2014年12月11日

◆秘密保護法でようやく「普通の国」に

杉浦 正章




安倍政権での報道抑圧はあり得ない
 


しょせん政権側は秘密を守る習性があり、マスコミはこれを暴く習性があるのだ。特定秘密保護法が施行されたが、同法があろうがなかろうが関係はない。未来永劫にこのいたちごっこの戦いは続くのだ。


マスコミは「取材源が萎縮する」と言うが、法案を口実に萎縮しているのは記者の方ではないか。甘えてはいけない。萎縮しようがしまいが、国民のためにならない情報は公に報道する。これが報道の基本であり、平たく言えば記者根性というものだ。


そもそも特定秘密保護法は欧米でもアジアでも各国が共通して施行している法体系であり、日本がようやく普通の国になっただけのことだ。漏洩への最高刑は米国も中国も死刑だが日本は懲役10年とゆるやかだ。


その死刑があり得る機密漏洩をめぐるマスコミと政権のすさまじい戦いを米国で特派員時代につぶさに見た。71年のペンタゴン・ペーパーズ事件だ。


ニューヨークタイムズがベトナム戦争に関する国防総省の機密文書を連載し始めたのだ。秘密文書作成にかかわったダニエル・エルズバーグから入手したものだ。


事態を重視した大統領ニクソンはペンタゴン・ペーパーズの新聞への掲載を国家安全保障に脅威を与える国家機密文書の漏洩であるとして、記事差し止め命令を求め連邦地方裁判所に提訴した。マスコミと政権の血みどろの戦いが展開されたが、最終的には連邦最高裁判所での上告審で「政府は証明責任を果たしていない」という理由で却下された。


まさに言論の自由が勝利した瞬間であり、以後の判例や、政府の方針決定に大きな影響を与え、米国は結局ベトナム戦に敗北して撤退した。


このように、言論の自由とは基本的にはマスコミと政権の対峙の中から戦い取るものであり、天から与えられるものでもない。秘密保護法があろうがなかろうがこの構図には変わりはない。それに今回の秘密保護法を見れば、とてもこれにより日本が全体主義に陥り、言論活動が抑圧される性格のものとは思えない。


だいいち首相・安倍晋三が「和製ヒットラー」になるとも思えない。安倍自身テレビで「秘密保護法はテロリストやスパイ工作を対象にしたもので、国民とは全く基本的に関係はない。報道が抑圧される例が生ずれば私は辞めますよ」と言明している。


もともと日本は世界の主要国から「スパイ天国」と見られており、昔内調室長が「アメリカですら、信用して情報をくれない。モサド(イスラエル諜報特務庁)からもらう情報が多い」と嘆いていたのを思い出す。それはそうだろう、法律の不整備と公務員の弛緩が原因で数多くの機密軍事情報が日本からソ連や中国に流出したと言われる。


その氷山の一角が7年前に発覚した自衛官によるイージス艦の性能に関する機密漏洩事件だ。国防のトップ機密をよく中国に漏らしたと思われる事件だったが、今中国海軍はイージス艦そっくりの高度なシステム艦を保有して、これ見よがしに演習に繰り出している。


これら軍事情報の流出はまかり間違えば国民の生命、財産を危険にさらすことになりかねない。何十万人もの死者を出す事態が機密漏洩で発生しないとは限らない。例えば迎撃ミサイルに関する情報が中国や北朝鮮などに筒抜けになれば、安全保障戦略が決定的に不利な状況に置かれかねないのだ。


安倍の「辞めます」発言に関して朝日は「要するに政権を信用して欲しいということだろうが、それをうのみにするわけにはいかない」と拒絶反応だ。折から偶然にも選挙期間中に法律が施行される事態となった。ここは安倍が堂々と秘密保護法の必要を説けばよい。おそらく有権者は自民党を圧勝させることにより、「政権を信用」するだろう。


野党や毎日など一部マスコミは選挙中の施行に反発している。民主党幹事長・枝野幸男が「衆院解散により不十分な国会の監視システムすら設けないままの状態で施行するのは問題」と噛みつけば、社民党幹事長の又市征次も「衆院議員が誰もいない中での施行は言語道断」と批判。これこそノーテンキな無知丸出しの事実誤認だ。


昨年12月6日成立、同年12月13日に公布された法律には「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」となっている。それを受けて政府は10月14日の閣議で12月10日施行と決定しただけである。解散風は11月9日から吹き始めたのであり、10月の時点では誰も安倍が解散・総選挙に踏み切るとは思っていなかった。


したがって閣議がこの段階で解散にぶつけようと思って日程を組むことはありえない。おまけに選挙に不利に働きかねない法律の施行を選挙期間中にあわせるなどと言うことはあり得ない。


そもそも法律は成立したのであり、野党が1年たってから噛みついても遅いのだ。黒白は選挙が付ければよい。安倍が原発再稼働、集団的自衛権の行使とともに秘密保護法も「選挙圧勝」で信任を受けることは確実だ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年12月10日

◆自民圧勝は「リベラル4兄弟」の敗北

杉浦 正章

 


一部マスコミは原発・自衛権で論調を転換せよ
 


まれに見る自民党圧勝の構図が出来つつあるが、総選挙の結果はマスコミの論調の在り方にも問題を投げかけるだろう。


最大の焦点がアベノミクスの是非に絞られているからその陰で比較的目立たないが、大きな焦点はさらに2つある。来年待ったなしとなる原発再稼働と集団的自衛権容認の安保法制への事前信認だ。


自民党は両問題を正式に公約として掲げて戦っている。マスコミはこれに反対する朝日、毎日、TBS、朝日テレビの「リベラル4兄弟」と、是認する読売、産経の「安部寄り義兄弟」に分かれて論戦を展開しており、選挙情勢はリベラル4兄弟の敗北がはっきりする流れだ。


おそらく4兄弟はめげずに来年早々から原発・集団的自衛権反対を主張し続けるだろうが、3回の国政選挙で民意は明白である。ここは、敗北を認め民意を尊重した論調へと転換すべき時ではないか。


今回の選挙で自民党は、両重要案件について公約で明白な立場を打ち出している。原発に関しては「原子力は安全性の確保を大前提に、重要なベースロード電源との位置づけのもと、活用していく」と再稼働を明示した。


一方集団的自衛権の行使容認に関しては「7月の閣議決定に基づき、平時から切れ目のない対応を可能とする安全保障法制を速やかに整備する」と通常国会での法制化を明言している。


両案件が公約として明示されたことになるが、12年の総選挙でも、13年の参院選挙でも総裁・安倍信三と幹事長・石破茂は、これを明言して選挙戦に臨んでおり、報道もされている。事実上の公約と受け取られてきた。


つまり自民党は明言して過去2回の国政選挙で信任を得ているのだ。今回の総選挙での圧勝は、原発と集団的自衛権の行使で最終的に民意の信任を得る選挙となるわけだ。


まず原発については、一部マスコミは1200年に一度の大津波で発生した事故を金科玉条にして反対しているが、事故による直接的な死亡例はゼロだ。チェルノブイリは死者が30数人だが、これは核爆発であったから当然だ。


フクシマの場合は所長以下職員の必死の働きで事故を押さえ込んだのが実態だ。事故を教訓に原子力規制委員会は世界で最も厳しい認可基準を設定、鹿児島川内原発は来年早々にも再稼働する流れとなっている。


反対派のマスコミが無責任なのは、原発停止によるマイナスの側面を全く無視して、昔の社会党並みに「何でも反対」を唱え続けていることだ。国富が年間4兆円も流出し、景気の足を引っ張っていることは無視。世界で一番高い電気料金がさらに値上がりしてあえいでいる庶民や中小企業のことなど見て見ぬ振りだ。


一方世界に目を向ければ、朝日と親密な関係にあるニューヨークタイムズは化石燃料による地球温暖化と頻発する自然災害への懸念から、「原発やむなし」の論調を打ち出している。


温暖化への新枠組みは来年末のパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で決定の運びとなる。米中両国は11月の首脳会議で方向を打ち出し、欧州連合も野心的な削減策を決めている。


日本は原発の総エネルギーに占める割合が定まらず、具体的な数値決定が遅れている。開催中のペルーのCOP20では、来年5月までの提示を求めており、遅れている日本への重圧となっている。提示できなければ国際社会から総スカンを食らうことは必定であり、そのためには早期稼働が不可欠となっているのだ。


リベラル4兄弟はこうした大局的視点がゼロであり、論拠なしで反対のための反対を扇動している。これではいずれは国民の不信を買うことは必定だ。


集団的自衛権の行使についても、読売は社説で「集団的自衛権、行使容認の意義を堂々と語れ」と主張しているが、リベラル4兄弟はこれまた反対のための反対だ。まるで中国の海洋進出が見えないかのような論調だ。


中国国家主席・習近平はオバマとの会談で繰り返し太平洋2分割論を主張し、東・南シナ海への進出を正当化しようとしている。日中対話のムードが出てきているのは歓迎すべきだが、中国がその世界戦略である海洋進出を断念することなど金輪際あり得ないだろう。


極東情勢は基本的には、「冷戦構造」なのである。集団的自衛権の行使容認は国連憲章で認められている普通の国の安全保障であり、その法制化は遅きに失したくらいだ。


こうしてアベノミクスに勝るとも劣らない、2つの課題が有権者の信任を得つつある。自民党は公約に掲げての選挙であり、その結果に基づいてまずは遅れに遅れている原発再稼働にまい進すべきである。そして来年4月以降は集団的自衛権の行使容認に向けて法整備を急ぎ、通常国会会期内に粛々と成立させるべきであろう。


リベラル4兄弟も民意の動向を考え、その路線を是正した方がよい。これは友情ある説得だ。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年12月09日

◆総選挙結果で「新55年体制」視野に

杉浦 正章




油断しなければ自民党長期政権の構図



生活の党代表・小沢一郎本人が危うい選挙情勢だ。自民党は官房長官・菅義偉に続いて首相・安倍晋三も岩手4区に入り、攻勢をかける。必死の防戦の中で小沢の唱える「選挙後は新55年体制に陥る」という見方が説得力を持って語られ始めている。


55年体制とは保守合同から38年間続いた自民党と社会党対決の構図だが、総選挙結果を展望すると確かにそう言えなくもない。


55年体制は東西冷戦と高度経済成長への期待を基礎に自民党長期政権が維持されたが、ソ連に取って代わった中国の進出による極東冷戦の構図と、アベノミクスへの期待感は、社会党の殻を引きずる民主党への不信感と直結して新たな自民党長期政権の構図を生みつつあるようだ。


ただし、中選挙区と違って小選挙区制は「風」が左右する側面があり、油断すれば一挙に奈落の底に落ちることになる。


小沢は55年体制を崩壊させた立役者だから、一層身にしみて感じているのだろう。「このままなら自民党の与党時代が続く新55年体制になり、国民は日本が沈没するまで嫌々自民党政権を選ぶことになる」と毒づいている。


民主党を中心に第3極を集合させる新党構想が、民主党から相手にされず、破れかぶれなのは無理もない。しかし国民は見抜いている。小沢が作っては壊した政権が、再び登場してはそれこそ「日本が沈没する」と見ているのだ。


だから小沢が狙った新党によるブームは絶対に起きない構図になっていたのだ。これを理解できないのは、過去の栄華にすがる老人のさがであろうか。


ただ「新55年体制」そのものは説得力がある。55年体制は1955年に右派社会党と左派社会党が一本化して日本社会党になり、これが保守系政界と財界の危機感を呼んで、日本民主党と自由党が一本化して自由民主党になったのだ。


以後自民党は安保改定を軸に対米協調路線で高度経済成長を果たし、社会党は社会主義イデオロギーに根ざした反対勢力の立場を維持した。その勢力比は55年体制発足後の最初の58年の総選挙で自民党が287議席、社会党が166議席を獲得して全体のなんと97%を占め、以後議席数がほぼ2対1の比率が維持され続けた。


有権者はこの間改憲に必要な3分の2議席を自民党に与えなかったが、社会党への政権交代は拒絶し続けた。絶妙のバランスを維持したことになる。


55年体制発足以来13回の選挙結果を平均すると自民党271議席、社会党118議席である。宮沢政権時代1993年の総選挙における新党ブームで自民党が結党以来最低の233議席と惨敗、非自民の細川護煕政権が樹立されて55年体制は崩壊した。


今回の選挙予測も新聞の予測は序盤から変化はなく、毎日に到っては終盤も自民単独で3分の2の317議席を取りかねない勢いであるという。マイナスに響く「アナウンスメント効果」どころか「勝ち馬に乗る」傾向が出ているのである。少なくとも自民公明で3分の2獲得の方向は確定的となっているようだ。


民主党は70か多くて80議席。第3極は失速して全く不振で維新は40議席を割るどころか30議席割れもあり得る状態だ。一強体制がさらに加速され、野党は民主党のみが辛うじて中規模政党として残るという構図だ。


自公与党対民主党の割合はほぼ5対1か4対1という構図になる。これが意味するものは新55年体制は55年体制の2対1どころか与党が圧倒的な数を占める体制であり、よほどの疑獄事件や不祥事が発生しない限り、逆転する可能性は当分ない。


つまり55年体制より新55年体制は与党が数の上では2倍以上強化された体制となる。


中選挙区制が小選挙区比例代表並立制に変わって以来、政権交代は「風」が作用している。民主党政権が出来たのは「反自民の風」であり、自民党が奪回したのも「反民主の風」である。いずれも大失政が原因だ。したがって小選挙区制下における自民党政権は中選挙区時代ほど安定したものではない。


小選挙区制での選挙における自民党議席を見ると、96年の41回239議席、42回233議席、43回237議席、44回296議席、45回119議席、46回294議席、今回の47回は300議席前後の見通しとなっており、3勝4敗で、それも大きくぶれる。


落差が激しいのだ。これは油断した途端に政権がひっくり返りかねないことを意味するが、安倍にとってのプラス要因としては外交・安保とデフレ脱却への動きがある。


新聞は悔しいとみえてあえて書かないが、外交・安保の成功が投票行動に大きな影響をもたらしているのだ。


外交・安保では安倍は歴代首相に抜きん出る功績を成し遂げている。とりわけ領土的野望むき出しの中国と日米安保とアジア各国との包囲網を軸に対峙する姿勢は、米ソ冷戦時代を上回る安全保障上の必然性を帯びており、安倍の目指す路線に狂いはない。


当分極東での冷戦の構図は強弱はあっても変化はしまい。対韓問題では歴史認識で大幅な譲歩を重ねた宮沢政権が国民の不信を買って、55年体制を崩壊させる一因となった。安倍は対韓外交で安易な譲歩を避け、これが国民的人気の源泉になっている。


加えてアベノミクスが職場と賃上げとほのかな希望をもたらしたのは確かであり、「この道しかない」という訴えが、野党の主張を霞ませている。逆に民主党政権のポピュリズムが、国民に不信の構図を根付かせて容易に解消する流れとなっていない。こうして自民党ひとり勝ちの構図が出来上がりつつあり、新55年体制の長期政権が見通せるようになってきたのだ。




    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年12月05日

◆言論合戦を採点すれば見えてくる

杉浦 正章




自民に勢い、民主はじり貧
 


「先生の反った身体(からだ)が前に折れ」は4日の朝日川柳。街頭演説の先生を皮肉って巧妙。まさに論戦たけなわだが、政治家は言葉が命。何を言うかで存在感が決まるが、点数を付けるとキーポイントになる発言で民主党首脳らは負けの連発だ。


まず首相・安倍晋三が繰り返す「アベノミクスはこの道しかない。流れを止めるか止めないかの選挙」というキャッチフレーズは訴求力がある。


民主党の前原誠司が「アベノミクスはこの道しかないのではなく、この道は危ない」と食いついた。確かに危うい側面があるが、雇用が改善、賃金が上がった。実質賃金は下がったが、民主党政権で雇用が改善して賃金が上がったなどということは金輪際なかった。民主党の「財源なきばらまきの道」の方が「危なかった」のだ。


したがって7対3で安倍の勝ち。


選挙の潮流は自民300議席の「圧勝」へ向かっているが、野党幹部にはもう跳ね返す気力も失せたかのように見える。民主党の岡田克也は「我々は政権交代の力はまだない。国会で一定の数を得て巨大与党に立ち向かえる数を与えて欲しい」となにやらしおらしい。


当初は野党の選挙協力の中心で張り切っていたが、まるでバナナのたたき売りのようにハードルを下げた。点数を付ければ45点。生活の党の小沢一郎も「政権担当への受け皿を作れば有権者は野党の統一体を選んだが、出来なかったので当然の結果」と敗北を認めた。


しかし有権者は小沢のいうように新党を作ったら、また内部分裂で民主党政権の体たらくの繰り返しと見るだろう。新党が出来ても有権者は「ダメよ〜ダメダメ」であっただろう。判断を間違って16点。


民主党代表・海江田万里は「分厚い中間層が再生され、中間層が健全な消費を行っていくことが経済の成長の大きな要になる」と訴えるが、道筋がない。安倍から「手品のような方法があるのか」と切り返された。7対3で海江田の負け。


国内総生産(GDP)で切り返そうと枝野が「民主党政権時代はGDPは5%。安倍内閣は1.7%」と主張したが、これは公明党代表・山口那津男が「2008年のリーマンショックのどん底から這い上がるために我々の自公政権が経済対策を打った。その効果が民主党政権時代に現れただけだ」と切り返してあえない最期。


確かに民主党政権時代には経済成長の言葉は発せられず、デフレ脱却などという発想そのものがなかった。農家の所得保障、高速代金無料化など財源なしのばらまきばかりが目立った。7対3で山口の勝ち。


めげじとばかりに枝野は「解散に大義がない」と主張したが、本人は、9月の段階で「私が安倍氏なら、この秋に解散をやると思っている。下手をすると臨時国会冒頭かもしれない」と発言している。それがいざ解散となると「大義がない」では通用しまい。


自民党副総裁・高村正彦から「立場立場、その時その時で言葉を使い分ける政治家はいらない」と止めを刺されてはぐうの音も出ない。またまた9対1で枝野の負け。


解散の大義を言うなら元衆院副議長でノーバッジの渡部恒三のように言わなければ駄目。渡部は「吉田のバカヤロウ解散でも理由はあったが、今度の解散みたいに理由のない解散は初めてだ」が一番的を射ている。


渡部に90点。考えてみればもともと294議席あったのに、それを維持しただけで「圧勝」と言うのはおかしな話だが、これが「政治マジック」の極みだから仕方がない。


公示日にあたって朝日の政治部長が自民党の小泉進次郎の言葉「どっちを選びますか、という戦いは今回はなじまない雰囲気がある。白か黒かじゃなくて、謙虚に丁寧に国民との対話をする選挙だと思う」に「もっとも得心がいった」と書いていたが、果たしてそうだろうか。


選挙の本質は食うか食われるかであり、アベノミクスの是非は重要ポイントだ。


小泉は解散のバンザイにも同調せず「今回の選挙戦は、寒い時に温泉に入ってじわっと中から体が温まってくるように訴えを続けていかないと、なぜ今解散なのかと思っている方々の心に届かない。テンションが高く、あおるような演説ばかりをしていては響かない」とも述べているが、響いているから300議席が見えている。


なぜか小泉は最近斜に構えて、格好づけをするようになってきた気がする。選挙というけんかの仕方を知らない。今回の選挙では得意のセンスのある「洒落た言葉」は出ないままだ。原発反対の親父に感化されては将来がないぞ。40点。

【筆者より】6日でめでたく74の誕生日を迎えました。ここで自分に誕生日祝いをあげようと思います。それは日曜の休日化です。これまで10年間日曜返上で情報を収集、書き続けてきましたが、今後は人並みに休むことにします。したがって毎週火曜日の開始となります。これにより、家人や友人が言う「いつぶっ倒れるか」の懸念はなくなり、あと10年は書き続けることができます。よろしくご協力ください。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年12月04日

◆安倍の長期政権確定の流れ

杉浦 正章



衆院300議席前後で自民圧勝へ
 
アベノミクス解散が大当たりにあたった感じだ。朝日、読売、毎日の各紙 の選挙情勢調査が「自民圧勝」の構図を示している。朝日が自民単独で 300議席と踏み切った。

毎日も「自民300議席超す勢い」。読売は「自公で300議席」と慎重だが、 自民は「293議席をうかがう」としている。

選挙まで10日の時点での調査はまず外れない。誰もが予想しない結果とな りそうだが、首相・安倍晋三のみは支持率が高い「今のうち解散」を断行 するという“賭け”に成功したことになる。

この政治の「読み」は卓越しており、長期政権が視野に入ってきた。野党 は「風」を頼りの第3極が全く振るわず、民主党を中心とする選挙区調整 も政策度外視の「野合」の色彩が濃く、有権者の民主党への不信の念は定 着したまま動かない。

朝日によると自民党は「単独で300議席を上回る勢いであり、公明党と合 わせて3分の2の317議席をうわまわる」と分析している。

読売は公明党と合わせて300議席を上回る勢いである。同紙は自民党が小 選挙区で200人近くが優位に立っており、比例選では70議席台と予想し 「絶対安定多数を越え公示前の293議席確保もうかがっている」としている。

公明党については朝日が「公示前の31議席確保」、読売が「31議席を上回 る」、毎日が「31議席からの増加も」と予測。

一方野党は、民主党について朝日が「小選挙区は公示前の25議席から10議 席前後は上積みしそう。比例区は公示前の37議席を上回るかどうか」と予 想。読売は「海江田代表が掲げた3けたの目標には届かない」としている。

毎日は「70議席前後」とした。選挙区調整の候補一本化が誤算であった感 が濃厚に出ている。

一方前回躍進した維新は朝日が「40議席を割り込む見通し。小選挙区は1 けた、比例区も30議席台を割る可能性も出てきた」との見通し。読売も 「小選挙区で優位なのは1けた台。比例区は20議席台」と同様の見方だ。

毎日は「42議席維持は難しい」。ほかの3極は低迷の極みで見る影もな い。野党のうち共産党だけは朝日が「2けた台の議席獲得が有力」、読売 が「公示前の8議席からの倍増をうかがう」としている。

各紙の調査結果が物語るものは、民主党と維新などが小選挙区での乱立を 防ぎ、野党票を効率よくまとめようとした選挙区調整が大きな効果をもた らしていないことを物語っている。

原発再稼働にしても、集団的自衛権の行使にしても政策上の大きな違いを そのままにして、とりあえず候補の一本化を図ろうという「野合」的発想 が否定されつつあるということだ。有権者が反自民ならまとまるという判 断自体が誤算であり、有権者の意思をないがしろにしたものであった。

また前回「風」が吹いて躍進した、第3極も2年間で有権者の「熱」が冷 め、選挙前から崩壊し始めていた。この選挙区調整と「第3極崩壊」がも たらしたものは、自民党への有利な状況である。

やはり経済と外交・安保における安倍の2年間の実績が、国民の間でその 支持率と同様に高く評価されていることを物語っている。

有権者への訴えも「アベノミクスを途中で投げ出すか、推し進めるかの選 択」という設定が奏功した。民主党代表・海江田万里を始め野党の主張 は、自らの政策を打ち出すと言うより、アベノミクスにケチを付ける感が 濃厚であった。党利党略・個利個略の解散がまさに図に当たったことになる。

保守合同後の自民党が300議席前後になるという結果は、岸信介の「話し 合い解散」で287,池田勇人の「安保解散」296,同「所得倍増解散」 283,佐藤栄作「沖縄解散」288、大平正芳「ハプニング解散」284,中曽 根康弘「死んだふり解散」300、小泉純一郎「郵政解散」296、野田佳彦 「近いうち解散」294議席の例がある。

280議席以上取った首相は、最長政権が佐藤、次いで小泉、中曽根、池田 の順で長期政権となっている。

政界は一寸先が闇だが、それを言っては予測が立たない。安倍の場合も来 年9月の自民党総裁選挙で再選され3年の任期が確保される方向だろう。

通常国会は自民党圧勝選挙で野党が脳しんとうを起こして、予算案も年度 内に成立、その後の集団的自衛権法制化も通常国会で実現する流れとなろう。

自民党内には獲得数によっては憲法改正の動きが強まることも予想される が、集団的自衛権の行使が容認されれば、政権のエネルギーを改憲などに 使うより、アベノミクスの総仕上げによるデフレ脱却、極東情勢の改善な どに使うべきであろう。

自民党が現状よりも多い300議席を獲得した場合、日経平均株価は2015年 3月末までに2万円の大台を回復する可能性があるという見方が兜町で強 まっている。


<「衆院選に関心」69%、前回下回る…読売調査

読売新聞 12月3日(水)23時0分配信

読売新聞社の全国世論調査で、今回の衆院選に関心があると答えた人は、 「大いに関心がある」29%と「多少は関心がある」40%を合わせて69%と なった。

戦後最低の投票率59・32%(小選挙区)を記録した前回2012年衆院選時の 81%を12ポイントも下回っており、投票率の低下が懸念される。

関心があると答えた人は、前回に比べて全ての年代で減少した。最も下げ 幅が大きかったのは40歳代で、前回比16ポイント減の64%。30歳代は15ポイント減の58%、50歳代では14ポイント減の69%だった。最も関心が低 かったのは20歳代で、55%だった。支持政党別でみると、自民党支持 層は76%、民主党支持層は77%だったが、無党派層では56%にとどまった。>

<今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)


2014年12月03日

◆自民党のテレビ偏向への要望は当然だ

杉浦 正章




明らかに中立を逸脱しているケースが多い



選挙の戦いとは別に選挙報道の中立性を巡って安倍政権とテレビ局との間ですさまじい裏バトル・暗闘が展開されている。


一部民放やNHKの番組の「偏(かたよ)り」についてはかねてから筆者も指摘してきたところであるが、自民党が堪忍袋の緒が切れたとばかりに四項目にわたる「お願い」の文書を民放キー局5社とNHKに送った。


朝日は社説でこれを取り上げ批判しているが、要望をよく読んでみれば、至極当たり前のことで、とても言論弾圧などと呼べるものではない。普段のテレビによる「政権弾圧」の方がよほど問題がある。この際、テレビの偏向報道についても選挙の争点にしてはどうか。
 

公平中立の要望書は自民党筆頭副幹事長・萩生田光一、報道局長・福井照の名前で出された。その内容は@出演者の発言回数や時間に公平を期していただきたいAゲスト出演者の選定についても中立公平を期していただきたい


Bテーマについても特定の出演者への意見が集中しないよう中立公正を期していただきたいC街角インタビューや資料映像等で一方的な意見に偏る、あるいは特定の政治的立場が強調されることがないよう公平中立、公正を期していただきたいーというもの。


また要望書では、「過去にはあるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道を行い、大きな社会問題になった事例も現実にあった」とテレビ朝日の「椿事件」とみられる事例を挙げている。


直感的に安倍の指示かと思ったが、安倍は党首討論で聞かれ「いちいちそんな指示はしない。党としてそういう考え方でやったのだろう」と述べたが、過去のケースを見れば安倍の関与は一目瞭然。


安倍は幹事長時代の衆院選挙を控えた2003年11月にテレビ朝日が、「民主党の菅直人の政権構想を過度に好意的に報道した」として抗議。2004年7月の参院選の際の選挙報道に対してもテレビ朝日に文書で抗議している。2度やることは3度やるのであろう。


しかし安倍の主張は全く妥当である。公平に見て日本のテレビ局の場合、放送法で定められている報道の中立性などどこ吹く風の報道ばかりである。申し入れの4項目も、これによって報道の自由が規制され、日本が全体主義になる気配などみじんも感じられない。「公平に報道してくれ」と頼み込んでいるだけだ。


4番目の「街角インタビュー」について言えば、あらゆるテレビの報道のうちでこれほど客観性、公平性に欠ける報道はない。放送局の思うがままに発言を選択するからだ。一番ひどいと思ったのは特定秘密保護法案が衆院を通過した昨年11月26日午後7時のNHKのニュースだ。


街の声は全てが反対論で統一されていた。これが公共放送の報道かと思った。それでは自民党と犬猿の仲にあるテレビ朝日が要望をどう受け止めたかだが、まさにぬかに釘であった。


選挙公示の2日夜の報道ステーションでは「街の声」が大いに偏っていた。7人聞いたうち、1人はほぼ中立、2人は「投票しない」、後の4人は「年金カットが心配」「世の中きな臭い」「仮設住宅は限度超える」「就職が不安」で皆批判的。政権を肯定する声は1人もいなかった。


さすがにメインキャスターの古舘伊知郎は「私も言うことがいっぱいあるんですが、ここまで出てくるんですが、この時期だと叱られちゃうんですよ」とぼやくにとどまって、朝日新聞論説委員・恵村順一郎にふった。惠村は「ぴったりくる政党がない方が多いだろうが、例えば重要政策だと思う政策で2つの政党を選んで一つは小選挙区で入れ、もう一つは比例区に入れることがあっていい」との投票方法を勧めた。


まさかステーションが自民と公明の2党に入れよと言うわけがないから、野党への投票の勧めであろう。自民党の要望などいくらでも抜け道があって、海千山千のテレビ様にはかなわない証拠だ。


朝日の社説は先に挙げた自民党要望書の「偏向報道」の部分について「当時の郵政省も放送法違反はないと認めた。文書がこの件を指しているとすれば、偏向報道は誤りだ」と噛みついている。


しかしテレビ朝日報道局長の椿貞良は「なんでもよいから反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないか」と他局に偏向報道を働きかけたのである。


郵政省は厳重注意する旨の行政指導を行うとともに、1998年のテレビ朝日への再免許の際に、政治的公平性に細心の注意を払うよう条件を付した。偏向報道には至らなくても「偏向報道の勧めと扇動」は明かであり、社説で弁護する価値はない。


椿が具体的に社内に指示し、その通りの報道をしていれば、確実に放送法違反として電波法第76条に基づく無線局運用停止がありえたであろう。つまりテレ朝は放送免許停止でなくなっていた。その後もテレ朝は“改心”どころではなかった。


2009年にはコメンテーター・吉永みち子が「鳩山首相が審議そっちのけで衆議院本会議中に扇子に揮毫(きごう)する一幕があった」というニュースに関連して、「こういう大変な時にね、一生懸命、我々も支持率を下げないでね、辛抱して支えてるのに、何なんだよと。そういうことになってしまうんで。ささいなことのようだけど、重なるとボディーブローのように利いてくる」と発言している。


「我々も鳩山政権を支えている」とは偏向もいいところで、明らかなる放送法違反だ。普段のテレ朝内部の空気が馬脚を現したものに他ならない。自民党は言われっぱなしで泣き寝入りする必要は無い。日本を支える政党としての矜持をもって、テレビ報道の偏向にチャレンジすべきである。


     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年12月02日

◆自公で、266の絶対多数議席維持か

杉浦 正章



安倍有利の「景気・雇用」に焦点
 


比例区投票先調査から見る限り、衆院選挙自民党独走の流れが生じている。全社出そろった同調査結果を自民圧勝の12年のケースと比べると、自民党への投票が倍増または倍増近くなっている。


選挙の焦点も「景気・雇用」重視の傾向が強く、首相・安倍晋三の「アベノミクスの流れを進めるか止めるかの選挙」という訴えがかなり利いている感じが濃厚だ。過去2回にわたって政権を交代させた「風」は吹きそうもなく、風なき選挙の争点がアベノミクス論争となった。


投票率も下がりそうだがこれは組織政党としての自民にプラスに作用する。野党の候補擁立調整が進んで、自公で326の現有議席は減らしそうだが、自公が狙う合わせて266議席の絶対多数は達成できる公算が出てきている。したがって政権交代はまずあり得ないというのが潮流だ。


注目すべきは国民の関心が経済に集中する傾向を見せ、野党や一部マスコミが狙う集団的自衛権の法制化、原発再稼働の争点化が空回りする流れとなっていることだ。


朝日の調査では有権者の重視するポイントは「景気・雇用対策」が47%で最も多く、「原発再稼働」は下位の15%、「集団的自衛権の行使容認」は12%だった。「景気・雇用対策」と答えた人の比例区投票先は自民が43%で、12%の民主などを引き離した。


最大のポイントは集団的自衛権行使容認を「評価しない」とした人や原発再稼働に「反対」の人でも、比例区投票先は「自民」が最も多かったことだ。


読売の調査でも安倍内閣の経済政策を「評価しない」と答えた人のうち、比例選で自民党に投票すると答えた人は18%で、民主党の23%と小差である。また、安倍首相の衆院解散を評価しない人の30%が投票先を自民党としており、民主党とした人の17%を引き離している。


この結果はアベノミクスの評価、とりわけ「景気・雇用」の動向が投票行動につながる流れを意味している。そしてそのアベノミクスの評価は朝日で「成功だ」が37%で、「失敗だ」の30%より多かった。この傾向は安倍の「雇用100万人増加、賃金も上昇している」という訴えが利いて、評価と言うより期待感が生じていることを物語っている。


つまり、この流れを推し進めて欲しいとの選択であろう。逆に民主党代表・海江田万里の「雇用が増えたと言っても非正規だ」は言いがかりじみて訴求力がない事を意味している。有権者は見るところを見ているのだ。


政権の交代については、毎日の調査で、安倍が衆院選の勝敗ラインとして言及した「自民、公明両党で過半数」について聞いたところ、自公の与党で過半数をとって政権を維持した方が「よいと思う」と答えた人が52%と半数を超えたことだ。


自公過半数を望む層の中で「自民党に投票する」は66%、公明党は10%で計76%に上る。選挙民は基本的には政権交代を望んでいない事を意味する。「野党に投票」は計51%どまり。内訳は民主党26%、共産党11%、維新の党10%など。


とりわけ注目すべきは読売の調査では、比例区で自民党に投票すると答えた人は41%で、政権を奪還した2012年衆院選の26%など過去3回の同時期の調査に比べて群を抜いて高い。09年8月の衆院選で圧勝した民主党の42%に匹敵する数値となった。


一方、民主党は14%で、政権から転落した12年と同じ水準だった。「郵政選挙」で大敗を喫した05年の20%にも達しておらず、党勢の回復傾向はうかがえない。


各社の比例区で自民党への投票も同様の傾向を見せている。朝日が12年の22%→34%、毎日17%→38%、産経22%→42%、日経23%→35%という数字だ。倍増したのが読売、毎日、産経だが各社も同様の傾向だ。12年の数字で圧勝したのだから、この数字から見る限り自民党が独走の傾向を強めていることが分かる。


まだ小選挙区別の調査結果が出ていないから、即断は出来ないが、通常比例区の投票志向が総選挙の大きな流れを示す傾向がある。加えて維新など第3極への風が、ぱたりと吹かなくなった。これは国民が浮ついてなく、それだけ投票を生活に結びつけて真剣に考えている事の左証であろう。


したがって安倍が勝敗の基準として設定した自公で238議席の過半数は、クリア出来ることは間違いあるまい。むしろ249の安定多数を越えて266の絶対安定多数議席を獲得する流れが生じているのかも知れない。


それでも公明党が31議席の現状維持程度と見れば、自民党は60議席程度を失うのだから、やらずもがなの選挙と言うことにはなる。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年12月01日

◆海江田が党首言論戦で“不振”

杉浦 正章




理路整然と数字を間違った
 


NHKの党首討論を録画して綿密に分析したが、野党は肝心の民主党代表・海江田万里がろくろく理論武装もせずに臨んだとみえてめろめろ。焦点の雇用を巡って首相・安倍晋三から完膚なきまでに討ち取られてしまった。


海江田発言は他党からも攻撃の対象になって、昼間視力が衰えるフクロウがほかの鳥からいじめに遭っているのとそっくりで、可哀想になった。


民主党も運が悪い。党首が冴えないために、絶好のチャンスを生かせないまま選挙に突入することになる。新聞報道はありきたりのことしか伝えないが、公平に分析すればするほど、海江田の「訴求力欠如」が露呈する。
 

討論の焦点はアベノミクスの是非に集中した。その中のキーポイントが景気の動向を占うメルクマールの雇用問題だ。安倍は「政権発足後100万人の雇用を作った。非正規社員が増えたが民主党時代は、雇用そのものが減った。有効求人倍率は1%を越えた」と指摘した。


これに対して海江田は「安倍さんは自分の都合のいい数字ばかり話して都合の悪い数字は言わない。1%と言うが正規の社員で比べると有効求人倍率は0.68%にとどまっている」と切り返した。


ところが待っていましたとばかりに安倍は「それでも過去最高だ。正社員の求人倍率0.68%は過去最高だ」と反論した。くしゅんとなるかに見えたが海江田は「増えたのは非正規であり、正規は9万人減少した。」と噛みついた。しかし安倍は「正規については7-9月は10万人増えた」とやりかえした。


すさまじい言論戦であったが、ここで海江田の完敗が確定。海江田は経済評論家だったにしては理路整然と数字を間違って、数字に弱いところを暴露してしまった。


一方国内総生産(GDP)について海江田は「あまり民主党のことを批判するのはやめた方がいい。民主党政権はGDPが5%伸びている。安倍政権は1.7%だ。これから期待できると言うが大きく間違っている」と開き直った。


ところが横から公明党代表・山口那津男が「2008年のリーマンショックのどん底から這い上がるために我々の(自公)政権が経済対策を打った。その効果が民主党政権時代に現れただけだ。民主党政権は配布(ばらまき)に力が入って経済成長には力が入らなかった」と指摘して勝負ありとなった。


民主党の公約にある「分厚い中間層」を海江田は繰り返し強調したが、これも維新共同代表・橋下徹が「分厚い中間層と言うが財源については何も言わない」と民主党政策の無責任さを指摘。


たしかに分厚い中間層といってもその道筋は全く提示しておらず、「財源はいくらでもある」として政権を取ったでたらめ政策の過去を“継承”している。その証拠に公約では悪名高き最低保障年金の創設を財源のめどもなく再び表明、やはりばらまきの指摘を受けた農家に補助金を配る「個別所得補償制度」も維持したままだ。


外交・安保問題で海江田は 集団的自衛権の行使を限定容認する7月の新たな政府見解について、「立憲主義に反する。許せない撤回すべきだ」と強く撤回を求めた。これには橋下が「憲法解釈の変更は内閣でも出来る。合憲か違憲かは最高裁が判断する」と、3権分立のイロハを教える始末。


確かに民主党は公約で立憲主義に反すると主張しているが、政府の新見解は、従来の見解とも一定の整合性を維持した憲法解釈の変更であり、これを立憲主義に反するというのは無理筋の話だ。


だいたい民主党の公約は「集団的自衛権の行使一般を容認する憲法の解釈変更は許さない」としただけとなっている。党内右派は行使推進論であり、行使容認是非の判断は示せないのが実情である。


最後に噴飯物の発言は海江田が、アジア太平洋経済協力会議(APEC)での日中首脳会談の実現について「私が訪中したとき首脳間で協力すべきだと言った。それが実現したのは喜ばしい」と述べた点。まるで海江田が取り持ったから首脳会談が実現したかのような口ぶりだが、認識が根本的に間違っている。


民主党側は当初、国家主席・習近平との会談を要請していたが、会えたのは中国共産党の序列5位・中央政治局常務委員の劉雲山だけ。自民党副総裁の高村正彦は序列3位、社民党の訪中団ですら4位の幹部と会談しており、海江田が取り持ったからといって、首脳会談が実現できる性質のものではあるまい。


要するに、安倍の急襲解散で民主党内は態勢が整っておらず、肝心の論争でボロが丸出しになった事を意味する。背後に党首に完璧な資料を渡す能力のない民主党の体たらくを感じさせる。これでは自民党へのアンチテーゼどころではあるまい。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年11月28日

◆温暖化阻止への再稼働を主張せよ

杉浦 正章




野党の「原発ゼロ・ポピュリズム」に踊らされるな
 


過去2回の国政選挙と都知事選挙は自民党が原発再稼働を主張、他党がゼロを前面に出して戦い、自民党の圧勝となったが、今回は原発論争に新たな要素が加わる。


それは来年末にパリで開かれる気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)だ。1997年の京都議定書に代わる排出削減の枠組みが決められる。化石燃料による温暖化が原因の大災害が地球上で頻発しており、まさに「地球の存否」が問われる会議だ。


既に欧州連合(EU)と米中両国は野心的な温暖化ガス削減目標を提示している。先進諸国の中で日本だけが原発の位置づけが確定せずに目標数値を決められないでいる。「フクシマ」から4年も過ぎた段階ではもう「フクシマ」は理由にならない。提示できなければ日本批判の大合唱となる。


この際野党の「原発ゼロ・ポピュリズム」にとどめを刺すためにも、自民党は「温暖化阻止に不可欠な原発再稼働」を前面に押し出して選挙戦を展開すべきだ。


安全保障上の対峙だけが際立った米中首脳会談で一番驚いたのは、両国が二酸化炭素排出量(CO2)の削減目標で合意したことだ。温室効果ガス総排出量の3分の1を排出している米中は、米国がCO2を2025年までに05年比で26〜28%削減、中国は30年ごろを頂点に減少に転じさせる。


中国が減少に転じさせる目標を提示したのは極めて大きな意義がある。総排出量では増えると見込まれていた中国が、総量で減少に転じると打ち出すのは画期的だ。北京の微小粒子状物質「PM2.5」を含む汚染の深刻さがGDP一辺倒の国をようやく目覚めさせたことを意味する。


両国とも原発稼働が前提になっていることは言うまでもない。一方で欧州連合(EU)は先陣を切って90年比で30年に40%減という野心的目標を発表した。米中両国の今回の合意で世界各国の削減目標制定作業が加速するのは間違いない。
 
なぜ、気運が盛り上がってきたかは、温暖化による災害の頻発だ。世界中で未曾有の洪水が続発、日本でも広島市で発生した土砂災害は、痛ましい限りだ。台風被害も拡大。米国では史上空前のハリケーン被害が続出。明らかに地球温暖化がもたらす異常気象だ。


そして温暖化の主因は誰が見ても化石燃料が排出するCO2の垂れ流しだ。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次報告書は「20世紀後半に観測された地球温暖化の主因は95%が人間だ」と断定している。


ニューヨークタイムズは社説で「原子力に危険が伴うのは事実だ。しかし過去に起こった原子力事故は石炭、ガス、石油といった化石燃料が地球に及ぼすダメージとは遠く及ばない」と主張するに至っている。


チェルノブイリの死者は31人だが火力発電の死者数はその何千倍にも及ぶ。大気汚染による肺がんなどの死者数は年間100万人を超え、その3割は火力発電による。これを放置できないというのがCOP21なのである。


こうした中で先進国で日本だけが化石燃料を90.6%も燃やし続けて、温暖化ガスを垂れ流しにしていても世界で通用すると野党と一部マスコミは思っているのだろうか。冒頭述べたように世界は福島の事故を死者ゼロとみて、日本は事故を抑えつつあると判断している。その事故を理由に温暖化を放置することは全く理由にならない。


「化石燃料で電力は足りている」という主張が朝日などイデオロギー的に再稼働に反対するメディアの論拠になっているが、これも地球規模で物事を見ていない。老朽化した化石燃料発電設備で辛うじて乗り切っているのだ。


反対派は再生可能エネルギーの利用を主張するが、電力5社が、太陽発電の買い入れを保留していることが物語っているように、まだ高すぎてペイしないのだ。安易に太陽エネルギーに補助金を出していたスペインは財政破たん。


ドイツも太陽エネルギーの価格を家庭にのみ転嫁して企業優遇措置を取った結果、反対運動が巻き起こり矛盾を露呈させている。一方ブラジルのようにオークション制度を取ってキロワットあたり9円にまで値下げに成功した例もある。42円の高固定価格で家庭の電気料金に跳ね返らせてきた日本は、行き詰まったのだ。


原発は来年早々に川内原発が再稼働する。現在全国12原発 19基が再稼働を目指しており、今後もその基数を次々と増やしてゆくべきであることは言うまでもない。


川内は申請から2年もかかったが、ほかの原発はもっと大幅に期間を短縮して処理されるべきであろう。また新増設や、改修による活用も視野に入れる必要がある。


野党の原発ゼロの主張は原発を重要なベースロード電源と位置づける政府・自民党とは全く相いれない。野党は首相・安倍晋三の主導する原発輸出を批判するが、自分で自分の首を絞めていることが分からない。


単に日本が儲かるだけではないのだ。福島事故の教訓を生かした深層防護の徹底により日本の原発の安全性は飛躍的に高まっている。日本の高度な原発製造技術が、中国や東南アジアに伝達されることの方が大事なのだ。


かつて中国の原爆実験で日本が放射能被害を被ったように、中国や東南アジアで過酷事故が発生すれば偏西風でもろに粉じんが日本に至る。地球的規模で見ても中国、韓国の安全度外視原発を世界に広めてはならないのだ。


さらに国富が原発不稼働によって年間4兆円も流出する。これがデフレ脱却を目指しているアベノミクスの足を引っ張るのだ。川内原発の再稼働は、地球規模で見ればまぎれもなくクリーンエネルギーを目指さなければならない人類の戦いの端緒でもある。今回の総選挙でも「原発ゼロ・ポピュリズム」に勝たせてはならない。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年11月27日

◆第3極はまるで馬糞川流れでばらばら

杉浦 正章


トップが皆戦意喪失で失速
 

第2次大戦末期ニューギニア戦線などで米軍の猛攻を前に部隊長らが「各自自活して生き延びよ」と事実上の日本軍解体を涙ながらに宣言しているが、いまそれが第3極で起きている。


生活の党代表・小沢一郎がついに所属議員らに「好きにしていい」と事実上の解体を認めた。みんなの党代表の浅尾慶一郎も「手法の違いによる解党ということだと思う」と変な理屈を付けて解党を宣言した。維新代表・橋下徹も出馬を断念した。物語るものは何か。


第3極とはしょせんはマスコミに踊らされた風に漂う浮き草に過ぎなかったということだ。今のところ野党には第3極の軒並み失速という事態が起きて遠心力のみが働き、求心力が働かない。


このバラバラの事態を政界用語では「馬糞の川流れ」という。「せめて牛糞で固まりたい」と思っても、「この指止まれ」と手を挙げるカリスマと求心力のある指導者がいない。一昔前なら小沢がそれであったが、今は落ち目の三度笠だ。


しかし小沢の動物勘というか予知能力はすごい。既に9月の段階で「再増税の判断をする前に騒ぎがおきる」と臨時国会終盤の「消費税政局」を予測しているのだ。おそらく小沢は各種経済指標を見て7−9月のGDPが壊滅的になると予測、臨時国会の最中に政局に持ち込む“最後の決戦”の作戦を編みだした。


しかし解散までは予想していなかったと見えて「野党側が候補者を決めて走らせるには、半年は必要だ。そんなに時間はない。来年の4月の統一地方選挙の後ではもう遅い」と、早期に野党が民主、維新を中心に収れんして、小沢の生活の党も民主党と合併して、野党2党が候補者を一本化する作戦を明らかにしていた。


その場合に候補者を調整出来るのは自分しかないと思っていたようで「お役に立てれば、調整する。要するに実務だ」と意欲的であった。


実際に、小沢は安倍が消費増税延期を決断したことを理由に「消費税が延期になれば、わだかまりはないはず」と親しい関係にある参院民主党のドン輿石東を通じて、民主党に打診をした。民主党を中心に第3極を糾合して新党を結成、自民党に対抗しようとしたのだ。

しかし、同党幹部は「とんでもない」と拒絶。“小沢アレルギー”は全く消えていなかったのだ。これが冒頭の「好きにしていい」との投げ出し発言につながるのだ。本人は気付かないだけで、もう小沢の活躍出来る時代ではなくなっていたのだ。


一方で、もう1人第3極復活の鍵を握っていたのが維新代表の橋下徹だ。橋下が衆院選に立候補すれば、維新に「微風」くらいは吹いたかも知れない。当初橋下は「公明党にやられたので、このままでは人生を終わらせることはできない」と事実上出馬を宣言していた。


公明党の佐藤茂樹が出馬する大阪3区で出馬する構えであった。大阪都構想を巡って決裂した公明党への私怨が募ったのだが、結局勝てるかどうかの自信が持てなかったのだろう。24日朝の街頭演説で不出馬を表明した。


橋下が出馬すれば少なくとも維新は固まった。しかし共同代表・江田憲司では「風」は吹かない。逆に風で当選した維新の1年生議員らに動揺が走り、既に10数人が民主党からの出馬を打診しているといわれる。


これに対して江田は、22日の講演で、選挙後に民主党の一部勢力と合流を目指して協議を始める考えを示した。「信頼関係をつないできた民主党の閣僚経験者と投票日の夜から話をし、自民党に対抗し得る新しい一大勢力をつくりたい」と述べたのだ。


閣僚経験者とはかねてから橋下らとの親交がある前原誠司や細野豪志を念頭に置いている。しかし普通は選挙前に新党結成を打ち出すのだが、あえて選挙後としたのはなにやらいぶかしい。選挙後では勢いも出ない。結局、離党を食い止めるのに懸命の発言なのだろう。


一方みんなの党の浅尾も、さじを投げた。もともと渡辺喜美という強烈な個性で持ってきた党であり、渡辺がつぶれては、ひ弱なインテリの浅尾では政治家集団を維持するのは無理だったのであろう。渡辺の個人商店を番頭が経営しても限界があるのだ。こうして第3極は次々に「自活して生き延びよ」になってきた。


風で当選してきた議員らはそよ風程度の逆風でも倒れるのだ。ところで焦点は、民主党代表・海江田万里の動向だ。この馬糞の川流れ現象を、せめて牛糞にできるかどうかは全て海江田の力量にかかっているといっても過言でない。


小沢の言うように新党結成が一番の訴求力があり、事実前原、細野らは衆院解散前、海江田に維新の党などとの新党結成を求めたが、応じなかったと言われている。受けていれば橋下も立候補した可能性がある。


民主党にとっての不幸は総選挙惨敗を受けて、有能な政治家が代表選に出馬することを尻込みし、二戦級の海江田を党首にしてしまったことだ。夏に「海江田降ろし」が起きたが、不発に終わった。せめて維新などとの間で選挙区調整を進めなければならないが、どのくらいの選挙区で候補者調整ができるかは不明だ。


民主、維新は約30選挙区で競合しており、この調整が焦点となるが、2日の公示が迫る中で強力なリーダーが存在しないということは痛い。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年11月26日

◆金王朝3代目が怒り狂って 日本水葬

杉浦 正章




国連でお尋ね者にされメンツ丸つぶれ
 


中国の YouTubeで金正恩登場のパロディーが爆発的な視聴率を集めている。抱腹絶倒間違いなしだ。"金三胖版小苹果"で「ぐぐる」とすぐに出てくる。


ベストセラーの「小苹果」(小さなリンゴちゃん)という曲に乗って金三胖(金王朝3代目のデブ)の金が踊りまくるという趣向。首相・安倍晋三も出てきて空手で対戦、一発で安倍が負ける。オバマは金にパンチを食らわせぶっ飛ばすといった内容で、賢いことに中国首脳は出てこない。


検閲が厳しい中国がこれを認めているということは、いかに中国国家主席・習近平の「嫌金感情」が高いかを物語る。その金に対して国連が「Wanted」(お尋ね者)の決議案を採択したのだから大変だ。おそらく金が怒り狂ったのだろう、北は日本名指しで「水葬にする」と息巻いている。


北の人権侵犯批判の国連決議は過去9回行われているが、今回はとりわけ厳しい。金が国際指名手配犯になりかねない決議だからだ。


国連総会第3委員会の決議は@国家の最高レベルによる政策で「人道に対する罪」を犯した疑いがあるA国際刑事裁判所への付託と責任者への制裁について安保理への検討を促すーという内容。明らかに「最高レベル」の表現で金を特定している。決議は111か国が賛成、反対は19か国であった。


決議は日本と欧州連合(EU)が主導したが、その背後に米国がいることは言うまでもない。来月本会議でも可決されるが中国とロシアは反対に回っており、これは安保理で拒否権を使うことを意味する。従って、成立はしないが国連外交としては勝利だ。


なぜなら、想像以上に北に対する効果があった上に、中国とロシアに悪名高い拒否権を使わせる事に成功しそうだからだ。国連外交というのはそういうものだ。


北は国防委員会が23日声明を発表し、米国や日本、韓国などとの“未曽有の超強硬対応戦”に突入すると反応した。「国連を利用して仕立て上げた人権決議を全面的に拒否、排撃する」と反発。「人権騒動のもたらす想像を超えた破局的結果に対する責任は、全面的に米国と、その追従勢力が負うことになる」と非難した。


米国に次いで日本を挙げ、「日本は近くて遠い国程度ではなく、わが方の目の前から永遠になくなる存在となることを肝に銘じるべきだ」と警告。「ひとたび聖戦を開始すれば、日本も丸ごと焦土化され、水葬されなければならない」とけん制した。


「水葬」とは穏やかでないが、どうやって水葬するのだろうか金に聞いてみたい。金が怒り心頭に発した事が意味するものは、いかに決議案のダメージが大きかったかを物語る。


将軍様が「Wanted No1」になって、逮捕される図式なのだ。成立しないから逮捕はされないが、成立した場合は国外に出ただけで逮捕されるのだから、誇り高い金王朝のメンツ丸つぶれだ。それは怒るだろう。


北は去年春にも、韓国、ハワイ、グアム、日本を特定して核ミサイルを打ち込むと脅迫。日本に対しては軍のミサイル部隊が戦闘勤務態勢に入るとして、東京、大阪、名古屋はもちろん横須賀、三沢、沖縄のアメリカ軍基地の名前も出して、「われわれの射撃圏内にある」と威嚇した。


まあ半島は日本を上回るテンション民族だから、「また狂ったか」と「一時の狂気」を気に留めないことが大事だ。ただ水葬されないように集団的自衛権の行使や秘密保護法の必要は選挙でも訴えなければなるまい。


国全体を「水葬」するのだから、もともと生存している可能性は少ない拉致被害者を巡る日朝交渉などは一層期待が持てなくなった。


北は中国からは相手にされず、日本から当面金を取れないとみたか、ロシアに急接近している。金正恩の特使として朝鮮労働党書記の崔竜海(チェ・リョンヘ)が17日から24日までロシアを訪問した。大統領・プーチンとの会談では、2国間の経済協力や朝鮮半島情勢などについて、意見を交わした。


明らかに習近平が朴槿恵とばかり接触して金正恩を無視しているのをけん制しているのだ。プーチンもシベリア鉄道や天然ガスパイプラインを伸長させ、韓国や日本への経済利益を追及したいのだろう。


金は対中貿易で空いた穴を埋められるのは有り難いのだろう。ロシアもウクライナ情勢を巡って欧米との対立が深まるなかで、アジア重視の一環として北朝鮮との経済協力を進める姿勢を示そうということだろう。


言ってみれば「つまはじきグループ」への結合であろう。両者は首脳会談をする可能性がある。また北が核実験に踏み切る可能性もある。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年11月25日

◆アベノミクスの数字に訴求力

杉浦 正章


第3極失速で、与野党逆転の余地なし
 

アベノミクス解散の緒戦の論戦を分析すれば、かさにかかって「景気失速」を追及する野党に、自公政権側は過去2年間の「経済実績」で対抗する形が浮かび上がっている。


野党はいわば足元の景気実感、与党は実績を背景にしたデフレ脱却への期待感を説く。総じて野党の攻撃に与党は「言い訳」するように見えるが、逆に数字上の説得力は与党側にある。


解散に大義あるなしの「大義論争」は明らかに首相・安倍晋三の負けだが、選挙戦が進むにつれて具体的な政策論争に移行せざるを得ない。


雇用にしても賃上げにしても民主党政権時代と比較された場合、反論の余地がないだろう。その上で、「デフレ脱却へあと一歩」を訴える安倍に、有権者の多くが希望を託さざるを得ないだろう。


要するに今回の選挙は訴求力、アピール度の勝負だ。第3極はブームが完全に去って失速、初期の論争から見る限り、政権交代が実現するほどの風は吹きようがないと見る。


解散の大義があるかどうかが当初の議論の焦点となっていたが、いざ解散されてしまうと野党も大義にこだわってばかりはいられない。もともと今回の解散は党利党略・個利個略解散であるから大義はないのだが、大義という漠然とした用語は訴求力に欠ける。


安倍は「アベノミクス解散」と位置づけ、「景気回復この道しかない」の旗印の下に、自らに有利な経済論争に引き込もうとしている。野党も不承不承ながら事実上これに応ずるしかないように思える。


不況かどうかを測るバロメーターは何と言っても「雇用」にある。不況下では「街に失業者があふれ」が常套文句だが、アベノミクス以来雇用は100万人増加し、うち女性は80万人だ。


有効求人倍率は1.09倍、完全失業率は3.6%で先進国中もっとも良好な水準にある。野党は非正規雇用が増えただけと主張するが、非正規であろうとなかろうと雇用は雇用だ。「失業」とは天と地の違いがある。


賃上げも春は過去15年間で最高の2%に達した。野党は合唱のように実質賃金の目減りを主張するが、民主党政権時代までは賃金の長期低落が続いたのであり、賃上げなどと言う言葉は夢のまた夢であった。


上がるだけでも、デフレ経済のトンネルの先に明るさが見えてきたという主張の方がアピールするだろう。倒産件数も2割以上減少し、24年ぶりの水準となった。


さらに野党は7-9月のGDPがマイナス1.6という異常な下がり方を見せたことを指摘するが、筆者は異常気象や自然災害による部分があり、一時的ではないかと思う。10-12月期以降の数字を見なければ分かるまい。


7-9でも個人消費が0.4%上向いていることが、改善の兆しと見る専門家も多い。


自民党がこうしたアベノミクスの「実績」を前面に打ち出した論争に引き込むことに成功すれば、かなり説得力が生じて来るのだ。野党は選挙を前にして狡(こす)っ辛くも増税延期に踏み切った民主党が象徴するように、解散が急襲であったため、攻撃の突破口を見つけるのに四苦八苦なのだ。


おまけに「マニフェスト」という虚飾の呼称も完全に色あせ、民主党は公約に数値目標も入れられない体たらくだ。同党幹事長・枝野幸男は「豊かなものが豊かになるだけで大部分の皆さんはそのしわ寄せで苦しくなっているのがアベノミクスの実態」と、昔の左翼政党のように感情に訴える“格差強調”戦術に出ているが、これは一部国民の「ひがみ根性」に訴えるものであり、何の生産性もない。


経済のイロハも知らずに政権を担当した鳩山由紀夫が象徴するように、民主党政権は株価を上げるすべも知らなかったのだ。株価は未来を予測しているのであって、下がるより上がった方がよいに決まっている。


こうして経済論争では6対4か、5.5対4.5で安倍有利に展開すると思う。一方で外交・安保論争に至っては、野党が付け入る隙がない。他国の領海に侵入を繰り返す中国が存在し、ミサイルと核を弄ぶ北朝鮮。


間違った歴史認識を金科玉条とする女性大統領の韓国。これら近隣諸国の「理不尽」は国民の誰もが感じていることである。


安倍が地球俯瞰外交で中国を封じ込め、日米豪準軍事同盟で対峙(たいじ)する路線は、国民に支持されている。民主党は対案を出さずに集団的自衛権の撤回を求めているが、まるで何でも反対の社会党に先祖返りしたとしか思えない。集団的自衛権の閣議決定と秘密保護法実施も含めて、外交・安保論争は9対1で安倍の勝ちだ。


一方で原発論争だが、反対派は何回国政選挙で負けたら気が済むのかと言いたい。衆院選挙では未来の党などという原発否定だけの政党が壊滅し、参院選挙でも野党は過半数割れをした。いずれも原発維持の自民党が大勝だ。それにもかかわらず、左傾化マスコミが今度は原発再稼働を軸に、有権者のマインドコントロールをして争点に押し出そうとしている。


電気料金と石油価格高騰に悩む庶民のことなど知ったことではないとばかりに、再燃させようとしている。しかしこの問題も過去2回と同じように反対派の敗北に終わるだろう。7対3で安倍の勝ちだ。


第3極は橋本徹の不出馬、みんなの党の空中分解が象徴するように完全に失速した。共同代表・江田憲司では守りが精一杯で維新拡大に弾みはつかない。


ただしNHKの日曜討論を見る限り、自民党政調会長・稲田朋美は論争能力と技術に欠けている。企業の海外移転について「企業がどんどん戻ってきて、どんどん移転をやめている」と述べたのを、民主党政調会長の福山哲郎に「あまりいいかげんなことを言わない方がよい」と指摘されて一本取られた。


福山に「少なくとも政府・与党の政策責任者ですよ。もっと根拠のあることを言ってもらわないと困る」とたしなめられたが、多くの視聴者が頼りないと感じただろう。選挙という食うか食われるかの場面であり、テレビ討論には出さない方がよい。野党がチャンスとばかりに攻撃の対象とする。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
      

2014年11月21日

◆政治詭道をえらんだアベノミクス解散

杉浦 正章



国民に見抜かれた“策略臭”
 

朝日川柳に「国民にアベノリクツを無理強いし」とあったが、言い得て妙だ。解散を命名するなら本来ならこの「アベノリクツ解散」がよいところだが、解散史には「アベノミクス解散」と残るだろう。

最大の争点がアベノミクスとその成功を期するための消費増税延期問題となるからだ。首相・安倍晋三もそこに照準を合わせる選挙にしたいのであろう。しかし、有権者の反応は総じて「なんで今なのか」である。

戦後の解散を大別すれば「打って出る解散」と「追い込まれ解散」に分けられるが、安倍の場合は「打って出る」と「過剰防衛」が同居した解散だ。内情が明らかになるにしたがって、川柳の通りに無理矢理に安倍が理屈づけをしている匂いがふんぷんとしてくる。

国民の直感は鋭い。「なんで今なのか」の背景にある“策略性”を見逃さないのだ。

歴代首相にとって最大の仕事は解散のチャンスを見定めることである。政権党にとっていつが有利かの判断である。そこに党利党略があるのは当然であり、政権延命のための個利個略があってもおかしくない。

しかし、最初からその策略を見破られてはどうしようもないし、その実態が策略が全てであってはなるまい。今日の解散はそういう解散だ。朝日の世論調査では安倍の挙げたアベノミクスの成否を問うという解散理由になんと65%が「納得しない」で「納得する」は25 %にとどまった。

安倍の支持率も支持39%、不支持40%でついに逆転した。国民は直感で何のための解散かが分かるのだ。国民をだませると思ってはいけない。

そもそも、解散風が吹きだした当初から永田町には「今後支持率を悪化させる問題がひしめいている。支持率が高いうちにやった方がよい」という説が飛び回った。原発再稼働や集団的自衛権の法制化などで支持率が落ちるという判断である。

しかしその発生源がどこなのかが分からなかったが、元朝日新聞政治部記者で桜美林大教授・早野透が朝日デジタルのコラムで「そういえば思い出した、渡邉恒雄読売新聞グループ本社会長兼主筆がある席で『いま、解散のチャンスなんじゃないか。これから先、安倍政権もいいことはあまりない。いまなら勝てる。いまのうち解散だよ』と言っていたのを聞いた」と書いている。

どうやら発生源はナベツネらしい。早野は続けて「ナベツネさんとよばれる古い政治記者、読売新聞のトップのこの話が安倍首相に伝わったかどうかは知るところではないが、果たして11月9日、読売新聞に初めて『解散』を予測する記事が出た。解散風はそこから始まったのである」と述べている。ここまで書けば玄人はナベツネの進言で安倍が踏み切ったと捉える。

謀略に明け暮れた戦争直後の政治混乱の中で、政治記者を長く務めたナベツネらしい「今のうち解散」の発想だが、解散の大義にまで頭が回らなかったのはブンヤの親玉の限界だろうか。

誰の進言かはともかくとしてとにかく安倍は「今のうち解散」論に乗ったのである。解散の動機がまるで不純である。700億円の血税を「今のうち解散」のために使うのは、遠山金四郎ではないが「やいやいてめえら、お天道様はお見通しだい」と言いたくなる。

安倍が勝敗分岐点について「自民、公明の連立与党で過半数を維持できなければ、アベノミクスを進めていくことはできない。過半数を得られなければ、私は退陣します」と、自民党が208議席まで86議席も減らしても退陣しないと言明したが、この発言も選挙の先頭に立つものの言葉ではない。

初めから負けを宣言しているのがどうも腑に落ちなかったが、やはり師匠の小泉純一郎の郵政解散の請け売りであった。

朝日が「この表現は、小泉純一郎元首相が2005年郵政解散での記者会見で語った『自民党と公明党が国民の審判によって過半数の議席を獲得することができなかったら、私は退陣する』という表現に酷似する」と看破している。朝日は「退陣という言葉で、覚悟や潔さを強調する狙いがある」と分析しているが、見事だ。

さすがに自民党も、安倍の勝敗設定を訂正せざるを得なかった。公明党と合わせて絶対安定多数を上回る270議席としたが、それでも公明が取るであろう30議席を引けば240議席だ。

295議席から55議席も失っても「勝ち」であろうか。野党の体たらくは依然「低水準」にありまだ勝ち負けは予断できないが、安倍の策略が前面に出た「今のうち解散」は、議席減が前提なのである。

議席確保は政局運営の要であり、わざわざ議席を減らす「何のため解散」は、せっかく自民党を圧勝させた国民の気持ちを裏切り、政局の詭道を歩むものに他ならない。

<今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)