2017年07月10日

◆得点挙げた「安倍鳥瞰図」外交

杉浦 正章
 


EUとのEPAでG20をリード
 

「北ミサイル」で習近平をけん制
 

なみいる各国首脳の中でもその活躍ぶりが目立ったのは掛け値なしで首相・安倍晋三だろう。大局観に根ざした鳥瞰図外交を展開、国益を大きくプラスに導いた。まず第一に日本と欧州連合(EU)の間で、簡単に言えば「チーズと車の交換」とも言える経済連携協定(EPA)締結で大筋合意を達成。その勢いを駆ってG20の大勢を自由貿易推進・保護貿易排除でまとめ上げた。2日間の討議の成果をまとめた首脳宣言は「あらゆる不公正な貿易慣行を含む保護主義との闘いを続ける」と明記された。 さらに安倍は「北朝鮮の暴挙」をG20はもちろん2国間交渉でも取り上げ、世界世論の大勢を北批判に誘導した。


この結果日米韓首脳会談では経済制裁強化で一致。中国の習近平の心胆を寒からしめたが、同時に一路一帯への協力姿勢も示して習を“くすぐり”、関係悪化を最小限にとどめた。国際舞台におけるこうした積極外交は、これまでの歴代首相が成し遂げ得なかったことであろう。カケだモリだと葦の髄から天井を覗いて、首相の足を引っ張る民放コメンテーターの「輩」も、そろそろ国益に目覚める時刻ではないか。それを言っても馬の耳に念仏か。馬耳東風か。安倍はコメンテーター原因の支持率低下など気にする必要はない。
 

フランスの公共放送フランスドゥは、EUと日本のEPA成立を手放しで賞賛した。これを伝えるアナウンサーは最初から最後まで笑顔を絶やさなかった。まるで英国の離脱でつまずいたEUが、福の神に出会ったような報道ぶりであった。まず「ヨーロッパの経済を活性化させる世界最大の自由貿易圏が誕生した」 で始まり、「G20開催の直前に発表されたことは象徴的だ。EUはトランプが手放した日本市場を獲得出来ることになった。これがアメリカの保護主義への返事だ」 とトランプの保護主義を切って捨てた。EU委員長のジャン=クロード・ユンケルも「合意のインパクトは世界に広がる」と言明、トランプが阻止に動いた自由貿易の波が広がることを予言した。
 

一方アメリカでとかく政権擁護に動くウオールストリートジャーナル紙は、社説で取り上げたが、日本批判の言葉は一切なく、トランプの無策ぶりを戒めるトーンで貫かれていた。同紙は大筋合意を「トランプへのメッセージが込められている」と前置きして「米国の農家や輸出業者は日本への販売増加を享受できたはずなのだが、そのチャンスは欧州に与えられた」と残念がった。そして「米国が取り残されるリスクがある」と警鐘を鳴らした。


こうした同紙の姿勢は、多くの米国民にトランプの貿易政策の失敗を印象づけるものであり、政権にとってはボディブローとして利いてくるだろう。今後環太平洋経済連携協定(TPP)を米国をのぞく11か国で推進すれば、やがては「父帰る」につながるような気がする。
 

一方北のICBMらしきミサイル発射に関連して安倍はチャンスとばかりにG20の場を活用した。もちろん習近平へのけん制を込めての言動だ。焦点の日米韓3か国首脳会議で安倍は「北朝鮮に真剣に対話する意思などないことを示すものだ。今は圧力をかけていくことが必要不可欠だ」「北の態度を変えるためにも経済制裁をさらに強める必要がある」 と主張して、トランプもこれに完全同意。文在寅も渋々ながら同調して3国首脳の見解としてまとまった。


文はこれに先立つベルリンでの演説で「今が北が正しい選択の出来る最良の時期」として北との対話を改めて呼びかけているが、この姿勢ばかりは度しがたい。どちらかと言えば日米よりも中国やロシアに近い考え方であり、浅薄なる対北認識が3国の結束を乱す可能性は十分あるとみておかなければなるまい。中露と韓国の融和姿勢は金正恩を一層増長させるだけだ。
 

一方習近平は北に関してはいよいよ開き直りとも受け取れる“本音”をちらつかせた。トランプが「何らかの行動を取らなければならない」 と促したのに対して習は「中国は対話と協議に基づく問題の解決を主張している。国際社会は対話を促進し、危機管理を強める努力が必要だ」とこれまでになく姿勢を鮮明にさせた。それもそうだろう。中国は北との貿易交流を抑制するどころか推進している。石炭の1年間輸入禁止表明の陰で対北貿易は拡大の一途をたどっている。


北の対中貿易は1-3月期でなんと37.4%も増加しており、北は好景気の状態となってきているのだ。この中国の国際社会を欺く姿勢は国連などでも糾弾されるべきだが、習の姿勢は変わらないだろう。変わらないどころか、北の核武装によって米国を極東から追い出し、日本が中国にひれ伏すまで止めないという長期戦略に主眼を置きつつあると見るべきであろう。
 

日韓両国が北の核どう喝の人質となっている現状下においては、トランプは振り上げたこぶしの落としどころがないのが実情だ。トランプが、下手な軍事行動を取れば、日韓に核爆弾が落ち、米国が報復して北を消滅させても手遅れという構図だ。しかし軍事的な“締め付け”は不可能ではない。その一つが ジョージ・W・ブッシュ政権が提案した「拡散に対する安全保障構想」を復活させる事である。同構想とはいわゆる海上封鎖を伴った行動で、基本原則は、大量破壊兵器および弾道ミサイルの拡散を阻止するために、各国が連携し、関連物質の移送や関連技術の移転を防ぐ。各国の連携方法として、国際法・国内法の枠内で軍・警察・沿岸警備隊などによる阻止行動を断行して封鎖するのだ。


さらに北の打ち上げるICBMを米軍が撃墜する事なども含まれる。こうしたいわば寸止めの軍事行動で圧力をかけてゆくことしか残された解決策はないかも知れない。折から読売と朝日の世論調査で内閣支持率が30%台に落ち込んだが、NHKの調査によると長期政権では佐藤内閣が一時は20%台に落ちたがおおむね40%代前後で推移、中曽根政権も当初は30%台だったが40%台で推移していた。40〜50%で推移したのは小泉政権だけだ。うろたえることではない。これは都議選現象が継続したものだろう。大水害で安倍外交がかすんでしまったこともある。早期改造と外交・安保、経済政策で対処すればよい。

     <今朝のニュース解説から抜粋>    (政治評論家)


◎俳談

【笑点見るにも俳句モード】

◆蜆汁目玉映して啜るかな  毎日俳談3席

落語に貧乏所帯で汁に具がなく、映った目玉をシジミと間違って食べる話があった。句意は異なるが、この落語を早朝のNHKで聞いて作った。実際にお椀に水を入れて目玉を映してみたら、光りの加減では映った。おそらく選者も目玉を映してみたに違いない。落語を聞くにも俳句モード。笑点見るにも俳句モード。シジミは春の季語。

       <俳談>     (政治評論家)



2017年07月05日

◆小池はオリンピック棚上げの“政局狂い”か

杉浦 正章
  


国政進出を狙って尽きぬ“野望”
  

流動性帯びる解散時期
 

「都民ファーストならぬ国民ファーストということをベースに考えてゆく必要がある」。この発言から見る限り国政進出を目指すとしか考えられない。一体“野望の女”小池百合子の戦略はどこまで広がるのだろうか。いまや国民的事業であるはずのオリンピック準備など「知ったこっちゃない」と言わんばかりの“政局狂い”だ。


待ってましたとばかりに自民党を離党した小池側近の衆議院議員若狭勝が「新党を作るのならば多分今年、作らなければ来年も再来年もそのまま作らないで終わる」と民放に言い放っている。
 

若狭が言いたいのは国会議員5人をを年内に確保しない限り、政党として認められない。簡単に言えば政党交付金をもらえないのだ。しかし、5人程度はわけもないことだと筆者は思う。今の勢いから見る限り、昔田中角栄が言った「池を飛び出る鯉」は、民進党を中心に5匹を大きく上回るだろう。


すでに都議選では民進党を除籍された衆院議員長島昭久、日本維新の会を除名された参院議員渡辺喜美、無所属の参院議員松沢成文らが都民ファースト候補を応援している。いずれも二選級マイナークラスだが、実現すれば都民ファーストの国政進出が実現することになり、政界流動化の「核」 になり得るとみなければなるまい。


都議選でも民進党から公認候補16人が都民ファーストに逃げ込んだ。蓮舫率いる民進党はまさに難破船のごとき様相であり、難破船からはネズミが最初に逃げ出すといわれている。船長を交代させなければならないときなのに、蓮舫は続投宣言をしてはばからない。自民党にとっては誠にありがたいことであろう。
 

しかし、小池が「オリンピック知ったこっちゃない」というなりふり構わずの国政進出の動きに出た場合、国民の批判の対象は小池に焦点が絞られる公算が大きい。ただでさえ都庁内部には「あんまり都政に身が入っておられない」と幹部が慨嘆する空気が生じている。オリンピックは国民が期待する最大の行事であり、この準備をおろそかにして、自らの野望達成に狂奔すれば、自民党にとっても最大の攻撃対象になり得る。都民ファーストごときは地方では理解されにくい。
 

自民党内も問題山積だ。まず最大の失敗は政府・与党幹部が都議選でメディアと大げんかしてしまい、「ワイドショーによる敗北」を喫したことだ。幹事長二階俊博に至っては先頭に立って「新聞をお金を出して買っている。そのことを忘れては駄目だ。落とすなら落としてみろ。マスコミが左右すると思ったら大間違いだ」と抜き差しならぬ発言をした。結果はマスコミに左右されてしまった。


副総理麻生太郎までが「マスコミは言っているだけで責任は何もとらない」と批判。こうした発言に「しめたと」ばかりに朝日、毎日が批判記事を書けば、これを請け売りして朝から晩までコメンテーターがしゃべりまくる。TBSやテレビ朝日の民放ワイドショーはいまや選挙の最大の判断材料と化してしまった。
 

しかし、ヤクザとまともにけんかする人はいない。けんかすれば刺されることを知っているからだ。全く同じで二階がマスコミ批判をすれば、半可通コメンテーターどもに連日、倍返し三倍返しのコメント材料を提供してしまっているのだ。暇に任せてテレビを見る判断力が失せた高齢者は、コメンテーターごときの主張で、選挙を判断してしまうのだ。自民党はけんかの仕方を全く知らない。


こういった連中に対抗するには、放送の中立性逸脱を理由に民放の放送免許を取り消す動きに出るとか、報道番組やコメンテータ個人に対して訴訟を起して法的判断に委ねるのが一番だ。批判してもその批判を好材料にあることないことしゃべりまくって1回5万円の報酬を受け取る連中には法的な対応をして司法の判断に委ねるべきなのだ。訴訟をすれば国民もどっちが正しいかの判断材料になるが、二階や麻生流の対応は、国民の誤解をマイナスの側に増幅させるだけでリーダーに全くふさわしくない。すくなくとも改造で二階は代えなければ総選挙が持たない。
 

したり顔のコメンテーターどもは、過去の例を得々としてあげつらい、今回の事例に何が何でも結びつけようとする。その最たるものが1993年と2009年の政変劇だ。93年は都議選で日本新党が2議席から20議席に増やしたのをきっかけに総選挙で宮沢喜一が大敗、非自民連立政権を許した例だ。09年は都議選で38議席に減らし民主党に第一党の座を譲った麻生が事実上の任期満了選挙に追い込まれて大敗、民主党に政権を奪取された。


しかしその結果と言えば細川護熙は顔だけが殿様顔で立派だが中身が伴わないことが分かってわずか9か月で退陣。民主党政権もルーピー鳩山以下無能な首相が3回政権を担当して、そのばかさ加減にあきれて、国民に絶対に2度と政権を取らせないという“決意”をさせてしまった。「衆愚の選択」が日本の政治に教訓をもたらしたのだ。宮沢も麻生も支持率10%台で、もともと断末魔であった。それぞれ曲がりなりにも受け皿があった。
 

安倍はこの「衆愚の選択」を2度と惹起させてはならない。したがって総じて40%台を確保している支持率と、自民党の37〜38%という超高支持率を背景に自信を持った政権運営を展開し、既に規制事実のようになている来年秋の解散・総選挙などにこだわらないことが肝心だ。


来年秋だと、今の情勢から見れば必ず麻生の例と同じで追い込まれ解散になりやすい。小池が態勢を整えるのを待つ必要はない。小池新党の動きも察知しつつ、今秋以降果断に解散の機会を狙うべきだ。憲法改正は重要なテーマだが、それより優先するのは解散判断となって来た。


また自民党の石破茂など反安倍勢力は、北朝鮮がまたまたミサイルを排他的経済水域に撃ち込んでいる状況下で、小池旋風に踊らされているときかと言いたい。

          <今朝のニュース解説から抜粋>    (政治評論家)

◎俳談

【一点凝視】

◆指確と曲げてシンクロスイミング      東京俳壇2席
 
俳句は一点凝視だ。あれもこれも詠もうとすると、読者の視点が分裂してしまう。シンクロスイミングの水中から突きだした足の指先に着目した。皆しっかりと曲がっている。不安なのは読者が分かるかどうかだが、やはり衆目が注目するところは一致しているものなのだ。

                     (上記 政治評論家)

2017年07月03日

◆佐藤政権は都議・知事選敗北でも最長

杉浦 正章
 


地方選の政局影響は限定的
 

早期改造が長期政権への正念場


 宰相たるものこれでなければならない。1964年から72年まで2798日続いた佐藤政権は歴代第一の長期政権だが、都議会選挙でも破れ都知事選でも敗れている。そのときの佐藤栄作日記を取り出して読んだが面白い。どうしても都議選と政局を結びつけたい近頃の政治記者はおみおつけで顔を洗って読んではどうか。まず65年の都議会選は議長選挙に絡む汚職事件が明るみに出て都議会野党の社会党が第1党に躍進した。これに対し、都知事与党の自民党は過半数61議席を大きく下回り、定数の3分の1を割り込んで第2党に転落した。


しかし、翌日7月24日の佐藤日記では「わずかに38で第二党に、社(社会党)は45で第一党。残念だが仕方がない。再建を図るのみだ。ゴルフに出かける。これも芳しくない」とある。都議選結果など歯牙にもかけていないでゴルフに出かけている。ただし安倍はこれを真似してゴルフをしてはいけない。昔と変わって悪意を持った新聞、民放が幅を利かせており、叩かれる。
 

もっともさすがに佐藤も知事選はちょっとこたえたようだ。1967年佐藤は内務官僚出身の鈴木俊一を推し、共産・社会両党は共産党系の美濃部亮吉を推す選挙だった。6月17日の日記には佐藤は「朝刊は美濃部勝利を大見出しで取り扱う。一寸不愉快なり。幹事長は九時過ぎにやってくる。見るも無惨。ほんとに気の毒。小生以上に気落ちした様だ。然し『勝敗は戦いの常』、悲観することもよろこぶこともない。要は如何に戦ったか、次の戦を如何にすべきかのみ」 とある。


傑作なのは幹事長福田赳夫を「気の毒」とまるで他人事のような書きっぷりであることだ。確かに国政選挙と違って地方選挙などの第一の責任は幹事長にあるという認識なのであろう。佐藤の強みは「勝敗は戦いの常」と達観し、「次の戦を如何にすべきかのみ」と割り切っていることであろう。常に前向きなのだ。これが長期政権のコツだ。
 

うれしそうに朝日が「首相の求心力低下」とか「安倍一強に大打撃」と見出しを躍らせているが、たかが地方選挙で、この見出しは意図的であり、希望的な観測だ。社是の公正中立な報道などかなぐり捨てている。確かに自民党は過去最低の38議席を下回る23議席と歴史的な大敗を喫したが、安倍はトラウマを引きずらないことが重要だ。


長期政権への正念場と解して、まず最初の反転攻勢は早期に内閣改造を断行、「心的外傷」を取り除くことだ。NHKの調査で安倍内閣の支持率は48%で堅調であり、自民党支持率も36.4%と高止まりしている。これは共産党系候補やお笑いタレントを知事に選ぶ東京都民の「伝統的な特殊性行」というか「民度の低さ」が地方に伝染していない証拠であろう。まず人事では幹事長を交代させることだ。


このテンポの速い時代にブツブツと説得力のない発言を続ける二階俊博はどうもテンポが合わないし、訴求力がない。票を稼ぐタイプではない。この調子では衆院選でも負ける。むしろ二階は自ら都議選大敗の責任をとって進退伺いを出すべきだろう。加えて“側近”を重用しないことだ。


今回の選挙で一番安倍の足を引っ張ったのは「加計疑惑」がとりざたされた防衛相稲田朋美と、こともあろうに東京都連会長の下村博文。そして萩生田光一ら側近であり、下村は「責任を取って都連の会長を辞任したい」と発言しているが当然だろう。また陣笠だが豊田真由子のヒステリー的な暴言、暴行も大きなマイナスだった。今度の改造ばかりは閣僚や党役員経験者で「疑惑」が生じていない人物を登用した「重厚実務型」内閣とする必要がある。今回ほど求心力確保が求められるケースは無い。従って派閥順送りで聞いたこともない陣笠を登用して、スキャンダルが発覚、またまた閣僚辞任を引き起こしてはならない。
 

選挙結果を見れば地域政党「都民ファーストの会」が49議席を獲得し圧勝、第1党に躍進したことが全てに波及した。小池が生んだ「都民ファ」は、小池の人気低下と共に消滅するだろうが、それまで都議会自民党は艱難辛苦の時代に入った。捲土重来を期するしかない。加えて自民党が23議席と過去最低となったのは、朝日、毎日、TBS、テレビ朝日の「4大政敵」に攻撃の口実を与えてしまったことが最大の原因だ。高年齢層が大きく都民ファーストに傾いたのは、暇に任せてワイドショーをみれば、朝から晩まで加計疑惑と反安倍の報道に徹しており、選挙妨害もいいところであった。これに爺さん婆さんも“洗脳”されたのだろう。保守的であった高齢者層も判断力を低級コメンテーターの発言に委ねてしまったのだ。
 

哀れをとどめたのは民進党だ。蓮舫は「演説を重ねるたびに立ち止まってくれる人が増えた」と述べていたが、立ち止まった人は首を傾げていたのではないか。あれだけ安倍批判を展開したのに効き目は全くなく7議席から5議席に減少した。逆に共闘した共産党は17議席から19議席に増えた。これは国政選挙でも共闘は共産党を利するだけであることを物語る。蓮舫のリーダーシップの欠如は大問題だが、自民党への打撃が大きすぎて、責任問題がかすむ可能性がある。留任してくれた方が自民党にとっては総選挙に向けてありがたい。


公明党は、素早く小池人気に乗り換えて1議席増やした。“巾着切り”のような対応で、自民党を裏切った。いかに信用出来ない政党かが白日の下にさらされたが、自民党は国政選挙での共闘は嫌でも推進しなければなるまい。そのうちに裏切り政党は“仏罰”が下るから見ていればよい。
 

自民党内は反安倍色を強めている元幹事長・石破茂らが手放しで喜んでいる。「負けたことを総括しないと次も負ける」だそうだが、だからといって人望のない石破に議員らがなびくかと言えばとてもその状況にはない。もう1人端倪すべからざるのが小池百合子。国政への進出を否定しているが、これは勝ちすぎの反動が恐ろしいからではないか。ほとぼりが冷めて機が熟したとみれば国政進出も考えないとは言えまい。身の程を知っていたら政治家にはなるまい。


もっとも都議会の小池チルドレンの愚論愚行がやり玉に挙がるのはそう遠いことでもあるまい。とても国政へとつなげられる立派な集団とはほど遠く、いずれは馬脚が現れる。

<今朝のニュース解説から抜粋>     (政治評論家) 


俳談

【季語を響かせる】
◆反戦で神田の生まれ唐辛子      産経俳壇1席

 
俳句のすべては季語にある。他の言葉はこの「季語様」のためにあるのだと言っても過言ではない。その季語が響けば俳句は成功する。唐辛子は激しい辛味の香辛料で秋の季語だ。猛禽類の鷹の爪の形をしているから「鷹の爪」も同様に季語である。上五中七の「反戦で神田の生まれ」というぴちぴちした生きの良い頑固爺さんが、唐辛子とぴったり合う。広沢

            <俳談>       (政治評論家)

2017年06月29日

◆安倍は早期改造で局面転換を図れ

杉浦 正章

 

弱り目に祟り目の稲田発言
 

こればかりはいかんともしがたい。安倍は早期の内閣改造に踏み切り、悪い流れにストップをかけるしかあるまい。それにつけても何度も書くが、日本の女は政治家には向かない。自民党の女性総理候補は小池百合子、野田聖子、稲田朋美と続いたが 小池はポピュリズム一辺倒で党内的に嫌われて脱落。せいぜい大衆迎合がまかり通る都知事がいいところで、とても都議選の余勢を駆って首相になるような政治情勢にはなるまい。野田はあらぬ時に総裁選に出馬しようとするなど焦りすぎて、党内情勢を見誤り失敗。


今度は稲田が失言の山を築いて「死に体」なってしまった。長年政治記者をやっていると政治家を見る目だけは肥えてくるが、稲田は最初から無理だと思っていた。しかし野党も蓮舫が居丈高になって勝ちどきを上げるケースでもあるまい。民進党への“逆風”も自民党に勝るとも劣らない。蓮舫自身も自らの2重国籍問題を巻き起こし、都議選も不調では、選挙後自分の首が危うくなりかねない情勢だ。だから、しめたとばかりに稲田を追及しているが、ブーメラン返しがそこに見えている。


日本の女は、知的には極めて優秀で、家事や育児にも秀でているが、政治家としては英国首相メイやドイツ首相メルケル、米大統領候補クリントンなどと比べるとあまりに低レベルである。長い封建社会で植え付けられた男を立てる遺伝子が、まだ取り切れずに作用しているのだろう。
 

どうも首相・安倍晋三は昭恵夫人を選ぶのには成功したが、それ以外は女性を見る目がないようだ。前の内閣では女性閣僚が二人も辞めている。そもそも稲田は、安倍の秘蔵っ子だ。安倍が副幹事長の頃稲田のスピーチを聞いて、スカウトして12年前に初当選させた。安倍とともに靖国参拝をしたこともある。14年に政調会長に抜擢、今度は防衛相という重要閣僚にした。安倍はかつて「将来の総理候補として頑張ってもらいたい」と激励したことすらある。


しかしとりわけ防衛相になってからがハチャメチャだ。資質を問われる発言が相次いでいる。陸上自衛隊が参加する南スーダンの国連平和維持活動(PKO)では、派遣部隊の日報をめぐる大臣報告が約1カ月もかかり、省内を掌握していない状況が浮き彫りになった。この答弁もちぐはぐで、不必要に野党の攻撃を集中させた。スーダンにおける陸自の日報問題でまるで幼稚園児のような答弁をしている。「憲法9条上の問題になる言葉を使うべきではないから、戦闘という言葉を使わず武力衝突という言葉を使っている」と答弁してしまった。部下が大臣に内々にご進講したとおりの内容を答弁してしまったのだ。
 

「森友問題」の訴訟に原告側の代理人として出廷していた問題もコロッと忘れて、「虚偽だ」と答弁。その後事実であることが判明した。一連の稲田発言に対して感ずるのは、答弁が下手なのに加えて、思い違えが激しいことだ。年増の女性に多いど忘れ現象が頻繁なのだ。今回の場合も仮にも防衛相であるならば、発言していいことと悪いことのけじめを付けなければならないが、事もあろうに憲法違反そのものの発言をしてしまった。都議選候補の応援演説で「防衛省、自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたいと思っている」だ。これは公務員の地位を規定した「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」という憲法15条に紛れもなく違反している。


そもそも戦後の自衛隊員教育の根幹は、戦前の軍部独走の愚を繰り返さないため「政治的行為を慎め」と徹底して教えてきたのであり、稲田発言は大臣そのものが率先してその禁を破ったことになる。組織としての自衛隊を率いるトップの発言としてあるまじき事は言を待たない。
 

まさに安倍にとっては弱り目に祟り目の事態だが、この悪い流れを断ち切るためには、内閣改造による人事刷新しかあるまい。今度ばかりは熟考して、憲法改正という重大テーマに対処し、衆院選挙にも対応できる人事をする必要がある。派閥順送りは無視して、ベテランを起用して重厚な政権に脱皮しなければなるまい。稲田の後任には経験者で手堅い小野寺五典が適役ではないか。官房長官・菅義偉はよく働いたから幹事長に抜擢すべきではないか。


今のところよく育っていて国民的人気も出てきた小泉進次郎を起用することもよいかも知れない。奇策となるから絶対によいとは言い切れないが、盟友の前大阪市長橋下徹などを起用する手もあるかもしれない。いずれにしても8月中と言われる改造を7月下旬にも断行する必要があるのではないか。局面転換には早ければ早いほどいいのではないか。まだ安倍本体への打撃は少ない。改造して再出発すれば支持率も回復基調に入る。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

◎俳談

【即かず離れず】

◆捻子まけば動くヒコーキ沖縄忌 毎日俳談3席

正規軍より一般人の方が犠牲が多かったという沖縄忌は6月23日。沖縄軍司令官が摩文仁岬で自決した日だ。戦没者20万人。激烈な地上戦であり、俳句では終戦日、開戦日などと並ぶ戦争関連の季語となっている。その難しい季語とどう向き合うかだが、沖縄戦が哀れだとか、凄まじいとか直接的に沖縄忌を形容しない。ひたすら間接的に哀しさを表現する。そしてそこはかとなく連想させる。掲句は昔あったブリキのヒコーキで戦争を連想させる。次の句は棒きれが流れ着くという表現で、海の向こうの沖縄を連想させた。

◆沖縄忌棒きれ一つ流れ着く  朝日俳談入選
人の忌の句も全く同様な手法をとる。

◆浅酌をして大石忌過ごしけり  日経俳談入選
浅酌という粋な言葉で粋な大石良雄(内蔵助)を詠んだ。

            <俳談>      (政治評論家)

2017年06月28日

◆政権、加計問題で反転攻勢を展開

杉浦 正章



「抵抗勢力官僚」は獅子身中の虫だ
 

論客動員で国民に説明を
 

満を持していたのであろう。ようやく反転攻勢が始まった。官房長官・菅義偉が27日、学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関し、日本獣医師会、農林水産省、文部科学省を名指しして「抵抗勢力」と断定、岩盤規制を突破する方針を改めて鮮明にさせた。首相・安倍晋三も「加計」を突破口に獣医学部の全国展開を進める方針を明言。これまで沈黙していた国家戦略特区での獣医学部新設決定に関わった諮問会議の民間議員らも「加計問題の根底に日本獣医師会の強い抵抗があった結果一校に絞らざるを得なかった」ことを暴露、いかに岩盤を突き崩すことが困難であったかを強調した。


まさに事態は政府・与党が「改革派」で、民新・共産両党と朝日、毎日、民放など反政権メディアが「守旧派」となる構図だ。かくなる上は安倍はちゅうちょすることはない。文科、農水など政権の方針に反対する幹部官僚を人事で押さえ込むべきだ。


堰を切ったように岩盤規制突破の発言が相次いだ。「抵抗勢力」を名指しした管の発言は「そもそも52年間、獣医学部が設置されなかった。日本獣医師会、農林水産省、文部科学省も大反対してきたからではないか。まさに抵抗勢力だ。規制がこれだけ維持されてきたことが問題だ」というものだ。


そのうえで菅は「安倍政権とすれば、まず1校認定したわけであり、突破口として全国に広げていくのは獣医学部だけでなくてすべての分野において行っていく方針だ」と述べ、国家戦略特区で認めた規制緩和策の全国展開を目指す考えを強調した。安倍も「今治市に限定する必要はない。全国展開を目指す。意欲あるところはどんどん獣医師学部の新設を認める」と明言した。
 

また諮問会議の民間議員を務める大阪大学名誉教授八田達夫は「獣医学部の規制は既得権による岩盤規制の見本のようなものであり、どこかでやらなければいけないと思っていた。『1つやればあとはいくつもできる』というのが特区の原理で、1校目は非常に早くできることが必要だった」と強調。


東洋大学教授竹中平蔵は、文部科学省前事務次官前川喜平が先の記者会見で「行政がゆがめられた」などと述べたことについて、「最初から最後まで極めて違和感がある。今回の決定プロセスには1点の曇りもない」と反論した。加えて、竹中は「『行政がゆがめられた』と言っているが、『あなたたちが52年間も獣医学部の設置申請さえも認めず行政をゆがめてきたのでしょう』と言いたい。それを国家戦略特区という枠組みで正したのだ。2016年3月までに結論を出すと約束したのに約束を果たさず、『早くしろ』と申し上げたことを『圧力だ』というのは違う」と切り返した。
 

こうした発言が一致して指摘するのは獣医師会のごり押しだ。今治市だけに学部新設を限定しようと躍起になっていた姿が鮮明になっている。確かに獣医師はペットブームで笑いが止まらない状況にあるといわれる。マスコミは伝えていないが法外な治療費を請求される被害が続出しており、社会問題となっている。獣医師会が既得権にしがみつくのは、言うまでもなく“甘い汁”を囲い込み、拡散するのを防ぎたいからにほかならない。岩盤規制の突破はその意味からも必要不可欠であり、政府はこの辺のPRが不足している。
 

一部マスコミも政権が改革を推進しようという時に、何でも政局に結びつけようとする姿勢が見られる。朝日は28日付朝刊の社説で安倍が「地域に関係なく2校でも3校でも意欲のあるところはどんどん認めていく」と発言したことにかみついている。「(親友が経営する加計学園を優遇したという)疑惑から目をそらしたい安直な発想といらだちが透けてみえる」と、もっともらしい論旨を展開している。


しかし、自民党副総裁・高村正彦ではないがこれこそ「ゲスの勘ぐり」社説だ。岩盤規制の突破という、今の日本に喫緊に必要な問題への視点と大局観がゼロだ。朝日は52年間も岩盤を死守し、天下り先を確保してきた文科官僚を礼賛していいのか。
 

管は抵抗勢力として獣医師会、文科省、農水省の名を挙げたが、こうしたマスコミが存在する以上、一部マスコミも含まれるのは当然だろう。最近では米国のトランプ政権も抵抗勢力との戦いを繰り広げている。同政権にとっても抵抗勢力の排除は政権基板確立の基礎であり、人事が遅れているのは、官僚が敵か味方かを見定めている結果であろう。大統領上級顧問スティーブン・バノンが、米主要メディアに対して「メディアは抵抗勢力だ。黙っていろ!」とかみついたのは記憶に新しい。


また、小泉純一郎も自らが進める「聖域なき構造改革」に反対する諸勢力を「自民党内の族議員、公務員、郵政関連団体、野党、マスメディア」などに絞って、郵政改革を成し遂げた。
 

安倍政権が改革の旗を高く掲げればかかげるほど、風圧に対処する政治手法が必要になっていることは言を待たない。安倍は通常国会中は加計問題に関してどちらかと言えばあいまいな対応をとってきたが、これはテロ準備法成立の必要という喫緊の重要課題の処理を意識したものであろう。その結果、文科省内部からの漏洩事件が頻発、民放テレビを利用して買春疑惑の前次官が我が物顔で政権の足を引っ張るという“弛緩(ちかん)”が生じていた。


政権の前途には外交・安保問題、経済対策など重要課題がひしめいており、野党の要求する臨時国会などは当面開催する必要はあるまい。閉会中審査なども無視して当然だ。しかし、左傾化民放の口から生まれたような低級コメンテーターらに言いたい放題の発言を繰り返させておくことはない。管でも高村でも竹中でも論客を繰り出して、テレビで直接岩盤規制の突破を訴える必要があるのではないか。また文科、農水両省などに対して幹部人事も断行して、引き締めを図る必要もあるのは当然だ。世界中の政権は獅子身中の虫を取り除くのが常識なのだ。


 ◎俳談

【固有名詞の使い方】

◆捕虫網立てればスーパーあずさ発つ  東京俳壇入選
 
むかし子どもと上高地に行ったときの懐旧句。座席に捕虫網を立てて、蝶々を捕るぞと勇ましく出発だ。固有名詞のスーパーあずさは関東地方では知らない人はいない。日本全域でも結構通用している。だから違和感が感じられないだろうと思って使った。全然通用しない固有名詞を使う句が散見されるが、これは最初から論外だ。普遍性のある言葉が俳句の一番重要ポイントだ。

    <今朝のニュース解説から抜粋・俳談>    (政治評論家)

2017年06月27日

◆「木に竹を接ぐ」マスコミの都議選認識

杉浦 正章
 


国政選の先行指標などにはならない
 


安倍は堂々と街頭に立て


「一犬虚に吠ゆれば万犬実を伝う」とは、一人がいいかげんな ことを言うと、世間の多くの人はそれを真実のこととして広めてしまうということのたとえだ。近頃の政治記事の風潮はまさにこの様相である。日経、毎日、時事の順で、今回の都議選が1989年や2009年のケースとそっくりで、都議選に敗れれば政局につながると言いはやしている。過去2回の都議選が先行指標になるというのだ。民放などはオウムのようにこの論調を繰り返しているが、本当にそうだろうか。


筆者は「木に竹を接ぐ論法」だと思う。当時の状況は24年前はもちろん、8年前もつぶさに覚えているが、全く政治状況が現在と異なっている。まだ編集局内に当時を知る幹部や記者がいるだろうに、「とろい記事」を書かせて黙認しているのはどういうことか。
 

最初に書いた日経は23日付で「1989年は消費税導入とリクルート事件の直後で、都議選は改選前から20議席減らし43議席に終わった。続く参院選で自民党は33議席を減らす惨敗。宇野宗佑首相が退陣に追い込まれた。2009年は自民党が都議選で10議席減らし38議席に落ち込み、都議会第1党から転落した。その後の衆院選は改選前から181議席減の119議席となり、民主党に政権交代を許した。」と書いて、安倍の置かれた状況につなげている。毎日は24日、時事は25日に似たり寄ったりの記事を書いて追いかけている。
 

まず89年の例と現在の政治状況を比較すれば、似て非なるものであることが分かる。首相の置かれた状況が異なる。竹下登のあとを継いだ宇野宗佑は芸者に「3本指でどうだ」と月30万円で囲う話を持ちかけたスキャンダルが明るみに出て、与野党から総スカン。国民もあきれ果てて支持率は10%まで落ち込んだ。安倍の場合は宇野のような薄汚いスキャンダルはゼロであり、歴代首相と比べても外交・安保や経済上の実績は最高の部類である。
 

加計問題なども民新、共産両党と朝日など一部マスコミが大袈裟に騒いでいるだけで、疑獄事件にはほど遠い実態である。都議選は、小池の「都民ファーストの会」などというど素人集団が、都民の民度の低さをバネにして小池の名前だけで一定の数を確保しそうである。自民党が第一党の座を確保出来るかどうかは予断を許さない。しかし小池の支持率も豊洲移転問題の失敗で馬脚が現れ、陰りが生じ始めている。都議選の勢いを駆って国政選挙に多数の候補を擁立する勢いが出るかどうかは疑わしい。


都民と違って他府県は民度が高く、小池のタヌキ的な“化かしのポピュリズム”は見抜かれる。一方でこれだけマスコミから叩かれても安倍の支持率は40%台ある。毎日だけが36%だが、これはいかに毎日の調査がいい加減であるかを如実に物語るものだ。
 

もう1人支持率10%台で2009年に退陣したのが麻生太郎だ。まず麻生個人の首相としての資質の問題があった。しょせん器ではなかったのである。加えてかつてない早さで悪化する経済情勢、ねじれ国会における野党の審議拒否・審議引き延ばしの結果、迅速な景気対策もとれなかった。日本郵政をめぐる人事問題での総務大臣鳩山邦夫更迭などで支持率は急降下をたどった。この結果総選挙に大敗して民主党との政権交代となり、以来3年にわたる民主党政権の暗黒時代をもたらしたのだ。
 

89年も09年も都議選が国政選挙の惨敗につながったが、今度の場合都議選と直結する国政選挙はない。したがって国政で民新、共産が大幅に議席を伸ばす可能性はない。ましてや民進党が政権交代できるほど躍進する気配などゼロだ。その上両党は都議選でも不振である。都議選は「都議会第1党」の維持を目指す自民党と、一過性の「つむじ風」になりそうな都民ファーストによる「一騎打ち」の色彩を濃厚にしている。


この結果民進、共産両党が弾き飛ばされる流れが各種世論調査でも生じている。まさに両党埋没の危機である。早くも蓮舫は選挙後に代表辞任せざるを得なくなるとの観測すら生まれているのだ。
 

こうした中で首相・安倍晋三が都議選の選挙応援を街頭に立って行うかどうかが注目される。民放テレビでは反安倍のバリバリの慶応大学教授片山善博らが、安倍が都議選公示後街頭に立たなかったことをあげつらい、鬼の首を取ったように勝ち誇った解説をしている。落ち目の蓮舫までが26日、「総理は表に出て堂々と話をすればいいのに、しないのは都合の悪いことがあるからではないか」と、かみついた。加えて「国会では語らず、街頭で演説に立たない。しかし自分のシンパが多い講演では、べらべら話をする。説明もできず、逃げている姿勢は、絶対に許してはならない」と挑発している。こうしたムードを打ち破るには安倍が機を見て堂々と街頭に立つしかあるまい。


26日も自民党都議選候補者の演説会に出席し、応援演説をしているが街頭には立っていない。街頭演説も支持率40%以上なら十分過ぎるほどであり、戦える。風林火山ではないが「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」のうち「不動如山」から一挙に「侵掠如火」に転ずるべきだろう。
たとえ負けても闘うのが安倍政治の真骨頂であるはずだ。街頭演説も自民党がフル動員して、人種のレベルが高い銀座のど真ん中で盛り上げればよい。選挙戦の常識だ。


◆俳談

【2物衝撃】

◆真夜中の天井裏に青大将    毎日俳談入選
 
意外な二物の取り合わせの句を二物衝撃句という。真夜中の天井裏とネズミでは日常的。しかし天井裏と青大将となるとゾクゾクとする恐怖感をもたらす。そしてよく考えてやっと旧家には青大将が住みついていることに考えが至る。

◆露人ワシコフ叫びて石榴(ざくろ)打ち落す 西東三鬼
 
妻を亡くした隣人のロシア人が、長いサオを持ち出し叫び声と共に手当り次第にザクロをたたき落していたのを三鬼が描写したものだ。事情を知らない読者はロシア人と石榴の取り合わせの意外感から、様々な空想の世界へといざなわれる。


<今朝のニュース解説から抜粋・俳談>     (政治評論家)  

2017年06月20日

◆いったん「鳩化」しても改憲で「鷹」に

杉浦 正章



変幻自在の安倍政治を展望する 


支持率は数か月で回復基調へ


 
俳句の季語に「鷹化して鳩となる」がある。奇妙な季語だが、春の季語で、「殺気ある鷹でも春には温和な鳩に変わる」という中国の伝承を受け継いだものだ。一茶は「新鳩よ鷹気を出して憎まれな」とユーモアたっぷりの句を残している。変わり身が早いさまを変幻自在というが、首相・安倍晋三の記者会見はまさにその「変わり身」を前面に打ち出して「鳩」になったものだ。支持率が軒並みマイナス10ポイント前後の大幅減のなかで、長期政権維持への“危機感”を強く感じた結果の変身術であろう。

安倍は、国家戦略特区での獣医学部新設をめぐって、国会答弁で強い口調で反論したみずからの姿勢を反省するとしたうえで、国民の不信を招いたことを認め、加計問題への対処を陳謝した。「『印象操作』のような議論に対して、つい強い口調で反論してしまう。そうした私の姿勢が結果として政策論争以外の話を盛り上げてしまった。深く反省している」と述べたのだ。
 

過去に1人の首相が自らの発意で、その政治姿勢を大転換した例はまれである。政権を交代して自民党そのものが変身を成し遂げた例はある。そのもっとも顕著な例は安倍の祖父岸信介による60年の安保条約改定の強行とその後の党内抗争が、政権交代に直結した例だ。自民党に対する国民の大きなイメージダウンをもたらし、岸は退陣せざるを得なかった。後を継いだ池田は野党の要求する早期解散には応ぜず、総選挙までの4ヶ月間、「国民所得倍増計画」という新経済政策と「寛容と忍耐」という新たな政治路線を打ち出したのだ。


このアイデアは側近大平正芳と宮沢喜一という知恵者が一緒に作ったものだ。回顧録で宮沢は「大平さんが池田さんに、とにかくここは"忍耐"しかないですね、と言ってそんなことから"忍耐"を一つスローガンにする。もうひとつ私が、ジョン・スチュアート・ミルがよく"tolerance"ということを言っていたから"寛容"というのはどうですか、と私が言って、それでスタートした」と延べている。
  

安倍の場合の方針大転換は、自らの政治判断においてなされた色彩が濃厚のようだ。それではその転換を早期に国民の間に印象づけることが可能かというと、少なくとも今月23日告示、7月2日投票の都議選に間に合わせることは難しいだろう。あまりに接近しすぎている。しかし、数か月単位での「変身の定着」は可能であろう。定着と共に支持率も回復基調となる可能性が高い。その最大の理由は内閣支持率が急落したものの自民党の支持率は変化がないからだ。


NHKの調査でも自民党は37.5 %から 36.4 %に微減しただけであり、民進党も7.3 %から7.9 %への微増にとどまっている。民進党支持率にいたっては時事の調査では、なんと過去3か月で最低の4.2%にとどまっている。これが意味するものは、民新、共産挙げての“加計疑惑”追及が得点につながっていないことを意味する。過去にも安倍政権は10%前後の急落を2回経験している。2013年の特定秘密保護法と2015年の安保法制だ。


しかし、政権の基盤である自民党支持率に変化がなく、これが内閣支持率の挽回につながっている。安保法制の際の日経の調査の例を挙げれば成立前の支持率46%が成立後に40%に落ちたが3か月後に48%に回復している。他社も同様の傾向を示している。安倍の支持率回復の軸は外交・安保、経済政策に置かれるだろう。安倍は記者会見で来月7〜8日にドイツのハンブルグで開かれるG20サミットについて、「主要国の首脳が集まるこの機会を活用して、積極的な首脳外交を展開したい。挑発をエスカレートさせる北朝鮮問題について、日米韓のがっちりとしたスクラムを確認したい。


そして、来たるべき日中韓サミットの開催に向けて、準備を本格化していく」と述べている。これが最初のとっかかりとなるだろう。北朝鮮の存在は常に支持率を上向かせる方向で働く。
 

短期的には夏の内閣改造で体制を整えることになる。長期展望では来年9月の総裁選がヤマ場となるが、安倍の唱える憲法9条への自衛隊条項の加憲をめぐって党内論議も活発化するだろう。元幹事長・石破茂が安倍改憲に異を唱え始めているが、党内の大勢は安倍支持の傾向が強い。石破は党内野党化する公算が高いが、国会議員の間では人気が高まる可能性は少ないものの、地方票の集票が得意であり、油断は出来まい。


改憲は急げば来年の通常国会末にも、衆参3分の2以上の賛成で発議することとなろう。その後最短60日で国民投票となる。従って国民投票は衆院議員の任期切れが来年末だから、総選挙とのダブル選挙になる公算がある。


安倍はやがて改憲の“錦の御旗”をかかげて政局をリードすることになるが、今回の柔軟路線への転換は9条改憲が主要テーマとなる以上、保革の対決が再浮上する可能性を帯びている。従っていったん鳩に変身したものの、再び鷹の本性を現さざるを得ないのだろう。

◎俳談

【意味不明の季語】

◆鷹化して鳩となる日の朝寝かな 杉の子
 俳句で訳の分からない3大季語は「鷹化して鳩と為る」「亀鳴く」「雁(がん)風呂」だろう。いずれも春の季語だ。

◆新鳩よ鷹気を出して憎まれな 一茶
は季語を崩して使ったものだ。一茶らしく人間にも当てはまる風刺に満ちている。亀は鳴かないが、俳人には春になると亀の鳴く声が聞こえるのだ。聞こえなければ俳人とは言えない。拙者にも聞こえた。だから作った。

◆この昼は四天王寺の亀鳴けり 毎日俳談2席

「雁風呂」の由来はややこしいが哀愁のある話だ。
青森県では日本に秋に飛来する雁は、木片を口にくわえ、または足でつかんで運んでくると信じられていた。渡りの途中、海上で水面に木片を浮かべ、その上で休息するためであるという。日本の海岸まで来ると海上で休息する必要はなくなるため、不要となった木片はそこで一旦落とされる。

 そして春になると、再び落としておいた木片をくわえて海を渡って帰っていくのだと考えられていた。旅立ちの季節が終わりもう雁が来なくなっても海岸にまだ残っている木片があると、それは日本で死んだ雁のものであるとして、供養のために、旅人などに流木で焚いた風呂を振る舞ったという。

◆雁風呂や海あるる日はたかぬなり 高浜虚子

<今朝のニュース解説から抜粋>    (政治評論家)



2017年06月16日

◆民進党にまたもや疑惑のブーメラン

杉浦 正章



蓮舫加計誘致を推進、江田も親密
 

文書追及は空振りに終わるだろう
 

民主党代表前原誠司が偽メール事件で代表を辞任したことは記憶に新しいが、「総理の意向」文書を追及する民進党にまたもや疑惑のブーメランが返って来そうである。代表蓮舫自身が行政刷新相だったころに加計学園の獣医学部新設を推進、最高顧問江田五月が学園理事長加計孝太郎と親密であり、民進党議員が地方創生相石破茂に「なんとしてでも誘致を推進せよ」と国会で迫っている。


民進党は16日の参院予算委員会集中審議で何の進展もない文科省メモの公表をまるで鬼の首を取ったかのようにあげつらい追及する方針だが、自分の足下が崩れていることを自覚していない。
 

そもそも加計学園獣医学部の今治市新設問題は、民主党政権時代に本格化したものだ。それまでは加計学園が長期にわたって申請し続けたが政治が動かなかった。ところがルーピー鳩山政権は、この陳情を取り上げ、一転して推進に流れを変えたのだ。その中心に位置したのが行政刷新相蓮舫であった。蓮舫は2010年6月8日に枝野幸男から刷新相を引き継ぐに当たって、加計学園の獣医学部設置を重要引き継ぎ事項として受け継いで、獣医学部新設へと動いた。それも22年度を目途に加計学園問題を推進することを決めたのだ。従って蓮舫が安倍を加計と友人であるという理由だけで「加計疑惑がある」と追及するなら、蓮舫は推進したのだからやはり疑惑を追及されてもおかしくない。


自らの“加計疑惑”へとブーメラン返しを食らうことになる。従って安倍政権の方針を「政治をゆがめている」などと批判しても、「民主党の方針をゆがめでいない」という反論がそのままできることになる。本来なら16日の予算委は蓮舫が追及すべきであろうが、質問者は福山哲郎になっている。どうも逆襲を恐れて逃げた感じが濃厚だ。
 

さらに民進党の最高顧問江田五月も加計と親密であることを自らのブログで明らかにしている。2016年10月20日付のブログは加計との親しげな写真を掲載し、「16時から30分ほど、岡山理科大学構内で加計学園の加計孝太郎理事長に議員退任のご挨拶をして懇談しました。長くご支援いただいており、新校舎の最上階からの岡山市内の眺望も、ご案内いただきました。絶景でした」と書いている。


この文章から見る限り何らかの援助を受けていた可能性が強い。普通政治家が「長くご支援いただいており」と書けば、政治献金を意味する。江田が加計から見返りに今治市への獣医学部誘致で陳情を受けたかどうかは定かではないが、可能性としてはあり得ることだろう。
 

加えて民進党衆院議員の高井たかしの場合はもっと“確信犯”的だ。ホームページで「地方創生特別委員会にて、国家戦略特区について、石破大臣に質問しました。愛媛県今治市に50年ぶりの新設をめざす獣医学部について。四国4県の大学には獣医学部が一つも無く、獣医師の偏在が問題になっています。地元の岡山理科大学が力を入れており、『これは何としても実現して欲しい』と強くお願いしました。石破大臣もかつて鳥取県に誘致を試みた経験があるそうで、前向きな答弁を引き出すことができました。」と書いている。地元の加計から少なくとも陳情されている証拠だ。


こうした党内の一連の動きをまずいと判断したか幹事長野田佳彦は、記者会見でお得意の三百代言的な言い訳をしている。野田は「当時の、民主党政権下における特区というのは構造改革特区です。いわゆるボトムアップで(地方から)上がってきたものについて、検討を加えていくというもの。


一方で、2013年12月から制度がスタートしている安倍政権になってからの国家戦略特区はトップダウン型。したがって、総理の意向とか、誰かへの忖度(そんたく)とか、トップダウン型とボトムアップ型とは全く違うので、同じ前提であったかのように議論をすりかえるのはまさに国民に誤解を与えるものである」だそうだ。この幼稚園児もびっくりするようなこじつけ論理は、ハチャメチャだ。


たとえボトムアップであろうが、地元への忖度がなければ政治家は動かない。口から出任せの目くらましを駆け出し記者にしてはいけない。トップダウンだから安倍への忖度が働くといっても、首相の場合、官僚の忖度が犯罪行為かと言えば、そんな話など全く成り立たない。
 

そもそも官僚が忖度してどこが悪いかだ。実力派の首相であるほど官僚は首相が何を考えているかをしょっちゅう考えるのだ。それが政治をスムーズに展開させる要諦であり、忖度こそが重要なのだ。トランプの初閣議を見るがよい。閣僚全員が臆面もなく忖度しているではないか。野田も首相当時に野党である自民党の解散の主張を忖度して、民主党政権が自滅した解散を断行しているではないか。


獣医学部問題は国家戦略特区諮問会議を経て実現しているのであり、その議論の内容をみれば「安倍の意向」などという言葉は一言も出てこない。官房長官・菅義偉が「特区の指定、規制改革項目の追加、事業者の選定などいずれのプロセスにおいても関係法令に基づく適切な処理がなされており、圧力が働いたりしていない」と発言しているとおりだ。民進党は「加計」と名前が出ればごみ記事でもトップに据えて紙面を作り、「政局」へと結びつけようとする朝日など左傾化マスコミの“トラの威”を借りてパンチを繰り出しても駄目だ。しょせんは空振りに終わると予言しておく。


◆俳談

【作句のこつ】

芭蕉は俳句上達の秘訣について「師を頼りとせず、弟子を頼るわけでもなく、自らの器量を当てにしても仕方がない。つまるところ、句を多数作る人で、昨日の自分に飽きてしまった人こそ上手になる」と述べている。要するに多くを作句し、常に前向きに思考する人が成功すると言うのだ。

 これは多作多捨の作句方法であり、芸事全てに通用する普遍の原理だ。ゴルフでも格闘技でもダンスでも場数を多く踏むほど、上達は早い。多くの句を作って、それを捨てる。これを繰り返すことによって、風景や人間の事象を俳句にする回路が脳内に成立するのだ。そうなれば写真を撮るように俳句ができるようになる。筆者は毎朝10句作っている。過去に作った句も発想のよいものは推敲してまた使う。句会の前日になってやっと一句作るようでは、いつまでたっても上達は望めない。

先生の顔見て逃げし軒燕      産経俳壇入選

<今朝のニュース解説から抜粋>     (政治評論家)
 

2017年06月15日

◆トランプ対マスコミの対立は長丁場に

杉浦 正章



FBIとCIAを敵に回して低空飛行
 

一時は特別検察官解任へと動く
 

CNNから初閣議を「まるで北朝鮮の閣議だ」と酷評されては、トランプも形無しだ。どうもトランプの打つ手は田舎芝居じみており、稚拙だ。その原因を探れば、政権が素人集団だからだろう。ワシントンで昔から言われている政権維持の要諦は3つある。「連邦捜査局(FBI)を敵に回すな」「敵になりそうなものは抱え込め」「ばれるような隠ぺいはするな」である。1つでも守らないと政権は危機に瀕するといわれ、歴代政権が重視してきたポイントだが、トランプは3つとも破っている。まさにハチャメチャ大統領による五里霧中の低空飛行だ。
 

政権発足以来5か月たってやっと23人の閣僚がそろって12日に開いた閣議がなぜ「北朝鮮の閣議」かといえば、見え透いたお追従強要閣議であったからだ。冒頭20分間をテレビに公開したが、まずトランプが「我々は驚異的なチームで、才気にあふれている」と自画自賛。次いで閣僚に発言を求めたが、根回し済みとみえて、ごますり発言が相次いだ。史上初のゴマすり閣議だ。メディアが「賞賛の嵐」と形容したほどだ。CNNが「賞賛度第1位」に挙げたのが副大統領ペンス。


何と言ったかというと「大統領を支持するという国民への約束を守る。大統領に奉仕できるのは人生最高の特権です」と大ゴマをすった。そして次から次へと歯の浮くようなお追従を閣僚が繰り返した。まさに世界最強の民主主義国の閣僚が、皇帝トランプにひれ伏すの図であった。
 

司法長官セッションズの議会証言もトランプの意向が強く働いたものであった。もともとセッションズとトランプは不仲と言われており、一時は辞任説も流れた。ところが14日の議会証言では打って変わった“忠節”ぶりを示した。どのような忠節ぶりかと言えば、トランプが窮地に落ちいったロシアゲートの全面否定である。ロシアとの共謀を強く否定し、そのような主張は「おぞましく忌まわしい嘘」だと述べたのだ。
 

さらにトランプは身内を使ってすぐにばれるような芝居を続けた。親しい友人であるクリストファー・ラディに「大統領は特別検察官の解任を検討している」と発言させたのだ。ニューヨーク・タイムズは13日、トランプが実際にモラー解任に動き、夫人メラニアが止めたと報じている。先月特別検察官に任命されたモラーはワシントンで与野党を問わず信頼を集めている人物だ。ニクソン政権のウォーターゲート事件やエネルギー大手エンロンの粉飾決算事件を扱った経験者らを集め、強力なチームを編成してロシアゲートの捜査任務に着手している。ラディ発言には反発が大きく、ロシア介入疑惑を調べている下院情報特別委員会の民主党メンバーのトップ、シフ議員はツイッターで、「大統領がモラー氏を解任した場合は議会が直ちに独立検察官を設置し、そのポストにモラー氏を任命することになる」と述べたほどだ。慌てて報道官スパイサーに否定させたが、トランプはマッチポンプでモラーとFBIをけん制したつもりなのであろう。
 

こうしてトランプは身内を固めようとしているが、最大の問題は敵に回してはいけないFBIを敵に回していることだ。前長官のコミーは8日の証言で「トランプからロシアゲートの捜査中止を求められた」と述べると共に、トランプとの会談のメモを明らかにした。捜査中止命令は大統領による司法妨害であり、ウオーターゲート事件の核心でもあったほどだ。
 

FBIだけではない中央情報局(CIA)まで敵に回した。前長官ブレナンは23日に議会で「ロシアが昨年の大統領選挙にあからさまに介入し、非常に強引に米国の選挙に入ってきた」とロシアゲートの実態を明らかにしている。議会証言はFBIとCIAの前長官が疑惑の存在を明らかにして、“忠犬”に戻ったような司法長官セッションズだけが否定するという構図である。誰が見ても信用出来るのはFBIとCIAであって、司法長官ではあるまい。こうした捜査当局の資料を基に特別検察官が捜査するのだから、その結果は火を見るより明らかなものとなろう。
 

今後の展開としては@準レームダック化して来年の中間選挙までは続くA弾劾が早期に成立するB副大統領が大統領の執行不能を宣言するCいつかは不明だがモラーが政権直撃の捜査結果を公表してトランプが窮地に陥るーなどが考えられる。@についてはトランプの支持率が38.6、不支持率が56.0であることが物語るように、下院が中間選挙で民主党優位に逆転する可能性が高い。


従って過半数で弾劾を発議出来る可能性があるが、上院の3分の2の壁があり、共和党が弾劾に回らなければ困難だ。ニクソンの場合は民主・共和両党の合意で弾劾が可能となり、弾劾を待たずにニクソンは辞任している。そうした事態に発展するかどうかで決まる。従ってAの弾劾早期成立は困難だろう。Bの副大統領による解任も、トランプが精神的な異常を来すなどよほどのことがないと難しい。

アメリカ合衆国憲法修正第25条は副大統領が大統領の執行不能を宣言できるとしているが、まだ発動されたことはない。従ってトランプの低空飛行は継続するが、ホワイトハウスの記者団を中心とするマスコミとトランプの対立は衰えることなく長丁場化して継続する方向だ。


◆俳談(新規掲載中)

【老犬】

老犬の盲(め)しひゆくらし冬の山     産経俳壇入選

どうも飼っているホワイトテリアが目が見えなくなったり、耳が遠くなったりしているらしい。大声で怒鳴るように呼ばないと顔を上げない。しかし、めしをやる食器の音だけは聞き逃さない。ことりと音を立てただけですぐに起きてくる。食い意地だけは張っている。掲句は季語の冬の山と目が見えなくなりつつある老犬を響かせたものだが、一般の人には何で冬の山か分からないだろう。それはこのエッセイを読んでいる内に分かるようになる。俳句の要諦だ。
 

食事も亭主は粗食なのに、犬は牛刺しだ。牛刺しをやるようになってから、胆石の痛みも起きなくなったようだ。ドッグフードがいかに駄目かの証明となった。犬の牛刺しを食べたくなって、こっそり冷蔵庫を開けてつまむと、結構いける。ビールのつまみにいい。犬の食事を盗み食いするようになってはおしまいだが、今度女房の留守に盛大にやろう。犬めにはアジの頭しかやらない。

初嵐犬吠えカラス横っ飛び      東京俳壇入選

       <今朝のニュース解説から抜粋>        (政治評論家)

2017年06月14日

◆偏見と誤解に満ちた国連報告など不要だ

杉浦 正章



ケイは人権活動家に見事に操られている
 

大詰めを迎えたテロ等準備罪法案をめぐって、国際的な“陰謀”が展開されている。映画で活躍する女性工作員のごとく国連報告者らを意のままに操り、日本政府に打撃を与えるための工作を展開している女性がいるのだ。その手のひらで踊らされるがごとく、ジュネーブの国連人権理事会で特別報告者のデビッド・ケイがテロ法案の参院採決に合わせるかのように想像を絶するほどずさん極まりない左傾化調査結果を報告した。


国連報告者とは特定の国における人権状況について調査・監視・報告・勧告を行う専門家であるが、ケイは昨年4月の来日以来、英エセックス大人権センター・フェローと称する人権活動家藤田早苗の誘導のままに報告書を作成しているかのようである。読売も14日付けの社説で「日本の一部の偏った市民運動家らに依拠した見解」と位置づけている。藤田の“手腕”は“凄腕” という形容がぴったりであり、日本の女性としては希有な行動力を持っている。その講演は左翼関係者で満員になるほどの盛況だという。
 

そもそもケイの来日を画策したのは藤田と言われ、ジュネーブで暗躍して国連の組織を動かし、政府・与党をおとしめるのがその作戦の目的であるかのようである。まず藤田のネット発言をみれば「とうとう共謀罪法案が審議入りした。英訳して国連その他に提供した。専門家からは懸念の声が出ている」と、自らの国連機関への“貢献”を強調している。そして藤田は日本のメディアを取り巻く状況は悪化してきていると指摘し「権力監視という本来の役目を十分果たしているとはいえない」と分析している。


こうした立場からの“洗脳”をうけたのかケイは「日本政府が直接間接にメディアに対して圧力を掛けている」として、まず「政治的に公平であること」などと規定した放送法4条の見直しを23日までには報告書に記載する予定だ。これは電波停止を恐れる左傾化民放が主張してきていることであり、藤田らのレクを受けなければとても米国の学者ごときが知り得ない内情である。
 

ケイは日本の一部民放の偏向報道のひどさを知らないまま判断しているとしか思えない。民放の電波停止の可能性に関しては昨年2月には総務相高市早苗が「国論を二分する政治課題で一方の政治的見解を取り上げず、ことさらに他の見解のみを取り上げてそれを支持する内容を相当時間にわたり繰り返す番組を放送した場合」などと具体的な例をあげたうえで、「行政指導しても全く改善されず、公共の電波を使って繰り返される場合、それに対して何の対応もしないと約束するわけにいかない」と言及している。


またかつてテレビ朝日報道局長の椿貞良が「なんでもよいから反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないか」と他局に偏向報道を働きかけた事件があった。総務省は1998年のテレビ朝日への再免許の際に、政治的公平性に細心の注意を払うよう条件を付した例がある。しかし実際に停止命令が出された例はない。TBSやテレ朝はまたこうした動きが再発することを恐れており、ケイの報告書に書き込ませたいに違いない。
 

さらにケイの報告で偏見に満ちているのが慰安婦問題だ。中学校の教科書から慰安婦の記述がなくなったことを指摘して「政府の介入は市民の知る権利を損なわせる」と日本政府を批判した。これも朝日の慰安婦強制連行の大誤報と、社長以下が陳謝したという事実関係を知らぬまま、吹き込まれたことを未消化で報告しようとしているものだろう。加えて秘密保護法に関しても「表現の自由を犯す」として、見直しを勧告するのだという。
 

このように左翼人権活動家の“教育的指導”に踊らされてケイは、実情に疎いまま方向音痴の報告書を作成して、結果的に藤田らの反政府プロパガンダの一翼を担おうとしているわけだ。こうした藤田の動きを朝日は好意的に報道し続けており、構図としては野党ー朝日ー藤田ー左傾民放によるテロ法案阻止の連係プレーが実現していることになる。藤田の狙いは、戦後の教育で国連を理想的組織と印象づけられた国民の意識を最大限に活用して、ケイを利用して政府・与党を追い詰め、野党の力を拡大する事にある。
 

しかし、国連報告者などというと、特別に偉い存在であるかのように見えるが、その実は国連には80人もいて、権威などない。国連を代表した者ではさらさらない。事務総長アントニオ・グテーレスも首相・安倍晋三に「国連とは別に個人の資格で活動しており、その主張は必ずしも国連の総意を反映するものではない」と説明している。そのような人物のレベルの低い、強制力などかけらもない報告書を大々的に報道する日本のマスコミも、いい加減に国際的な常識を身につけるべきだ。


策謀女に踊らされる偏狭なる一学者のたわ言を競って大きく報道する癖を直したらどうか。政府も雑魚相手にけんかしても仕方がない。放置すれば国際社会に誤解が広がりかねない。グテーレスに直接働きかけて対応を求めるべきだ。日本はアメリカに次いで世界第2位の国連分担金を払って、国連活動に貢献しているのであり、事務総長はそのような平和国家をおとしめる発言が国連内部から出るのを放置していいのかということになる。


(杉浦正章氏の「俳談の欄」を、13日から掲載。これから本誌で掲載します)。
<俳談>
【桜を詠む】

桜を詠むときは、季語のイメージが強すぎるので状況を素直に捉えるにかぎる。あれこれ考えすぎたり、技巧を凝らすと墨絵に油絵の具を塗るようになって、桜の爽やかさが出ない。

芭蕉の
さまざまのこと思ひ出す桜かな
が良い例だ。実際にはこれだけの俳句を詠むには、相当な技巧が必要だが、芭蕉はそれを感じさせない。読む者の気持ちの中にすっと入り込んで、いったん入ると忘れないフレーズとなる。

たましひが先に近づく桜かな     産経俳壇入選
桜へと急ぐ身体より心が先に桜へと到達することを詠んだ。

遙かなる桜吹雪に急ぐかな      東京俳壇入選

桜吹雪がまだ終わらないように祈るような気持ちで急ぐ心境だ。いずれも感じたままを読んだ。技巧はない。
夜桜や学舎の窓の闇深し       毎日俳壇入選

夜桜の明るさに学校の窓の暗さを対比させた。

今生に一睡すれば花吹雪        産経俳壇入選
庭のしだれ桜を前に花見酒に酔い、一眠りしたら花吹雪だった。

         <今朝のニュース解説・俳談>    (政治評論家)

2017年06月13日

◆政府・与党はテロ法会期内成立を図れ

杉浦 正章



支持率微減はメディアの空振りを物語る
 

メモ公表も「だからどうした」だ
 

「世の中に蚊ほどうるさきものは無し、『モンカだカケだ』と夜も眠れず」。一部新聞、民放は、外交・安保の重要局面や最重要法案をさておいて、あさっての方向に突っ走っているのではないか。あれだけ騒いでも内閣支持率も政党支持率も微減でしかない。俳句の会で論理先行で詩情のない句を冷やかすときに「だからどうしたい」と言うが、「加計学園」の獣医学部新設をめぐる文科省内部文書の再調査問題をめぐる論議も酷似している。文科省がもともとあるメモを見つけ出しても「だからどうしたい」そのものではないか。


野党が誰が作ったかも知れぬ無責任なメモを金科玉条とばかりに押し頂いても、事態が急転直下「加計疑獄」になる可能生はゼロだ。前文科事務次官前川喜平が退任させられた意趣返しのごとく発言を続け、これを“活用”してなんとか政局に結びつけようとする野党と朝日、毎日、一部民放の“魂胆”は見え透いている。政府・与党は終盤国会最大の焦点であるテロ等準備罪法案の成立に向け中央突破を断行し、ちゅうちょなく今国会成立を図るべきである。
 
NHKの調査では安倍内閣を「支持する」と答えた人は、先月の調査より3ポイント下がって48%で、依然として歴代内閣とは比較にならないほどの高水準を維持している。各党の支持率は、自民党が36.4%でマイナス1.1ポイント減、民進党が7.9%で0.6増、共産党が2.7%で変化なしであり、いずれも誤差の範囲内だ。


朝日、毎日、TBS、テレ朝が総力を挙げての反安倍キャンペーンが、いかに上滑りしているかを物語っている。国民の真偽を見極める目は衰えていないのだ。もっとも、NHKは論説では公正なる公共放送にあるまじき反安倍姿勢を示している。NHKは12日の持論公論で解説委員西川龍一が加計学園理事長加計孝太郎と安倍が親密な関係であることに関連して「恣意的な姿勢でなく透明性を確保したから客観的な評価に基づき検討された結果なのだと思える説明が必要」とかみついている。しかし、一言も国家戦略特区諮問会議の「客観的な審議」を経ている事に言及していない。NHKとは思えないずさんかつ不公平な論調であった。
 

首相・安倍晋三が、文科相にメモを「徹底的に調査するように指示した」問題について、民放ワイドショーが勝ち誇ったような番組を放映しているが、相変わらず民放は問題の核心を見逃している。というか核心を度外視している。内閣の命運に関わる文書であったら、政権側は何が何でも公表はしまい。いつになるかは不明だが、公表するのは「政局無関係」が確実であるからだ。少なくとも今治市への獣医学部招致は国家戦略特区諮問会議を経て実現へと動いているのであり、そこに安倍の「意向」は働かない。


諮問会議の議事録を読めば明白である。前川発言の最大の弱点は、一部マスコミが事細かに報道することに悪乗りしてメモの存在だけに的を絞り、それ以上の疑惑に言及できないことだ。メモが「あるある」といっても、金銭疑惑に直結するような証拠を指摘できないままでは、まさに印象操作にほかならない。印象操作の「あるある詐欺」なのだ。
 
おまけに野党の攻撃は口だけ達者だが、重要ポイントで大失策をやらかしている。まず国連の特別報告者であるジョセフ・ケナタッチとやらが、テロ法案について「プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」と指摘する書簡を、直接、安倍宛てに送付したことを取り上げ、鬼の首を取ったかのように追及しているが、大誤算だ。


特別報告者など国連には80人もいて、ワン・オブ・ゼムの主張であり、権威などない。国連を代表したものではさらさらない。おまけに野党がどこかのルートを通じて入れ知恵したと言う説がある。マルタの大学教授のレベルが知れる。国連のしかるべき担当部署は国連薬物犯罪事務所であり、フェドートフ事務局長は法案の衆院通過に際して「条約の締結に向けての動きを歓迎する」と公式に発言している。民進、共産両党は国連にもピンからキリまでいろいろあることが分かっていない。愚者のごとく知らないで藪をつつくから蛇が出るのだ。
 

一方で、反安倍姿勢が著しい民放も、言論報道の自由を自ら規制するような重大な発言を池上彰にさせている。12日のテレビ朝日では前川の記者会見で、読売の記者が「在職中に得た情報を明らかにするというのは守秘義務違反に当たるのではないかという指摘がある」と質したことを録画を基に生々しく取り上げた。そして池上は「読売の記者は自分で自分の首を絞めている。この記者は前川さんをけん制している。ということは全国の公務員は読売が取材に来たら守秘義務ですからと言って、拒否していいのかということになりかねない。驚くべき事だ」とこじつけも著しい発言をした。まさにあさってを向いた発言だ。


ここで問題なのは、読売の記者の質問ではない。質問自体は前川の国家公務員の守秘義務に関わる発言を問題視して、「業務上知り得た秘密は退職後もこれはもらしてはならない」とする国家公務員法違反の疑いがある点を指摘したのであり、全く適切だ。問題は池上の発言がこうした質問をテレビという公共放送を“活用”して、抑圧しようとしていることだ。マスコミ人と称するものにあるまじき振る舞いだ。記者クラブで問題にしない方がおかしい。昔ならテレ朝は除名ものだ。
 
池上は、おこがましくも前川に対するお追従質問はいいが、前川の利益にならない質問は封殺しようというのだろうか。だいいち記者が質問の相手をけん制するわけがない。この場合も真実を知るための質問であって、けん制している様にはどう見ても見えない。記者側にけん制して何の利益があるのか。加えて前川には売春防止法違反の疑いもある。その部分にもっと突っ込んだら池上は、「驚くべき事だ」というのだろうか。少なくともメディアで飯を食わせてもらっている人間が、メディアを封殺するような発言をすべきではない。


池上は口八丁で一見理路整然としているように見えるが、その実はあらぬ事を早口でしゃべってごまかしているとしか思えない。理路整然と間違うタイプだ。こうしてメディアはとんちんかんを絵に描いたような傾向に陥っている。もう異論に耳を傾ける時期は過ぎた。政府・与党は、ちゅうちょなくテロ法案成立へと動くべきだ。


◆俳談(本日から本誌掲載開始=編集者)

【昼ビール万歳】

落花生両手で砕きビール汲む 杉の子

藤沢という街は湘南ムードもあって明るくて洒落た街だ。駅前の地下街に日本一うまい中華そば屋がある

「古久屋」という名前だが、なぜ日本一かというと、特に理由はない。他にうまいところを知らんからだ。江ノ島水族館でクラゲの写真を撮ったあとは必ずこの店に寄る。クラゲの撮影を10時45分で切り上げると、ちょうど開店の11時に間に合う。なぜ知ったかというと娘が高校時代しょっちゅう通って「特焼きそばにお酢をどばっとかけるとおいしい」と言っていたからだ。

この店で気付いたのは湘南というのは昼からビールを飲むことだ。私のような上品な白髪の老人が、一人手酌で焼きそばを前に一杯飲んでいるかと思えば、老夫婦が湯麺を啜りながら一杯飲んでいる。昼ビールのうまさは格別なことを知っているから、一度真似してみたいと思っていたが、気が弱いから一年ばかりちゅうちょ。昨日思い切って決断した。決断だから注文の仕方も並大抵ではない。つい「ちょっと、ビール」とかん高い声を出してしまうのだ。

店員は何で興奮しているのか分からないから、怪訝な客だと思っても顔に出さずに「はい」と受け止める。こうして決死の覚悟の昼ビールがのどをごっくんと通過したのだ。現役時代に一所懸命に働いて、今は自由の身。「世間よざまあみろ」と内心思うのだ。そして小粋なる湘南っ子の顔を装って、大和市のイモ爺さんが、またとくとくとくとビールを注ぐのだった。

ひたすらにビールを思ひ庭仕事 杉の子

◆本誌新企画。本誌「政治評論」後に新掲載

<杉浦正章氏記> 俳句歴は25年だが、新聞俳壇に投稿を始めて10年になる。入選句は年間100句から150句に達するようになった。毎日俳壇からは今年の「毎日俳壇賞」もいただいた。
<丈夫なり妻と昭和の扇風機>である。ますますやる気を強めている今日この頃だが、新聞への投句をする人向けに「投句ノウハウ」を書くことになった。初心者向けの実戦論として活用して頂ければ幸いである。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年06月08日

◆強まる「改憲・衆院ダブル投票」の公算

杉浦 正章
 


自衛隊の根拠規定を問う 
 

相乗効果で与党に有利か
 

長年にわたって神学論争を繰り返してきた国会の憲法審査会に、改憲問題を政局にすべきでないとする議論があるが、どうだろうか。筆者は改憲問題は政局そのものだと思う。長年の政党の主張がぶつかり合う戦後最大の政局マターだ。従って改憲の国民投票と総選挙を同日に実施して「改憲・衆院ダブル投票」を断行、国民の信を問うことは全く正しい。


9条への自衛隊根拠規定の追加など自衛隊を肯定する政府・与党と、否定する共産党との対決が最大の見物だが、流れは共産党の惨敗とみる。そして国民投票の実施時期が日程的に衆院議員の任期切れと接近するのであれば来年の同日投票は一段と現実味を帯びるのだ。
 

自民党の憲法改正推進本部の会合が6日開かれ、いよいよ本格的な改憲論議がスタートした。安倍の提示した「9条の平和主義の理念は未来に向けて堅持し、9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」構想の是非が課題となる。冒頭から予想通り、自民党が2012年に世に問うた9条1項、2項も改正して「国防軍」保持を明記する憲法改正草案を取り下げるのかどうかについて激突した。総裁選出馬を意識していいる元幹事長石破茂が「どうするのか」とクレームを付けたのだ。


しかし副総裁高村正彦は「12年草案をどうするかを決めないと新しい議論に入れないということはない。改正案を作ってから草案と比較すればいい」とぴしゃりと反論。結局大勢は草案にこだわらず、首相案について議論を進める方向が確認された。
 

まさに「党内政局化」が抑えられた瞬間であった。石破の主張は党内でも一定の理解はあるが、今回の改憲構想は従来の草案が開けられなかった改憲の岩盤をダイナマイトで崩そうとする政治的な意図がある。仏壇の奥からちりの付いた「歴史的文書」のような草案を持ち出しても政治的に動かせるものではない。石破はそこに気付いていないのだ。
 

もう一つ異論がある。「行政府の長である安倍が改憲を提示するのはおかしい」とする議論である。毎日も社説で「憲法改正案の発議権を持つ国会の頭越しで具体的な改憲方針を明示するのは異例だ」と安倍にかみついた。さらにその憲法発言で大局観のなさを露呈している衆院憲法審査会理事の自民党幹事船田元も「行政府の長や内閣に籍を置く者は改憲に抑制的であるべきだ」と苦言を呈している。


しかし、6月1日の衆院憲法審査会参考人として出席した東大教授の宍戸常寿と慶応大教授の小山剛は国会の発議権を安倍が害していることはないとの見解を表明した。宍戸は「議院内閣制では政党党首が同時に首相を務めることが想定されている。首相であるところの与党党首が、改憲をしかるべき場で、しかるべきやり方で発言することは、一般的に憲法尊重擁護義務に反しないと考えている」と発言、小山も同調した。どうも憲法調査会は、15年に集団的自衛権の行使を限定容認する安全保障法制を巡り大学教授らに「違憲」を言わせて、安倍の足を引っ張った“快感”が忘れられないとみえて、二度目の「参考人ショック」を狙ったようだ。しかし、柳の下にドジョウは2匹おらず、「逆ショック」を受けたのは審査会であった。
 

こうして反対論は勢いを得ない状況にあるが、まだ山あり谷ありとみなければなるまい。大きな流れは筆者が5月11日にあらゆるメディアに先だって「総選挙と国民投票のダブル選挙の可能性がある」と推測した方向に向いている。


朝日も7日「改憲発議現有勢力で狙う」と、与党が3分の2を維持している現体制での改憲を目指す方向を記事にしている。安倍も先月インタビューで憲法改正の是非を問う国民投票を国政選挙と同時に実施することの是非に関して「衆院選と参院選を国民投票と別途やるのが合理的かどうかということもある」と述べた。国政選挙との同時実施の可能性に言及した形だ。自身が憲法9条改正を提起した意図についても、「自衛隊論争に終止符を打つ」と強調した。
 

衆院議員の任期は残り約1年6か月で、安倍は国民投票で解散権を縛られないことを意図したものともみられる。官房長官・菅義偉も国民投票の実施が解散権を制約するかどうかについて「首相の衆院解散権への制約はないと思っている」と明言している。こうして改憲の日程は衆院議員の任期切れを意識して進展する方向が強まった。筆者は過去に2度実施された衆参ダブル選挙の場合、自民党が圧勝した原因は相乗効果にあると判断している。


衆院で自民党に投票した有権者は参院でも自民党に投票する傾向があるのだ。これは憲法改正とも共通する側面があるのではないか。自民党に投票する有権者は9条改憲を是とする傾向を必ず帯びると見る。従って相乗効果で自民党は負けないし、改憲は投票した国民の過半数を得られるだろう。具体的な日程としては、2020年に改正憲法を施行するとなると、早ければ2019年には憲法改正の国民投票に漕ぎ着ける必要が出てくる。急げば来年の通常国会末か遅れても秋の臨時国会で、3分の2以上の賛成で発議することとなろう。


その後最短60日で国民投票となる。従って国民投票は衆院議員の任期切れが来年末だから、総選挙とのダブル選挙になる公算がある。経費節約にもなる。参院選挙は2019年夏だが、事は憲法であり、参院ではなく政権の存否が問われる衆院選挙に合わせるべきだろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2017年06月07日

◆露、北朝鮮の「緩衝国化」を推進

杉浦 正章



北方領土も戦略的位置づけ重視


垣間見せたプーチンの本音
 

プーチンがサンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムの公開討論の中で語った極東戦略は、北朝鮮を米戦略に対する緩衝国とはっきり位置づけ、核保有を容認したものである。一方北方領土も緩衝地帯としての戦略的価値を鮮明にさせた。一連の発言は日本にとっては極めて利個主義的な国家エゴと受け取れるが、ロシアにとっては将来を見据えた冷徹なる世界観に基づく極東戦略であろう。


プーチンの本音を垣間見せたこの発言は北の金正恩を増長させ、極東の緊張を一段と高めることになり、北方領土交渉にも影響を与えることが避けられない。

 

プーチンによる2日の発言は、まず北方領土でのロシア軍の軍備増強などについて質問されたのに対し、「北東アジアでは、アメリカが北朝鮮情勢を口実に韓国などでミサイル防衛システムの配備を進めている」と答えた。米国による韓国への戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)配備などを指すものだ。そのうえで、「これはロシアにとって懸念で、対応しなければならない。脅威を抑えるためには、島々が便利だ。島々が日本の主権下に入れば、アメリカ軍が展開する可能性がある。島々に軍事基地やミサイル防衛システムが配備されることはロシアにとって全く受け入れられないことだ」と述べた。


北方領土でのロシアの軍備増強は、ミサイル防衛システムの配備によってロシアの核戦力を無力化しようとするアメリカへの対抗措置だと正当化したのだ。この論理は昨年暮れに国家安全保障局長谷内正太郎がロシアの安全保障会議書記パトルシェフに対し、引き渡し後の北方領土に米軍基地を設置する可能性を否定しなかったといわれる情報が流れて以来のプーチンの立場を繰り返したものである。

 

さらに北朝鮮に関する発言は、軍事的圧力を強める米国を批判する中で出た。プーチンは「小さな国々は自らの独立や安全と主権を守るためには、核兵器を持つ以外、他の手段がないと思っている」と言明したのだ。加えて「力の論理が幅をきかせ、暴力が支配する間は、北朝鮮で起きているような問題が生じるだろう」とも述べた。プーチンはこれまで北の核保有に関しては「核クラブの拡大につながり反対する」との立場を表明してきたが、今回の発言はこれを大きく転換させる意思があると受け取れるものだろう。金正恩路線の支持でもある。


明らかに米国を念頭に置いたもので、そこには米国が北大西洋条約機構(NATO)で西から、日米同盟と米韓同盟で東からロシアに対する圧力を掛けていることへの不満がある。

 

事はそう簡単ではない。「核兵器拡散防止条約」(NPT)は、米国、英国、フランス、ロシア、中国の核兵器保有を認め、その他の国々の核兵器保有を禁止する「不平等条約」として1968年に成立した。しかし現在では190ヵ国が加盟しており、核の均衡にとっては欠くことの出来ない条約である。この5か国に加えてインド、パキスタン、北朝鮮が保有。イスラエルも、「核兵器保有を肯定も否定もしない」形で保有している。


しかし、核保有9か国のうち8か国と北朝鮮とは決定的な違いがある。8か国は極めて常識的な指導者がおり、冷戦終了後に核でどう喝した話は聞かない。しかし北朝鮮だけは「狂気の独裁者」が存在して、日米韓をどう喝しながら、核実験とミサイル実験を繰り返しているのだ。北の核は「気違いに刃物」の構図だが、他国は概ね「床の間の日本刀」なのだ。

 

発言から見る限りプーチンの基本戦略はこの独裁者を“活用”しようとしている魂胆がありありと見える。ロシアからみれば北の核ミサイルのターゲットは日米韓3か国であり、ロシアには向けられていない。これは北が米国の軍事力に対する緩衝国として極めて有用であることを物語っているのだ。毒薬であるべき北の核はプーチンにとっては「毒薬変じて薬となる」のである。金正恩が日米韓を核の対象にしている限りは、ロシアにとっては、願ってもない「子分」ができたということになる。


要するにロシアは北をロシアの対米戦略に組み込もうとしているのだ。万景峰号による定期航路を開通させたのもその戦略の一環であることは言うまでもない。

 
朝露関係は、1961年に当時のソ連と北朝鮮との間で「ソ朝友好協力相互援助条約」を結んだ。この条約はどちらか一方の国家が第三国から攻撃を受けた場合に共に軍事行動を行うという軍事同盟の条約であった。しかしソ連の崩壊で条約は破棄、1999年に新たに「ロ朝友好善隣協力条約」を締結したが、軍事同盟の条項は削除された。これでロ朝関係は軍事同盟の関係から、親密な友好国家の関係に切り替わったが、プーチンの姿勢は今後陰に陽に北との軍事的関係を深め、国際社会の制裁に対しても“抜け道”的な役割を果たすことになろう。

 
もちろんロシアだけでなく、中国も似たり寄ったりの対応である。北は中国の紛れもない緩衝国であり、習近平にとって金正恩は気にくわないが、北の体制は何が何でも守らなければならないのが基本だ。こうした極東における対峙の構図に日本は否応なしに巻き込まれる。天から平和が降ってくる時代はとっくに終わり、天から降るのは北の核ミサイルであり、国の防衛は根本から見直さなければならない時期に来ているのだろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)