2018年05月31日

◆野党質問は“冷め切ったピザ”だ

杉浦 正章

形骸化した党首討論はもうよい

イギリス議会における二大政党のクエスチョンタイムをモデルにして、日本でも1999年7月に党首討論が開始された。内閣総理大臣小渕恵三に対して民主党代表鳩山由紀夫が行った質疑が草分けだ。鳩山は「きょう総理は朝何を召し上がったでしょうか。私は、けさはピザを食べてまいりました。」と質問。小渕は「いつものとおり日本食の食事をいたしてまいりました。温かいピザを食べられたということでありますが、アメリカのオルブライト国務長官から以前、冷たいピザもまたおいしいと言われたことがあります」と皮肉った。

ニューヨーク・タイムズが取り上げて小渕を「冷めたピザ」と評したことから有名になった。30日の首相安倍晋三と野党の質疑を聞いたが、野党の質問は既に出た話しの繰り返しで「冷め切ったピザだ」やめた方がよい.

とりわけ立憲民主党代表の枝野幸男の質問は、何ら進展のないモリカケ論争に終始した。従来と同じ質問を繰り返す枝野の姿勢には、「もういいかげんにした方がよい」という茶の間の声が聞こえるようであった。片山虎之助が「もう党首討論のあり方を全面的に見直した方がいい」と述べているがもっともだ。
 枝野は安倍が「贈収賄では全くない」と答弁したのをとらえて、「急に贈収賄に限定したのはひきょうな振る舞いだ」とくってかかったが、贈収賄でなければなぜ追及するのか。安倍も夫人も潔白が証明済みであり、贈収賄でもない事柄を性懲りもなく過去1年半にわたって繰り返し追及する方が、重要な国会論議という資源の無駄遣いをしているのではないか。枝野は「金品の流れがあったかどうか。

森友問題の本質とはそういうことだ」と断定したが、大阪地検の捜査からも政界を直撃する問題は、何も出てきそうもないではないか。贈収賄があるがごとく国会で発言する以上、金品の流れの証拠を提示すべきだろう。
 枝野に比較すれば外交問題を取り上げた国民民主党共同代表の玉木雄一郎のほうが聞き応えのある質問をした。安倍からプーチンとの個別会談について「テタテでは平和条約の話ししかしていない」との答弁を引き出したのは1歩前進であった。

 総じて論戦は野党の焦点が定まらないため深まらず、開催意義そのものが問われる結果となった。当初は英国議会の例にならって2大政党の党首による政策論争を想定したが、現状は少数野党の分裂で、質問時間も立憲民主党19分、国民民主党15分、共産党6分、日本維新の会5分と細分化された。野党は自己宣伝が精一杯であり、まともな質問をしにくい傾向を示している。

 枝野は「追及から逃げるひきょうな姿勢」と「ひきょう」という言葉を何度も繰り返すが、こういう質疑の構図が生じたのはひとえに野党の議席減という自ら招いた結果であることを忘れるべきではあるまい。終了後、枝野はただ一ついいことを言った。「党首討論は歴史的意味を終えた」である。確かに与野党党首の真剣勝負の場は形骸化した。野党も分かっているなら開催要求をすべきではない。国会にはちゃんと予算委員会という総合質疑の場があるではないか。あれもこれもと要求しても、あぶはち取らずが関の山だ。

2018年05月30日

◆米朝会談へ向け動き急

杉浦 正章


金正恩側近がNYで事前協議 韓国に「終戦宣言」構想

6月12日の米朝首脳会談に向けて鼎(かなえ)が煮えたぎってきた。
ニューヨーク、板門店、シンガポールの3個所で接触が進展、大詰めの協
議が展開されている。焦点は北が「非核化」にどの程度応ずるかにかかっ
ている。

米朝ともあきらかに首脳会談前に重要ポイントでの合意を目指しており、
一連の会談の焦点は米国で開かれることが予想される労働党副委員長の金
英哲と国務長官ポンペオの会談に絞られそうだ。

まさに北朝鮮の金正恩は自らの体制維持、しいては国家の命運をかけた、
選択を迫られつつある。

一連の会談を通じて米国は北に対して「核兵器の国外への搬出とともに、
完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)を完了すれば北の体制を保
証する」との立場を伝達するものとみられる。

さらに「北朝鮮のすべての核関連施設に対する国際機関による自由な査察
を認め、全ての核を廃棄する」ことを要求。これに対して北は「米国が望
むレベルの非核化を実現するには、米国の確実で実質的な体制の保証が必
要だ」と金正恩体制の継続を要求するもようだ。

また北は非核化に合わせた制裁緩和や国交の正常化などを要求しており、
対立は解けていない模様だが、一方で融和の流れがあることは無視できない。

金正恩の外交を補佐してきた金英哲は、おそらくニューヨークで ポンペ
オと会談することになろう。北朝鮮の高官が米国を訪れ政府要人と会談す
るのは2000年に国防委員会第1副委員長趙明禄がクリントンと会談して以
来のことだ。

トランプが金英哲の訪米を明らかにしており、おそらく表敬訪問を受ける
ことになるかもしれない。板門店では駐フィリピン米大使のソン・キムが
外務次官崔善姫と会談して、首脳会談の議題を詰めた模様だ。

こうした中で韓国大統領文在寅は「早期終戦宣言」の構想をトランプに伝
えたようだ。同構想は米朝首脳会談後に韓国、北朝鮮、米国の3国で現在
「休戦」状態にある現状を「終戦宣言」に持ち込もうと言うものだ。

文在寅は「米朝会談が成功すれば南北米3か国首脳の会談を通じて終戦宣
言を採択すれば良い。期待している」と言明した。文にしてみれば非核化
をめぐって駆け引きが激化している米朝双方を説得するためのカードとし
て宣言を使いたいのだろう。

 文在寅がこうした軟化姿勢を取る背景には26日に予告なしで行われた
南北首脳会談がある。この席で金正恩は「韓半島の完全な非核化の意思を
明確ににして、米朝会談を通じて戦争と対立の歴史を清算したい。

我が国は平和と繁栄に向けて協力するつもりだ」と述べたという。仲介役
の文に対してトランプは「金正恩氏が完全な非核化を決断して実践する場
合、米国は敵対関係の終息と経済協力に対する確固たる意思がある」旨伝
えているようだ。

こうして米国は当面北朝鮮に対する制裁強化を見送る方針を固めた。米国
はこれまでロシアや中国を含む約30の標的に対して大規模な制裁をする方
針を固めていたといわれる。米当局者によれば、ホワイトハウスは当初29
日にも北朝鮮に対する追加制裁を発表する予定だったが、首脳会談をめぐ
る協議が続く間は実施を延期することが前日になり決まった。

こうした米朝和解ムードの中で米政界では慎重論が台頭している.前国
家情報長官ジェイムズ・クラッパーは「北朝鮮は彼らの典型的な『二歩前
進一歩後退』の行動様式を見せている。

北朝鮮が考える『非核化』が太平洋での米軍戦略兵器の縮小を意味すると
いうことが心配だ」と懸念を表明した。また共和党上院議員のマルコ・ル
ビオは「金正恩朝鮮労働党委員長は、核兵器に病的に執着してきた。核兵
器が正恩氏に今の国際的地位を与えた。

これが北朝鮮の非核化を期待でき ない理由だ」と強調。元中央情報局
(CIA)長官マイケル、ヘイデン は、「首脳会談の結果で北朝鮮のす
べての核兵器をなくすことは不可能だ。

トランプ氏は会談で不利益を被ることになるだろう」と見通しを述べてい
る。さらに注目すべきは元在韓米軍司令官バーウェル・ベルは、「在韓米
軍の撤収を目的に北朝鮮と平和協定を締結することは、『韓国死刑』文書
に署名することと同じだ」と強く警告した。

「強大な北朝鮮軍兵力が非武装地帯のすぐ前にいる状況で米軍が去るな
ら、北朝鮮は直ちに軍事攻撃を通じて韓国を占領するだろう」と予測して
いる。

 韓国大統領府は文在寅の金正恩との会談やトランプとの会談で、極東情
勢が大きく前進したと判断し、和解への道筋が立った段階で米朝間の相互
不可侵条約と平和条約の締結へと事態を進めたい気持ちのようだ。これが
実現すれば極東情勢は大きく緊張緩和へと進展するが、北が狡猾にも世界
を欺いてきた歴史は歴然としており、楽観は禁物だ。

2018年05月25日

◆米朝会談中止の背景を探る

杉浦 正章

 
文在寅の「仲裁外交」失敗 トランプ、段階的非核化で“呼び水”

世紀の米朝会談が流れた。トランプが6月12日の会談予定を中止した。そ
の背景には韓国大統領文在寅のトランプへのミスリードがあったようだ。

経緯を見れば、まず22日の米韓首脳会談に先立つ米韓調整で急速にトラ
ンプと金正恩との会談へのムードが盛り上がった。文が“垂涎の話し”を伝
えたからに違いない。

ところが北の対米強硬路線は変化の兆しを見せず、トランプは文在寅に対
し電話で「なぜ、私に伝えた個人的な確信(assurance)と北朝
鮮の公式談話内容は相反するのか」と詰問している。従ってトランプと文
の会談は文の言い訳で、相当気まずいものとなったようだ。

これを裏付けるようにニューヨークタイムズ(NYT)は20日、「トラ
ンプ米大統領がかけた電話は文在寅韓国大統領の訪米のわずか3日前だっ
た」とし「これは文大統領がワシントンに来るまで待てないという、トラ
ンプ大統領の不満(discomfort)を表しているという解釈が米
政府で出ている」と報じた。

要するに、トランプは韓国から伝え聞いた北朝鮮の非核化交渉の意志を
信じていたが、違う状況へと展開し、韓国の「仲裁外交」が失敗したと言
うことだ。

トランプは金正恩に送った書簡で6月12日の会談断念の理由について「会
談を楽しみにしていたが残念なことに北朝鮮の最近の声明で示されている
怒りや敵意を受けて私は現時点で会談を開くことは適切でないと感じた」
と述べた。

トランプが会談を断念した理由をもう一つ挙げれば、何と言っても水面下
の交渉で米国の北に対する非核化要求の内容が極めて厳しかったことが挙
げられる。これが北を硬化させたことにあるのだろう。

また補佐官ボルトンが北の非核化でカダフィ殺害に至る「リビア方式」に
言及したが、金正恩は自分もカダフィと同様の運命をたどりかねないと感
じて拒絶反応を示したのだろう。

北朝鮮外務省第1次官の金桂冠は16日「我が国は大国に国を丸ごと任せ悲
惨な末路を迎えたリビアやイラクではない」として、「リビアモデル」と
これに言及したボルトン補佐官に強い拒否感を示している。

この発言に対してトランプは、怒りをあらわにして「このまま会談をやっ
てもいいのか」と周辺に漏らすに至った。副大統領ペンスも「トランプ大
統領を手玉に取るような行動は大きな過ちとなる。

会談で大統領が席を立つ可能生もある」と会談決裂の可能性まで示唆し
た。しかし北の“挑発”発言は止まらず、外務省で対米交渉を担当する次官
崔善姫は公然とペンスを批判「米国問題に携わる者として、ペンス副大統
領の口からそのように無知でばかげた発言が飛び出したことに驚きを禁じ
得ない」とのべた。

加えて「我が国は米国にこれまで経験も想像すらもしたことのない恐ろし
い悲劇を味わわせる可能性がある」とすごんだ。「米国は『核対核の対
決』で北朝鮮と相まみえることになる」ともまくしたてた。

この崔善姫発言は米朝首脳会談の中止を改めて確定的にしたものと言えよう。

一方、日本政府には早くから会談の実現性に疑問を持つ空気が強かった。
外相河野太郎は「条件が整わないなら米朝会談をする意味がない」と述べ
ると共に「会談をすることが目的ではなく、北朝鮮の核、ミサイル、拉致
問題の解決が究極の目的」と日本の立場を強調している。

官房副長官野上浩太郎は、「トランプ大統領が米朝首脳会談延期の可能性
に言及したことは北朝鮮の具体的行動を引き出すためのもの」と分析して
いる。

こうして6月12日の会談は実現しない方向が定まったが、トランプが完全
に断念したかというとそうでもなさそうである。トランプは「今は適切で
はない」と述べており、望みを捨てていないのだろう。

とりわけトランプの反移民政策やロシアとの不透明な関係への不満から野
党・民主党に追い風が吹いている秋の中間選挙をひかえて、北との和解は
大きなプラス材料になる。

トランプは北への圧力を維持しつつ、秋までに会談実現に向けてのアヒル
の水かきが続くのだろう。トランプが北に求める非核化について「直ちに
完了してほしいが、段階的に行う必要が少しあるかもしれない。段階的で
も迅速に行うべきだ」と述べたのは、北への呼び水の一環であろう。

2018年05月24日

◆米韓、北への「不可侵」を表明

杉浦 正章


米朝首脳会談前に和解ムード トランプ南北統一に言及


韓首脳会談は、6月12日に予定される米朝首脳会談に向けて、慎重姿勢の
トランプを韓国大統領文在寅が説得する構図が浮かび上がった。結局22
日の会談では、トランプと文在寅は「米朝会談が支障なく開かれるよう最
善を尽くす」方向で一致した。

ワシントンでは曲折をたどっても会談は実現するとの見方が強まってい
る。しかしそれも「金正恩はノーベル賞を待望するトランプに対して時間
がたてば消える程度の非核化の約束をしようとしているかもしれない」と
ニューヨークタイムズ(NYT)が皮肉っており、水面下のやりとりがどう
進むかが焦点だ。

発表によるとトランプと文は「北が信用出来るような体制保障について意
見を交わし、北に対する『不可侵』の約束が必要なことで一致した」とい
う。また南北が板門店での首脳会談で合意した「終戦宣言」を米国、韓
国、北朝鮮の3か国で合意に持ち込むことでも一致した。

ただトランプは北朝鮮との首脳会談について「会談が開かれればいいが、
今回開かれなければ次回に開かれるだろう」となお懐疑的な立場を崩して
いない。「来週分かる」とも述べた。まだ米朝会談の延期もあり得るとい
う姿勢である。
 トランプは文との会談で、朝鮮半島の将来についての鳥瞰図を描いて見
せた。「南北朝鮮はいつかは一緒になり一つの国に戻る。南北がそれを望
むなら私もそれで良い」と述べた。トランプは既に机上にある「北の非核
化と終戦宣言。その後の経済協力」から大きく歩を進め、南北統一への支
援に初めて言及したことになる。
 これに関連して3月末と5月の二度にわたって金正恩と会談した米国務
長官ポンペオは23日、下院外交委員会の公聴会で、金正恩との会談で正
恩が「体制保証」を求めたことを明らかにしている。さらに金正恩はポン
ペオに対して「朝鮮戦争を終結させ、平和条約を締結する」意志を表示す
ると共に「我々の非核化の方針と意思を疑わないでほしい」と伝えたと言
われる。ポンペオは公聴会に提出した文書で米朝首脳会談について、「適
切な取引が机上になければ、丁重に立ち去ることになる」と述べた。これ
は水面下で進んでいるとみられる米朝調整に向けて“牽制球”を投げたもの
だろう。

一方でNYTはトランプの参謀の懸念として「大統領がノーベル賞を待望し
ている一面があり、これを看破した金正恩が時間がたてば忘れるような約
束を準備している可能性がある」と、金が“ノーベル賞”を“まき餌”にして
トランプをおびき寄せようとしている側面を報じている。

さらに同紙は、米政府関係者が「金正恩が米朝会談で今後半年以内に核兵
器の一切を放棄し、関連施設を閉鎖するタイムテーブルに同意する」と予
想したことをとらえて「こうした日程は極めて無理な計画だ」と否定的見
解を述べている。

北朝鮮の後ろ盾の中国は中国外務省報道局長の陸慷が23日、米国と北朝鮮
の双方に対し、「問題の政治解決プロセスは得難い歴史的好機を迎えてお
り、米朝双方が好機をつかみ、それぞれの懸念を解決してほしい」と強調
した。

トランプは中国を強く牽制する発言も繰り返した。「金正恩氏が習近平国
家主席と2度目の会談をしてから態度が変わり、落胆した。」と述べた。
これは金正恩が習近平に操られている側面に不満を抱いていることを物語る。

トランプは習近平を「世界一流のポーカープレーヤー」と皮肉った。国連
安保理事会の常任理事国であるにもかかわらず中国は制裁決議の完全なる
履行をしているかどうか疑わしい。国境線を越えて北に物資が続々と届い
ているとの情報もある。

一見日本の出番が無いように見えるが、今後米朝会談が進めば非核化の工
程表作りが俎上(そじょう)にのぼる。日本は積極的に核兵器解体と国外
への搬出や、専門家による検証に参加する必要がある。

安倍が北への見返りについて「先に核の完全放棄、後に補償」方式を強調
しているのは当然である。要点は金正恩が新年から打ち出している経済重
視路線をいかにして国際社会が定着させるかにあるのだろう。  

2018年05月23日

◆野党の「加計疑獄」狙いは不発に終わる

杉浦 正章



安倍は7対3で3選の方向

「またも負けたか八聯隊(はちれんたい)、それでは勲章九連隊」は、昔
大阪出身の陸軍連隊が虚弱であったことを茶化しているが、これは今の野
党にもそっくり当てはまる、総力を挙げた加計問題が愛媛県による内部文
書の信憑性が問われる事態になってきたからだ。

核心部分である15年2月の安倍の加計との面会が完全否定され、文書ねつ
造が問われるフォントの混入までが明るみに出ており、野党の追及は限界
が見えた。自民党内の空気も「政局化不可能」(党幹部)との見方が支配
的となってきており、9月の総裁選で安倍が3選される流れは7対3で強
まった。

朝日だけを購読している人は今にも「政局」かと思うだろうが、ミスリー
ドされてはならない。読売か産経を併読した方がいい。23日もトップで
「加計の面会否定の根拠示せず」と大見出しを踊らせているが、野党をけ
しかけているかのようで、平衡の感覚に欠ける。

朝日は、加計問題を1年半も取り上げ続けて、けたたましく騒いでいる
が、夢と描く昔の造船疑獄や昭電事件の再来などはあり得ない。なぜなら
安倍や自民党幹部をめぐって贈収賄事件に発展する可能性はゼロだから
だ。発展するならきな臭さが漂うものだが、まったくない。

 そもそも愛媛県の内部文書はテニオハもままならないレベルの県庁職員
が書いたもののようで信憑性のレベルが低い。その核心部分には
「2/25に加計理事長が首相と面談(15分程度)。

理事長から、獣医師養成系大学空白地帯の四国の今治市に設定予定の獣医
学部では国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。首相からは『そ
ういう新しい獣医学部の考えはいいね。』とのコメントあり。また柳瀬首
相秘書官から、改めて資料を提出するよう指示があったので、早急に資料
を調整し、提出する予定。」とある。

文書は基本的に、明朝体と思われるフォントで構成されている。ところ
が、「首相からは『そういう新しい獣医学部の考えはいいね。』とのコメ
ント」の部分と「柳瀬首相秘書官から、改めて資料を提出するよう指示」
の核心部分だけがゴチックになっている。

なぜ肝腎の部分だけがゴチック体なのかは、おそらく後から挿入された可
能性が強い。この継ぎはぎの字体を見ても慌てて中途半端な改竄が行われ
たのではないかと疑いたくなる。強調したいのならアンダーラインを引く
とか、太文字にするとかが考えられるがそうではない。マスコミは、信憑
性のない文書でカラ騒ぎのしすぎだ。

 安倍と加計との会談について、安倍は「指摘の日に加計氏と会ったこと
はない。加計氏から(学部新設の)話をされたこともないし、私から話を
したこともない」と全面否定。2015年2月25日の官邸の記録でも「加計氏
が官邸を訪問した記録は確認できない」と“動かぬ証拠”で反論している。

これに対して立憲民主党の福山幹事長は記者会見で、「首相が国会で虚偽
答弁を繰り返してきた疑いがより強まった。首相の進退が問われる重大な
局面を迎えた」と述べ、無理矢理政局化を目指している様子がありありだ
が、ネズミが猫を狙うようで痛ましい。

また自民党では村上誠一郎が1人「今までの行動パターンをみたら、総理
が本当のことを言ってると思えない。愛媛県の職員がなぜウソをついてま
で書く必要があるのか。ウソは書いてない。柳瀬(元首相秘書官)より信
用がおける。ということは、総理の信用は愛媛県の職員より落ちちゃっ
たってことだ。」と太鼓腹を揺すって毒舌を吐いているが、党内議員で同
調するものはほとんどいない。

自民党の安倍支持勢力は依然として安定している。これまでのところ国会
議員405人のうち安倍支持御三家の細田派94人、麻生派59人、二階派44人
は動かない。細田派は22日の総会で満場一致で早々と連続3選を決めて
いる。トップを切ったのであり、今後各派が態度決定を迫られる。

加えて官房長官菅義偉の影響が強い74人の無派閥も、大勢は様子見なが
ら安倍へと流れる傾向を示している。会期末の6月20日まで1か月を切っ
ており、夏休み入リすれば事態は消え去る。安倍は地方行脚で党員との親
密度を高め、緊迫感漂う極東情勢でも活発な外交を展開する。9月に3選
を達成して5年間好調であった景気の維持に全力を傾注しつつ、2020年オ
リンピックを迎えるのが王道だろう。

2018年05月19日

◆米朝会談へ神経戦が最高潮

杉浦 正章

米「半年以内の核搬出」要求 北「体制の保障と平和協定」で瀬踏み

6月12日に開催予定のトランプと金正恩の米朝首脳会談に向けて、神経戦
が展開されはじめた。分析すれば米国が、「完全なる非核化」を要求し、
北はこれを拒否した上で体制の保障を求めている構図が浮かび上がる。

米国は北に対して核弾頭や大陸間弾道弾を半年以内に国外に搬出するよう
要求、その代償としてテロ支援国家指定の解除と金正恩体制の存続をちら
つかせているようだ。しかし金正恩が命と守る核兵器を半年以内に搬出す
る可能性はゼロに近く、米提案は駆け引き材料に過ぎまい。溝が埋まるに
はほど遠い。

北朝鮮は16日、米韓空軍の定例合同訓練を理由に、南北閣僚級会談の中
止を一方的に通知し、第1外務次官金桂官が談話を発表した。談話は「大
統領補佐官のボルトンをはじめ、ホワイトハウスと国務省の高位官僚は
『先に核放棄、後に補償』方式を触れ回りながら、リビア核放棄方式だの
『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』だの、『ミサイルの生化学武器
の完全放棄』だのという主張を厚かましく繰り返している」と米国の要求
を批判。

「これは対話を通じて問題を解決しようとするものではなく、本 質にお
いて大国に国を丸ごと任せきりにして、崩壊したリビアやイラクの 運命
を尊厳高い我々に強要しようとする甚だ不純な企てだ」と強調した。 さ
らに金桂官は「一方的に核の放棄だけを強要しようとするならば、首脳
会談に応じるかどうかも再考せざるを得ない」と首脳会談再考も示唆して
いる。

これに対しトランプは「われわれは何の知らせも受けていない。様子を
みてみよう」と述べ、北朝鮮の今後の出方を見極める考えを強調した。さ
らにホワイトハウス報道官のサンダースは、米朝首脳会談について、「重
要な会談だ」と指摘し、準備を進める考えを示す一方で「トランプ大統領
は、困難な交渉には慣れていて、その準備も整っている。

ただ、北朝鮮が 会いたくないのなら、それでもいい。その時は、最大限
の圧力をかけ続け るだけだ」とすごんで見せた。北朝鮮が対話を選ばな
ければ、圧力を強め る考えを示して、けん制したことになる。

しかし、“口撃”の厳しさは半島民族の“特性” であり、隘路を探してい
ることは間違いない。その一つとして、韓国大統領文在寅を通じてトラン
プの説得を要求している可能性が高い。

米韓首脳会談は22日に予定され ており、北朝鮮が米韓合同航空戦闘訓
練『マックスサンダー』を理由に南 北閣僚級会談を一方的に中止したの
は、米韓首脳会談に向けた思惑がある からにほかならない。

その意図は韓国を動かして、米国との首脳会談の際 の北朝鮮の立場をよ
り正確に説明させようとしているのかもしれない。既 に北朝鮮は韓国と
の閣僚級会談を中止することで、F22などの戦略兵器が 朝鮮半島に飛来す
ることを望んでいないという意思を明確に示している。

金正恩は北朝鮮の立場をあらかじめ文在寅を通じてトランプに伝達して
け ん制しているのだろう。

そもそも北朝鮮の狙いは今年早々から明白だ。正月に金正恩は対話攻勢
に転じて、まず米国の同盟国である韓国の取り込みを図ってきた。金正恩
と文在寅の会談で準備段階を終え、いよいよトランプとの会談に向けた総
仕上げ段階に入っているのだろう。

北は体制の保障と平和協定締結を最終 目標としている。また一連の言動
は米朝会談で主張する予定の重要なメッ セージを米側にあらかじめ伝え
て、瀬踏みをしているのだろう。これに対 して米側も半年以内の核搬出
という“高値”をふっかけて、妥協点を模索し ているのが現在の図式だろう。

2018年05月18日

◆米朝会談へ神経戦が最高潮

杉浦 正章


米「半年以内の核搬出」要求

北「体制の保障と平和協定」で瀬踏み

6月12日に開催予定のトランプと金正恩の米朝首脳会談に向けて、神経戦
が展開されはじめた。分析すれば米国が、「完全なる非核化」を要求し、
北はこれを拒否した上で体制の保障を求めている構図が浮かび上がる。

米国は北に対して核弾頭や大陸間弾道弾を半年以内に国外に搬出するよう
要求、その代償としてテロ支援国家指定の解除と金正恩体制の存続をちら
つかせているようだ。しかし金正恩が命と守る核兵器を半年以内に搬出す
る可能性はゼロに近く、米提案は駆け引き材料に過ぎまい。溝が埋まるに
はほど遠い。

北朝鮮は16日、米韓空軍の定例合同訓練を理由に、南北閣僚級会談の中
止を一方的に通知し、第1外務次官金桂官が談話を発表した。談話は「大
統領補佐官のボルトンをはじめ、ホワイトハウスと国務省の高位官僚は
『先に核放棄、後に補償』方式を触れ回りながら、リビア核放棄方式だの
『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』だの、『ミサイルの生化学武器
の完全放棄』だのという主張を厚かましく繰り返している」と米国の要求
を批判。

「これは対話を通じて問題を解決しようとするものではなく、本 質にお
いて大国に国を丸ごと任せきりにして、崩壊したリビアやイラクの 運命
を尊厳高い我々に強要しようとする甚だ不純な企てだ」と強調した。 さ
らに金桂官は「一方的に核の放棄だけを強要しようとするならば、首脳
会談に応じるかどうかも再考せざるを得ない」と首脳会談再考も示唆して
いる。

これに対しトランプは「われわれは何の知らせも受けていない。様子を
みてみよう」と述べ、北朝鮮の今後の出方を見極める考えを強調した。さ
らにホワイトハウス報道官のサンダースは、米朝首脳会談について、「重
要な会談だ」と指摘し、準備を進める考えを示す一方で「トランプ大統領
は、困難な交渉には慣れていて、その準備も整っている。

ただ、北朝鮮が 会いたくないのなら、それでもいい。その時は、最大限
の圧力をかけ続け るだけだ」とすごんで見せた。北朝鮮が対話を選ばな
ければ、圧力を強め る考えを示して、けん制したことになる。

しかし、“口撃”の厳しさは半島民族の“特性” であり、隘路を探してい
ることは間違いない。その一つとして、韓国大統領文在寅を通じてトラン
プの説得を要求している可能性が高い。

米韓首脳会談は22日に予定され ており、北朝鮮が米韓合同航空戦闘訓
練『マックスサンダー』を理由に南 北閣僚級会談を一方的に中止したの
は、米韓首脳会談に向けた思惑がある からにほかならない。

その意図は韓国を動かして、米国との首脳会談の際 の北朝鮮の立場をよ
り正確に説明させようとしているのかもしれない。既 に北朝鮮は韓国と
の閣僚級会談を中止することで、F22などの戦略兵器が 朝鮮半島に飛来す
ることを望んでいないという意思を明確に示している。

金正恩は北朝鮮の立場をあらかじめ文在寅を通じてトランプに伝達して
け ん制しているのだろう。

そもそも北朝鮮の狙いは今年早々から明白だ。正月に金正恩は対話攻勢
に転じて、まず米国の同盟国である韓国の取り込みを図ってきた。金正恩
と文在寅の会談で準備段階を終え、いよいよトランプとの会談に向けた総
仕上げ段階に入っているのだろう。

北は体制の保障と平和協定締結を最終 目標としている。また一連の言動
は米朝会談で主張する予定の重要なメッ セージを米側にあらかじめ伝え
て、瀬踏みをしているのだろう。これに対 して米側も半年以内の核搬出
という“高値”をふっかけて、妥協点を模索し ているのが現在の図式だろう。



2018年05月17日

◆米朝会談へ神経戦が最高潮

杉浦 正章


米「半年以内の核搬出」要求

北「体制の保障と平和協定」で瀬踏み

6月12日に開催予定のトランプと金正恩の米朝首脳会談に向けて、神経戦
が展開されはじめた。分析すれば米国が、「完全なる非核化」を要求し、
北はこれを拒否した上で体制の保障を求めている構図が浮かび上がる。

米国は北に対して核弾頭や大陸間弾道弾を半年以内に国外に搬出するよう
要求、その代償としてテロ支援国家指定の解除と金正恩体制の存続をちら
つかせているようだ。

しかし金正恩が命と守る核兵器を半年以内に搬出する可能性はゼロに近
く、米提案は駆け引き材料に過ぎまい。溝が埋まるにはほど遠い。

北朝鮮は16日、米韓空軍の定例合同訓練を理由に、南北閣僚級会談の中止
を一方的に通知し、第1外務次官金桂官が談話を発表した。談話は「大統
領補佐官のボルトンをはじめ、ホワイトハウスと国務省の高位官僚は『先
に核放棄、後に補償』方式を触れ回りながら、リビア核放棄方式だの『完
全かつ検証可能で不可逆的な非核化』だの、『ミサイルの生化学武器の完
全放棄』だのという主張を厚かましく繰り返している」と米国の要求を批判。

「これは対話を通じて問題を解決しようとするものではなく、本質におい
て大国に国を丸ごと任せきりにして、崩壊したリビアやイラクの運命を尊
厳高い我々に強要しようとする甚だ不純な企てだ」と強調した。

さらに金桂官は「一方的に核の放棄だけを強要しようとするならば、首脳
会談に応じるかどうかも再考せざるを得ない」と首脳会談再考も示唆して
いる。

 これに対しトランプは「われわれは何の知らせも受けていない。様子を
みてみよう」と述べ、北朝鮮の今後の出方を見極める考えを強調した。さ
らにホワイトハウス報道官のサンダースは、米朝首脳会談について、「重
要な会談だ」と指摘し、準備を進める考えを示す一方で「トランプ大統領
は、困難な交渉には慣れていて、その準備も整っている。

ただ、北朝鮮が会いたくないのなら、それでもいい。その時は、最大限の
圧力をかけ続けるだけだ」とすごんで見せた。北朝鮮が対話を選ばなけれ
ば、圧力を強める考えを示して、けん制したことになる。

しかし、“口撃”の厳しさは半島民族の“特性” であり、隘路を探してい
ることは間違いない。その一つとして、韓国大統領文在寅を通じてトラン
プの説得を要求している可能性が高い。

米韓首脳会談は22日に予定されており、北朝鮮が米韓合同航空戦闘訓練
『マックスサンダー』を理由に南北閣僚級会談を一方的に中止したのは、
米韓首脳会談に向けた思惑があるからにほかならない。

その意図は韓国を動かして、米国との首脳会談の際の北朝鮮の立場をより
正確に説明させようとしているのかもしれない。既に北朝鮮は韓国との閣
僚級会談を中止することで、F22などの戦略兵器が朝鮮半島に飛来するこ
とを望んでいないという意思を明確に示している。金正恩は北朝鮮の立場
をあらかじめ文在寅を通じてトランプに伝達してけん制しているのだろう。

そもそも北朝鮮の狙いは今年早々から明白だ。正月に金正恩は対話攻勢に
転じて、まず米国の同盟国である韓国の取り込みを図ってきた。金正恩と
文在寅の会談で準備段階を終え、いよいよトランプとの会談に向けた総仕
上げ段階に入っているのだろう。

北は体制の保障と平和協定締結を最終目標としている。また一連の言動は
米朝会談で主張する予定の重要なメッセージを米側にあらかじめ伝えて、
瀬踏みをしているのだろう。これに対して米側も半年以内の核搬出という
“高値”をふっかけて、妥協点を模索しているのが現在の図式だろう。

2018年05月15日

◆今世紀最大の政治ショー米朝首脳会談

杉浦 正章


 ポンペイオの“まき餌”に食らいついた金正恩

日本も拉致問題を棚上げしてまず正常化を


米大統領ドナルド・トランプと北朝鮮の労働党委員長金正恩による、今世
紀最大とも言える政治ショーが展開されようとしている。水面下での懸命
の駆け引きから垣間見える焦点は、いちにかかって北の「核廃棄の度合
い」と見られる。

米国は北の核実験と核・ミサイルの完全なる廃絶を要求しているが、北は
安全保障上の脅威を理由に20発と言われる核弾頭を手放す気配はない。

さらに6月12日の首脳会談は、トランプが秋の中間選挙を意識して細部を
詰めない妥協に走る危険を内包している。

日本を狙う中距離核ミサイルなどは二の次三の次に回されかねない。日本
は天井桟敷から大芝居を見物していてはならない。会談成功に向けて堂々
と発信すべきだ。拉致問題は最大の課題だが、ここは関係正常化が先だ。
早期の日朝会談が望ましい。

 歴史に残る米中極秘会談の立役者は大統領補佐官ヘンリー・キッシン
ジャーであった。1971年にニクソンの「密使」として、当時ソ連との関係
悪化が進んでいた中華人民共和国を極秘に2度訪問。

周恩来と直接会談を行い、米中和解への道筋をつけた。今回の立役者は国
務長官マイク・ポンペイオであった。そのしたたかさはキッシンジャーに
勝るとも劣らない。2回にわたる金正恩との会談で、おいしい“まき餌”を
ちらつかせて金正恩をおびき寄せた。

ポンペイオは「北朝鮮が、アメリカの求める、完全かつ検証可能で不可逆
的な非核化に応じれば、制裁は解除され、北朝鮮で不足する電力関係のイ
ンフラ整備や農業の振興など、経済発展を支援する。

アメリカ企業や投資家からの投資を得ることになる」とバラ色の未来を描
いて見せた。さらにポンペイオは「アメリカは、北朝鮮が、韓国を上回る
本物の繁栄を手にする条件を整えることができる」と北にとって垂涎の誘
いをかけると共に、トランプ政権が、北朝鮮の金正恩体制を保証する考え
も伝えた。軍事オプションは当面使わないという姿勢の鮮明化だ。

 これだけのおいしい話しに乗らなければ金正恩は指導者たる素質を問わ
れる。元国務次官補カート・キャンベルも「これにより対話や協議に向け
て新たな道が開かれ、少なくとも短期的には核拡散のリスクが低減し、粗
暴な軍事オプションは後回しになるだろう」と展望した。

金正恩は「非核化協議に応ずる」と飛びついたが、非核化にもいろいろあ
る。米国が目標に掲げているのは「朝鮮半島の完全なる非核化」なのであ
るが、金正恩の狙いは現状のままで核開発プログラムを凍結し、その見返
りに国際社会からの経済制裁を直ちに緩和させるというものだ。

それは、米国が目標に掲げている朝鮮半島の非核化とは似て非なるもので
ある。米国にとって非核化は、北朝鮮の核兵器プログラムと核兵器そのも
のの完全な破棄を意味するのであり、トランプは正恩との会談では核兵器
の解体を速やかに進めるよう求めるだろう。この両者の見解の相違が事態
の核心部分であるのだ。

そもそも父の正日が1998年に核計画に着手して以来、金一族はプルトニウ
ムを「家宝」のように営々として作り上げてきた。GDPが米国の1000分の
1しかない国が、国家よりも自分や一族の体制を守る手段として核を開発
してきたのだ。

米下院軍事委員長マック・ソーンベリーが「これまで北朝鮮は米国を手玉
に取ってきた。大統領は過度の期待を慎まなければならない」と看破して
いるがまさにその通りだ。核イコール金王朝の存続くらいに思わなければ
なるまい。

 
こうした状況下で開催されるトランプ・金会談の焦点はどこにあるのだろ
うか。まず第一に挙げられるのは金正恩が米国や国際機関による完全な形
による検証に応ずるかどうかだ。

坑道には水爆実験用に新たに掘ったものもあるといわれる。それを完全に
破壊するかどうかが疑わしいといわれている。坑道の入り口だけを破壊し
て、完全破壊を装う可能性があるからだ。また北が主張する「ミサイル開
発計画の放棄」は何の意味もない。現状が固定されるだけに過ぎないからだ。

既に保有するミサイルと核爆弾の解体が不可欠なのだが、金正恩が「核大
国」と自認する以上、容易に核を手放すことはないだろう。

こうした核問題と並行して、極東の平和体制を構築するために、米政府内
には休戦協定を平和条約に格上げする構想がある。休戦協定は1953年7月
27日に署名され、「最終的な平和解決が成立するまで朝鮮における戦争行
為とあらゆる武力行使の完全な停止を保証する」と規定した。

しかし、「最終的な平和解決」(平和条約)は未だ成立していない。朝鮮
戦争の休戦協定は北朝鮮、米国、中国の間で署名されているが、韓国は署
名していない。

平和条約実現のためには、まず米朝で終戦を宣言し、ついで南北で終戦を
宣言する。そして韓国、北朝鮮。米国、中国で平和条約に署名し、これに
日本とロシアが加わって最終的には6か国の枠組みで平和条約を確立させ
る方式が考えられる。

こうした構想は確かに極東情勢が行き着くべき終着点だが、ことはそう簡
単ではあるまい。紆余曲折をたどるに違いない。今後5月22日に米韓首
脳会談。5月26日に日露首脳会談。

6月8,9日に韓国も参加する可能性があるカナダでのサミット。6月12
日の米朝首脳会談へと激しい外交の季節が続く。モリだのカケだの政権を
直撃することのない話しに1年以上もこだわる野党も、時代を見る眼を問
われる。

集中審議に応じた自民党執行部の見識のなさも尋常ではない。集中審議な
ら米朝会談をテーマとすべきではないか。野党も議論に参加すべきである。

安倍は12日の会談結果を早期にトランプから聞く必要があろう。日朝関係
は経済支援を米国が日本に頼る意向を示していることから、日本の対応が
クローズアップされる時期が必ず来る。日本は拉致問題を抱えているが、
生存すら不明な拉致問題に拘泥していては物事は進まない。

ましてや拉致問題の解決をトランプに頼んでも二の次三の次になることは
否めない。いったん棚上げして日朝関係を正常軌道に乗せた上で、解決を
図るべきだろう。日朝関係を拉致問題調査団を派遣できるような状態にし
なければ、未来永劫に拉致の解決はない。

2018年05月11日

◆「反故常習国」北朝鮮は軽々に信用出来ない

杉浦 正章


核全廃まで圧力は維持すべきだ

米WHに「南アフリカ方式」の核廃棄が浮上

北朝鮮の非核化問題の鼎(かなえ)が煮えたぎり始めた。6月の米朝首脳
会談を見据えて北朝鮮は3人の米国人を解放。2年半ぶりの日中韓首脳会
談は朝鮮半島の非核化に向けた協力で一致した。

完全非核化への道筋は複雑で遠いが1歩前進ではある。極東をめぐる力の
構図は緊張緩和の入り口に立ったが、北の後ろ盾としての中国と、日米同
盟の対峙の構図は変わらず、融和だけが売り物の韓国文在寅外交は荒波に
もまれ続けるだろう。

こうした中でまずは北朝鮮の核廃棄方式としてホワイトハウスの内部に急
きょ浮上しているのが「南アフリカモデル」だ。

国務長官として初めて訪朝したポンペイオは3人を連れて帰国したが、米
朝首脳会談の開催場所と日程が決まったことを明らかにした。

日程公表はまだないが、トランプは6月初旬までに予定される米朝首脳会
談の開催地については、南北軍事境界線のある「板門店ではない」と述べ
た。詳細については「3日以内に発表する」と語るにとどめた。

トランプはこれまで、板門店のほか、シンガポールを有力候補地に挙げて
いる。3人の帰国は米朝関係にとって大きな摩擦要因の一つが取り除かれ
たことになり、1歩前進ではある。しかし核心は「核・ミサイル」であ
り、ここは、不変のままであり、難関はこれからだ。

 ここに来て金正恩の“弱み”をうかがわせる行動が見られはじめた。それ
は金正恩の習近平への急接近である。40日に2回の首脳会談はいかにも異
常である。そこには中国を後ろ盾に据えないと心配でたまらない姿が浮か
び上がる。泣きついているのだ。

金正恩は習近平との大連会談で米国への要求について相談を持ちかけた。
その内容は二つある。一つは米国が敵視政策をやめることが非核化の条件
というもの。他の一つは「米国が段階的かつ同時並行的に非核化の措置を
取ること」である。

 泣きつかれて悪い気のしない習近平は8日トランプとの電話会談で「北
朝鮮が段階的に非核化を進めた段階で何らかの制裁解除をする必要があ
る」「米朝が段階的に行動し北朝鮮側の懸念を考慮した解決を望む」など
と進言した。

これに対し、トランプは「朝鮮半島問題では中国が重要な役割を果たす。
今後連携を強化したい」と述べるにとどまった。おいそれとは乗れない提
案であるが検討には値するものだろう。

注目の日中韓首脳会談は、大きな関係改善への動きとなった。しかし、北
の核・ミサイルをめぐっては安倍と中韓首脳との間で隔たりが見られた。
日本側は「完全かつ検証可能で不可逆的な核・ミサイルの廃棄」を共同宣
言に盛り込むことを主張した。

しかし、中韓両国は融和ムードの妨げになるとして慎重姿勢であった。習
近平は金正恩に対して「中朝両国は運命共同体であり、変わることのない
唇歯(しんし)の関係」と述べている。唇歯とは一方が滅べば他方も成り
立たなくなるような密接不離の関係を意味する中国のことわざだ。

 こうした中でホワイトハウスではまずは北朝鮮の核廃棄方式だとして
「南アフリカモデルが急浮上している」という。韓国中央日報紙は、国家
安保会議(NSC)のポッティンジャー・アジア上級部長が文正仁(ム
ン・ジョンイン)韓国大統領統一外交安保特別補佐官らにこの構想を伝え
たという。

これまでホワイトハウスではボルトンNSC補佐官が主張したリビア方式
が考えられていた。リビア方式は「先に措置、後に見返り」だった。その
方式ではなく南アフリカ方式を選択するというのはある意味で現実的路線
のようだ。

南アは第一段階で、1990年に6つの完成した核装置を解体した。第2段階
は、1992年に開始された弾道ミサイル計画の廃棄で、これには18か月を要
した。

第3段階は、生物・化学戦争計画を廃棄した。ただ、南アフリカ方式は経
済的な見返りがないという点が問題となる。同紙は「南アフリカモデルを
検討するというのは、北朝鮮の核放棄に対する経済支援は韓国と日本、あ
るいは国際機関が負担し、米国は体制の安全など安全保障カードだけを出
すという考えと解釈できる」としている。

結局お鉢は日本に回ってくることになるが、金額によっては乗れない話し
ではあるまい。同紙は「北の核は南アフリカと比較して規模が大きく、
“見返りを含めた折衝型南アフリカモデル”になる可能性がある」としている。

一方、安倍首相は文在寅に対して「核実験場の閉鎖や大陸間ミサイルの
発射中止だけで、対価を与えてはならない。北の追加的な具体的行動が必
要だ」とクギを刺している。

北は過去2回にわたって国際社会の援助を取り付け、その裏をかいて核兵
器を開発してきており、まさに裏切りの常習犯だ。政治姿勢が左派の文在
寅は、北への甘さが目立つ。圧力はまだまだ維持するべきであろう。北
は、日米に取っては「反故常習犯国」なのだ。核兵器の全て廃棄という目
標達成まで圧力を継続するのは当然である。

2018年05月08日

◆「小義」では崩せぬ安倍一強体制

杉浦 正章



“四人組”の仕掛けは空振り
 

「春雨や食われ残りの鴨が鳴く」は一茶の名句だが、自民党内は小泉純一
郎を中心とする“ノーバッジ四人組” が、「グワッ!グワッ!ワッ!」と
なにやら姦(かしま)しい。どう見ても疝気筋のOBが「安倍降ろし」を始
めようとしているかのようだ。

そこには国民に通用する「大義」はなく、個人的な恨み辛みを晴らそうと
する「小義」しかない。小義で国政の中枢を攻撃しても説得力はない。9
月の自民党総裁選で安倍3選という流れを変える力にはなるまい。

まず四人組の発言を検証する。姦しい筆頭は何と言っても小泉。それも親
子で姦しい。親は「3選は難しい。信頼がなくなってきた。何を言っても
言い逃れ。言い訳と取られている」だそうだ。この発言から分かる小泉の
政治判断は「信頼がなくなってきたから3選は難しい」だが、一体誰の信
頼がなくなったのか。

国民に聞いたのか。それともTBSやテレビ朝日の情報番組の軽佻(けちょ
う)浮薄な報道の請け売りなのか。息子の小泉進次郎も「全ての権力は腐
敗する」だそうだ。

英国の歴史家ジョン・アクトンの言葉の請け売りだが、アクトンは専制君
主の権力はとかく腐敗しがちであるということを言ったのであり、民主主
義政権の批判では更々ない。学校で習ったの政治学用語などをそのまま
使ってはいけない。現実政治にそぐわない。青いのである。

政界ラスプーチンのように陰湿な印象を受ける古賀誠も「首相は改憲あり
きだ。憲法9条は一字一句変えない決意が必要だ」と安倍の改憲志向を攻
撃する。これこそノーバッジが発言すべきことだろうか。

口惜しいのならバッジを付けて「改憲反対党」を結成してから言うべきこ
とではないか。それとも民放から“お呼び”がかかるように、アンチ安倍を
売り物にしているのだろうか。

 山崎拓の「財務相が辞める以外に責任の取り方はない」は、独断。福田
康夫は自身が旗振り役だった公文書管理法に触れ、「いくら法律やルール
をつくっても守ってくれなきゃ全く意味がない。政府の信用を失う」と述
べ、財務省による公文書改ざんなどを批判した。これも自分の冴えなかっ
た政権を棚に上げた難癖だ。

口裏を合わせたような安倍政権批判発言の連続だが、その狙いはどこにあ
るかだが、おそらく“政局化”の瀬踏みであろう。導火線に火を付けて自民
党内の反安倍勢力をたきつけようというわけだ。

しかし、“仕掛け”はしても肝腎の党内は全く呼応しない。導火線は湿って
進まないのだ。せいぜい村上誠一郎あたりが反安倍の牙城TBS時事放談で
「日本が崩壊しようとしている。

政治と行政が崩壊しつつある」と太った腹を叩いて呼応しているが、誇大
妄想が極まったような発言にはよほど馬鹿な視聴者しか喜ばない。そこに
は大義がなくて個人的な憎しみだけをぶつけても共感は沸かない。

 
一方で、党執行部も沈黙していては安倍から疑われると考えてか、3選支
持論が盛んに出始めた。幹事長・二階俊博は「安倍首相支持は1ミリも変
わっていない。

外交でこれだけ成果を上げた首相はいない」と持ち上げた。なぜか眼光だ
けは鋭い副総裁・高村正彦に至っては「日本の平和と安全にとっても、安
倍首相は余人を持って代えがたい」と持ち上げられるだけ持ち上げた。

そもそも安倍支持の構図を見れば、細田、二階、麻生の3大派閥が 支持
しており、これだけで人数は197人に達する。これは405人の自民党国会議
員の半数に迫っている。シンパを含めれば3分の2は固い。

これに対して岸田文男ハムレットは、禅譲路線を走るべきか戦うべきかそ
れが問題じゃと優柔不断。もっとも戦うにしてもとても過半数はとれる情
勢にはなく、戦うことに意義があるオリンピック精神でいくしかない。し
かし、この路線が政治の世界では通用するわけがない。無残な敗北は、将
来の芽を自ら摘んでしまう。46人では多少は増えてもいかんともしがたい
のだ。

将来もくそもないのは石破茂だ。もっと少なく総勢20人の派閥では総裁選
出馬に必要な推薦人20人を自前で確保できない。自分は数えないから
19人しか推薦人がいないのだ。1人や2人は集まるだろうが、それでは
とても安倍には歯が立たない。

TBSもテレビ朝日も的確な分析が出来るコメンテーターがゼロで、放送法
違反すれすれの反安倍色の強い情報番組をやっているが、昔から民放テレ
ビの無能さは度しがたい。

加えて安倍政権は安倍の外交指向に近隣諸国の情勢が作用して、外交日程
が押せ押せになっている。極東緊張緩和が大きく動こうとしている。9日
には東京で日中韓首脳会談とこれに合わせて日中、日韓首脳会談がそれぞ
れ行われる。

約2年半ぶりとなる会談は北朝鮮の完全な非核化に向けた具体策や、米朝
首脳会談に向けた連携を確認する。5月下旬には日露首脳会談。6月8
日、9日には先進7か国首脳会議がカナダで開催される。

同月中旬までには米朝首脳会談が予定され、これに加えて日朝首脳会談も
浮上するだろう。マスコミは内閣支持率が30%台に落ち込んだと批判する
が、外交で持ち直すだろう。そもそも30%台などは通常の政権だ。佐藤政
権などは長期に30%台だった。

こうした重要な外交日程を前にして野党が国会で、つまらぬ森友だの加計
だので安倍の足を引っ張れば朝日や民放がはやし立てても、世論からブー
メラン返しに合うだろう。

既に昨年の総選挙が証明したとおりだ。野党は追及すべき外交、政策課題
は山積しており、モリだのカケだのと無為無策のまま6月20日の会期末を
迎えるべきではない。しかし、結果的には安倍は終盤国会を乗り切るだろ
う。そうすれば、9月の総裁選挙まで3か月。安倍は事実上有利な態勢の
まま総裁選に突入する公算が大きい。最近安倍はいい顔になってきた。

2018年04月28日

◆非核化合意とは「金王朝維持の保証」

杉浦 正章

 具体策は米朝会談に棚上げ

 「板門店宣言」はきっかけに過ぎない

 悠久たる歴史の流れからみれば、南北首脳会談は極東平和に紛れもなく貢献するが、多くの疑問も残した。韓国大統領の文在寅と北朝鮮朝鮮労働党委員長金正恩は27日、歴史に残る南北首脳会談を終え、「半島の完全非核化」に向けて合意し、平和協定の締結を目指すことで一致した。しかし、両首脳の談笑とは裏腹に、北朝鮮の核兵器破棄の具体策は1歩も進む気配はなく、金正恩とトランプの米朝首脳会談までに北朝鮮が譲歩する意思があるかは依然不透明だ。逆に経済的な困窮から実利を求める金正恩の姿が目立った。極東情勢の緊張緩和は歓迎すべきだが、散々世界を欺いてきた北朝鮮である。油断は禁物だ。

 紛れもなく歴史に残る「板門店宣言」の中核部分は、韓国と北朝鮮が「朝鮮半島の完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島を実現するという共通目標を確認した」という部分だ。だが、この「完全な非核化」の表現は、北が譲歩したと受け止めるべきではない。あくまで「朝鮮半島の非核化」なのであり、在韓米軍が含まれているのだ。条件付きなのだ。加えて、宣言には非核化のプロセスは一切含まれておらず、抽象的な表現にとどまっており、具体的な措置にも言及していない。宣言では「核」「非核化」への言及は4回しかなかったものの、「平和」という単語が11回使われた。これは南北の緊張緩和と関係改善をプレーアップする性格の会談であったことを物語る。つまり、南北首脳会談では具体的な措置を米朝首脳会談に委ねることになった。南北会談は米朝首脳会談に向けての“橋渡し”にとどまり、焦点は米朝会談に移行したことを意味する。

 核廃棄という大事を進めるためには、具体的には地道な合意の積み重ねが必要となる。まず定期的な首脳会談の継続だが、これは今秋にも文在寅が平壌を訪問することで実現することになろう。金大中政権は対話や経済支援により変化を促す「太陽政策」を推し進めたが、結局は失敗した。どうしても南北2国間だけでは埋められない溝が生じてしまうのだ。ここはやはり、米朝首脳会談で最終的な妥結を目指す必要があるのだ。もともと今回の南北会談は米朝会談への予備的協議の性格を有するものであった。トランプは先に行われたポンペイオと金正恩の会談を見て、南北首脳会談で一定の流れが出たと判断しているようだ。これまでの高圧的な態度を急速に転換させ始めている。

トランプは「みんなは『私が核戦争を起こす』と言ったが、核戦争は弱腰の人間が起こす。これまで『小さなロケットマン』とか『私の核のボタンの方が大きい』と発言したが、暴言だった。北はこちらが要求する前に、私が発言する前に諦めた。私はうまくやっているのだ」と述べているが、まだ北が具体策に言及していないうちから“自画自賛”しているのは相変わらず浅薄だ。

 トランプは、極東安保の全てが、自分と金正恩との会談に移されたということを自覚すべきだ。北は開発した核をどうするのか。放棄するのか保有し続けるのか。もちろん廃棄の規模や時期については何ら分かっていない。ただ分かっているのは非核化とは「金王朝体制の保証」なのだ。従って「非核化」の文言に具体性がない限り、トランプは制裁緩和や体制の保証などの対価を与えるべきではない。最終的に核製造施設と核兵器の解体、核物質の海外への移転、国際原子力機構(IAEA)による査察の徹底などを経てこそ対価があり得ることを明確に提示すべきである。首相・安倍晋三が「今回の会談を受け、米朝会談を通じて、北朝鮮が実体的な行動を取る事を期待する」と述べているが、これが正しい。おそらく安倍は先の訪米でトランプに提言すると共に、対処方針で合意に達しているのだろう。

 日朝関係も前向きに進める必要がある。拉致問題もさることながら、極東安保の観点からも、日本も積極的に関与する必要がある。国交正常化の動きは既に首相小泉純一郎が2002年の金正日との会談で平壌宣言をまとめている。内容は「両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した」というものだ。しかし、拉致問題が進展しなくなったことや、2006年に北朝鮮政府がミサイル発射実験や核実験を強行して、有名無実化した状態となっている。こうした例にならって安倍は米国と連携しつつも機を見て積極的行動に出る必要があろう。

2018年04月26日

◆米朝首脳会談に画期的成果は期待薄

                        杉浦 正章


「核保有」の是非で行き詰まった

 米朝首脳会談へ向けて米国内で様々な観測が出始めたが、その多くが悲観的である。米大統領ドナルド・トランプとの首脳会談を控えて、北朝鮮朝鮮労働党委員長の金正恩が出した観測気球のごとき提案は、従来の譲歩をかき集めたものに過ぎない。その中身は、核実験とミサイル実験の凍結や、南北和平協定の締結後も在韓米軍を認めるといった内容だ。

 北による非核化の声明と言っても、これが実施に移されるかどうかは過去における欺瞞の構図が物語る話しであり、極めて困難だ。従って首脳会談は長年の米朝対立に終止符を打つというような画期的なものではなく、基本的な対立の構図を改めて確認することになりかねない要素が山積している。

 まず、北朝鮮と米国の首脳らによる発言から明確になって来た両国のポジションを分析する。米国の目標は北朝鮮の核兵器製造計画を完全に止め、既に製造した核兵器の破壊を求めるところにある。おそらくトランプは金正恩に対し@核爆弾とミサイル製造の中止と実験の停止A既にある核兵器の解体B南北平和協定締結後も在韓米軍を認めるC核実験場の閉鎖ーなどを要求するだろう。これらの要求を受け入れない限り、経済制裁の解除はないと迫るものとみられる。

 これに対して金正恩は「核実験と大陸間弾道弾の発射実験を中止し、核実験場も閉鎖する。今後は経済発展に全力を傾注する」との対応を表明している。核実験場の閉鎖については、過去6回の実験で山崩れを起こしている上に、坑道も崩れて使い物にならないから無意味だ。その意図を分析すれば金正恩は、“現状のままでの核開発計画の凍結” で国際社会からの経済支援を受けたいという意図がありありと見受けられる。これは父の正日の意図とピタリと符合する。金正恩も金正日のように、体制の生き残りを核兵器開発に賭けてきたのだ。

もちろん見返りを期待しての核実験停止は、父の方式の踏襲である。米国と北朝鮮の思惑はここで鋭く対峙しているのだ。要するに金正恩は現状のままで核開発プログラムを凍結し、その見返りに国際社会からの経済制裁を直ちに緩和させることを意図しているのだ。従って、トランプの「北朝鮮の非核化を見たい。非核化とは核兵器の撤去だ」という核兵器プログラムの完全な破棄を求める要求とは似ても似つかないものなのだ。トランプは「日本と世界にとって前向きな結果が出る」としているが、問題は「前向き」の度合いだ。

 それにしても正日と比べて正恩のやり口はすさまじく派手だ。金正恩体制のこれまでの約4年8カ月で、発射された弾道ミサイルは失敗を含め30発を超えた。金正日体制の約18年間では16発の弾道ミサイルが発射されたとみられる。金正恩体制はすでに、倍以上の弾道ミサイルを発射した計算となる。

今や自分はもちろん金一族の体制を守る手段として核とミサイルのノウハウが使われているのが現実だ。核とミサイルは金王朝の維持と発展に直結しているのだ。金正恩は核を持たないイラクのサダム・フセインやリビアのカダフィに何が起きたかを知っているからこそ、用心に用心を重ねて二の舞いを食らうのは避けようとしているのだ。金正恩にしてみれば「核保有国」として世界が認めることを基本戦略に据えているのだ。

これは逆に見れば国際社会による経済制裁が極めて有効に働き始めたことを意味する。金正恩の本音は“経済救済”なのであろう。繰り返すが、これまでがそうであったように金正恩の提案をそのまま受け入れれば、一時的には核拡散のリスクが低減し軍事オプションの可能性が低くなるわけだが、金が微笑外交の影に隠れて、核兵器の「一剣を磨き続ける」ことは火を見るより明らかだ。

 米国を初めとする国際社会が求められている選択は「北が核プログラムを完全に破棄するか」それとも「核能力の温存を甘んじて容認するか」であろう。その中間の「あいまいのまま推移」もあり得るが、北が何もしないまま「あいまいのまま推移」では全く交渉の意味がない。トランプには少なくとも廃棄に向けての何らかのとっかかりを求められているのだ。トランプは自覚しなければならない。 

トランプの脳裏には時々「軍事行動」がかすめているかも知れない。しかし、韓国には米兵2万8500人が駐留しているほか、常に20万人を超える米民間人が滞在している。朝鮮戦争が再発すれば、過去の例から見てもトータルで数百万人の人的な犠牲が必要となる。戦争による物的・人的被害は計り知れず、軍事行動のオプションはまず考えられない愚挙である。隘路を探し出すしかないのだ。隘路とは交渉の継続であるかも知れない。もっとも対話の継続は、その間軍事オプションが行われないことを意味するから、極東情勢には1歩前進だろう。

北朝鮮との長期にわたる難しい交渉のが始まることになるのだろう。