2014年10月10日

◆産経記者起訴に朴の“私闘”の影

杉浦 正章




日韓首脳会談は遠のいてもやむを得ぬ



9日夜のBSフジのプライムニュースで韓国検察から在宅起訴された産経新聞前ソウル支局長・加藤達也の「実態暴露」を聞いたが、聞けば聞くほど問題の核心に大統領・朴槿恵の“私闘”の影が濃厚であることを確信するに到った。


起訴は国のトップの感情が先行した民主主義国家にあってはならない報道機関へのどう喝だ。政府は、温厚な官房長官・菅義偉が「民主国家としてあるまじき行為」とこれまでの在任期間で最強の言葉を使って非難したが、誠にもっともだ。


政府はこれまで朴槿恵が自ら先頭に立ったいわれのなき慰安婦強制連行プロパガンダに気おされてきたが、よいチャンスだ。ここは国連などあらゆる国際機関の場を使って、反転攻勢に出て朴政権の理不尽さを訴える場面だ。日韓首脳会談などは当分必要ない。
 

なぜ“私闘”であるかといえば、まず最初に加藤に電話で厳重抗議してきたのは大統領府であった。加藤によれば8月5日に「断固として法的措置を取る」と通告してきたというのだ。そのあと8日に検察の出頭要請があったというから、明らかに朴は検察に命じて“私闘”を開始したのだ。


ここで説明しておくが、韓国は一見三権分立の民主主義国家であるように見えるが、その実態は検察庁が法務部(法務省)の下に位置して指揮監督されており、検察は司法というよりむしろ行政の色彩が強い。


要するに大統領の言うがままに動くシステムである。加藤が検察の取り調べを受けた際の印象として「検察当局は大統領の顔色だけを見て動いている印象」と述べたこともそれを物語っている。


ただ朴は加藤に陳謝させて和解に持ち込むことを考えていたフシが濃厚である。というのも3回目の事情聴取などで検事が「被害者側と和解を進めているか」とか「謝罪の意志があるか。被害者の名誉回復のためにどのような努力をしているか」などとしきりに和解を促すような質問を繰り返したというのだ。


それは検察が起訴の理由について「加藤前支局長の記事は客観的な事実と異なり、その虚偽の事実をもって大統領の名誉を傷つけた。取材の根拠を示せなかった上、長い特派員生活で韓国の事情を分かっていながら、謝罪や反省の意思を示さなかったという点を考慮した」と説明した点でも明白だ。


つまり「謝罪や反省」がなかったから起訴したのだ。


検察は加藤に「あなたの記事が大統領の名誉を毀損していると告発されている」として出頭命令を出したが、告発者の氏名、告発状の内容などは全く明らかにしなかったという。筆者の勘では告発者は朴自身であるか大統領府である可能性が高い。だから出せないのだ。


名誉毀損は日本では親告罪であり告訴がないと検察は動けない。韓国の場合は「反意思不罰罪」があって、告訴がなくても起訴が可能である。しかし被害者の「明示の意思」に反した起訴はできないことになっており、大統領または大統領府が「明示の意思」を示した可能性が濃厚である。


さらに出頭命令が出されてから、在宅起訴をするまでに時間がかかっているが、これは検察が朴の意思を確かめながら事を進めた感じが濃厚である。つまり起訴に踏み切れば内外の驚がくと、報道の自由に関する批判が渦巻くことくらいは朴も検察当局も承知している。


検察が加藤に何度も謝罪の意思を尋ねたのも、朴の意向が働いている公算が強いのだ。そして加藤の陳謝しないという意思が固いことが分かり、起訴に踏み切ったのであろう。


法廷闘争に問題は移行するが、最大のポイントは加藤の記事が朝鮮日報のコラムを引用しており、引用元の新聞を不起訴にしてなぜ産経だけをやり玉に挙げたかであろう。


朝鮮日報の核心部分は「世間では『大統領はあの日、ある場所で秘線(秘密に接触する人物の意)と一緒にいた』といううわさが流れた。大統領をめぐるうわさは、証券業界の情報誌などで取り上げられた」である。


産経も核心は「朝鮮日報のコラムではある疑惑を提示した。『秘線』とともにいたというウワサが作られた。『秘線』とはおそらく秘密に接触する人物を示し、コラムを書いた記者は具体的な人物を念頭に置いていることがうかがえる」というものだ。


これを見れば明白なように、ほとんど差はない上に、加藤は伝聞情報として扱い断定を避けている。このため加藤自身も「非常に不公平な対応である」と検事に申し入れている。


産経は、新聞ばかりでなくその出版物からみても「反朴」「反韓」色の濃い編集をしている。しかし「風評」を記事にしたのは産経だけであり、他紙は風評には乗らないという矜持(きょうじ)もあってのことだろう。朝鮮日報で知りながら記事にしていない。産経の編集方針が記者に強く働いたこともあるのだろう。


朴としても大統領府としても、検察を使ってこの際強く産経をけん制しておこうという、意図も働いたのであろう。


しかしこの程度の報道に国家が圧力をかけるのは、国際社会では独裁国家以外には考えられない。朴の感情的な私憤が大きく作用していることは間違いあるまい。利口な政治家なら産経の“挑発”に乗ることもなかったであろう。


朴にとっては例によって日本批判で支持率を上げる政治の一環であろうが、韓国内の新聞論調もさすがに批判が強く、ここは見誤ったとしか言いようがあるまい。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年10月09日

◆姑息なカジノ日本人利用先送り

杉浦 正章



韓国の真似で“外堀”埋める意図
 

8日の参院予算委審議を聞いていて、この国の政権の法解釈はどうなっているのかと首を傾げた。首相・安倍晋三が先頭に立ってカジノ導入の旗振りだ。


昔の政治家はその点一本筋が通っていた。「倫理観」という筋である。後藤田正晴は法相時代「賭け麻雀自体はよくない」とごく初歩の賭け事にもクレームをつけた。それが今の首相は刑法185条で禁止されている賭博を解禁しようとしているのだ。


最高裁でも「金銭そのものを賭けることはたとえ1円であっても賭博である」という判決が昭和23年に出ている。そもそも安倍は「IRについては」などと英語を使ってごまかそうとしているがintegrated resort とはカジノを含む総合リゾートのことであり、賭場を造ることに他ならない。


安倍はシンガポールを訪れた際、IRを見学して世論の下ごしらえをしている。「カジノの収入は3%」と理論武装しているが、その3%の邪悪が問題なのだ。
 

そもそも日本の伝統は「賭博は悪」なのである。


日本書紀に持統3年(689年)12月8日に「禁断雙六(すごろく)」の記述がある。「双六」が中国から入って以来賭博として流行したため、財産を失う者も続出。そのために持統天皇が禁制を敷いたのだ。賭博禁止令が出されたのだ。おそらく国民性として賭博に熱中しやすい傾向が大昔からあったのだろう。


最近の調査でもギャンブル依存症の疑いがある人が推計で536万人に上ることが、厚生労働省研究班の調査でわかった。


成人全体で4・8%、男性に限ると8・7%を占め、世界的にみても突出している。他国の調査では、成人全体でスイスが0・5%、米ルイジアナ州で1・58%、香港で1・8%だ。いまのパチンコですら「中毒」状態の主婦が、家庭を壊している悲劇など腐るほどある。
 

安倍はIRが「投資や雇用を促進し、観光客を増やす」と述べているが、投資とは寺銭を回り回って国家がもうけるための投資か。雇用とは「鉄火場」でサイコロを振るツボ振リやこれを監督する中盆など胴元のことか。それとも賭場での食事をしやすくするために考案された鉄火巻きを巻く職人のことか。


カジノ法案を推進する超党派議連の姑息(こそく)な対応も目立つ。カジノ解禁法案に日本人のカジノ利用について、「別の法律で定める」などの文言を盛り込み、修正案を成立させて先送りしようとしているのだ。


根強い反対論をかわして解禁法案の今国会成立を優先させるのが狙いだ。要するに外堀を埋めようとする狡猾な対応だ。


しかしこれは誰も気付いていないが韓国の猿まねだ。韓国は2000年にカジノを合法化したことで多くのカジノが誕生したが、国内の反対を避けるため当初は外国人専用にする予定だった。しかしそのうちに韓国人がプレーできる「江原ランドリゾート」がソウル近郊に出来たのである。


大変な人気で、週末の開店時刻ともなると1000人規模の行列ができることも珍しくないという。賭博依存症の患者も増える一方だという。議連はその「先進国」の“手口”を真似ようというわけだ。


予算委では共産党の大門実紀史が「外国人ならカネを巻き上げていいのか。カネを巻き上げた何がおもてなしだ」と食いついたが、共産党にしては珍しく正論を吐いた。


安倍はIR推進を目指す「国際観光産業振興議員連盟」の最高顧問だが、大門が「首相がカジノなどを進める議連の最高顧問であるのはふさわしくない」と指摘したのに対し「指摘はごもっともかもしれない。辞めさせていただく」と述べ、役職を辞する考えを示した。当然である。


どうもカジノ法案に関する限り安倍はバランス感覚を失っているとしか思えない。


カジノは国内外の反社会勢力の巣になり得ることも懸念材料だ。暴力団が不正な資金の洗浄に使う可能性が高い。ギャンブル依存症に陥る人が出るのは避けられない。


自民党議連関係者は日本人のカジノの利用について「ギャンブル依存症への対策などを講じたうえで改めて実現したい」と述べているというが、「国民性」をそう簡単に直せるのか。馬鹿も休み休みに言えと言いたい。


国民をだましてはいけない。朝日新聞社の世論調査では、59%が解禁法案に「反対」で、「賛成」は30%にとどまっている。国論は2分どころか反対が多数だ。強行すれば安倍の支持率に影響することは間違いない。


今からでも遅くはない。法案が通らなければ「賽(さい)は投げられていない」のだ。安倍は目を覚まして邪悪なる種を悪魔がまくような姿勢を改めよ。総合リゾートは、健全なディズニーランドがあれば十分だ。オリンピックに間に合わせるというが、スポーツの祭典オリンピック精神を全く理解していない。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年10月08日

◆政権内で増税延期派の巻き返しが急

杉浦 正章




安倍の意向反映か



基盤が強い政権は情報操作ができる。首相自身が発言せずに、側近や党幹部に発言させて様子を見るのだ。10%への消費増税で首相・安倍晋三が取っている戦術がこれだ。


筆者は安倍の本心は増税延期に傾いていると推測している。今のところ正面から再増税の是非を聞かれれば中立を保っている。そのかわり側近が延期を声高に主張し始めた。一致して「1年半」の延期論だ。


そして延期には政治的エネルギーが必要だが、維新の党が結果的に安倍への助け船になる「消費増税延期法案」を今国会に出す方針を固めたのだ。延期に向けて外堀を埋める作戦が着々と進んでいるかのようだ。


正面から聞かずに、野党があの手この手で聞いた場合は安倍の発言も微妙なトーンの変化が見られる。安倍は「消費税引き上げで景気が悪化し、税収も増加しないという事態は絶対に避けなければならない」「目的は税率を上げることではなく税収を上げること」と述べている。


税収が減ってはアベノミクスを直撃するという判断だ。「絶対に」という言葉は、安倍の心境を端的に物語っている。側近の発言でもっとも注目すべきが山本幸三。その次ぎに注目すべきが本田悦朗だ。両者とも期せずして「2017年4月までの1年半」延期論だ。何らかの調整なくして「1年半」というはんぱな数字が出ることはあり得ない。


安倍はこの二人を使って動かそうとしている。まず山本は知る人ぞ知る安倍のブレーンで、旧大蔵省出身の元副経済産業相。山本は、大胆な金融緩和や財政出動により、デフレ脱却、景気回復を目指す「リフレ派」の論客。


自民党の野党時代に安倍に金融緩和の必要性を説き、政権を取った後アベノミクスの第一の矢である大胆な金融政策を実現させた。その山本は当初は10%への再増税を推進してきた。「先送りする理由はなく、早めに決断したほうが政府に対する信認が増す」と述べてきたが、ここにきて豹変した。 

2日の岸田派の会合で、「今の経済指標からみれば、予定通りやるのは無理だ。1年半くらい延ばしたほうがいい」と述べ、消費増税先送り論に転換したのだ。加えて山本は幹事長・谷垣禎一が「再増税は自明」とのべている事に対して「最終的に決断するのは首相だから、党幹部が増税は既定路線みたいなことを言うのは問題がある」と噛みついた。


岸田派があえて山本の講演を聴いたこと自体が微妙な感じがする。外相・岸田文雄が安倍の心情を察知して、側面援助に出た感じが濃厚だからだ。山本の豹変の理由は4月以降の経済指標を見て増税したらアベノミクスがつぶれると判断したからに他あるまい。


一方内閣官房参与・本田はウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、「アベノミクスと消費税率引き上げは逆向きの方向性を持った政策だ。本来思いっきりアクセルをふかしているときにブレーキをかけたらどうなるか。車は必ずスピンする」と警鐘を鳴らした。


そして「ベストの選択肢は、10%への消費税率引き上げを当初予定より1年半先送りすることだろう」と述べた。


山本が谷垣に噛みついたように本田は日銀総裁・黒田東彦を批判した。「日本銀行総裁には金融政策に専念してほしい。消費税をどのタイミングでどうするかは、政府の専権事項。政府にまかせてほしい」と発言したのだ。山本も本田も安倍が言いたくて仕方がないことをいみじくも代弁した形だ。


黒田と安倍は二人三脚的であったが、黒田の再増税発言で安倍と黒田に隙間風が吹いているように見える。


黒田は7日円安について「景気にむしろプラスだ」と強調したが、安倍は国会で円安の影響について「家計や中小・小規模事業者にはデメリットが出てきている」と発言した。


外為市場では安倍と黒田の発言のズレに戸惑いが広がり、7日の東京市場で円相場が乱高下する結果を招いた。こうして山本と本田はまるで「安倍代弁派」を結成したかのような様相であり、今後自民党内に大きな影響を及ぼすだろう。山本は経済政策に関する議員連盟の会合を開き、党内根回しを本格化させる方針だ。


野党は既報のように「必殺政局マン」の小沢一郎が臨時国会終盤を安倍降ろしの政局化を狙って虎視眈々と動き始めた。小沢自身には動かす力はないが、野党の扇動に成功すれば話は別だ。


おそらく小沢は、11月17日発表の7−9月のGDP速報値を見た上で動くのだろう。安倍は12月8日発表の改定値を見た上で決断することにしているが、小沢にとって仕掛けは臨時国会中でなければ難しい。


こうした中で野党は維新が微妙な動きを開始した。10%への引き上げを延期する法案を今国会に提出する方針を固めたのだ。他の野党に共同提案を呼びかけるが、これは政府・与党がうまく対応すれば、与野党一致に持ち込める。


いわば維新の方針は“助け船”になり得るうごきでもある。自民党は対応を巡って割れかねない側面があるが、谷垣は次善の策としての延期に踏み切るべきだ。延期法案は、絶好のチャンスになり得る。


こうして消費増税推進派に対する延期派の巻き返しが徐々に勢いを増してくることが予想される。今のところ予定通り推進論の谷垣が、落としどころとしての延期にいつ傾くかが最大の見所だろう。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年10月07日

◆「テロの逆流」は喫緊の課題となった

杉浦 正章
  


イスラム国は対岸の火災視できぬ
 

久しぶりに警視庁公安部が動くと社会に緊張が走る。それも一大テロリスト集団に成長したイスラム国絡みだから気になる。


「ここは地の果て」と歌われた中東で、跳ね上がりや異常者が死ぬのは勝手だが、問題はテロの逆流だ。オーストラリアでは辛うじて未然に防いだが、日本が狙われないとは限らない。テロ戦闘員の流入阻止は喫緊の課題であり、対岸の火災視していたら、大やけどする。


今回の事件の場合当面は北大休学中の学生の聴取が焦点だが、学生はきょうトルコ経由でシリアに向け出発する寸前であった。大学生を巡っては怪しげな雰囲気も出ている。


各新聞は秋葉原の古書店に「勤務地シリア。詳細店番まで」の求人広告が出ていたことまでは報じているが、毎日は張り紙は外部関係者から依頼されたものであると報じている。


その関係者について朝日だけが怪しげな元大学教授の存在を書いている。求人にかかわった古書店関係者が「イスラム法学が専門の元大学教授に渡航希望者数人を紹介した」と話していると報じている。古書店関係者はその元大学教授から「自分を介せばシリアに入れる」と聞き、渡航希望者を紹介したという。


古書店関係者は何人が実際に渡航したのかは分からないとしている。これから推察すると複数の人間が渡航した可能性がある。しかし店に公然と求人広告を出せば、いずれは警察に伝わることが分からないのは、あまりに“稚拙”というか大胆というか、本格的な秘密組織としては考えられない素人っぽい行動ではある。


これに対してオーストラリアの場合はテロ逆流を目指した全くの確信犯であった。イスラム国のオーストラリア人幹部からの指示で、無差別にシドニーとブリスベンで市民を拉致して、首を切断して殺害、その映像をイスラム国を通じて公表するという身の毛もよだつ計画であった。


同国史上最大規模の対テロ捜査が行われ15人が拘束され、2人が起訴された。首相ハニー・アボットはニューヨークに飛んで、米連邦捜査局(FBI) との会合に臨み、イスラム国のテロ活動についてブリーフィングを受け、対策を話し合っている。


大統領オバマによるとイスラム国には1万5千人の若者が戦闘員として集結している。アジアからは千人が参加しているという。地域別ではヨーロッパに多いが、根底には根強い移民差別がある。初代の移民は差別についてこんなものかというあきらめがあるが、二世となると根底から異なる。


息子たちは社会のあらゆる場面で差別を受け、それが憤まんとなってうっ積する。これに対してネットを見れば、イスラム国が救いの手を差し伸べているように見えるのだ。


イスラム国の宣伝活動も巧みだ。反米を軸に欧米民主主義政治システムを完全否定して、若者が民主主義体制では救われることがないことを強調、厳格なイスラム法国家のみが救いであると訴えるのだ。


これが主に二世移民らをイスラム国へと駆り立てるのだ。幸いなことにこの構図は日本には事実上ないといってよい。アジアからは約2億人のイスラム教徒を抱えるインドネシアや圧政を受けている中国・新疆ウイグル自治区などからの参加が多いといわれている。


国連は事態を極めて憂慮、安保理事会は法整備などイスラム国のテロに対抗する措置を各国に義務付ける決議を採択している。イギリスやフランスは過激派の旅券剥奪などの措置を取っている。


注目されるのはフランス下院がイスラム国などテロを正当化するウェブサイトの閲覧を制限するテロ対策法案を可決したことだ。確かに邪悪なるウェブサイトを閲覧禁止にすることは一定の効果を発揮するかも知れない。


日本の場合今回の事件を極めて珍しい刑法93条の私戦予備罪・私戦陰謀罪の規定で対処した。外国に対して私的な戦争行為をする目的でその準備または陰謀をしたものを罰する規定だ。政府はテロ組織への資金の流れを遮断する新法も制定する方向で調整している。


日本でも、テロリストの動きは何が何でも封じなければならないのであり、油断禁物であることは言うまでもない。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年10月06日

◆仁川大会は紛れもなく国威を下げた

杉浦 正章



「醜い韓国人」を早期に改めよ


開催国が国威を発揚するのがスポーツの国際大会だが、仁川でのアジア大会は明らかに韓国の国威を下げた。


アジア大会史に残るあまりにもずさんな運営、スポーツの戦いにふさわしくないアンフェアな判定。バドミントンで生じた「風」が象徴する疑惑の行為。まるで勝つために手段を選ばぬ手法は、韓国内にまん延する「国風」が深く関わっているような気がする。


それは日米など先進国が1度は経験して、国際社会の反発を受けて改めてきた「醜い」国風でもある。いま遅れて来た韓国は「醜い韓国人」がまるで“売り”であるかのように見える。悪いことは言わない。早く気付いて改めるべきだ。


何も韓国ばかりが醜いのではない。戦後ベトナム戦争に到るまでの米国は東南アジア諸国から「醜いアメリカ人」と評された。第2次大戦の戦勝で思い上がり、横柄で身勝手で王様のようなアメリカ人がそう呼ばれた。
ベトナム戦争敗北はそうした米国人に頂門の一針を下すことになり、米国人は以後紳士的な姿勢に転換した。


それに相前後して今度は、ベトナム特需もあり、戦後の高度成長期もあって自信過剰になった日本人が、米国人に取って代わって「醜い日本人」と呼ばれた。74年の田中角栄による東南アジア諸国歴訪にタイのバンコクとインドネシアのジャカルタで暴動が発生したのである。


バンコクでは、「経済侵略反対」と約5000人のデモ隊が首相一行の宿舎前に押しかけ、田中の似顔絵や日本車の模型を次々に焼いた。タイ国王のラマ9世(プミポン大王)が調停に乗り出し、「あなたたちの使っているマイクも日本製だ。皆が持ちつ持たれつだ」と戒めるまで続いた。


ジャカルタでは、1万人のデモ隊が暴徒化し、日本大使館の国旗が引きずり降ろされ、日本車など200台以上が焼かれる騒ぎとなる。この有様を見て日本の政界も経済界もアジア諸国の対日感情の実態が分かり、以後急激に態度を改め、ようやく今は「醜い日本人」ではなくなったのだ。


そこで韓国だが、痛い目に遭っていないからまだ分からないままの「醜い韓国人」が幅を利かせている。仁川大会にそれが現れた。接遇は遠来の客をもてなすものとはほど遠いものであった。運営もなっていなかった。


メーン競技場の聖火は誤作動で15分間も消えた。ボクシング女子ライト級の試合でインドの女子選手が判定に不服で、銅メダルの受賞を拒否、抗議の表明で銀メダルの韓国選手に自分の銅メダルをかける事件が起きた。インド選手はよほど我慢が出来なかったに違いない。


米国のウェブ 世論はインド選手を支持している。サッカーの試合では明らかに韓国寄りの判定にタイ国内のフアンが激怒、ウェブで「インチキ韓国」の批判がとどまるところを知らなくなった。これに韓国人が火をつけた。


何とプミポン国王の顔写真を下着姿の女性の顔に置き換えてWebに流したのだ。国王に対する侮辱に、国民の怒りは怒髪天をつく状態だという。


そしてバドミントン試合だ。会場に吹いた空調の風については、疑惑が残ったままとなっている。21日の男子団体準々決勝の日本−韓国戦の第1試合で日本選手が第1ゲームを取ったあと、第2ゲームから向かい風が強くなったと感じたという。何とコートチェンジしたあとも向かい風が吹いたという。


結局逆転負けを喫した。コーチが審判に訴え、試合後には日本オリンピック委員会にも報告をした。5グラムしかないシャトルは、向かい風に弱い。韓国は否定しているが、百歩譲ってもそもそも風が影響するような施設をバドミントン競技に使用すべきでないことが分かっていない。


要するにこのようなずさんなアジア大会は前代未聞であり、何でも勝てばよいという「醜い韓国人」の国風が根底にあるとしか思えない。


フィリピンでは毎年韓国人7−8人が銃撃で殺害されており、それが今年は既に7人に達しているという。それも強盗ではなく恨みによる犯行が多いという。


オーストラリアでは路上の暴行事件が頻発、アメリカでは韓国系住民と黒人との摩擦や事件が続出している。低所得者の居住区が隣接しているケースが多いのだ。米国や日本は大きくその姿勢を改めたが、韓国は是正どころか慰安婦像が象徴するように、強硬に自己の主張を繰り返し、相手を屈服させようとする。


英国BBC放送は毎年世界25か国2万6千人を対象に、主要17か国の国別好感度調査を実施している。日本は毎年トップであるケースが多かったが、13年は中韓両国の日本に対する好感度票が激減して4位となった。しかし1位のドイツも日本も50%台だから大して変わりはない。


韓国は36%で10位だが、ほとんどの国の支持が低い。50%越えたのはインドネシアとガーナだけだった。特にドイツは韓国が良い影響との回答がたったの17%で、韓国のドイツに対する高評価とは正反対となっている。その他の国でも前年比で軒並み低下している。


韓国はこれが意味するものがどこにあるかを冷静に受け止めるべきであろう。


ありもしない慰安婦強制連行を喧伝し、慰安婦像を米国各地に設置し、大統領・朴槿恵があれだけ「言いつけ外交」で各国首脳に訴えても、世界の「醜い韓国人」評はますます高じるばかりである。まるで朴が自国のイメージダウンの先頭に立ってきたかのようである。


ためしに朴はタイを訪問してみてはどうか。今なら田中以上の反韓デモに遭遇することは必至であると予言しておく。反日プロパガンダなどで世界の信認を得ることはできない。友情ある説得をする。早くこの国風に気付くべきであろう。気付かなければ他国の民衆の反韓暴動で知る事になりかねないからだ。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年10月03日

◆夢のオリンピック花道はW選しかない

杉浦 正章




安倍は野党に対抗して公明と候補一本化に動け
 

政権は首相本人も側近も長期政権の夢を持つことが肝要だ。夢がなくなって「長きが故に貴からず」などと言い出したらすぐにつぶれる。安倍政権の場合の夢は何と言っても2020年の「オリンピック花道論」だろう。


そのための展望を組み立てるとしたら2016年夏の衆参同日選挙(ダブル選挙)しかない。中曽根康弘がダブルに勝って自民党総裁任期を1年おまけしてもらったように、首相・安倍晋三も来年再選して2018年9月となる任期を2年おまけしてもらうのだ。今の人気が維持できればそれができる。
 

それではダブル選挙を実現するためにはまず何が必要かだが、秘策がある。明らかにしてしまっては秘策ではなくなるが、筆者が書かないと半年遅れで誰かが気付いて唱えるからまあいいだろう。


それは公明党との選挙区調整を早期に行い、自民党が大幅譲歩することだ。ダブルで自民党は300議席が可能となるが、270−80議席でも十分円滑な政局運営が出来る。


ところが例によって何でも反対の公明党代表・山口那津男が、ダブルにさせないことが自らの使命のような発言をしている。山口は「可能な限り、多様で新鮮な民意を絶えず国会に供給する、というのが憲法の考え方だ。


一遍に民意を取り込むダブル選は、憲法の精神にはあまりふさわしくない」というのだ。法律屋らしく憲法まで持ち出して反対するが、過去2回のダブル選挙で最高裁から違憲の判決が出たことはない。


若い記者は公明の反対が最大の障害のように書くが、ダブル選挙に公明党が反対するのは毎度のことで、結局はダブルを結構こなしている。要するに宗教団体・創価学会が煩雑な選挙運動を面倒くさがるのだ。衆院と参院で選挙区が異なるから、投票で学会員がまた裂きになるというのだ。


過去のダブルを見れば、公明は結構いい戦いをしている。大平正芳が選挙中に死んだ80年のダブルでは、自民284議席,公明33議席で健闘した。中曽根康弘がやった86年のダブルでは、自民300議席、何と公明は56議席だ。小選挙区の直近の2012年の選挙では自民294議席に対して公明31議席。議席率は86年が10.9%で12年が約12%と大差ない。


従ってダブル選挙は公明にとって不利とは言えないのだ。過去のダブルの際には公明と自民はもちろん選挙区調整などしていないのに結果は良好なのだ。調整をすればもっとよくなる可能性がある。山口が嫌がる根拠を除去するのだ。
 

それに野党が、小沢一郎の唱えたとおりの流れになりつつある。民主、維新両党共闘の流れは最終的には両党で選挙区調整をして野党候補を一本化しようと言うところにある。


民主党代表代行・岡田克也(国政選挙担当)は2日の時事とのインタビューで次期衆院選で野党の共倒れを回避するため、他の野党との間で候補者調整に関する協議の場を設置する方針を明らかにすると共に、必要に応じ党公認内定者の選挙区替えなどにも柔軟に対応する考えを示した。


自公はこの流れを放置してはならない。小選挙区制は「風」が選挙結果を左右する。民主党が133選挙区に立てるのが精一杯でも、野党全体で300選挙区に統一候補を立てれば、小沢の狙い通りにことは進みかねないのだ。


それには自民党が有力公明党候補と競合する選挙区で降りることだ。高齢化候補を抱えていたり、無能が歴然とする候補の選挙区で、公明候補に有力な新人がいれば譲歩して、統一候補として野党に対抗することだ。民主党のように選挙区替えをしてもよい。そうすれば、公明党も納得する。いや、せざるを得なくなるのだ。そうした動きが生ずれば政局は粛々としてダブル選挙へ向かって流れることになる。


もう一つ重要な点は、筆者が唱え新聞も書き始めた政局フリーハンド論である。


それは消費税の延期に他ならない。予定通り年末に実施の判断をして来年10月から実施するとなると、確実に安倍は解散総選挙へのフリーハンドを失う。これを1年か1年半延期すれば、増税実施は再来年10月か17年春となり、ダブル選挙への影響を回避できるし、その間も「解散の脅し」を効かせて政局運営が出来る。


有利とみれば解散に踏み切ることも可能だ。実施を延期すれば来年の通常国会末の「安保法制解散」や、来秋の臨時国会の解散も視野に入れることが可能だ。この「脅し」が利くということほど政権運営を円滑化させることはない。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年10月02日

◆小沢が終盤国会の消費税政局化を狙う

杉浦 正章



野党をあおり、候補者調整に意欲
 


自民党幹部の2人から「最近小沢一郎さんはどうしていますか」と聞かれた。政局がざわついてくると「必殺政局マン」の生活の党代表・小沢一郎が何を考えているかを知りたがるのだ。


そう言う問いには「たまにはネットでも検索しなさいよ」と言っている。PRESIDENT Online(http://president.jp/articles/-/13509)に安倍政権をどう倒すかの秘策を全部ぶちまけているのだ。


小沢の政局予想は、消費税再増税問題が政局になるというものであり、首相・安倍晋三が政権を投げ出す事態に到ると判断している。


小沢は「再増税の判断をする前に騒ぎがおきる」と臨時国会終盤の「消費税政局」を予測しているのだ。この小沢の読みに対抗し「政局化」を回避できる道は、消費税法付則18条を援用して再増税を1年または数年先延ばしするしかないと思う。


沖縄辺野古近くの美しい海を臨む宜野座村に、しょうしゃな別荘を建てた小沢は現在72歳。もうご隠居かという話になるが、なかなかどうして潮騒(しおさい)どころか“血騒”(ちさい)なのだ。


民主党政権時代は100人を超える勢力のトップに立って政局を思うがままに動かしていたが、消費増税決定が不満で党を分裂させたのが落ち目の三度笠。現在衆参会わせてたった9人のトップで無聊(ぶりょう)を託って居るかと思いきや、依然ふつふつと政局への血を騒がせていたのだ。


今年の初め頃から小沢は「巨大自民党に対抗するには野党が小選挙区で候補を一人に調整して戦うしかない」と唱えていたが、昨今の民主と維新の接近ぶりをみると、この小沢構想がきっかけであるようなのだ。誰も小沢の構想とは言わないが、知恵だけはちゃっかりと頂いているのだ。
 

そこで小沢がPRESIDENT Online で何を言っているかだが、これまたドラスチックだ。まず政局展望について再増税問題がきっかけで安倍政権が倒れると予測しているのだ。


「消費税増税に対する影響は、再増税を判断する前、今年中に来る。その結果、安倍政権がどうなるかわからないというのが僕の判断だ。再増税を判断する前に、今年中に騒ぎになる。経済指数とか、海外の情勢とか、いろいろ問題になって、安倍さんでいくかどうかということになると僕は思っている」と述べている。


安倍が再増税をするかどうかは12月9日頃に出る7−9月の経済指標を見てからということになっているから、その前の臨時国会で政局になるというのだ。「なる」というより「する」ということだろう。


おそらく各種経済指標を見て7−9月のGDPが壊滅的になると予測、11月30日に終わる臨時国会の最中に政局に持ち込む戦術だ。小沢は「安倍政権は続かないのではと見ている」と断言している。
 

そして総選挙の見通しについて「1年後の来年の夏、あるいは12月じゃないか」と述べ、その前の野党選挙協力体制の確立が必要だと強調する。


「野党側が候補者を決めて走らせるには、半年は必要だ。そんなに時間はない。来年の4月の統一地方選挙の後ではもう遅い」と、早期に野党が民主、維新を中心に収れんして、小沢の生活の党もどちらかと合併して、野党2党が候補者を一本化する作戦を明らかにした。


そして選挙区情勢に詳しい自らの立場を「実際に候補者の調整や選挙をどうするんだという類の話でお役に立てれば、僕はする。要するに実務だ」と位置づけた。「実務」であって「野望」でないと言いたいのだ。


加えて「いまはとても政権は取れないと思っているから、みんな尻込みしているが、政権が取れるとなったら、絶対にみんな出る。再増税を判断する前に騒ぎになる」との見通しを述べた。


そして小沢は「政権を狙わない政党や政治家は辞めたほうがいい」と述べた。この部分は民社党委員長・西尾末広の「政権を取らない政党は、ネズミを捕らぬネコと同じだ」のコピーだろうが意気込みだけは並大抵ではない。


要するに小沢は野党をあおって、終盤臨時国会を「消費税政局」にして、「アベノミクスの破たん」を突破口に、安倍政権崩壊へとつなげたいのであろう。おりから民主、維新の接近が始まろうとしており、マスコミが連動して盛り上げるだろう。


これにどう臨むかだが、現在安倍は「消費税率の引き上げで景気の悪化を招き税収が増えない事態は絶対に避ける」と述べながらも、財政再建重視の立場も強調、まだ心中が揺れ動いている状況だ。


国会の議論は、まるで再増税するかしないかに二分されたような状況にあるが、この論議は間違っている。法律が通っている以上「再増税しない」はあり得ないのだ。逆にあい路はここにある。消費税法の付則を活用して、アベノミクスの失速が確定的となる再増税を「延期する」かどうかなのだ。


財政再建への意欲を疑われないようにさまざまな歯止めをかけて延期して、海外のハゲタカファンドの来襲を防げば、延期が最善の落としどころとなるのだ。


「再増税実施」に踏み切れば、まさに小沢の術中に落ちて「消費税政局」となるのは覚悟しなければなるまい。自民党も首相側近もこのポイントを外すべきではない。ノーテンキに政局を無視する財務官僚などは首を切ってでも延期を選択、政権を維持すべき時なのだ。

        <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年10月01日

◆解散のかの字もなく臨時国会開幕

杉浦 正章




民・維、“やらせ拍手”で“わら束共闘”



案の定冒頭の代表質問は解散のかの字も出なかった。従って安倍は答弁する必要すら無かった。さすがの民主党代表・海江田万里も、維新の党共同代表・江田憲司も恥ずかしくてピント外れの解散質問などできなかったのだろう。


産経などが一時は本気で今秋解散を報道したのは、そのレベルの判断能力と見れば済むことだ。


テレビ評論家・田原総一郎が内閣改造後に「安倍さんは、是が非でも自民党総裁に再選されたいと願っている。そのためには、今回の内閣改造を経て、経済、外交で支持率を上げて、このタイミングで国会を解散すれば、総選挙に勝つことは間違いない。ボクは踏み切ると思う」ともっともらしく述べていたのも、そのレベルの政治評論でしかないと思えば済むことだ。


筆者が指摘してきたとおり今国会の解散などあるわけがないのである。


しかし民主党幹事長・枝野幸男の誤判断だけは痩せたりとはいえ一党を率いる幹部の発言としては看過できない。枝野は「私が安倍さんならこの秋に衆院選をやると思っている。下手をすると解散は臨時国会の冒頭かもしれない。覚悟はしていなければならない」と警鐘を鳴らした。


最近では「11月9日投票」とまで言及した。冒頭解散などなかった。この間違いは大きい。幹事長がこれだけはっきり見通しを述べれば、党員は「すわっ」とばかりに選挙準備に取りかかる。おまけに民主党は9月30日の常任幹事会で国政選挙対策本部まで新設している。幹事長が狼少年になって、政局判断を間違えたのでは就任早々から失格の烙印を押さざるを得ない。


それにしても海江田も江田も「アベノミクスの失敗」で共闘して対決姿勢を打ち出すのなら、「首相は国民の信を問え」と緩んだ政局をすこしはピリッとさせる発言くらいすべきであったが、触れない。きっと解散が怖いのに違いない。


その共闘姿勢だが、江田の代表質問後に民主党席がやんやの拍手をしたからおかしいと思って調べたら、民主党は事前の代議士会で国対副委員長・笠浩史が「維新の質問に激励をお願いしたい」と異例の呼びかけをしていたということだ。


要するにやらせの拍手だ。なぜそこまでやるかと言えば、“束になって”かからないと一強自民党政権にかなわないからに他ならない。この結果、代表質問では一応“束”にはなった。しかし、民主党内にも維新にも野党再編論などはまだまだ本気で語られる段階にはなく、「竹の束」にも到らぬせいぜい「わら束共闘」だ。


おまけに代表質問を聞いていて、この二人の質問は本当に党を“代表”した質問なのかと疑いたくなった。党内論議をクリアしていない重要事項を独断で質問しているからだ。海江田は集団的自衛権の行使容認の閣議決定について「立憲政治の否定だ」と党内左派の立場だけを代弁したが、右派は容認であり決着はついていない。


江田に到っては自らの左傾化姿勢を露骨に打ち出して、まさに独断専行型の質問であった。少数の手勢を引き連れて入ったにしては態度が大きすぎるのだ。基本的に共同代表・橋下徹と江田は安倍政権に対する距離感が離れすぎている。


原発再稼働でも江田は「安全に誰が責任を持つのかはっきりしないで再稼働すべきでない」と反対の立場を鮮明にさせたが、橋下は再稼働容認だ。集団的自衛権の行使については橋下が容認、江田が事実上の反対論だ。両者はこれら亀裂要因に蓋をしたまま新党を立ち上げたが、自民党からちょっとくさびを打ち込めば早期分裂もあり得る状況にあると見てよい。


焦点の消費税に関しては自民党幹事長・谷垣禎一の質問に「おやっ」と思った。谷垣は総じて安倍に対する「盲目の愛」のようなヨイショ質問を延々と繰り返したが、消費税に関しても持論を抑制した質問をしたのだ。


谷垣はこれまで「上げたときのリスクは手の打ちようがあるが、上げなかったときのリスクは非常に不安がある。上げられるよう対策を打つことが必要だ」とか「再増税は法律もあり自明のこと」と再増税に前のめりの発言をしてきた。


ところが、代表質問では「デフレ脱却を柱とする日本経済再生と持続可能な社会保障制度の確立のための財政健全化はいずれも喫緊かつ重要な課題。これを踏まえた上での消費税引き上げについてうかがいたい」と、明らかにトーンダウンした。首相官邸との事前の調整があった証拠であり、谷垣に対して官邸サイドから持論を封ずる何かがあったのだろう。
 


一方海江田も消費増税をした場合の社会保障の充実を確約するように安倍に求めるにとどまったが、最後に「安倍政権と異なる選択があることを国民に示す」と不気味な締めくくりかたをした。


これを枝野が、定数削減が実現しない場合を想定し「本当に定数削減の約束を最後まで守ってもらえないのであれば、(引き上げに反対するという)ちゃぶ台返しもせざるを得ないということは当然視野にある」と述べ、自民、公明、民主の3党で合意した消費税率引き上げに反対する可能性を鮮明にしたことと考え合わせると興味深い。


定数是正を口実にして消費再増税反対に踏み切る可能性が出てきたことを意味するからだ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年09月30日

◆安倍は安保・消費税国会に逡巡するな

杉浦 正章




「地方創生」への誘導は無理筋だ
 


何事にも真っ正面から取り組むのが首相・安倍晋三の持ち味だと思っていたが、最近はなにやら“びびり”が目立つようになってきた。


集団的自衛権の閣議決定を通常国会の後にし、同関連法案は来年の通常国会後半に先送り。有志連合のシリア爆撃を「理解」にとどめ、開幕した臨時国会を激動する世界情勢を尻目に、具体策に乏しい「地方創生国会」と位置づける。


所信表明演説では集団的自衛権や10%消費増税への言及がない。再増税の判断も臨時国会後へと先送りしようとしている。首相就任後2年になろうとしているが、外交内政に渡る激務を休み返上でこなす希有な首相であることは確かだが、最近の「マイナス志向」は疲れが出てきたのか気がかりである。
 

安倍は自民党両員議員総会で今国会の位置づけを「地方創生国会」として、そのための法案も提出した。しかし法案はいわば観念論で理念を述べるにとどまっており、地方創生担当相・石破茂が自ら「何をやるかの具体策がまだ出てこない」と言うようでは、語るに落ちた。


要するに安倍は臨時国会の論議を無理矢理地方創生と女性の活用に誘導しようとしているのだ。これにはみんなの党幹事長の水野賢一が「地方創生とか女性の活用とか誰も異論のないものばかりをテーマとしている。安保とか消費税とかが先送りされるのは問題だ」と述べたが、至極もっともだ。


緊張する極東情勢、激動の中東・ウクライナ情勢など世界は大波乱時代に突入している。国内は消費増税を2年で倍増するのか、出来るのかという難問に直面。どう見ても国会は安倍の意図・思惑とは逆に、所信表明で触れなかった外交・安保、消費増税論争が焦点とならざるを得ないのだ。


その議論の動向を見定めれば、まず野党は消費増税では民主党がヌエ的な立場であるほかは全野党が10%への引き上げ反対である。


民主党は首相・野田佳彦が増税に踏み切り、2段階で10%を決めた張本人だから対応を決めかねているのだ。その中で、このところ左傾化して対決色をあらわにしている幹事長・枝野幸男は、安倍追い込みの奇策を思いついたようだ。


それは「増税延期」を「アベノミクスの失敗」と決めつけることだ。決めつけることで再増税を延期をさせずに10%への増税に踏み切らせ、その上で政権を支持率急落で失速させようとする作戦だ。統一地方選や総選挙を考えたら民主党は安倍が増税してくれることを祈るような気持ちでいることがよく分かる。


しかし筆者に見破られてはどうしようもない。もっとも枝野の“小細工”に対しては「増税延期はアベノミクスを成功に導くため」という反論の方が説得力がある。


その他の野党は共産党を除けば極めて常識的な反対論である。総じて現在の景気状況から見て10%への増税は税収増加につながらないとみている。


維新の党幹事長・小沢鋭仁は「今のタイミングでは反対だ。今のマクロ経済の状況では税率を上げても税収にはつながらない」と言明。次世代の党幹事長の山田宏は「これから高齢者が増えていくなかで、中期的な財源確保は必要だが、コストの削減や経済を温めるための成長戦略を進めることが優先だ。経済を冷え込ませてしまったら、仮に消費税率を引き上げても税収は上がらない」と述べている。


いずれもまっとうな物の見方をしている。みんなの党の水野も「今いちばん大切なのはデフレからの脱却であり、景気に悪影響を与えることはすべきではない。景気の指標を見ると、消費税率を3%から5%に引き上げたときと比べても経済へのダメージがあり、増税は間違いだ」と強調している。


これらの主張は首相側近の再増税慎重論とも一致する様相を呈している。一部に「増税延期は政治的なエネルギーが大変だ」というもっともらしい意見があるが、延期は消費税法付則に書かれており、民主党以外の党が賛成ならそれほどのエネルギーは必要としない。


一方、自民党幹事長・谷垣禎一は、理論武装不足の感が濃厚だ。増税に当たっては景気対策の補正予算を組むとしているが、公共事業は人手不足もあってこれまでの予算が使い切れていない。未執行予算が13兆円もあるというのだ。補正など組んでもまさにぬかに釘となるだけだ。


谷垣は「社会保障の安定財源のためにも必要」と訴えるが、8%に増税しても年金が減額されている現実を知らない。「だまされた」という意識の強い国民に、もう消費税の社会保障財源論は効かなくなっていることを知るべきだ。おまけに再増税して法人税減税では、枝野の絶好の追求テーマになってしまう。


やがては谷垣も期限を区切った増税延期あたりを落としどころとせざるを得ないのではないか。谷垣は再増税で党内根回しをしていると言うが、それにしては反対論者が減らない。なにやら腰が入っていないのだ。安倍と手を握ったポーズだけなら世上を惑わすだけだと心得るべきだ。


外交・安保も論戦の焦点となることは間違いない。とりわけ国会の最中11月9,10の両日に北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開催され、日中、日露首脳会談、場合によっては日韓首脳会談もあり得る情勢だ。極東安保情勢がデタントに入るかどうかの正念場を迎えようとしている。


集団的自衛権問題も閣議決定後予算委の閉会中審査を行っただけで、十分な審議は行われていない。議論のないまま既成事実化しようとしていると勘ぐられても無理はない。


おりから中東ではイスラム国爆撃で長期戦の様相が生じており、集団的自衛権の行使絡みでの論戦は避けられない。安倍ははっきり言って具体策のない地方創生にうつつを抜かすひまはないだろう。地方創生は内容が整ってから来年の通常国会で行えばよい。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年09月29日

◆シリア空爆は「支持する」に転換を

杉浦 正章




戦争長期化で日本の貢献不可避に
 


シリアへの空爆が意味するものは「逃げたいオバマ」が、再び中東戦争に引きずり込まれたことを意味する。あらゆる専門家が戦争の長期化を予想しており、好むと好まざるとにかかわらず日本も軍事的、経済的関与を迫られることになろう。


首相・安倍晋三はシリア空爆をややトーンを下げた外交用語の「理解する」にとどめたが、米国の戦いは邪悪なるものに対する正義の戦いとしてアラブ世界や国際世論のまれに見る支持を受けている。


「巻き込まれ論」は日本の民放コメンテーターや、低級極まりないラジオ評論くらいのものだ。まずは日本も「支持する」に転換すべきであろう。


注意すべきは経済支援だけでは、湾岸戦争と同様に世界中から嘲笑の対象となる恐れがある。テロに対して備えを強化し、状況の変化によっては国連平和維持活動(PKO)、後方軍事支援、医療活動まで視野に入れた対応が必要になるのではないか。


安倍は23日ニューヨークで有志連合によるシリアのイスラム国空爆について「米国を含む国際社会のイスラム国に対する戦いを支持する。米軍によるシリア領内の空爆も事態の深刻化を食い止める措置として理解する。日本は国際社会と緊密に連携して、難民支援や周辺国への人道支援など軍事的貢献でない形で、できる限りの支援を行う」と言明した。


戦いは「支持する」が空爆は「理解する」にとどめた理由は何か。安倍がトーンを下げたのは様々な要素が複合的に作用したと見るべきであろう。官房長官・菅義偉が「空爆の詳細について我が国は掌握をしていない」と述べた。これは米国が戦果を挙げるための極秘対応か、日本軽視かは分からないが事前の詳細なる説明をしてこなかったことを意味する。


内容も知らないままもろ手を挙げて賛成するようでは政府が軽率のそしりを受けることになり、無理もない対応と言える。


2003年のイラク戦争の際は小泉純一郎が世界の先陣を切って「支持」を表明して、ブッシュを喜ばせた。事前に米国の連絡があったことはもとより、英国首相・ブレアから「私も支持表明するので是非支持して欲しい」という要請があった。


小泉は「こういう時ははっきり言った方がよい」と、外務省の「理解する」という案を「支持する」に変えて先陣を切って表明したのだ。


一方、安倍は集団的自衛権の行使容認の閣議決定に当たって「湾岸戦争のケースにもイラク戦争のケースにも自衛隊は派遣しない」と明言しており、集団的自衛権の行使関連法案はまだ作成の端緒についたばかりである。ここで前のめりになって野党の追及を浴びたくない気持ちがあったのであろう。


シリア空爆は40回を越えている。当初の爆撃で資金源である石油精製施設は壊滅したが、イスラム国側の戦闘員はそれほどの打撃を受けていないと見られている。スンニ派武装勢力を中心とするイスラム国は、配下に2万ー3万人の戦闘員を抱えているとされている。


米軍はマッハ2の最新戦闘機F22まで使った空爆であったが、蠅叩きでスズメバチの巣を打ち壊すようなものではないかと思う。追い散らすことは出来てもまた巣を作られて、壊滅的な打撃には到らないだろうからだ。


しかし、イスラム国が戦術の転換を迫られたことは間違いない。大きな侵攻の動きがあれば上からは丸見えであり、集中攻撃の的になる。当然無人偵察機や無人爆撃機もフル動員される。


このためイスラム国勢力は制圧したイラク第2の都市モスルを始め大きな都市に潜入する戦術を採り始めており、事実上の“市民人質戦術”に出るだろう。爆撃での壊滅は市民を巻き添えにするため不可能に近い。


オバマは将来的にはシリアの反政府勢力やイラク軍にテコ入れすることによって、空爆と連動した地上からの制圧に頼らざるを得なくなるものとみられる。ところがこれは百年河清を待つに等しい戦いではないかと思う。


やはりテロ組織を一掃するには、米軍の特殊作戦部隊(SOF)や顧問団を出し、イラク軍とスンニ派部族、クルド人民兵組織、シリア反体制派組織などと共同作戦を展開する地上戦が不可避とみられる。地上軍を投入してひとつひとつ拠点をつぶさなければ決着はつかないのである。
 

爆撃だけではベトナムの北爆と同じでゲリラには効果が少ないのだ。いずれにせよ戦いは長期化が予想される。空爆が継続している限りにおいて、日本の当面の立場は「理解」から「支持」へと一歩前進させることくらいしかないと言ってよい。もちろん難民への人道支援での経済援助も推進せざるを得まい。


だが湾岸5か国の参加に加えてヨーロッパもイギリスが参戦。慎重だったフランスも方向を転じ、ベルギー、デンマーク、オランダまでが空爆に参加する流れとなっている。有志連合は60か国以上に達している。将来地上戦へと事態が発展した場合、日本の出方によっては、下手をすると「日本フリーライダー論」に火が点く可能性がある。


思い出すのは99年の湾岸戦争でアメリカに130億ドルも“ふんだくられ”ながら、国際的には嘲笑の的となったことである。この苦い経験がイラク戦争での自衛隊派遣となり、インド洋での給油活動となり、集団的自衛権の行使容認への流れとなってきたのである。


国際情勢の目まぐるしい展開は法案が出来ていないうちから日本の貢献を必要とする要因を生じさせているのである。ことは国際正義の遂行であり、日本も戦争の長期化とともに将来的には経済援助に限定せず、積極的にPKO活動に参加し、後方支援、医療活動などでの軍事的貢献などを迫られるケースが出ると覚悟した方がよいかも知れない。


臨時国会では集団的自衛権問題も絡んだ安保論争となるだろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年09月26日

◆APECの「極東デタント」へ動き急

杉浦 正章




安倍外交に中韓が軟化
 


国連を舞台に首相・安倍晋三と外相・岸田文男による多様な外交が展開されているが、俯瞰すれば全てが「極東雪解け・デタント(緊張緩和)」へとつながっていることが分かる。


中国とは「海上連絡メカニズムによる不測の事態回避」、韓国とは「史経分離」、ロシアとはウクライナ問題での緊張の中での対話維持だ。


これが11月10日の北京・アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に向けて収れん、定着する流れになりつつある。民主党政権のイデオロギーと無知から来る右往左往外交を修復し、49か国を回った安倍外交が突破口を開きつつあるように見える。


端的に言えば、まず中国が安倍外交に折れた。というか折れざるを得なくなった。安倍は座標軸を日米安保体制強化に据えて、中国の力による尖閣諸島の現状変更を認めず、米国はもとより、オーストラリア、インドなど大国との間で安保上の対中認識を共有した。


南シナ海に進出する中国に対してフィリピン、ベトナム支持を明確に打ち出し、ASEAN諸国の支持を獲得した。この結果、5月の「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)」では、中国を孤立させることに成功したのだ。


他方、習近平は汚職摘発という権力闘争に成功、国内的な主導権を握った。外交上もフリーハンドを握りつつあると見てよい。その習にとって最大の政治ショーは北京でのAPECであり、この成功は不可欠の最優先課題なのである。


中国は国際会議など外交の舞台を伝統的な朝貢外交のように演出し勝ちだが、APECも同様であろう。国民にどう見せるかに腐心する。


各国首脳が人民大会堂に参集し、習は歴代王朝の皇帝のようにそれを迎え、いかに習が国際的に信頼され、指導力があるかを国内的に宣伝しなければならないのだ。それが安倍主導で再び孤立となっては、政権の基盤が揺るぎかねない。


だから折れたのだ。その兆候は7月末の元首相・福田康夫との会談でAPECでの日中首脳会談に前向き姿勢を示したことに始まる。


明らかにこれを受けて8月18日には訪中した「日中次世代交流委員会訪中団」に急きょ副主席・李源潮が会談、「小異を捨てて大同につくことが日中双方に求められている」と何度も発言している。


そして習は9月3日の「抗日戦争勝利記念日」に当たって、「中国政府と人民は中日関係の長期的な安定と発展を望んでいる」と言明したのだ。


より具体的な動きも出てきた。まず安全保障面で進展があった。日中両国政府は24日、防衛当局が海上の艦船や航空機による不測の事故を防ぐため、海上連絡メカニズムの運用開始に向けた協議の再開で大筋一致したのだ。筆者がかねてから展望していたとおりにことは進展しつつあるように見える。


APECで日中首脳会談が行われた場合には「不測の事態回避」での一致が一番実現性のある合意点であり、尖閣問題は先延ばしするしかないのだ。尖閣は先延ばしして経済文化の交流を優先させる。日中関係改善はこれしかない。


次に日中経済協会(会長・張富士夫トヨタ自動車名誉会長)の訪中団に24日副首相・汪洋(対外経済担当)が2010年8月を最後に中断している閣僚級の会合「日中ハイレベル経済対話」の早期再開を提案した。


背景には今年1〜8月の日本の対中投資は前年同期比で約4割も減少、中国側が危機感を強めた事が挙げられる。ただしまずないとは思うが、中国がAPEC向けにだけ軟化、終われば戻るのではないかという点は要警戒でもある。


一方、中国が折れたのを察知して朴槿恵も折れ始めた。24日の国連演説で慰安婦問題に触れるかどうかが注目されたが、慰安婦の言葉は使わなかった。「戦時の女性に対する暴力」に言及したが、これでは一般論である。


尹炳世(ユン・ビョンセ)がさきに「韓国は歴史問題と他の分野を結びつけていない。経済交流は積極的に支援したい」と述べたのは、極東での孤立を避けて“史経分離”へとかじを切ったことを意味する。


しかし、国内的には反日世論もあり、慰安婦で対日妥協と受け取られたくないから朴の「戦時の女性」発言となったのだ。国内と対日外交両にらみの苦し紛れの発言である。韓国経済の落ち込み、これに同調するかのような朴支持率の低下。対日経済の改善は韓国経済にとって待ったなしなのであろう。
 

元首相・森喜朗の訪露の根回しの上に実現した安倍とプーチンの電話会談も興味深い。安倍はAPECでの会談を要望したが、国際社会で完全孤立のプーチンにしてみれば、芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」のようにありがたいことだろう。


この首脳会談もウクライナはさておいて、両首脳の親交を確認するだけで十分だ。7か国による対露制裁の基調は崩すわけにはいかないが、安倍は“孤立プーチン”とのパイプ役を果たすだけでもよいだろう。


こうして極東情勢は依然危うさを内包しながらも雪解けへと向かっているのだ。米国がこの極東デタントを歓迎しないわけがない。ただし対露、北朝鮮外交は米国の疑心暗鬼を招かぬよう密接な連絡が必要なことはいうまでもない。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)


2014年09月25日

◆小渕首相候補生は原発再稼働がカギ

杉浦 正章




泥をかぶってでも推進せよ
 

婆さん閣僚が多い中で40歳の経産相・小渕優子は何と言っても花だ。父親の恵三は田中派時代からよく知っているが、優子の政治センスは明らかに親父を上回る。


麻生政権の少子化担当相の時に第2子を懐妊するなどという離れ業は並大抵のセンスでは出来るものではない。内閣改造で原発再稼働が最大の課題である重要閣僚に就いた。これで女性首相候補としては今は落ち目だがまだ目のある野田聖子、窓際の小池百合子、パフォーマンスの蓮舫などを尻目にリードした感じが濃厚だ。


政調会長・稲田朋美がなかなか行動力あるが、ちょっと右寄りにバランスを崩しすぎだ。もっとも小渕には最大の難関が待ち構えている。在任中に再稼働申請中の12原発19基の稼働を実現できるかどうかだ。それが出来ればフォークランド紛争で圧勝した英国首相・サッチャーのような“鉄の女”に昇格できるかも知れない。


女性政治家につきものの「危惧」を払しょくするためにも不可欠だ。クリアすれば、石破茂の次に首相の座を狙うことも現実味を帯びてくるだろう。
 

小渕はNHKで原発再稼働について「原子力発電を持たない選択をすることは将来を視野に入れたエネルギー政策を考えれば難しい選択だ」と言い切った。安倍政権で一番泥をかぶる要素の強い課題に真正面からチャレンジしようとしている。


川内原発の再稼働に「国が責任を持つ」として事故対応への関与を強調した文書を鹿児島県知事・伊藤祐一郎に渡し、知事は「政府の考え方が明確に示された」と歓迎した。しかし川内再稼働は皮切りにすぎない。原発反対派が手ぐすねを引いて待ち構える原発は多く、ひとつひとつを解決してゆくには極めて強靱な意志と決断力が不可欠だ。


政府は川内再稼働の後は規制委がゴーのサインを出せば、いちいち個個の原発再稼働に政治判断を下さなくてもよい「自動再稼働」の方向に持ってゆくべきだが、小渕はそれに先鞭(せんべん)をつけることも必要となろう。


それが実現できれば他の女性候補に大きな差をつけられる。まさに政治家としての力量が訪われる人生最大の難関と言ってもよい。小渕は、物腰が柔らかくソフトな印象を受けるが、芯は強い。


麻生太郎が「崖っぷち解散」に追い込まれた2009年の総選挙は、臨月で選挙戦を展開することになったが、自民党逆風の中でただ1人圧勝。自分ばかりか他の候補も「ここで産んでもいい覚悟で来ました」と応援したというのが伝説となっている。


ブルームバーグ通信とのインタビューでは「私がどうしてもやらなければならない仕事なのに『子育てがあるのでやりません』というわけにはいかない。できるだけ子どもがいることが言い訳にならないようにやろうと思ってやってきている」と述べ育児と政治を切り離す決意を鮮明にした。


また女性首相の誕生について「決して遠い未来ではない」と意欲的ともとれる発言をしている。


頭の回転も速いエピソードがある。第2次安倍内閣発足時に入閣を打診されたが固辞。財務副大臣に就任したが、これを副総理に内定していた麻生太郎が「大臣をやって副大臣というのはいかがなものか」と茶化したが、小渕は「総理をやってから副総理をやっている人もいる」と切り返したといわれる。


酒も強く野田聖子とは酒友だ。「日本酒を愛する女性議員の会」の会長は野田だが、幹事長は小渕。野田は小渕がバーボン・ウイスキーをラッパ飲みする姿を見たことがあるという話しが永田町で出回っている。


その野田は女性議員で首相候補生になりそうな議員の最右翼であったが、いまは落ち目の三度笠。総務会長でありながら集団的自衛権で安倍に楯突いて干された。


ブログで「大きな役職を離れ、初心に戻るために、自民党ではフリーとなる」と宣言しながらも「沈んだときこそ、大切なこと、大切な人、見えてきますよ」としおらしい。再び台頭しそうだ。


小池百合子は全くぱっとしない。蓮舫が海江田降ろしの先頭に立ったが、どうもパフォーマンス臭がしていけない。民主党でしかも参院議員では駄目だ。稲田朋美が政調会長になって注目されるところだが、首相候補になりたいのなら右寄り姿勢を改めないと無理。「教育体験のような形で、若者全員に一度は自衛隊に触れてもらう制度はどうか」などと自衛隊体験の義務化を唱えているようでは話にならない。


女性の首相候補が出てくることはよいことであるが、まだまだ政治の世界は男社会だ。


世界経済フォーラムが毎年発表する男女平等(ジェンダー・ギャップ)指数では日本は105位。企業の課長以上などを「管理的職業従事者」というが、内閣府の調査ではこれに女性の占める割合はフィリピン52.1%、米国43.1%、イギリス34.5%、ドイツ30.3%なのに日本は11.1%にとどまっている。


儒教の影響、封建社会の風習など歴史的に女性は家庭を守り、夫を差し置いて表に出ない伝統が数字となって現れている。小渕がこれを破る突破口となるかどうかは分からないが、自民党が危機的な状態に陥ったときの“女神”の役割を果たしうるかもしれない。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)

2014年09月24日

◆読売の政局誤判断も問題だ

杉浦 正章




政治記事は朝日の方が正確だ
 

慰安婦強制連行をめぐる朝日新聞の誤報は長期に意図的な国を貶めるはかりごとがあって、これはそう簡単に許せるものでもない。一方で、その朝日に対抗して意気軒昂の読売のセンセーショナリズムはどうか。


自分の欠陥は他人しか分からないところがあるからあえて頂門の一針を下せば、読売は政局記事の勇み足というか誤判断が多すぎる。

「小渕優子幹事長」の誤報などは氷山の一角だ。約50年に渡って新聞記事を精読・分析してきた筆者からみると、最近の読売は政局判断では朝日に負けている。


読売が朝日の誤報で発行部数を伸ばそうとするのは自由だが、将来この誤報体質が国にダメージを及ぼさないとは限らない。自らの報道ぶりを顧みて、読売は朝日の誤報を「以(も)って他山の石」とすべきである。


朝日の長期意図的な誤報に比べて、読売のそれは勇み足的であって訂正すれば許せる。どう見ても無理筋の「小渕幹事長」の報道を8月31日の朝刊一面トップでやって、すぐに「谷垣幹事長」が実現して誤報と判明したが、後がいけない。


[スキャナー]で「幻の小渕幹事長」と見出しを取り、いかに「小渕幹事長」の情報が本物であったかをるる釈明している。政局記事というのは、いったん見出しで踏み切ったら、言い訳は効かない。あっさり間違いを認めて「後講釈」をしないことが政治部記者の鉄則だ。


とりわけ一面トップに見出しを取った原稿は社運をかけるほどの自信を持ったものであるはずだ。それを後講釈でごまかしてはいけない。


しかも、お家柄か訂正記事がまるでなっていない。スキャナーの最後で政局取材班による事実上の訂正を掲載している。


その全文は「読売新聞政治部は、内閣改造・自民党役員人事に向け、約1か月間にわたり、最大で30人の記者による取材態勢を組んだ。人事に関わる自民党や首相官邸などの取材対象者に日夜、接触を重ね、総合的な判断の下に報道した。


『小渕幹事長で調整』のほか、大島理森・前党副総裁の入閣、高市総務相の経産相での起用の見通し記事を掲載し、結果的に読者に誤った印象を与えた。日々流動する政局に際しては、多角的な取材と慎重な判断により、今後とも正確で迅速な報道に努める。」というものだ。


読めば分かるように大きな人事を3本も間違ったのに、全然反省していないし、おわびの言葉もない。「日夜接触を重ね総合的判断の下に報道した」にしては結果がお粗末すぎる。「今後とも正確で迅速な報道」の「今後とも」の後は「誤報のないように努力をします」と続くべきところだ。


誤報をしておきながら読者に威張っている様な印象を与える文章を初めて見た。


はっきり言って最近の読売は政局原稿に弱い。前回の民主党代表選では「細野豪志立候補」を決め打ちして、「細野不出馬」の朝日に大敗北。自民党総裁選では、「石原伸晃優勢」一辺倒で、これまた大間違いだ。


昔の読売は政局に強かった。佐藤政権時代ある晩夜回りで読売の記者から聞いたが「今晩はデスクがトップがないからトップを書いたものにはこれやる」とデスクの上に1万円おいて「さあさあ誰が取る」とやっていたそうだ。


当時の1万円は今の5万円くらいの価値があって筆者などはうらやましかったものだ。その効果があるとは言わないが、結構立派な政局原稿が出ていた。


精読していると朝日の政局原稿は蒙古来襲で言えば集団戦法で書かれていることが分かる。読売の政局原稿はこれに鎌倉武士が「やあやあ我こそは」と単騎で臨んで討ち取られるようなケースが多い。朝日は一つの記事の中に特ダネ的な情報が数多くちりばめられているが、読売は最初に見出しありのケースが多いような気がする。


だから朝日の政局記事にはこくがあるが、よみうりのそれはスカスカだ。つまり朝日は多数の記者が自分の持っている最上の情報を全て「書き屋」に出して、それを統合して書いているような気がする。


読売も朝日も夜討ち朝駆けは十分すぎるほどやって情報は豊富に違いないが、読売に欠けるのは記者が情報を出し惜しみしているかのように見えることだ。


こう見てくると政治原稿に関する限り、先にも書いたが朝日が10とすると、読売は7のレベルだ。読売が5のレベルの時すらある。ましてや他社は朝日には遠く及ばないケースが多い。


だから政治家や霞が関の官僚の多くが朝日の原発、秘密保護法、集団的自衛権などの「偏向報道」に舌打ちしながらも、毎朝朝日を最初に読むのである。


読売も産経も朝日の慰安婦強制連行取り消し記事をチャンスとばかりに、販売が攻勢を仕掛けている。自社の購読を勧誘するチラシを大量に配布している。これにジャーナリスト・池上彰が苦言を呈しているが、報道機関といえども企業だ。欠陥商品を出した企業にライバル企業がネガティブ・キャンペーンをするのは当然だ。


受信料が自動的に入ってくるNHK的な発想で、きれい事を言っても説得力がない。しかし朝日も読売も誤報は意図するしないにかかわらず読者迷惑であることを肝に銘ずるべきである。

      <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)