2015年06月19日

◆辞めない橋下が、安保法制修正のカギ

杉浦 正章



存在感増し、党内対立深まる
 

筆者は大阪都構想の敗北で「市長任期満了で政界を引退する」と言明した大阪市長・橋下徹について、「政治家を辞めるのやめたになる可能性も否定出来ない」と予言したが、その通りになりつつある。首相・安倍晋三との会談後、政界完全復帰の様相だ。


一方で、大誤算したのは代表・松野頼久であろう。重しが取れて野に放たれたかのように独断専行、野党再編を目指して民主党に大接近、「年末には100人の新党」と豪語していた。


ところが14日に首相・安倍晋三が橋下との会談で撃ち込んだ大くさびが利きすぎるほど利いて、安保法制修正の流れが生じ、民主党との関係を分断された。


橋下が「辞めるのやめた」の第一段は、ツイッターによる民主離れ宣言である。「民主党とは一線を画すべきだ」など、まるで機銃掃射のように、民主接近阻止に出たのだ。松野ははしごを外され、「私としては非常に悩んでいる」と漏らすに至った。民主党は孤立化し始めて、ひたすら維新の分裂を祈るしかなくなった。


松野は意気消沈して未熟さを露呈、いまのところ、なすすべを知らない状況であろう。


次ぎに橋下が狙うのは、おそらく政府・与党との安保法制修正であろう。修正して安保法制を成立させれば、野党として存在価値を示せるし、歴史的に評価されうる立場となる。このポジションはおそらく将来的に目指すであろう中央政界への進出に極めて大きな地歩を築くことになるからだ。


そのとっかかりとなるのが、20日に大阪で行われる維新内部の修正をめぐる調整だ。今のところ橋下は維新が固めた修正案について「維新の案では国民の理解は全く得られない」「こんな修正案は集団的自衛権の行使でも何でもない。政府案に少し難癖を付けた程度」と、極めて大まかな批判をしている。


あえて各論に入ることを避けているが、これは法案を知らないのではなく、ゼロベースから修正案を作り直そうとしているのだろう。しかし、維新現行案でも一部は合意可能な案も入っている。


例えば維新の修正の核となるホルムズ海峡での機雷除去について、「経済危機だけで自衛隊を送ることが出来ないようにする」については、これは安倍が「国民生活に死活的な影響が生じるか否かを総合的に判断する」として、単なる経済的な影響では派遣しないと述べたこととも符合しうる。


おそらく橋下は、官房長官・菅義偉らとの水面下での接触を通じて、修正可能な部分を生かしつつ、独自の修正案を打ち出すつもりなのであろう。菅は「考え方が示されれば真摯に対応する」と発言。公明党代表・山口那津男も「真摯な提案なら対応したい」と前向きだ。


しかし政府側との調整は簡単ではないうえに、党内の松野ら民主党系や結いの党系議員らの巻き返しも予想され、まとまるかどうかは五分五分だろう。ただ安倍にとってはまとまろうがまとまるまいが、維新が修正案を出すこと自体が政治的に極めて重要なのである。


安倍は18日の衆院予算委で「維新が独自の法案を検討することに敬意を表したい。我々の法案と並んで審議されるとすれば、国民の皆さんに選択肢を見て頂きながら、審議が深まってゆく」と述べている。


これは、修正または法案に維新の主張を添付する形で妥協できればよし、妥協できなくて維新が独自に法案を提出しても、集団的自衛権の行使容認を賛同する政党が加わった事を意味する。つまり、反対は憲法学者の論理を請け売りにする民主党ほか少数政党だけとなるからだ。


加えて維新案が出されるということは、一挙にまとまれば成立は早まり、延長幅にも影響する。まとまらなくても採決に際して、まず維新案を否決して政府案を採決する方式など、正常な形で行うことが可能で、強行採決の印象を回避できる。その前に維新が修正案をめぐって分裂するようなケースでは、橋下傘下の政党と結託することも可能である。


油断は出来ないがどっちに転んでも、安倍にとっては有利になりそうな局面である。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年06月18日

◆岡田は“空想的風評”作りに専念

杉浦 正章
 


国民を惑わす討論手法は邪道だ
 

党首討論はまるで「私の質問に答えていない」の言い合いになったが、首相・安倍晋三は可能な限り答えており、答えなかったのは岡田克也自身だ。


安倍から衆院厚生労働委員会で、民主党議員が委員長・渡辺博道の入室を阻み負傷させた重大な暴力事件を岡田が「やむを得ない」と是認した問題を指摘されて、全く答えていない。これは民主党が言論の府における暴力行為を頻発させたかつての社会党への“先祖返り”を物語るものであり、今後安保法制の採決に当たっても暴力行為を繰り返すことを宣言したに等しい。


わが国議会主義がまるで暴力集団のテロリストに乗っ取られたような事態であり、由々しき問題だ。
 

それにしても岡田の質問は、悪意のある意図が透けて見えて、“邪道”の印象を受けた。その最たるものは徴兵制論議だ。岡田は「安倍首相が歴代内閣の認めてこなかった集団的自衛権の行使を行うことを内閣の判断で閣議決定した。


同じように将来の総理が徴兵制は憲法に合致するとして閣議決定するリスクがある」と決めつけた。これは一部の若者に存在する懸念を、いくら野党でも政治家なら「ない」と否定するのが常識だが、政治屋・岡田はフルに活用することを物語る。「将来あるリスク」と決めつけ、「空想的風評作り」の質問を繰り返した。


いたずらに国民を不安に陥れる卑しい政治手法だ。安倍は「憲法が禁じる苦役に当たる」と明確に否定したが、岡田の狙いは国民の間に“不安と猜疑心”を植え付けることにあり、それには一部成功した。


岡田はホルムズ海峡における機雷除去についてもさらに「首相は安保環境が根本的に変容したと言うが、ホルムズ海峡における機雷掃海でどのような変容があったか」と突いた。安倍は「集団的自衛権の行使の典型例としてホルムズ海峡を挙げているわけではなく、海外に派兵する例外として述べている。


『外国の領土、領海、領空での武力行使は何が可能性としてあるか』ということだったから、一般に海外派兵は禁じられているという原則を述べた後、ホルムズ海峡で機雷が敷設され排除する場合は、受動的限定的であるから、武力行使の新3要件に当てはまることもありうると申し上げている」と明快に答えた。


これに対しても岡田は「質問に答えていない。どのように変容があったかを聞いている」と反応したが、戦略的に見れば変容の有無は関係ない。過去に機雷が敷設され、日本が掃海に従事した重大な事実があれば十分だ。一度あることは二度あると対応するのが、責任ある為政者の常識だ。


岡田の場合「質問に答えていない」と述べて、安倍が逃げているような印象を作り出す意図が見え見えであり、これまた討論の邪道を行くものだ。


岡田は「重要影響事態に何が加わったら、存立危機事態になるのか。朝鮮半島有事の例では、どういう時に存立危機事態を認定するのか」と追及したが、安倍は「朝鮮半島で有事が起こる中で米艦が対応に当たり、重要影響事態にあたれば後方支援を行う。某国が『東京を火の海にする』と発言をエスカレートさせ、日本に対するミサイル攻撃をするかもしれないという状況が発生し、その中で、ミサイル防衛に関わる米艦が初動攻撃された場合に守ることは、武力行使の新3要件に当たる可能性がある」と明快に答えた。


岡田はなおも納得せず、具体例を挙げよと迫ったが安倍は「ケースごとに述べていくことは、日本がどういうことを考え、どういうことでなければ武力行使をしないという政策的中身をさらすことになる。国際的にも、そんなことをいちいちすべて述べている海外のリーダーはほとんどいない」と反論して答えなかった。


一朝有事の際は北朝鮮や中国が、日本の弱点を狙うことは安倍の言うとおりであり、現に安保法制のやりとりは詳細に分析され本国に送られていることは確実だ。集団的自衛権でも日本のような「限定的容認」では、国際的には弱い脇腹をさらすことになりかねない。


岡田は「質問に答えていない。憲法違反だ」を繰り返したが、安倍の指摘する「そんなリーダーは世界にいない」に付け加えれば、「そんなことをしつこく聞く党首も世界にいない」のだ。


要するに安倍がホルムズ海峡や朝鮮有事の際に集団的自衛権を行使しなくていいのかという主張の背景には、吉田茂が作った「安保ただ乗り論」の構図がとっくに成り立たない時代であるという認識がある。依然としてただ乗りしていれば、平和は天から降ってくるという、民主党や一部憲法学者の時代遅れの思想は、130億ドル払って世界中から馬鹿にされた湾岸戦争の教訓を25年間を経てもまだ理解していない証拠である。


憲法の有権解釈は安倍にあり、最終的には最高裁が判断する。学者の解釈は有権解釈ではない。


マスコミうけを狙って憲法学者の浮き世離れした論理を後生大事に党首討論に臨んだ岡田は、河島英五の「時代遅れ」の歌でも歌っていたらどうか。安倍の「憲法解釈の変更の正当性、合法性は完全に確信を持っている」の発言には岡田の虚構性はない。


維新の松野頼久が「修正協議には応じるつもりはない」と発言したのは、党内の修正論を無視した独断専行に当たる。党の分裂傾向を強めるだけだろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年06月17日

◆安倍が、野党に“必殺”のくさび

〜無投票再選確実の安倍〜

杉浦 正章



維新は分裂の危機も
 

中国戦国時代の外交・安保戦略に「遠交近攻」がある。遠い国と親しく交際を結んでおいて、近い国々を攻め取る戦略だ。安倍はこれを維新対策に使った。近くの維新幹部の頭越しに遠くの最高顧問・橋下徹と親交を結び、安保法制で修正協議へのくさびを打ち込んだ。


このくさびは民主党を含めた野党全体へのまず抜けることのない仕掛けであり、民主・維新のペースでの国会審議の瓦解を意味する。修正協議は難航も予想されるが、場合によっては「ホルムズ海峡への自衛隊派遣は単なる経済危機では実施しない」線でまとまる可能性もある。


維新内部は民主党系議員を中心に反発を強めており、分裂の可能性すら秘めた厳しい局面に置かれた。野党分断であり、17日の党首討論で民主党代表・岡田克也の顔を見るのが楽しみだ。


折から自民党内各派の事務総長らが16日夜会合、首相・安倍晋三の9月末の任期満了に伴う総裁選について、無投票再選になるとの判断で一致した。対抗馬は立ちそうもない情勢であり、安倍は後顧の憂いなく安保法制に専念出来る見通しとなった。


14日の夜の3時間にわたる安倍と橋本の会談は、憲法学者の的外れな違憲見解で一見野党ペースに陥ったかに見える安保法制にとって、大きな巻き返し策となり得るものだ。安倍は官房長官・菅義偉とともに今年1月頃から、ただでさえ大阪都構想をめぐって孤立気味の橋下にエールを送り続けた。


安倍は1月のテレビ番組では、「大阪都構想の意義はある」と述べ橋下は「うれしくてしょうがない」と応じている。官房長官・菅義偉は「大阪の二重行政は、効率化を図るために大改革を進める必要がある」ともろ手を挙げて都構想に賛成だった。この官邸の姿勢は自民党の姿勢と齟齬(そご)を来すほどであったが、結果的には安保法制をにらんだ遠交近攻の深謀遠慮があったことになる。


会談では安倍が「政治家・橋下徹への期待感はあるんじゃないか」と述べたといわれる。これは大阪市長を辞めても、中央政界があるという事を意味している。


その橋下の反応は本格的に再開したツイッターで遺憾なく発揮された。「維新の党は民主党とは一線を画すべき」「民主党という政党は日本の国にとってよくない」と口を極めて批判。都構想で散々足を引っ張られた民主党への不満をぶちまけた。加えて憲法学者の批判に対しても「内閣における憲法の有権解釈者は内閣総理大臣。憲法解釈が時代とともに変遷するのは当然のこと」と主張した。


さらにツイッターでは安保法制に関連して様々な見解を表明しているが、難解な法制を理解している事が分かった。これなら十分国政でも通用する政治家になれるだろう。自民党に入党すればポピュリズムのあかを落として、黙って雑巾がけを5年やっても50歳。自民党幹部はもちろんトップを目指すことだって不可能ではあるまい。


そこで修正協議の動向だがホルムズ海峡の機雷を撤去するに当たり、安倍は安保法制に関する国会審議が始まった5月26日の本会議で「国民生活に死活的な影響が生じるか否かを総合的に判断する」として、単なる経済的な影響では派遣しないと述べた。


「単に国民生活や国家経済に打撃が与えられたことや、生活物資が不足することのみで存立危機事態に該当するものではない」とも説明した。ホルムズ海峡の機雷封鎖で、生活物資や電力の不足によりライフラインが途切れることなどで、「国民の生死に関わる深刻、重大な影響」が生じるかどうかが判断基準になるとしたのだ。筆者はこれを当初公明党対策だけかと思ったが、どうやら維新対策でもあったらしい。


と言うのも維新が提出を予定している安保法制の対案の核の部分が、「経済危機と言うだけで自衛隊を機雷撤去に送ることを出来なくすること」が含まれているからだ。これなら妥協が成立する可能性がある。


もっとも維新内部の状況をみれば、ただでさえ民主党との政界再編を目指す代表・松野頼久ら民主党出身議員や前代表・江田憲司らと大阪系議員らの間で相克が生じているのに対して、安保法制修正問題はこれに火をつける作用を及ぼす可能性が大きいからだ。


江田は「維新のハードルは首相がのめるほど低くはない」と発言している。松野も首相との会談に臨む橋下に「安倍さんに都構想のお礼で国会運営や法案でお返しすることは考えないで欲しい」とクギを刺している。


しかし橋下は安倍と意気投合、松野の言うことなど聞いていない。あくまで合意を目指す橋下と、政府・与党がのめない案で対立を際立たせようとする松野、江田ラインの激突は避けられない可能性がある。


20日には橋下と党幹部の会談が行われる方向だが、亀裂へ動くか、妥協に動くかが安保法制の動向と絡んでくる。政府・与党としては法制で妥協が出来ないなら、維新が採決に出席して反対票を投じるだけでも強行採決の印象回避になるから、維新内部の動きから当分目を外せない。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年06月16日

◆60年安保から現安保法制を読み解く

杉浦 正章



反対運動の組織化欠如で成立必至
 

筆者は慶応の新入生として「アンポハンタイ」デモに参加。銀座を蛇行して汗だくとなり、有楽町の駅のホームで数人とシャツを脱いで水道で体を洗っていたら、若いOLたちが歓声を上げて「頑張って」と応援してくれた。皆得意げであったが、早くも55年が過ぎた。


その後時事通信社に入って社長・長谷川才次の“教育”を受けて、すぐに「転向」した。共産党を離党した急進派の全学連と違って、多くの学生は「アンポハンタイ」は時代の流行であった。実情は改訂安保条約の内容すら知らずに「ハンタイ」であったのだ。


翻って「アンポホウセイハンタイ」を見ると、政治的、国際法的に無能なる憲法学者たちを先頭に、これまた内容すら勉強せずに「ハンタイ」をレッテル張りのごとく唱えている。歴史は繰り返すというが、60年安保と相似して、現在の「ハンタイ」もいかに観念論的であるかが分かる。


岸信介が行った60年の安保条約改訂は51年に締結された旧安保条約と比較して「日米共同防衛の明確化」など、平等条約の色彩が強いものである。これが国会で成立していなかったらどうなっていたかである。


まずソ連や中国の共産党と組んだ社会党や共産党が現在の体たらくではなかっただろう。ソ連からは莫大な資金が反安保闘争に流れ込み、中国は100万人集会で呼応している。日本の社会主義化が実現すれば、米ソ対立の構図は米国が一挙に不利となり、その後の世界戦略にも大きな影響を与えていたに違いない。


国内政治も社会党はつぶれずに大きな勢力として自民党と対峙していただろう。もちろん現在の日本の繁栄はない。


一方安保法制が実現しない場合にどうなるかだが、これは民主党政権時代に近隣諸国が行った屈辱的行為を見れば明白だ。中国は尖閣諸島に漁船を進入させて巡視船に衝突させ、韓国大統領は竹島に上陸、ロシア大統領は北方領土を視察といった具合に、日本政府をあざ笑ったのだ。


民主党政権が続いていたら尖閣諸島は南シナ海と同様にグレーゾーン化していたかもしれない。日本の安保法制は世界的に見ても自由社会を支えるキーポイントである。


安保条約も、安保法制も初夏から夏にかけての一大政治マターであることは同じだ。ただその緊急性においては若干異なる。岸は60年5月19日に衆院で強行採決で条約を可決しているが、成立を急いだのは1か月後に米大統領・アイゼンハワーの来日が迫っていたからである。条約自然成立の30日間を見込んでの強行であった。


結局その後の闘争激化でアイク訪日は実現せず、岸内閣は倒れた。一方、安保法制は中国の覇権行為、北朝鮮の核ミサイル開発で遅滞は許されないが、国民を説得することは必用だ。政府・与党は会期延長で対処する方向だが、衆院可決後60日以内に参院が議決しない場合、衆院で出席議員の3分の2以上の多数で再可決することも考慮している。衆院可決後直ちに衆院議員は街に出て、国民にその必用を訴えるべきだろう。


59年の世論調査の資料だが安保条約の改定を「知っている」と答えた人は50%だが、「どういう点を変えようとしているのか」については、たったの11%しか知らなかった。


現在の安保法制について読売新聞の6月の調査を見ると安倍内閣の支持率は53%で、前回調査(5月)の58%から5ポイント下がった。安全保障関連法案の今国会での成立については、「反対」が59%(同48%)に上昇し、「賛成」の30%(同34%)を上回っている。


反対闘争の広がりについては、安保条約の場合は社会党と総評が、共産党をオブザーバーとして「安保改定阻止国民会議」を結成。この組織は全学連とともにデモ隊の中核となった。現在の場合、労働組合は同盟ではとても内部が法制反対でまとまらず、組織化は困難だ。全学連に至っては見る影もない。


衆院を通過する頃は大学は夏休みであり、多くの学生はアルバイトをして海外旅行や、海へ山へと流れるだろう。国会周辺は爺さん婆さん中心のデモにスポークスマンだけが若い者を起用したりしているが、熱中症で死人が出ないか心配だ。


ここで政府・与党幹部が注意しなければならないのは、岸の発言の二の舞いである。岸は挑発してしまったのだ。強行裁決後5月28日の記者会見で「新聞だけが世論ではない」とか「国会周辺は騒がしいが、銀座や後楽園球場はいつも通りだ。私には声なき声が聞こえる」と発言した。


これを新聞が大々的かつ意図的に報道し、総評、全学連の闘争を後押ししてしまった。闘争は盛り上がり、6月15日の樺美智子「圧死」事件へとつながった。同事件がなかったら、岸政権は継続したかも知れない。


しかし、この事件が契機となって新聞報道が大転換する。朝日も読売も似たようなアンポハンタイ紙面を作って、とりわけ朝日はデモを扇動する傾向が強かった。しかし樺の死を受けて、広告の鬼と呼ばれた電通社長の吉田秀雄が朝日の論説主幹・笠信太郎と話し合い、一転して6月17日在京7社による「暴力を排し議会主義を守れ」という7社共同宣言を発するに至った。反対運動に冷水を浴びせた。


強行採決直後の5月21日付の朝日新聞社説は笠の指示で「岸退陣と総選挙を要求す」を1面トップに掲載したばかりであり、大転換である。共同宣言については「新聞が死んだ日」と左翼に言われることとなった。


現在の全国紙の論調は安保当時と異なり、真っ二つに割れている。朝日、毎日が反対、読売、産経が賛成である。したがってやがては行われることになるであろう採決強行でも、読売、産経が納得するような形が好ましい。


朝日は衆院採決の段階で条約の時と同様の見出し「安倍退陣と総選挙を要求す」をトップに掲載することを企んでいるかも知れないが、驚くことはない。信念に基づいて行動すれば必ず道が開ける流れだ。


国会の議席数も岸の時は自民党が296議席で、安倍が291議席だが、公明党を加えると326議席と圧倒的だ。これに維新が半数でも加わればますます有利だ。問題は油断と政府・与党首脳の不規則発言だけだ。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年06月12日

◆安保法制違憲の疑いは解消した

杉浦 正章




高村Vs枝野対決は高村に軍配
 

朝日の反自民リベラル路線がいよいよその本性を現し始めた。前日の社説「違憲法制―また砂川とは驚きだ」に続いて、今日(12日)は「安保法制、違憲の疑いは深まった」である。衆院憲法審査会における自民党議員の憲法学者批判を「専門家に対する侮辱であり、国民に対する脅しでもある」と断定した。


政治記者はニュース判断において感性が必要だが、この社説はナイーブで公正なバランス感覚と感性がいかに朝日の論説に存在しないかとの論拠となって長く言い伝えられるものとなろう。11日の審査会を誰がどう見ても、違憲の疑いは解消されたと受け取るべきものであるが、朝日は偏向判断を選んだ。


その論評には、国際環境の激変などどこ吹く風で、一言も言及していない。自民党の主張を全て悪と決めつける、旧社会党に見られた古色蒼然たる一国平和主義の思想が根底にある。


審査会では、3人の学者の安保法制違憲論への自民党副総裁・高村正彦の反論と、これに反論する民主党幹事長・枝野幸男とのやりとりが中心となった。ウエブの国会中継でつぶさに聞いたが、高村対枝野のやりとりは、枝野のこじつけ論議が馬脚を現して圧倒的に高村が勝った。


なぜこじつけかというと枝野は首相・安倍晋三が海外で「法の支配の必用」を唱えていることをとらえて「専門家らの指摘を無視して一方的に憲法解釈を変更するという姿勢は法の支配とは対極のものだ」と言明したのである。これは失敗だったと断ぜざるを得ない。


安倍の法の支配論は中国の東・南シナ海での覇権行動とロシアのウクライナへの軍事行動を指しているのであって、枝野の表現では安倍が国内で覇権行動や軍事行動ををしているかと言うことになる。枝野はこの程度の論理構成では、将来弁護士になっても失職するだろう。


枝野の言う「専門家」らの指摘については自民党の務台俊介が「3人の参考人の主張で法整備を怠ることで生ずるリスクに、責任を負うのは学者ではなく国会と内閣だ」と見事に反論した。


朝日はこの自民党の反論を「憲法学者の指摘をおとしめようとする意図だ」と断じた。しかし、学者とその発言を金科玉条とするマスコミが国家の安全保障を「おとしめる」のはどうでもよいのかと言いたい。


自民党の平沢勝栄は「学者の意見に従って戦後の政治が行われていたら日本は大変なことになっていた」と憲法学者が「自衛隊違憲論」を唱え続けて来た問題を指摘した。加えて平沢は多くの憲法学者が「北朝鮮は拉致など行わない」と述べていたことを明らかにして、いかに“浮き世離れした存在”かを鮮明にさせた。


枝野は砂川判決をとらえて「砂川判決から集団的自衛権の行使容認を導き出せるのなら、砂川判決の後も政府が一貫して集団的自衛権の行使を憲法上許されないと言ってきたことをどう説明するか」と噛みついた。


しかしこの発言こそ社会党の一国平和主義の卵の殻を背負ったものである。国際環境の変化に対応できずに党勢が社民党としてほとんどゼロに近くなった理由が分かっていない。憲法解釈は安全保障環境の変化に伴い、その本質は変えないものの、政府が時代環境に応じた解釈の変更をして当然なのだ。


平沢が「憲法が栄えて国を滅ぼすの愚」と戒めたのが一番分かりやすい。今そこにある危機に対応できない憲法なら、国民のリスク無視の不磨の大典ということになるが、幸いにも9条が柔軟なる解釈を可能にしているのだ。枝野は憲法の“字面(じづら)”に拘泥するあまりに国際情勢の大局を見ていない。朝日の社説と全く同じだ。


朝日は高村、北側一雄らが「これまでの憲法解釈と論理的整合性および法的安定性は保たれている」と主張していることに対して「とても納得できない」と書いた。この主張は今回の法制が、国連憲章にあるフルサイズの集団的自衛権の行使などではないことを理解していないことを物語っている。


世界中の主要国が保有している集団的自衛権の行使などではなく、これほど限定して効力が生ずるのかと思えるほどの法制なのである。要するに朝日は学者3人の荒唐無稽な主張を擁護する余りに、安保環境の激変が見えないか、あえて見ないとしか思えない。


朝日は、民主党のポピュリズムを煽ってばかりいると、北のミサイルは精度が悪いから首相官邸を狙っても朝日本社に落ちることを心すべきだ。憲法に違反するかどうかという議論は勝負がついた。これ以上必要ない。

【筆者より=時にはFacebookに遊びに来てください。https://www.facebook.com/masaaki.sugiura.792

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年06月11日

◆憲法学者はGHQの洗脳から離脱不能

杉浦 正章




枝野は政治学入門の講義を受け直せ
 

自民党副総裁・高村正彦が「私が批判しているのは憲法学者の言うことをうのみにしている政治家だ」と民主党幹事長・枝野幸男に切り返したが、見事に急所を突いている。


枝野の「谷垣氏も高村氏も40年前の憲法議論をベースにしているのではないか。40年間、どれほど憲法の勉強をしたのか。もう1回、大学の憲法の授業を聞き直せ」との批判に反論したものだ。高村発言は、憲法学者3人の安保法制違憲論が、いかに時代と安保環境にマッチしていないかだけでなく、これに踊る朝日新聞とその論調に踊らされるポピュリズム政治家・枝野、辻元清美らを諫めたものだ。


憲法の授業は先に指摘したとおり、大先生たちが戦後70年同じ帳面を読み上げているものであり、聴講に全く値しない。枝野は大学の政治学入門から講義を聴き直して物を言った方がよい。


集団的自衛権の限定行使論議は、最高裁の合憲判決に基づく政治マターであり、浮き世離れした学者の違憲論を根拠にする限り民主党に勝ち目はない。既に負けると予想しているから“今をときめく”辻元が憲法解釈変更について「再び民主党政権になったら元に戻した方がいい。」と発言しているではないか。「民主党政権」が未来永劫(えいごう)あり得ないとすれば、元に戻すこともあり得ないのだ。


官房長官・菅義偉が安保法制合憲論の学者の名前を挙げた中で中央大名誉教授・長尾一紘の発言が一番問題の核心を突いている。長尾は毎日に「戦後70年、まだ米国の洗脳工作にどっぷりつかった方々が憲法を教えているのかと驚く。一般庶民の方が国家の独立とはどういうことか気づいている」と指摘した。


確かに法学者は「洗脳工作」で戦争直後に作った大学講義の帳面が代々引き継がれているとしか思えない。連合国総司令部(GHQ)は戦争直後の7年間の占領期間中、国民の間に植え付けられた軍国主義の思想を徹底的に洗い直す「洗脳工作」(War Guilt Information Program)に専念した。


戦争の罪悪感を日本人の心に植え付け、絶対平和主義が理想であるかのごとき思想を徹底させた。これは軍国主義の復活で日本が再びパワーを持つことを恐れたものだ。平和憲法もその流れをくむものであろう。
 

この日本の牙(きば)抜き洗脳工作はその後の朝鮮戦争の勃発など環境激変で意義を薄れさせたが、極東をめぐる情勢は、天から平和が降ってくると言う思想では対処しきれなくなった。天から降ってくるのは200発のノドンであり、中国は漁船を巡視艇に衝突させて、尖閣領有の可能性を探っている。


この状況変化に対応できないのが憲法学者であり、それを政治的に活用しようとするのが民主党なのだ。世論調査ではまだ反対が多いが、いざ国政選挙で安保問題がテーマとなれば、自民党は勝つのが過去の例だ。1960年11月に行われた総選挙は安保闘争直後にもかかわらず選挙への影響はほとんど無かった。


逆に、社会党と民社党の分裂により、自民党が議席を増やした。沖縄返還後の総選挙も圧勝しており、安保が争点になれば自民党は負けたことがない。したがって自民党は来年夏の参院選か衆参ダブル選挙に、堂々と安保法制問題を提示すればよいことだ。


砂川判決は唯一の最高裁による国の安全保障に対する合憲判決であり、朝日は今日(11日付)の社説で「また砂川判決とは驚きだ」と書いているが、この主張の方が驚きだ。砂川判決に準拠して安保法制を作らずに何に準拠せよというのか。


59年の砂川判決は、「わが国が、その存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のこと」と述べているのであり、あまりにも明白すぎて議論の余地がないほどだ。判決には個別的自衛権とも集団的自衛権とも書き込まれていないが、全てを包含するというのが常識だ。


さらに重要なのは砂川判決の後半部分である。「日米安全保障条約のように高度な政治性をもつ条約については、一見してきわめて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできない」としている。これが物語るものは国の安全保障に関しては最高裁ではなく政治の判断に委ねるという事であろう。


それはそうだ。裁判官が国防に口を出そうにも出しようがないのだ。国防は三権分立における政治マターの最たるものだ。


ましてや憲法学者ごときが国の命運を左右する安全保障問題で反対ののろしを上げ運動をすることは、八百屋が魚河岸でマグロを選ぶのと同じだ。


政府・与党は今後反転攻勢に出る構えであり、自民党副総裁・高村正彦が11日の衆院憲法審で自ら意見陳述することを決めた。公明党代表・山口那津男までが、「学識経験者にもいろいろな意見があるが、4日の審査会で発言した方々は、法案に批判的な見解を持った人ばかりだった。


政府の考えは一貫しており、その対応は、いささかも揺らぐことはない」と今国会成立を明言している。自民党内はエキセントリックな元行政改革相・村上誠一郎が「憲法学者の意見を一刀両断に切り捨てることが本当に正しい姿勢か。採決に当たっては党議拘束を外してほしい」などと総務会で主張、反逆の構えを見せているが、同調者はゼロ。村上の主張の逆を選べば全ては成功する。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年06月10日

◆安倍、中露分断と北方領土前進を狙う

杉浦 正章



日本外交初のサミット先導
 

仏ランブイエ城で開かれた1975年の第1回先進国首脳会議で三木武夫に同行取材して以来、サミットと日本外交を注視してきたが、今回の独エルマウ・サミットほど日本の首相がイニシアチブをとった例を知らない。


地球儀を俯瞰する安倍外交の成果でもあろう。逆に普段は会議をリードする、オバマの影が薄れた。早くもレイムダック化が始まったのだろうか。とくに「安倍先導」が会議をかつてなく厳しく中国の南沙諸島埋め立て非難へと導いたことは、東・南シナ海における中国の軍事行動に対して紛れもなく強いけん制効果を発揮した。


安倍は、事前にウクライナ訪問を設定したことによりウクライナ問題での存在感まで発揮した。サミットは議長のメルケルと、その言動から事前の綿密な計算がうかがえる安倍ペースで展開した形となった。


必ずしもオバマと関係が良くないメルケルとの3月の会談での事前根回し、4月の日米首脳会談での圧倒的日米関係の誇示と安保関係の強化。そして席の温まる間もない活発な首脳外交。これらを可能にした国内政局の安定とアベノミクスの成功が、総合的な力となってエルマウ・サミットでの「発言力」となった。


自由世界GDP第2位の日本の発言力は、もともともっとあってもよかったのだが、歴代首相のサミット外交はさっぱりさえなかった。安倍の各国首脳との気心の知れた個人的関係も重要な役割を果たした。その意味で毎年首相が代わるという日本の政治の弊害は改めて考え直す必要がある。
 

一連の動きの中で注目すべき外交上の特徴は、安倍がサミットから外されて2回目となるプーチンに対して微妙な球を投げたことである。


安倍はG7の“プーチン外し”について、NHKに「最初から来年のサミットを『ロシアを入れず、G8にはしない』、『プーチン大統領は入れない』という態度ではなく、プーチン大統領が建設的な関与をするようにわれわれがしっかりと促していく。例えばウクライナの停戦合意も、ロシアが国際社会に対して分かりやすく責任を果たしていくという状況を作っていく。プーチン大統領がそういう方向に向かうよう、努力していきたい」と発言している。


この発言はプーチン“カンダタ”めがけて下ろした芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」になり得るものだ。
 

米国は国務次官補・ラッセルが5月21日に安倍がロシアのプーチン訪日の可能性を探っていることなどについて、「現在の状況では、ロシアと通常の関係を持たないとする原則を守ると信じている」と述べ、日本を牽制(けんせい)している。


安倍はこれを無視するかのように、記者会見で「ロシアとは戦後70年たった現在もいまだに平和条約が締結できていないという現実がある。北方領土の問題を前に進めるため、プーチン大統領の訪日を本年の適切な時期に実現したいと考えている。


具体的な日程は、今後、準備状況を勘案しつつ、種々の要素を総合的に考慮し、検討していく考えだ」と日本の特殊事情を説明した。安倍はプーチン訪日で北方領土を前進させ、ウクライナ問題での停戦合意の順守などの前進を図り、場合によっては議長国として伊勢志摩サミットをG8に拡大することを目指しているに違いない。


このため安倍はまず外相・岸田文男のロシア訪問に向けた環境整備を図るため、外務審議官・杉山晋輔をロシアに派遣する方向で調整を進める。
 

まさに米国一辺倒でなく独自外交もあり得ることを示したのだ。安倍の狙いは何処にあるかと言えば、精緻(ち)に組み立てられた対露外交推進の構図であろう。


まず第一の狙いは北方領土解決への糸口作りである。孤立したプーチンこそ、領土問題での妥結に結びつけやすいと考えたのであろう。プーチンの80%を越える驚異的支持率はクリミア併合という領土問題にあり、北方領土での譲歩は容易ではあるまいが、安倍は持っていきようによっては前進可能と踏んでいるのであろう。その感触をつかんでいるのかもしれない。
 

次ぎに重要な意味は中露接近分断であろう。今年は戦後70年に当たり、プーチンは5月9日の対ナチス・ドイツ戦勝記念日に中国国家主席・習近平を国賓として迎え大接近をしている。


習は9月3日の「抗日戦争勝利記念日」にプーチンを北京に招くなど、接近姿勢を強めており、これが中国の東・南シナ海への覇権行動を容易にする可能性が大きい。安倍にしてみれば、これを阻止する為には自らのプーチンとの個人的な関係を維持して、日露協調を実現する必要があるのだ。


これはメルケルのオバマとの冷たい関係と親露姿勢に若干は似ていなくもない。サミットの背後にある安倍の思惑を切り取ると以上のような外交の機微が浮かび上がってくる。


安倍に課せられた課題はG7の足並みを乱さずに、来年のサミット前に北方領土を前進させなければならないという極めて難しいかじ取りであろう。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年06月09日

◆国民説得に通年国会で対処せよ

杉浦 正章
 



会期内衆院通過は困難に
 

学生時代憲法の講義に出ると常にガラガラだった。なぜかというと、大教授は古びたコクヨの帳面を毎年読み上げるだけだったからである。コピーが100円で出回っていたから、それがあれば期末試験などわけなくクリアできた。今度の衆院憲法審査会でもきっとその古びた帳面が使われたに違いないと思いたくなる。


とにかく憲法学者らの論議は浮き世離れしている。3人とも東・南シナ海の緊迫や北朝鮮のどう喝などはどこかの宇宙の出来事であり、憲法解釈とは関係ありませんと考えているに相違ない。国の安全保障、国民の今そこにある生命の危機など、とんと考えが及ばない。にもかかわらず権威主義の上から目線で、「法的安定性を揺るがす」「海外に戦争に行くのは憲法違反」などと違憲論を宣う。


しかし、違憲を決めることができるのは、最高裁だけである。ちゃんと憲法81条に「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と書いてある。発言は自由だが、上から目線で国会に“指示”してもらっても困るのだ。


その最高裁は砂川判決で1959年「自国の存立に必要な自衛措置は認められる」とした。だから政府の集団的自衛権の限定行使に当たっての3要件も「日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明確な危険」を前提にしているのだ。


簡単に言えば憲法学者は憲法に「戦争が発生したら日本人は死ね」と書いてあると思っているに違いない。こういう浮き世離れした学者が戦後幅を利かせてきた。その最たるものが圧倒的に憲法学者の間で流行していた「自衛隊違憲論」だったが、古い帳面はいつの間にかこっそりと書き換えられてその記述は消されているようだ。


こういう非現実的学者は米国ではほとんど存在しないが、存在すれば「研究室で冷めたピザでも食べていろ」と言われるのがオチだ。


ところがこういう学者をこともあろうに自民党が参考人に選定したことは、大失態であり安保法制におけるプロパガンダ戦の初戦に完敗したことを物語っている。それも最初に頼んでことわられた京大名誉教授・佐藤幸治は、自民党が推薦した早大教授・長谷部恭男に勝るとも劣らない安保法制反対論者だった。


東京都内で、「憲法の、根幹を変えてしまう発想は英米独にはない。日本ではいつまでぐだぐだ言うのか、腹立たしくなる」と講演、憲法の解釈変更での安保法制の整備を違憲と主張している。要するに学者を選んだ審査会の筆頭幹事・船田元は「状況を掌握出来ないことにおいて確信犯的」であったことになる。


自民党挙げて怒りまくっているのはもっともだ。船田も浮き世離れして、今国会で何が起きているかが分かっていないのか。


4日の審査会では民主党の辻元清美が姿を見せ、あれこれささやいていたというから、敵ながらあっぱれな狙いを付けていたことになる。自民党の審査委員は「安保法制のことは全然念頭になかった」と述べるが、憲法学者の多くが安保法制違憲論であることを、知らないわけではあるまい。


「奇襲」を受けたのは「ノーテンキ審査会」(自民党幹部)であった事が最大の原因だ。辻元はしてやったりと意気揚々とテレビに出て、とうとうと「安保法制違憲論」を展開していた。


しかし「朝鮮戦争の時集団的自衛権を認めていたら日本は確実にに戦争に巻き込まれていた」と発言したことは語るに落ちた。朝鮮戦争勃発時に発足したのは警察予備隊であってまさに吉田の言う「戦力なき軍隊」だ。米国もそのような足手まといのものを当初から使う気などなかった。辻元はその場しのぎのレッテル貼り質問が多く、はったりばかりで憲法学者同様に不勉強がすぐにばれる。


それにしても、朝日の報道ぶりはどうだ。まさに鬼の首を取ったような紙面展開だ。「憲法解釈変更再び焦点」「安保法制問われる根幹」と社是にのっとるかのごとく、“反対闘争”紙面作りに余念がない。


しかし考えても見るがよい。たった3人の学者が、安保特別委とは疝気筋の憲法審査会で予定にない発言をしたからと言って、これが全てを決めるのか。法制の根幹が問われるのか。憲法学者の発言などは現状認識のない床屋談義に毛の生えたようなものだ。


その証拠に今後特別委で推進派の憲法学者が見解を述べても、大きく取り上げるマスコミはないのである。朝日を先頭にしたマスコミの偏向的“癖球”は、今後どんどん投げられると用心しておくべきだ。ただ好むと好まざるとにかかわらず、この種のレッテル貼り型安保論争では国民の誤解を解くのは容易ではあるまい。衆院で審議機関のめどとしてきた80時間の確保は不可能となりつつあり、会期内の衆院通過は困難な情勢だ。


そこで一策がある。田中角栄は「国会議員は高い給料をもらっているのだから一年中働け」と通年国会を提唱した。ここは当初予定していた8月上旬までの会期延長を一挙に大幅に伸ばすのだ。まだ強行採決で対応しようとせずに、一部野党の「数国会にまたがる論議」を考慮して、年末までか晩秋までの大幅会期延長で対応するのだ。それほどの大法案であることは間違いない。


長時間徹底的に論議して、国民に突撃ではなく、国会論議を通じて「誠意を持った説得」をするのだ。説明の果てに生じた採決強行は黙認される。審査会の失態は長期戦でカバーした方がよい。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年06月05日

◆翁長の狙いは反基地闘争の盛り上げ

杉浦 正章




訪米が不発に終わるのは想定内
 

馬の後ろに回れば蹴飛ばされることを元々承知でやはり蹴飛ばされたが、沖縄県知事・翁長雄志は一体何を狙ったのだろうか。九分九厘、辺野古移転反対派の同情を買い、闘争を煽動することだ。その意味では翁長が莫大な県予算を使って大デレゲーションで訪米した効果は対沖縄向けにはあるのかもしれない。


しかし明らかになったのは基地反対闘争のアジテーターという究極のポピュリズム政治家の実像であろう。まるで労組トップが「社長に言ってやった」と闘争を盛り上げるように、訪米は基地闘争激化への弾みをつけることを目的としている。米政府ははっきり言って利用されたこと自体にむかついているのだろう。


奇妙なことに米側は会談が終了すると間髪をおかずに会談内容を「声明」として文書で発表した。国務省、国防総省はもちろん上院軍事委員長・マッケインまでそうした。これは片言隻句が反米指導者などに活用されるのを避けるための手段であり、翁長の“意図”は完全に見抜かれていたと言うことだろう。


米政府は「普天間基地の辺野古への移転は日米不動の約束で、唯一の解決策」で一貫し、マケインはこれに「在日米軍の今後については全て安倍政権と取り組む」と付け加えた。言うなれば「外交権のない自治体の長など相手にしたくない」ということだろう。


米政府のいら立ちは新アメリカ安全保障センター上級顧問・パトリック・クローニンの「アメリカ政府はパンドラの箱を開ける余裕はない。知事は一体何を期待しているのか。我々だけで話をしてあの政策を変えようなどということになるわけがない」という言葉に込められている。
 

それでは何しに行ったかといえば、翁長の言葉を分析すれば明白だ。「米側の理解が深まった。間違いなく前進している」とイケシャーシャーと述べるかと思えば、「暗中模索の中から一筋の光が見えてきた。それは私たちが望んだものに近づいているとしっかり感じた」と極めて文学的抽象的に成功を印象づける表現をした。


この言葉にいくら人が良いといっても沖縄県民がだまされるだろうか。普通の県民なら「嘘をつくな。予算を湯水のように使ったからその言い訳か」と言うであろう。官房長官・菅義偉の「米国まで行ったのだから辺野古移設が唯一の解決策であることを認識しただろう」が正鵠(こく)を射た物の見方だ。


しかし、そう言わない勢力もいる。辺野古移転闘争にしゃかりきとなっている反対派運動家たちだ。翁長雄志はそこに向かって狡猾なる球を投げているのだ。秋口に向かって本格化する基地反対闘争に向けて、移設反対の闘争を「鼓舞激励」することを狙っているのだ。


今後の翁長の戦術はおそらく次のようなものを描いているのだろう。


まず16日開催の県議会で埋め立て資材の搬入規制条例を成立させる。同条例に基づき埋め立て阻止に動く。次に、前知事の仲井真弘多の埋め立て許可承認手続きを検証している第3者委員会と称するお手盛り委員会に、許可取り消しを提言させる。その上で翁長が7月下旬までに承認取り消しを決定する。


それでも政府が埋め立てに踏み切る場合には、地裁に工事差し止め仮処分を求める訴訟を超す。そして県民投票を実施して埋め立ての是非を問う。こうした闘争方針が固まっているからこそ、ここで反対闘争を扇動する必要があるのだ。


これに対して政府は、不退転の決意で埋め立てを実施することになろう。その時期は今のところ秋口と見られている。翁長の訪米は、はからずも自身が偏狭で国の安全保障など露ほども考えておらず、ただただ反基地闘争を盛り上げる事だけを狙っていることを露呈したものであり、このペースに惑わされるべきではない。


沖縄100年の計のためにも、人身事故を起こさない事に配慮しつつ、埋め立てを実施に移すべきだろう。死傷者が出れば移設は大きくとん挫しかねないのであり、ここは自衛隊の大型運搬用ヘリをフル活用した空輸作戦を導入すべきであろう。


「史上最大のヘリコプター作戦」を展開することだ。知られていないが自衛隊のヘリの輸送能力は世界最大規模であり、大震災でも大変な活躍ぶりを見せた。


自衛隊は輸送用中型ヘリ「UH―60ブラックホーク」を28機、大型の「CH-47チヌーク」を70機保有している。ブラックホークは積載量1.2トンであり、チヌークは9トンも運べる。機体下面の吊り下げ装置で吊り下げて、移動することが可能だ。空飛ぶ10トントラックだ。ヘリで「奇襲」するのが一番よい。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年06月04日

◆平成の三大生臭爺さんが踏ん張り過ぎ

杉浦 正章
 



ろれつ回らず方向性も欠如


かつて尊敬していた卒寿の後藤田正晴を「反戦で張りのある声生身魂(いきみたま)」と俳句に詠んだ。朝日俳壇に投稿すると、金子兜太が1席をくれた。生身魂は敬うべき年長者を意味し、旧盆には故人の霊ばかりではなく、生身魂にも食物を供えてもてなした。


後藤田の「反戦」は実体験に基づいた反戦であり、そこいらの全学連崩れの「反戦」とは根本的に異なる。敬う気にはならないが、いま政界で生身魂を挙げるならさしずめ野中広務(89)だろう。


TBSの時事放談でお目にかかるが、最近では手が震え、言葉が15秒も出ないことがしょっちゅうだ。それでも司会が「安倍」の名前を出しただけで、自動的に元気が出て口を極めて批判を展開する。どうやらこの生身魂「安倍憎しの反射神経」だけで生きているようだ。


言葉に詰まるのも、聞いている方は何を言うかと思って10秒待つのが楽しみだ。最近ではいささか支離滅裂気味なのも面白い。「72年の国交正常化の時の条件を確認しなかったら南シナ海の緊張は治まらない」とはどんな意味かと思ったら、東シナ海の間違いだった。安倍批判だけが先鋭化してかつての切れ味はない。


後藤田と決定的に違うのは反戦ならば共産党とも手を組むという姿だ。「しんぶん赤旗」に登場するのだ。過去に野中広務、加藤紘一、古賀誠、山崎拓が登場しており、安倍自民党批判を展開している。


今度は民主党顧問・藤井が、5月17日付のしんぶん赤旗に登場、「安倍内閣の暴走」に食いついている。いくらまともなマスコミが登場させないからといって、赤旗までに媚びを売るのはあきれ果てて物が言えない。


時事放談はいまや野中、古賀(74)、藤井(82)らノーバッジの三大反安倍爺さんの巣窟(そうくつ)と化している。平成の3馬鹿大将とは言わないが、全然敬う気にはなれない三大生身魂だ。御馳走など供えたくもない。


藤井に至ってはその主張が共産党そっくりで、理路整然と間違うのが問題だ。これが自民党出身者かと思うと、あいた口がふさがらない。「なぜ集団的自衛権の行使を容認するかというと、世界の警察官アメリカの肩代わりだ」と宣うた。


さすがに温厚な対談相手の自民党副総裁・高村正彦が「それは全く違う。我が国の防衛をまるまるやる警察官だ」と諫めたが、要するに爺さんたちは全然安保法制など知らないし、勉強などしていないのだ。勉強していないから視聴者の耳に通り易いレッテル張りで済まそうとして、かつての社会党と同じ発言でごまかしている。


TBSはそれを知りながら「反安倍路線」を維持するために使うのだろう。「年寄りの強情と昼過ぎの雨はたやすくはやまぬ」というから、当分やみそうもない。


政局絡みの動きを見せる「生臭生身魂」もいる。古賀だ。古賀は政局だと血が騒ぐと見えて、何が何でも無投票再選などさせないとばかりに安倍が憲法解釈をめぐり「最高責任者は私だ」と発言したことについて「愚かな坊ちゃん的な考え方だ」と反安倍ののろしを上げた。


この「愚かな坊ちゃん」論は、1月から言い始めており岸田派関係者に「愚かな坊ちゃんを調子に乗せてはいけない。」と漏らしている。なんとか対立候補を擁立したい一心で、かねてから眼をかけている前自民党総務会長・野田聖子をけしかけた。20人の推薦人を確保することを条件に立候補を勧めたのだ。


野田はこれに一時は乗った。1月の講演で「20人の国会議員に出て欲しいと言われるような議員になりたい」と、前向き姿勢を見せた。3月8日の党大会の際にも出馬について「危機的な状況にある日本を支えようとする人であれば、誰でも思う」と前向きな姿勢を示した。


しかし周りを見渡せば、とうとうとした流れは「安倍長期政権」へと動いている。どう見ても勝ち目はないし、推薦人は古賀が集めても、反安倍のうねりができるかと言えばとても無理だ。


最近では野田は急速にトーンダウンだ。「私が決意をした時は相当の覚悟の時だ。思い付きで言うことはない」と述べ、慎重に転じた。安倍との不仲説についても「みんなが言うほど仲が悪いわけではない。むしろ真に首相を支えているのは私ではないかとの声も上がるほどだ」と否定。


どこからそんな声があがっているのかは別として、逃げ足は速いが、まだ未練げではある。こうして古賀の“仕掛け”はあえなく挫折したのである。古賀は性懲りもなく何も知らない1,2年生のチーチーパッパをけしかけているようだが、しょせんは犬の遠吠え。ノーバッジで、政局への干渉が度を超してはいけない。


古代ギリシャの哲学者ピクロスは「干渉好きの老人ほど見苦しいものは無い」との格言を残している。もっとざっくばらんに戒めると「年寄りと釘頭は引っ込むがよし」だ。


      <<今朝のニュース解説から抜粋>    (政治評論家)

2015年06月03日

◆砂の長城死守の“巨獣”に打つ手なし

杉浦 正章




当分南沙では“威嚇”の泥仕合が続く
 

マンガで表現するとしたら、得体の知れない巨獣がうなり声を上げながら、南沙諸島に食らいついている図が適当だろう。


軍のトップが周辺諸国に対して「小国は挑発的な行為をとるな」とは、旧日本軍の幹部でも口にしない暴言だ。グレーゾーンが「中国領土」に次々と変わってきているのを見て、米軍関係者は「もはや言葉では埋め立てを止めさせることは出来ない」と漏らすに至っているという。


太平洋軍司令官ハリスが述べた「砂の長城」は、いまやコンクリートで固められた要塞となりつつある。


国家主席・習近平は自分が現実に行っている国際法秩序の破壊を前にして、70年前の歴史認識など口に出来るのだろうか。いやできる。“ラストエンペラー”かどうかは分からないが、勃興期の中国の歴代皇帝はそういう唯我独尊の態度でふるまうのが仕事であるからだ。
 


いま意気盛んなのは共産党機関紙人民日報の国際版・環球時報だ。米国に紙面で“宣戦布告”をしまじき勢いだ。中国首脳の考えを代弁するかのように「双方が容認できるぎりぎりの線は岩礁埋め立て工事の完遂」とした上で「米国があくまで工事停止を求めるならば、南シナ海での中米戦争は避けられない」とすごんでいる。


この“意気込み”は5月26日発表の国防白書に「海上の戦闘準備を強化する」戦略を明記したことからもうかがえる。要するに巨獣は本能のままに行動し始めたのだ。確かに「言葉では止められない」段階であるかのように見える。人工島には既に兵器が運び込まれているのだ。
 

しかし、米国で言われている「弱虫オバマ」がまなじりを決して本格的軍事行動に出るかと言えば、出ないだろう。東シナ海に防空識別圏(ADIZ)を敷いた際にもB52爆撃機2機を示威行動で飛ばしたが、その後は、なしくづしのまま放置されている。今回もメディアを同乗させた偵察機を飛ばして見せたが、まだ本気で“やる気”になっているようには見えない。


まあオバマは「苦汁の選択」をするかどうか、お得意のハムレットのように悩んでいるのだろう。国防総省では、人工島の12カイリ以内に偵察機と第7艦隊を送ることを考えているが、これも示威行動にとどまるだろう。


ただ米軍機や艦隊の進入が常態化すれば、それなりに中国の面目を潰し、一定のけん制効果は出るだろう。一方で米国は日本とともにベトナム、フィリピンなど沿岸国の査察、警戒能力の向上に支援を進めている。ベトナムには米国からの巡視船購入のため1800万ドルを供与する。
 

しかしこのままではADIZが南シナ海にも敷かれる可能性が現実味を帯びてきた。一部には9月3日の抗日戦勝利70周年記念日に合わせて敷くのではないかという観測が出ているが、これは眉唾ものだ。


なぜなら習近平は記念日を歴史認識で反日プロパガンダをする絶好の機会と捉えているのであり、これにADIZを合わせて実施すれば歴史認識問題など吹っ飛び、世界世論の袋叩きに遭うのは火を見るより明らかだからだ。


時期はともかくとして、南シナ海にADIZを敷けるかどうかは、習近平がオバマのリバランス(アジア回帰の再均衡)政策に対抗できるかどうかの試金石であり、そのチャンスを狙い続けるであろうことは間違いあるまい。
 

いずれにしても米中直接対決となれば、日本、豪州を始めアジア各国を巻き込んだ第3次世界大戦の色彩を帯びることになるが、米中ともこれを選択することはあるまい。当分雄シカがその角の大きさを競うように、どっちが強いかの示威行動を互いに続けるだろう。


だから一触即発状態は続く可能性が大きい。もっともバブルが弾けない中国は、各国とも商売相手であり、経済関係は“政経分離”というか“軍経分離”の状態で維持されるだろう。
 

ただ本能のままの“巨獣”を、国際世論が放置してはなるまい。ことは焦眉の急を要するのであり、7、8両日、ドイツ南部のエルマウで開かれる先進7カ国(G7)首脳会議は時期といいタイミングといい絶好の機会となる。


先に開かれたG7の外相会談では、東シナ海や南シナ海での大規模な埋め立てなど一方的な現状変更に懸念を表明した上で、「威嚇、強制、力による領土または海洋の権利を主張する、いかなる試みにも強く反対する」と宣言した。サミットではさらに強めた宣言が採択されることになる見通しであり、ウクライナのロシアと南沙の中国はいよいよ孤立化の局面となりつつある。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年06月02日

◆安保論議は「高村節」が分かりやすい

杉浦 正章




平易な言葉で核心を突く
 

昔から自民党副総裁には優秀なキャッチコピー・メーカーが多いが、その代表格は川島正次郎と椎名悦三郎だろう。

川島は「政界一寸先は闇」と今でも政局記事には欠かせない発言をした。自派の荒舩清十郎が急行を選挙区に止めて運輸相辞任となったときは「やはり野に置けレンゲ草」と述べたものだ。


椎名は外相時代の国会答弁で「アメリカは番犬様」と述べて爆笑を買った。副総裁になって椎名裁定で三木武夫を首相に指名したが、その後「産みの親だが、育てるとは言ったことはない」と述べて「三木降ろし」に回ったことは有名。


長い間キャッチコピーの名人は現れていなかったが、安保法制をめぐる発言では副総裁・高村正彦の発言が一番分かりやすい。


とかく難解な言葉が飛び交いがちだが「アメリカは世界の警察官疲れをしている」「台風は止められないが侵略は抑止できる」などの言葉はすっとふに落ちるキャッチコピーだ。1年にわたり与党協議の調整役であっただけに、安保法制を十分理解した上でポイントを平易な言葉で突いているのだ。


首相・安倍晋三の総裁任期についてもTBSで「どんなに短くても後3年」だそうだ。ひょっとしたら2期6年までとなっている自民党総裁の任期を「3期9年」まで延長することを考えているのかも知れない。
 

総裁選はともかくとして、今国会で展開している論議はよほど安全保障問題に精通した人でないと難解で分かりにくい。ところが高村解説だとすぐに分かる。まず「まるまる論」だ。


高村は「集団的自衛権の行使と言っても国連が世界に認めているまるまるの集団的自衛権の行使をやろうというのではない。野党はまるまるだと攻めたてているが、日本防衛の目的があり新3要件に合致する場合にのみ発動する限られた限られた集団的自衛権の行使だ」と説明する。


次ぎに「伝家の宝刀論」。「集団的自衛権の行使は伝家の宝刀だ。抜くぞと見せかけて抜かないところに抑止力が生じる」。たしかに安保法制は攻撃的な性格のものではなく、受動的な性格が濃厚であり、野党の言う「世界中で戦争をする国になる」こととはほど遠い。第一そんな国力は今米国しかない。それも弱ってきている。
 

その辺を高村は「アメリカはかつては基地を提供してくれれば後は全部任せてくれという態度であった。今でも圧倒的に強いが、世界の警察官疲れをしている」と説明する。


野党は「アメリカの肩代わりをすることになる」と追及するが、高村は「外形的には米国がやられているのを日本が守れば集団的自衛権の行使と言われざるを得ないが、あくまで自国防衛の目的を伴った限定的な行使だ」と述べる。野党の「世界の何処までもアメリカに付いていって戦争をする」との主張を全面的に否定しているのだ。
 

次ぎに安倍が海外派兵の例外として、ホルムズ海峡の機雷除去を挙げていることについて「ペルシャ湾での機雷掃海ぐらいが後方支援の限界だ。その他に国民の生命を根底から覆される明白な危険が想定できない」と述べている。


機雷掃海が限界なら、イランも近ごろは軟化しており、予見しうる将来において機雷が撒かれる事態は想定できまい。その意味では机上の議論に過ぎない。また野党に「アメリカの戦争に巻き込まれる」論があることについて高村は「まず安保改定反対という人が巻き込まれると言った。次ぎに周辺事態立法の時も巻き込まれると言い、PKOを派遣する際も巻き込まれると主張した。


しかしかえって抑止が利いて日本は70年間平和だ。巻き込まれる危険と抑止力で未然に防止する効果とどっちが大きいかは火を見るより明らか。台風は止められないが侵略は抑止できる」と反論。


確かに国会論議を見ると野党は勉強不足で古くてさび付いた安保論争を展開している。社会党が社民党へと「極小化」してしまったことを見ても、自民党政権の判断は正しかったことを物語る。
 

焦点の自衛隊員のリスクについて高村は「まさに国民のリスクを減らすために安保法制を作った。有事の際に自衛官が一番のリスクを負うのが当然だが、そのリスクを減らすためにいろいろな工夫をしている。木を見て森も見れば紛争を未然に防げればその自衛官のリスクですら減る。」とのべた。極めて妥当な発言だ。


こうして高村の平易な言葉で核心を突く発言が、国会論戦の側面から重要な役割をはたしており、今後もTVなどに積極的に出て「高村節」で国民に説明するのが野党や一部の「専門家」がばらまいている、虚飾のレッテル張りを打ち消す為に最良の方策だ。

         <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2015年05月29日

◆南沙緊迫を尻目に 空想的安保論争か

◆南沙緊迫を尻目に 空想的安保論争か
杉浦 正章



野党は現実事態に目を向けよ
 

一国平和主義の神学論争を仕掛けている野党に、紳士的である筆者ですら「本当に早くしろよ」とヤジりたい。


口から生まれたような民主党の辻元清美が「機雷掃海を実施すれば日本はテロに巻き込まれる」などという浅薄な“空想的安保論争”を繰り返している内に、中国は南沙諸島をどんどん埋め立てている。もう滑走路が完成しそうだ。そしてこれを批判する米国との間に緊張関係がかってなく高まっている。


一方で北朝鮮は潜水艦発射ミサイル実験に“成功”している。今そこにある現実が見えない民主党は、現在中国が南シナ海でやっていることが、いわばグレーゾーン事態化による領土拡張の典型であることを知るべきだ。尖閣での漁船衝突事件で無様な対応をした民主党政権が今も続いていたら、東シナ海がグレーゾーン化されていた可能性の方が大きいのだ。安保特別委はがん首揃えて南シナ海を見学したらどうか。


国際情勢を見れば首相・安倍晋三が「早くしろよ」とヤジる気持ちも分かる。29日からシンガポールでアジア安全保障会議(シャングリラ会議)が始まるが、昨年の会議は安倍が出席して強烈な対中非難の基調演説をして、喝采を浴び、中国軍人の顔色を失わせた。


本来なら今年も安倍が出席して、中国の南沙諸島埋め立てを制止する演説を展開すべきところだ。それを国会が足止めして、低級安保論争でくぎ付けにする。安倍がみじんもすきを見せないから、答弁が下手な防衛相・中谷元に質問を集中させ、なんとか「失言」に導いて首を取ろうと懸命になる。


安倍には辻元にその邪心が見えるから「早くしろ」と言いたくなるのも無理はない。安倍が謝ると民主党幹事長・枝野幸男が「首相としてあるまじきことが堂々と全国民注視の下で起きた」と鬼の首でもとったような発言をするが、これが民主党の限界だ。


ヤジも人による。政権担当能力に決定的な欠陥があった鳩山由紀夫や菅直人がこんなヤジを飛ばせば「国家の一大事」だが、普段は紳士的な首相が、勢い余って不規則発言するくらいは笑ってすませることだ。とりわけ相手が辻元だから、茶の間では笑って手を叩いている。面白くもない委員会審議が面白くなって喜んでいるのだ。
 

とにかくこんな事はどうでもよい。注目すべきはシャングリラ会議だ。中国による南沙諸島の埋め立て問題が焦点となる。


その前に、もう一つ注目すべきは米国が米軍のアジア太平洋地域のトップの司令官に、横須賀市生まれで日系アメリカ人のハリスを任命したことだ。明らかに緊密化した日米安保体制を象徴させる政治的な意図が感じられる。


27日には、ハワイで国防長官カーターや日本の駐米大使・佐々江賢一郎らが出席し、交代式が開かれている。この席で カーターは、スプラトリー(南沙)諸島で岩礁埋め立てや施設建設を進める中国の動きについて「中国は、国際規範や、力によらない紛争解決を求める地域の総意を乱している」と強く非難した。さらに「国際法が許す限り、米国はあらゆる場所で、飛行、航行、作戦行動を続ける」とも言明した。
 


当面の米国の基本的対処方針は、空と海から監視を強化して中国をけん制、フィリピンやベトナムなどを支援して監視活動を強化。国際世論を喚起して、中国を孤立化させるという総じて迂回作戦をとることになろう。


国際世論の喚起では、中国が不利な立場に立つことは言うまでもない。明確な領土主権の主張は出来ないし、行為自体が国際法の秩序を大きく逸脱したものだからだ。シャングリラ会議は中国が孤立する可能性が高い。


米国は、軍事衝突は避けたいというのが基本であり、早期問題解決は困難だ。中国の巧みなグレーゾーン化とはそういう事なのだ。しかし、戦闘機同士が何と10メーターの距離まで大接近する事例が頻発しており、一触即発的な事態が続くと見るべきだろう。
 

米国は自衛隊にも監視活動に参加してもらいたいようだが、将来は何らかの支援は出来ても、辻元が金切り声を上げるから今は無理だ。しかし、日本が政府開発援助(ODA)を活用してフィリピンに巡視船10隻を供与し、その建造が日本企業によって始まることは、地域のパワーバランスに大きく貢献するだろう。


ベトナムの共産党書記長・グエン・フー・チョンは、書記局長として初めて米国を7月に訪問する予定であり、南沙諸島問題で連携を強化する。シャングリラ会議では30日に日韓防衛相会談が予定され北朝鮮の核・ミサイル問題についても話し合われる見込み。カーターを交えた日米韓3カ国防衛相会談も予定されている。


3か国会談での日米の基調は、対中けん制にあるが、中国になびく大統領を頂く韓国をこれに巻き込むのも重要ポイントだ。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)