖に追い払われてあっけない敗北をきっしている。


反大阪組の舌戦は激しさを増し、松野側の政調会長・柿沢未途は19日のツイッターで橋下を「通帳と印鑑をガメて大阪本部に立て籠もる「守銭奴」ぶりが報じられてしまったので、口とは裏腹の実態がバレて焦りがあるんだろうが、あなたはもう党員ですらないし、勝手に届出したら犯罪行為を構成しますよ」と書いた。橋下を守銭奴と呼び捨て、脅迫しているのだ。


しかしどちらかというと大阪組の反撃の方が激しく、松野組はたじたじとなっている感じだ。橋下が弁護士であることも、けんかを有利にしている。問題は仲裁に入る「留め男」が全くいないことであり、事態は泥沼化の様相だ。場合によっては政党内部の抗争が、訴訟による裁判沙汰になる可能性すら出てきている。


冒頭述べたが、このけんかは激しくなればなるほど両方が負ける運命にある。国民は、第三極の雄であった維新が、その理想とはほど遠い国政そっちのけの内紛を目の辺りにし続けるのだ。もともと第三極などは「風」が左右するものであるが、その末期症状は村会議員でもやらない醜悪さだ。


したがって党名を平仮名にしようが、ブームは生じない。橋下が国政選挙に出れば、少しは話題を呼ぶかも知れないが、これも限度があるだろう。「昔の名前で出ています」の印象が濃厚だからだ。むしろ当選したら手勢を率いて自民党に合流した方が結局は為になる。


民主党は松野ら出戻りを引き入れても、駄目と駄目の合併は駄目の二乗になるだけだ。いずれにしても勝つのは漁夫の利を占める自民党だけだろう。首相・安倍晋三はついている。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年10月20日

◆中国のGDP“粉飾”の背景を探る

杉浦 正章



「米中逆転」も夢のまた夢
 

何事にもアバウトな「慢慢的」(マンマンデー)の国民性がよく出ているのが中国の国内総生産(GDP)の6.9%だ。産経によると7〜9月期のGDPは「国家ぐるみの“粉飾決算”」なのだそうだが、当たらずとも遠からじだろう。


リーマンショックが起きようがGDPは大幅成長を達成。上海株が大暴落しようが中国だけは日本もうらやむ6.9%成長などということがあり得るだろうか。欧米の専門家の分析だと実態はもっと悪化しているという見方が強い。マイナス成長説すらある。


なぜわかり切った“粉飾”を重ねるのだろうか。これは共産党1党独裁政治がもたらす中国の社会構造に起因していると言わざるを得まい。おりから来週には共産党第5回全体会議(5中全会)があり、習近平体制は「経済に関する5カ年計画」で景気回復への強いメッセージを出さなければならないのだ。その基礎になるGDPは何が何でも高くなくてはならないのだ。
 

6.9%というのは実に微妙な数字だ。国家統計局が「成長率は6.9%に下がったが、7%前後と見なしてよい」とマンマンデーなのは、政府の成長目標である7%は、党大会の論議の基礎となるがゆえに、必須項目であるからだ。なぜかと言えば実態を発表したら、政権そのものの信頼性が揺らぐのであり、ボーイング300機注文で胸を張った習近平の“意図”が虚勢を張ったものであることが分かってしまうからだ。


日本など世界の専門家の予測は6.8%だが、これを上回るが7%には達さないという数字であり、そこに“意図”を感ずるのだ。中国では監査機関がないからGDPの真偽などは分からないし、これを詮索するような者がいればあっという間に逮捕監禁だから、そんなバカはいない。


もともと世界の専門家の予測6.8%も指標に基づいて計算したものではない。おそらく中国当局の発表はこの程度を出してくるという推定なのであって、意味のあるものではない。


まず第一に怪しいのはGDPの発表が早すぎることだ。


日本が3か月後、米国でも2か月後なのに、広大な領土と14億の人口の国が何で毎回半月で四半期ごとの数字を集計できるかだ。それも速報値ではなく確定値である。そこには詳細な計算の上にGDPを積み上げるのではなく、地方も中央も鉛筆なめなめエイヤッと決めてしまうマンマンデーがあるのだろう。


とりわけ地方官僚は常に「良好な経済状況」を反映した数字を出さなければ、成績が悪いと中央からにらまれる恐れがある。立身出世への妨げになるという社会構造なのだ。


もっと怪しいのは貿易統計が反映されていないことだ。貿易統計こそは、中国で信頼できる唯一の指標だ。相手国があるためごまかせないからだ。


8月の輸出は前年同月比5.5%減。輸入は13.8%減だ。輸出の減少はともかくとして輸入が10か月連続で大幅に減少したのは紛れもなく購買力の落ち込みを物語るものであり、これだけ落ち込んでGDPがプラスというケースは世界の主要国において前例がない。


例えばリーマンショックで輸入が激減した日本のGDPはマイナス5%だったが、中国も同じように輸入が減って経済成長率はプラス9%だった。そこに“粉飾”を感じない企業経営者が日本にいるとすれば、社長失格だ。


李克強指数というものがある。首相・李克強が「わたしは3つの数字しか信用しない」として電力消費量、鉄道貨物取扱い量、銀行融資を挙げた。これはあまりに数字がずさんであるという世界各国からの批判に答えたものであるが、その3つの数字が“粉飾”であったら、李克強の発言はフェークであったことになる。


現実に専門家の間にはその指摘がある。3つともGDPと同じで悪名高き国家統計局の数字であるからだ。いまや欧米では李克強指数といえば、間違っていることの象徴となっている。


他国の独自調査は妨害されないケースもある。ロンドンの調査社によると実態は14年が3.2%、15年が2.8%で来年の予測は1.0%だという。ロイターの調査でも「実際は3〜5%成長」という結果もある。日本の財界人も実態は4%程度とみるケースが多い。


GDPの実態が過去も含めて政府発表の半分であるということが何を物語るかと言えば、世界第2の経済大国に“躍進”したことへの信ぴょう性である。「GDP1000兆円」自体が揺らぐことになるのだ。経済評論家の中には習近平の任期である2023年までに、米国とのGDPが逆転するという見方があるが、バブル崩壊と経済失速は中国経済がこれまでのような成長をたどることが極めて困難であることを物語る。


日本のバブルの際と同じように、一進一退を繰り返しながら深い停滞期へと落ち込んでいくのだ。


したがって米中の逆転などはまずあり得ない。習近平は景気の原則を認め「新常態」と称する構造改革の定着を目指すが、実際には「新異常事態」によるチャイナリスクの現状をどう克服するかの難題を突き付けられている。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)


2015年10月16日

◆ユネスコ拠出金停止は中韓を喜ばせる

杉浦 正章
 


「大幅削減」で「政治利用」を阻止せよ
 

「またも負けたか八連隊、それでは勲章九連隊(くれんたい)」だ。非常任理事国になったというのに、日本の国連外交の失態が続く。


朝鮮人労働者の徴用問題も巧みな韓国外交に翻弄されて、譲歩を余儀なくされた。その無念さも消えないうちに今度は中国が世界記憶遺産に申請した「南京大虐殺の文書」がユネスコの記憶遺産に認められ、中韓両国が仕掛ける「歴史戦」に連敗した。


外相・岸田文男は面目丸つぶれだが、どうも「岸田外交」は人柄と同様で甘いような気がする。文部科学相・馳浩が11月上旬にパリで開かれるユネスコ総会に出席し、記憶遺産制度の改善を求める方向だが、外務省は総力を挙げてバックアップすべきであろう。


首相・安倍晋三が「日本として組織的な活動をしなかったのは反省材料だ。しっかりした検証が必要だ」と述べているのは、情報収集と対応で後れを取った外務省への戒めでもある。いきり立った自民党はユネスコへの拠出金を停止しろと息巻くが愚かだ。


産経新聞なども「分担金を一切拒否せよ。そうすれば理念的にも資金的にもユネスコの死を意味する」とけしかける。しかしバカが戦車で走ってはいけない。そんなことでユネスコは死なない。けんかをやるなら勝たなければならないのだ。


まず分担金を日本がゼロにしたらどうなるかだ。ユネスコ憲章で規定している分担金の項目は「加盟国は、その国の未払分担金の総額が、当該年度及びその直前の暦年度についてその国が支払うべき分担金の総額をこえるときは、総会で投票権を有しない」とある。


平たく言えば2年間分担金を支払わなければ総会での投票権を失うのだ。これはユネスコにおける重要議決マターに日本が参加できないことを意味する。


加えて日本が分担金支払いを停止すれば喜ぶのは中韓両国だ。喜々として自らの分担金を増額して、日本の穴を埋めるだろう。その結果中韓の国際的な評価を高め、以後歴史戦はユネスコを舞台に中韓の独壇場となる。


安倍は「今回なぜ、こういった事態になったのかをしっかり検証し、2年後に備えていくべきだ」と発言している。「2年後」とは、中国が今回提出して認められなかった慰安婦問題で次回決定の2年後に再申請する可能性があるし、韓国も慰安婦証言の2年後の登録を目指し、準備を進めていることを指す。


安倍は2年後には勝たなければならないと号令をかけているのであり、そのためには自らの手足を縛るような分担金停止などはすべきではない。


官房副長官になった首相の腹心萩生田光一が14日、テレビで「日本はユネスコの最大の財政負担国として、運営にイニシアチブを取れるはずだ」と述べているが、何も「最大の負担国」にこだわる必要は無い。最大の負担国でも外交がこの体たらくではイニシアチブが取れないから問題なのだ。


それよりも官房長官・菅義偉が分担金の「支払い停止か削減を検討する」と述べているうちの「削減」が最も検討に値するだろう。14年の日本の分担金は約37億円(11%)で、米国が支払い停止中のため最大となっている。これを大幅に削減すれば、ただでさえ財政逼迫のユネスコの首を絞め続けることが出来る。


中国にすり寄り、国連の次期事務総長を狙うユネスコ事務局長・イリナ・ボコバにアッパーカットを食らわし、反省を促す事が可能だ。もちろんユネスコを“経営難”に陥らせたボコバの責任が問われ、事務総長就任の野望はついえ去る。削減ならば日本の発言権は阻害されない。


とにかく支払い停止で日本の力がゼロになれば、米国もいないユネスコは中国に支配されて、ますますその「政治利用」は活発になるだけだ。それに日本の風潮として「国連理想主義」が横溢しているが、これは学校教育のなせる業でもある。


国連ほど政治・外交の陰謀が渦巻く組織はない。ユネスコ憲章前文は「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」と理想を高く掲げているが、2国間で激しい論争がある問題で片方の主張に組みするのは、国連機関としての機能を自ら損なうものであることをボコバに知らしめなければなるまい。


ボコバのやり口は「人の心に戦争を生んでしまう」のである。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年10月15日

◆「一億総活躍」が石破への重圧に

杉浦 正章



中途半端な“苦悩の人”の突破口見えず
 

首相・安倍晋三の打ち出した一億総活躍社会についてまさに群盲が象を撫でている。その先頭に立って撫でまくっているのが地方創生相・石破茂だ。「最近になって突如として登場した概念なので国民には何のことかという戸惑いが全くないとは思わない」と持ち前の回りくどい言い方で「分からない」と言っている。


石破が相談を受けた形跡はないから「分からない」のももっともだ。石破の発言はどちらかと言えば批判に傾斜しているのだが、それもどぎつくは打ち出せない。要するに中途半端の極みが石破の立場なのである。


筆者に言わせれば一億総活躍は戦争中の「進め一億火の玉だ」とは全く違うが、国民を鼓舞する意味では類似性がある。


デフレ脱却目前というのに、まだデフレマインドが残っている経営者を鼓舞して投資を促し、無尽蔵とも言える労働力である女性や高齢者を鼓舞してこれに働く場を提供する。要するに久しぶりに政権が打ち出した国民に自信を回復させる政策に他ならない。
 

久しぶりというのは池田勇人が60年安保闘争で荒廃した国民の目を、一挙に「10年間の所得倍増」で転換させたのと政治的にはそっくりだからだ。池田は高度成長を活用したが、首相・安倍晋三は残念ながらその環境にはない。


しかし一億総活躍が少子化、高齢化社会を目前にして、この流れに打ち勝ち、国民に自信を回復させる効果を狙ったことは間違いない。


これが全く分かっていない民主党代表・岡田克也は「1億総活躍社会の名前は躍るが、具体的な政策がどれだけ準備されたかは疑問であり、次々目先を変えているとしか思えない」と批判するが、その前に問いたい。民主党政権で国民を元気づけようとする政策が一つでもあったか。株価を上げようなどと言う発想が一度でもあったかと言いたい。
 

幹事長・枝野幸男も 「1億なんとかなど、訳が分からない」と頭から唾棄しているが、この人物は重箱の隅をつつくことを得意とするが、大局で膝を打つような発言をしたことがない。分からなければ分かる努力をしなければならないが、八百屋で鮟鱇は売っていないから無い物ねだりはやめておく。


かつて民社党委員長・春日一幸は政治の要諦を「理屈は後から貨車で来る」と述べているが、首相たるもの大きな方向を打ち出すだけでよい。池田が所得倍増、佐藤栄作が沖縄返還、田中角栄が日中国交回復。首相たるものこれらの言葉を唱えるだけでよいのだ。細かいことは後から貨車でやってくる。


その意味で安保法制を成し遂げた安倍が、今度は1億総活躍で野党の提起した安保法制の不毛の議論を経済に転換させ、国民に光は見えると政治の向かう方向を明確に提示しただけで、十分意味があるのだ。内閣支持率がいち早く上昇に転じたことからも、国民は見るところを見ている。
 

一億総活躍相・加藤勝信は14日、一億について基本概念を述べている。加藤は、「国民一人一人が職場や地域社会、家庭で、今より一歩前へ踏み出していこうという思いを持っていただけるかどうかに、すべてかかっている」と述べた。要するに長年に渡るデフレで「なにをやってもダメだ」と意気消沈した国民に元気を出して一歩踏み出そうと言っているのだ。


そこで当初から指摘されているのが、地方創生と一億のバッティングだ。たしかに少子化対策や高齢者対策などがかかわるから、やることは同じだ。安倍は屋上屋を重ねたことになるが、これは石破の側にも原因がある。


田中角栄は佐藤に幹事長を外されたとき、都市政策調査会を作って「都市政策大綱」を打ち出し、政権の基盤を作ったが、石破ははっきり言って何をやっているのか分からない。「総論は出来たから次は各論だ」というが、筆者のようにらんらんと目を光らせて政治を見ている者でも石破の言う「総論」が何なのか分からない。要するに一言で形容するキャッチフレーズがないから、方向性が定かではないのだ。


だから安倍は馬を石破から加藤に乗り換えたのだ。安倍は14日加藤に政策のとりまとめを指示しており、一億での司令塔はこれから加藤が任されることになる。


石破は最近テレビに出まくっており、ここで聞かれることは可哀想にもなぜ留任したかに絞られている。全部のテレビを見て克明にメモを取ったが、石破の多弁なる言い訳から浮かび上がるのは中途半端な“苦悩の人”の姿しかない。

石破はテレビで、安倍が下野して4年以上政権構想を練ったことと比較して「最近どんどん自分が消耗していくことが分かる。そのことに言い知れぬ恐怖感みたいなものを感ずる」と述べた。要するに下野して政権構想を練った方がよかったかという迷いがあるのだ。

この男は内心を吐露して正直であると思うが、それなら派閥を作ったのだから下野して戦うべきときであったのだろう。いずれにしても石破がポスト安倍の最右翼であることは確かだが、先にも書いたとおり出る杭は水没寸前まで打たれるのである。


冒頭書いたように当分中途半端な「苦悩の人」でいるしかないのだろう。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年10月14日

◆瑕疵は“扇動知事”翁長自身にある

杉浦 正章



法廷闘争での国の勝訴は確定的


 普天間基地の移転問題は、沖縄県知事・翁長雄志が13日辺野古沿岸部の埋め立て承認の取り消しを正式決定したことにより、法廷闘争となる様相が確定的となった。最高裁で決着する問題とみられるが、この間沖縄県に工事差し止めの手段がなく、11月には埋め立て本体工事に入る。


裁判の決着を待たずに埋め立ては完了、2022年の移行完了目標が達成される見通しとなった。


移転問題を政治闘争に使う翁長の戦術は破たんし、長期的に見れば翁長の「あらゆる手段で阻止」するとして県民の感情を煽った手法は挫折するだろう。

翁長の言う瑕疵は前沖縄県知事・仲井眞弘多の移設承認決定にはない。むしろ県の行政はそっちのけで政府との“闘争”に血道を上げ、ついに妥協を考えぬまま抜き差しならぬ全面対決にしてしまった翁長自身の瑕疵こそが問題であることが県民にも分かるときがやがて来る。その意味で翁長は政府を追い込んでいるのではなく、自らを進退窮まった袋小路に追い込んだことになる。


翁長は既に基本的概念から間違っていた。政府が普天間移設の理由を世界で最も危険な基地としての存在にしているのに対して、翁長は原点を米軍の強制収容に置いた。しかし、収容当時は米国の占領下にあり、人口が極めて少ない土地を占領軍に強制収容されても、法的な問題は生じない。翁長の主張の根幹は一昔前の社会主義、反米イデオロギーに根ざしており、これで県民を煽っても長続きはしないだろう。


それに翁長は足し算と引き算を知らない。普天間の返還を実現し、既にある辺野古の米軍基地に滑走路を作るというのは、誰が見ても引き算であって足し算ではない。そして翁長が、普天間の危険性に言及しないのは問題がある。なぜかといえば、論争に不利であるからだろう。県民の生命を第一に考える政府の主張に大義はあるのだ。


はっきり言って大義対個利個略の戦いであり、法治国家の県知事としてあるまじき闘争である。しかしその法治国家の法体系は翁長の戦術に門戸を閉ざしている。翁長の取り消し決定は政府の埋め立て推進に何の突っ張りにもならないからだ。


沖縄防衛局は行政不服審査請求とともに、取り消しの執行停止の申し立てを国交省に行う。同じ政府の国交省がいくら大臣が公明党の石井啓一でも、防衛局の申請を認めない事はあり得ない。そうすれば工事は間違いなく進行可能となる。この結果、翁長に残された手段は裁判闘争しかなくなる。最高裁までの「10年裁判」となる可能性が高い。


そうなれば埋め立ては完了して、普天間の危険性は除去され、沖縄全体の基地も整理縮小され、海兵隊の多くがグアムに移転する。誰がどう見ても沖縄の基地負担は大幅に軽減されるのである。最高裁の判決もこれを考慮して翁長敗訴となるだろう。この種の裁判ではまず国が敗訴となることはない。


だいたい翁長は先の大戦で沖縄だけが犠牲になったような主張を続けるが、東京大空襲を始め広島、長崎への原爆投下など、大都市のすべてが悲惨な目に合って焼け野原となり国民全体が途端の苦しみんに直面したのだ。翁長の主張には唯我独尊の「甘え」があるのだ。
 

翁長はことあるごとに沖縄県民の民意がすべて移転反対であるかのように発言するが、今回の決定はやぶをつついて蛇を出した。争点が明確となる結果、今まで風向きを見ていた県民の発言も、移転賛成論が多く出るようになった。翁長のやり過ぎが、県民の意見の分裂度を鮮明にしたのだ。


翁長は「80%の県民が反対」と主張しているが、知事選結果はそうではない。有権者109万人のうち翁長支持は36万票であり、33%に過ぎない。賛成の仲井真弘多と、少なくとも反対ではない下地幹郎の票を合わせれば33万で伯仲している。40万人の棄権票も支持に回りうる層だ。翁長は架空の「民意」に頼るしかないのだろうが、安易に「民意」などと言う言葉を使うべきではない。
 

だいたい翁長は辺野古への移設ばかりを批判するが、自分の推進している「大移設」問題を棚上げにしている。新任の沖縄担当相・島尻安伊子も知っているなら取り上げて批判すべきである。自らの立場をフルに活用して、対翁長の論陣を張り、県民の理解を広げるべきである。


沖縄の二紙も翁長の不利になることはろくろく取り上げないから、伝わらないが「大移設」とは「那覇軍港の浦添移設」である。東京ではほとんど知られていないが、専門家によると那覇軍港の浦添移設によって埋め立てられる面積は約300ヘクタール。辺野古で予定される埋立面積160ヘクタールの2倍近くに上る。自分の推進する移設はジュゴンが居場所をなくそうが、珊瑚が破壊されようが問題はないのか。


おまけに翁長は反対を条件闘争としていた形跡が濃厚だ。昨年宜野湾(ぎのわん)市長の佐喜真淳が記者会見し、辺野古移転について、翁長が「反対することで振興策が多く取れる」と発言していたと証言。県内11市のうち仲井真を支持する9市長の総意として翁長に対する不信感を表明したのだ。


その後自らの言動によって自縄自縛となって、冒頭指摘したように自らを袋小路に追い込んだのだ。かつて辺野古移転推進派でありながら反対派に回ったり、移転問題を条件闘争に使ったり、とかく右顧左眄(うこさべん)してきたのが翁長である。


政府はこのような政治家に振り回されることなく、粛々と埋め立てを推進すべきである。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)