2018年05月17日

◆米朝会談へ神経戦が最高潮

杉浦 正章


米「半年以内の核搬出」要求

北「体制の保障と平和協定」で瀬踏み

6月12日に開催予定のトランプと金正恩の米朝首脳会談に向けて、神経戦
が展開されはじめた。分析すれば米国が、「完全なる非核化」を要求し、
北はこれを拒否した上で体制の保障を求めている構図が浮かび上がる。

米国は北に対して核弾頭や大陸間弾道弾を半年以内に国外に搬出するよう
要求、その代償としてテロ支援国家指定の解除と金正恩体制の存続をちら
つかせているようだ。

しかし金正恩が命と守る核兵器を半年以内に搬出する可能性はゼロに近
く、米提案は駆け引き材料に過ぎまい。溝が埋まるにはほど遠い。

北朝鮮は16日、米韓空軍の定例合同訓練を理由に、南北閣僚級会談の中止
を一方的に通知し、第1外務次官金桂官が談話を発表した。談話は「大統
領補佐官のボルトンをはじめ、ホワイトハウスと国務省の高位官僚は『先
に核放棄、後に補償』方式を触れ回りながら、リビア核放棄方式だの『完
全かつ検証可能で不可逆的な非核化』だの、『ミサイルの生化学武器の完
全放棄』だのという主張を厚かましく繰り返している」と米国の要求を批判。

「これは対話を通じて問題を解決しようとするものではなく、本質におい
て大国に国を丸ごと任せきりにして、崩壊したリビアやイラクの運命を尊
厳高い我々に強要しようとする甚だ不純な企てだ」と強調した。

さらに金桂官は「一方的に核の放棄だけを強要しようとするならば、首脳
会談に応じるかどうかも再考せざるを得ない」と首脳会談再考も示唆して
いる。

 これに対しトランプは「われわれは何の知らせも受けていない。様子を
みてみよう」と述べ、北朝鮮の今後の出方を見極める考えを強調した。さ
らにホワイトハウス報道官のサンダースは、米朝首脳会談について、「重
要な会談だ」と指摘し、準備を進める考えを示す一方で「トランプ大統領
は、困難な交渉には慣れていて、その準備も整っている。

ただ、北朝鮮が会いたくないのなら、それでもいい。その時は、最大限の
圧力をかけ続けるだけだ」とすごんで見せた。北朝鮮が対話を選ばなけれ
ば、圧力を強める考えを示して、けん制したことになる。

しかし、“口撃”の厳しさは半島民族の“特性” であり、隘路を探してい
ることは間違いない。その一つとして、韓国大統領文在寅を通じてトラン
プの説得を要求している可能性が高い。

米韓首脳会談は22日に予定されており、北朝鮮が米韓合同航空戦闘訓練
『マックスサンダー』を理由に南北閣僚級会談を一方的に中止したのは、
米韓首脳会談に向けた思惑があるからにほかならない。

その意図は韓国を動かして、米国との首脳会談の際の北朝鮮の立場をより
正確に説明させようとしているのかもしれない。既に北朝鮮は韓国との閣
僚級会談を中止することで、F22などの戦略兵器が朝鮮半島に飛来するこ
とを望んでいないという意思を明確に示している。金正恩は北朝鮮の立場
をあらかじめ文在寅を通じてトランプに伝達してけん制しているのだろう。

そもそも北朝鮮の狙いは今年早々から明白だ。正月に金正恩は対話攻勢に
転じて、まず米国の同盟国である韓国の取り込みを図ってきた。金正恩と
文在寅の会談で準備段階を終え、いよいよトランプとの会談に向けた総仕
上げ段階に入っているのだろう。

北は体制の保障と平和協定締結を最終目標としている。また一連の言動は
米朝会談で主張する予定の重要なメッセージを米側にあらかじめ伝えて、
瀬踏みをしているのだろう。これに対して米側も半年以内の核搬出という
“高値”をふっかけて、妥協点を模索しているのが現在の図式だろう。

2018年05月15日

◆今世紀最大の政治ショー米朝首脳会談

杉浦 正章


 ポンペイオの“まき餌”に食らいついた金正恩

日本も拉致問題を棚上げしてまず正常化を


米大統領ドナルド・トランプと北朝鮮の労働党委員長金正恩による、今世
紀最大とも言える政治ショーが展開されようとしている。水面下での懸命
の駆け引きから垣間見える焦点は、いちにかかって北の「核廃棄の度合
い」と見られる。

米国は北の核実験と核・ミサイルの完全なる廃絶を要求しているが、北は
安全保障上の脅威を理由に20発と言われる核弾頭を手放す気配はない。

さらに6月12日の首脳会談は、トランプが秋の中間選挙を意識して細部を
詰めない妥協に走る危険を内包している。

日本を狙う中距離核ミサイルなどは二の次三の次に回されかねない。日本
は天井桟敷から大芝居を見物していてはならない。会談成功に向けて堂々
と発信すべきだ。拉致問題は最大の課題だが、ここは関係正常化が先だ。
早期の日朝会談が望ましい。

 歴史に残る米中極秘会談の立役者は大統領補佐官ヘンリー・キッシン
ジャーであった。1971年にニクソンの「密使」として、当時ソ連との関係
悪化が進んでいた中華人民共和国を極秘に2度訪問。

周恩来と直接会談を行い、米中和解への道筋をつけた。今回の立役者は国
務長官マイク・ポンペイオであった。そのしたたかさはキッシンジャーに
勝るとも劣らない。2回にわたる金正恩との会談で、おいしい“まき餌”を
ちらつかせて金正恩をおびき寄せた。

ポンペイオは「北朝鮮が、アメリカの求める、完全かつ検証可能で不可逆
的な非核化に応じれば、制裁は解除され、北朝鮮で不足する電力関係のイ
ンフラ整備や農業の振興など、経済発展を支援する。

アメリカ企業や投資家からの投資を得ることになる」とバラ色の未来を描
いて見せた。さらにポンペイオは「アメリカは、北朝鮮が、韓国を上回る
本物の繁栄を手にする条件を整えることができる」と北にとって垂涎の誘
いをかけると共に、トランプ政権が、北朝鮮の金正恩体制を保証する考え
も伝えた。軍事オプションは当面使わないという姿勢の鮮明化だ。

 これだけのおいしい話しに乗らなければ金正恩は指導者たる素質を問わ
れる。元国務次官補カート・キャンベルも「これにより対話や協議に向け
て新たな道が開かれ、少なくとも短期的には核拡散のリスクが低減し、粗
暴な軍事オプションは後回しになるだろう」と展望した。

金正恩は「非核化協議に応ずる」と飛びついたが、非核化にもいろいろあ
る。米国が目標に掲げているのは「朝鮮半島の完全なる非核化」なのであ
るが、金正恩の狙いは現状のままで核開発プログラムを凍結し、その見返
りに国際社会からの経済制裁を直ちに緩和させるというものだ。

それは、米国が目標に掲げている朝鮮半島の非核化とは似て非なるもので
ある。米国にとって非核化は、北朝鮮の核兵器プログラムと核兵器そのも
のの完全な破棄を意味するのであり、トランプは正恩との会談では核兵器
の解体を速やかに進めるよう求めるだろう。この両者の見解の相違が事態
の核心部分であるのだ。

そもそも父の正日が1998年に核計画に着手して以来、金一族はプルトニウ
ムを「家宝」のように営々として作り上げてきた。GDPが米国の1000分の
1しかない国が、国家よりも自分や一族の体制を守る手段として核を開発
してきたのだ。

米下院軍事委員長マック・ソーンベリーが「これまで北朝鮮は米国を手玉
に取ってきた。大統領は過度の期待を慎まなければならない」と看破して
いるがまさにその通りだ。核イコール金王朝の存続くらいに思わなければ
なるまい。

 
こうした状況下で開催されるトランプ・金会談の焦点はどこにあるのだろ
うか。まず第一に挙げられるのは金正恩が米国や国際機関による完全な形
による検証に応ずるかどうかだ。

坑道には水爆実験用に新たに掘ったものもあるといわれる。それを完全に
破壊するかどうかが疑わしいといわれている。坑道の入り口だけを破壊し
て、完全破壊を装う可能性があるからだ。また北が主張する「ミサイル開
発計画の放棄」は何の意味もない。現状が固定されるだけに過ぎないからだ。

既に保有するミサイルと核爆弾の解体が不可欠なのだが、金正恩が「核大
国」と自認する以上、容易に核を手放すことはないだろう。

こうした核問題と並行して、極東の平和体制を構築するために、米政府内
には休戦協定を平和条約に格上げする構想がある。休戦協定は1953年7月
27日に署名され、「最終的な平和解決が成立するまで朝鮮における戦争行
為とあらゆる武力行使の完全な停止を保証する」と規定した。

しかし、「最終的な平和解決」(平和条約)は未だ成立していない。朝鮮
戦争の休戦協定は北朝鮮、米国、中国の間で署名されているが、韓国は署
名していない。

平和条約実現のためには、まず米朝で終戦を宣言し、ついで南北で終戦を
宣言する。そして韓国、北朝鮮。米国、中国で平和条約に署名し、これに
日本とロシアが加わって最終的には6か国の枠組みで平和条約を確立させ
る方式が考えられる。

こうした構想は確かに極東情勢が行き着くべき終着点だが、ことはそう簡
単ではあるまい。紆余曲折をたどるに違いない。今後5月22日に米韓首
脳会談。5月26日に日露首脳会談。

6月8,9日に韓国も参加する可能性があるカナダでのサミット。6月12
日の米朝首脳会談へと激しい外交の季節が続く。モリだのカケだの政権を
直撃することのない話しに1年以上もこだわる野党も、時代を見る眼を問
われる。

集中審議に応じた自民党執行部の見識のなさも尋常ではない。集中審議な
ら米朝会談をテーマとすべきではないか。野党も議論に参加すべきである。

安倍は12日の会談結果を早期にトランプから聞く必要があろう。日朝関係
は経済支援を米国が日本に頼る意向を示していることから、日本の対応が
クローズアップされる時期が必ず来る。日本は拉致問題を抱えているが、
生存すら不明な拉致問題に拘泥していては物事は進まない。

ましてや拉致問題の解決をトランプに頼んでも二の次三の次になることは
否めない。いったん棚上げして日朝関係を正常軌道に乗せた上で、解決を
図るべきだろう。日朝関係を拉致問題調査団を派遣できるような状態にし
なければ、未来永劫に拉致の解決はない。

2018年05月11日

◆「反故常習国」北朝鮮は軽々に信用出来ない

杉浦 正章


核全廃まで圧力は維持すべきだ

米WHに「南アフリカ方式」の核廃棄が浮上

北朝鮮の非核化問題の鼎(かなえ)が煮えたぎり始めた。6月の米朝首脳
会談を見据えて北朝鮮は3人の米国人を解放。2年半ぶりの日中韓首脳会
談は朝鮮半島の非核化に向けた協力で一致した。

完全非核化への道筋は複雑で遠いが1歩前進ではある。極東をめぐる力の
構図は緊張緩和の入り口に立ったが、北の後ろ盾としての中国と、日米同
盟の対峙の構図は変わらず、融和だけが売り物の韓国文在寅外交は荒波に
もまれ続けるだろう。

こうした中でまずは北朝鮮の核廃棄方式としてホワイトハウスの内部に急
きょ浮上しているのが「南アフリカモデル」だ。

国務長官として初めて訪朝したポンペイオは3人を連れて帰国したが、米
朝首脳会談の開催場所と日程が決まったことを明らかにした。

日程公表はまだないが、トランプは6月初旬までに予定される米朝首脳会
談の開催地については、南北軍事境界線のある「板門店ではない」と述べ
た。詳細については「3日以内に発表する」と語るにとどめた。

トランプはこれまで、板門店のほか、シンガポールを有力候補地に挙げて
いる。3人の帰国は米朝関係にとって大きな摩擦要因の一つが取り除かれ
たことになり、1歩前進ではある。しかし核心は「核・ミサイル」であ
り、ここは、不変のままであり、難関はこれからだ。

 ここに来て金正恩の“弱み”をうかがわせる行動が見られはじめた。それ
は金正恩の習近平への急接近である。40日に2回の首脳会談はいかにも異
常である。そこには中国を後ろ盾に据えないと心配でたまらない姿が浮か
び上がる。泣きついているのだ。

金正恩は習近平との大連会談で米国への要求について相談を持ちかけた。
その内容は二つある。一つは米国が敵視政策をやめることが非核化の条件
というもの。他の一つは「米国が段階的かつ同時並行的に非核化の措置を
取ること」である。

 泣きつかれて悪い気のしない習近平は8日トランプとの電話会談で「北
朝鮮が段階的に非核化を進めた段階で何らかの制裁解除をする必要があ
る」「米朝が段階的に行動し北朝鮮側の懸念を考慮した解決を望む」など
と進言した。

これに対し、トランプは「朝鮮半島問題では中国が重要な役割を果たす。
今後連携を強化したい」と述べるにとどまった。おいそれとは乗れない提
案であるが検討には値するものだろう。

注目の日中韓首脳会談は、大きな関係改善への動きとなった。しかし、北
の核・ミサイルをめぐっては安倍と中韓首脳との間で隔たりが見られた。
日本側は「完全かつ検証可能で不可逆的な核・ミサイルの廃棄」を共同宣
言に盛り込むことを主張した。

しかし、中韓両国は融和ムードの妨げになるとして慎重姿勢であった。習
近平は金正恩に対して「中朝両国は運命共同体であり、変わることのない
唇歯(しんし)の関係」と述べている。唇歯とは一方が滅べば他方も成り
立たなくなるような密接不離の関係を意味する中国のことわざだ。

 こうした中でホワイトハウスではまずは北朝鮮の核廃棄方式だとして
「南アフリカモデルが急浮上している」という。韓国中央日報紙は、国家
安保会議(NSC)のポッティンジャー・アジア上級部長が文正仁(ム
ン・ジョンイン)韓国大統領統一外交安保特別補佐官らにこの構想を伝え
たという。

これまでホワイトハウスではボルトンNSC補佐官が主張したリビア方式
が考えられていた。リビア方式は「先に措置、後に見返り」だった。その
方式ではなく南アフリカ方式を選択するというのはある意味で現実的路線
のようだ。

南アは第一段階で、1990年に6つの完成した核装置を解体した。第2段階
は、1992年に開始された弾道ミサイル計画の廃棄で、これには18か月を要
した。

第3段階は、生物・化学戦争計画を廃棄した。ただ、南アフリカ方式は経
済的な見返りがないという点が問題となる。同紙は「南アフリカモデルを
検討するというのは、北朝鮮の核放棄に対する経済支援は韓国と日本、あ
るいは国際機関が負担し、米国は体制の安全など安全保障カードだけを出
すという考えと解釈できる」としている。

結局お鉢は日本に回ってくることになるが、金額によっては乗れない話し
ではあるまい。同紙は「北の核は南アフリカと比較して規模が大きく、
“見返りを含めた折衝型南アフリカモデル”になる可能性がある」としている。

一方、安倍首相は文在寅に対して「核実験場の閉鎖や大陸間ミサイルの
発射中止だけで、対価を与えてはならない。北の追加的な具体的行動が必
要だ」とクギを刺している。

北は過去2回にわたって国際社会の援助を取り付け、その裏をかいて核兵
器を開発してきており、まさに裏切りの常習犯だ。政治姿勢が左派の文在
寅は、北への甘さが目立つ。圧力はまだまだ維持するべきであろう。北
は、日米に取っては「反故常習犯国」なのだ。核兵器の全て廃棄という目
標達成まで圧力を継続するのは当然である。

2018年05月08日

◆「小義」では崩せぬ安倍一強体制

杉浦 正章



“四人組”の仕掛けは空振り
 

「春雨や食われ残りの鴨が鳴く」は一茶の名句だが、自民党内は小泉純一
郎を中心とする“ノーバッジ四人組” が、「グワッ!グワッ!ワッ!」と
なにやら姦(かしま)しい。どう見ても疝気筋のOBが「安倍降ろし」を始
めようとしているかのようだ。

そこには国民に通用する「大義」はなく、個人的な恨み辛みを晴らそうと
する「小義」しかない。小義で国政の中枢を攻撃しても説得力はない。9
月の自民党総裁選で安倍3選という流れを変える力にはなるまい。

まず四人組の発言を検証する。姦しい筆頭は何と言っても小泉。それも親
子で姦しい。親は「3選は難しい。信頼がなくなってきた。何を言っても
言い逃れ。言い訳と取られている」だそうだ。この発言から分かる小泉の
政治判断は「信頼がなくなってきたから3選は難しい」だが、一体誰の信
頼がなくなったのか。

国民に聞いたのか。それともTBSやテレビ朝日の情報番組の軽佻(けちょ
う)浮薄な報道の請け売りなのか。息子の小泉進次郎も「全ての権力は腐
敗する」だそうだ。

英国の歴史家ジョン・アクトンの言葉の請け売りだが、アクトンは専制君
主の権力はとかく腐敗しがちであるということを言ったのであり、民主主
義政権の批判では更々ない。学校で習ったの政治学用語などをそのまま
使ってはいけない。現実政治にそぐわない。青いのである。

政界ラスプーチンのように陰湿な印象を受ける古賀誠も「首相は改憲あり
きだ。憲法9条は一字一句変えない決意が必要だ」と安倍の改憲志向を攻
撃する。これこそノーバッジが発言すべきことだろうか。

口惜しいのならバッジを付けて「改憲反対党」を結成してから言うべきこ
とではないか。それとも民放から“お呼び”がかかるように、アンチ安倍を
売り物にしているのだろうか。

 山崎拓の「財務相が辞める以外に責任の取り方はない」は、独断。福田
康夫は自身が旗振り役だった公文書管理法に触れ、「いくら法律やルール
をつくっても守ってくれなきゃ全く意味がない。政府の信用を失う」と述
べ、財務省による公文書改ざんなどを批判した。これも自分の冴えなかっ
た政権を棚に上げた難癖だ。

口裏を合わせたような安倍政権批判発言の連続だが、その狙いはどこにあ
るかだが、おそらく“政局化”の瀬踏みであろう。導火線に火を付けて自民
党内の反安倍勢力をたきつけようというわけだ。

しかし、“仕掛け”はしても肝腎の党内は全く呼応しない。導火線は湿って
進まないのだ。せいぜい村上誠一郎あたりが反安倍の牙城TBS時事放談で
「日本が崩壊しようとしている。

政治と行政が崩壊しつつある」と太った腹を叩いて呼応しているが、誇大
妄想が極まったような発言にはよほど馬鹿な視聴者しか喜ばない。そこに
は大義がなくて個人的な憎しみだけをぶつけても共感は沸かない。

 
一方で、党執行部も沈黙していては安倍から疑われると考えてか、3選支
持論が盛んに出始めた。幹事長・二階俊博は「安倍首相支持は1ミリも変
わっていない。

外交でこれだけ成果を上げた首相はいない」と持ち上げた。なぜか眼光だ
けは鋭い副総裁・高村正彦に至っては「日本の平和と安全にとっても、安
倍首相は余人を持って代えがたい」と持ち上げられるだけ持ち上げた。

そもそも安倍支持の構図を見れば、細田、二階、麻生の3大派閥が 支持
しており、これだけで人数は197人に達する。これは405人の自民党国会議
員の半数に迫っている。シンパを含めれば3分の2は固い。

これに対して岸田文男ハムレットは、禅譲路線を走るべきか戦うべきかそ
れが問題じゃと優柔不断。もっとも戦うにしてもとても過半数はとれる情
勢にはなく、戦うことに意義があるオリンピック精神でいくしかない。し
かし、この路線が政治の世界では通用するわけがない。無残な敗北は、将
来の芽を自ら摘んでしまう。46人では多少は増えてもいかんともしがたい
のだ。

将来もくそもないのは石破茂だ。もっと少なく総勢20人の派閥では総裁選
出馬に必要な推薦人20人を自前で確保できない。自分は数えないから
19人しか推薦人がいないのだ。1人や2人は集まるだろうが、それでは
とても安倍には歯が立たない。

TBSもテレビ朝日も的確な分析が出来るコメンテーターがゼロで、放送法
違反すれすれの反安倍色の強い情報番組をやっているが、昔から民放テレ
ビの無能さは度しがたい。

加えて安倍政権は安倍の外交指向に近隣諸国の情勢が作用して、外交日程
が押せ押せになっている。極東緊張緩和が大きく動こうとしている。9日
には東京で日中韓首脳会談とこれに合わせて日中、日韓首脳会談がそれぞ
れ行われる。

約2年半ぶりとなる会談は北朝鮮の完全な非核化に向けた具体策や、米朝
首脳会談に向けた連携を確認する。5月下旬には日露首脳会談。6月8
日、9日には先進7か国首脳会議がカナダで開催される。

同月中旬までには米朝首脳会談が予定され、これに加えて日朝首脳会談も
浮上するだろう。マスコミは内閣支持率が30%台に落ち込んだと批判する
が、外交で持ち直すだろう。そもそも30%台などは通常の政権だ。佐藤政
権などは長期に30%台だった。

こうした重要な外交日程を前にして野党が国会で、つまらぬ森友だの加計
だので安倍の足を引っ張れば朝日や民放がはやし立てても、世論からブー
メラン返しに合うだろう。

既に昨年の総選挙が証明したとおりだ。野党は追及すべき外交、政策課題
は山積しており、モリだのカケだのと無為無策のまま6月20日の会期末を
迎えるべきではない。しかし、結果的には安倍は終盤国会を乗り切るだろ
う。そうすれば、9月の総裁選挙まで3か月。安倍は事実上有利な態勢の
まま総裁選に突入する公算が大きい。最近安倍はいい顔になってきた。

2018年04月28日

◆非核化合意とは「金王朝維持の保証」

杉浦 正章

 具体策は米朝会談に棚上げ

 「板門店宣言」はきっかけに過ぎない

 悠久たる歴史の流れからみれば、南北首脳会談は極東平和に紛れもなく貢献するが、多くの疑問も残した。韓国大統領の文在寅と北朝鮮朝鮮労働党委員長金正恩は27日、歴史に残る南北首脳会談を終え、「半島の完全非核化」に向けて合意し、平和協定の締結を目指すことで一致した。しかし、両首脳の談笑とは裏腹に、北朝鮮の核兵器破棄の具体策は1歩も進む気配はなく、金正恩とトランプの米朝首脳会談までに北朝鮮が譲歩する意思があるかは依然不透明だ。逆に経済的な困窮から実利を求める金正恩の姿が目立った。極東情勢の緊張緩和は歓迎すべきだが、散々世界を欺いてきた北朝鮮である。油断は禁物だ。

 紛れもなく歴史に残る「板門店宣言」の中核部分は、韓国と北朝鮮が「朝鮮半島の完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島を実現するという共通目標を確認した」という部分だ。だが、この「完全な非核化」の表現は、北が譲歩したと受け止めるべきではない。あくまで「朝鮮半島の非核化」なのであり、在韓米軍が含まれているのだ。条件付きなのだ。加えて、宣言には非核化のプロセスは一切含まれておらず、抽象的な表現にとどまっており、具体的な措置にも言及していない。宣言では「核」「非核化」への言及は4回しかなかったものの、「平和」という単語が11回使われた。これは南北の緊張緩和と関係改善をプレーアップする性格の会談であったことを物語る。つまり、南北首脳会談では具体的な措置を米朝首脳会談に委ねることになった。南北会談は米朝首脳会談に向けての“橋渡し”にとどまり、焦点は米朝会談に移行したことを意味する。

 核廃棄という大事を進めるためには、具体的には地道な合意の積み重ねが必要となる。まず定期的な首脳会談の継続だが、これは今秋にも文在寅が平壌を訪問することで実現することになろう。金大中政権は対話や経済支援により変化を促す「太陽政策」を推し進めたが、結局は失敗した。どうしても南北2国間だけでは埋められない溝が生じてしまうのだ。ここはやはり、米朝首脳会談で最終的な妥結を目指す必要があるのだ。もともと今回の南北会談は米朝会談への予備的協議の性格を有するものであった。トランプは先に行われたポンペイオと金正恩の会談を見て、南北首脳会談で一定の流れが出たと判断しているようだ。これまでの高圧的な態度を急速に転換させ始めている。

トランプは「みんなは『私が核戦争を起こす』と言ったが、核戦争は弱腰の人間が起こす。これまで『小さなロケットマン』とか『私の核のボタンの方が大きい』と発言したが、暴言だった。北はこちらが要求する前に、私が発言する前に諦めた。私はうまくやっているのだ」と述べているが、まだ北が具体策に言及していないうちから“自画自賛”しているのは相変わらず浅薄だ。

 トランプは、極東安保の全てが、自分と金正恩との会談に移されたということを自覚すべきだ。北は開発した核をどうするのか。放棄するのか保有し続けるのか。もちろん廃棄の規模や時期については何ら分かっていない。ただ分かっているのは非核化とは「金王朝体制の保証」なのだ。従って「非核化」の文言に具体性がない限り、トランプは制裁緩和や体制の保証などの対価を与えるべきではない。最終的に核製造施設と核兵器の解体、核物質の海外への移転、国際原子力機構(IAEA)による査察の徹底などを経てこそ対価があり得ることを明確に提示すべきである。首相・安倍晋三が「今回の会談を受け、米朝会談を通じて、北朝鮮が実体的な行動を取る事を期待する」と述べているが、これが正しい。おそらく安倍は先の訪米でトランプに提言すると共に、対処方針で合意に達しているのだろう。

 日朝関係も前向きに進める必要がある。拉致問題もさることながら、極東安保の観点からも、日本も積極的に関与する必要がある。国交正常化の動きは既に首相小泉純一郎が2002年の金正日との会談で平壌宣言をまとめている。内容は「両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した」というものだ。しかし、拉致問題が進展しなくなったことや、2006年に北朝鮮政府がミサイル発射実験や核実験を強行して、有名無実化した状態となっている。こうした例にならって安倍は米国と連携しつつも機を見て積極的行動に出る必要があろう。

2018年04月26日

◆米朝首脳会談に画期的成果は期待薄

                        杉浦 正章


「核保有」の是非で行き詰まった

 米朝首脳会談へ向けて米国内で様々な観測が出始めたが、その多くが悲観的である。米大統領ドナルド・トランプとの首脳会談を控えて、北朝鮮朝鮮労働党委員長の金正恩が出した観測気球のごとき提案は、従来の譲歩をかき集めたものに過ぎない。その中身は、核実験とミサイル実験の凍結や、南北和平協定の締結後も在韓米軍を認めるといった内容だ。

 北による非核化の声明と言っても、これが実施に移されるかどうかは過去における欺瞞の構図が物語る話しであり、極めて困難だ。従って首脳会談は長年の米朝対立に終止符を打つというような画期的なものではなく、基本的な対立の構図を改めて確認することになりかねない要素が山積している。

 まず、北朝鮮と米国の首脳らによる発言から明確になって来た両国のポジションを分析する。米国の目標は北朝鮮の核兵器製造計画を完全に止め、既に製造した核兵器の破壊を求めるところにある。おそらくトランプは金正恩に対し@核爆弾とミサイル製造の中止と実験の停止A既にある核兵器の解体B南北平和協定締結後も在韓米軍を認めるC核実験場の閉鎖ーなどを要求するだろう。これらの要求を受け入れない限り、経済制裁の解除はないと迫るものとみられる。

 これに対して金正恩は「核実験と大陸間弾道弾の発射実験を中止し、核実験場も閉鎖する。今後は経済発展に全力を傾注する」との対応を表明している。核実験場の閉鎖については、過去6回の実験で山崩れを起こしている上に、坑道も崩れて使い物にならないから無意味だ。その意図を分析すれば金正恩は、“現状のままでの核開発計画の凍結” で国際社会からの経済支援を受けたいという意図がありありと見受けられる。これは父の正日の意図とピタリと符合する。金正恩も金正日のように、体制の生き残りを核兵器開発に賭けてきたのだ。

もちろん見返りを期待しての核実験停止は、父の方式の踏襲である。米国と北朝鮮の思惑はここで鋭く対峙しているのだ。要するに金正恩は現状のままで核開発プログラムを凍結し、その見返りに国際社会からの経済制裁を直ちに緩和させることを意図しているのだ。従って、トランプの「北朝鮮の非核化を見たい。非核化とは核兵器の撤去だ」という核兵器プログラムの完全な破棄を求める要求とは似ても似つかないものなのだ。トランプは「日本と世界にとって前向きな結果が出る」としているが、問題は「前向き」の度合いだ。

 それにしても正日と比べて正恩のやり口はすさまじく派手だ。金正恩体制のこれまでの約4年8カ月で、発射された弾道ミサイルは失敗を含め30発を超えた。金正日体制の約18年間では16発の弾道ミサイルが発射されたとみられる。金正恩体制はすでに、倍以上の弾道ミサイルを発射した計算となる。

今や自分はもちろん金一族の体制を守る手段として核とミサイルのノウハウが使われているのが現実だ。核とミサイルは金王朝の維持と発展に直結しているのだ。金正恩は核を持たないイラクのサダム・フセインやリビアのカダフィに何が起きたかを知っているからこそ、用心に用心を重ねて二の舞いを食らうのは避けようとしているのだ。金正恩にしてみれば「核保有国」として世界が認めることを基本戦略に据えているのだ。

これは逆に見れば国際社会による経済制裁が極めて有効に働き始めたことを意味する。金正恩の本音は“経済救済”なのであろう。繰り返すが、これまでがそうであったように金正恩の提案をそのまま受け入れれば、一時的には核拡散のリスクが低減し軍事オプションの可能性が低くなるわけだが、金が微笑外交の影に隠れて、核兵器の「一剣を磨き続ける」ことは火を見るより明らかだ。

 米国を初めとする国際社会が求められている選択は「北が核プログラムを完全に破棄するか」それとも「核能力の温存を甘んじて容認するか」であろう。その中間の「あいまいのまま推移」もあり得るが、北が何もしないまま「あいまいのまま推移」では全く交渉の意味がない。トランプには少なくとも廃棄に向けての何らかのとっかかりを求められているのだ。トランプは自覚しなければならない。 

トランプの脳裏には時々「軍事行動」がかすめているかも知れない。しかし、韓国には米兵2万8500人が駐留しているほか、常に20万人を超える米民間人が滞在している。朝鮮戦争が再発すれば、過去の例から見てもトータルで数百万人の人的な犠牲が必要となる。戦争による物的・人的被害は計り知れず、軍事行動のオプションはまず考えられない愚挙である。隘路を探し出すしかないのだ。隘路とは交渉の継続であるかも知れない。もっとも対話の継続は、その間軍事オプションが行われないことを意味するから、極東情勢には1歩前進だろう。

北朝鮮との長期にわたる難しい交渉のが始まることになるのだろう。

2018年04月17日

◆時々当たる飯島発の“解散風”

                 杉浦 正章


いまだ“老熟”せぬ「狭量小泉節」
 
政局がざわついてきた
 
昨年9月の総選挙から半年しかたたないのに、永田町を解散説が吹き初めている。首相・安倍晋三がモリだのカケだののあらぬ疑惑に、伝家の宝刀解散で斬り返すというのだ。 かつて佐藤栄作は「内閣改造をするほど総理の権力は下がり、解散をするほど上がる」と述べ、黒い霧解散を断行して求心力を回復、局面転換を図った。

当時筆者も「解散だ」とフラッシュを打ったことを思い出す。今度もフラッシュが飛ぶかどうかだが、野党が根も葉もないことをほじくり出して、安倍を退陣に追い込もうとしているが、これが続く限り早期解散はあり得る。安倍は退陣でなく解散を選択する。分裂野党が選挙戦を戦えるか見物となる。

 政権のうち誰かが解散風を吹かせ始める政局かと思っていたが、案の定16日内閣官房参与の飯島勲が解散発言の口火を切った。テレビ朝日の朝の番組で「私だったら、もう、今、解散しますね。100%」「今の状況を見ると最悪でも過半数は十分取れる」「過半数以上議席が取得できれば、安倍内閣の持続が当たり前。何ら問題ない」などとぶちまくっていた。

安倍が、国会で森友学園や加計問題での、公文書の書き換え疑惑について、「全く私は指示していないと申し上げてきた。あとは国民の皆様が判断いただくことだと思う」との発言をしたことを根拠に飯島は、「『国民が判断する』ということは、解散しかないじゃないですか。そうでしょう?」と述べた。これに先立ち飯島は週刊文春(3月29日号)で「黒い霧解散」を引き合いに、早期の解散・総選挙を提言し、「過半数維持は間違いないぜ」と書いている。

 この飯島解散風は、外れが多いが時々当たるから要注意だ。発言が安倍の了解の元に行われたか、安倍の胸中を察してのものであるかは五里霧中だが、飯島が流行の「忖度」をしていることは確かだろう。今と似た根拠レスの政権追及ムードに端を発した黒い霧解散の例を語れる現役政治記者はもう筆者しかいない。黒い霧問題は第一次佐藤内閣が発足した1965年からくすぶり始めた。その内容は現在の野党による追及に似て、黒い霧の名前通り得体の知れぬ“ヌエ”的な性格を持っていた。

具体例としては虎ノ門国有地払い下げ問題をめぐる恐喝・詐欺(さぎ)事件で逮捕された田中彰治事件、防衛長官上林山栄吉の大名行列並みのお国入り事件、松野頼三の官費による私的な外国旅行などなどだ。佐藤とは関係がない、愚にも付かない問題をひっくるめて黒い霧と称して野党が追及、マスコミが書き立てた。

 今回もモリだのカケだのが「贈収賄事件」や「首相の犯罪」に直結する流れにはなく、実態がないから、言うならば「白い霧」にすぎない。白い霧の向こうからは美女が出てくるのが通例で、“怪物”が現れることはあり得ない。朝日やTBSなどを中心とする“マスコミ追及班”は、何かを引き出そうと躍起だが、これはマスコミのあるべき本道にもとる。なぜなら根拠なしに“あやしい”だけが先行して、ファクトが付いてこないからだ。むやみやたらに政権のつるし上げを図ろうとしているだけだ。

 佐藤はこうしたムードを断ち切るために66年12月27日に解散を決断、67年1月の総選挙を断行した。微減したが自民党は善戦した。日本国民はばかではない。大勢は真実がどこにあるかを訴えれば納得する国民である。任期満了まで1年を切る中での解散であった。

それでは早期解散があるかどうかだが、過去にも例は二つある。一つは吉田茂のバカヤロー解散だ。1952年8月28日に抜き打ち解散を断行した吉田は、国会の予算委で社会党右派の西村栄一との質疑応答中、「バカヤロー」とつぶやいたことをとがめられ、1953年3月14日に解散を断行した。

 もう一つは大平正芳による解散だ。大平は1979年9月7日に一般消費税世に問う解散を断行したが、翌80年5月9日にハプニング解散を断行した。きっかけは反主流の反乱であった。三木派や福田派、中川グループなどの議員69人は内閣府不信任本会議を欠席した結果、可決されてしまったのだ。

選挙中であった6月12日に大平が急死するという緊急事態が起こり、同情票が作用して自民党は地滑り的な勝利となった。バカヤロー解散もハプニング解散も半年か1年たたずの時点での解散であったが、首相が決戦を選択した選挙であった。

 こうした中で元首相小泉純一郎が爆弾発言をした。14日、水戸市内で講演後記者団に対して森友・加計学園を巡る一連の問題への政府の対応を批判。「言い逃れ、言い訳ばかり」と突き放した。加えて小泉は、秋の自民党総裁選について「3選は難しい。信頼がなくなってきた」と安倍3選の可能性を否定したのだ。

久しぶりの小泉節の登場だが、筆者と近い年齢にしては相変わらず老熟していない。3選がないと断定する以上、誰か別の候補者がいるのか。石破茂を自民党主流派が担ぐだろうか。前外相岸田文雄が政調会長になってめざましい活躍をしたか。二人ともまだ5年は雑巾がけをした方がいい。そもそも小泉は自分の弟子の安倍を擁護するのならともかく、足を引っ張るとは何事か。まさに「狭量小泉」の面目躍如かと言いたい。

2018年04月16日

◆トランプ一触即発の状態でけん制

                  杉浦 正章


シリア攻撃の準備完了 米露対立危機的状況 

この国はの国会は一体どうなっているのか。シリアが一触即発で、場合に
よっては米露の大規模軍事衝突に発展しかねないというのに、野党はカケ
だのモリだの朝日新聞と民放受けする問題ににうつつをぬかし、世界情勢
などどこ吹く風だ。

何という世界観の欠如だろうか。戦争はいったん勃発すれば、連鎖を巻き
起こし、北朝鮮情勢の緊迫化につながりうる事態も想定される。米国はト
ランプの強硬路線に傾斜して、シリア攻撃の準備をほぼ完了させた。あと
は命令を待つばかりの状況に至っている。シリアをめぐる米露の対立は抜
き差しならぬ事態となりつつある。

トランプはまず「口撃」から物事を始めるから、分かりやすい。シリアの
アサド政権を「自らの国民の殺害を楽しむかのように毒ガスをまく獣(け
だもの)」と決めつけ、一方でこれを支援するロシアに対して「ロシアは
シリアに向けられたいかなるミサイルも打ち落とすと宣言している。プー
チンは準備に入るがいい。米国のミサイルが来るぞ、新しくスマートなミ
サイルだ」とどう喝した。

トランプの行動はまず同盟国固めから始まった。イギリスの首相テリー
ザ・メイとフランス大統領エマニュエル・マクロンと電話会談して、アサ
ドに断固とした対応で臨むことを確認した。

マクロンはテレビで「アサド政権が化学兵器を使った証拠を握っている」
と延べ、制裁を示唆。メイは英軍をシリア攻撃に参加させる方針を固めた
模様だ。米欧有志連合による攻撃態勢を整えたのだ。

しかし、ドイツは別だ。首相メルケルは12日の記者会見で、対シリア軍事
行動について「ドイツは参加しない」と明言した。

対シリア攻撃のシナリオは、東地中海に展開した米艦船や爆撃機によって
多数の巡航ミサイルを発射して、軍事施設を破壊する。

昨年4月には59発がシリアの空軍基地の目標を破壊している。今回はこれ
を上回る規模となる可能性が大きいようだ。これにロシアがどう対応する
かだが、トランプの予告発言はシリアの基地にいるロシア軍兵士に避難を
呼びかける性格もある。

最悪の場合はロシアが反撃して、衝突が拡大し米露直接戦争に発展するこ
とだ。ロシアはシリアの基地にミサイル迎撃システム「S400」を配備して
いるものとみられ、反撃を受ければ米軍は無傷ではあり得ない。

米露が直説砲火を交える事態になれば、史上初めてであり、事態は1962年
のキューバ危機に勝るとも劣らない危機的状況である。

 この米国によるシリア攻撃は北朝鮮をも強く意識した地球規模の戦略で
あることは言うまでもない。シリア攻撃を目の当たりにした場合金正恩
が、どう反応するかをトランプは片目でにらんでいる。

おそらく「震え上がる」だろうとみている。トランプの狙いはシリア攻撃
によって、北朝鮮に力を見せつけ、核兵器放棄に向かわせたいのだろう。

一方でロシアは北朝鮮にも同型ミサイル迎撃システムを配備しており、北
はシリア軍の反撃能力を固唾をのんで見守るに違いない。米軍に対する迎
撃の「予行演習」の意味合いを持つからだ。

金正恩はシリアの紛争が拡大して、米軍が極東で作戦を展開することが困
難になることを期待しているに違いない。戦術上2正面作戦は最も愚かな
作戦と言われているが、米国が中東に専念すれば北に核・ミサイル開発の
余裕を与えることになる。シリアへの対応は米国の北との交渉に影響を及
ぼさざるを得ないのだ。

こうした中で注視すべきはトランプ政権の中でブレーキ役が登場し始め
たことだ。これまではかつてイラク戦争を推進した大統領補佐官ジョン・
ボルトンのように「平和がほしければ戦争の準備をすべきだ」といった
“力の信奉者”が目立った。

これに対して、国防長官ジェームズ・マティスは「私の責任は必要ならば
軍事オプションを用意することだ。しかし米国は外交主導で努力する。外
交的手段によって外交的結果を得る」と慎重論だ。前国務長官ティラーソ
ンも「外交的解決はあきらめない」と述べている。

しかしこうした慎重論もトランプ一流の“口撃”にかき消されがちだ。ト
ランプは11日「ロシア高官はシリアにミサイルが飛来しても迎撃すると
発言したが、そのミサイルが飛来するのだからロシアは準備せよ」と“最
後通牒”的な発言を繰り返している。

これ以上言葉がないほど脅しまくっているのだ。ロシア外務省報道官のザ
ハロワは「ミサイルはテロリストに向けられるべきで、国際テロリズムと
戦っている合法的政権に向けられるべきではない」と批判しているが、ト
ランプ節にかき消されがちだ。
    

2018年04月13日

◆トランプ一触即発の状態でけん制

杉浦 正章


シリア攻撃の準備完了 米露対立危機的状況 

この国はの国会は一体どうなっているのか。シリアが一触即発で、場合に
よっては米露の大規模軍事衝突に発展しかねないというのに、野党はカケ
だのモリだの朝日新聞と民放受けする問題ににうつつをぬかし、世界情勢
などどこ吹く風だ。

何という世界観の欠如だろうか。戦争はいったん勃発すれば、連鎖を巻き
起こし、北朝鮮情勢の緊迫化につながりうる事態も想定される。米国はト
ランプの強硬路線に傾斜して、シリア攻撃の準備をほぼ完了させた。あと
は命令を待つばかりの状況に至っている。シリアをめぐる米露の対立は抜
き差しならぬ事態となりつつある。

トランプはまず「口撃」から物事を始めるから、分かりやすい。シリアの
アサド政権を「自らの国民の殺害を楽しむかのように毒ガスをまく獣(け
だもの)」と決めつけ、一方でこれを支援するロシアに対して「ロシアは
シリアに向けられたいかなるミサイルも打ち落とすと宣言している。プー
チンは準備に入るがいい。米国のミサイルが来るぞ、新しくスマートなミ
サイルだ」とどう喝した。

トランプの行動はまず同盟国固めから始まった。イギリスの首相テリー
ザ・メイとフランス大統領エマニュエル・マクロンと電話会談して、アサ
ドに断固とした対応で臨むことを確認した。

マクロンはテレビで「アサド政権が化学兵器を使った証拠を握っている」
と延べ、制裁を示唆。メイは英軍をシリア攻撃に参加させる方針を固めた
模様だ。米欧有志連合による攻撃態勢を整えたのだ。

しかし、ドイツは別だ。首相メルケルは12日の記者会見で、対シリア軍事
行動について「ドイツは参加しない」と明言した。

対シリア攻撃のシナリオは、東地中海に展開した米艦船や爆撃機によって
多数の巡航ミサイルを発射して、軍事施設を破壊する。

昨年4月には59発がシリアの空軍基地の目標を破壊している。今回はこれ
を上回る規模となる可能性が大きいようだ。これにロシアがどう対応する
かだが、トランプの予告発言はシリアの基地にいるロシア軍兵士に避難を
呼びかける性格もある。

最悪の場合はロシアが反撃して、衝突が拡大し米露直接戦争に発展するこ
とだ。ロシアはシリアの基地にミサイル迎撃システム「S400」を配備して
いるものとみられ、反撃を受ければ米軍は無傷ではあり得ない。

米露が直説砲火を交える事態になれば、史上初めてであり、事態は1962年
のキューバ危機に勝るとも劣らない危機的状況である。

 この米国によるシリア攻撃は北朝鮮をも強く意識した地球規模の戦略で
あることは言うまでもない。シリア攻撃を目の当たりにした場合金正恩
が、どう反応するかをトランプは片目でにらんでいる。

おそらく「震え上がる」だろうとみている。トランプの狙いはシリア攻撃
によって、北朝鮮に力を見せつけ、核兵器放棄に向かわせたいのだろう。

一方でロシアは北朝鮮にも同型ミサイル迎撃システムを配備しており、北
はシリア軍の反撃能力を固唾をのんで見守るに違いない。米軍に対する迎
撃の「予行演習」の意味合いを持つからだ。

金正恩はシリアの紛争が拡大して、米軍が極東で作戦を展開することが困
難になることを期待しているに違いない。戦術上2正面作戦は最も愚かな
作戦と言われているが、米国が中東に専念すれば北に核・ミサイル開発の
余裕を与えることになる。シリアへの対応は米国の北との交渉に影響を及
ぼさざるを得ないのだ。

 こうした中で注視すべきはトランプ政権の中でブレーキ役が登場し始め
たことだ。これまではかつてイラク戦争を推進した大統領補佐官ジョン・
ボルトンのように「平和がほしければ戦争の準備をすべきだ」といった
“力の信奉者”が目立った。

これに対して、国防長官ジェームズ・マティスは「私の責任は必要ならば
軍事オプションを用意することだ。しかし米国は外交主導で努力する。外
交的手段によって外交的結果を得る」と慎重論だ。前国務長官ティラーソ
ンも「外交的解決はあきらめない」と述べている。

 しかしこうした慎重論もトランプ一流の“口撃”にかき消されがちだ。ト
ランプは11日「ロシア高官はシリアにミサイルが飛来しても迎撃すると
発言したが、そのミサイルが飛来するのだからロシアは準備せよ」と“最
後通牒”的な発言を繰り返している。これ以上言葉がないほど脅しまくっ
ているのだ。ロシア外務省報道官のザハロワは「ミサイルはテロリストに
向けられるべきで、国際テロリズムと戦っている合法的政権に向けられる
べきではない」と批判しているが、トランプ節にかき消されがちだ。
    

2018年04月05日

◆「米中貿易戦争」深刻化の様相

杉浦 正章


北の対日大接近もありうる 極東情勢一段と流動化

民放などで極東情勢からの「日本置き去り論」が目立つが、相変わらず浅
薄だ。トランプが韓国の特使の進言を受けて米朝会談に乗り気になった結
果がその理由のようだが、極東安保が日本抜きに語られることはあり得ない。

17日からの日米首脳会談で安倍が極東安保の実情を説明すればトランプに
は分かる事だ。それよりも極東における「米中貿易戦争」の様相がここに
きて一段と濃厚になってきたことを注視する必要がある。

かねてから首相安倍晋三は北朝鮮への対応について、「過去の教訓を踏ま
えると、対話のための対話では意味がない。北朝鮮に完全、検証可能かつ
不可逆的な方法で、核・ミサイルの廃棄にコミットさせ、それに向けた具
体的な行動を取らせるため最大限の圧力を維持していかなければならな
い」と述べている。

極東情勢をどこまで深く認識しているか疑わしいトランプも、この安倍理
論には同調するだろう。安倍は日本としては譲れないコアの部分をトラン
プに吹き込んでおく必要がある。なぜならトランプは金正恩が核弾頭搭載
のICBMを放棄するだけで「米国に届く核兵器はない」と納得する可能性が
あるからだ。

これは、日本にとっては最悪のシナリオである。なぜなら日本の米軍基地
や東京など大都会を狙う中距離核ミサイルがそのまま放置されれば、日本
は常時北のどう喝受け続けることになるからだ。

これは紛れもなく日本に核武装論を台頭させる要因である。日本が核武装
をすれば極東安全保障のバランスを一気に崩壊させ、情勢は今まで以上に
緊迫と流動性を帯びる。

その懸念は世界の常識になりつつあり韓国の中央日報紙などは社説で「日
本再武装論が台頭している」「中国が北を放置すれば重武装の日本が登場
し、中国が代償を払うことになる」と核武装の可能性を強調している。

米国のウォール・ストリート・ジャーナル紙は、既に北朝鮮が発射した中
距離弾道ミサイル「火星12」が北海道上空を通過した後の社説で「日本の
核武装に道開く北朝鮮の核容認」との題して「この中距離ミサイル発射実
験は、北東アジアの安全保障をめぐる政治を一段と混乱させるだろう。そ
して、日本に自前の核抑止力を持つことを改めて促すものだ」と分析して
いる。

要するに日本抜きの極東安保は成り立たないということなのである。米朝
や米中だけで極東安保を語るべきではないのだ。加えて北の核施設やミサ
イル発射の動きは低調にはなっているが、北が完全に核やミサイル放棄に
方針転換したとみるのは言うまでもなく早計である。

1980年代から北は核・ミサイルへの実験を繰り返してきており、完成がす
ぐそこにあるのに、放棄するわけがないのである。金正恩のレゾンデート
ルは核とミサイルしかないのであって、手放せばただの太った政治家にな
るだけだ。

今後、外交日程は極東情勢を軸に硬軟両様の展開を見せる。4月17日から
2日間はフロリダで日米首脳会談。同月27日に南北首脳会談。5月前半
に日中首脳会談、同月末までに米朝首脳会談という段取りだ。

日本の出番はありすぎるほどあるのだ。一連の会談を通じて安倍が果たす
役割は大きい。日米首脳会談ではその後の一連の首脳会談対策が話し合わ
れる。対北、対中戦略で重要な骨組みが打ち立てられるだろう。

その内容はおそらく@トランプはいかなる情勢下においても北朝鮮の核保
有を認めないA核・ミサイルで北の具体的行動がない限り制裁は維持するB
米国は最悪の場合の軍事オプションの可能性を維持するーなどとなるだろう。

こうした日米の動きに対して中国は極めて警戒を強めるだろう。中国の核
問題に対する主張はあくまで「朝鮮半島の非核化」である。単に北だけの
非核化ではなく、米軍も含めた非核化なのである。

中国の戦略にとって北は常に緩衝材なのであり、米軍と国境を接して対峙
することは望まないのだ。北と中国は朝鮮戦争を一緒に戦った血の盟約が
依然として根底に存在するのであり、地政学上も切っても切れない関係に
ある。

中国は朝鮮半島問題が米国主導で進む事には反対しなければならないと思
い込んでいるのだ。中国にとっては朝鮮半島が「不戦不乱」である状態が
一番居心地が良いのであって、北の政権を消滅させるような策動にはまず
乗らない。

また、米国の輸入制限に対して、中国が報復関税を発動したように、「米
中貿易戦争」の色彩が一段と濃くなった。中国は米国が鉄鋼、アルミニウ
ムに高関税を3月23日にかけたことへの対抗措置を2日発表した。ワイン
など120項目に15%、豚肉など8項目に25%を上乗せしたのだ。この米
中両大国の経済と外交・安保の両面での対立は歴史的必然とも言え、長期
化するだろう。

就任当初は金正恩に対する嫌がらせで、訪韓を断行したほどの習近平だ
が、金正恩が訪中して恭順の意を示したことから、相好をくづし方針を一
変させた。習近平の前で金正恩が習発言をノートに取るという、“すり寄
り”姿勢を取ったことが、大満足であったのだろう。

首脳会談は会談の中身もさることながら、相手の態度が決定的な役割を果
たす事もある。金正恩の“メモ作戦”は練りに練った作戦なのであろう。

こうした北の外交攻勢からみれば、今後北は閉ざされた独裁国家というイ
メージを払拭するため、主要国との外交チャンネルを活発化させるだろ
う。日本に対しても大規模な経済協力を期待して大接近してくる可能性が
強い。その場合、核放棄が前提になることは言うまでもない。

2018年04月03日

◆北の“非核化”にある「疑似餌」の側面

                   杉浦 正章


“核カード”は北の遺伝子 日本「置き去り」の指摘は荒唐無稽

金正恩の中国電撃訪問は、すべて5月に予定されるトランプとの米朝首脳
会談対策に集約される。世界の孤児のまま対米会談に臨むことのリスクを
やっと気がついたのだ。

逆に中国にしてみれば、極東における“蚊帳の外”の状況を改善するメリッ
トがある。金正恩は「後ろ盾」、中国は「存在感回復」を獲得することに
なった。双方にメリットがある会談だったし、中国が影響力を取り戻した
ことは事実だ。

これにより冷え込んでいた中朝関係は一気に改善し、“死に体”であった中
朝の血の同盟である中朝友好協力相互援助条約は再び息を吹き返しつつあ
る。ただし非核化と言っても様々だ。過去2度あった北の“疑似餌”に3度
ひっかかる馬鹿はいない。

中朝の首脳会談では、朝鮮半島の非核化については大まかなスケジュール
や考え方を確認したものとみられる。しかし、単に「非核化」といって
も、日米と中国のスタンスは大きく異なる。

日米は核の即時全面的放棄を求めるが、中国は時間をかけて解決しようと
する立場だ。金自身の発言を分析しても怪しげな空気を感ずる。北朝鮮は
日米の求める非核化対応をよしとしているようには見えない。

 非核化に対する金正恩の発言は「我が国の善意に応え、平和実現のため
段階的かつ同時に措置を講ずれば、朝鮮半島の非核化の問題は解決するこ
とが出来るだろう」というものだ。

この「段階的かつ同時に」の表現がくせ者なのだ。それは段階的手順を
追ってということであり、手放しでの非核化ではさらさらない。非核化と
言えば北朝鮮が一方的に核を放棄するような印象を受けるが、これまで北
が主張してきたことは「米国の行動あっての行動」なのであり、米軍の核
が朝鮮半島に存在すれば成り立たない論理なのである。

これは核兵器の「即時放棄」を唱える日米の要求ではなく、「時間をかけ
て解決」という中国の方針に添って金正恩が球を投げたと受け止めること
も可能だ。

北朝鮮はきょう南北閣僚級会談、来月には南北首脳会談、5月には米朝
首脳会談を控えているが、電撃訪問は金正恩が米朝首脳会談の“失敗”を極
度に恐れている可能性があることも露呈した。

トランプは「米朝会談は楽 しみだが、残念ながら最大限の制裁と圧力は
何があっても維持されなけれ ばならない」と述べるとともに、米朝協議
がうまくいかなかった場合につ いて「アメリカは全ての選択肢がテーブ
ルの上にある」とどう喝している のだ。

金正恩は常にリビヤのカダフィー暗殺未遂事件が脳裏をよぎってい ると
いわれている。アメリカは1986年にカダフィーの居宅を狙って空爆す る
強硬手段を取り、暗殺しようとした。カダフィーは外出しており危うく
難を逃れた。

この恐怖が金訪中の原動力となっているといってもよい。

トランプの言うように米朝首脳会談が破綻すれば、米国による軍事行動
の可能性が一気に高まる。米国を“けん制”するにも孤立状態では手も足も
出ない。そこで金正恩は習近平に泣きついて、関係を改善し“後ろ盾”の存
在を誇示する必要に駆られたのだ。

中国を通じて米国の軍事行動をけん制 してもらうしか方策は無いのだ。
中国は朝鮮戦争の休戦協定の当事者でも あり、金正恩は米朝関係改善が
出来なければ中国にすがりつくしか生きる 道はないと考えたに違いない。

中国にしてみれば、極東における日米韓の軍事協力の可能性をひしひし
と感じているのであり、朝鮮半島の非核化や平和の定着などを進めるため
にも、北の独走を防ぐ必要がある。そのための電撃訪問の受け入れである
が、これは父親の総書記金正日訪中と酷似している。

1992年の中韓国 交正常化により、中朝関係は極度に悪化したが、今回同
様に、金正日は 2000年5月29日の電撃訪中で世界をあっと言わせた。金
日成が死去 してから初の外国訪問であった。韓国大統領金大中との首脳
会談を直前に 控えていたことまで日程を模写したかのようにそっくりだ。

また北がロシ アと連携をする場合もあり得る。北がロシアと結べば、極
東に中露北と日 米韓の対峙の構図が出来る可能性がある。ロシアは欧米
から総スカンを受 けており、極東に突破口を求める可能性が大きい。


問題は北の非核化のプロパガンダを真に受けて、国際社会が性急な対応
をすることだ。非核化と言っても即時全面放棄を北がするわけがないから
だ。世界は核問題で金日成にだまされ、金正日にだまされてきた。金日成
は1980年代から核開発に着手したとみられる。

1994年の金日成死後に権力 の座を継いだ金正日は、「先軍政治」を掲げ
て核開発に専念した。北の政 権は経済的に困窮すると“核カード”を切
り、援助を達成するのが“遺伝子” に組み込まれているかのようである。
紛れもなく金正恩も“遺伝子”の指図 で動いている。

従って、北の核放棄の意図はうさんくさいのだ。実質的な 進展もないう
ちは「北の病気がまた始まった」くらいの対処が適切だ。日 本政府の置
き去りを指摘する浅薄な新聞もあるが、ここは慌てる必要はな い。

公明 党の議員から参院予算委で「国民は日本だけ置いていかれると懸 念
して いる」との指摘があったが、国民とは誰だ。素人の見方であり、慌
てる 乞食はもらいが少ない。誰も日本を置いていこうなどとは思ってい
な い。

中国からも米国からもパイプを通じて連絡は来ている。北が厳しい経 済
事情を背景に、やがては日本にすり寄ることは目に見えている。ここ
は、北の非核化の本質をじっくり見極めてから対応しても遅くはない。



2018年04月01日

◆北の“非核化”にある「疑似餌」の側面

杉浦 正章


“核カード”は北の遺伝子 日本「置き去り」の指摘は荒唐無稽

金正恩の中国電撃訪問は、すべて5月に予定されるトランプとの米朝首脳
会談対策に集約される。世界の孤児のまま対米会談に臨むことのリスクを
やっと気がついたのだ。

逆に中国にしてみれば、極東における“蚊帳の外”の状況を改善するメリッ
トがある。金正恩は「後ろ盾」、中国は「存在感回復」を獲得することに
なった。双方にメリットがある会談だったし、中国が影響力を取り戻した
ことは事実だ。

これにより冷え込んでいた中朝関係は一気に改善し、“死に体”であった中
朝の血の同盟である中朝友好協力相互援助条約は再び息を吹き返しつつあ
る。ただし非核化と言っても様々だ。過去2度あった北の“疑似餌”に3度
ひっかかる馬鹿はいない。

中朝の首脳会談では、朝鮮半島の非核化については大まかなスケジュール
や考え方を確認したものとみられる。しかし、単に「非核化」といって
も、日米と中国のスタンスは大きく異なる。

日米は核の即時全面的放棄を求めるが、中国は時間をかけて解決しようと
する立場だ。金自身の発言を分析しても怪しげな空気を感ずる。北朝鮮は
日米の求める非核化対応をよしとしているようには見えない。

 非核化に対する金正恩の発言は「我が国の善意に応え、平和実現のため
段階的かつ同時に措置を講ずれば、朝鮮半島の非核化の問題は解決するこ
とが出来るだろう」というものだ。

この「段階的かつ同時に」の表現がくせ者なのだ。それは段階的手順を
追ってということであり、手放しでの非核化ではさらさらない。非核化と
言えば北朝鮮が一方的に核を放棄するような印象を受けるが、これまで北
が主張してきたことは「米国の行動あっての行動」なのであり、米軍の核
が朝鮮半島に存在すれば成り立たない論理なのである。

これは核兵器の「即時放棄」を唱える日米の要求ではなく、「時間をかけ
て解決」という中国の方針に添って金正恩が球を投げたと受け止めること
も可能だ。

北朝鮮はきょう南北閣僚級会談、来月には南北首脳会談、5月には米朝
首脳会談を控えているが、電撃訪問は金正恩が米朝首脳会談の“失敗”を極
度に恐れている可能性があることも露呈した。

トランプは「米朝会談は楽 しみだが、残念ながら最大限の制裁と圧力は
何があっても維持されなけれ ばならない」と述べるとともに、米朝協議
がうまくいかなかった場合につ いて「アメリカは全ての選択肢がテーブ
ルの上にある」とどう喝している のだ。

金正恩は常にリビヤのカダフィー暗殺未遂事件が脳裏をよぎってい ると
いわれている。アメリカは1986年にカダフィーの居宅を狙って空爆す る
強硬手段を取り、暗殺しようとした。カダフィーは外出しており危うく
難を逃れた。

この恐怖が金訪中の原動力となっているといってもよい。

トランプの言うように米朝首脳会談が破綻すれば、米国による軍事行動
の可能性が一気に高まる。米国を“けん制”するにも孤立状態では手も足も
出ない。そこで金正恩は習近平に泣きついて、関係を改善し“後ろ盾”の存
在を誇示する必要に駆られたのだ。

中国を通じて米国の軍事行動をけん制 してもらうしか方策は無いのだ。
中国は朝鮮戦争の休戦協定の当事者でも あり、金正恩は米朝関係改善が
出来なければ中国にすがりつくしか生きる 道はないと考えたに違いない。

中国にしてみれば、極東における日米韓の軍事協力の可能性をひしひし
と感じているのであり、朝鮮半島の非核化や平和の定着などを進めるため
にも、北の独走を防ぐ必要がある。そのための電撃訪問の受け入れである
が、これは父親の総書記金正日訪中と酷似している。

1992年の中韓国 交正常化により、中朝関係は極度に悪化したが、今回同
様に、金正日は 2000年5月29日の電撃訪中で世界をあっと言わせた。金
日成が死去 してから初の外国訪問であった。韓国大統領金大中との首脳
会談を直前に 控えていたことまで日程を模写したかのようにそっくりだ。

また北がロシ アと連携をする場合もあり得る。北がロシアと結べば、極
東に中露北と日 米韓の対峙の構図が出来る可能性がある。ロシアは欧米
から総スカンを受 けており、極東に突破口を求める可能性が大きい。


問題は北の非核化のプロパガンダを真に受けて、国際社会が性急な対応
をすることだ。非核化と言っても即時全面放棄を北がするわけがないから
だ。世界は核問題で金日成にだまされ、金正日にだまされてきた。金日成
は1980年代から核開発に着手したとみられる。

1994年の金日成死後に権力 の座を継いだ金正日は、「先軍政治」を掲げ
て核開発に専念した。北の政 権は経済的に困窮すると“核カード”を切
り、援助を達成するのが“遺伝子” に組み込まれているかのようである。
紛れもなく金正恩も“遺伝子”の指図 で動いている。

従って、北の核放棄の意図はうさんくさいのだ。実質的な 進展もないう
ちは「北の病気がまた始まった」くらいの対処が適切だ。日 本政府の置
き去りを指摘する浅薄な新聞もあるが、ここは慌てる必要はな い。

公明 党の議員から参院予算委で「国民は日本だけ置いていかれると懸 念
して いる」との指摘があったが、国民とは誰だ。素人の見方であり、慌
てる 乞食はもらいが少ない。誰も日本を置いていこうなどとは思ってい
な い。

中国からも米国からもパイプを通じて連絡は来ている。北が厳しい経 済
事情を背景に、やがては日本にすり寄ることは目に見えている。ここ
は、北の非核化の本質をじっくり見極めてから対応しても遅くはない。

2018年03月31日

◆安倍政権“イメージダウン作戦”は失速

                    杉浦 正章


森友問題は「幕引き」をはかれ 空振りの反安倍報道
 
事前の騒ぎばかりが大きくて、実際の結果が小さいことを大山鳴動ネズミ
一匹というが、証人喚問はそのネズミすら出なかった。パフォーマンス野
党の面目躍如というところか。

加えて朝日、TBS、テレ朝の3大反安倍報道機関も、煽りに煽ったが見事
空振りとなった。前国税庁長官佐川宣寿への喚問は、これを機会に安倍政
権を退陣に追い込もうとする野党の思惑がことごとく外れた。改竄(かい
ざん)の解明が進まない原因は、野党や一部マスコミが無理矢理安倍官邸
に改竄問題を直結させようと狙ったところにあり、それが挫折したという
ことだ。

共産党の小池晃書記局長は「証人喚問の意味がない。これ以上聞いても意
味がない」と声を荒らげたが、もともと意味のないものを、1日3億円と
いう膨大な国費を使って国会で取り上げることの愚かさをかみしめるべき
ではないか。

「意味がない」ことが分かっていながら喚問して人目を引く演技をするパ
フォーマンス自体が「意味がない」のだ。そもそも立憲民主、希望、民進
など6野党の議員はわざわざ大阪拘置所に出向き、詐欺罪で拘置中の「森
友学園」の前理事長、籠池泰典被告と接見、さも隠し球を入手したかのよ
うなそぶりを見せた。

しかし、質疑を見れば新味のある発言を聴取できなかっただけでなく、蟻
の一穴も開けられない体たらくであったことが分かる。刑事被告人とタッ
グを組む野党という“負のイメージ”が、これまたばかな民放テレビで度々
流布され、パフォーマンスしか行えない野党を露呈した。

筆者が予言したとおり、前国税庁長官佐川宣寿は野党の追及に「刑事訴追
の恐れのある話であるのでコメントを差し控える」との答弁に終始した。

トップバッター自民党の丸川珠代の質疑応答で全てを語り、以後のの質疑
はその繰り返しでしかなかった。佐川は丸川に、首相・安倍晋三や昭恵夫
人、今井秘書官らの関与については「一切ない」と明確に否定した。

さらに国有地の売却について安倍や昭恵の影響があったかどうかも「全く
ない」と全面否定した。「守りの決意」が相当のものであることを伺わせ
た。逆に「問題は理財局の中で対応した」とあくまで理財局トップとして
責任を負う姿勢を鮮明にさせた。

安倍は昨年2月から、森友学園への国有地売却に自らや昭恵夫人が関わっ
ていた場合、「政治家として責任を取る」と国会で答弁してきたが、佐川
の答弁は関わっていないことを裏付けるものだ。議院証言法に基づく答弁
は、虚偽の答弁をすれば偽証罪に問われるものであり、佐川にしても“命
がけ”の側面がある。

それにしても佐川は何も証言らしい証言をしなかったが、安倍らが関係し
ていないことだけは、ちゃっかりと答えた。その“度胸”は相当なものであ
る。丸川と佐川の質疑応答は実にスムーズであり、“出来レース”をうかが
わせるほどで、野党も質問したが、否定された。闇の中だ。

 勢い込んで質問に立った立憲民主党の福山哲郎は成果ゼロの結果につい
て「前から過剰期待はしないでくださいと言ってきた」と言い訳をした
が、後悔先に立たずとはまさにこのことであろう。人権上限界のある証人
喚問で突破口を開こうとする野党戦略は稚拙で当初から無理があったのだ。

野党はさらに昭恵を始め、夫人付職員谷査恵子、前理財局長迫田英典らの
喚問などを要求しているが、悪乗りもいいかげんにした方がよい。昭恵が
国有地の取引に直接関与していないことは明白であり、関与した証拠もな
い。真相は解明されたのであり、野党は改竄の核心には迫れなかったのだ。

つまらぬ偽疑惑で政権の足を引っ張るときではない。安倍政権イメージダ
ウン作戦は失敗したのだ。

改竄問題は財務省内の調査や大阪地検に委ねるべきであり、佐川が「当時
の担当局長として責任はひとえに私にある」と明白に発言している以上、
財務相麻生太郎の辞任問題も遠のいた。

自民党内は反安倍勢力萌芽の気配はあるが、石破茂や村上誠一郎、小泉進
次郎の反安倍3羽ガラスでは力量不足で政権を揺さぶるところまで仕掛け
を出来まい。折から北東アジア情勢は風雲急を告げており、安倍を外交に
専念させた方がよほど国益に資することは言うまでもない。もう森友問題
は「幕引き」をはかるべきだ。